(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】局所的インピーダンス及び患者の配置を介しての肺の特徴の分析のためのデバイス、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/091 20060101AFI20231030BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20231030BHJP
A61B 5/085 20060101ALI20231030BHJP
A61B 5/0536 20210101ALI20231030BHJP
A61M 16/00 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
A61B5/091
A61B5/107 300
A61B5/085
A61B5/0536
A61M16/00 370Z
(21)【出願番号】P 2022521023
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(86)【国際出願番号】 IB2020059384
(87)【国際公開番号】W WO2021070059
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-06
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518411132
【氏名又は名称】ティンペル・メディカル・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グラシエレ・クリスティーナ・アルカラ
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-516345(JP,A)
【文献】特表2021-513443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0185009(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/091
A61B 5/107
A61B 5/085
A61B 5/0536
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の肺の特性の分析方法であって、
0cmH
2Oから40cmH
2Oの間の一定の呼気終端陽圧が適用されている間に、患者の第1の位置を識別することと、
前記患者が前記第1の位置にある場合に、前記患者の肺の少なくとも1つの領域を示す第1のインピーダンスデータを取得することと、
前記一定の呼気終端陽圧が適用されている間に、前記患者の第2の異なる位置を識別することと、
前記患者が前記第2の位置にある場合に、前記患者の肺の少なくとも前記領域を示す第2のインピーダンスデータを取得することと、
前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することと、
適用された前記一定の呼気終端陽圧が肺胞リクルートメントをもたらすか持続するために十分であるかを判定することと、
を含
み、
第1のインピーダンスデータを取得することが、前記患者が前記第1の位置にある場合に、水平面であって、前記水平面内で脊髄の重心を水平軸が貫通する前記水平面の上方に位置する前記肺の領域に関するインピーダンスデータを取得することを含み、第2のインピーダンスデータを取得することが、前記患者が前記第2の位置にある場合に、前記水平面の下方に位置する前記肺の前記領域に関するインピーダンスデータを取得することを含む、前記分析方法。
【請求項2】
第1のインピーダンスデータを取得することが、前記患者が前記第1の位置にある間の前記肺の前記少なくとも1つの領域内の第1の呼気終末肺インピーダンスを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2のインピーダンスデータを取得することが、前記患者が前記第2の位置にある間の前記肺の前記少なくとも1つの領域内の第2の呼気終末肺インピーダンスを測定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することが、前記肺の前記少なくとも1つの領域内の呼気終末肺インピーダンスの変化を判定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することが、局所的な一回換気量の変化を判定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することが、前記肺の前記少なくとも1つの領域内の呼気終末肺気量の変化を判定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の位置が背臥位を含み、前記第2の位置が側臥位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記一定の呼気終端陽圧が適用される間に、前記患者が前記第1の位置に戻ったことを判定することと、
前記患者が戻された前記第1の位置にある場合に、患者の肺の前記少なくとも1つの領域を示す第3のインピーダンスデータを取得することと、
前記第1のインピーダンスデータを前記第3のインピーダンスデータと比較することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記一定の呼気終端陽圧が適用される間に、前記患者の第3の異なる位置を識別することと、
前記患者が前記第3の位置にある場合に、患者の肺の前記少なくとも1つの領域を示す第4のインピーダンスデータを取得することと、
前記第1のインピーダンスデータを前記第4のインピーダンスデータと比較することと、
をさらに含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
患者の肺の特性を分析するためのシステムであって、
少なくとも1つのプロセッサと、
命令を貯蔵する少なくとも1つの非一時的なコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、前記少なくとも1つのプロセッサに、
換気システムに、前記患者に一定の呼気終端陽圧を適用させるとともに維持させることと、
前記患者の第1の位置を識別することと、
水平面であって、前記水平面内で脊髄の重心を水平軸が貫通する前記水平面の上方に位置する前記患者の肺の領域において、前記患者の肺の第1のインピーダンスデータを取得することであって、前記第1のインピーダンスデータが前記患者の前記第1の位置を反映する、前記取得することと、
前記患者の第2の異なる位置を識別することと、
前記患者が前記第2の位置にある場合に、前記水平面の下方に位置する前記患者の肺の領域において、前記患者の肺の第2のインピーダンスデータを取得することであって、前記第2のインピーダンスデータが前記患者の前記第2の位置を反映する、前記取得することと、
前記患者の肺の特性の変化を識別するために、前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することと、
をさせる、前記非一時的なコンピュータ読取り可能な記憶媒体と、
を備えた前記システム。
【請求項11】
前記患者の第1の位置を識別することが、前記患者に取り付けられた方位センサを介して前記患者の前記第1の位置を識別することを含む、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
前記患者の第1の位置を識別することが、
前記患者の画像を取得することと、
前記患者の前記第1の位置を識別するために、前記患者の前記画像を分析することと、
を含む、請求項
10に記載のシステム。
【請求項13】
前記患者の第1の位置を識別することが、
患者支持具の向きに関する前記患者支持具からのデータを受信することと、
前記患者支持具から受信されたデータに基づき、前記患者の前記第1の位置を判定することと、
を含む、請求項
10に記載のシステム。
【請求項14】
前記患者の第1の位置を識別することが、前記患者の肺の前記第1のインピーダンスデータを取得することと、前記第1のインピーダンスデータに基づき、前記患者の前記第1の位置を判定することと、を含む、請求項
10に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、前記少なくとも1つのプロセッサに、適用された前記一定の呼気終端陽圧がリクルートメントをもたらすか持続するために十分であるかを判定させる命令をさらに含む、請求項
10に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することが、前記肺の少なくとも1つの領域内のコンプライアンスの変化を判定することを含む、請求項
10に記載のシステム。
【請求項17】
コンプライアンスの変化を判定することが、
前記第1のインピーダンスデータ内の第1の電気的インピーダンストモグラフィ画像の各ピクセルによって示されるコンプライアンスを判定することと、
