(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】追跡の不正確性の補償
(51)【国際特許分類】
A61B 6/12 20060101AFI20231030BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20231030BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20231030BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20231030BHJP
【FI】
A61B6/12
A61B6/00 370
A61B6/03 360G
A61B6/03 377
A61B34/20
(21)【出願番号】P 2022520571
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2020053989
(87)【国際公開番号】W WO2021160294
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】514130426
【氏名又は名称】ブレインラボ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウーデ,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイザー,マンフレート
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0364807(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0281385(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108030551(CN,A)
【文献】特表2015-504721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
A61B 17/00 - 17/94
A61B 34/00 - 34/37
A61B 90/00 - 90/98
G16H 40/00 - 40/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する、追跡の不正確性を補償する医学的方法であって、
a)
コンピュータが、解剖学的身体部位(8)の三次元表現を記述する空間画像データ
を取得
するステップ(S11)と、
b)
コンピュータが、身体部位(8)の三次元表現に関する追跡可能な装置(7)の所望の空間的配置(9)を記述する目標配置データ
を取得
するステップ(S12)と、
c)
コンピュータが、追跡可能な装置(7)の所望の空間的配置(9)を備える身体部位(8)の三次元表現と身体部位(8)との空間的な照合を記述する空間照合データ
を取得
するステップ(S13)と、
d)
コンピュータが、追跡可能な装置(7)の現在の空間的配置(10)を記述する追跡配置データ
を取得
するステップ(S14)と、
e)
コンピュータが、空間照合データおよび追跡配置データに基づいて、追跡可能な装置(7)を身体部位(8)に対して所望の配置(9)に配置決めするための指示を記述する制御データ
を決定
するステップ(S15)と、
f)
コンピュータが、制御データに基づいて所望の空間的配置(9)に配置された追跡可能な装置(7)および身体部位(8)の二次元投影画像(12)を取得するための投影撮像装置(11)の配置設定を記述する撮像設定データ
を取得
するステップ(S16)と、
g)
コンピュータが、二次元投影画像(12)を記述する投影画像データ
を取得
するステップ(S17)と、
h)
コンピュータが、撮像設定データ、投影画像データ、および空間照合データに基づいて、二次元投影画像(12)に示される追跡可能な装置(7)の空間的配置と、追跡可能な装置(7)の所望の空間的配置(9)との間の偏差(13)を記述する配置検証データ
を決定
するステップ(S18)と、
i)
コンピュータが、配置検証データに基づいて、追跡可能な装置(7)の空間的配置の偏差(13)の配置補償を記述する配置訂正データ
を決定
するステップ(S19)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記所望の空間的配置(9)は、
- 追跡可能な装置の単一の空間的配置または複数の空間的配置、
- 追跡可能な装置の空間的配置の範囲、および、
- 追跡可能な装置の軌道、
のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投影画像データを取得することは、実質的に同じ撮像方向を有する少なくとも2つの投影画像(12)を取得することを含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
投影画像データを取得することは、異なる撮像方向を有する少なくとも2つの投影画像(12)を取得することを含み、配置訂正データは、取得された複数の投影画像(12)の異なる画像平面において決定される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
配置検証データを決定することは、
- 投影画像(12)における身体部位(8)の投影を、空間画像データから再構築された身体部位(8)の二次元表現に適合させること、および/または、
- 投影画像(12)における追跡可能な装置(7)の投影を、追跡装置(7)の三次元形状を記述するデータから再構築された追跡装置(7)の二次元表現に適合させること、を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
配置検証データを決定することは、投影画像(12)の二次元画像空間から身体部位(8)の三次元空間への配置データの変換を含む、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
撮像設定データを取得することは、空間照合データおよび/または追跡配置データに基づいている、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
投影撮像装置(11)の配置設定を選択することは、投影画像(12)の投影経路(14)を回避する必要がある少なくとも1つの物体および/または少なくとも1つの体積の空間的配置にさらに基づいている、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
追跡可能な装置の空間的配置(10)の偏差(13)の配置補償が、
- 追跡可能な装置(7)の三次元空間における空間的配置(10)に対して適用されるか、または、
- 医用追跡システム(4)によって検出された追跡可能な装置(7)の空間的配置に対して適用される、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの投影画像(12)は、蛍光透視法および/またはX線撮影法により取得される、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
追跡配置データは、
追跡可能な装置に結合された1つまたは複数の追跡マーカー(15)の空間的配置を決定するために適合された、
- 光学的追跡システム、
- 電磁的(EM)追跡システム、および
- 超音波追跡システム、
からなるグループから選択された医用の追跡システムにより取得される、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータプログラムであって、該コンピュータプログラムがコンピュータ(2)によって実行されるとき、コンピュータ(2)に請求項1から11のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムが格納されたコンピュータ可読なストレージ媒体。
【請求項14】
請求項13に記載されたストレージ媒体と、
a)請求項12に記載された
コンピュータプログラムを実行するように構成された少なくとも1つのコンピュータと、
b)少なくとも空間画像データを保存する少なくとも1つの電子データストレージ装置(3)と、
c)少なくとも追跡配置データを取得するための追跡システム(4)であって、制御データを送信するためのインターフェースを含む、追跡システム(4)と、
を含む医用システム(1)。
【請求項15】
患者に医療手順を行うための追跡可能な装置(7)をさらに含み、前記少なくとも1つのコンピュータは、
- 少なくとも1つのデータストレージ装置(3)から、少なくとも空間画像データを取得するための少なくとも1つの電子データストレージ装置(3)、および、
- 制御データに基づいて追跡可能な装置(7)の動作を制御するために追跡可能な装置(7)に対して制御信号を発するための追跡可能な装置(7)に、
動作可能に結合されていること、を特徴とする請求項1
4に記載のシステム。
【請求項16】
前記追跡可能な装置(7)は、医療手順を行うための医療器具(6)を保持する調整可能な支持構造(5)を含み、前記少なくとも1つのコンピュータ(2)は、制御データに基づく調整可能な支持構造(5)の動作の制御用として調整可能な支持構造(5)に制御信号を発するために、調整可能な支持構造に動作可能に結合されている、ことを特徴とする請求項1
4または1
5に記載のシステム。
【請求項17】
