(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
F25B1/00 311A
F25B1/00 101F
F25B1/00 101E
F25B1/00 331E
(21)【出願番号】P 2022511387
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036763
(87)【国際公開番号】W WO2021065847
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510048875
【氏名又は名称】ダイキン ヨーロッパ エヌ.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】DAIKIN EUROPE N.V.
【住所又は居所原語表記】Zandvoordestraat 300,Oostende 8400,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】千頭 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】ハティアンガディ,アクシャイ
(72)【発明者】
【氏名】ファンデフェイフェル,ヤスパー
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-132428(JP,A)
【文献】特開2010-078164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0151015(US,A1)
【文献】特開2014-119220(JP,A)
【文献】特表2010-525292(JP,A)
【文献】特開2009-109110(JP,A)
【文献】特開2011-122779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒流路(120)に配置される、吸込口(101a)と圧縮口(101c)と注入口(101b)とを有している、冷媒を圧縮するための圧縮機(101)、第一熱交換器(102)、主膨張機構(103)、及び第二熱交換器(104)と、
第一側(112a)が前記第一熱交換器と前記主膨張機構との間の前記冷媒流路に接続されており、第二側(112b)が前記圧縮機の前記注入口に接続されているガスインジェクション弁(112)と、
第一側(111a)が前記第一熱交換器と前記主膨張機構との間の前記冷媒流路に接続されており、第二側(111b)が前記第二熱交換器と前記圧縮機の吸込口との間の前記冷媒流路に接続されている液インジェクション弁(111)と、
少なくとも部分的に気相である冷媒を、前記圧縮機に前記注入口を通じて注入するよう前記ガスインジェクション弁(112)を動作させ、実質的に液相の冷媒を前記圧縮機に前記圧縮機の吸込口を通じて注入するよう前記液インジェクション弁(111)を動作させるコントローラ(130)と、
前記圧縮機の前記吸込口と前記注入口との間に接続される低圧バイパス弁(113)と、
を備え
るヒートポンプであって、
前記コントローラ(130)は、前記圧縮機の前記吸込口と前記注入口との間で圧力を均等にするよう前記低圧バイパス弁(113)を動作させ、
前記コントローラ(130)は、前記液インジェクション弁(111)と、前記低圧バイパス弁(113)と、を開き、前記ガスインジェクション弁(112)を閉じ、前記ヒートポンプを第三モードで動作させる、
ヒートポンプ。
【請求項2】
前記第一熱交換器から流出する冷媒と前記ガスインジェクション弁(112)から流出し前記圧縮機の注入口に流入する冷媒との間で熱を交換するよう構成されるエコノマイザ熱交換器(105)を更に備える、
請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項3】
取入口(1105a)、ガス出口(1105b)、及び液出口(1105c)を有し、前記第一熱交換器と前記主膨張機構との間に接続される気液分離器(1105)と、
前記第一熱交換器と前記気液分離器の取入口との間に接続される副膨張機構(1103)と、
を更に備え、
前記ガスインジェクション弁(1112)は、第一側が前記気液分離器の前記ガス出口に接続されており、
前記液インジェクション弁(111)は、第一側が前記気液分離器の前記液出口と前記主膨張機構との間の前記冷媒流路に接続されている、
請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項4】
前記圧縮機の前記圧縮口から流出する冷媒の吐出温度を検出するための温度検出器(401)を更に備え、
前記コントローラ(130)は、前記吐出温度が第一閾値を超える場合に、前記ガスインジェクション弁(112)を開いて前記ヒートポンプを第一モードで動作させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【請求項5】
圧縮機負荷検出装置を更に備え、
前記コントローラ(130)は、前記圧縮機の負荷が第二閾値を超える場合に、前記ガスインジェクション弁(112)の開度を制限する、
請求項4に記載のヒートポンプ。
【請求項6】
前記コントローラ(130)は、前記冷媒の吐出温度が第三閾値を超える場合に、前記液インジェクション弁(111)を開いて前記ヒートポンプを第二モードで動作させ、前記第三閾値は前記第一閾値より高い、
請求項4または5に記載のヒートポンプ。
【請求項7】
前記第二熱交換器と前記圧縮機の前記吸込口との間に接続されるアキュムレータ(106)を更に備え、
前記液インジェクション弁(111)は第二側が前記アキュムレータと前記圧縮機の前記吸込口との間の前記冷媒流路に接続されている、
請求項1から6のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【請求項8】
冷媒流路(120)に配置される、吸込口(101a)と圧縮口(101c)と注入口(101b)とを有している、冷媒を圧縮するための圧縮機(101)、第一熱交換器(102)、主膨張機構(103)、及び第二熱交換器(104)と、
第一側(112a)が前記第一熱交換器と前記主膨張機構との間の前記冷媒流路に接続されており、第二側(112b)が前記圧縮機の前記注入口に接続されているガスインジェクション弁(112)と、
第一側(111a)が前記第一熱交換器と前記主膨張機構との間の前記冷媒流路に接続されており、第二側(111b)が前記第二熱交換器と前記圧縮機の吸込口との間の前記冷媒流路に接続されている液インジェクション弁(111)と、
少なくとも部分的に気相である冷媒を、前記圧縮機に前記注入口を通じて注入するよう前記ガスインジェクション弁(112)を動作させ、実質的に液相の冷媒を前記圧縮機に前記圧縮機の吸込口を通じて注入するよう前記液インジェクション弁(111)を動作させるコントローラ(130)と、
前記圧縮機の前記吸込口と前記注入口との間に接続される低圧バイパス弁(113)と、を備え
るヒートポンプであって、
前記コントローラ(130)は、前記圧縮機の前記吸込口と前記注入口との間で圧力を均等にするよう前記低圧バイパス弁(113)を動作させ、
前記コントローラ(130)は、前記液インジェクション弁(111)と、前記低圧バイパス弁(113)と、前記ガスインジェクション弁(112)と、を開き、前記ヒートポンプを第四モードで動作させる、
ヒートポンプ。
【請求項9】
冷媒流路(120)に配置される、吸込口(101a)と圧縮口(101c)と注入口(101b)とを有している、冷媒を圧縮するための圧縮機(101)、第一熱交換器(102)、主膨張機構(103)、及び第二熱交換器(104)と、
第一側(112a)が前記第一熱交換器と前記主膨張機構との間の前記冷媒流路に接続されており、第二側(112b)が前記圧縮機の前記注入口に接続されているガスインジェクション弁(112)と、
第一側(111a)が前記第一熱交換器と前記主膨張機構との間の前記冷媒流路に接続されており、第二側(111b)が前記第二熱交換器と前記圧縮機の吸込口との間の前記冷媒流路に接続されている液インジェクション弁(111)と、
少なくとも部分的に気相である冷媒を、前記圧縮機に前記注入口を通じて注入するよう前記ガスインジェクション弁(112)を動作させ、実質的に液相の冷媒を前記圧縮機に前記圧縮機の吸込口を通じて注入するよう前記液インジェクション弁(111)を動作させるコントローラ(130)と、
