IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-血栓症低減血液ポンプ 図1
  • 特許-血栓症低減血液ポンプ 図2
  • 特許-血栓症低減血液ポンプ 図3
  • 特許-血栓症低減血液ポンプ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】血栓症低減血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/825 20210101AFI20231030BHJP
   A61M 60/122 20210101ALI20231030BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20231030BHJP
   A61M 60/422 20210101ALI20231030BHJP
【FI】
A61M60/825
A61M60/122
A61M60/237
A61M60/422
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022519021
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2020053935
(87)【国際公開番号】W WO2021067691
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】62/910,108
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ブレイダル、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】バンキャンプ、ダニエル エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】シャウアー、トラビス ジェイ.
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05851174(US,A)
【文献】特表平08-504621(JP,A)
【文献】米国特許第06186665(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/825
A61M 60/122
A61M 60/237
A61M 60/422
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液ポンプのインペラを含むインペラアセンブリの遠位端を保持するように構成されたベアリングアセンブリにおいて、前記インペラアセンブリは、ドライブシャフトを有し、前記ベアリングアセンブリは、
前記ドライブシャフトの遠位端に結合されたピボット部材と、
前記ピボット部材の遠位部の少なくとも一部と係合するように構成された近位側対向面を有する遠位ベアリングカップと、
前記ピボット部材の近位部の少なくとも一部を包囲するように配置されたスリーブベアリングと、
前記ピボット部材の前記近位部のさらなる一部を包囲するように配置されたシリコーン緩衝部と
を備える、ベアリングアセンブリ。
【請求項2】
前記スリーブベアリングは、前記ピボット部材の近位部の外側面と前記インペラの内側面との間に配置されている、請求項1に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項3】
前記インペラは、前記ドライブシャフトに固定され、かつ前記スリーブベアリングの周囲を前記ドライブシャフトと共に回転するように構成されている、請求項1または2に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項4】
前記ピボット部材の前記近位部は、前記ピボット部材の近位端から前記ピボット部材の前記近位部の遠位端まで延びる円筒形面を備え、前記ピボット部材の前記遠位部は、近位方向に指向し、かつ前記円筒形面に少なくともほぼ直交をなす第1の表面と、少なくとも部分的に遠位方向に指向し、かつ前記遠位ベアリングカップの湾曲に沿うように湾曲した第2の表面と、を備える、請求項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項5】
前記シリコーン緩衝部は、
前記ピボット部材の前記円筒形面の一部と係合するように構成された円筒形内側面を有する近位部と、
前記ピボット部材の遠位部の前記第1の表面と係合するように構成された遠位側対向内側面を有する遠位部と、を備える、請求項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項6】
