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  • 特許-風味が強化された原物濃縮液の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】風味が強化された原物濃縮液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20231030BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20231030BHJP
【FI】
A23L27/10 C
A23L19/00 A
A23L19/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022519020
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 KR2020013032
(87)【国際公開番号】W WO2021060902
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0119271
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヒ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ユン・イム
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-071593(JP,A)
【文献】特開2014-233205(JP,A)
【文献】特開2006-304634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00- 2/40
A23L 19/00-19/20
A23L 27/00-27/40
A23L 27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原物搾汁液を薄膜濃縮するステップと、
薄膜濃縮された原物搾汁液をプレート濃縮するステップと、を含み、
前記薄膜濃縮後の原物搾汁液の固形分の含量が20~50Brix°である、原物濃縮液の製造方法。
【請求項2】
製造された原物濃縮液の固形分の含量が60Brix°以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原物は、果物、果菜類、および野菜からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薄膜濃縮およびプレート濃縮により、含硫黄化合物の含量を増加させ、フラン系化合物またはピラジン系化合物の生成を抑制する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薄膜濃縮は、蒸発温度が20~50℃になるように熱処理して行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プレート濃縮は、蒸発温度が30~35℃になるように熱処理して行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記原物搾汁液は、固形分の含量7~8Brix°を基準に、濁度が1600NTU以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
原物搾汁液を薄膜濃縮するステップと、
薄膜濃縮された原物搾汁液をプレート濃縮するステップと、を含み、
前記薄膜濃縮後の原物搾汁液の固形分の含量が20~50Brix°である、原物濃縮液の風味を強化させる方法。
【請求項9】
前記原物濃縮液は、タマネギ濃縮液である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、風味が強化された原物濃縮液およびその新しい製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康および天然指向に対する消費者の要求が大きくなるにつれ、加工食品の全般にわたって天然原料の使用を増やし、化学的な食品添加物の使用を排除しようとする努力が加速化している。かかる背景下、果物、野菜、または果菜類の濃縮液は、原物の栄養成分がそのまま含まれているため、多様な加工食品の素材として用いることができる。
【0003】
かかる果物、野菜、または果菜類の濃縮液は、一般的に、果物、野菜、または果菜類を加熱し分解させた後に濃縮して製造されるが、栄養成分が過度に破壊され、原物固有の風味と香味が減少するという問題を有する。
【0004】
特に、濃縮工程を通じて高いブリックスまで一度に固形分の含量を増加させる場合、不純物の含量は増加し、有効成分の含量は相対的に減少するため、加工食品の素材として使用するには不十分であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の1つの目的は、原物から有効成分を抽出する抽出収率が高いため、経済的でありながらも、栄養破壊が少ないだけでなく風味も良いため、商品性に優れた濃縮液を製造することができる、新しい方式の原物濃縮液の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、原物濃縮液の風味を強化させる方法を提供することにある。
【0007】
本出願のまた他の目的は、風味が強化された原物濃縮液を提供することにある。
【0008】
本出願のさらに他の目的は、前記原物濃縮液を含有する食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本出願は、原物搾汁液を薄膜濃縮するステップと、薄膜濃縮された原物搾汁液をプレート濃縮するステップと、を含む、原物濃縮液の製造方法を提供する。また、本出願は、原物搾汁液を薄膜濃縮するステップと、薄膜濃縮された原物搾汁液をプレート濃縮するステップと、を含む、原物濃縮液の風味を強化させる方法を提供する。
【0010】
また、本出願は、チオスルフィネート(Thiosulfinate)を600μg/ml以上含むタマネギ濃縮液を提供する。
【0011】
また、本出願は、前記タマネギ濃縮液を含有する食品を提供する。
【0012】
以下では、本出願の内容をより詳細に説明する。
【0013】
一側面において、本出願は、原物搾汁液を薄膜濃縮するステップと、薄膜濃縮された原物搾汁液をプレート濃縮するステップと、を含む、原物濃縮液の製造方法を提供する。本出願で用いられた用語、「原物」または「原材料」は、加工されておらず天然のままの状態のもの(物)を意味し、「天然」は、化学的反応によらないものを意味する。具体的に、本願において、原物は、固有の香味を有する原物形態の植物を意味し、前記植物は、果物、果菜類、または野菜であってもよい。