前記圧縮機の前記吸込口と前記注入口との間に接続される低圧バイパス弁(113)と、
第一側(114a)が前記圧縮機の圧縮口と前記第一熱交換器との間の前記冷媒流路に接続されており、第二側(114b)が前記主膨張機構と前記第二熱交換器との間の前記冷媒流路に接続されているホットガスバイパス弁(114)と、
を備え
るヒートポンプであって、
前記コントローラ(130)は、前記圧縮機の前記吸込口と前記注入口との間で圧力を均等にするよう前記低圧バイパス弁(113)を動作させ、
前記コントローラ(130)は、前記冷媒が、前記圧縮機の圧縮口から、前記主膨張機構と前記第二熱交換器との間の前記冷媒流路へと通ることができるよう、前記ホットガスバイパス弁(114)を動作させ、
前記コントローラ(130)は、前記液インジェクション弁(111)と、前記ガスインジェクション弁(112)と、前記低圧バイパス弁(113)と、前記ホットガスバイパス弁(114)と、を開き、前記ヒートポンプを第五モードで動作させる、
ヒートポンプ。
【請求項10】
前記冷媒流路を流れる冷媒の流れを反転させる、前記圧縮機の前記圧縮口と、前記第一熱交換器と、前記第二熱交換器と、前記圧縮機の前記吸込口との間を接続する四方反転弁(110)と、
前記冷媒流路を通る前記冷媒の流れを反転させる場合に、前記主膨張機構を通る回路を前記冷媒が一方向にのみ流れることができるよう、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間に接続される流れ制御要素(108)と、
を更に備える、
請求項1から9のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【請求項11】
前記圧縮機に電流を供給するためのインバータを有するPCBを冷却するよう、前記第一熱交換器と前記主膨張機構との間に接続されるPCB冷却要素(107)を更に備える、
請求項1から10のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【請求項12】
前記冷媒はハイドロフルオロカーボン冷媒である、
請求項1から11のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒートポンプに関し、特に、冷媒流路に配置される、冷媒を圧縮するための圧縮機と、利用側熱交換器と、主膨張機構と、熱源側熱交換器とを有するヒートポンプであって、さらに液インジェクション弁とガスインジェクション弁とを有しているヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプは、熱源からヒートシンクに熱エネルギーを移動させる装置である。汎用的なヒートポンプは周知であり、空調、冷蔵庫、家庭用暖房または家庭用温水等の家庭内用途において多く利用されている。汎用的なヒートポンプは一般的に、冷媒流路に配置される、圧縮機、利用側熱交換器、膨張機構及び熱源側熱交換器を有し、冷媒流路では、冷媒としても知られている媒体がこれらの構成要素を通って循環し、これにより、熱源側熱交換器から利用側熱交換器に熱を移動させる。ヒートポンプは、加熱専用ヒートポンプ、加熱・冷却両用ヒートポンプまたは冷却専用ヒートポンプを実現できる。加熱専用ヒートポンプにおいては、利用側熱交換器は凝縮器として機能し、熱源側熱交換器は蒸発器として機能する。加熱・冷却両用ヒートポンプにおいては、加熱モードでは利用側熱交換器は凝縮器として機能するとともに熱源側熱交換器は蒸発器として機能し、冷却またはデフロストモードでは利用側熱交換器は蒸発器として機能するとともに熱源側熱交換器は凝縮器として機能する。冷却専用ヒートポンプにおいては、利用側熱交換器は蒸発器として機能し、熱源側熱交換器は凝縮器として機能する。
【0003】
ヒートポンプの性能係数は、必要な仕事に対する利用できる熱の比として定義される。特に利用側を加熱する場合(例えば加熱専用ヒートポンプ、または加熱・冷却両用ヒートポンプにおける加熱モードの場合)、性能係数は、利用側と熱源側との間の温度差によって変わり、その温度差が大きいほどヒートポンプの性能係数は低くなる。このことは、熱源側の周囲温度(例えば室外温度)が低い場合、例えば冬には、利用側を必要な温度とするためには、ヒートポンプの圧縮機をより大きい容量で動作させる必要があることを意味する。同様の考察は、冷却専用ヒートポンプにおいて利用側を冷却する場合または加熱・冷却両用ヒートポンプにおける冷却モードの場合にも当てはまる。
【0004】
圧縮機の容量を増加させてヒートポンプの性能係数を高めるために、圧縮プロセスまでの途中に、ガス冷媒が圧縮機に注入される「ガスインジェクション」プロセスを用いるヒートポンプがある。しかしながら、ガスインジェクションの量を増加すると、圧縮機の負荷も増加することになる。広い動作範囲が必要な状況においては(つまり利用側と熱源側との間の温度差が大きい状況においては)、圧縮機の容量要求を満たすためにガスインジェクションの量を増加することによって、過負荷により圧縮機が破損してしまうおそれがある。
【0005】
以上の観点から、圧縮機の破損を防止しながら広い動作範囲で動作可能とするようヒートポンプを改良することが求められている。
【発明の要約】
【0006】
本開示の一の面において、冷媒流路に配置される、冷媒を圧縮するための圧縮機と、第一熱交換器と、主膨張機構と、第二熱交換器と、を備えるヒートポンプを開示する。圧縮機は、吸込口と、圧縮口と、注入口と、有する。ヒートポンプは、第一側が第一熱交換器と主膨張機構との間の冷媒流路に接続されており、第二側が圧縮機の注入口に接続されている、ガスインジェクション弁を更に備える。ヒートポンプは、第一側が第一熱交換器と主膨張機構との間の冷媒流路に接続されており、第二側が第二熱交換器と圧縮機の吸込口との間の冷媒流路に接続されている液インジェクション弁を更に備える。ヒートポンプは、コントローラを更に備える。コントローラは、少なくとも部分的に気相である冷媒を、圧縮機に注入口を通じて注入するようガスインジェクション弁を動作させる。コントローラは、さらに、実質的に液相の冷媒を圧縮機に圧縮機の吸込口を通じて注入するよう液インジェクション弁を動作させる。先に記載した通り、本開示は種々のヒートポンプに適用できる。一の態様においては、本開示の基本思想を、利用側が加熱であるもの(つまり加熱専用ヒートポンプ)に、または加熱・冷却両用ヒートポンプの加熱モードに適用できる。いずれの場合も、第一熱交換器は、加熱専用ヒートポンプにおいてまたは加熱・冷却両用ヒートポンプの加熱モードにおいて凝縮器として機能する利用側熱交換器であり、第二熱交換器は蒸発器として機能する熱源側熱交換器である。加熱・冷却両用ヒートポンプの冷却モードまたはデフロストモードにおいては、プロセスが反転し、利用側熱交換器は蒸発器として機能し、熱源側熱交換器は凝縮器として機能する。以下では、本開示を、基本的に、利用側が加熱であるもの、つまり加熱専用ヒートポンプ、または、加熱・冷却両用ヒートポンプの加熱モードに関して説明する。なお、他の態様においては、本開示の基本思想を、利用側が冷却であるもの、つまり冷却専用ヒートポンプ、または、加熱・冷却両用ヒートポンプの冷却モードにも同様に適用できる。そのような場合には、第一熱交換器が、冷却専用ヒートポンプにおいてまたは加熱・冷却両用ヒートポンプの冷却モードにおいて凝縮器として機能する熱源側熱交換器となり、第二熱交換器は蒸発器として機能する利用側熱交換器となる。したがって、本開示のヒートポンプが動作し、制御が行われるとき、第一熱交換器は、凝縮器して機能しまたは凝縮器であり、第二熱交換器は、蒸発器として機能しまたは蒸発器である。
【0007】
ある態様では、この結果、圧縮機の破損を防止しながら広い動作範囲で動作可能なヒートポンプの改良が得られる。
【0008】
本開示全体を通して、「利用側」の語は、温度を制御する必要があるヒートポンプの側をいう。
【0009】
本開示全体を通して、「熱源側」の語は、温度を制御する必要がないヒートポンプの側をいう。
【0010】
本開示全体を通して、「主膨張機構」の語は、通過する冷媒を膨張させることが可能で、冷媒の圧力を低下させるあらゆる要素をいう。「主膨張機構」を、例えば熱膨張弁とできる。標準的な冷凍サイクルは、四つの構成要素を必要とする。四つの構成要素とは、圧縮機、凝縮器、膨張機構および蒸発器である。本開示において、「主」膨張機構とは標準的な冷凍サイクルにとって必須であるこの膨張機構をいう。
【0011】