前記シリコーン緩衝部の遠位部は、前記インペラの遠位縁部と係合するように構成された近位側対向外側面を備える、請求項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項7】
前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面によって係合されるように構成された前記ピボット部材の遠位部の前記一部は、前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面の全体と係合するように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項8】
血液ポンプにおいて、
インペラと、
前記インペラ内に少なくとも部分的に配置されたドライブシャフトと、
前記インペラを駆動するように構成されたモータと、
記インペラ及び前記ドライブシャフトを含むインペラアセンブリの遠位端を保持するように構成された遠位ベアリングアセンブリであって、前記ドライブシャフトの遠位端に結合されたピボット部材と、前記ピボット部材の遠位部の少なくとも一部と係合するように構成された近位側対向面を有する遠位ベアリングカップと、前記ピボット部材の近位部の少なくとも一部を包囲するように配置されたスリーブベアリングと、を備える、前記遠位ベアリングアセンブリと、
前記インペラアセンブリの近位端を保持するように構成された近位ベアリングアセンブリであって、遠位側対向面を有するスラストプレートと、前記遠位側対向面の全体と係合するように構成されたインペラベアリング面とを備える、前記近位ベアリングアセンブリと、
前記インペラアセンブリの前記近位端に固定されたロータと、
を備え、
前記モータは、前記ロータを磁気的に駆動するように構成され、前記ロータは、前記ドライブシャフトの中心軸から第1の半径方向における距離に位置する外側面を有する円筒形磁気ロータを備え、前記インペラベアリング面は、前記中心軸から離れて第2の半径方向における距離まで延び、前記第2の半径方向における距離は、前記第1の半径方向における距離より大きい、血液ポンプ。
【請求項9】
前記スリーブベアリングは、前記ピボット部材の近位部の外側面と前記インペラの内側面との間に配置され、前記インペラは、前記ドライブシャフトに固定されかつ前記スリーブベアリングの周囲を前記ドライブシャフトと共に回転するように構成されている、請求項に記載の血液ポンプ。
【請求項10】
前記遠位ベアリングアセンブリは、前記ピボット部材の近位部のさらなる一部を囲むように配置されたシリコーン緩衝部をさらに備える、請求項のいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項11】
前記ピボット部材の近位部は、前記ピボット部材の近位端から前記ピボット部材の近位部の遠位端まで延びる円筒形面を備え、前記ピボット部材の遠位部は、近位方向に指向し、かつ前記円筒形面に少なくともほぼ直交をなす第1の表面と、少なくとも部分的に遠位方向に指向し、かつ前記遠位ベアリングカップの湾曲に沿うように湾曲した第2の表面と、を備える、請求項10に記載の血液ポンプ。
【請求項12】
前記シリコーン緩衝部は、
前記ピボット部材の前記円筒形面の一部と係合するように構成された円筒形内側面を有する近位部と、
前記ピボット部材の遠位部の前記第1の表面と係合するように構成された遠位側対向内側面、および前記インペラの遠位縁部と係合するように構成された近位側対向外側面を有する遠位部と、
を備える、請求項11に記載の血液ポンプ。
【請求項13】
前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面によって係合されるように構成された前記ピボット部材の前記遠位部の前記一部は、前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面の全体と係合するように構成されている、請求項12のいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液ポンプに関する。より詳細には血栓症低減血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
血液ポンプなどの循環補助装置は、血液の循環を補助する。特に血液ポンプの構成要素間の間隙が原因で、ベアリング内およびベアリングの周囲の血液領域が停滞すると、血栓が形成されやすくなる。
【発明の概要】
【0003】