【0014】
具体的に、前記野菜は、唐辛子、ワサビ、エゴマの葉、ツルニンジン、桔梗、ニンニク、ショウガ、ヨモギ、カブ、タマネギ、ニラ、ノビル、フッカーチャイブ(Allium hookeri)、チンゲンサイ、ネギ、ケール、ローズマリー、ルタバガ、バジル、ハッカ、セロリ、春菊、およびパセリからなる群から選択される1つ以上であってもよい。具体的に、前記野菜は、タマネギ、ニンニク、ネギ、ニラ、およびノビルを含むアリウム属(Allium)植物であってもよいが、これに制限されない。
【0015】
本出願において、「原物搾汁液」は、原物固有の香味を維持するために原物を搾汁して得た液を意味する。
【0016】
前記原物搾汁液の固形分の含量は、1Brix°~15Brix°であってもよく、具体的に、1Brix°~10Brix、3Brix°~10Brix、5Brix°~9Brix、6Brix°~8Brix、7Brix°~8Brix°であってもよい。
【0017】
前記原物搾汁液の濁度は、120~160NTUであってもよく、例えば、125~160NTU、130~155NTUであってもよい。
【0018】
前記原物搾汁液の濁度が前記範囲である際、原物搾汁液中の浮遊物の含量が少ないため、濃縮工程において浮遊物が固い層を形成させるのを防止することができ、併合濃縮工程を行うことができる。
【0019】
前記原物搾汁液の濁度は、前記原物搾汁液の固形分の含量を基準に測定した値であってもよく、7Brix°を基準に測定した値であってもよい。
【0020】
前記原物濃縮液の製造方法は、薄膜濃縮後にプレート濃縮してもよい。
【0021】
前記薄膜濃縮工程およびプレート濃縮工程を併合して原物の成分を変形なしに維持するか、または新しい有用な成分を導出してもよい。
【0022】
例示的な一実施形態において、本出願による併合濃縮を薄膜濃縮後にプレート濃縮の順に行う場合には、薄膜濃縮は、固形分の含量が20~50Brix°になるまで行ってもよい。
【0023】
本出願の薄膜濃縮後に得られた原物搾汁液の固形分の含量の下限値は、20Brix、21Brix、22Brix、23Brix、24Brix、25Brix、30Brix、35Brix、40Brix、または45Brix°であってもよく、薄膜濃縮後に得られた原物搾汁液の固形分の含量の上限値は、50Brix、49Brix、48Brix、47Brix、46Brix、45Brix、40Brix、35Brix、30Brix°、または25Brix°であってもよい。また、薄膜濃縮後に得られた原物搾汁液の固形分の含量は、前記記載された含量の下限値から選択された1つおよび上限値から選択された1つの数値を組み合わせた範囲であってもよく、例えば、20Brix°以上~50Brix、20Brix°超過~50Brix、25~50Brix、25~45Brix、または25~40Brix°などであってもよい。
【0024】
例示的な一実施形態において、前記薄膜濃縮後にプレート濃縮が行われる場合、プレート濃縮は、濃縮液の固形分の含量が60Brix°以上であるまで行ってもよい。
【0025】
本出願の製造方法により最終的に製造された原物濃縮液の固形分の含量の下限値は、60Brix、65Brix、70Brix、75Brix、76Brix、77Brix、78Brix、または79Brix°であってもよく、最終的に製造された原物濃縮液の固形分の含量の上限値は、80Brix、75Brix、70Brix、65Brix、64Brix、63Brix、62Brix°、または61Brix°であってもよい。また、最終的に製造された原物濃縮液の固形分の含量は、前記記載された含量の下限値から選択された1つおよび上限値から選択された1つの数値を組み合わせた範囲であってもよく、例えば、60Brix°以上~80Brix、60Brix°超過~80Brix、62Brix°~78Brix°、または65Brix°~76Brix°などであってもよい。
【0026】
前記薄膜濃縮工程は、薄膜濃縮器の蒸発温度が原物搾汁液を蒸発可能な温度であれば制限されずに行われてもよく、具体的に、20~50℃の範囲で行ってもよい。一例として、25~45℃、30~40℃、30~38℃、30~36℃、または30~35℃であってもよい。
【0027】
薄膜濃縮後の濃縮物の固形分の含量が前述した固形分のBrix°になるまで繰り返し行われてもよい。
【0028】
前記プレート濃縮工程は、プレート濃縮器の蒸発温度が原物搾汁液を蒸発可能な温度であれば制限されずに行われてもよく、具体的に、20~50℃の範囲内で行ってもよい。一例として、25~45℃、30~40℃、30~38℃、30~36℃、または30~35℃であってもよい。
【0029】
他の一例として、プレート濃縮器の蒸発温度と薄膜濃縮器の蒸発温度との差は、10℃以内、8℃以内、6℃以内、または5℃以内であってもよい。
【0030】
前記プレート濃縮工程は、固形分の含量が前述した固形分のBrix°になるまで繰り返し行われてもよい。
【0031】
本出願の製造方法は、前記薄膜濃縮するステップの以前に、原物搾汁液を準備するステップをさらに含んでもよい。
【0032】
前記原物搾汁液を準備するステップは、原物搾汁ステップを含んでもよく、原物の果皮除去ステップ、原物の菌制御ステップ、粉砕ステップ、および濾過ステップのうち何れか1つ以上のステップを含んでもよい。
【0033】
前記原物の果皮除去ステップ、菌制御ステップ、および粉砕ステップは、原物搾汁ステップの以前に行われてもよい。
【0034】
前記濾過ステップは、原物搾汁ステップの以後に行われてもよい。
【0035】
前記原物搾汁ステップは、原物から有用成分を液状として得るものであり、搾汁方法としては、制限されずに用いられてもよいが、加圧して搾汁する方法、加熱により搾汁する方法を用いてもよい。一例として、ギア式搾汁、プレス式搾汁、粉砕式搾汁、または酵素分解式搾汁を用いてもよい。
【0036】
前記原物の果皮除去ステップは、原物の可食部位を分離するためのものであり、除去方法としては、制限されずに用いられてもよい。
【0037】
前記原物の菌制御ステップは、原物中の菌を増殖しないようにするか、または死滅できるように処理するものであり、その方法としては、制限されずに用いられてもよいが、加熱、pH調節、または電解水を用いた菌制御方法を用いてもよい。具体的に、電解水を用いた菌制御方法を用いてもよく、次亜塩素酸イオン(OCl-)を原物に添加して菌を制御してもよい。前記次亜塩素酸イオンとしては、次亜塩素酸水(HOCl)、または次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)などの公知の形態であれば制限されずに用いられてもよい。