前記第2のインピーダンスデータ内の第2の電気的インピーダンストモグラフィ画像の各ピクセルによって示されるコンプライアンスを判定することと、
を含む、請求項
16に記載のシステム。
【請求項18】
患者に関する潜在的な肺リクルートメント値を判定するためのシステムであって、
換気システムと、
電気的インピーダンストモグラフィシステムと、
位置センサと、
コントローラであって、前記換気システム、前記電気的インピーダンストモグラフィシステム、及び前記位置センサが、前記コントローラに操作可能に結合されており、前記コントローラが、
少なくとも1つのプロセッサと、
命令を貯蔵する少なくとも1つの非一時的なコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記換気システムに、患者に一定の呼気終端陽圧を適用させるとともに維持させることと、
前記患者の第1の位置を識別することと、
水平面であって、前記水平面内で脊髄の重心を水平軸が貫通する前記水平面の上方に位置する前記患者の肺の領域において、前記患者の肺の第1のインピーダンスデータを取得することであって、前記第1のインピーダンスデータが前記患者の前記第1の位置を反映する、前記取得することと、
前記患者の第2の異なる位置を識別することと、
前記患者が前記第2の位置にある場合に、前記水平面の下方に位置する前記患者の肺の領域において、前記患者の肺の第2のインピーダンスデータを取得することであって、前記第2のインピーダンスデータが前記患者の前記第2の位置を反映する、前記取得することと、
前記患者の肺の特性の変化を識別するために、前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することと、
適用された前記一定の呼気終端陽圧がリクルートメントをもたらすか持続するために十分であるかを判定することと、
をさせる、前記少なくとも1つの非一時的なコンピュータ読取り可能な記憶媒体と、
を備えている前記コントローラと、
を備えた前記システム。
【請求項19】
前記第1の位置が背臥位を含み、前記第2の位置が側臥位を含む、請求項
18に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、前記コントローラに、患者支持具と通信させ、前記患者の肺の前記特性に少なくとも部分的に基づき、前記患者の位置を制御するための制御信号を送信させる命令をさらに含む、請求項
18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2019年10月7日に出願された米国仮特許出願第62/911,887号の、35 U.S.C. §119(e)の下での利益を主張する。この文献の開示は、これにより、この参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して電気的インピーダンストモグラフィシステムに関し、より詳細には、患者の肺胞のリクルーティングのための有効なPEEPレベル、電気的インピーダンストモグラフィを使用した、肺胞リクルートメント手技に対する患者の潜在的な反応性、及び患者の肺の特性を判定するためのデバイス、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療には、適切な機械換気手法が含まれる。肺胞リクルートメント手技(ARM)は、ARDSの中程度及び極度のケースにおいて適用される治療処置である。ARMは、肺に搬送される機械換気圧力の一時的及び制御された増大であり、前に虚脱した肺胞を開くことを目的としている。しかし、ある患者は、ARM手技に良好に反応し(本明細書では「反応者」と称する)、一方、他の患者は、ARM手技には良好には反応しない(本明細書では「非反応者」と称する)。介護者は、ARM手技に対する患者の反応性を分析し、ARM手技から利益を得る患者(反応者)にのみ、ARM手技を適用するべきである。ARM手技は、人工呼吸器誘発肺損傷(VILI)及び血行動態障害など、いくらかの追加のリスクをも導入する場合がある。患者がARM手技に反応するかを判定するために慣習的な方法には、コンピュータトモグラフィ(CT)及び肺性機構(Pulmonary Mechanics)が含まれる。
【0004】
CTは、肺の虚脱の量(たとえば、グラムで、及び/または肺の重量のパーセンテージでの量)、及び、ARMに反応してふたたび開いた肺の量を概算する方法として使用される場合がある。しかし、CTは静的画像のみを提供し、CTは、過度な放射(少なくとも、2つの異なる呼吸終末用圧(PEEP)レベルで肺全体をスキャンする必要がある)を必要とし、また、CTは、長い吸入/吐出しのポーズを必要とする(炭酸過剰及び血行動態障害のリスクがある)。最後に、患者をICUから放射線科に移送する必要があり、よく知られているリスクを伴う。
【0005】
肺性機構は、機械換気装置でのPEEP治療を使用して、患者の反応性を判定する方法として使用される場合がある。患者には、第1のPEEPでPEEP治療が提供される。第1の呼吸終末肺気量(EELV)が、患者から測定される。PEEP治療は、第2のPEEPにおいて患者に提供される。第2のEELVが、患者から測定される。第1のEELV及び第2のEELVからの差異が計算される場合がある。PEEP治療に対する患者の反応性を示す値は、第1のEELVと第2のEELVとの間の差異から計算される。ΔEELV/機能的残気量(FRC)の割合が、高いリクルーターを低いリクルーターから区別するために使用される場合がある。しかし、これら手法は、換気がサポートされた患者に限定され、PEEPの増大を必要とし(手技は漸増的であるか漸減的であり得る)、血行動態障害の既知のリスクを伴う。リクルートメント手技に対する反応性などの、インピーダンスの変化及びEITの局所的な情報を使用する他の評価は、PEEPの変化をも必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の1つまたは複数の実施形態に係る、患者の解析対象領域の周りに配置された複数の電極を示すEITシステムの一部の概略図である。
【
図2】本開示の1つまたは複数の実施形態に係る、電極の平面に沿う患者の胸腔の断面を示す概略図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るEITシステムの概略ブロック図である。
【
図4】本開示の1つまたは複数の実施形態に係る、患者の位置、患者の肺の特性、及び患者の肺の潜在的なリクルートメント値を識別するためのシステムの概略図である。
【
図5】本開示の1つまたは複数の実施形態に係る、患者の肺の特性を判定する方法のフローチャートである。
【
図6A】背臥位での患者の胴の断面を概略的に示す図である。
【
図6B】側臥位での患者の胴の断面を概略的に示す図である。
【
図7】AからDは、様々な位置での患者からの情報を示すグラフである。
【
図8】患者が様々な位置に向いている間の、グローバルEITプレチスモグラフ及び局所的なEITプレチスモグラフを示すグラフである。
【
図9】様々なPEEPレベルでの患者の全体のEITプレチスモグラフを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
この仮特許出願は、本開示の一部も形成する、本明細書に添付されるAppendix Aに関する。Appendix Aの終わりの参照セクションで参照された、公開された文献は、本明細書により、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0008】
以下の詳細な説明では、詳細な説明の一部を形成する添付の図面を参照する。図面では、説明のために、本開示が実施され得る特定の実施形態が示されている。これら実施形態は、当業者が本開示を実施することを可能にするために十分に詳細に記載されている。しかし、詳細な説明及び特定の実施例は、本開示の実施形態の実施例を示す一方で、説明としてのみ与えられ、限定としては与えられていないことを理解されたい。本開示から、本開示の範囲内にある様々な代替、変更、追加再配置、またはこれらの組合せが形成され得、また、当業者には明らかとなるであろう。
【0009】
慣例に従い、図面に示される様々な特徴は、拡縮して図示されない場合がある。本明細書に提供されるイラストは、任意の特定の装置(たとえば、デバイス、システムなど)または方法の実際の見え方であることは意図されているものではなく、本開示の様々な実施形態を記載するために採用された表示に過ぎない。したがって、様々な特徴の寸法は、明確化のために、任意に拡大または縮小される場合がある。さらに、いくつかの図は、明確化のために簡略化されている場合がある。このため、図は、所与の装置のすべての構成要素、または、特定の方法のすべての操作を示さない場合がある。
【0010】