実施例1において、ベアリングアセンブリは、血液ポンプのインペラの遠位端を保持するように構成されている。前記インペラは、ドライブシャフトを有しており、前記ベアリングアセンブリは、前記ドライブシャフトの遠位端に結合されたピボット部材と、前記ピボット部材の遠位部の少なくとも一部と係合するように構成された近位側対向面を有する遠位ベアリングカップと、前記ピボット部材の近位部の少なくとも一部の周囲に配置されたスリーブベアリングと、を備える。
【0004】
実施例2において、実施例1に記載のベアリングアセンブリでは、前記スリーブベアリングは、前記ピボット部材の近位部の外側面と前記インペラの内側面との間に配置されている。
【0005】
実施例3において、実施例1または2に記載のベアリングアセンブリでは、前記インペラは、前記ドライブシャフトに固定されかつ前記スリーブベアリングの周囲を前記ドライブシャフトと共に回転するように構成されている。
【0006】
実施例4において、実施例1~3のいずれか1つに記載のベアリングアセンブリでは、前記ピボット部材の近位部の追加部分の周囲に配置されたシリコーン緩衝部をさらに備える。
【0007】
実施例5において、実施例4に記載のベアリングアセンブリでは、前記ピボット部材の近位部は、前記ピボット部材の近位端から前記ピボット部材の近位部の遠位端まで延びる円筒形面を備え、前記ピボット部材の遠位部は、近位方向に指向し、かつ前記円筒形面に少なくともほぼ直交をなす第1の表面と、少なくとも部分的に遠位方向に指向し、かつ前記遠位ベアリングカップの湾曲に沿うように湾曲した第2の表面と、を備える。
【0008】
実施例6において、実施例5に記載のベアリングアセンブリでは、前記シリコーン緩衝部は、前記ピボット部材の前記円筒形面の一部と係合するように構成された円筒形内側面を有する近位部と、前記ピボット部材の遠位部の前記第1の表面と係合するように構成された遠位側対向内側面を有する遠位部と、を備える。
【0009】
実施例7において、実施例6に記載のベアリングアセンブリでは、前記シリコーン緩衝部の遠位部は、前記インペラの遠位縁部と係合するように構成された近位側対向外側面を備える。
【0010】
実施例8において、実施例1~7のいずれか1つに記載のベアリングアセンブリでは、前記遠位ベアリングカップの近位側対向面によって係合されるように構成された前記ピボット部材の遠位部の前記一部は、前記遠位ベアリングカップの近位側対向面の全体と係合するように構成されている。
【0011】
実施例9において、血液ポンプは、インペラと、前記インペラ内に少なくとも部分的に配置されたドライブシャフトと、前記インペラを駆動するように構成されたモータと、前記モータに隣接して配置されかつ前記インペラの遠位端を受容するように構成された遠位ベアリングアセンブリであって、前記ドライブシャフトの遠位端に結合されたピボット部材と、前記ピボット部材の遠位部の少なくとも一部と係合するように構成された近位側対向面を有する遠位ベアリングカップと、前記ピボット部材の近位部の少なくとも一部の周囲に配置されたスリーブベアリングと、を含む、前記遠位ベアリングアセンブリと、を備える。
【0012】
実施例10において、実施例9に記載の血液ポンプでは、前記血液ポンプの前記インペラの近位端を保持するように構成された近位ベアリングアセンブリであって、遠位側対向面を有するスラストプレートと、前記遠位側対向面の全体と係合するように構成されたインペラベアリング面と、を備える、前記近位ベアリングアセンブリと、前記インペラの近位端に固定されたロータと、をさらに備え、前記モータは、前記ロータを磁気的に駆動するように構成され、前記ロータは、前記ドライブシャフトの中心軸から第1の半径方向距離に位置する外側面を有する円筒形磁気ロータを備え、前記インペラベアリング面は、前記中心軸から離れて第2の半径方向距離まで延び、前記第2の半径方向距離は、前記第1の半径方向距離以上である。
【0013】
実施例11において、実施例9または10に記載の血液ポンプでは、前記スリーブベアリングは、前記ピボット部材の近位部の外側面と前記インペラの内側面との間に配置され、前記インペラは、前記ドライブシャフトに固定されかつ前記スリーブベアリングの周囲を前記ドライブシャフトと共に回転するように構成されている。
【0014】
実施例12において、実施例9~11のいずれか1つに記載の血液ポンプでは、前記遠位ベアリングアセンブリは、前記ピボット部材の近位部の追加部分の周囲に配置されたシリコーン緩衝部をさらに備える。
【0015】
実施例13において、実施例12に記載の血液ポンプでは、前記ピボット部材の近位部は、前記ピボット部材の近位端から前記ピボット部材の近位部の遠位端まで延びる円筒形面を備え、前記ピボット部材の遠位部は、近位方向に指向し、かつ前記円筒形面に少なくともほぼ直交をなす第1の表面と、少なくとも部分的に遠位方向に指向し、かつ前記遠位ベアリングカップの湾曲に沿うように湾曲した第2の表面と、を備える。
【0016】