身体部位(8)および追跡可能な装置(7)に対してそれぞれ別の投影画像が取得される、および/または、投影画像(12)は身体部位(8)および追跡可能な装置(7)のそれぞれの投影に限定されている、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記変換は、空間照合データおよび追跡配置データからそれぞれ導出される身体部位(8)の三次元空間における追跡可能な装置(7)の所望の空間的配置(9)および/または現在の空間的配置(10)に基づいている、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
投影撮像装置(11)の配置設定が複数の可能な配置設定から選択され、該配置設定は、追跡可能な装置(7)の生じている可能性のある所望の空間的配置(9)からの空間的偏差(13)に関する情報を提供することが期待されるものである、および/または、追跡可能な装置(7)の所望の空間的配置(9)および/または追跡可能な装置(7)の予想される空間的偏差(13)の空間的方向に対して実質的に平行な画像平面を有する投影画像を提供する、投影撮像装置の配置設定が選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
前記配置補償は、
- 追跡可能な装置(7)または器具(6)を保持する原動機付き支持構造(5)を対応して制御することによって適用されるか、または、
- 医用ナビゲーションシステムのグラフィカルユーザインターフェース上に示される追跡可能な装置(8)の表現の空間的位置に対して適用される、
請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記追跡システム(4)または追加の追跡システムはさらに、少なくとも
- 解剖学的身体部位(8)、および
- 投影撮像装置(11)、
の空間的配置を決定するために適合されている、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記追跡システム(4)は、撮像設定データを取得するために投影撮像装置(11)に接続されたインターフェースを含んでいる、請求項1
4に記載のシステム。
【請求項23】
前記調整可能な支持構造は、多関節支持アームである、請求項1
6に記載のシステム。
【請求項24】
請求項13に記載のストレージ媒体を含むコンピュータ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータが実行する、追跡の不正確性を補償する方法、その方法に対応するコンピュータプログラム、そのようなプログラムが格納されたコンピュータ可読なプログラムストレージ媒体、およびそのプログラムを実行するコンピュータ、ならびに、電子データストレージ装置および前述のコンピュータを含む医用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ支援手術(computer assisted surgery:CAS)、放射線外科治療、および同様の医学分野において、解剖学的構造ならびに装置および器具の互いに対する空間的配置(空間的位置および/または空間的向き)を決定することは、いわゆる追跡(トラッキング)システム(例えば光学的追跡システム、電磁的(EM)追跡システム、または超音波追跡システム)が常に引き受ける、繰り返して生じる目標である。このような追跡システムは、空間的配置が決定されるべきまたは経時的に追跡されるべき物体に固く取り付けられたいわゆる追跡マーカーを認識するように適合されている。取り付けられた追跡マーカーの検出された空間的配置に基づいて実際の物体の空間的配置が算出できるようになる前に、ほとんどの場合、いわゆる照合手順が必要である。照合手順は、物体の実際の空間的配置を、物体に取り付けられた追跡マーカーの空間的配置に関して決定することである。
【0003】
あらゆる技術的設備と同様に、追跡手順には、限られた技術的能力および/または好ましくない環境条件に起因する測定の不正確性の結果、誤差が生じる可能性がある。
【0004】
追跡手順それ自体の間、すなわち追跡マーカーの検出に基づく物体の空間的配置の経時的な観察の間、マーカーの誤検出および他の有害な環境条件などの基礎的な誤差要因は基本的に経時的に変化しないため、起こり得る追跡誤差は通常あまり破壊的なものではない。一方、実際の追跡手順に先立つ物体の初期的な配置決めでは、マーカーの誤検出などの誤差が医療手順全体の結果に大きな影響を与え、最終的に追跡された物体の空間的配置が誤って算出される可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特に物体の初期的な配置決め時に発生する可能性のある誤差または不正確性を補償する方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、例えば、ブレインラボ社(Brainlab AG)の製品であるLoop-X(登録商標)のような撮像(イメージング)装置と関連して、任意の種類のコンピュータ支援手術(CAS)の手順に対して使用することが可能である。
【0007】
以下に、本発明の態様、例および例示的なステップ、並びにそれらの実施形態が開示される。本発明の様々な例示的な特徴は、技術的に有利かつ実行可能である限り、本発明に従って組み合わせることができる。
【0008】
(本発明の例の簡単な説明)
次に、本発明の特定の特徴を簡単に説明する。この説明は、本発明を、この節において説明される1つの特徴または複数の特徴の組み合わせのみに限定するものではない。
【0009】
開示される方法は、追跡システムによって提供される追跡データに基づいて、医用装置または器具のような物体を所望の空間的配置に移動させることを含む。物体が所望の空間的配置に到達したことが追跡データから決定されると、所望の空間的配置と照合されかつ物体を示す投影画像が生成される。この画像データにより、物体が実際に所望の配置に到達したのかどうか、あるいは物体の実際の配置が誤差または不正確性によって所望の配置から外れているのかどうかを検証することが可能となり、誤差または不正確性を補償するための手段を講じることができるようになる。
【0010】
(本発明の一般的な説明)
この節では、例えば、本発明の可能な実施形態を参照することによって、本発明の一般的な特徴を説明する。
【0011】
一般に、本発明は、第1の態様において、コンピュータが実行する、追跡の不正確性を補償する医学的方法を提供することによって、上述した目的を達成するものである。この方法は、少なくとも1つのコンピュータ(例えば、少なくとも1つのコンピュータはナビゲーションシステムの一部である)の少なくとも1つのプロセッサで、少なくとも1つのプロセッサが実行する以下の例示的なステップを実行することを含んでいる。
【0012】
1つの(例えば第1の)例示的なステップにおいて、解剖学的身体部位の三次元表現を記述する空間画像データが取得される。三次元表現は、解剖学的地図(アトラス)、すなわち解剖学的身体部位の統計モデルから得られものであってもよい。三次元表現はまた、解剖学的身体部位の三次元画像、例えば、それぞれCT撮像装置またはMRI装置により得られるCT画像データセットまたはMRIデータセットから得られるものであってもよい。さらに、解剖学的身体部位は、軟組織および/または骨構造を含む任意の身体部位であってもよい。脊椎手術に関連する特定の例では、解剖学的身体部分は、1つまたは複数の椎骨によって表されるものであってもよい。
【0013】
1つの(第2の)例示的なステップにおいて、身体部位の三次元表現に関する追跡可能な装置の所望の空間的配置を記述する目標配置データが取得される。言い換えれば、追跡可能な装置の所望の空間的配置は、追跡可能な装置が所望の空間的配置で静止したときに所望の通りに解剖学的身体部位と位置合わせされるように、解剖学的身体部分に対して定められる。例えば、そのような追跡可能な装置は、任意の医療用もしくは外科用の物体、装置、または器具であってもよい。脊椎手術の特定の例では、追跡可能な装置は、椎弓根(ペディクル)スクリューまたは椎弓根スクリューを取り扱うための対応する器具によって表されるものであってもよい。特に、所望の空間的配置は、所望の医学的結果を達成するために椎骨に対して椎弓根スクリューを前進させなければならない軌道によって表されるものであってもよい。
【0014】
1つの(例えば第3の)例示的なステップにおいて、追跡可能な装置の所望の空間的配置を備える身体部位の三次元表現と、実際の身体部位との空間的な照合(registration)を記述する空間照合データが取得される。言い換えれば、身体部位の三次元表現およびその表現に関して定められる所望の空間的配置が、実際の/現実の解剖学的身体部位と同じ座標系に移行される。これによって、追跡可能な装置の所望の空間的配置が、実際の解剖学的身体部位に関する実空間において既知となる。
【0015】
1つの(例えば第4の)例示的なステップにおいて、追跡可能な装置の現在の空間的配置を記述する追跡配置データが取得される。追跡配置データは、追跡システムにより取得される。
【0016】
1つの(例えば第5の)例示的なステップにおいて、取得された空間照合データおよび取得された追跡配置データに基づいて、追跡可能な装置を身体部位に対して所望の配置に配置決めするための指示を記述する制御データが決定される。言い換えれば、追跡システムから取得された追跡データは、その後、追跡可能な装置または器具を所望の配置に配置するために使用される。例えば、装置または器具は、制御データから導出される少なくとも1つの制御信号により指示される原動機付きキャリアまたは支持構造によって自動的に移動されるものであってもよく、または、例えばグラフィカルユーザインターフェース(GUI)上に出力され得る指示に基づいて実施者が手動で移動させるものであってもよい。装置または器具が所望の配置に移動すると、追跡システムは、最終的に所望の空間的配置に到達したことを示す。