本開示全体を通して、「ガスインジェクション弁」の語は、内部を通過する少なくとも部分的に気相である冷媒の流れを制御することができるあらゆる要素をいう。「ガスインジェクション弁」を、例えば熱膨張弁またはソレノイドバルブ(電磁弁)とできる。
【0012】
本開示全体を通して、「液インジェクション弁」の語は、内部を通過する実質的に液相の冷媒の流れを制御することができるあらゆる要素をいう。「液インジェクション弁」を、例えばソレノイドバルブまたは熱膨張弁とできる。
【0013】
本開示全体を通して、「開く」の語は、弁が第一状態から第二状態に開くプロセスをいい、弁は、第一状態より第二状態においてより開いた状態にある。第一状態は、弁を完全に閉じた状態とでき、または部分的に開いた状態とできる。第二状態は、弁を部分的に開いた状態とでき、または完全に開いた状態とできる。
【0014】
本開示全体を通して、「閉じる」の語は、弁が第三状態から第四状態に閉じるプロセスをいい、弁は、第三状態より第四状態においてより閉じた状態にある。第四状態は、弁を完全に閉じた状態とでき、または部分的に開いた状態とできる。第三状態は、弁を部分的に開いた状態とでき、または完全に開いた状態とできる。
【0015】
ヒートポンプは、さらに、利用側熱交換器から流出する冷媒とガスインジェクション弁から流出し圧縮機の注入口に流入する冷媒との間で熱を交換するよう構成されるエコノマイザ熱交換器を備えてもよい。
【0016】
ある態様においては、これにより、ガスインジェクションおよび液インジェクションにおいて用いられるガス冷媒および液冷媒を効率的に生成できる。
【0017】
ヒートポンプは、取入口、ガス出口、及び液出口を有し、利用側熱交換器と主拡張機構との間に接続される気液分離器を更に有してもよい。ヒートポンプは、利用側熱交換器と気液分離器の取入口との間に接続される副拡張機構を更に有してもよい。ガスインジェクション弁の第一側を、気液分離器のガス出口に接続してもよい。液インジェクション弁の第一側を、気液分離器の液出口と主拡張機構との間の冷媒流路に接続してもよい。
【0018】
ある態様においては、これにより、ガスインジェクション弁および液インジェクションにおいて用いられるガス冷媒および液冷媒を効率的に分離できる。
【0019】
ヒートポンプは、圧縮機の圧縮口から出てくる冷媒の吐出温度を検出するための温度検出器を更に備えてもよい。コントローラは、吐出温度が第一閾値を超える場合に、ガスインジェクション弁を開いてヒートポンプを第一モードで動作させてもよい。
【0020】
ある態様においては、これにより、冷媒の量を増やして圧縮機の容量を増加することができる。ある態様においては、これにより、さらに、圧縮機を冷却でき、圧縮機の圧縮口における冷媒の温度を下げることができ、そしてヒートポンプの性能係数を向上できる。
【0021】
ヒートポンプは、圧縮機負荷検出装置を更に備えてもよい。コントローラを、圧縮機の負荷が第二閾値を超える場合に、ガスインジェクション弁の開度を制限してもよい。
【0022】
ある態様においては、これにより、圧縮機の過負荷を防止でき、したがって、圧縮機の過負荷による破損を防止できる。
【0023】
コントローラは、冷媒の吐出温度が第三閾値を超える場合に、液インジェクション弁を開いてヒートポンプを第二モードで動作させてもよい。第三閾値は第一閾値より高くできる。
【0024】
ある態様においては、これにより、圧縮機をより大きい容量で動作させることができ、そして、ヒートポンプは過負荷による圧縮機の破損を防止しながらより広い動作範囲で動作できる。
【0025】
ヒートポンプは、熱源側熱交換器と圧縮機の吸込口との間に接続されるアキュムレータを更に備えてもよい。液インジェクション弁の第二側を、アキュムレータと圧縮機の吸込口との間の冷媒流路に接続できる。
【0026】
ある態様においては、これにより、液冷媒が蒸発器から圧縮機の吸込口に入ることを防止できる。ある態様においては、これにより、さらに、液冷媒が液インジェクション弁から圧縮機の吸込口に入ることができ、圧縮機を冷却できる。
【0027】
本開示全体を通して、「アキュムレータ」という語は、液冷媒を集め、かつ、ガス冷媒が通過できる要素をいう。
【0028】
ヒートポンプは、圧縮機の吸込口と注入口との間に接続される低圧バイパス弁を更に有してもよい。コントローラは、圧縮機の吸込口と注入口との間で圧力を均等にするよう低圧バイパス弁を動作させてもよい。
【0029】
ある態様においては、これにより、圧縮機を通る冷媒の逆流を防止し、圧縮機内の冷媒の漏れを防止できる。
【0030】
本開示全体を通して、「低圧バイパス弁」という語は、内部を通過する液相および気相の冷媒の流れを制御することができる要素をいう。「低圧バイパス弁」を、例えばソレノイドバルブとできる。
【0031】
コントローラは、液インジェクション弁と、低圧バイパス弁と、を開き、ガスインジェクション弁を閉じ、ヒートポンプを第三モードで動作させてもよい。
【0032】
ある態様においては、これにより、圧縮機の吐出温度と圧縮機電流とをより制御できる。
【0033】
コントローラは、液インジェクション弁と、低圧バイパス弁と、ガスインジェクション弁と、を開き、ヒートポンプを第四モードで動作させてもよい。
【0034】
ある態様においては、これにより、圧縮機の容量範囲を大きくしながら、圧縮機を保護できる。
【0035】
ヒートポンプは、第一側が圧縮機の圧縮口と利用側熱交換器との間の冷媒流路に接続されており、第二側が主拡張機構と熱源側熱交換器との間の冷媒流路に接続されているホットガスバイパス弁を更に備えてもよい。コントローラは、冷媒が、圧縮機の圧縮口から、主膨張機構と熱源側熱交換器との間の冷媒流路へと通ることができるよう、ホットガスバイパス弁を動作させてもよい。
【0036】
ある態様においては、これにより、熱いガス冷媒が熱源側熱交換器を通過でき、熱源側熱交換器のデフロストに役立つ。
【0037】
本開示全体を通して、「ホットガスバイパス弁」という語は、内部を通過する液相および気相の冷媒の流れを制御することができる要素をいう。「ホットガスバイパス弁」を、例えばソレノイドバルブとできる。
【0038】
コントローラは、液インジェクション弁と、ガスインジェクション弁と、低圧バイパス弁と、ホットガスバイパス弁と、を開き、ヒートポンプを第五モードで動作させてもよい。
【0039】
ある態様においては、これにより、容量サイクル範囲を非常に大きくできる。ある態様においては、これにより、非常に低い容量が必要とされる場合であっても、圧縮機を通常の負荷で動作させ続けることができる。
【0040】
ヒートポンプは、冷媒流路を通る冷媒の流れを反転させる、圧縮機の圧縮口と、利用側熱交換器と、熱源側熱交換器と、圧縮機の吸込口と、の間を接続する四方反転弁を更に有してもよい。ヒートポンプは、冷媒流路を通る冷媒の流れを反転させる場合に、主拡張機構を通る回路を冷房が一方向にのみ流れることができるよう、利用側熱交換器と熱源側熱交換器との間に接続される流れ制御要素を備えてもよい。
【0041】
ある態様においては、これにより、利用側を加熱と冷却とができる両用ヒートポンプとできる。
【0042】
本開示全体を通して、「流れ制御要素」という語は、冷媒流路に一方向にのみ冷媒を流すことができる要素をいう。「流れ制御要素」を、例えば、ブリッジ配置で配置される複数の逆止弁とできる。
【0043】
ヒートポンプは、圧縮機に電流を供給するためのインバータを有するPCBを冷却するよう、利用側熱交換器と主膨張機構との間に接続されるPCB冷却要素を更に備えてもよい。
【0044】
ある態様においては、これにより、圧縮機の電流を供給するPCBをより効率的に冷却できる。ある態様においては、これにより、さらに、圧縮機がより大きい電流でそしてより大きい容量で動作することができる。
【0045】
液インジェクション弁の第一側を、エコノマイザ熱交換器と主膨張機構との間の冷媒流路に接続してもよい。
【0046】
ある態様においては、これにより、液インジェクション弁を通過して、圧縮機の吸込口へと入る液冷媒を、過冷却することができる。
【0047】
冷媒は、ハイドロフルオロカーボン冷媒であってもよい。
【0048】
冷媒は、例えばR32とできる。
【0049】
本開示をより理解しやすくし、それがどのように効果的になされるかを、単なる例示として、参照を添付図面と共に示す。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、本開示の第一実施態様にかかるヒートポンプの概略図を示す。
【
図2】