実施例14において、実施例13に記載の血液ポンプでは、前記シリコーン緩衝部は、前記ピボット部材の前記円筒形面の一部と係合するように構成された円筒形内側面を有する近位部と、前記ピボット部材の遠位部の前記第1の表面と係合するように構成された遠位側対向内側面および前記インペラの遠位縁部と係合するように構成された近位側対向外側面を有する遠位部と、を備える。
【0017】
実施例15において、実施例9~14のいずれか1つに記載の血液ポンプでは、前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面によって係合されるように構成された前記ピボット部材の遠位部の前記一部は、前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面の全体と係合するように構成されている。
【0018】
実施例16において、ベアリングアセンブリは、血液ポンプのインペラの遠位端を保持するように構成され、前記インペラは、ドライブシャフトを有しており、前記ベアリングアセンブリは、前記ドライブシャフトの遠位端に結合されたピボット部材と、前記ピボット部材の遠位部の少なくとも一部と係合するように構成された近位側対向面を有する遠位ベアリングカップと、前記ピボット部材の近位部の少なくとも一部の周囲に配置されたスリーブベアリングと、を備える。
【0019】
実施例17において、実施例17に記載のベアリングアセンブリでは、前記スリーブベアリングは、前記ピボット部材の近位部の外側面と前記インペラの内側面との間に配置されている。
【0020】
実施例18において、実施例16に記載のベアリングアセンブリでは、前記インペラは、前記ドライブシャフトに固定されかつ前記スリーブベアリングの周囲を前記ドライブシャフトと共に回転するように構成されている。
【0021】
実施例19において、実施例16に記載のベアリングアセンブリでは、前記ピボット部材の近位部の追加部分の周囲に配置されたシリコーン緩衝部をさらに備える。
実施例20において、実施例19に記載のベアリングアセンブリでは、前記ピボット部材の近位部は、前記ピボット部材の近位端から前記ピボット部材の近位部の遠位端まで延びる円筒形面を備え、前記ピボット部材の遠位部は、近位方向に指向し、かつ前記円筒形面に少なくともほぼ直交をなす第1の表面と、少なくとも部分的に遠位方向に指向し、かつ前記遠位ベアリングカップの湾曲に沿うように湾曲した第2の表面と、を備える。
【0022】
実施例21において、実施例20に記載のベアリングアセンブリでは、前記シリコーン緩衝部は、前記ピボット部材の前記円筒形面の一部と係合するように構成された円筒形内側面を有する近位部と、前記ピボット部材の遠位部の前記第1の表面と係合するように構成された遠位側対向内側面を有する遠位部と、を備える。
【0023】
実施例22において、実施例21に記載のベアリングアセンブリでは、前記シリコーン緩衝部の遠位部は、前記インペラの遠位縁部と係合するように構成された近位側対向外側面を備える。
【0024】
実施例23において、実施例16に記載のベアリングアセンブリでは、前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面によって係合されるように構成された前記ピボット部材の遠位部の前記一部は、前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面の全体と係合するように構成されている。
【0025】
実施例24において、血液ポンプは、インペラと、前記インペラ内に少なくとも部分的に配置されたドライブシャフトと、前記インペラを駆動するように構成されたモータと、前記モータに隣接して配置されかつ前記インペラの遠位端を受容するように構成された遠位ベアリングアセンブリであって、前記ドライブシャフトの遠位端に結合されたピボット部材と、前記ピボット部材の遠位部の少なくとも一部と係合するように構成された近位側対向面を有する遠位ベアリングカップと、前記ピボット部材の近位部の少なくとも一部の周囲に配置されたスリーブベアリングと、を備える、前記遠位ベアリングアセンブリと、を備える。
【0026】
実施例25において、実施例24に記載の血液ポンプでは、前記血液ポンプの前記インペラの近位端を保持するように構成された近位ベアリングアセンブリであって、遠位側対向面を有するスラストプレートと、前記遠位側対向面の全体と係合するように構成されたインペラベアリング面と、を備える、近位ベアリングアセンブリと、前記インペラの前記近位端に固定されたロータと、をさらに備え、前記モータは、前記ロータを磁気的に駆動するように構成され、前記ロータは、前記ドライブシャフトの中心軸から第1の半径方向距離に位置する外側面を有する円筒形磁気ロータを備え、前記インペラベアリング面は、前記中心軸から離れて第2の半径方向距離まで延び、前記第2の半径方向距離は、前記第1の半径方向距離以上である。