【0038】
前記粉砕ステップは、原物の搾汁効率を高めるための方法であれば制限されずに用いてもよい。
【0039】
前記濾過ステップは、搾汁した原物の浮遊物の含量を減少するためのものであり、濾過フィルタ、濾過膜、クロマトグラフィ、または遠心分離などの公知の方法を制限されずに用いてもよい。
【0040】
前記濾過ステップは、少なくとも2回以上繰り返し行われてもよい。前記濾過ステップは、少なくとも2以上の濾過工程により行われてもよい。
【0041】
前記濾過ステップを少なくとも2以上の工程により行う場合、各工程は、濾過される物質の大きさまたは性質などを考慮して分けて行ってもよい。
【0042】
例示的な一実施形態において、本出願に係る濾過ステップを2以上の濾過工程により行う場合、前記濾過ステップは、フィルタプレス濾過工程を含んでもよい。前記フィルタプレス濾過工程は、原物搾汁液の全体重量を基準に、3~7重量%の珪藻土を原物搾汁液に添加して行ってもよく、具体的に、5重量%の珪藻土を添加して行ってもよい。
【0043】
前記フィルタプレス濾過工程によると、原物状態で搾汁された搾汁液に含まれている浮遊物が凝集し、低分子繊維質をフィルタプレス濾過工程により除去することができ、その後、追加の濾過工程により、浮遊物が凝集した残留珪藻土を除去することができる。
【0044】
原物搾汁液に浮遊物が多く含まれると、濃縮過程において浮遊物が固い層を形成させることで、併合濃縮を行うことが難しくなり得る。
【0045】
前記濾過ステップを行って原物搾汁液中の浮遊物の含量を減らし、濃縮過程において浮遊物が固形化するのを防止することができる。
【0046】
例示的な一実施形態において、本出願の製造方法は、原物濃縮液に抗酸化物質、または原物の風味成分が高い含量に維持されるように濃縮するか、または原物の加熱風味成分が低い含量に維持されるように濃縮してもよい。
【0047】
具体的に、チオサルフェート、含硫黄化合物、グルタミン酸、ヒスチジン、およびアルギニンのうち何れか1つ以上が高い含量に維持されるように濃縮してもよい。各化合物に関する具体的な内容は後述するが、タマネギ濃縮液に限定されない。
【0048】
また、具体的に、フラン系化合物、ピラジン系化合物、およびフェニルアラニンのうち何れか1つ以上が低い含量に維持されるように濃縮してもよい。各化合物に関する具体的な内容は後述するが、タマネギ濃縮液に限定されない。
【0049】
例示的な一実施形態において、本出願の製造方法は、製造された原物濃縮液の濁度が低く維持されるように濃縮してもよい。濁度に関する具体的な内容は後述するが、タマネギ濃縮液に限定されない。
【0050】
他の側面において、本出願は、原物搾汁液を薄膜濃縮するステップと、薄膜濃縮された原物搾汁液をプレート濃縮するステップと、を含む、原物濃縮液の風味を強化させる方法を提供する。
【0051】
本出願の原物濃縮液の風味を強化させる方法において、原物搾汁液を薄膜濃縮するステップおよび薄膜濃縮された原物搾汁液をプレート濃縮するステップに関する内容は、本出願の一側面である原物濃縮液の製造方法において説明されたものと同様であるため、明細書の過度な複雑性を避けるために重複して説明しない。
【0052】
また他の側面において、本出願は、タマネギ濃縮液を提供する。
【0053】
前記タマネギ濃縮液は、チオスルフィネート(Thiosulfinate)を600μg/ml以上含むタマネギ濃縮液であってもよい。例示的な一実施形態において、前記タマネギ濃縮液は、全体固形分の含量60Brix°を基準に、チオスルフィネートを600μg/ml以上含んでもよい。
【0054】
本出願のタマネギ濃縮液中のチオスルフィネートの含量の下限値は、全体固形分の含量60Brix°を基準に、600μg/ml、610μg/ml、620μg/ml、630μg/ml、640μg/ml、650μg/mlであってもよく、タマネギ濃縮液中のチオスルフィネートの含量の上限値は、全体固形分の含量60Brix°を基準に、1500μg/ml、1000μg/ml、800μg/mlであってもよい。また、タマネギ濃縮液の全体固形分60Brix°を基準に、チオスルフィネートの含量は、前記記載された含量の下限値から選択された1つおよび上限値から選択された1つの数値を組み合わせた範囲であってもよく、例えば、600μg/ml~1500μg/ml、610μg/ml~1500μg/ml、610μg/ml~1000μg/ml、630μg/ml~1500μg/ml、または630μg/ml~1000μg/mlなどであってもよい。
【0055】
前記範囲でチオスルフィネートを含むと、タマネギ濃縮液においても原物タマネギ固有の味を維持することができ、原物タマネギ濃縮液をソースなどの食品の素材として活用することができる。
【0056】
例示的な一実施形態において、前記タマネギ濃縮液は、全体固形分の含量60Brix°を基準に、ピルビン酸を3mol/L以上含んでもよい。一例として、タマネギ濃縮液の全体固形分の含量60Brix°を基準に、ピルビン酸の含量は、3~10mol/L、3.7~10mol/L、3.7~8mol/L、3.8~6mol/L、または3.8~5mol/Lであってもよい。前記範囲でピルビン酸を含むと、タマネギ濃縮液においても原物タマネギの辛味が維持され、加工食品に辛味を付与する素材として活用することができる。
【0057】
本出願のBrix°は、溶液100gに入っている固形分の量を糖類(砂糖)基準のg数で表したものであり、brix、brix%、bxなどと混用して用いることができる。前記brixは、公知の方法により測定されてもよく、15℃~35℃などの常温で測定されてもよい。
【0058】
本出願において、全体固形分の特定のBrix°を基準にした各成分の含量は、当該Brix°に全体固形分の含量を調節した後に確認したものを含む。一例として、全体固形分の含量が特定のBrix°よりも高い場合、水などの適切な溶媒で希釈して含量を確認することができ、全体固形分の含量が特定のBrix°よりも低い場合、公知の濃縮方法により、各成分の含量に最小限の影響を及ぼすように濃縮して測定することができる。前記公知の濃縮方法としては、本発明の濃縮方法を用いてもよい。
【0059】
例示的な一実施形態において、前記タマネギ濃縮液は、含硫黄化合物を含んでもよい。
【0060】
前記タマネギ濃縮液は、ジメチルトリスルフィド、メチルプロピルトリスルフィド、および1,3-ジチアンのうち何れか1つ以上の含硫黄化合物を含んでもよい。
【0061】