図2は、標準的な冷凍サイクルの動作を行う本開示の第一実施態様にかかるヒートポンプの概略図を示す。
【
図3】
図3は、標準的な冷凍サイクルの動作を行うヒートポンプの圧力-エンタルピー図を示す。
【
図4】
図4は、第一モードの動作を行う本開示の第一実施態様にかかるヒートポンプの概略図を示す。
【
図5A】
図5Aは、第一モードの動作を行うヒートポンプの圧力-エンタルピー図を示す。
【
図5B】
図5Bは、ガスインジェクションの量が減少する状況で第一モードの動作を行うヒートポンプの圧力-エンタルピー図を示す。
【
図6】
図6は、第二モードの動作を行う本開示の第一実施態様にかかるヒートポンプの概略図を示す。
【
図7】
図7は、第二モードの動作を行うヒートポンプの圧力-エンタルピー図を示す。
【
図8】
図8は、第三モードの動作を行う本開示の第一実施態様にかかるヒートポンプの概略図を示す。
【
図9】
図9は、第四モードの動作を行う本開示の第一実施態様にかかるヒートポンプの概略図を示す。
【
図10】
図10は、第五モードの動作を行う本開示の第一実施態様にかかるヒートポンプの概略図を示す。
【
図11】
図11は、本開示の第二実施態様にかかるヒートポンプの概略図を示す。
【
図12】
図12は、第二モードの動作を行う本開示の第二実施態様にかかるヒートポンプの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、本開示の第一実施態様にかかるヒートポンプ100の概略図を示す。ヒートポンプ100は、家庭用温水供給機に用いられる例を示しているが、他の多くの用途にも適用できる。ヒートポンプ100は、冷媒流路120に接続される、圧縮機101と、利用側熱交換器102と、主膨張機構103と、熱源側熱交換器104と、を有する。冷媒は冷媒流路を通って流れ、熱源側と利用側との間で熱エネルギーを運ぶ。例えば、冷媒は好ましくはR32などのハイドロフルオロカーボンである。本明細書のなかで、以前から用いられている冷媒(特にR410A)と比較して、R32は吐出温度を非常に高くなり得ることを強調しておく。
【0052】
ヒートポンプ100は、さらに、液インジェクション弁111と、ガスインジェクション弁112と、低圧バイパス弁113と、ホットガスバイパス弁114と、エコノマイザ熱交換器105と、四方反転弁(フォーウェイ・リバーシング・バルブ)110と、流れ制御要素108と、アキュムレータ106と、PCB冷却要素107とを有する。
【0053】
四方反転弁110は、圧縮機101の圧縮口101cと、利用側熱交換器102と、圧縮機101の吸込口101aと、熱源側熱交換器104との間に接続される。ブリッジ配置される四つの逆止弁を有する流れ制御要素108は、冷媒が主膨張機構103を通る一方向の回路(ループ)を流れることができるよう、利用側熱交換器102と熱源側熱交換器104との間に接続される。PCB冷却要素107およびエコノマイザ熱交換器105は、この一方向冷却ループ内に接続される。液インジェクション弁111の第一側111aは、利用側熱交換器102と主膨張機構103との間の冷媒流路に接続され、好ましくは、PCB冷却要素107とエコノマイザ熱交換器105との間の冷媒流路に接続される。液インジェクション弁111の第二側111bは、アキュムレータ106と圧縮機101の吸込口101aとの間の冷媒流路に接続される。ガスインジェクション弁112の第一側112aは、利用側熱交換器102と主膨張機構103との間の冷媒流路に接続され、好ましくはPCB冷却要素107と主膨張機構103との間の冷媒流路に接続される。ガスインジェクション弁112の第二側112bは、エコノマイザ熱交換器105を通じて圧縮機のガス注入口101bに接続される。低圧バイパス弁113は、圧縮機101の吸込口101aと注入口101bとの間に接続される。ホットガスバイパス弁114の第一側114aは、圧縮機101の圧縮口101cと四方反転弁110との間の冷媒流路に接続される。また、ホットガスバイパス弁114の第二側114bは、主膨張機構103と熱源側熱交換器104との間の冷媒流路に接続される。
【0054】
一例として、圧縮機101を半密閉型スクリューコンプレッサとできる。圧縮機101は、吸込口101aと、注入口101bと、圧縮口101cと、を有する。冷媒は、吸込口101aを通じて圧縮機101に入って、そこで二つの交互配置(インターリービング)スクロールによって高温高圧へと圧縮され、そして、圧縮口101cを通じて圧縮機101から流出する。また、冷媒は、圧縮プロセスまでの途中にある注入口101bを通じても圧縮機101に流入することができる。注入口101bは、吸込口101aが圧縮口101cに対して配置されるよりも、圧縮口101cの近くに配置されている。
【0055】
利用側熱交換器102をプレート熱交換器とできるが、他のあらゆる適当な熱交換器とすることもできる。利用側熱交換器102は、ヒートポンプ100の温度制御を必要とする側を加熱または冷却できる。この場合、利用側熱交換器102は家庭用温水供給機200を加熱または冷却する。
【0056】
主膨張機構103は熱膨張弁である。主膨張機構103を通って流れる液冷媒は、気液混合冷媒へと膨張し、これにより、冷媒の圧力および温度が低下する。主膨張機構103は、内部を通る冷媒の流量を制御するよう開閉できる。
【0057】
熱源側熱交換器104は、ヒートポンプ100の温度制御を必要としない側と熱を交換する。本実施態様において、その熱は、周囲の外気から直接取り出すことができる。熱交換器は多数のコイルを有しており、そして、熱交換器104を通過する空気の流れを増加させるためにファン109が用いられ、これにより、伝熱率が向上する。あるいは、その熱を、地面または水を熱源として直接取り出すことができ、この場合、熱源側の温度における温度変化をより小さくできる。
【0058】
ヒートポンプ100は、冷媒流路120を通る冷媒の流れを制御するために複数の弁を有する。
【0059】
弁は、コントローラ130に接続され、コントローラに従って動作する。コントローラ130を、特定の構成でヒートポンプ100の弁を開閉するようにプログラムされるもしくは構成される汎用コンピュータまたはマイクロチップとでき、これにより、ここに記載する通り、種々の要求に最も適した複数の種々のモードでヒートポンプ100を動作させることができる。
【0060】
四方反転弁110を、冷媒流路120を通る冷媒の流れを反転させるよう制御することができる。したがって、四方反転弁110は、利用側熱交換器102を加熱と冷却との間で切り換えることができる。
【0061】
利用側熱交換器102が加熱モードとなるよう四方反転弁110が切り換えられると、四方反転弁110は、冷媒を圧縮機101の圧縮口101cから利用側熱交換器102へと向かわせ、その後、熱源側熱交換器104から流出する冷媒を圧縮機の吸込口101aへと戻るよう向かわせる。この加熱モードにおいては、利用側熱交換器102は高温のガス冷媒を受けて凝縮器として機能し、熱源側熱交換器104は低温の気液混合冷媒を受けて蒸発器として機能する。ここで記載する動作モードは、主に利用側熱交換器102の加熱に関係する。
【0062】
一方、利用側熱交換器102が冷却モードとなるよう四方反転弁110が切り換えられると、四方反転弁110は、冷媒を圧縮機101の圧縮口101cから熱源側熱交換器104へと向かわせ、その後、利用側熱交換器102から出てくる冷媒を圧縮機の吸込口101aへと戻るよう向かわせる。この冷却モードにおいては、熱源側熱交換器104は圧縮機101の圧縮口101cからの高温のガス冷媒を受けて凝縮器として機能し、利用側熱交換器102は低温の気液混合冷媒を受けて蒸発器として機能する。このモードは、熱源側の周囲温度(室外温度)が非常に低い場合には、熱源側熱交換器104から霜を取り除くのにも有用である。
【0063】
アキュムレータ106は、四方反転弁110と圧縮機101の吸込口との間に接続される。アキュムレータ106は、蒸発器において気化しなかった液冷媒を回収する装置であり、このような液冷媒が圧縮機101の吸込口101aに入ってしまうのを防止する。アキュムレータ106に回収された液冷媒を気化させるために、熱源をアキュムレータ106に設置することもできる。
【0064】