【0027】
実施例26において、実施例24に記載の血液ポンプでは、前記スリーブベアリングは、前記ピボット部材の近位部の外側面と前記インペラの内側面との間に配置されている。
実施例27において、実施例24に記載の血液ポンプでは、前記インペラは、前記ドライブシャフトに固定されかつ前記スリーブベアリングの周囲を前記ドライブシャフトと共に回転するように構成されている。
【0028】
実施例28において、実施例24に記載の血液ポンプでは、前記遠位ベアリングアセンブリは、前記ピボット部材の近位部の追加部分の周囲に配置されたシリコーン緩衝部をさらに備える。
【0029】
実施例29において、実施例28に記載の血液ポンプでは、前記ピボット部材の近位部は、前記ピボット部材の近位端から前記ピボット部材の近位部の遠位端まで延在する円筒形面を備え、前記ピボット部材の遠位部は、近位方向に指向し、かつ前記円筒形面に少なくともほぼ直交をなす第1の表面と、少なくとも部分的に遠位方向に指向し、かつ前記遠位ベアリングカップの湾曲に沿うように湾曲した第2の表面と、を備える。
【0030】
実施例30において、実施例29に記載の血液ポンプでは、前記シリコーン緩衝部は、前記ピボット部材の前記円筒形面の一部と係合するように構成された円筒形内側面を有する近位部と、前記ピボット部材の遠位部の前記第1の表面と係合するように構成された遠位側対向内側面を有する遠位部と、を備える。
【0031】
実施例31において、実施例30に記載の血液ポンプでは、前記シリコーン緩衝部の遠位部は、前記インペラの遠位縁部と係合するように構成された近位側対向外側面を備える。
【0032】
実施例32において、実施例24に記載の血液ポンプでは、前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面によって係合されるように構成された前記ピボット部材の遠位部の前記一部は、前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面の全体と係合するように構成されている。
【0033】
実施例33において、血液ポンプは、インペラと、前記インペラ内に少なくとも部分的に配置されたドライブシャフトと、前記インペラの近位端に固定されたロータであって、前記ドライブシャフトの中心軸から第1の半径方向距離に位置する外側面を有する円筒形磁気ロータを備える、前記ロータと、前記インペラを駆動するように構成されたモータであって、前記ロータを磁気的に駆動するように構成されたステータを備える、前記モータと、前記モータに隣接して配置されかつ前記インペラの遠位端を受容するように構成された遠位ベアリングアセンブリであって、前記ドライブシャフトの遠位端に結合されたピボット部材と、前記ピボット部材の遠位部の少なくとも一部と係合するように構成された近位側対向面を有する遠位ベアリングカップと、前記ピボット部材の近位部の少なくとも一部の周囲に配置されたスリーブベアリングと、を備える、前記遠位ベアリングアセンブリと、前記血液ポンプの前記インペラの近位端を保持するように構成された近位ベアリングアセンブリであって、遠位側対向面を有するスラストプレートと、前記遠位側対向面の全体と係合するように構成されたインペラベアリング面と、を備える、前記近位ベアリングアセンブリと、を備え、前記インペラベアリング面は、前記ドライブシャフトの前記中心軸から離れて第2の半径方向距離まで延び、前記第2の半径方向距離は、前記第1の半径方向距離以上である。
【0034】
実施例34において、実施例33に記載の血液ポンプでは、前記ピボット部材の近位部の追加部分の周囲に配置されたシリコーン緩衝部をさらに備える。
実施例35において、実施例33に記載の血液ポンプでは、前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面によって係合されるように構成された前記ピボット部材の遠位部の前記一部は、前記遠位ベアリングカップの前記近位側対向面の全体と係合するように構成されている。
【0035】
複数の実施形態が開示されているが、本発明の主題のさらに他の実施形態は、開示された主題の例示的な実施形態を示し説明する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に例示的なものと見なされるべきであり、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本明細書に開示される主題の実施形態による、例示的な機械的循環補助装置(本明細書では、「血液ポンプ」とも呼ばれる)の一部を示す部分透視側面図。