【0017】
1つの(例えば第6の)例示的なステップにおいて、制御データに基づいて所望の空間的配置に配置された追跡可能な装置および身体部位の二次元投影画像を取得するための投影撮像装置の配置設定を記述する撮像設定データが取得される。二次元投影画像により追跡可能な装置の正しい配置を確認することが本方法の目的であるため、その画像の、少なくとも追跡可能な装置の所望の空間的配置に対する幾何学的配列は、既知でなければならない。投影撮像装置の構成要素の空間的配置を記述する必要なデータは、対応する構成要素に追跡マーカーを取り付けることを必要とするような上述のまたは別の追跡システムによって、または、座標系におけるこれらの構成要素の空間的配置を示すデータを提供するのに適した1つまたは複数のセンサー(例えば、撮像装置に組み込まれた位置決めセンサー)によって取得することができる。さらに、撮像装置の放射部と検出器との間の予め定められた距離のような撮像装置の既知の幾何学的特性から提供され得る情報があり、撮像設定データは、この情報にも基づくものであってもよい。さらに、検出器の画素の大きさおよび形状を考慮するものであってもよい。
【0018】
1つの(例えば第7の)例示的なステップにおいて、二次元投影画像を記述する投影画像データが取得される。このステップにおいて、投影撮像装置は、追跡可能な装置と解剖学的身体部位とを示す少なくとも1つの投影画像を生成するように制御される。したがって、その画像は、追跡システムが所望の空間的配置と見なす空間的配置にある追跡可能な装置を示すものである。
【0019】
1つの(例えば第8の)例示的なステップにおいて、撮像設定データ、投影画像データ、および空間照合データに基づいて配置検証データが決定される。配置検証データは、二次元投影画像に示される追跡可能な装置の空間的配置と、追跡可能な装置の所望の空間的配置との間の偏差を記述するものである。言い換えれば、このステップは、投影画像が撮像される前に追跡システムにより取得されたデータに基づいて、追跡システムにより得られた追跡可能な装置の所望の空間的配置と、追跡可能な装置が移動した実際の空間的配置とを比較するステップである。追跡可能な物体の空間的配置が追跡システムによって正しく認識された場合、すなわち、初期的な配置決めにいかなる(追跡)誤差もない場合、追跡可能な物体の実際の空間的配置は、所望の空間的配置と一致する。そうでない場合、画像は、実際の空間的配置と所望の空間的配置との間の偏差を示す。
【0020】
1つの(例えば第9の)例示的なステップにおいて、配置検証データに基づいて、追跡可能な装置の空間的配置の偏差の配置補償を記述する配置訂正データが決定される。上述したステップにおいて偏差が算出された場合、この偏差を補償するために適切な手段を講じることができる。例えば、決定された偏差に基づいて、変換行列を算出することができる。そして、さらなる追跡手順が追跡可能な物体の正しい空間的配置に基づくように、この行列を追跡データに適用することができる。代わりに、この行列は、実際の追跡可能な物体の配置に対して適用することも可能である。すなわち、実際の追跡可能な装置を正しい位置に移動させ、それによって偏差を補償することができる。
【0021】
より具体的な例によれば、追跡可能な装置のための所望の空間的配置は、
- 追跡可能な装置の単一の空間的配置または複数の空間的配置、
- 追跡可能な装置の空間的配置の範囲、および、
- 追跡可能な装置の軌道、
のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
例えば、追跡可能な装置または器具(特にその機能部分)が回転対称性を有している場合、所望の空間的配置は、装置または器具の対称軸回りの複数の空間的配置を含むものであってもよい。しかしながら、追跡可能な装置または器具がより複雑な構造を有する場合、所望の空間的配置は、単一の空間的配置によって表されるものであってもよい。さらに、例えば、装置が予め定義された平面内にまたはその平面と平行に整列することで十分である場合があるため、追跡可能な装置の空間的配置の範囲の全体が所望の空間的配置として定められるものであってもよい。さらに、装置または器具が直線または軌道に対して整列しているときに十分である場合があるため、その直線または軌道が所望の空間的配置として定められるものであってもよい。これは、スタイレット、カテーテル、ポインター器具、さらには釘やネジ(スクリュー)等の細長い器具または装置の場合であってもよい。
【0023】
さらなる、より具体的な例において、投影画像データを取得することは、実質的に同じ撮像方向を有する少なくとも2つの投影画像を取得することを含む。その際、特に、身体部位および追跡可能な装置に対してそれぞれ別の投影画像が取得され、具体的には、投影画像は身体部位および追跡可能な装置のそれぞれの投影に限定されている。
【0024】
単一の投影画像では、追跡可能な装置および解剖学的身体部位の両方を含めるために十分ではない場合があるため、そのような画像は、2つ以上の単一の投影画像で構成され得る。この点に関して、これらの画像は、実質的に同じ撮像方向を有する必要があることに留意することが重要である。それぞれの撮像方向間の小さな偏差は、画像の意図された目的のために許容される場合がある一方、より大きな偏差は、意図された結果(すなわち、追跡可能な装置の所望の空間的配置と実際の空間的配置との間の生じている可能性のある偏差を正確に決定すること)の信頼性を低めることになる。
【0025】
さらに、1つまたは複数の投影画像は、患者の放射線被曝をできるだけ低く抑えるために、例えば撮像装置のコリメーターを使用して、解剖学的身体部位および/または追跡可能な装置の投影に限定されるものであってもよい。次いで、2つ以上のこれらの限定されたまたは「コリメートされた」画像が単一の投影画像に結合されるものであってもよい。その際、特に、放射部および検出器は、取得される複数の画像に対してその位置が維持されるが、コリメーターの構成は、異なる画像に対して異なる(すなわち、それぞれの画像に含まれる解剖学的構造または追跡可能な装置の投影に限定される)ものである。さらに、患者の解剖学的構造の放射線に敏感な部分、ならびに、例えば画像のアーティファクトを引き起こす可能性のある医療器具を省略することが望ましい場合もある。
【0026】
さらなる例において、投影画像データを取得することは、異なる撮像方向を有する少なくとも2つの投影画像を取得することを含み、配置訂正データは、取得された複数の投影画像の異なる画像平面において決定される。単一の二次元投影画像は、その画像平面内で追跡可能な装置の生じている可能性のある偏差を決定するために十分であり、すなわち、生じている可能性のある偏差のうちの2つの並進自由度および1つの回転自由度を十分に明らかにすべきものである一方、別の空間方向に沿って取られたさらなる画像が、生じている可能性のある偏差の残りの自由度のほとんどを明らかにするのに役立つ場合がある。しかし、X線画像が生成される場合、これには患者への追加的な放射線被曝が伴い、望ましくない場合もある。
【0027】
投影画像が生成された後、追跡可能な装置の所望の空間的配置と実際の空間的配置との間の生じている可能性のある偏差は、投影画像においてのみ示されており、追跡システムまたはナビゲーションシステムのために処理可能ではない。そのため、明らかにされた1つまたは複数の偏差は、画像平面から三次元座標系(例えば、追跡システムの座標系)に変換される必要がある。
【0028】
したがって、別の具体例において、配置検証データを決定することは、
- 投影画像における身体部位の投影を、空間画像データから再構築された身体部位の二次元表現に適合させること、および/または、
- 投影画像における追跡可能な装置の投影を、追跡装置の三次元形状を記述するデータから再構築された追跡装置の二次元表現に適合させること、を含んでいる。
【0029】
身体部位の投影の適合により、追跡可能な装置の所望の空間的配置(例えば、計画された軌道)が画像平面内で決定され、その空間的向きは、空間画像データの座標系内で決定され得る。したがって、その後、所望の空間的配置を、実際の解剖学的身体部位の現実の三次元座標系および/または追跡システムの三次元座標系に変換することも可能となる。同じことが、追跡可能な装置の投影にも適用される。したがって、実際の解剖学的構造に割り当てられた三次元座標系または追跡システムに割り当てられた三次元座標系、あるいはそれらに照合された任意の他の三次元座標系内で空間的向きが既知である画像平面内で、追跡可能な装置の所望の空間的配置と実際の空間的配置との間の偏差を計算することができる。
【0030】
解剖学的構造および/または追跡システムの三次元座標系における画像平面の完全な空間的配置(「深度情報」、すなわち三次元座標系における撮像方向に沿った画像平面の配置、を追加で含む)を決定するために、配置検証データを決定することは、投影画像の二次元画像空間から身体部位の三次元空間への配置データの変換を含むものであってもよい。その際、特に、この変換は、空間照合データおよび追跡配置データからそれぞれ導出される身体部位の三次元空間における追跡可能な装置の所望の空間的配置および/または現在の空間的配置に基づいている。