本明細書に記載の情報及び信号は、様々な異なる技術及び技法のいずれかを使用して表示される場合がある。たとえば、詳細な説明を通して参照される場合があるデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、及びチップは、電圧、電流、電磁波、磁場もしくは粒子、光学場もしくは粒子、またはこれらの任意の組合せによって示される場合がある。いくつかの図は、提供及び記載の明確化のために、単一の信号として信号を図示する場合がある。信号が信号のバスを示す場合があり、バスが、様々なビット幅を有する場合があり、また、本開示が、単一のデータ信号を含む任意の数のデータ信号で実施される場合があることを、当業者には理解されたい。
【0011】
本明細書に開示の実施形態と関連して記載される様々な説明的な論理ブロック、モジュール、及び回路は、本明細書に記載の機能を実施するように設計された、多目的プロセッサ、特定目的プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくは他のプログラマブルロジックデバイス、別個のゲートもしくはトランジスタロジック、別個のハードウェア構成要素、またはこれらの任意の組合せで実施される場合があるか、実行される場合がある。多目的プロセッサは、マイクロプロセッサである場合があるが、代替形態では、プロセッサは、任意の慣習的なプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、または状態機械である場合がある。多目的プロセッサは、特定目的プロセッサが考慮される場合があるが、多目的プロセッサは、コンピュータ可読媒体に記録された命令(たとえば、ソフトウェアコード)を実行する。プロセッサは、コンピュータデバイスの組合せ、たとえば、DSPとマイクロプロセッサとの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアに関連する1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実施される場合がある。
【0012】
同様に、各実施形態が、フローチャート、フロー図、構造図、またはブロック図として記載される場合があるプロセスに関して記載される場合があることに留意されたい。フローチャートが、連続したプロセスとして操作上の動作を記載する場合があるが、これら動作の多くは、別のシークエンスで、並行して、または実質的に同時に、実施され得る。さらに、動作の順番は、再配置される場合がある。プロセスは、方法、機能、手順、サブルーチン、サブプログラムなどに対応する場合がある。さらに、本明細書に開示の方法は、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの両方で実施される場合がある。ソフトウェアで実施される場合、機能は、1つまたは複数の命令またはコードとして、コンピュータ可読媒体上で貯蔵されるか移送される場合がある。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ貯蔵媒体と通信媒体との両方を含み、ある場所から別の場所へのコンピュータプログラムの移送を促進する任意の媒体が含まれる。
【0013】
本明細書に使用される場合、「a」、「an」、及び「the」に続く単数の形態は、文脈が別様に明確に示していない限り、複数の形態も含むことが意図されている。
【0014】
本明細書で使用される場合、材料、構造、特徴、または方法の動作に関する「may」との用語は、そのようものが、本開示の実施形態の実施態様において使用するために考慮されることを示し、また、そのような用語が、より制限的な用語「is」に優先して使用され、それにより、これらと組み合わせて使用可能である他の互換性のある材料、構造、特徴、及び方法が除外されるべきであるか、除外されなければならないことのあらゆる含意を避けるようになっている。
【0015】
「第1の」、「第2の」などの指摘を使用する本明細書の要素に対する任意の参照が、そのような限定が明確に述べられていない限り、それら要素の量または順番を制限しないことを理解されたい。むしろ、これら指定は、2つ以上の要素または要素の例の間で識別するための便宜的な方法として本明細書で使用される場合がある。このため、第1の要素及び第2の要素に対する参照は、2つの要素のみがそこで採用される場合があること、または、第1の要素がいくらかの方式で第2の要素に先行しなければならないことを意味していない。同様に、別様に述べられていない限り、要素のセットは、1つまたは複数の要素を含む場合がある。
【0016】
本明細書で使用される場合、所与のパラメータ、特性、または状況を参照する「実質的に」との用語は、所与のパラメータ、特性、または状況が、許容可能な製造公差内など、わずかな変化の度合いを伴って満たされることを当業者が理解する程度を意味するとともに含んでいる。たとえば、実質的に満たされるパラメータは、少なくとも約90%満たされているか、少なくとも約95%満たされているか、少なくとも約99%満たされてさえいる場合がある。
【0017】
本明細書で使用される場合、所与のパラメータに関して使用される「約」との用語は、述べられている値を包含するものであり、文脈によって指示される意味を有している(たとえば、このことは、所与のパラメータの測定に関連する誤差の程度、及び、製造公差の結果として生じる変化などを含む)。
【0018】
本明細書で使用される場合、「背臥位」との用語は、人(たとえば患者)が、患者の顔及び胴が上を向いた状態で、概して水平に寝ている場合の位置に関する場合がある。
【0019】
本明細書で使用される場合、「側臥位」との用語は、人が、概して水平に寝ているが、一方側(たとえば、右側または左側)が下方に傾き、他方側が上方に傾いた状態である場合の位置に関する場合がある。たとえば、人は、30°、45°、または60°一方側に傾いている場合がある。たとえば、側臥位は、
図6Bに描写されている位置などの位置に関する場合がある。いくつかの実施形態では、側臥位は、人が一方側(たとえば、右側または左側)を下にして寝ている場合の位置に関する場合がある。
【0020】
本明細書で使用される場合、「腹臥位」との用語は、人が、概して水平に、患者の胴が下を向いた状態で寝ている場合の位置に関する場合がある。
【0021】
本開示の実施形態は、肺の特徴(たとえば、PEEPレベルに顕著な変化を伴わない、コンプライアンスの変化、局所的な一回換気量の変化(すなわち、呼吸のインピーダンス)、動脈血化の変化(たとえば、呼気終末肺気量、呼気終末肺気インピーダンス、プレチスモグラフのベースラインなど)などを分析するための、電気的インピーダンストモグラフィ(EIT)及び位置判定システムを含んでいる。本開示の実施形態は、肺胞リクルートメントをもたらすように、患者に適用するための有効なPEEPレベルを判定するためのEIT及び位置判定システムを含んでいる。いくつかの実施形態では、有効なPEEPレベルは、肺胞を開いた状態に維持しつつ、肺を傷つけ、血行動態を減じる可能性を低減させる最小のPEEPレベルである場合がある。さらに、本開示の実施形態は、前に虚脱したエリアをリクルートするための位置決めリクルートメント手技の効果を分析するため、及び/または肺胞を開いた状態に維持するため、及び/または呼吸の同質性を減じるためのEIT及び位置判定システムを含んでいる。
【0022】
いくつかの実施形態では、EIT及び位置判定システムは、EITデバイス及び1つまたは複数の位置センサを含んでいる。EITは、患者の身体のある領域周り(たとえば、肺の撮像のための、患者の胸の周り)に配置された電極ベルトを介して電極を位置決めすることと、一対の電極を通して電気励起信号を注入することと、電極ベルトの他の電極によって検出された、誘導された反応信号を測定することと、を伴う撮像技術である。結果として、EITシステムは、概算のインピーダンス値を示す、電圧の測定値に基づいて画像を生成する場合がある。他の撮像技術とは対照的に、EITは非侵襲性であり、(たとえば、X線などの技術のような)モニタリング動作の数及び周期を制限し得る特定の露出のリスクを有していない。結果として、EITは、測定値が、患者の呼吸及び血行動態のパラメータを判定し、リアルタイムの2次元画像を監視するために使用される場合があることから、患者の肺を監視する特定の用途で、患者の状況を継続的に監視するために適している。
【0023】
本開示の実施形態は、電気的インピーダンストモグラフィ(EIT)によって実施されるか、EITと流れ及び/または圧力センサ(たとえば、ガス監視センサを使用する肺状の機構)とによって提供される情報の組合せによって実施される場合がある。各実施形態は、PEEPを増大させる必要なしに、周期呼吸の間に実施される場合もある。いくつかの実施形態では、EIT画像内のピクセルレベルでの情報(たとえば、位置を変更する動作の間の、ピクセルの位置、ピクセルの動脈血化の変化、及びピクセルコンプライアンスの変化)は、より正確で局所的な定量化を提供するために合わせられる場合がある。
【0024】
図1は、患者105の解析対象領域(たとえば、胸腔)の周りに配置された複数の電極110を示すEITシステム100の一部の概略図である。慣習的なEITシステム100の電極110は、通常は、電極ベルト103によって定位置に物理的に保持されている。電極110の配置は、通常、患者の頭尾軸104を横断する。患者105の周りに部分的にのみ配置されているものとして電極110が