PCB冷却要素107は、圧縮機に電流を供給するためのインバータを収容するプリント基板(PCB)を冷却するために用いられる。特に圧縮機が大きな負荷で動作している場合、多くの電流がインバータを流れているので、多くの熱がPCBに発生する。インバータを収容しているPCBに接するまたは近接しているPCB冷却要素107を通るよう、低温の実質的に液相である冷媒を流すことによって、PCB冷却要素107は過剰な熱を除去する。PCB冷却要素107は、ヒートポンプ100の機能にとって必須ではなく、PCBから熱を除去する他の方法、例えば従来のヒートシンクとファンとの組み合わせを、用いることができる。
【0065】
液インジェクション弁111を、内部を通る実質的に液相である冷媒の流れを制御するのに適したあらゆる弁とできる。本実施態様においては、液インジェクション弁111はソレノイドバルブ等のオン/オフ・バルブである。また、液インジェクション弁111を、例えば、熱膨張弁等の可変流量制御弁とできる。液インジェクション弁111はコントローラ130に従って動作する。その場合、液インジェクション弁111が開くと、利用側熱交換器102から実質的に液相である冷媒は、液インジェクション弁111を通って圧縮機101の吸込口101aへと流入することになる。このプロセスを「液インジェクション」と呼ぶことにする。
【0066】
ガスインジェクション弁112の第一側112aは、利用側熱交換器102と主膨張機構103との間に冷媒流路に接続される。ガスインジェクション弁112の第二側112bは、圧縮機101の注入口101bに接続される。ガスインジェクション弁112を、内部を通る気液混合冷媒の流れを制御できるあらゆる弁とできる。ガスインジェクション弁112を、例えば、ソレノイドバルブ等のオン/オフ・バルブまたは熱膨張弁等の流量制御弁とできる。本実施態様においては、ガスインジェクション弁112は熱膨張弁である。ガスインジェクション弁112はコントローラ130に従って動作する。ガスインジェクション弁112が開くと、利用側熱交換器102からの液冷媒は、ガスインジェクション弁112を通って流れ、そして膨張して低温低圧の気液混合冷媒となる。その後、少なくとも部分的に気相である冷媒が圧縮機101の注入口101bへと流入することになる。このプロセスを「ガスインジェクション」と呼ぶことにする。
【0067】
第一入力が利用側熱交換器102に接続されるとともに第二入力がガスインジェクション弁112に接続されるよう、エコノマイザ熱交換器105は配置される。したがって、エコノマイザ熱交換器105は、利用側熱交換器102から流出する高温の液冷媒とガスインジェクション弁112から流出するものより低温の少なくとも部分的に気相の冷媒との間で熱を交換するように構成される。これにより、利用側熱交換器102からの液冷媒が過冷却される効果が得られる。その結果、「液インジェクション」を通じて圧縮機101の吸込口101aに流入できる液インジェクション弁111の第一側111aにおける冷媒が、利用側熱交換器102から流出する液冷媒より冷える。また、ガスインジェクション弁112からの冷媒は加熱され、圧縮機101のガス注入口101bに流入する冷媒は、ほぼ飽和ガス状態にある。
【0068】
低圧バイパス弁113は、圧縮機101の吸込口101aと注入口101bとの間に接続される。低圧バイパス弁113を、内部を通過する液相および気相の冷媒の流れを制御するよう動作可能なあらゆるタイプの弁とできる。本実施態様においては、低圧バイパス弁113は、コントローラ130に従って動作するソレノイドバルブである。低圧バイパス弁113が開くと、圧縮機101の吸込口101aと注入口101bとの間で圧力が均圧化される。これにより、圧縮機101を通じた冷媒の逆流を防止でき、圧縮機101内の漏れを最小限にできる。
【0069】
ホットガスバイパス弁114の第一側114aは、圧縮機101の圧縮口101cと利用側熱交換器102との間の冷媒流路に接続される。また、ホットガスバイパス弁114の第二側114bは、主膨張機構103と熱源側熱交換器104との間の冷媒流路に接続される。ホットガスバイパス弁114もまたコントローラ130に従って動作する。ホットガスバイパス弁114が開くと、圧縮機101の圧縮口101cからの高温のガス冷媒は、熱源側熱交換器へと直接通過できる。これは特に、熱源側の周囲温度が非常に低い場合に、熱源側熱交換器104のベースプレートから霜を取り除くのに、また同様に熱源側熱交換器104それ自体から霜を取り除くのにも有用である(詳細は欧州特許出願番号EP19161608.5(欧州特許出願公開第3705811号明細書(EP3705811A1)))を参照することで当業者には理解されよう)。
【0070】
図2は、標準的な冷凍サイクルの動作を行う
図1のヒートポンプ100を通る冷媒の流れを示す。この場合、コントローラ130は、液インジェクション弁111と、ガスインジェクション弁112と、低圧バイパス弁113と、ホットガスバイパス弁114とを閉じるよう構成されている。高温のガス冷媒は、圧縮機101の圧縮口101cから流出し、利用側熱交換器102に流入する。利用側熱交換器102では、そのプロセスにおいて、高温のガス冷媒が、この熱交換器の他方において、水を加熱し、そして凝縮する。冷えた液冷媒は、利用側熱交換器102から流出し、流れ制御要素108とPCB冷却要素107を通って流れ、その後、主膨張機構103において膨張し、気液混合冷媒となる。冷媒のこの膨張には、冷媒の圧力低下と温度低下が伴う。その後、低温の気液混合冷媒は熱源側熱交換器104に流入し、そこで残りの液は蒸発し、その後、アキュムレータ106を通過するときにそこで余剰な液冷媒が回収されて、圧縮機101の吸込口101aへと戻る。その後、冷媒が圧縮機101の圧縮口101cを通って圧縮機101から流出する前に、圧縮機101はガス冷媒を高温高圧に圧縮する。
【0071】
図3は、
図2に示したヒートポンプの動作の理想化された圧力-エンタルピー(p-h)図を示す。グラフのY軸は冷媒の圧力を表し、X軸は冷媒のエンタルピーを表す。破線は等温線を表す。
図3に示す通り、冷媒の圧縮は、圧力を増加させると同時に冷媒の温度とエンタルピーとを増加させる。圧縮の際のエンタルピーの増加は、圧縮機101によって系内になされる仕事である。利用側熱交換器102における冷媒の凝縮の際に、冷媒は一定の圧力のままであるが、冷媒は熱を失い、したがってエンタルピーと温度とが低下する。主膨張機構103による冷媒の断熱膨張は、一定のエンタルピーで冷媒の温度と圧力とを低下させる。最後に、冷媒は熱源側熱交換器104において蒸発し、冷媒のエンタルピーを増加させる。
【0072】
図4は、ここでは「ガスインジェクション弁モード」と呼ぶ第一モードの動作を行う
図1のヒートポンプを示す。
【0073】
ヒートポンプ100は、さらに、「圧縮機吐出温度」として知られている圧縮機101の圧縮口101cから流出する冷媒の温度を検出可能な温度検出器401を有する。温度検出器401を、冷媒がまさに圧縮機101から流出しようとする圧縮機101内の位置に配置でき、または、圧縮機101のすぐ外部において冷媒が流れる配管に取り付けられるように配置できる。温度検出器401を、冷媒の温度を正確に測定することができるあらゆる装置とでき、例えばサーミスタとできる。温度検出器401は、コントローラ130に接続されるとともに、圧縮機101の圧縮口101cから流出する冷媒の温度をコントローラ130へと出力するように構成される。
【0074】
ヒートポンプは100、さらに、コントローラ130に接続される圧縮機負荷検出装置を有する。圧縮機負荷検出装置は、圧縮機負荷を検出するためにモータ・トルク、圧縮機の入力電力または出力のうちの一つ以上を測定し、その値をコントローラ130に出力する。
【0075】
熱源側の外部周囲温度が低く、かつ利用側で高温が必要とされる場合、圧縮機の容量を増加させてヒートポンプの性能係数を向上するために、「ガスインジェクションモード」を用いることができる。
【0076】
熱源側の周囲温度が低い場合でも利用側に高い温度を提供するために、圧縮機101の容量を増加させる。これにより、圧縮機101の負荷も増加することになり、したがって圧縮機101の圧縮口101cから流出する冷媒の温度を上げることができる。コントローラ130は、圧縮機101の圧縮口101cから出てくる冷媒の温度を監視するよう構成されており、温度が第一閾値を超える場合には、コントローラ130が、ヒートポンプを第一モードで動作させるためにガスインジェクション弁112を開く。
【0077】
この第一モードにおけるヒートポンプ100を通る冷媒の流れを
図4に示す。