図2】本明細書に開示される主題の実施形態による、図1に示す循環補助装置の側断面図。
図3】本明細書に開示される主題の実施形態による、図2に示す循環補助装置の側断面の一部拡大図。
図4】本明細書に開示される主題の実施形態による、図2に示す循環補助装置の側断面の一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
開示された主題は、様々な修正および代替の形態に適用できるが、特定の実施形態を、例として図面に示し、以下で詳細に説明する。しかしながら、その意図は、本明細書に開示される主題を、説明された特定の実施形態に限定することではない。それどころか、本開示は、本明細書に開示される主題の範囲内にありかつ添付の特許請求の範囲によって定義されるすべての修正、同等物、および代替物を網羅することを意図している。
【0038】
値(例えば、有形のもの(例えば、製品、在庫など)の特性(例えば、寸法、測定値、属性、構成要素など)および/またはその範囲に関連して本明細書で使用される大きさ、測定、および/またはその他定性的および/または定量的観測の程度についての用語)とともに本明細書で使用されるとき、「約」および「略」は、記載された値、構成、向き、および/またはその他特性と等しい(もしくは同じ)値、構成、向き、および/またはその他特性を指すために、または、記載された値、構成、向き、および/またはその他特性に合理的に近い値、構成、向き、および/またはその他特性と等しい(もしくは同じ)値、構成、向き、および/またはその他特性を指すために、互換的に使用され得、それは、測定誤差、測定および/または製造機器の校正におけるズレ、測定値の読み取りおよび/または設定におけるヒューマンエラー、その他測定値(例えば、他のものに関連する測定値)を考慮して性能および/または構造パラメータを最適化するために行われる調整、特定の実装シナリオ、人、計算装置、および/またはマシンによる物事、設定、および/または測定値の不正確な調整および/または操作、システム公差、制御ループ、機械学習、予見可能な変動(例えば、統計的に有意でない変動、無秩序な変動、システムおよび/またはモデルの不安定性など)、環境設定、および/または同様のものに起因することが当業者によって理解されかつ容易に確認されるような合理的にわずかな程度で異なり得る。
【0039】
特に血液ポンプの構成要素間の間隙が原因で、ベアリング内およびベアリングの周囲の血液領域が停滞すると、血栓が形成されやすくなる。本明細書に開示される主題の実施形態は、血栓形成の可能性を最小化するために、これらの間隙および停滞領域を最小化したり完全に排除したりすることを容易にする。既存のベアリング設計は、部品のサイズと複雑さを最小限に抑え、より標準的なベアリングの形状とサイズを利用することを目的としている。ベアリング構成要素のサイズを大きくすると、これらの間隙/領域が埋められ、血液の停滞領域がなくなり、ポンプを通過する層流が促進される。ベアリングの設計に高温材料を使用すると、より大きな形状と発熱の増加に耐えることができる。実施形態では、第1の遠位側ベアリングスリーブは、ベアリングシャフトをポンプ構成要素と整合された状態に保ち、シリコーン製の第2の遠位側ベアリングスリーブは、血液がベアリングチャンバに入るのを防止するための緩衝部および密封機構の両方として機能する。本明細書において「近位」および「遠位」という用語を使用するとき、「近位」とは、挿入の方向と反対の大まかな方向、すなわち、対象者の体内から出るために装置に沿って移動する方向を指し、一方、遠位とは、移植の大まかな方向、すなわち、対象者の体内に進むように構成された装置の端に到達するために装置に沿って移動する方向を指す。
【0040】
図1は、本明細書に開示される主題の実施形態による、例示的な経皮的機械的循環補助装置100(本明細書では、「血液ポンプ」とも呼ばれる)の一部の部分透視図であり、インペラアセンブリハウジング108が透明なものとして示されている。図2は、図1に示す循環補助装置100の側断面図である。図3は、図2に示す循環補助装置100の側断面図の一部の拡大図である。図1図2に示すように、循環補助装置100は、モータハウジング104内に配置されたモータ102を含む。モータ102は、装置100を通過する血液の流れを形成するためにインペラアセンブリ106を駆動するように構成されている。インペラアセンブリ106は、画定された多数の出口開口部110を含むインペラアセンブリハウジング108内に配置されている。実施形態によれば、モータハウジング104およびインペラアセンブリハウジング108は、互いに一体構成されてもよい。他の実施形態では、モータハウジング104およびインペラアセンブリハウジング108は、取り外し可能にまたは永久的にともに結合されるように構成されてもよい。