図1に示されているが、電極110は、測定のために利用可能であるか望ましい特定の解析対象領域に応じて、患者105全体の周りに配置される場合がある。電極110は、電極110の動作を制御し、EIT画像の再構築を実施するように構成されたコンピュータシステム(図示せず)に結合されている場合がある。
【0025】
図2は、電極の平面に沿う患者105の胸腔の断面を示す概略図である。ある電圧が、一対の電極110(+及び-のシンボルを有する電極によって示されている)に適用されて、電極の対の間の患者に励起電流を注入する場合がある。結果として、電圧(たとえば、V
1、V
2、V
3、…、V
n)は、他の電極によって検出され、EITシステム100によって測定される場合がある。電流注入は、励起電流を生成するために、異なる電極の各対を使用して円形パターンに従って、測定サイクルに関して実施される場合がある。
【0026】
図3は、本開示の一実施形態に係るEITシステム300の概略ブロック図である。EITシステム300は、データ処理システム320に操作可能に結合された電極ベルト310を含む場合がある。電極ベルト310及びデータ処理システム320は、有線接続(たとえば、ケーブル)を介してともに結合されている場合があり、及び/または、互いに無線で通信するために通信モジュールを有する場合がある。データ処理システム320は、電子ディスプレイ324、入力デバイス326、及びメモリデバイス328に操作可能に結合されたプロセッサ322を含む場合がある。電子ディスプレイ324は、電極ベルト310に結合されたEITデバイスのための単一の形状因子になるように、データ処理システム320とともに構築される場合がある。いくつかの実施形態では、電子ディスプレイ324及びデータ処理システム320は、電極ベルト310に結合されたEITデバイスの別々のユニットである場合がある。さらに他の実施形態では、EITシステム300は、追加の医療測定及び/または手順を実施するように構成された別のホストシステム内に組み込まれている場合があり、この中で、電極ベルト310は、すでにそれ自体の入力デバイス、メモリデバイス、及び電子ディスプレイを有するホストシステムのポートに結合されている場合がある。したがって、ホストシステムは、EIT処理ソフトウェアが内部にインストールされている場合がある。そのようなソフトウェアは、現場での使用の前にホストシステムに組み込まれている場合があるか、インストールの後にアップデートされる場合がある。
【0027】
プロセッサ322は、様々なデバイスの間で通信を調整し、また、メモリデバイス328のコンピュータ可読媒体内に貯蔵された命令を実行して、電流の励起、データの取得、データの分析、及び/または画像の再構築を管理する場合がある。実施例として、メモリデバイス328は、画像の再構築を実施するために、解析対象領域内の患者の身体をモデル化するように、プロセッサ322によって使用される有限の要素のメッシュのライブラリを含む場合がある。入力デバイス326は、EITシステム300のオペレータからの入力を受領するように、プロセッサ322によって使用される場合がある情報を受領するように構成された、キーボード、タッチスクリーンインターフェース、コンピュータマウス、リモートコントロール、モバイルデバイス、または他のデバイスなどのデバイスを含む場合がある。このため、タッチスクリーンインターフェースに関しては、ユーザ入力を受領する電子ディスプレイ324及び入力デバイス326が、同じデバイス内に組み込まれている場合がある。電子ディスプレイ324は、データを受領し、オペレータが見るための、プロセッサによって再構築されたEIT画像を出力するように構成されている場合がある。さらなるデータ(たとえば、数字のデータ、グラフ、トレンド情報、及び、オペレータにとって有用であると思われる他の情報)も、測定されたEITデータのみから、または、プロセッサ322に結合された他の設備に応じて他の非EITデータと組み合わせて、プロセッサ322によって生成される場合がある。そのような追加のデータは、電子ディスプレイ324上に表示される場合がある。
【0028】
EITシステム300は、図に示されていないが、1つまたは複数のアナログデジタル変換器、信号処理回路、復調回路、出力源などを含むなど、当業者によって理解されるように、電極ベルト310での通信及び/または電流の励起を促進するために含まれる場合もある構成要素を含む場合がある。
【0029】
図4は、患者の様々な位置で、かつ一定のPEEPで、患者の肺の特性を分析するためのEIT及び位置判定システム400の概略図を示している。たとえば、
図4は、第1の位置と第2の位置とにおける患者の肺の測定値を比較し、測定値に基づいて患者の肺の特性を判定するためのシステム400を示している。
図4を参照すると、EIT及び位置判定システム400は、換気システム402と、EITシステム404と、位置センサ405と、システム400ならびに具体的には換気システム402、EITシステム404、及び位置センサ405を操作するためのコントローラ406と、を含む場合がある。換気システム402、EITシステム404、及び位置センサ405は、コントローラ406に操作可能に結合されている場合がある。
【0030】
いくつかの実施形態では、換気システム402は、患者410の呼吸を補助するか、呼吸をアシストする機械換気装置408を含んでいる。たとえば、機械換気装置408は、空気、酸素、窒素、及びヘリウムの1つまたは複数を含む場合がある医療用ガスの流れを提供する場合がある。いくつかの実施形態では、医療用ガスの流れは、エアゾール薬または麻酔薬などの添加物をさらに含む場合がある。換気システム402は、呼吸回路412、吸気用肢414、患者用肢416、及び患者接続部418をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、機械換気装置408は、医療用ガスの流れを呼吸回路412に、吸気用肢414を通して提供する場合がある。吸気用肢414は、機械換気装置408の吸気ポート420に接続されている。医療用ガスは、吸気用肢414を通り、呼吸回路412の患者用肢416内に流れる(たとえば、移動する)場合がある。したがって、機械換気装置408は、医療用ガスを患者410に、患者接続部418を通して提供する場合がある。
【0031】
患者410から吐き出されたガスは、患者接続部418及び患者用肢416を通して機械換気装置408に戻るように搬送される場合がある。いくつかの実施形態では、吐き出されたガスは、呼吸回路412の呼気用肢422内に、1つまたは複数のバルブ(たとえば、チェックバルブ)を介して向けられる場合がある。たとえば、換気システム402は、患者410へ、または患者410からの適切な通路に沿う所望の方向での医療用ガス流のみを許容するためなど、呼吸回路412に沿う様々なポイントに配置される場合がある複数のチェックバルブをさらに含む場合がある。
【0032】
さらに、吐き出されたガスは、機械換気装置408の呼気用ポート424を通って機械換気装置408に戻される場合がある。
【0033】
いくつかの実施形態では、呼気用ポート424は、呼吸回路412内の圧力を制御するように調整可能な、制御可能なフローバルブを含む場合がある。フローバルブを調整することにより、後方圧が生成される場合がある。この後方圧は、呼気終端陽圧(「PEEP」)を生成するように、吐き出しの間に患者410に適用される。したがって、システム400は、患者410にPEEP治療を提供するための任意の慣習的なシステムを含む場合がある。さらに、当業者によって理解されるような他のシステム及び構成が、本開示の範囲内となる。
【0034】
換気システム402は、1つまたは複数のガス監視センサ426をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のガス監視センサ426は、呼吸回路412の患者接続部418内に配置されている場合がある。代替的実施形態では、1つまたは複数のガス監視センサ426は、呼吸回路412または換気システム402の任意の他の構成要素に流体接続されている場合がある。いくつかの実施形態では、ガス監視センサ426は、圧力、流れ、及びガス濃度のセンサの1つまたは複数を含む場合がある。以下にさらに記載されるように、コントローラ406及び機械換気装置408は、機械換気装置408の動作を監視し、最終的には制御し、情報を提供する(たとえば、ユーザ(たとえば臨床医)にフィードバックする)ために、1つまたは複数のガス監視センサ426を利用する場合がある。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のガスセンサ426は、任意の慣習的なガスセンサを含む場合がある。非限定的な例として、1つまたは複数のガス監視センサ426は、体積センサ、流量センサ、圧力センサ、濃度センサ、またはこれらの任意の組合せの1つまたは複数を含む場合がある。
【0035】
EITシステム404は、
図1から