【0031】
追跡可能な装置の実際の空間的配置だけでなく、所望の空間的配置も三次元座標系において既知であるため、この情報を用いて撮像方向に沿った画像平面の空間的配置を決定することができる。ここでは、生じている可能性のある配置誤差は無視できる。
【0032】
さらなる例において、撮像設定データを取得することは、空間照合データおよび/または追跡配置データに基づいている。その際、特に、投影撮像装置の配置設定が複数の可能な配置設定から選択され、この配置設定は、追跡可能な装置の生じている可能性のある所望の空間的配置からの空間的偏差に関する貴重な情報を提供することが期待されるものである。特に、追跡可能な装置の所望の空間的配置および/または追跡可能な装置の予想される空間的偏差の空間的方向に対して実質的に平行な画像平面を有する投影画像を提供する、投影撮像装置の配置設定が選択される。
【0033】
言い換えれば、投影撮像装置は、取得された単一の投影画像が、生じている可能性のある偏差に関して可能な限り最善の情報を提供するように、追跡可能な装置の実際の空間的配置および/または所望の空間的配置に対して配置される。例えば、ある空間的方向に沿った並進偏差が関心対象であるかまたは予想される場合、投影撮像装置は、撮像方向がその偏差の方向に対して、最善の状態では、垂直であるように配置されることが望ましい。回転偏差が関心対象であるかまたは予想される場合には、撮像方向は、その回転軸に対して、最善の状態では、平行であるべきである。
【0034】
さらに、撮像設定データを取得するステップは、投影画像の投影経路を回避する必要がある少なくとも1つの物体および/または少なくとも1つの体積の空間的配置にも基づいていてもよい。例えば、投影撮像装置は、患者の解剖学的構造の放射線に敏感な部分が投影撮像装置によって放射される放射線を受けないように配置されるものであってもよい。同じことが、追跡可能な装置および解剖学的身体部位に隣接して配置され、取得される画像中にアーティファクトを引き起こす可能性がある医療器具にも適用され得る。
【0035】
上述したような方法によって、追跡可能な装置の所望の空間的配置と実際の空間的配置との間の望ましくない偏差が明らかになった後、追跡可能な装置の空間的配置の偏差の配置補償が、
- 追跡可能な装置の三次元空間における空間的配置に対して、特に追跡可能な装置を保持する原動機付き支持構造を対応して制御することによって、適用されるものであってもよく、または、
- 医用追跡システムによって検出された追跡可能な器具の空間的配置に対して、特に医用ナビゲーションシステムのグラフィカルユーザインターフェース上に示される追跡可能な装置の表現の空間的位置に対して、適用されるものであってもよい。
【0036】
したがって、特に、追跡可能な装置または器具が電動多関節支持アームなどの機械的支持構造により保持される場合、追跡可能な装置の実際の空間的配置を、所望の空間的配置と一致するように訂正することができる。他方、特に、追跡可能な装置が実施者によって保持される場合、ディスプレイ上に示される器具の表現の空間的配置を、実施者が追跡可能な装置を最終的に所望の空間的配置に持っていくために必要な調整を行うことができるように、実際の空間的配置に訂正することができる。
【0037】
例えば、上述した投影画像のうちの少なくとも1つは、蛍光透視法および/またはX線撮影法により取得されるものであってもよい。
【0038】
さらに、追跡配置データは、
追跡可能な装置に結合された1つまたは複数の追跡マーカーの空間的配置を決定するために適合された、
- 光学的追跡システム、特にIR追跡システム、
- 電磁的(EM)追跡システム、および
- 超音波追跡システム、
からなるグループから選択された医用追跡システムにより取得されるものであってもよく、
特に、これらの追跡システムまたは追加の追跡システムはさらに、少なくとも
- 解剖学的身体部位、および
- 投影撮像装置、特に、その放射部および/または検出器、
の空間的配置を決定するために適合されているものであってもよい。
【0039】
第2の態様において、本発明は、少なくとも1つのコンピュータで実行されたとき、その少なくとも1つのコンピュータに第1の態様に従う方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムに関する。代わりにまたは加えて、本発明は、例えば第1の態様に従う方法のいずれかのまたは全てのステップを実行するように適合されたコード手段を含んでいるプログラム(例えば、上述したプログラム)を表す情報を搬送する電磁搬送波のような、(物理的な、例えば電気的な、例えば光学的に生成された)信号波、例えばデジタル信号波、に関するものであってよい。この信号波は、一例では、上述したコンピュータプログラムを搬送するデータ搬送信号である。ディスクに格納されたコンピュータプログラムはデータファイルであり、このファイルが読み出されて送信されると、それは例えば(物理的な、例えば電気的な、例えば工学的に生成された)信号の形態でデータストリームとなる。この信号は、例えば本明細書に記載された電磁搬送波のような、信号波として実現することができる。例えば、信号(例えば信号波)は、コンピュータネットワーク、例えばLAN、WLAN、WAN、モバイルネットワーク、例えばインターネットを介して送信されるように構成される。例えば、信号(例えば信号波)は、光または音響によるデータ伝送によって伝送されるように構成される。したがって、第2の態様に従う発明は、代替的にまたは追加的に、上述したプログラムを表す、すなわちプログラムを含む、データストリームに関するものであってもよい。
【0040】
第3の態様において、本発明は、第2の態様に従うプログラムが保存されたコンピュータ可読なストレージ媒体に関する。プログラムのストレージ媒体は、例えば非一時的なものである。
【0041】
第4の態様において、本発明は、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、1つのプロセッサ)を含む、少なくとも1つのコンピュータ(例えば、1つのコンピュータ)に関する。第2の態様に従うプログラムは、このプロセッサで実行されるか、または、少なくとも1つのコンピュータは、第3の態様に従うコンピュータ可読なストレージ媒体を含んでいる。
【0042】
第5の態様において、本発明は、
a)第4の態様に従う少なくとも1つのコンピュータ、
b)少なくとも空間画像データを保存する少なくとも1つの電子データストレージ装置(3)、および、
c)患者に対して医療手順を行うための追跡可能な装置(4)であって、少なくとも1つのコンピュータが動作可能に結合されている追跡可能な装置、
を含む医用システムに関する。
【0043】
その代わりにまたはそれに加えて、第5の態様に従う発明は、第4の態様に従うコンピュータに第1の態様に従う方法のデータ処理ステップを実行させるためのプログラムが格納された、例えば非一時的な、コンピュータ可読なプログラムストレージ媒体に関する。
【0044】
例えば、本発明は、侵襲的手順を伴うものではなく、特に含むものでもまたは包含するものでもない。この侵襲的手順は、身体に対する実質的な物理的干渉を意味し、医療の専門家によって実施されることを要するともともに、必要とされる専門的配慮と技能をもって実施された場合でも、健康に対する実質的な危険性を伴うものである。
【0045】
例えば、本発明は、解剖学的構造に固定するために医用インプラントまたは追跡マーカーを位置決めするステップ、医用インプラントまたは追跡マーカーを解剖学的構造に固定するステップ、または医用インプラントまたは追跡マーカーを固定させるために解剖学的構造を準備するステップを含まない。より詳細には、本発明は、いかなる外科的または治療的な活動も伴うものではなく、特に含むものでもまたは包含するものでもない。
【0046】
(装置またはシステムの使用)
また、本発明は、医療手順を実行するための装置/システムまたはその任意の実施形態の使用に関するものである。
【0047】
(定義)
この節では、本開示の一部として、本開示で使用される特有の用語の定義が提供される。
【0048】
(コンピュータが実行する方法)
本発明に従う方法は、コンピュータが実行する方法である。例えば、コンピュータ(例えば、少なくとも1つのコンピュータ)は、本発明に従う方法の全てのステップまたは幾つかのステップのみ(すなわち、全てのステップよりも少数のステップ)を実行することができる。コンピュータが実行する方法の一実施形態は、データ処理方法を実行するためにコンピュータを使用することである。コンピュータが実行する方法の一実施形態は、コンピュータが本方法の1つの、複数の、または全てのステップを実行するように操作されるようなコンピュータの操作に関する方法である。
【0049】
コンピュータは、例えば電子工学的および/または光学的に、データを(工学的に)処理するために、例えば、少なくとも1つの処理装置(プロセッサ)と例えば少なくとも1つの記憶装置(メモリー)とを含んでいる。処理装置は、例えば、半導体である物質または組成物からなる。この半導体または組成物は、例えば少なくとも部分的にn型および/またはp型の、例えばII族、III族、IV族、V族、VI族の半導体材料のうちの少なくとも1つの、半導体であり、例えば(ドープされた)ケイ素および/またはガリウム・ヒ素である。説明されている計算する(算出する)ステップまたは決定する(特定する、定める、判定する)ステップは、例えば、コンピュータが実行する。決定するステップまたは計算するステップは、例えば、技術的方法のフレームワーク、例えばプログラムのフレームワーク、においてデータを決定する(特定する、定める、判定する)ステップである。コンピュータは、例えば、任意の種類のデータ処理装置であり、例えば電子データ処理装置である。コンピュータは、例えば、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、ノートブック型パーソナルコンピュータ、ネットブック型パーソナルコンピュータ等の、一般的にコンピュータと見なされる装置であってもよい。但し、コンピュータは、例えば携帯電話機または埋め込み型プロセッサ等の、任意のプログラム可能な装置であってもよい。