【0041】
制御部(図示せず)は、モータ102に動作可能に接続され、モータ102を制御するように構成されている。制御部は、実施形態ではモータハウジング104内に配置されてもよく、または他の実施形態では、ハウジング104の外側に(例えば、カテーテルハンドル、独立したハウジングなどに)配置されてもよい。実施形態では、制御部は、複数の構成要素を含んでもよく、そのうちの1つ以上は、ハウジング104内に配置されてもよい。実施形態によれば、制御部は、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)、1つ以上のプログラマブルロジックデバイス(PLD:programmable logic device)、1つ以上のコンプレックスPLD(CPLD:complex programmable logic device)、1つ以上のカスタム特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、1つ以上の専用プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)、1つ以上の中央処理装置(CPU:central processing unit)、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはこれらおよび/または他の構成要素の任意の組み合わせであってもよいし、それを含んでもよいし、それに含まれてもよい。制御部は、本明細書では単数形で説明されているが、制御部は、複数のインスタンスにおいて実装されてもよいし、複数の計算装置に分散されてもよいし、複数の仮想マシン内で具体化されてもよいし、および/または同様なものであってもよい。
【0042】
図2に示すように、インペラアセンブリ106は、ドライブシャフト112およびドライブシャフトに結合されたインペラ114を含み、ドライブシャフト112は、インペラ114と共に回転するように構成されている。図に示すように、ドライブシャフト112は、少なくとも部分的にインペラ114内に配置される。実施形態では、ドライブシャフト112は、例えば、鋼、チタン合金、コバルトクロム合金、ニチノール、高強度セラミックなど任意の数の異なる剛性材料で作られてもよい。インペラアセンブリ106は、インペラ114の近位端118に固定されたインペラロータ116をさらに含む。インペラロータ116は、追加的に、または代替的に、ドライブシャフト112に結合されてもよい。インペラロータ116は、モータ102の一部であるステータ118によって駆動されることが可能な任意のタイプの磁気ロータであってもよい。このようにして、モータ102内のステータ118によってインペラロータ116に磁場が加えられると、ロータ116が回転し、これによりインペラ114を回転させる。
【0043】
図1図2に示すように、インペラアセンブリ106は、第1の近位端120で第1の(近位)ベアリングアセンブリ122によって、第2の遠位端124で第2の(遠位)ベアリングアセンブリ126によって、保持されることによってその向きに維持される。実施形態によれば、近位ベアリングアセンブリ122および遠位ベアリングアセンブリ126は、異なる種類のベアリングを含んでもよい。実施形態によれば、近位ベアリングアセンブリ122および遠位ベアリングアセンブリ126の両方または一方は、潤滑を含んでもよいが、他の実施形態では、その両方または一方が、潤滑を含まなくてもよい。
【0044】
実施形態によれば、近位ベアリングアセンブリ122は、遠位側対向面130を有するスラストプレート128を含む。スラストプレート128は、例えば、サファイアなどの鉱物で作られ得る。本明細書に記載の設計は、遠位側対向面130とインペラアセンブリ106のインペラベアリング面132との間に間隙が形成されないような構成にしてもよい。インペラアセンブリ106のインペラベアリング面132は、遠位側対向面130に沿うようにドーム状にされて湾曲してもよい。インペラベアリング面132は、遠位側対向面130の全体に係合するように構成されてもよい。実施形態では、インペラベアリング面132は、ドライブシャフト112の近位端134に結合されてもよい。実施形態では、インペラベアリング面132は、ロータ116の少なくとも近位側面上に配置されるように構成された磁石カバーの近位面を含んでもよい。他の実施形態では(例えば、直接駆動の実装形態において)、インペラベアリング面132は、インペラ114の近位側面、ロータ116の近位側面などを含んでもよい。
【0045】