図3に関して上述したEITシステムのいずれかを含む場合があり、また、上述の実施形態のいずれかに従って動作する場合がある。いくつかの実施形態では、EITシステム404は、任意の慣習的なEITシステムを含む場合がある。さらに、上述のように、EITシステム404は、コントローラ406に操作可能に結合されている場合があり、また、EITシステム404によって実施される測定に関し、コントローラ406に情報を提供する場合がある。いくつかの実施形態では、EITシステム404は、換気システム402とは完全に独立している場合があり、また、EITシステム404に操作可能に結合されたそれぞれの圧力センサを介してPEEPレベルを判定する場合がある。1つまたは複数の実施形態では、EITシステム404は、それぞれの電子ディスプレイと、ディスプレイから離れた入力デバイス及び/または換気システム402の入力デバイスと、をも有する場合がある。さらに、EITシステム404の電子ディスプレイ及び入力デバイスは、PEEP及び/または他の換気のパラメータに関する情報を入力する(たとえば、手作業で入力する)ために利用される場合がある。
【0036】
位置センサ405は、患者の位置及び臥位(たとえば、側臥位、背臥位、または腹臥位、及びこれらの程度)を判定する(たとえば、識別する)ためのセンサを含む場合がある。いくつかの実施形態では、位置センサ405は、患者、及び/または患者の支持具(たとえば、患者のベッドもしくはマットレス)に結合された方位センサを含む場合がある。さらなる実施形態では、位置センサ405は、1つまたは複数の撮像器(たとえば、カメラ)を含む場合がある。この1つまたは複数の撮像器は、患者の位置を識別するために、コントローラ406によって分析される画像を取得する場合がある。さらに別の実施形態では、患者の位置は、局所的なインピーダンス信号及び/または局所的なEIT画像を分析することによって判定される場合がある。さらなる実施形態では、位置センサ405は、患者の支持具(たとえば、患者のベッド)に操作可能に接続されている場合があり、また、患者のベッドによって提供される情報に基づいて位置を判定する場合がある。さらに別の実施形態では、患者の位置は、ユーザ(たとえば、患者の介護者)により、ユーザインターフェースを介して、EIT及び位置判定システム400に手作業で入力される場合がある。
【0037】
コントローラ406は、メモリ430に結合されたプロセッサ428、及び入力/出力構成要素432を含む場合がある。プロセッサ428は、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、及び/または他の適切な論理デバイスを備えている場合がある。メモリ430は、揮発性及び/または不揮発性媒体(たとえば、ROM、RAM、磁気ディスク貯蔵媒体、光学貯蔵媒体、フラッシュメモリデバイス、及び/または他の適切な貯蔵媒体)、及び/または、データを貯蔵するように構成された他のタイプのコンピュータ可読貯蔵媒体を含む場合がある。メモリ430は、プロセッサ428によって実行される、換気システム402及びEITシステム404を操作するためのアルゴリズム及び/または命令を貯蔵している場合がある。たとえば、コントローラ406は、
図3に関して上述したデータ処理システム320を含む場合がある。いくつかの実施形態では、プロセッサ428は、サーバまたはパーソナルコンピュータなど、コントローラ406に(たとえばインターネットを介して)作用するように結合されたコンピュータデバイスにデータを送信するように、操作可能に結合されている。入力/出力構成要素432は、ディスプレイ、タッチスクリーン、キーボード、マウス、及び/または、オペレータからの入力を受領し、オペレータに出力を提供するように構成された、他の適切なタイプの入力/出力デバイスを含むことができる。
【0038】
引き続き
図4を参照すると、
図5から
図13に関して以下により詳細に記載するように、システム400は、患者の位置が変化する間、患者に一定のPEEPレベルを適用するように、換気システム402を利用する場合がある。患者の位置の変化により、患者の呼吸系の少なくとも一部の内のベースライン圧力が増大する場合がある。慣習的なPEEP圧力は40cmH
2Oまでの範囲であるが、より高いPEEP圧力も使用される場合がある。高いPEEPは、10cmH
2Oを超えて、より具体的には10cmH
2Oから30cmH
2Oで適用されるPEEP治療に関する。低いPEEPは、10cmH
2O未満のPEEP圧力に関し、このことは、しばしば5cmH
2Oから8cmH
2Oで適用される。
【0039】
いくつかの実施形態では、PEEPを患者に適用することの効果は、PEEPの適用に応じた患者の肺の容量を測定することによって測定される。PEEPの適用の後は、患者の肺の容量は、呼気終末肺気量(EELV)として測定され、また、患者に適用される特定のPEEP圧力に関して測定される。いくつかの実施形態では、EELVは、ゼロPEEP(「ZEEP」)で測定される。ZEEPでのEELVの測定は、本明細書では、機能的残気量(FRCZEEP)と称され、自然に息を吐き終わった際に肺の中に残った空気の容量の測定値である。いくつかの実施形態では、EELVを測定及び/または判定するためにEITシステム404を利用する場合、FRCZEEPは、いくつかの例では、ゼロであるものと解され得、それにより、FRCが特定の計算には影響しないようになっている。前述の観点では、EELVは、FRCZEEPに、適用されたPEEPだけ増大した肺の容量を足したものである。
【0040】
PEEPの適用に関連するEELVの増大は、2つの生理学的ソースから来ている。容量の増大の第1の生理学的ソースは、肺組織へのさらなる圧力の適用から生じる。肺組織へさらなる圧力を適用することにより、肺、及びすでに開いている肺胞が膨張し(たとえば、肺の内側の圧力に起因して膨らみ)、さらなる肺の容量を形成する。肺を膨張させることは、肺を損傷させる、容量損傷(すなわち、正常な肺胞の局所的な過度な膨張)の形態の、患者に対するリスクを生じる。容量損傷は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に類似の、患者の医療上の合併症に繋がり得る。肺の容量の増大の第2の生理学的ソースは、「pop-open」として知られるプロセスにおける肺胞の「リクルートメント」である。このプロセスでは、1つの肺胞の内容積が、ゼロ容量(たとえば、虚脱している)から、隣接する肺胞(たとえば、隣接するユニット)によって得られる容量へ突然ジャンプする。当該技術で既知であるように、肺胞は、患者の血液とのガスのやりとりを促す、肺内の空気袋である。いくつかの肺胞、特に病気であるか苦しんでいる肺胞は、肺内の圧力が非常に低く低下する際に虚脱し、肺胞(たとえば、ユニット)がゼロ容量を得るかゼロ容量に達する。PEEPを患者に適用する(たとえば、PEEP治療を適用する)ことにより、肺内の最小の気道圧力を維持することができ、いくつかの例では、肺胞(たとえば、虚脱した肺胞)を開いたままにすることができる。
【0041】
肺胞は、肺胞が開いている場合に、いくらかの気体のやりとりの生成のみすることができる。したがって、PEEPが不十分である場合にいくらかの気体のやりとりを維持するために、閉じた肺胞(たとえば、ユニット)の機能の損失を補填するために、すでに開いている肺胞を呼吸亢進させるように、より高い駆動吸気圧力が必要である。高められた呼吸の力により、残りの開いた肺胞により大きい膨張を生じ、このことは、肺の組織のさらなるダメージを生じ得る。対照的に、PEEPが十分である場合、気体のやりとりは、ほとんどの肺胞(たとえば、ユニット)の間で共有され、これにより、駆動呼吸圧力、及びいくつかの例では、肺のダメージが低減される。したがって、肺胞のリクルートメントは、EELVをも増大させる。このことは、複数の胞状ユニットのポップオープンによって生成された過度な容量に対応する。開いた胞状ユニットによって生成された過度な容量は、特定の圧力における肺の容量ゲイン(または、圧力-容量のプロットにおける垂直の変移)として知られている。第1のプロットが、リクルートメントがないケースにおける肺の膨張を示し、第2のプロットが、肺の肺胞(たとえば、ユニット)が膨張の開始から開かれた場合の肺の暫定的な膨張を示す、肺の膨張を示す2つの圧力-容量のプロットを有するグラフでは、2つのカーブの間の垂直距離が、リクルートメントによって生じる容量のゲインを示している。
【0042】
図5は、EIT及び位置判定システム400が、患者の肺、灌流、及び/または換気に関する特性を分析する場合がある方法を示している。
【0043】
いくつかの実施形態では、方法500は、動作502に示すように、患者の肺に一定のPEEPレベルを適用することを含む場合がある。本明細書で使用される場合、「一定のPEEP」との用語は、少なくとも実質的に一定のPEEPレベル(たとえば、+2cmH2Oまたは-2cmH2Oの範囲内)に関する場合がある。1つまたは複数の実施形態では、PEEPレベルは、約10cmH2Oから約30cmH2Oの間である場合がある。PEEPは、慣習的な方式を介して、及び、本明細書に記載のシステムのいずれかを介して適用される場合がある。
【0044】
さらに、方法500は、