【0050】
コンピュータは、例えば、複数の「下位コンピュータ」のシステム(ネットワーク)を含むものであってもよい。ここで、各下位コンピュータは、それ自体がコンピュータに相当する。「コンピュータ」という用語は、クラウドコンピュータ、例えばクラウドサーバを含む。また「コンピュータ」という用語は、サーバリソースを含む。「クラウドコンピュータ」という用語は、クラウドコンピュータシステムを含む。クラウドコンピュータシステムは、例えば、少なくとも1つのクラウドコンピュータを含むシステム、および、例えば、サーバファームなどのように、動作可能に相互接続された複数のクラウドコンピュータを含む。このようなクラウドコンピュータは、好ましくは、ワールドワイドウェブ(WWW)のような広域ネットワークに接続され、全てワールドワイドウェブに接続された複数のコンピュータからなるいわゆるクラウド中に存在する。このような基盤構造は、「クラウドコンピューティング」に使用される。クラウドコンピューティングとは、特定のサービスを提供するコンピュータの物理的位置および/または構成についてエンドユーザが知る必要のない計算、ソフトウェア、データのアクセスおよびストレージサービスをいう。この点において、「クラウド」という用語は、例えば、インターネット(ワールドワイドウェブ)の暗喩として使用される。例えば、クラウドは、そのサービスとして計算の基盤構造を提供する(IaaS)。クラウドコンピュータは、本発明に係る方法を実行するために使用されるオペレーティングシステムおよび/またはデータ処理アプリケーションのための仮想ホストとして機能するものであってもよい。クラウドコンピュータは、例えば、Amazon Web Services(登録商標)によって提供される Elastic Compute Cloud(EC2)である。
【0051】
コンピュータは、例えば、データの入出力および/またはアナログ-デジタル変換を実行するためのインターフェースを含む。このデータは、例えば、物理的特性を表すデータおよび/または工学的信号から生成されたデータである。工学的信号は、例えば、(工学的)検出装置(例えば、マーカーデバイスを検出するための装置)および/または(工学的)解析装置(例えば、(医療用の)イメージング(撮像)方法を実行する装置)であり、この場合、工学的信号は、例えば、電気信号または光信号である。工学的信号は、例えば、コンピュータにより受信または出力されたデータを表す。
【0052】
コンピュータは、好ましくは、表示装置に動作可能に結合される。表示装置は、コンピュータによって出力された情報を、例えばユーザに対して、表示することを可能にする。表示装置の一例は、仮想現実デバイスまたは拡張現実デバイス(仮想現実メガネまたは拡張現実メガネとも呼ばれる)であり、これをナビゲーションのための「ゴーグル」として使用することができる。このような拡張現実メガネの特定の例は、グーグル社製のグーグル・グラス(登録商標)である。拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスは、ユーザ相互作用による情報のコンピュータへの入力と、コンピュータによって出力された情報の表示の両方に使用することができる。表示装置の別の例は、標準的なコンピュータ用モニターである。このモニターには、例えば、表示装置上に画像情報のコンテンツを表示するために使用される信号を生成するためのコンピュータからの表示制御データを受信するために、コンピュータと動作可能に結合される液晶ディスプレイが含まれる。このようなコンピュータ用モニターの特定の実施形態は、デジタル・ライトボックスである。このようなデジタル・ライトボックスの一例は、ブレインラボ社(Brainlab AG)の製品であるBuzz(登録商標)である。モニターは、可搬型の、例えば携帯型の、デバイスのモニターであってもよい。携帯型のデバイスは、例えば、スマートフォン、またはパーソナル・デジタル・アシスタント、または、デジタル・メディア・プレーヤーである。
【0053】
また、本発明は、コンピュータ上で実行されるプログラムであって、コンピュータ上で実行されたときに、本明細書に記載された方法のうちの1つ、複数、または全てのステップをコンピュータに実行させるプログラム、および/または、上記プログラムが(特に、非一時的な形式で)格納されたプログラムストレージ(記憶)媒体、および/または、上記プログラムストレージ媒体を含むコンピュータ、および/または、プログラム(例えば、本明細書に記載された方法の任意のまたは全てのステップを実行するために適したコード手段を含む上記プログラム)を表す情報を搬送する電磁搬送波のような、(物理的な、例えば電気的な、例えば工学的に生成された)信号波、例えばデジタル信号波、にも関する。信号波は、一例において、上述したプログラムを搬送するデータ搬送信号である。本発明は、少なくとも1つのプロセッサ、および/または上述したコンピュータ可読なストレージ媒体、および、例えばメモリーを含み、プログラムがプロセッサによって実行されるコンピュータにも関する。
【0054】
本発明のフレームワークにおいて、コンピュータプログラム要素は、ハードウェアおよび/またはソフトウェア(これには、ファームウェア、常駐型ソフトウェア、マイクロコード等が含まれる)によって実現され得る。本発明のフレームワークにおいて、コンピュータプログラム要素は、コンピュータプログラム製品の形をとるものであってもよい。コンピュータプログラム製品は、コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データ記憶媒体として実現されるものであってもよい。このデータ記憶媒体には、命令実行システム上でまたは命令実行システムと関連して使用するために、このデータ記憶媒体内に具体的に表されている、コンピュータが使用可能な、特にコンピュータが読み取り可能なプログラム命令、「コード」、または「コンピュータプログラム」が含まれる。このようなシステムは、コンピュータであってもよい。コンピュータは、本発明に従うコンピュータプログラム要素および/またはプログラムを実行するための手段を含むデータ処理装置、例えば、コンピュータプログラム要素を実行するためのデジタルプロセッサ(中央処理装置またはCPU)を含み、さらに、任意選択で、コンピュータプログラム要素を実行するために使用されるデータ、および/または、コンピュータプログラム要素を実行することによって生成されたデータを保存するための揮発性記憶装置(特に、ランダムアクセスメモリーまたはRAM)を含むデータ処理装置であってもよい。
【0055】
本発明のフレームワークにおいて、コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データ記憶媒体は、命令実行システム、命令実行装置、または命令実行デバイス上で、または、これらのシステム、装置、デバイスと関連して使用するためのプログラムについて、それを含む、それを保存する、それと通信する、それを伝搬させる、またはそれを輸送することが可能な任意のデータ記憶媒体とすることができる。コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データ記憶媒体は、例えば、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、または半導体のシステム、装置、またはデバイスであってもよく、もしくは、例えばインターネットのような伝搬媒体であってもよいが、これらに限定されるものではない。コンピュータが使用可能なまたはコンピュータが読み取り可能なデータ記憶媒体は、例えば、プログラムが印刷された紙または他の適切な媒体ですらあってもよい。それは、例えば、紙または他の適切な媒体を光学的にスキャンすることによりプログラムを電子的に取り込み、次いで、適切な手段によりコンパイル、インタープリット、または、他の処理をすることが可能であるからである。データ記憶媒体は、好ましくは、不揮発性のデータ記憶媒体である。
【0056】
本明細書に記載されたコンピュータプログラム製品、並びに、任意のソフトウェアおよび/またはハードウェアは、例示的な実施形態において、本発明の機能を実施するための様々な手段の形をとるものである。コンピュータおよび/またはデータ処理装置は、例えば、ガイダンス情報を出力するための手段を含むガイダンス情報装置を含むものであってもよい。ガイダンス情報は、例えば、視覚的指示手段(例えば、モニターおよび/またはランプ)による視覚的な方法、および/または、音響的指示手段(例えば、スピーカーおよび/またはデジタル音声出力装置)による音響的な方法、および/または、触覚的指示手段(例えば、振動要素または機器に組み込まれた振動要素)による触覚的な方法により、例えばユーザに対して、出力されるものであってもよい。本明細書において、コンピュータは工学的コンピュータであり、例えば工学的な(例えば触知可能な)構成要素、例えば機械的な構成要素、および/または、電子的な構成要素を含むものである。本明細書にこのように記載された任意の装置は、工学的な、例えば触知可能な、装置である。