図2と同様に、冷媒は圧縮機101において高温高圧に圧縮され、その後、利用側熱交換器102内へと流れ込みそこで冷媒は凝縮する。その後、液冷媒は、利用側熱交換器102から流出し、そして流れ制御要素108を通ってエコノマイザ熱交換器105へと流れ込む。そこで、冷媒は、エコノマイザ熱交換器105の下流側から抜き取られガスインジェクション弁112を通過した冷媒と熱を交換する。ガスインジェクション弁112は、冷媒を低温低圧の気液混合冷媒へと膨張させることができる可変熱膨張弁である。したがって、ガスインジェクション弁112からのより低温の気液混合冷媒は、利用側熱交換器102から来るより高温の液冷媒と熱を交換する。これにより、気液混合冷媒は加熱されてほぼ飽和状態のガス冷媒となり、同時に、利用側熱交換器102からのより熱い液冷媒は過冷却される。
【0078】
その後、残りの液冷媒は、主膨張機構103を通過しそこで気液混合冷媒へと膨張し、そして残りの液冷媒が蒸発する熱源側熱交換器104と、アキュムレータ106と、を通って圧縮機101の吸込口101aへと戻る。
【0079】
エコノマイザ熱交換器105から出てくるほぼ飽和状態にあるガス冷媒は、圧縮機101の注入口101bに流入する。圧縮機101の注入口101bは、圧縮機の圧縮ステージまでの途中に位置する。したがって、注入口101bを通じて流入するガス冷媒は、吸込口101aからの冷媒が既に部分的に圧縮されている圧縮機101のステージに入ることになる。したがって、「ガスインジェクション弁」モードでは、圧縮プロセスを二つのステージに分割することによって、圧縮機101が必要な仕事の量を低減し、これにより、蒸発器に入るガス冷媒の量を低減し、したがって、圧縮機101の容量とヒートポンプ100の性能係数を増加できる。
【0080】
図5Aは、上述した第一モードの動作の理想化された圧力-エンタルピー(p-h)チャートを示す。
【0081】
グラフは、上述した
図3に示したものと同様である。グラフは、さらに、圧縮機101のガス注入口101bに注入される「ガスインジェクション」冷媒を表す線を示している。ガスインジェクション冷媒は、凝縮圧力と蒸発圧力との間の中間圧力へと膨張して、圧縮プロセスまでの途中に注入されることが分かるであろう。このことは、圧縮プロセスを二つのステージに分割し、単位質量の冷媒を必要な圧力へと圧縮するのに圧縮機101が必要とする仕事の量を低減する効果がある。圧縮機が行う仕事の量の低減をΔWとして示している。また、エコノマイザ熱交換器105は、主膨張機構103に流入する液冷媒を過冷却する。主膨張機構103を通って膨張し、次に熱源側熱交換器104に入って蒸発する冷媒は、ガスインジェクションのないモードよりもエンタルピーを小さくできる。したがって、冷媒は、ΔQとして示すように、より多くの熱を取り出すことができる。ヒートポンプがより多くの熱を利用側熱交換器102に供給することができ、圧縮機101が冷媒を圧縮するのに必要となる仕事が小さくなるので、性能係数は増加する。
【0082】
グラフから分かる通り、ガスインジェクション弁により、圧縮機101の圧縮口101cから流出する冷媒の温度もまた下げることができる。
【0083】
しかしながら、ガスインジェクションの量が増加するにつれて圧縮機101の容量も増加することになり、したがって、単位質量の冷媒を圧縮するためになされる仕事Wが低減されるとしても、圧縮機の負荷も増加することになる。圧縮機101の過負荷を回避し過負荷による破損を回避するために、ある場合にはガスインジェクションの量を制限する必要がある。したがって、コントローラ130は、圧縮機負荷検出装置を通じて圧縮機101の負荷を監視するよう、そして圧縮機101の負荷が第二閾値を超える場合には、ガスインジェクション弁112の開度を制限または低減するよう構成される。
【0084】
図5Bは、ガスインジェクションの量が低減される場合の状況に対する理想化された圧力-エンタルピー(p-h)チャートを示す。グラフは、上述した
図5Aに示したものと同様であるが、ガスインジェクションの量を低減しているので、注入口101bを通じて圧縮機101に流入するガス冷媒は低温低圧である。これにより、圧縮機によって単位質量の冷媒を圧縮するためになされる仕事の量は、
図5Aに対して増加し(つまりΔWは小さくなり)、また、圧縮機101の圧縮口101cから流出する冷媒の温度はΔTとして示すように上昇することになる。
【0085】
しかしながら、圧縮機101に注入されるガス冷媒は減るので、圧縮機101の容量をしたがって負荷を低減できる。
【0086】
図6は、ここでは「組み合わせ液ガスインジェクションモード」と呼ぶ第二モードの動作を行う
図1のヒートポンプを示す。この第二モードでは、コントローラ130は、液インジェクション弁111とガスインジェクション弁112とを開き、低圧バイパス弁113とホットガスバイパス弁114とを閉じるよう構成されている。
【0087】
上述したガスインジェクションモードの際には、コントローラ130は、冷媒の圧縮機吐出温度と圧縮機101の負荷とを連続的に測定し、ガスインジェクション弁112の開度、したがってそれに対応したガスインジェクションの量を調整している。
【0088】
しかしながら、室外周囲温度が非常に低く、かつ、利用側で高温を必要とする場合、大きな容量要求に対応しながら冷媒の圧縮機吐出温度を下げるためにガスインジェクション弁を増加する必要がある。このようなガスインジェクション弁の増加によって、圧縮機101の負荷が増加し、その結果、過負荷により圧縮機が破損するおそれがある。
【0089】
この高温への上昇に対応するために、外部周囲温度が非常に低く、かつ、ヒートポンプの動作範囲を広げる場合に、ヒートポンプ100はこの第二モードで動作する。
【0090】
コントローラ130は、圧縮機101の圧縮口101cから出てくる冷媒の温度と圧縮機101の負荷とを連続的に測定する。吐出温度が第一閾値よりも上昇する場合、ガスインジェクション弁112が開き、これにより、より低温のガス冷媒が注入口101bを通じて圧縮機101に流入することができる。圧縮機101の負荷が第二閾値を超える場合、ガスインジェクション弁112の開度が制限または低減され、したがって、注入されるガス量が制限または低減される。その場合、コントローラ130は、さらに、冷媒の圧縮機吐出温度を監視し、そして、この温度が第三閾値を超えたとき液インジェクション弁111が開いて、ヒートポンプが第二モードで動作する。これにより、低温の液冷媒が圧縮機101の吸込口101aに入ることができ、これにより、圧縮機101を冷却し、そしてまた圧縮機101の容量を増加できる。
【0091】
図6は、第二モードの動作を行うヒートポンプを通って流れる冷媒の経路を示す。冷媒は、高温高圧のガスとして圧縮機101の圧縮口101cから流出し、利用側熱交換器102に流入し、そこで熱が冷媒から家庭用温水供給機に移動し、その結果、冷媒は凝縮する。その後、液冷媒は、流れ制御要素108を通って流れ、そしてエコノマイザ熱交換器105を通り、そこで、利用側熱交換器からの液冷媒はガスインジェクション弁112から流出する部分的に気相の冷媒によってさらに冷却される。この液冷媒の一部は、その後、液インジェクション弁111を通って圧縮機101の吸込口101aへと流入し、これにより、圧縮機101を冷却し、そしてさらなる容量を圧縮機101に与える。また、液冷媒の一部は、エコノマイザ熱交換器105に流入する前に、ガスインジェクション弁112に入って、低温低圧の気液混合冷媒へと膨張する。エコノマイザ熱交換器105では、冷媒はほぼ飽和状態へと加熱される。その後、このほぼ飽和状態にあるガス冷媒は圧縮機101のガス注入口101bへと入り、これにより、圧縮機101の容量を増加するとともにヒートポンプ100の性能係数を向上することができる。残りの液冷媒は、主膨張機構103を通りそこでその冷媒は膨張し、そして熱源側熱交換器104を通りそこで残りの液冷媒は蒸発し、圧縮機101の吸込口101aへと戻るよう流れる。
【0092】
図7は、
図6に関して上で説明した動作の第二動作モードの動作の理想化された圧力-エンタルピー(p-h)チャートを示す。
【0093】
グラフは、第一モードに関して
図5Aに示したものと同様であるが、
図7のグラフはさらに液インジェクション成分を示している。液インジェクション成分は、吸込口101aにおいて圧縮機101に流入する冷媒のエンタルピーを低減する。これにより、ガスを必要な圧力へと圧縮するのに圧縮機101が必要とする単位質量当りの仕事の量をさらに低減できる。また、ΔTとして示すように、冷媒の圧縮機吐出温度も低下する。
【0094】