図5の動作504及び動作506に示すように、患者の肺に関するインピーダンス情報を取得することと、患者の第1の位置を判定することと、を含む場合がある。いくつかの実施形態では、動作504は、患者が第1の位置(たとえば、背臥位)にある間の患者の肺の呼気終末肺インピーダンス(「EELZ」)を測定することを含む場合がある。いくつかの実施形態では、適用されたPEEPにおける患者の肺のEELZを測定することは、患者の肺のEIT画像に示されたインピーダンス値を判定することを含む場合がある。さらに、EELZは、呼吸端の肺を示す場合がある(「EELV」)。たとえば、肺のEELVは、測定された肺のEELZに基づいて(たとえば、EELZから)判定される場合がある。本開示の観点から理解されるように、いくつかの実施形態では、動作504は、患者の肺のある領域(たとえば、少なくとも1つの領域、解析対象領域など)のみのEELZを判定することを含む場合がある。いくつかの実施形態では、動作504は、
図4に関して上述した1つまたは複数のガス監視センサ426を介して、適用されたPEEPにおける患者の肺のEELVを直接判定及び/または測定することをさらに含む場合がある。たとえば、1つまたは複数のガス監視センサ426は、体積センサ、流量センサ、圧力センサ、濃度センサ、またはこれらの任意の組合せの1つまたは複数を含む場合がある。さらに、EELVは、身体のプレチスモグラフィ、ヘリウムの希釈、不活性ガス洗浄技術、または当該技術で知られている任意の他の慣習的な方法を含む様々な方法を介して測定及び/または判定される場合がある。
【0045】
さらに、方法500の動作504は、適用されたPEEPにおける患者の肺(たとえば、肺の少なくとも1つの領域)の気道コンプライアンス(または圧力-容量の関係)を判定することをさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、動作504は、適用されたPEEPにおける患者の肺の少なくとも一部のEIT画像を取得することを含む場合がある。たとえば、動作504は、
図1から
図4に関して上述した方式のいずれかを介してEIT画像を生成すること(たとえば、再構築すること)と、
図1から
図4に関して上述したEITシステムのいずれかを利用することと、を含む場合がある。
【0046】
いくつかの実施形態では、動作504は、ピクセル対ピクセルのレベルで、患者の肺の気道コンプライアンスを判定することを含む場合がある。たとえば、動作504は、生成された各EIT画像の各ピクセルによって示されるインピーダンスに少なくとも部分的に基づき、生成された各EIT画像の各ピクセルによって示された気道コンプライアンスを判定することを含む場合がある。
【0047】
さらに、EITプレチスモグラフは、時間に対してプロットされたEIT画像(またはEIT画像全体)(フレーム)の所与の解析対象領域内のピクセルの合計から得られる波形を含んでいる。具体的には、EITプレチスモグラフは、解析対象領域の内外を移動する空気の量(本明細書では、呼吸振動(ΔZVT)と称される)を示している。EITプレチスモグラフ内の換気の振動は、コンピュータを使用するトモグラフィによって概算された肺の容量の変化と相関する。さらに、EELVの変化は、生成されたEIT画像に示される呼吸端肺インピーダンス(EELZ)の変化と相関する。このため、生成されたEIT画像は、本明細書に記載するように、たとえば位置変化によって生じる(ΔEELZを介する)肺による動脈血化の変化を示している。
【0048】
前述の観点から、EIT画像は、ピクセル毎のインピーダンスの呼吸の変化を示すものである。換言すると、EIT画像は、ピクセル毎のΔZ(たとえば、ΔZ
VT)のカラーマップを示している。したがって、EIT画像に基づき、適用されたPEEPに関する所与の方向(たとえば、腹から背への方向)における換気の分布を判定することができる。さらに、ピクセル毎のΔZに基づき、適用されたPEEPにおいて、コンプライアンスを、肺に入る空気の量(ΔZ)、及び、プラトー圧(P
plateau)と適用されたPEEP(たとえば、肺の弾性圧力)との間の差異から計算することができる。たとえば、プラトー圧(P
plateau)及び適用されたPEEPを、ゼロの流れにおいて吸入及び吐出の肺胞内圧で置き換えることができることから、EIT画像のピクセルの各々のコンプライアンスは、以下のように概算することができる。
【数1】
【0049】
各ピクセルの判定されたコンプライアンスに基づき、所与のEIT画像の各ピクセルの判定されたコンプライアンスの合計は、画像の全体のコンプライアンス(たとえば、所与のPEEPにおける患者の肺の全体のコンプライアンス)を生じる。同様に、EIT画像の解析対象領域内の各ピクセルの判定されたコンプライアンスの合計は、解析対象領域の全体のコンプライアンスを生じる。
【0050】
ふたたび
図5を参照すると、1つまたは複数の実施形態では、動作506が、患者の第1の位置を識別することを含む場合がある(
図6A及び
図6B)。たとえば、
図6A及び
図6Bに示すように、第1の位置は、患者の脊髄が重力ベクトルに対し、概して垂直に延びる場合の位置を含む場合があり、患者の胴及び顔が上方を向く場合がある。たとえば、第1の位置は、概略的な背臥位(すなわち、患者が上方を向く場合の位置)である場合がある。さらなる実施形態では、第1の位置は、脊髄が重力ベクトルに対して概して垂直なままの状態で、患者が一方側に傾いた場合の第1の側臥位である場合がある。さらに、特定の位置が本明細書に示されているが、第1の位置は、任意の側臥位、背臥位、腹臥位、及び/または中間位置を含む場合がある。
【0051】
図6Bに示すように、第2の位置は、脊髄が重力ベクトルに対して概して垂直なままの状態で、患者が一方側に傾いた場合の第2の側臥位を含む場合がある。たとえば、第2の位置は側臥位を含む場合がある。さらに、特定の位置が本明細書に示されているが、第2の位置は、任意の側臥位、背臥位、腹臥位、及び/または中間位置を含む場合がある。引き続き
図5、
図6A、及び
図6Bをともに参照すると、いくつかの実施形態では、動作506は、患者及び/または患者の支持具(たとえば、患者のベッド)に結合された(たとえば、取り付けられた)方位センサを介して患者の第1の位置を判定することを含む場合がある。方位センサは、磁気計、加速度計、ジャイロスコープ、慣性測定デバイス、及び/または任意の他の既知の方位センサの1つまたは複数を含む場合がある。さらなる実施形態では、動作506は、撮像システムを通して取得された画像を分析することを介して、患者の第1の位置を判定することを含む場合がある。たとえば、動作506は、既知の方法を介して、患者の位置の画像を分析することにより、患者の位置及び/または位置の変化を識別するために、画像認識方法を使用することを含む場合がある。さらなる実施形態では、動作506は、患者の向きを判定するために、患者の支持具と情報をやりとりすることを含む場合がある。たとえば、動作506は、支持具の向き、そして結果として、患者の向きを判定するために、患者の支持具(たとえば、ベッド)と情報をやりとりすることを含む場合がある。さらに別の実施形態では、動作506は、動作504で取得された局所的なインピーダンス信号または局所的なEIT画像を分析することにより、患者の位置を識別することを含む場合がある。さらに別の実施形態では、動作506は、EIT及び位置判定システム400のユーザインターフェースを介して患者の位置の通知を受領することを含む場合がある。局所的なインピーダンス信号または局所的なEIT画像を分析することによる患者の位置の識別は、
図8に関して以下により詳細に記載する。
【0052】
さらに、方法500は、
図5の動作508及び動作510に示すように、患者の肺に関するインピーダンス情報を取得することと、患者の第2の位置を識別することと、を含む場合がある。たとえば、患者は、第1の位置から第2の位置に移動される場合があり、次いで、EIT及び位置判定システム400は、第2の位置によって特徴付けられるインピーダンス情報を取得する場合があり、また、第2の位置を識別する場合がある。PEEPは、患者の第1の位置及び第2の位置の間、少なくとも実質的に一定のままである場合がある。患者のインピーダンス情報(たとえば、第2のインピーダンス情報)及び第2の位置は、
図5の動作504及び動作506に関して上述した方式のいずれかを介して判定される場合がある。さらに、患者の第2の位置は、
図6A及び
図6Bに関して上述した位置のいずれかを含む場合がある。さらに、第1の位置及び第2の位置が、EIT及び位置判定システム400によって識別されるものとして本明細書に記載されているが、本開示はそのようには限定されない。たとえば、いくつかの実施形態では、第1の位置及び第2の位置に関するデータは、ユーザ(たとえば、管理者)によってEIT及び位置判定システム400に入力される場合がある。
【0053】
患者の肺に関するインピーダンス情報を取得し、患者の第2の位置が判定されると、本方法は、