また、前記タマネギ濃縮液は、前記ジメチルトリスルフィド、メチルプロピルトリスルフィド、および1,3-ジチアンの他に、5-ジエチル-1,2,3-トリチオラン、ジプロピルトリスルフィド、メチル2-プロペニルジスルフィド、メチルチイラン、ジメチルジスルフィド、トリスルフィドジメチル、メチルプロピルトリスルフィド、メチル1-プロペニルジスルフィド、2,4-ジメチルチオフェン、2,5-ジメチルチオフェン、ジプロピルジスルフィド、3-メチルチオフェン、ジスルフィドジアリール、およびスルフィドジアリールからなる群から選択される1種以上の化合物をさらに含んでもよい。
【0062】
前記含硫黄化合物は、含量の下限値が、100μg/ml、150μg/ml、180μg/ml、200μg/ml、210μg/ml、220μg/ml、240μg/ml、または250μg/mlであってもよく、タマネギ濃縮液中の含硫黄化合物の含量の上限値は、1500μg/ml、1000μg/ml、800μg/ml、500μg/ml、400μg/ml、または300μg/mlであってもよい。また、タマネギ濃縮液中の含硫黄化合物の含量は、前記記載された含量の下限値から選択された1つおよび上限値から選択された1つの数値を組み合わせた範囲であってもよく、例えば、100μg/ml~1500μg/ml、180μg/ml~1500μg/ml、200μg/ml~800μg/ml、220μg/ml~500μg/ml、または250μg/ml~400μg/mlなどであってもよい。
【0063】
前記含硫黄化合物の含量は、全体固形分の含量60Brix°を基準に測定してもよい。
【0064】
前記ジメチルトリスルフィドは、含量の下限値が、20μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、105μg/ml、107μg/ml、110μg/ml、113μg/ml、または115μg/mlであってもよく、タマネギ濃縮液中のジメチルトリスルフィド含量の上限値は、800μg/ml、400μg/ml、200μg/ml、150μg/ml、130μg/ml、または125μg/mlであってもよい。また、タマネギ濃縮液中のジメチルトリスルフィドの含量は、前記記載された含量の下限値から選択された1つおよび上限値から選択された1つの数値を組み合わせた範囲であってもよく、例えば、20μg/ml~800μg/ml、100μg/ml~800μg/ml、105μg/ml~400μg/ml、107μg/ml~200μg/ml、または110μg/ml~150μg/mlなどであってもよい。
【0065】
前記ジメチルトリスルフィドの含量は、全体固形分の含量60Brix°を基準に測定してもよい。
【0066】
前記メチルプロピルトリスルフィドは、含量の下限値が、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml、45μg/ml、50μg/ml、52μg/ml、55μg/ml、または60μg/mlであってもよく、タマネギ濃縮液中のメチルプロピルトリスルフィド含量の上限値は、600μg/ml、400μg/ml、200μg/ml、100μg/ml、80μg/ml、または70μg/mlであってもよい。また、タマネギ濃縮液中のメチルプロピルトリスルフィドの含量は、前記記載された含量の下限値から選択された1つおよび上限値から選択された1つの数値を組み合わせた範囲であってもよく、例えば、20μg/ml~600μg/ml、40μg/ml~600μg/ml、50μg/ml~400μg/ml、52μg/ml~200μg/ml、または60μg/ml~70μg/mlなどであってもよい。
【0067】
前記メチルプロピルトリスルフィドの含量は、全体固形分の含量60Brix°を基準に測定してもよい。
【0068】
前記1,3-ジチアンは、含量の下限値が、5μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、25μg/ml、30μg/ml、32μg/ml、35μg/ml、または40μg/mlであってもよく、タマネギ濃縮液中の1,3-ジチアンの含量の上限値は、500μg/ml、300μg/ml、150μg/ml、80μg/ml、60μg/ml、または50μg/mlであってもよい。また、タマネギ濃縮液中の1,3-ジチアンの含量は、前記記載された含量の下限値から選択された1つおよび上限値から選択された1つの数値を組み合わせた範囲であってもよく、例えば、5μg/ml~500μg/ml、10μg/ml~300μg/ml、30μg/ml~300μg/ml、32μg/ml~150μg/ml、または40μg/ml~50μg/mlなどであってもよい。
【0069】
前記1,3-ジチアンの含量は、全体固形分の含量60Brix°を基準に測定してもよい。
【0070】
例示的な一実施形態において、前記タマネギ濃縮液は、GC/MSで測定時、フラン系化合物またはピラジン系化合物を低い含量で含むか、または含まなくてもよい。
【0071】
前記フラン系化合物は、3-メチルフラン、2-メチルフラン、2-エチルフラン、2,5-ジメチルフラン、および2-(1-ペンテニル)フランからなる群から選択される1種以上の化合物であってもよく、前記ピラジン系化合物は、メチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、および2-エテニル-6-メチルピラジンからなる群から選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0072】
本出願において、「揮発性化合物」は、気体となって蒸発する性質を有する化合物を意味する。
【0073】
前記タマネギ濃縮液が、揮発性含硫黄化合物を高含量で含むか、またはフラン系化合物およびピラジン系化合物を低いレベルで含むか、または含まないと、タマネギ濃縮液は、辛味およびタマネギ固有の香味を有することができる。かかる揮発性化合物の量は、GC/MSで測定することができる。
【0074】
例示的な一実施形態において、前記タマネギ濃縮液は、GC/MSで測定時、3-メチルフラン、2-メチルフラン、2-エチルフラン、2,5-ジメチルフラン、および2-(1-ペンテニル)フランからなる群から選択される1種以上のフラン系化合物の含量が、全体揮発性成分100重量部を基準に0.1重量部以下であるか、または検出されなくてもよい。
【0075】