図に示すように、インペラベアリング面132は、インペラアセンブリ106の近位端118とスラストプレート128との間に間隙がないような構成とされている。すなわち、ロータは、ドライブシャフト112の中心軸140から第1の半径方向における距離138に位置する外側面136を有する円筒形磁気ロータからなり、インペラベアリング面132は、ドライブシャフト112の中心軸140から離れて第2の半径方向における距離142まで延びており、この場合、第2の半径方向における距離142は、第1の半径方向における距離138より大きい。同様に、スラストプレート128は、湾曲した遠位側対向面130が、ドライブシャフト112の中心軸140から離れて第3の半径方向における距離144まで延びるような構成としてもよく、この場合、第3の半径方向における距離144は、第2の半径方向における距離142より大きい。
【0046】
図3に示すように、遠位ベアリングアセンブリ126は、ドライブシャフト112の遠位端148に結合されたピボット部材146と、ピボット部材146の遠位部154の少なくとも一部と係合するように構成された近位側対向面152を有する遠位ベアリングカップ150とを含む。ピボット部材146は、実施形態では、セラミックであってもよく、遠位ベアリングカップは、サファイアなどの鉱物で作られてもよい。スリーブベアリング156が、ピボット部材146の近位部158の少なくとも一部の周囲に配置されてもよい。図に示すように、例えば、ピボット部材146の近位部158は、円筒形をなし、近位端160でドライブシャフト112の遠位端148に結合されかつ遠位部154における遠位端162で終端する。ピボット部材146の遠位部154は、ドーム状をなし、中心軸140に対して半径方向に延びかつ近位部158の外側円筒形面166に対して少なくともほぼ直交する第1の近位側対向面164を有する。第2の湾曲状の面168は、第1の表面164の外縁部170から延びる。第2の表面168は、遠位ベアリングカップ150の近位側対向面152の湾曲に沿うように構成された湾曲部分を含む。
【0047】
図に示すように、スリーブベアリング156は、ピボット部材146の近位部158の外側面166とインペラ114の内側面172との間に配置されている。インペラ114は、ドライブシャフト112に固定されかつスリーブベアリング156の周囲をドライブシャフト112と共に回転するように構成されてもよい。図3および図4に示すように、遠位ベアリングアセンブリ126は、ピボット部材146の近位部158の追加部分の周囲に配置されたシリコーン緩衝部174をさらに含む。実施形態によれば、シリコーン緩衝部174は、ピボット部材146の近位部158の外側面166の一部と係合するように構成された円筒形内側面178を有する近位部176を含む。実施形態によれば、シリコーン緩衝部174は、ピボット部材146の遠位部154の第1の表面164と係合するように構成された遠位側対向内側面182と、インペラ114の遠位縁部188と係合するように構成された近位側対向外側面184と、を有する遠位部180をさらに含む。
【0048】
実施形態によれば、シリコーン緩衝部174は、インペラアセンブリ106の適切な軸方向荷重を維持するよういくらかの圧縮を可能にするために少なくとも部分的に圧縮可能である。実施形態では、シリコーン緩衝部174はまた、インペラ114と近位ベアリング126との間のシールとして機能するように構成されてもよい。実施形態では、シリコーン緩衝部174は、締り嵌めにより所定の位置に維持されるように構成されている。これにより、遠位ベアリングカップ150が静止したままピボット部材146が確実にインペラ114と共に回転するのを容易にすることもできる。
【0049】
図1~4に示す循環補助装置100は、本発明の実施形態の使用範囲または機能性に関する制限を示唆することを意図するものではない。循環補助装置100はまた、図に示す任意の単一の構成要素または複数の構成要素の任意の組み合わせに関連する依存性または要件を有すると解釈されるべきではない。さらに、図1~4に示す様々な構成要素は、実施形態では、図に示す他の構成要素のうちの様々なもの(および/または図示されていない構成要素)と統合されてもよく、これらのすべては、本発明の範囲内にあると見なされる。
【0050】
本発明の範囲から逸脱することなく、記載した例示的な実施形態に様々な修正および追加を行うことができる。例えば、上記の実施形態は特定の特徴に言及しているが、本発明の範囲は、特徴の異なる組み合わせを有する実施形態および説明された特徴のすべてを含まない実施形態も含む。したがって、本発明の範囲は、それらのすべての同等物とともに、特許請求の範囲に含まれるすべてのそのような代替形態、変更形態、およびバリエーションの形態を包含することを意図している。
図1
図2
図3
図4