図5の動作512に示すように、第1の位置のインピーダンス情報を、第2の位置のインピーダンス情報と比較することを含む場合がある。いくつかの実施形態では、動作512は、コンプライアンスの変化、局所的な一回換気量(すなわち、一回の換気のインピーダンス)の変化、及び/または動脈血化の変化(たとえば、呼気終末肺気量の変化、呼気終末肺インピーダンスの変化、プレチスモグラフのベースラインの変化など)の1つまたは複数を判定することを含む場合がある。たとえば、動作512は、2019年2月11日に出願され、「Systems and methods to determining a patient’s responsiveness to an alveolar recruitment maneuver」と題された、Holzhackerに対する米国出願第16/272,600号に記載される方式のいずれかを介して、特性、及び/または特性の変化(たとえば、測定値)を判定することを含む場合がある。この文献の開示は、本明細書で参照することにより、その全体が組み込まれる。
【0054】
さらに、動作512に関して上述した比較に基づき、EIT及び位置判定システム400は、患者に関する潜在的な肺リクルートメントの値、有効なPEEPの値などを判定する場合がある。さらに、比較に基づき、EIT及び位置判定システム400は、2019年2月11日に出願され、「Systems and methods to determining a patient’s responsiveness to an alveolar recruitment maneuver」と題された、Holzhackerに対する米国出願第16/272,600号に記載の値(たとえば、潜在的な肺リクルートメント値)、特性、及びインデックスのいずれかを判定する場合がある。この文献の開示は、本明細書で参照することにより、その全体が組み込まれる。
【0055】
いくつかの実施形態では、この比較は、第1の位置及び第2の位置にある患者の肺のある領域に関するものである場合がある。さらに、いくつかの実施形態では、患者が第1の位置にある場合、その領域は、水平面(
図6A及び
図6Bの602)の上方にある場合があり、この水平面では、脊髄の重心を貫通する水平軸が概して置かれ、患者が第2の位置にある場合、この領域は水平面の下方にある場合がある。代替的には、いくつかの実施形態では患者が第1の位置にある場合、その領域は、水平面の下方にある場合があり、患者が第2の位置にある場合、この領域は水平面の上方にある場合がある。
【0056】
図7Aは、背臥位にある患者(REF)と比べ、左の側臥位にある患者(CUR)からのインピーダンス情報を図示するグラフを示している(すなわち、動作1)。さらに、このグラフは、右肺の、より高い動脈血化のレベル、及び、より低い一回換気量(V
t)を示している。さらに、このグラフは、左肺の向上された局所的なコンプライアンスと、右肺の減じられたコンプライアンスと、をも示している。
【0057】
図7Bは、もともとの背臥位にある患者(REF)と比較した、戻された背臥位に関する値(CUR)を図示するグラフを示している(すなわち、動作2)。さらに、このグラフは、左肺内、及び全体的な、より高い動脈血化のレベルを示している。さらに、このグラフは、左肺のコンプライアンスが向上されたことを示している。前述のことは、適用されたPEEPレベル(一定のPEEPレベル)が、
図7Aに関して上述した左側臥位の間に発生した肺胞のリクルートメントを維持するために十分であったことを示している。
【0058】
図7Cは、背臥位にある患者(REF)と比べ、右の側臥位にある患者(CUR)に関する値を図示するグラフを示している(すなわち、動作3)。さらに、このグラフは、左肺内の、より高い動脈血化のレベル、及びより低いV
tを示している。さらに、このグラフは、右肺の向上された局所的なコンプライアンスと、左肺の減じられたコンプライアンスと、をも示している。
【0059】
図7Dは、もともとの背臥位にある患者(REF)と比較した、第2の戻された背臥位に関する値(CUR)を図示するグラフを示している(すなわち、動作4)。さらに、このグラフは、左肺内、右肺内、及び全体的な、より高い動脈血化のレベルを示している。さらに、このグラフは、左肺及び右肺のコンプライアンスが向上されたことを示している。前述のことは、適用されたPEEPレベル(一定のPEEPレベル)が、
図7Aに関して上述した左側及び右側の側臥位の間に発生した肺胞のリクルートメントを維持するために十分であったことを示している。
【0060】
図8は、患者が、
図7A及び
図7Bに関して参照した動作1から動作4に関して記載された位置に向いている間に測定及び取得された、グローバルEITプレチスモグラフ及び局所的なEITプレチスモグラフ(すなわち、左及び右のEITプレチスモグラフ)を示すグラフである。
【0061】
上述のように、EIT及び位置判定システム400は、患者の横の位置決め、及び患者の側臥位の変化を分析するために、右及び/または左のEITプレチスモグラフを利用する場合がある。たとえば、「左が下」フェイズ(たとえば、左の側臥位)の間、右及び左のEITプレチスモグラフは、右のプレチスモグラフのベースラインの著しい増大、及び、左のプレチスモグラフのベースラインの減少を示している。さらに、右及び左のEITプレチスモグラフは、患者が背臥位に戻された場合に、右のプレチスモグラフのベースラインが依然として増大していたことを示している。前述のことは、患者が依然としてリクルーティングしており、左が下の位置からより多く、さらなる利益を得ることができたことを示している。
【0062】
さらに、「右が下」フェイズ(たとえば、右の側臥位)の間、右及び左のEITプレチスモグラフは、左のプレチスモグラフのベースラインの著しい増大、及び、右のプレチスモグラフのベースラインの減少を示している。さらに、右及び左のEITプレチスモグラフは、患者が背臥位に戻された際に、左のプレチスモグラフのベースラインが依然として増大していたことを示している。前述のことは、患者が依然としてリクルーティングしており、右が下の位置からより多く、さらなる利益を得ることができたことを示している。
【0063】
図8に示す実施例では、17cmH
2OのPEEPレベルが患者に適用され、患者は、プレチスモグラフのベースラインにおける、持続された著しい増大を示した(たとえば、
図8の全体のプレチスモグラフ内に示される動脈血化またはFRC)。前述のことは、このPEEPレベルが、患者に関するリクルートメントを引き起こすために十分であることを示している。さらに、このPEEPレベルは、PEEPレベルを増大または変化させる必要なしに分析された。
【0064】
図9は、様々なPEEPレベルでの患者の全体のEITプレチスモグラフを示すグラフである。
図9に示すように、11cmH
2O及び14cmH
2OのPEEPレベルでの、患者の横の位置決め(たとえば、患者に上述の右が下及び左が下の位置を取らせること)は、プレチスモグラフのベースラインの持続された著しい増大、または局所的なコンプライアンスの向上には繋がらなかった。前述のことは、11cmH
2O及び14cmH
2OのPEEPレベルが、肺胞をリクルーティングすること、及び肺胞のリクルートメントを維持すること(たとえば、肺胞を開いた状態に維持すること)には不十分であったことを示している。
【0065】
図1から
図9をともに参照すると、本明細書に記載のEIT及び位置判定システム400ならびに方法は、慣習的な方法に対する利点を提供する。たとえば、EIT及び位置判定システム400は、放射線なしで、かつ、PEEPを増大及び/または変化させることなく、ベッドサイドで、肺機能及び換気動作に対する反応性の局所的な評価を可能にする。さらに、EIT及び位置判定システム400は、挿管治療されていない患者の肺機能の局所的な評価を可能にする。
【0066】
本明細書に記載のEIT及び位置判定システム400ならびに方法は、最適な位置を識別し、換気の設定(たとえば、PEEPレベル)を最適にして、換気動作に対する反応性を最大にし、一方、患者の肺を傷つけないように、及び/または、肺の血行動態を妨げないように、可能な限りもっとも低いPEEPレベルを適用し、かつ、肺胞を開いた状態に維持する、ガイド動作(たとえば、患者の位置を背臥位から左の側臥位に変更する)をさらに提供する。
【0067】
さらに、本明細書に記載のEIT及び位置判定システム400ならびに方法は、横の位置決め動作の効果(たとえば、前に虚脱したエリアのリクルートメント、または、換気の同質性のさらなる悪化を評価することを可能にする。
【0068】
本開示の実施形態は、以下の実施形態をさらに含んでいる。
【0069】
実施形態1。患者の肺の特性の分析方法であって、0cmH2Oから40cmH2Oの間の呼気終端陽圧が適用されている間に、患者の第1の位置を識別することと、前記患者が前記第1の位置にある場合に、前記患者の肺の少なくとも1つの領域を示す第1のインピーダンスデータを取得することと、前記呼気終端陽圧が適用されている間に、前記患者の第2の異なる位置を識別することと、前記患者が前記第2の位置にある場合に、前記患者の肺の少なくとも前記領域を示す第2のインピーダンスデータを取得することと、前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することと、適用された前記呼気終端陽圧が肺胞リクルートメントをもたらすか持続するために十分であるかを判定することと、を含む、前記分析方法。