前記フラン系化合物の含量の上限値は、0.1重量部、0.08重量部、0.06重量部、0.04重量部、0.02重量部、0.05重量部、0.005重量部、0.0005重量部であってもよく、下限値は、0.09重量部、0.07重量部、0.05重量部、0.03重量部、0.01重量部、0.0025重量部、0.00025重量部、0.000025重量部であってもよい。また、フラン系化合物の含量は、前記記載された下限値から選択された1つおよび上限値から選択された1つの数値を組み合わせた範囲であってもよく、例えば、0.01~0.1重量部、0.0025~0.05重量部、または0.00025~0.01重量部などであってもよい。
【0076】
例示的な一実施形態において、前記タマネギ濃縮液は、GC/MSで測定時、メチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、および2-エテニル-6-メチルピラジンからなる群から選択される1種以上のピラジン系化合物の含量が、全体揮発性成分100重量部を基準に0.1重量部以下であるか、または検出されなくてもよい。
【0077】
前記ピラジン系化合物の含量の上限値は、0.1重量部、0.08重量部、0.06重量部、0.04重量部、0.02重量部、0.05重量部、0.005重量部、0.0005重量部であってもよく、下限値は、0.09重量部、0.07重量部、0.05重量部、0.03重量部、0.01重量部、0.0025重量部、0.00025重量部、0.000025重量部であってもよい。また、ピラジン系化合物の含量は、前記記載された下限値から選択された1つおよび上限値から選択された1つの数値を組み合わせた範囲であってもよく、例えば、0.01~0.1重量部、0.0025~0.05重量部、または0.00025~0.01重量部などであってもよい。
【0078】
前記フラン系化合物およびピラジン系化合物の含量が前記範囲であるか、または検出されないと、劣化生成物による苦味および臭いが抑制され、濃縮後にも原物タマネギ濃縮液の味と香りが変質せずに改善されるという効果を有する。
【0079】
前記フラン系化合物およびピラジン系化合物が検出されないとは、フラン系化合物またはピラジン系化合物がGC/MSの検出限界以下の濃度で含まれることを意味し得る。具体的に、検出限界は、1,000ppm(w/w)、100ppm(w/w)、10ppm(w/w)、5ppm(w/w)、または1ppm(w/w)であってもよい。
【0080】
例示的な一実施形態において、前記タマネギ濃縮液は、アミノ酸を含んでもよい。
【0081】
前記アミノ酸は、グルタミン酸、ヒスチジン、およびアルギニンのうち何れか1つ以上を含んでもよい。
【0082】
前記アミノ酸は、10g/L以上で含まれてもよい。具体的に、10g/L~20g/L、10.2g/L~20g/L、または11g/L~15g/Lであってもよい。
【0083】
前記グルタミン酸は、1.6g/L以上で含まれてもよい。具体的に、1.6g/L~10g/L、1.8g/L~10g/L、1.9g/L~5g/L、または1.9g/L~3g/Lであってもよい。
【0084】
前記ヒスチジンは、0.16g/L以上で含まれてもよい。具体的に、0.16g/L~5g/L、0.17g/L~5g/L、0.17g/L~3g/L、0.18g/L~3g/L、または0.19g/L~1g/Lであってもよい。
【0085】
前記アルギニンは、4.5g/L以上で含まれてもよい。具体的に、4.5g/L~10g/L、5g/L~10g/L、5g/L~8g/L、5g/L~7g/L、または5.3g/L~7g/Lであってもよい。
【0086】
前記アミノ酸、グルタミン酸、ヒスチジン、およびアルギニンの含量は、全体固形分の含量60Brix°を基準に測定してもよい。
【0087】
前記アミノ酸、グルタミン酸、ヒスチジン、およびアルギニンを前記含量で含むことで、濃縮液の味および/または健康改善機能を含むことができる。
【0088】
また、前記アミノ酸中のフェニルアラニンの含量は、グルタミン酸100重量部に対して24重量部以下であってもよい。具体的に、24重量部以下、23重量部以下、20重量部以下、または19重量部以下であってもよく、フェニルアラニンを含まないかまたは検出されない含量で含んでもよい。
【0089】
フェニルアラニンをグルタミン酸100重量部に対して24重量部以下で含むことで、濃縮液の苦味を低減することができる。
【0090】
例示的な一実施形態において、前記タマネギ濃縮液の濁度は1,600NTU以下であってもよい。具体的に、1,600NTU以下、1,500NTU以下、1400NTU以下、または1100NTU以下であってもよい。濁度の下限値は0を含めて制限がなくてもよいが、500NTU以上であってもよい。
【0091】
前記タマネギ濃縮液の濁度は、全体固形分の含量60Brix°を基準に測定してもよい。
【0092】
さらに他の側面において、本出願は、前記タマネギ濃縮液を含有する食品を提供する。
【0093】
前記食品は、一般食品、健康食品、および医療用(または、患者用)食品を含むが、これに限定されない。具体的に、食品は、飲料(例えば、食物繊維飲料、炭酸水、はったい粉(穀物ドリンク)、お茶など)、アルコール飲料、パン、ソース(例えば、ケチャップ、トンカツソース、たれなど)、乳加工品(例えば、発酵乳など)、肉類加工品(例えば、ハム、ソーセージなど)、チョコレート加工品、ガム、キャンディー、ゼリー、アイスクリーム、シロップ、ドレッシング、スナック(例えば、クッキー、クラッカーなど)、果菜の漬物(例えば、砂糖漬け、糖浸漬した果物、紅参エキス、または紅参スライスなど)、発酵食品(例えば、味噌、サムジャン、またはコチュジャンなどの醤類)、食事代用食(例えば、冷凍食品、レトルト食品、常温流通用食品、およびHMRなど)、または加工食品であってもよい。
【0094】
本出願のタマネギ濃縮液を食品に用いる場合、本出願の濃縮液をそのまま添加するかまたは他の食品成分とともに用いてもよく、通常の方法により適切に用いてもよい。本出願の食品は、種々の甘味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前記天然炭水化物は、ブドウ糖および果糖のような単糖類、マルトースおよびスクロースのような二糖類、デキストリンおよびシクロデキストリンのような多糖類、キシリトール、ソルビトール、およびエリトリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、タウマチンおよびステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリンおよびアスパルテームのような合成甘味剤などを用いてもよい。
【0095】