【0057】
(データの取得)
「データを取得する」という表現には、例えば、(コンピュータが実行する方法のフレームワークにおいて)コンピュータが実行する方法またはプログラムがデータを決定する(特定する、定める、判定する)ことが含まれる。データを決定することには、例えば、物理量を測定し、その測定値を、例えばデジタルデータのような、データに変換すること、および/または、そのデータをコンピュータにより計算すること、特に、本発明に従う方法のフレームワークにおいてデータを計算する(および、例えば、出力する)ことが含まれる。本明細書に記載されている「決定する」ステップは、例えば、本明細書に記載されている決定を実行するためのコマンドを発行することを含むか、またはそのコマンドを発行することから構成される。例えば、このステップは、コンピュータ、例えばリモートコンピュータ、例えばリモートサーバ、例えばクラウドに、決定を実行させるためのコマンドを発行することを含むか、またはそのコマンドを発行することから構成される。その代わりにまたはそれに加えて、本明細書に記載されている「決定する」ステップは、例えば、本明細書に記載されている決定の結果としてのデータを受信すること、例えば、決定を実行させたそのリモートコンピュータから結果としてのデータを受信すること、を含むか、またはそのデータを受信することから構成される。例えば、「データを取得する」の意味には、コンピュータが実行する方法またはプログラムが、例えば別のプログラム、該方法の先行するステップ、またはデータ記憶媒体からのデータを、例えばコンピュータが実行する方法またはプログラムによる後の処理のために、受け取ることまたは取り出すこと(例えば、そのデータがプログラムに入力されること)も含まれる。本発明に従う方法において、取得されるデータの生成は、本発明に従う方法の一部であってもよいが、そうである必要はない。したがって、「データを取得する」という表現は、例えば、データを受け取るために待機すること、および/またはそのデータを受け取ることを意味する場合もある。受け取られたデータは、例えば、インターフェースを介して入力されるものであってもよい。また、「データを取得する」という表現は、コンピュータが実行する方法またはプログラムが、例えばデータ記憶媒体(例えば、ROM、RAM、データベース、ハードドライブ等)のようなデータ源から、または(例えば、別のコンピュータまたはネットワークから)インターフェースを介して、データを(能動的に)受け取るまたは取り出すためのステップを実行することを意味する場合もある。
【0058】
開示された方法または装置のそれぞれによって取得されるデータは、データストレージ装置中にあるデータベースから取得されるものであってもよい。このデータストレージ装置は、データベースとコンピュータとの間の、例えばデータベースからコンピュータへの、データ転送のために、コンピュータに動作可能に結合されるものである。コンピュータは、データを決定するステップのための入力として使用するためにデータを取得する。決定されたデータは、同じまたは別のデータベースに再び出力され、後の使用のために保存されるものであってもよい。このデータベースもしくは開示された方法を実行するために使用されるデータベースは、ネットワークデータストレージ装置またはネットワークサーバ(例えば、クラウドデータストレージ装置またはクラウドサーバ)、あるいはローカルデータストレージ装置(例えば、開示された方法を実行する少なくとも1つのコンピュータに動作可能に結合された大容量ストレージ装置)上に存在するものであってもよい。データは、取得ステップに先行する追加のステップを実行することによって、「使用可能な状態」にされるものであってもよい。データは、この追加のステップに従って、取得されるために生成される。例えば、データは、(例えば、解析装置によって)検出またはキャプチャーされる。
【0059】
その代わりに、または、それに追加して、データは、追加のステップに従って、例えばインターフェースを介して入力されるものである。例えば、生成されたデータは、(例えばコンピュータに)入力されるものであってもよい。データは、(取得ステップに先行する)追加のステップに従って、データ記憶媒体(例えば、ROM、RAM、CD、および/または、ハードドライブ)にデータを格納する追加のステップを実行することにより、本発明に従う方法またはプログラムのフレームワークにおいてそのデータが利用可能となるように、準備されるものであってもよい。したがって、「データの取得」には、取得されるべきデータを取得および/または準備するように、装置に命令することも含まれ得る。
【0060】
特に、データを取得するステップには、侵襲的手順は含まれない。この侵襲的手順は、身体に対する実質的な物理的干渉を意味し、医療の専門家によって実施されることを要するともともに、必要とされる専門的配慮と技能をもって実施された場合でも、健康に対する実質的な危険性を伴うものである。特に、データを取得するステップ、例えばデータを決定するステップには、外科的なステップは含まれておらず、かつ、特に、人間または動物の身体を手術または治療を用いて処置するステップは含まれていない。本方法によって使用される様々なデータを区別するために、データは、「XYデータ」等のように記載(または、参照)され、このデータが記述する情報(好ましくは、「XY情報」等と呼ばれる)の観点から定義される。
【0061】
(照合)
身体のn次元画像は、実際の物体(例えば、手術室内の身体部位)の空間内の各点の空間的位置が、ナビゲーションシステムに保存されている画像(CT、MR、等々)の画像データポイントに割り当てられるとき、照合(レジスタリング)される。
【0062】
(画像の照合)
画像の照合(レジストレーション)は、様々なデータの集合を、1つの座標系に変換する処理である。データは、複数の写真、および/または、様々なセンサー、様々な時刻、もしくは様々な視点からのデータであってもよい。画像の照合は、コンピュータビジョン、医用イメージング、および、人工衛星からの画像およびデータの編集または解析において使用される。照合は、これらの様々な測定によって取得されたデータを比較または統合することを可能にするために必要となるものである。
【0063】
(マーカー)
マーカーの機能は、その空間的配置(すなわち、その空間的位置および/または配向)が確認できるように、マーカー検出装置(例えば、カメラ、または超音波受信器、あるいは、CT装置またはMRI装置のような解析装置)によって検出されることである。検出装置は、例えば、ナビゲーションシステムの一部である。マーカーは能動マーカーであってもよい。能動マーカーは、例えば、電磁放射および/または電磁波を放射するものであってもよく、この場合、このような輻射は、赤外線、可視光線、おおよび/または紫外線のスクペトル範囲にあるものであってもよい。また、マーカーは、受動マーカーであってもよい。すなわち、マーカーは、例えば、赤外線、可視光線、および/または紫外線のスペクトル範囲にある電磁放射を反射するか、あるいは、X線を阻止することが可能なものであってもよい。このため、マーカーは、対応する反射特性を有する表面を備えるものであってもよく、および/または、X線を阻止するための金属からなるものであってもよい。マーカーは、無線周波数域または超音波波長の電磁放射および/または電磁波を反射および/または放射するものであってもよい。マーカーは、好ましくは、球形および/または回転楕円形を有し、したがって、マーカー球と呼ぶことができるものである。但し、マーカーは、例えば立方体のように、角のある形状を有していてもよい。
【0064】
(マーカーデバイス)
マーカーデバイスは、例えば、基準星、またはポインター、または単一のマーカー、または複数の(個別の)マーカーであってもよく、複数のマーカーは、好ましくは、既定の空間的関係を有するものである。マーカーデバイスは、1つ、2つ、3つ、またはそれより多くのマーカーを含み、2以上のマーカーを含む場合には、既定の空間的関係を有している。この既定の空間的関係は、例えば、ナビゲーションシステムにとって既知のものであり、例えば、ナビゲーションシステムのコンピュータに保存される。
【0065】
他の実施形態において、マーカーデバイスは、例えば二次元の表面上に、光学パターンを含むものである。光学パターンは、複数の幾何学的形状(例えば、円、四角形、および/または三角形)を含むものであってもよい。光学パターンは、カメラによって取得された画像中で識別可能であり、カメラに対するマーカーデバイスの位置は、画像中の光学パターンの大きさ、画像中の光学パターンの向き、及び画像中の光学パターンの歪みから決定することができる。これによって、単一の二次元画像から、最大で3つの回転の次元および最大で3つの並進の次元について、相対配置を決定することが可能となる。
【0066】
マーカーデバイスの配置は、例えば医用ナビゲーションシステムによって、確認することができる。マーカーが物体(例えば、骨または医療器具)に取り付けられている場合、その物体の配置を、マーカーデバイスの配置およびマーカーデバイスと物体の間の相対配置から決定することができる。この相対配置の決定も、マーカーデバイスと物体との照合と呼ばれる。マーカーデバイスまたは物体は、追跡されるものであってもよい。これは、マーカーデバイスまたは物体の配置が、時間の経過とともに2回以上確認されることを意味する。
【0067】
(マーカーホルダー)