したがって、全体として、第二モードにおけるヒートポンプの動作では、低圧縮機負荷で低圧縮機吐出温度でありながら、大きい容量が得られる。したがって、ヒートポンプは、大きい動作範囲を達成することができ、熱源側が非常に低い周囲温度であっても過負荷による圧縮機破損を招くことなく、利用側で高い給水温度が得られる。ある場合には、周囲温度が-15℃より低いときでも少なくとも70℃の給水温度を達成できる。
【0095】
図8は、ここでは「液インジェクションモード」と呼ぶ第三モードの動作を行う
図1のヒートポンプを示す。この第三動作モードにおいては、液インジェクション弁111と低圧バイパス弁113とが開いており、ガスインジェクション弁112とホットガスバイパス弁114とが閉じている。
【0096】
冷媒はホットガスとして圧縮機101の圧縮口101cから出ていき、そして利用側熱交換器102に流入し、そこで冷媒は凝縮する。その後、冷媒は、流れ制御要素108を通って流れ、次に、液冷媒の一部は抜き取られて液インジェクション弁111を通るように流れて圧縮機101の吸込口101aに直接流入する。残りの冷媒は、主膨張機構103を通って流れそこで気液混合冷媒へと膨張し、そして実質的に気相の冷媒としてアキュムレータ106を通って流れる前に熱源側熱交換器104に流入してそこで残りの液冷媒は蒸発し、圧縮機101の吸込口101aへと戻る。また、低圧バイパス(迂回)弁113も開いており、圧縮機101の吸込口101aと注入口101bとの間で圧力は均一となる。これにより、圧縮機101を通じた冷媒の逆流を防止でき、したがって、圧縮機101内の冷媒の漏れを防止するのに役立つ。
【0097】
熱源側の周囲温度が高く、圧縮機101の動作に要求される容量が低くてすむ場合には、ヒートポンプ100はこの第三モードで動作する。液インジェクションにより、圧縮口101cを通って圧縮機101から出ていく冷媒の温度を下げることができる。
【0098】
図9は、第四モードの動作を行う
図1のヒートポンプを示す。この第四動作モードにおいては、液インジェクション弁111とガスインジェクション弁112と低圧バイパス弁113がすべて開いており、ホットガスバイパス弁114が閉じている。
【0099】
冷媒は、上記で
図4を参照した第二モードの説明したのと同じような冷媒流路を通って流れる。なお、第四モードにおいては、低圧バイパス弁113も開いている。低圧バイパス弁113を膨張弁として機能させることができ、かつ/または、キャピラリを低圧バイパス弁113の下流側に配置することができ、これにより、膨張を実現し、そしてガスインジェクション弁112とエコノマイザ熱交換器105とを経由して低圧バイパス弁113と任意選択的なキャピラリとを通って吸込口101aに向かって流れている冷媒を少なくとも部分的に液化することができる。したがって、また、ガスインジェクション弁112からの気相の冷媒はどちらの方向でも圧縮機101の吸込口101aを通って入ることになる。その結果、吐出口101cの吐出温度を下げることができ、同時に、低圧バイパス弁113を介して吸込口101aに冷媒をさらに供給することにより圧縮機101の容量を増加させることができる。
【0100】
圧縮機101により大きい容量範囲を与えるのに必要な容量が低い場合、ヒートポンプ100はこの第四モードで動作する。必要な容量が本当に低い場合であっても、圧縮機101が通常負荷で動作できるようヒートポンプ100の性能係数が低減される。これにより、低い容量要求を満たすために圧縮機101がオン/オフを繰り返すことを防止でき、したがって、圧縮機101への変形歪力(ストレイン)を低減でき、その結果、圧縮機の寿命を延ばすことができる。
【0101】
図10は、第五モードの動作を行う
図1のヒートポンプを示す。この第五動作モードにおいては、液インジェクション弁111と、ガスインジェクション弁112と、低圧バイパス弁113と、ホットガスバイパス弁114と、がすべて開いている。
【0102】
このモードにおいては、高温高圧のガス冷媒が圧縮機101の圧縮口101cから湧出する。ガス冷媒の一部は、ホットガスバイパス弁114を通過し、熱源側熱交換器104へと直接入っていく。残りの冷媒は、利用側熱交換器102を通って流れる。その冷媒は利用側熱交換器102において凝縮する。その後、液冷媒は、続いて、流れ制御要素108とエコノマイザ熱交換器105とを通って流れる。エコノマイザ熱交換器105においては、その液冷媒は過冷却される。この液冷媒の一部は抜き取られて、液インジェクション弁111を通って圧縮機101の吸込口101aへと流入する。残りの冷媒の一部は、ガスインジェクション弁112とエコノマイザ熱交換器105とを通って流れ、エコノマイザ熱交換器105においてその冷媒は加熱され、圧縮機101の注入口101bへと流入する。残りの冷媒は、主膨張機構103と熱源側熱交換器104とを通って流れ、熱源側熱交換器104においてその冷媒は蒸発し、圧縮機101の吸込口101aへと戻る。また、低圧バイパス弁113も開いており、これにより、ガスインジェクション弁112からのガス冷媒は圧縮機101の吸込口101aを通って流入することができ、そして熱源側熱交換器104および液インジェクション弁111からの冷媒は、注入口101bを通って流入できる。
【0103】
周囲(室外)温度が高く、吸込密度が増加する場合、この第五モードは特に有用である。その結果、圧縮機101の高圧側(吐出口101c)で圧力を上げることができる。もしも圧力が高くなりすぎる場合には、圧縮機速度を低下させる必要がある。しかし、たとえ回転速度が低くても、高密度のために、圧縮機101には高いトルクが必要である。したがって、圧縮機101の電力消費は増加し、効率は低下する。これを第五モードにおいては回避できる。特に、ホットガスバイパス弁114が加熱動作において開く場合、高圧のガス冷媒は、凝縮器として機能する利用側熱交換器102を迂回し、第一側114aのパイプと弁114と第二側114bのパイプとを介して熱源側熱交換器104に直接供給される。
【0104】
加熱冷却回路における弁をすべて開くことによって、冷媒は効率的に圧縮・膨張しないので、ヒートポンプ100の性能係数は著しく低下する。必要な容量が非常に低い場合、ヒートポンプ100はこの第五モードで動作する。このモードでの動作によって、容量を顕著に低下させ、高温を達成しながら、基本的に、圧縮機101を通常の負荷で動作させ続けることができる。これにより、低い容量要求を満たすために圧縮機101がオン/オフを繰り返すことを防止することによって、必要な容量が非常に低い場合にも圧縮機101を保護することができる。
【0105】
図11は、本開示の第二実施態様にかかるヒートポンプ1100の概略図を示す。
図11に示すヒートポンプ1100は、
図1に示したものと同様であり、同じ構成部品には同じ参照符号を付している。二つのヒートポンプ間の差異は、ヒートポンプ1100がエコノマイザ熱交換器105の代わりに気液分離器1105を有するということにある。
【0106】
気液分離器1105は、取入口1105aとガス出口1105bと液出口1105cとを有する。気液分離器1105は、冷媒の液成分から冷媒のガス成分を分離することができる。ガス冷媒はガス出口1105bを通って気液分離器1105から出ていき、液冷媒は液出口1105cを通って気液分離器1105から出ていく。
【0107】
その後、液冷媒は、続いて主膨張機構103と熱源側熱交換器104とを通って流れて、圧縮機101の吸込口101aへと戻る。
【0108】
ガス冷媒は、ガス出口1105bから出ていき、ガスインジェクション弁1112を通って圧縮機101の注入口101bへと流れ込む。本実施態様においては、ガスインジェクション弁1112はソレノイドバルブ等の簡単なオン/オフ・バルブとできる。
【0109】
ヒートポンプ1100は、さらに、気液分離器1105の取入口1105aの上流側に副膨張機構1103を有する。利用側熱交換器からの液冷媒は、気液分離器1105へと流入する前に、この副膨張機構1103によって気液混合冷媒へと膨張する。副膨張機構1103を可変膨張弁とできる。したがって、圧縮機へのガスインジェクションの量は、副膨張機構1103の開口を制御することにより制御できる。ガスインジェクションは、ガスインジェクション弁1112の開閉を通じてオン/オフすることができる。
【0110】
気液分離器1105の機能は、エコノマイザ熱交換器105の機能と同様であり、気液分離器1105は、圧縮機101の注入口101bに注入される飽和状態のガスを生成するとともに、熱源側熱交換器104へと入っていく過冷却状態の液体を生成する。また、過冷却状態の液体を圧縮機101の吸込口101aへの液インジェクションに用いることもできる。