上記したものの他に、本出願の食品は、種々の栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチンおよびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有してもよい。その他に、本出願の食品は、天然果汁、果汁飲料、および野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。かかる成分は、独立してまたは組み合わせて用いてもよい。
【0096】
前記タマネギ濃縮液は、前記食品中に制限されずに含まれてもよいが、一例として、食品100重量部を基準に0.001~50重量部、0.01~30重量部、0.01~20重量部、0.1~10重量部、または0.1~5重量部で含まれてもよい。
【0097】
前記食品は、食べ物にタマネギの抗酸化成分、辛味、または香味を付与するためのものであってもよい。
【0098】
さらに他の側面において、本出願は、原物タマネギ搾汁液を薄膜濃縮するステップと、薄膜濃縮されたタマネギ搾汁液をプレート濃縮するステップと、を含む、タマネギ濃縮液の風味を強化させる方法を提供する。
【0099】
タマネギ濃縮液、原物タマネギ搾汁液、薄膜濃縮、プレート濃縮は、前述したとおりである。
【発明の効果】
【0100】
本出願は、原物から有効成分を抽出する抽出収率が高いながらも経済的であり、栄養破壊も少ないだけでなく、風味も良いため、商品性に優れた原物濃縮液の製造方法を提供するという効果がある。
【0101】
本出願は、濃縮工程後にもタマネギ固有の味と香りを出す成分が破壊されず、劣化生成物が少ないため、タマネギ固有の風味を有しながらも不快な臭いは発生しない、風味が強化された原物タマネギ濃縮液を提供するという効果がある。
【0102】
本出願は、有効成分の含量が高いながらもタマネギ固有の風味を失わない原物タマネギ濃縮液を加工食品の素材として使用できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1】本出願の例示的な一実施形態に係るタマネギ搾汁液の製造工程の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
以下、本発明を下記の実施例によりさらに詳しく説明する。但し、これらの実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例
【0105】
製造例1.原物搾汁液の製造
【0106】
1-1.原料の準備
【0107】
韓国済州島から収穫された原物タマネギを購入して用いた。剥皮したタマネギを土が全て除去されるまで流し水で洗浄後に包装して10℃以下で冷蔵保管したものを原材料として用いた。
【0108】
1-2.前処理および搾汁
【0109】
新鮮なタマネギの香味を維持するために、原料タマネギを加熱する代わりに、微酸性電解水(HOCl、pH5.0、20ppm)を30分間処理して初期菌数を制御した。次に、原物タマネギを搾汁器(HSJ-120、HANSUNG Co.、Kr)を用いて1次粉砕および搾汁し、原物搾汁液を製造した。
【0110】
1-3.濾過工程
【0111】
原物搾汁液中の多様な大きさの不純物を効果的に除去するために、フィルタプレス(JUNGDO 1000、JUNGDO Co.、Kr)を用いた1次濾過、および5μmのMFフィルタを用いた2次濾過の2段階の濾過工程を行った。
【0112】
具体的に、原物搾汁液の全体重量を基準に5重量%の珪藻土を原物搾汁液に添加し、粘質の多糖物質が珪藻土に凝集するようにした後、15cc、フィルタープレスの濾布で濾過して低分子繊維質を除去した。1次濾過された原物搾汁液を5μmのMFフィルタを用いて2次濾過して残留珪藻土および微細な微細物質を追加除去し、清澄状態に製造した。
【0113】
1-4.濁度の測定
【0114】
濾過を経た原物搾汁液の濁度を測定し、濾過工程後に浮遊物質がどの程度除去されたかを確認した。具体的に、濁度の測定は、濁度計(HACH 2001N TURBIDIMETER)を用いて測定した。
【0115】
本発明の2段階の濾過工程を経た後の原物搾汁液の濃度は7.3Brix°、濁度は154NTUとして低いレベルに維持された。
【0116】
1-5.急速凍結および貯蔵
【0117】
濾過を経た原物搾汁液は、褐変および香り成分の揮発を最小化するために、20℃以下に冷却後に15kgずつ包装し、-18℃以下に急速凍結して貯蔵した。
【0118】
実施例1~4.薄膜濃縮工程およびプレート式濃縮工程が連携した併合工程
【0119】
製造例1の方法により製造された原物タマネギ搾汁液を、薄膜濃縮方法およびプレート濃縮方法を併合して濃縮した。
【0120】
具体的に、遠心式薄膜濃縮器(CEP-1、OKAWARA CO.、Japan)を、蒸発温度30~35℃、熱媒体温度100℃、真空度4.0kPa、ドラム速度1500rpmに最適化して設定した。
【0121】
初期タマネギ搾汁液を、固形分の含量20(実施例1)、30(実施例2)、40(実施例3)、50(実施例4)Brix°まで濃縮した。目標濃度になるまで上記のような過程を繰り返し行った。
【0122】
次いで、プレート式濃縮の場合、蒸発温度30~35℃、熱媒体温度60℃以下、真空度2.0kPaに最適化して行い、最終的に製造されるタマネギ濃縮液の濃度が60Brix°になるまでプレート濃縮した。
【0123】
最終的に製造された原物タマネギ濃縮液を20℃以下の温度で貯蔵しつつ、濃縮方法および濃縮条件に応じた有効成分の含量および主な品質特性を確認した。
【0124】
比較例1.一般的な真空濃縮工程
【0125】
従来通常用いられる濃縮液の製造方法を用いてタマネギ原物濃縮液を製造した。
【0126】
タマネギ原物搾汁液は、加熱搾汁によって製造した。具体的に、製造例1-1と同一の原料を90~100℃で60分間抽出した後、濾過(80mesh)、冷却(20℃以下)、包装、急速凍結(-18℃以下)の順を経てタマネギ原物搾汁液を製造した。搾汁液の濃度は7.7Brix°、濁度は549NTUであった。
【0127】
製造されたタマネギ原物搾汁液を一般的に広く用いられるバッチ式真空濃縮器(PILOT、Seo kang、Co.、Kr)で真空濃縮した。具体的に、真空濃縮器を、蒸発温度45~50℃、熱媒体温度60℃以上、真空度9.0kPaに設定した後に撹拌しつつ、原物タマネギの濃縮液を製造した。
【0128】
比較例2.最適化された薄膜濃縮工程
【0129】
製造例1の方法により製造された原物タマネギ搾汁液を遠心式薄膜濃縮器に投入し、原物タマネギ濃縮液を得た。
【0130】
遠心式薄膜濃縮器を用いた設備、温度などは実施例と同様に行い、濃縮液の濃度が40Brix°に達するまで濃縮物をリサイクルし、原物タマネギ濃縮液を製造した。
【0131】
比較例3.最適化されたプレート式濃縮工程
【0132】