マーカーホルダーは、マーカーを器具、身体の一部、および/または基準星の保持要素に取り付ける役割を果たす、個々のマーカーのための取り付け装置を意味すると理解される。マーカーは静止しているように取り付けることができ、有利には、取り外すことができるように取り付けることができる。マーカーホルダーは、例えば、棒状および/または円筒状であってもよい。マーカーデバイスのための固定装置(例えばラッチ機構など)は、マーカーホルダーのマーカーに対面する端部に設けることができ、マーカーデバイスをマーカーホルダー上に圧力嵌めおよび/または形状嵌めで配置することを補助するものである。
【0068】
(ポインター)
ポインターは、1つまたは複数の(有利には2つの)マーカーを含み、それらのマーカーが固定された棒である。ポインターは、身体の一部上の個々の座標、例えば空間座標(すなわち、三次元座標)、を測定するために使用することができる。ユーザは、ポインター(例えば、ポインターに取り付けられた少なくとも1つのマーカーに対して定められ、かつ有利には固定された位置を有するポインターの部分)を、手術用ナビゲーションシステムを使用してポインター上のマーカーを検出することによってポインターの位置が決定され得るように、座標に対応する位置に案内する。ポインター上のマーカーと、座標を測定するために使用されたポインターの部分(例えば、ポインターの先端)との間の相対位置は、例えば、既知である。次いで、手術用ナビゲーションシステムによって、所定の身体構造に(三次元座標における)位置が割り当てられることが可能となる。ここで、この割り当ては、自動的に行われるものであってもよく、または、ユーザの介入によって行われるものであってもよい。
【0069】
(基準星)
「基準星」は、多数のマーカー、有利には3つのマーカー、が取り付けられた装置をいうものである。ここで、マーカーは、静止するように基準星に(例えば、取り外し可能に)取り付けられ、したがって、互いに対するマーカーの既知の(有利には、固定された)位置が提供される。マーカーの互いに対する位置は、手術用ナビゲーション方法のフレームワーク内において、手術用ナビゲーションシステムがそのマーカーの互いに対する位置に基づいて対応する基準星を識別することを可能にするために、使用されるそれぞれの基準星に対して個別に異なるものであってもよい。したがって、基準星が取り付けられている物体(例えば、器具および/または身体部位)を、それに応じて識別および/または区別することも可能となる。手術用ナビゲーション方法において、基準星は、物体の配置(すなわち、その空間的位置および/または配向)を検出できるようにするために、物体(例えば、骨または医療器具)に複数のマーカーを取り付けるのに役立つ。このような基準星は、例えば、物体に取り付けられる方法(例えば、クランプおよび/またはネジ)、および/または、マーカーと物体の間の距離を確保する保持要素(例えば、マーカー検出装置に対してマーカーの可視性を補助するため)、および/または、保持要素に機械的に結合され、マーカーが取り付けられ得るマーカーホルダーを特徴とする。
【0070】
(ナビゲーションシステム)
本発明はまた、コンピュータ支援手術のためのナビゲーションシステムにも関する。このナビゲーションシステムは、好ましくは、本明細書に記載された実施形態のいずれか1つに記載されたようなコンピュータが実行する方法に従って提供されるデータを処理するための上述したコンピュータを含んでいる。このナビゲーションシステムは、好ましくは、コンピュータが、受信した検出信号に基づいて絶対主要点データおよび絶対補助点データを決定できるように、検出信号を生成し、生成した検出信号をコンピュータに供給するために、主要点および補助点を表す検出点の位置を検出するための検出装置を含む。例えば、検出点は、例えばポインターによって検出される、解剖学的構造の表面上の点である。このようにして、絶対点データをコンピュータに提供することができる。ナビゲーションシステムはまた、好ましくは、コンピュータから計算結果(例えば、主平面の配置、補助平面の配置、および/または、標準平面の配置)を受け取るためのユーザインタフェースを含む。このユーザインタフェースは、受信したデータを情報としてユーザに提供する。ユーザインタフェースの例には、モニターなどの表示装置、またはスピーカーが含まれる。ユーザインタフェースは、任意の種類の指示信号(例えば、視覚信号、音響信号、および/または、振動信号)を使用することができる。表示装置の一例は、ナビゲーションのためのいわゆる「ゴーグル」として使用することができる拡張現実デバイス(拡張現実メガネとも呼ばれる)である。このような拡張現実メガネの特定の例は、グーグル社製のグーグル・グラス(登録商標)である。拡張現実デバイスは、ユーザ相互作用によるナビゲーションシステムのコンピュータへの情報の入力と、コンピュータが出力した情報の表示の両方に使用することができる。
【0071】
本発明はまた、コンピュータ支援手術のためのナビゲーションシステムであって、
絶対点データおよび相対点データを処理するためのコンピュータ、
絶対点データを生成し、絶対点データをコンピュータに供給するために、主要点および補助点の位置を検出するための検出装置、
相対点データを受信し、相対点データをコンピュータに供給するためのデータインタフェース、および、
ユーザに情報を提供するためにコンピュータからデータを受け取るためのユーザインタフェースであって、受け取られるデータは、コンピュータが実行した処理の結果に基づいて、コンピュータによって生成される、ユーザインタフェース、
を含むナビゲーションシステムにも関する。
【0072】
(手術用ナビゲーションシステム)
手術用ナビゲーションシステムなどのナビゲーションシステムは、少なくとも1つのマーカーデバイスと、電磁波および/または電磁放射、および/または超音波を送信する送信器と、電磁波および/または電磁放射、および/または超音波を受信する受信器と、受信器および/または送信器に接続される電子的なデータ処理装置と、を含み得るシステムであって、データ処理装置(例えば、コンピュータ)は、例えばプロセッサ(CPU)および作業メモリーおよび有利には指示信号を発するための指示装置(例えば、モニターなどの視覚指示装置、および/またはスピーカーなどの音響指示装置、および/または振動器などの触覚指示装置)および永続的データメモリーを含み、データ処理装置は、受信器により転送されたナビゲーションデータを処理し、有利には指示装置を介してユーザに案内情報を出力できる、システムであると理解される。ナビゲーションデータは、永続的データメモリーに保存され、例えば、前記メモリーに事前に保存されたデータと比較されるものであってもよい。
【0073】
(撮像ジオメトリ)
撮像(イメージング)ジオメトリに関する情報は、好ましくは、撮像ジオメトリ解析装置とX線放射により解析される解析物体(解剖学的身体部位)との間の既知の相対配置が与えられた場合に、解析される解析物体が既知であれば、解析画像(X線画像)を算出可能な情報を含んでいる。ここで、「既知」とは、解析物体の空間ジオメトリ(大きさおよび形状)が既知であるということである。これは、例えば、解析物体(解剖学的身体部位)と解析放射線(X線放射)との間の相互作用に関する三次元の「空間分解」情報が既知であることを意味する。「相互作用」は、例えば、解析放射線が解析物体によって阻止されるか、あるいは、部分的または完全に通過可能であるかを意味する。撮像ジオメトリの位置および特に向きは、例えばX線装置の配置、例えばX線源およびX線検出器の配置位置によって、および/または、例えば解析物体を通過してX線検出器により検出される多重のX線ビームの配置によって、定められる。撮影ジオメトリは、例えば、前記多重のX線ビームの配置(すなわち、位置および特に向き)および形状(例えば、特定の傾斜角を呈する円錐形状)を記述する。この配置は、例えば、前記多重のX線ビームの中心を通過するX線ビームの配置、または多重のX線ビームを表す幾何学的オブジェクト(例えば、円錐台)の配置によって表すことができる。上記の相互作用に関する情報は、好ましくは、例えば三次元CTから、三次元において既知であり、解析物体の点および/または領域について、例えば解析物体の全ての点および/または領域について、空間分解された方法で相互作用を記述する。撮像ジオメトリの知識によって、例えば、平面(例えば、X線検出器の平面)に対する放射線源(例えば、X線源)の位置を計算することが可能となる。撮像ジオメトリによって定められる三次元の解析物体と二次元の解析画像との間の接続に関しては、例えば以下の文献を参照されたい。
1."An Efficient and Accurate Camera Calibration Technique for 3D Machine Vision", Roger Y. Tsai, Proceedings of the IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition. Miami Beach, Florida, 1986, pages 364-374
2."A Versatile Camera Calibration Technique for High-Accuracy 3D Machine Vision Metrology Using Off-the-Shelf TV Cameras and Lenses", Roger Y. Tsai, IEEE Journal of Robotics and Automation, Volume RA-3, No. 4, August 1987, pages 323- 344.