【0070】
実施形態2。第1のインピーダンスデータを取得することが、前記患者が前記第1の位置にある間の前記肺の前記少なくとも1つの領域内の第1の呼気終末肺インピーダンスを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【0071】
実施形態3。第2のインピーダンスデータを取得することが、前記患者が前記第2の位置にある間の前記肺の前記少なくとも1つの領域内の第2の呼気終末肺インピーダンスを測定することを含む、請求項2に記載の方法。
【0072】
実施形態4。第1のインピーダンスデータを取得することが、前記患者が前記第1の位置にある場合に、水平面であって、前記水平面内で脊髄の重心を水平軸が貫通する前記水平面の上方に位置する前記肺の領域に関するインピーダンスデータを取得することを含み、第2のインピーダンスデータを取得することが、前記患者が前記第2の位置にある場合に、前記水平面に下方に位置する前記肺の前記領域に関するインピーダンスデータを取得することを含む、実施形態1から実施形態3のいずれかに記載の方法。
【0073】
実施形態5。前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することが、前記肺の前記少なくとも1つの領域内の呼気終末肺インピーダンスの変化を判定することを含む、実施形態1から実施形態4のいずれかに記載の方法。
【0074】
実施形態6。前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することが、局所的な一回換気量の変化を判定することを含む、実施形態1から実施形態5のいずれかに記載の方法。
【0075】
実施形態7。前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することが、前記肺の前記少なくとも1つの領域内の呼気終末肺気量の変化を判定することを含む、実施形態1から実施形態6のいずれかに記載の方法。
【0076】
実施形態8。前記第1の位置が背臥位を含み、前記第2の位置が側臥位を含む、実施形態1から実施形態7のいずれかに記載の方法。
【0077】
実施形態9。前記呼気終端陽圧が適用される間に、前記患者が前記第1の位置に戻ったことを判定することと、前記患者が戻された前記第1の位置にある場合に、患者の肺の前記少なくとも1つの領域を示す第3のインピーダンスデータを取得することと、前記第1のインピーダンスデータを前記第3のインピーダンスデータと比較することと、をさらに含む、実施形態1から実施形態8のいずれかに記載の方法。
【0078】
実施形態10。前記呼気終端陽圧が適用される間に、前記患者の第3の異なる位置を識別することと、前記患者が前記第3の位置にある場合に、患者の肺の前記少なくとも1つの領域を示す第4のインピーダンスデータを取得することと、前記第1のインピーダンスデータを前記第4のインピーダンスデータと比較することと、をさらに含む、実施形態1から実施形態9のいずれかに記載の方法。
【0079】
実施形態11。患者の肺の特性を分析するためのシステムであって、少なくとも1つのプロセッサと、命令を貯蔵する少なくとも1つの非一時的なコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記患者の第1の位置を識別することと、前記患者の肺の第1のインピーダンスデータを取得することであって、前記第1のインピーダンスデータが前記患者の前記第1の位置を反映する、前記取得することと、前記患者の第2の異なる位置を識別することと、前記患者の肺の第2のインピーダンスデータを取得することであって、前記第2のインピーダンスデータが前記患者の前記第2の位置を反映する、前記取得することと、前記患者の肺の特性の変化を識別するために、前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することと、をさせる、前記非一時的なコンピュータ読取り可能な記憶媒体と、を備えた前記システム。
【0080】
実施形態12。前記患者の第1の位置を識別することが、前記患者に取り付けられた方位センサを介して前記患者の前記第1の位置を識別することを含む、実施形態11に記載のシステム。
【0081】
実施形態13。前記患者の第1の位置を識別することが、前記患者の画像を取得することと、前記患者の前記第1の位置を識別するために、前記患者の前記画像を分析することと、を含む、実施形態11及び実施形態12のいずれかに記載のシステム。
【0082】
実施形態14。前記患者の第1の位置を識別することが、患者支持具の向きに関する前記患者支持具からのデータを受信することと、前記患者支持具から受信されたデータに基づき、前記患者の前記第1の位置を判定することと、を含む、実施形態11から実施形態13のいずれかに記載のシステム。
【0083】
実施形態15。前記患者の第1の位置を識別することが、前記患者の肺の前記第1のインピーダンスデータを取得することと、前記第1のインピーダンスデータに基づき、前記患者の前記第1の位置を判定することと、を含む、実施形態11から実施形態14のいずれかに記載のシステム。
【0084】
実施形態16。前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、前記少なくとも1つのプロセッサに、適用された前記呼気終端陽圧がリクルートメントをもたらすか持続するために十分であるかを判定させる命令をさらに含む、実施形態11から実施形態15のいずれかに記載のシステム。
【0085】
実施形態17。前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することが、前記肺の少なくとも1つの領域内のコンプライアンスの変化を判定することを含む、実施形態11から実施形態16のいずれかに記載のシステム。
【0086】
実施形態18。コンプライアンスの変化を判定することが、前記第1のインピーダンスデータ内の第1の電気的インピーダンストモグラフィ画像の各ピクセルによって示されるコンプライアンスを判定することと、前記第2のインピーダンスデータ内の第2の電気的インピーダンストモグラフィ画像の各ピクセルによって示されるコンプライアンスを判定することと、を含む、実施形態17に記載のシステム。
【0087】
実施形態19。患者に関する潜在的な肺リクルートメント値を判定するためのシステムであって、換気システムと、電気的インピーダンストモグラフィシステムと、位置センサと、コントローラであって、前記換気システム、前記電気的インピーダンストモグラフィシステム、及び前記位置センサが、前記コントローラに操作可能に結合されており、前記コントローラが、少なくとも1つのプロセッサと、命令を貯蔵する少なくとも1つの非一時的なコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記換気システムに、患者に呼気終端陽圧を適用させるとともに維持させることと、前記患者の第1の位置を識別することと、前記患者の肺の第1のインピーダンスデータを取得することであって、前記第1のインピーダンスデータが前記患者の前記第1の位置を反映する、前記取得することと、前記患者の第2の異なる位置を識別することと、前記患者の肺の第2のインピーダンスデータを取得することであって、前記第2のインピーダンスデータが前記患者の前記第2の位置を反映する、前記取得することと、前記患者の肺の特性の変化を識別するために、前記第1のインピーダンスデータを前記第2のインピーダンスデータと比較することと、適用された前記呼気終端陽圧がリクルートメントをもたらすか持続するために十分であるかを判定することと、をさせる、前記少なくとも1つの非一時的なコンピュータ読取り可能な記憶媒体と、を備えている前記コントローラと、を備えた前記システム。
【0088】
実施形態20。前記第1の位置が背臥位を含み、前記第2の位置が側臥位を含む、実施形態19に記載のシステム。
【0089】
実施形態21。前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、前記コントローラに、患者支持具と通信させ、前記患者の肺の前記特性に少なくとも部分的に基づき、前記患者の位置を制御するための制御信号を送信させる命令をさらに含む、実施形態19及び実施形態20のいずれかに記載のシステム。
【0090】
本開示が、特定の図示の実施形態に関して本明細書に記載されてきたが、当業者は、本開示がそのように限定されないことを認識及び理解することになる。むしろ、図示の実施形態に対する多くの追加、削除、及び変更が、本発明の法的な均等を含む、添付のように請求される本開示の範囲から逸脱することなくなされる場合がある。さらに、1つの実施形態からの特徴は、本開示の範囲に依然として包含されつつ、別の実施形態の特徴と合わせられる場合がある。さらに、本開示の実施形態は、異なる様々な検出器のタイプ及び構成で有用である。