製造例1の方法により製造された原物タマネギ搾汁液をプレート式濃縮器に投入し、原物タマネギ濃縮液を得た。
【0133】
具体的に、プレート式濃縮工程は、実施例の設備、温度などの条件と同様に行い、60Brix°の原物タマネギ濃縮液を製造した。
【0134】
すなわち、比較例3は、実施例と比べて薄膜濃縮工程が省略された。
【0135】
実験例1.濃縮工程に応じた原物濃縮液の濁度、褐変度、およびpHの変化の確認
【0136】
実施例および比較例の方法により準備された多様な原物タマネギ濃縮液の濁度、褐変度、およびpHの変化を確認した。
【0137】
濁度は、濁度計(HACH 2100N TURBIDIMETER)を用いて測定し、褐変度は、分光光度計(U-2900、HITACHI、Co.、Japan)を用いて420nmでの吸光度を測定し、pHは、pH meter(METTLER TOLEDO)を用いて測定した。
【0138】
【表1】
【0139】
その結果、表1に示したように、濁度および褐変度が濃縮方法に応じて異なることを確認し、併合濃縮(実施例1~4)の場合、従来の濃縮方法である真空濃縮(比較例1)に比べて、濁度および褐変度が減少することを確認した。
【0140】
実験例2.濃縮工程に応じた原物濃縮液の色度変化の確認
【0141】
実施例および比較例の方法により準備された多様な原物タマネギ濃縮液の色度をハンター(Hunter’s)法で測定した。
【0142】
原物濃縮液の色度の測定は、色差計(SA-2000、NIPPON Denshoku Co.、Japan)を用いて、明度(L、lightness)、赤色度(a、redness)、黄色度(b、yellowness)、および全体的な色差を示す△E値を測定し、それぞれの試料ごとに3回繰り返し測定して平均値で示した。この際、用いた標準白板は、L値が98.01、a値が2.27、b値が1.13であった。
【0143】
【表2】
【0144】
その結果、表2に示したように、併合濃縮により製造された原物濃縮液(実施例1~4)は、従来の濃縮方法(比較例1)よりも明度が高く、赤色度は低く、黄色度は高く、全体的な色差を示す△E値は相対的に低い値を示すという様相を呈することを確認した。△E値は、低いほど色の偏差がなく、高いほど偏差が発生することを意味するため、前記結果は、併合濃縮により製造された原物濃縮液が濃縮過程において色の変化が少ないことを意味する。
【0145】
実験例3.濃縮工程に応じた原物濃縮液中のアミノ酸種類別の含量の確認
【0146】
実施例および比較例の方法により準備された多様な原物タマネギ濃縮液中のアミノ酸の含量を分析し、下記表3に示した。
【0147】
アミノ酸の含量分析は、試料液0.1mLに蒸留水9.9mLを入れて十分にmixした後、遠心分離(10,000rpm、10min、4℃)過程を経て、その上層液を0.25μm syringe filterで濾過した。この濾過液に対するアミノ酸の測定は、High Speed Amino Acid Analyzer(L-8900、Hitachi Co.、Japan)を用いて分析した。
【0148】
分析のために、カラムとしては、2622SC-PH ion exchangeカラム(4.6×60mm、Hitachi、Co.、Japn)を用いた。移動相は、gradient modeにし、Pump 1は、sodium acetate buffer(MCI buffer PH1、PH4、RG)をカラム温度57℃にして流速を0.4mL/minにし、Pump 2は、Ninhydrin溶液(R1、R2)を流速0.35mL/minにした。Injection volume 10μLを注入し、Detectorとしては、Channel 1:UV-570nm Channel 2:UV-440nmに二重チャンネルを用いて分析した。
【0149】
【表3】
【0150】
その結果、表3に示したように、総アミノ酸の含量は、従来の濃縮方式(比較例1)および単独濃縮(比較例2、3)よりも、併合濃縮により製造された原物濃縮液にアミノ酸がさらに高い含量で含まれていることが確認された。
【0151】
また、比較例に比べて、実施例の原物濃縮液において、苦味を出すフェニルアラニンの含量は減少し、うま味を出すグルタミン酸の含量が増加し、原物濃縮液の風味が改善されたことを確認し、抗酸化物質であるヒスチジンおよびアルギニンも、実施例の原物濃縮液において含量が増加することを確認した。かかるアミノ酸成分の含量の変化は、一部の熱に不安定なアミノ酸が持続的に熱に露出され、他の成分と反応したり分解されたりして揮発性の香り成分を生成するか、または他種類のアミノ酸に転換されたものと見られ、一部のアミノ酸に現れる含量の増加は、濃縮過程中に十分に遊離していないアミノ酸が遊離して生じるものと見られる。
【0152】
実験例4.濃縮工程に応じた原物濃縮液中の風味強化指標成分の確認
【0153】
ピルビン酸は、ニンニクおよびタマネギの辛味の指標成分であって、熱によって失われるものであり、タマネギの含硫黄化合物であり、且つ、抗酸化剤として知られたチオスルフィネートも、また熱によってその特徴的な成分が減少するものと知られている。実施例および比較例の方法により準備された多様な原物タマネギ濃縮液中のチオスルフィネートおよびピルビン酸の含量を分析し、下記表4に示した。
【0154】
チオスルフィネートの含量の測定
【0155】
2mM システイン(Sigma、U.S.A)を含む50mM N-(2-Hydroxyethyl)piperazine-N’-(2-ethane sulfonic acid(HEPES、pH7.5、Sigma、U.S.A.)0.5mL、抽出液0.1mL、および50mM HEPES4.4mLを混合して総5mL(0.2mM システイン/mL)とし、27℃で10分間反応した後に1mLを採取し、50mM HEPES buffer(pH7.5)で調製した0.4mM 5,5’-dithio-bis(2-nitrobenzoic acid)(DTNB、Sigma、U.S.A.)1mLを添加して27℃で10分間反応した後、412nmにおいて吸光度を測定して残存システインの量を求めた。標準曲線の作成は、50mM HEPES buffer(pH7.5)で調製した0.05~0.3mM システイン1mLと0.4mM DTNB 1mLとを混合して27℃で10分間反応した後、412nmにおいて吸光度を測定して作成した。システインの量を標準曲線から求め、[数学式1]により総チオスルフィネートの含量を求め、対照群は、抽出液の代わりに緩衝液を入れて発色させ、色素が影響を及ぼす試料は、発色剤であるDTNBの代わりに試料の抽出溶液を入れて測定し、試料を入れて反応させた吸光度から控除した。