3.“Fluoroscopic image processing for computer-aided orthopaedic surgery”, Yaniv Z., Joskowicz L., Simkin A., Garza-Jinich M., Milgrom C. (1998) Fluoroscopic image processing for computer-aided orthopaedic surgery. In: Wells W.M., Colchester A., Delp S. (eds) Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention - MICCAI’98. MICCAI 1998. Lecture Notes in Computer Science, vol 1496. Springer, Berlin, Heidelberg.
4.欧州特許出願第08156293.6号
5.米国特許仮出願第61/054187号
【0074】
(撮像法)
医学分野において、撮像法(撮像モダリティおよび/または医用撮像モダリティとも呼ばれる)は、人の身体の解剖学的構造(例えば、柔組織、骨、臓器等)の画像データ(例えば、二次元画像データまたは三次元画像データ)を生成するために使用される。「医用撮像法」という用語は、(有利には装置に基づく)撮像法(例えば、いわゆる医用撮像モダリティおよび/または放射線撮像法)を意味するものとして理解される。それらは、例えば、コンピュータトモグラフィー(CT)及びコーンビーム・コンピュータトモグラフィー(CBCT、例えばボリューメトリックCBCT)、X線トモグラフィー、磁気共鳴トモグラフィー(MRTまたはMRI)、従来のX線、ソノグラフィーおよび/または超音波検査、並びに、陽電子放射トモグラフィーである。例えば、医用撮像法は、解析装置によって実行される。医用撮像法によって適用される医用撮像モダリティの例は、X線撮影、磁気共鳴イメージング、医用超音波検査または超音波、内視鏡検査、エラストグラフィー、触覚イメージング、サーモグラフィー、医用写真、および、Wikipediaで言及されているように、陽電子放出断層撮影(PET)および単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)のような核医学機能イメージング技術である。
【0075】
このようにして生成された画像データは、「医用画像データ」とも呼ばれる。解析装置は、例えば、装置に基づく撮像法において、画像データを生成するために使用される。撮像法は、特に医療診断のために使用され、画像データによって記述される画像を生成するために解剖学的身体を解析するものである。撮像法は、例えば、人の身体中の病変を検出するためにも使用される。しかし、解剖学的構造中の変化(例えば、構造(組織)中の病変)の幾つかは、検出可能ではない可能性があり、例えば、撮像法によって生成された画像中で視認できない可能性がある。例えば、腫瘍は、解剖学的構造中の病変の例に相当する。腫瘍が成長すると、膨張した解剖学的構造を示すといわれる。この膨張した解剖学的構造は、検出可能ではない(例えば、膨張した解剖学的構造の一部のみが検出可能である)可能性がある。例えば、原発脳腫瘍または悪性度の高い脳腫瘍は、造影剤が腫瘍に浸透するように使用された場合、通常、MRI走査で見ることができる。MRI走査は、撮像法の一例に相当する。このような脳腫瘍のMRI走査の場合、MRI画像中の(造影剤が腫瘍に浸透したことによる)信号強調部が、固形腫瘍塊を示すものと考えられる。したがって、この腫瘍は検出可能であり、特に、撮像法によって生成された画像で識別可能である。これらの「増感」腫瘍と呼ばれる腫瘍に加えて、脳腫瘍の約10%は走査で識別可能ではなく、例えば、撮像法によって生成された画像でユーザが見た時に視認可能ではないと考えられている。
【0076】
以下に、本発明の背景的説明を示すとともに特定の実施形態を表す添付図面を参照して、本発明が説明される。但し、本発明の範囲は、図面の文脈において開示される特定の特徴によって限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】
図1は、本発明の第4の態様に従うコンピュータが実行可能である、本発明の第1の態様に従う方法の基本的なステップを示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明の第5の態様に従うシステムを模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、解剖学的身体部位及び追跡可能な装置に対する投影撮像装置の設定の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1は、上記でより詳細に説明した、第1の態様に従う方法の基本的なステップを示している。
【0079】
図2は、第5の態様に従う医用システム1を模式的に示す図である。このシステムは、その全体に参照符号1が付与されており、コンピュータ2と、少なくとも空間画像データを保存するための電子データストレージ装置(ハードディスクなど)3と、追跡システム4(例えば、光学式IR追跡システム)と、を含む。医用システム1の構成要素は、上述した機能および特性を有する。
【0080】
図3は、脊椎骨8および器具6のX線画像12(
図4参照)を生成する、放射部17および検出器18を有する投影撮像装置11の例示的な配置設定を示している。
【0081】
以前の画像取得手順によって、椎骨8の三次元画像データセット、例えばCTデータセットまたはMRデータセット、が得られる。椎骨8の三次元表現に関して、実施者によって所望の軌道9が定義され、それに沿って、器具6を使用して、椎骨8の右椎弓根内に椎弓根スクリュー(図示せず)を進行させることが計画される。
【0082】
器具6は、その空間的配置を決定するために、光学追跡システム4(
図2を参照)によって空間内で検出され得る光学マーカーアレイ15を備えている。所望の軌道9に沿った器具6の初期的な配置決めが不正確である場合、追跡システム4は、器具6の空間的配置について不正確な結果を提供する。
図3に示される例では、器具6は実際には軌道10と整列しているにもかかわらず、追跡システム4は、器具6の位置を所望の軌道9と整列しているものと特定する。本発明の方法が適用されなければ、追跡システム4は、器具6の位置を、その実際の位置からシフト量13だけずれた位置として特定することになる。
【0083】
この生じている可能性のある不正確さを補償するために、本発明の方法の特定の例は、次のように実行される。
【0084】
電動支持構造5は、追跡システム4により記録されている追跡情報を含むこれまでに得られた情報に基づいて、器具6を動かして所望の軌道9と整列させるように制御される。
【0085】
追跡システム4が、器具6が所望の軌道9と整列していることを示した後、投影撮像装置11は、器具6と共に椎骨の投影画像を取得するように制御される。生じている可能性はあるが未知である偏差13に関して意味のある画像を得るために、放射部17および検出器18は、可能な限り所望の軌道9に対して垂直な撮像方向に整列するように制御される。放射部17および検出器18の両方の空間的配置は、追跡マーカー19により追跡システム4によって認識される。
【0086】
次いで、椎骨8および器具6の二次元表現を含む生成された画像は、器具6の実際の軌道10の所望の軌道9からの生じている可能性のある偏差を評価するために、追跡システム4の三次元座標系に変換される必要がある。ここで重要なことは、実際の軌道10と所望の軌道9との間の生じている可能性のある偏差は、放射部17と椎骨8/器具6との間の距離、ならびに検出器と椎骨8/ツール6との間の距離と比較して、相当に小さいということである。本明細書において「画像平面」という表現は、放射部17と検出器18との間に画像平面を定めるために使用されており、この平面は、撮像の軌道に対して垂直であり、かつ追跡可能な装置7(例えば器具6)および/または身体部位8(例えば椎骨8)の空間的位置、特に器具の先端または椎骨8のランドマークなどの追跡可能な装置7および/または身体部位8の予め定められた部分を含むものである。したがって、撮像の軌道に沿った画像平面の空間的配置は、器具6または椎骨8の空間的配置に基づいて計算することができる。基本比例定理(basic proportionality theorem)のため、起こり得る追跡の不正確さは、たとえあったとしても、ここではほとんど影響を及ぼさない。
【0087】
次いで、画像12とその内容が基本比例定理に基づいて三次元座標系に変換された状態で、画像平面内の生じている可能性のある偏差13を三次元座標系で計算することができる。
【0088】
この情報に基づいて、電動支持アーム5は、残りの追跡手順のために、所望の軌道9に整列するまで器具6を並進移動させることによって検出された偏差を補償するように制御され得る。その後、さらなる追跡手順は、訂正された追跡情報に基づくことができる。