【0111】
ヒートポンプ1100の他の構成要素は、上記の
図1~
図10を参照して先に説明したものと同様に機能する。
【0112】
また、ヒートポンプ1100は、ヒートポンプ100に関して上で説明したものと同様に第一~第五モードの動作を実行することができる。
【0113】
図12は、第二モードの動作を行う
図11のヒートポンプを示す。ヒートポンプの動作は、基本的に、
図6おおよび
図7に関して説明したものと同様である。
【0114】
液冷媒は、利用側熱交換器102から流出した後、流れ制御要素108を通過し、その後、副膨張機構1103において部分的に膨張して気液混合冷媒となる。その後、ガス冷媒と液冷媒とのこの混合物は気液分離器1105に流入する。液冷媒は、液出口1105cを通って気液分離器1105から流出し、ガス冷媒はガス出口1105bを通って流出する。ガス冷媒は、開いているガスインジェクション弁1112を通過し、圧縮機101の注入口101bへと向かう。液冷媒の一部は、液インジェクション弁111を通過して圧縮機101の吸込口101aへと流入する。残りの液冷媒は、主膨張機構103を通過する。主膨張機構103において、その液冷媒は気液混合冷媒へと膨張する。その後、気液混合冷媒は熱源側熱交換器104を通過する。熱源側熱交換器104において、冷媒の液部分は蒸発する。そして、その後、冷媒は圧縮機101の吸込口101aへと戻るよう流れる。
【0115】
圧力エンタルピー(p-h)チャートは、
図7に示したものと同一であり、気液分離器1105とエコノマイザ熱交換器105とは互いに置き換えて用いることができる。また、ヒートポンプ1100は、ヒートポンプ100に関して上で説明したものと同じ第一~第五モードで動作することができる。
【0116】
種々の変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。
【0117】
圧縮機101は必ずしもスクロール型コンプレッサである必要はない。ロータリ・スクリュー型コンプレッサ、遠心型コンプレッサ、または液・ガスインジェクションに適している他のタイプのコンプレッサとすることができる。
【0118】
圧縮機101を半密閉型または完全半密閉型コンプレッサとすることができる。
【0119】
冷媒をR32以外の物質とすることもできる。例えば、冷媒を、あらゆる適当なハイドロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、炭化水素またはブロモフルオロカーボンとできる。
【0120】
ヒートポンプ100を、冷却(冷房)、加熱(暖房)、換気、空調、家庭用温水供給または産業加熱等のあらゆる適当な用途に用いることができる。
【0121】
ヒートポンプ100はアキュムレータ106を有していなくてもよい。あるいは、ヒートポンプ100は、ガス冷媒と液冷媒とを分離することができる他の要素を有することができる。
【0122】
ヒートポンプ100は、冷媒流路120に接続されるPCB冷却要素107を有していなくてもよい。PCBを、他の能動型または受動型冷却法を通じて冷却できる、または全く冷却しない場合もありえる。例えば、PCBを、ヒートシンクを用いて空気冷却することができる。
【0123】
ヒートポンプ100は、四方反転弁110を有していなくてもよく、利用側が加熱されて利用側熱交換器102は凝縮器として機能する「加熱」モードで常に動作することもできる。
【0124】
利用側熱交換器102はプレート熱交換器とせず、特定用途ヒートポンプに適した他のあらゆるタイプの熱交換器とすることもできる。利用側熱交換器102を、例えば、シェル&チューブ熱交換器、プレート&シェル熱交換器、プレートフィン型熱交換器、ヘリカルコイル熱交換器、スパイラル熱交換器またはHVACコイルとすることができる。
【0125】
熱源側熱交換器104を多数のコイルとせず、特定用途ヒートポンプに適したあらゆるタイプの熱交換器とすることもできる。熱源側熱交換器104を、例えば、シェル&チューブ熱交換器、プレート&シェル熱交換器、プレートフィン型熱交換器、ヘリカルコイル熱交換器、スパイラル熱交換器または平板熱交換器とすることができる。熱源側熱交換器104はファンを有していなくてもよい。
【0126】
流れ制御要素108を、ブリッジ配置される四つの逆止弁とせず、冷媒が主膨張機構103を通る一方向の回路(ループ)を流れることができる他のタイプの要素とすることもできる。例えば、流れ制御要素を四方反転弁とすることもできる。
【0127】
主膨張機構103は熱膨張弁でなくてもよい。主膨張機構を、冷媒の圧力を下げることができ膨張を可能とするあらゆる要素とできる。例えば、主膨張機構103を、キャピラリチューブ等の絞り装置とすることもできる。
【0128】
液インジェクション弁111を、内部を通る実質的に液相の冷媒の流れを制御できるあらゆる弁とできる。ソレノイドバルブ、ゲート弁、ボール弁または蝶形弁(バタフライバルブ)等の簡単なオン/オフ・バルブとすることができる。あるいは、液インジェクション弁111を、例えば、熱膨張弁、プラグバルブ、玉形弁(グローブバルブ)またはダイヤフラムバルブ等の可変バルブとすることもできる。
【0129】
ガスインジェクション弁112を、内部を通る実質的に気相の冷媒の流れを制御できるあらゆる弁とできる。ソレノイドバルブ、ゲート弁、ボール弁または蝶形弁(バタフライバルブ)等の簡単なオン/オフ・バルブとすることができる。あるいは、ガスインジェクション弁112を、例えば、熱膨張弁、プラグバルブ、玉形弁(グローブバルブ)またはダイヤフラムバルブ等の可変バルブとすることもできる。
【0130】
低圧バイパス弁113を、内部を通る気相および液相の冷媒の流れを制御できるあらゆる弁とできる。ソレノイドバルブ、ゲート弁、ボール弁または蝶形弁(バタフライバルブ)等の簡単なオン/オフ・バルブとすることができる。あるいは、低圧バイパス弁113を、例えば、熱膨張弁、プラグバルブ、玉形弁(グローブバルブ)またはダイヤフラムバルブ等の可変バルブとすることもできる。
【0131】
ホットガスバイパス弁114を、内部を通る実質的に気相の冷媒の流れを制御できるあらゆる弁とできる。ソレノイドバルブ、ゲート弁、ボール弁または蝶形弁(バタフライバルブ)等の簡単なオン/オフ・バルブとすることができる。あるいは、ホットガスバイパス弁114を、例えば、熱膨張弁、プラグバルブ、玉形弁(グローブバルブ)またはダイヤフラムバルブ等の可変バルブとすることもできる。
【0132】
エコノマイザ熱交換器105を、高温側の冷媒と低温側の冷媒との間で熱を交換するのに適したあらゆるタイプの熱交換器とできる。エコノマイザ熱交換器を、例えば、シェル&チューブ熱交換器、プレート&シェル熱交換器、プレートフィン型熱交換器、ヘリカルコイル熱交換器、スパイラル熱交換器またはプレート熱交換器とすることができる。
【0133】
副膨張機構1103は熱膨張弁でなくてもよい。主膨張機構を、冷媒の圧力を下げることができ膨張を可能とするあらゆる要素とできる。例えば、副膨張機構1103を、キャピラリチューブ等の絞り装置とすることもできる。
【0134】
上記のものはすべて完全に本開示の範囲内であり、上に記載した特徴の一以上の組み合わせが適用される他の態様の基礎をなすものとし、その組み合わせは上で開示した特定の組み合わせに限定されない。
【0135】
この点から、本開示の教示を実現する多くの態様が存在するといえよう。当業者が上記の開示を、上で開示したまたはそれから派生しうる本開示の技術的効果の一部またはすべてを奏するよう、当該技術における通常の知識から、自分の環境や必要に適応させるように、本開示の範囲内で変形し変更できるであろう。そのような均等なもの、変形または変更のすべては本開示の範囲内である。
【符号の説明】
【0136】
100 ヒートポンプ
101 圧縮機
101a 吸込口
101b ガス注入口
101b 注入口
101c 圧縮口
102 利用側熱交換器
103 主膨張機構
104 熱源側熱交換器
105 エコノマイザ熱交換器
106 アキュムレータ
107 PCB冷却要素
108 流れ制御要素
109 ファン
110 四方反転弁
111 液インジェクション弁
112 ガスインジェクション弁
113 低圧バイパス弁
114 ホットガスバイパス弁
120 冷媒流路
130 コントローラ
200 家庭用温水供給機
401 温度検出器
1100 ヒートポンプ
1103 副膨張機構
1105 気液分離器
1112 ガスインジェクション弁