【0156】
[数学式1]
総チオスルフィネート(mM/mL)=[Ab-(As-Ac)]×25
【0157】
Ab:対照群のシステインの含量(mM/mL)
As:抽出液を添加したもののシステインの含量(mM/mL)
As:抽出液に含有した色素に相当するシステインの含量(mM/mL)
【0158】
ピルビン酸の含量の測定
【0159】
原物タマネギ濃縮液の上層液80μLに0.0125% DNPH(2,4-dinitrophenylhydrazine)4mLを入れ、振盪して37℃で10分間反応させた。0.6N NaOH溶液8mLを添加して485nmにおいて吸光度を測定し、ピルビン酸の濃度は、検量線を用いて換算した。検量線は、ピルビン酸ナトリウム溶液の濃度をそれぞれ2、4、6、8、10mg/mLにして作成した。
【0160】
【表4】
【0161】
その結果、表4に示したように、含硫黄化合物の基準であるチオスルフィネートは、比較例1中には、296.5μg/mLの含量で含まれたのに対し、本願の併合濃縮方法により製造された原物タマネギ濃縮液中には、638~713.9μg/mLの含量で含まれることが明らかになり、比較例1に比べて2倍以上濃縮効率が高いことを確認した。また、辛味の指標成分であるピルビン酸は、比較例1中に3.61mol/Lで含まれているのに対し、併合濃縮の場合、原物搾汁液を薄膜濃縮して固形分の含量が30~40Brix°になる時点にプレート式濃縮をして製造された原物濃縮液は、ピルビン酸を3.89~4.02mol/Lで含んでおり、比較例1に比べてピルビン酸の含量が増加したことを確認した。これは、大量で濃縮が進行する際、単位時間当たりに伝えられる熱の程度および濃縮効率を考慮すると、比較例1~3に比べて、実施例の併合濃縮方式により原物搾汁液を濃縮する際、原物タマネギの品質の変化を最小化できることを示す。
【0162】
実験例5.濃縮工程に応じた原物濃縮液中の香味強化指標成分の確認
【0163】
タマネギの主な香り成分といえる含硫黄化合物は、熱によって失われることが知られている。実施例および比較例の方法により準備された多様な原物タマネギ濃縮液の香り成分をGC/MSで分析し、下記表5~8に示した。揮発性の香り物質の分析は、下記のように行った。
【0164】
揮発性物質の分析方法
【0165】
抽出物の香り成分を確認するために、次のような方法を用いた。揮発性物質の分析のための吸着は、SPME(Solid Phase Microextraction Fiber Holder、Supelco.、Bellefonte、PA、USA)は、DVB/CAR/PDMS(50/30μm)を用いて前処理した。前処理した抽出物1mLを20mLのEPAバイアルに入れた後、PTFE/Siliconでキャッピングした。抽出物を添加したバイアルにSPME needleを挿入した後、60℃で30分間吸着後にGC/MS分析に用いた。
【0166】
GC/MS分析には、Agilentガスクロマトグラフィ(GC2010 plus、Agilent、USA)を用い、カラムとしては、DB-5MS(厚さ:0.25μm、長さ:30m、直径:0.25mm)を用いた。Heはキャリアガスとして用い、カラムオーブン温度100℃、注入温度200℃、総流量1.10mL/min、総プログラム時間37minに設定した後に分析を実施した。
【0167】
GC/MS分析時の検出限界は、1ppm(重量比)と確認した。
【0168】
【表5】
【0169】
前記表5に示したように、比較例1の真空濃縮方法においては、硫黄化合物の強度が下がることが見られ、実施例の併合濃縮により濃縮したタマネギ濃縮液は、併合時点に応じて多少差はあるが、一部の含硫黄化合物が減少または増加する傾向を示した。
【0170】
【表6】
【0171】
前記表6に示した複素環化合物は、アミノ酸と還元糖との間に起こるメイラード(maillard)反応により生成される化合物であって、比較例1において、代表的な加熱誘導反応物質であるフラン(furan)系化合物およびピラジン(pyrazine)系化合物が多様に検出された。その反面、比較例2~3および実施例のタマネギ濃縮液においては、ピラジン系化合物が検出されず、フラン化合物中の一部だけが少量で検出された。フラン化合物中のピーク面積/10,000の値が約1,000以下である値は、揮発性成分100重量部中に0.1重量部程度として非常に少量で含まれていることを予想することができる。
【0172】
【表7】
【0173】
また、前記表7に示したように、生タマネギの主な香り成分といえる2-methyl-2-Pentenalは、比較例1においては、低い強度を示しており、生タマネギの特徴が減ったのに対し、適正時点の併合濃縮を進行した実施例のタマネギ濃縮液においては、生タマネギの風味が特異的に増加することが見られる。また、タマネギの加熱臭として知られた1-(2-フラニル)-1-プロパノン、および脂肪の酸化分解により生成される3-メチル-ブタナールは、比較例1でのみ生成され、比較例2~3および実施例では生成されていない。
【0174】
したがって、原物固有の風味を実現するためのそれぞれの濃縮工程において、比較例2の薄膜濃縮工程は、香りの強度と、熱反応誘導生成物質を生成させるものではないが、高濃度に行くほど熱反応物質が生成されると予想され、高濃度濃縮には好適ではなく、比較例3のプレート式濃縮工程は、併合濃縮のために条件を最適化させたものであって、商用化条件よりも品質の変化が少ないため、併合濃縮工程との有意差が大きくないように見えるが、単位時間当たりの濃縮効率を考慮すると、実施例の併合濃縮工程が原物固有の風味の実現に最も有利であると判断される。
【0175】
一方、原物タマネギ濃縮液に含まれた含硫黄化合物の各成分別の含量を確認するために含硫黄化合物を定量分析し、表8に示した。
【0176】
硫黄含有化合物に対する定量は、試料1.0gに内部標準物質(internal standard)として100mg/L n-ブチルベンゼン100uLを添加し、試料中の揮発性香り成分の含量を相対定量(comparative relative quantification)にして計算し定量した。
【0177】
【表8】
【0178】
含硫黄化合物の成分別の含量は、香り成分を同定した結果と類似した傾向を示した。含硫黄化合物の中でも主な香り成分であるメチルトリスルフィド(Trisulfide、methyl propyl)、ジメチルトリスルフィド(Dimethyl trisulfide)、および1,3-ジチアン(1,3-Dithiane)が実施例の原物タマネギ濃縮液において最も高い含量を示し、比較例1の真空濃縮工程により製造されたタマネギ濃縮液においては、その含量が相対的に低かった。
図1