(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】圧延機におけるロールギャップを制御する方法
(51)【国際特許分類】
B21B 38/10 20060101AFI20231030BHJP
B21B 31/20 20060101ALI20231030BHJP
B21B 37/58 20060101ALI20231030BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B21B38/10 A
B21B31/20 D
B21B37/58 B
B21C51/00 M
(21)【出願番号】P 2022525439
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2020075190
(87)【国際公開番号】W WO2021089219
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514251927
【氏名又は名称】プライメタルズ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・レフレイ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリ・エヴァンズ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ロウラー
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-234408(JP,A)
【文献】特開平09-021633(JP,A)
【文献】特開2010-279955(JP,A)
【文献】特開平10-089949(JP,A)
【文献】特開平07-311031(JP,A)
【文献】特開平07-198368(JP,A)
【文献】特開平06-088721(JP,A)
【文献】特開2018-161666(JP,A)
【文献】特開平04-307318(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00127263(EP,A2)
【文献】中国特許出願公開第106248036(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機(100)の第1の作業ロール(102)と第2の作業ロール(104)との間のロールギャップを制御する方法であって、前記第1の作業ロール(102)および前記第2の作業ロール(104)の作業面(102a、104a)は、対向関係に配置され、また前記第1の作業ロール(102)および前記第2の作業ロール(104)の各長手方向軸は共通平面内に存在し、使用時に、前記作業面(102a、104a)は、圧延用の金属製品を受け入れるための前記ロールギャップを形成するように離間され、前記方法は、
長手方向において前記第1の作業ロール(102)に沿って離間された複数の作業面位置を画定するステップと、
前記作業面位置のそれぞれにおいて、前記第1の作業ロール(102)の前記作業面(102a)の半径を取得するステップと、
前記作業面位置の前記半径に基づいて、前記作業面(102a)の長手方向輪郭(102aPA)を取得するステップと、
前記長手方向輪郭(102aPA)に基づいて、前記第1の作業ロール(102)および前記第2の作業ロール(104)の前記長手方向軸を2等分する中心線(CL)の両側の前記ロールギャップの平均寸法における差を低減するために、前記共通平面内で、前記第2の作業ロール(104)に対して前記第1の作業ロール(102)を傾斜させるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記長手方向輪郭(102aPA)に基づいて、前記第1の作業ロール(102)の前記作業面(102a)の線形成分(102aL)を画定するステップと、
前記線形成分(102aL)に基づいて、前記第1の作業ロール(102)および前記第2の作業ロール(104)の前記長手方向軸を2等分する前記中心線(CL)の両側の前記ロールギャップの平均寸法における前記差を低減するために、前記共通平面内で、前記第2の作業ロール(104)に対して前記第1の作業ロール(102)を傾斜させるステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作業面位置のそれぞれにおいて、前記第1の作業ロール(102)の前記作業面(102a)の前記半径を取得するステップは、
前記第1の作業ロール(102)の非作業面(102b、102c)において基準(D)を画定するステップと、
前記長手方向において離間された複数の基準参照点を画定するステップであって、各基準参照点は、前記作業面位置の1つの半径方向の空間に位置し、かつ前記基準(D)から所定の半径方向距離にある、ステップと、
前記基準参照点と各前記作業面位置との間の半径方向距離を測定するステップと、
前記基準(D)からの前記基準参照点の前記所定の半径方向距離と、各前記測定された半径方向距離と、の間の差を取得するステップと、
前記基準(D)からの前記基準参照点の前記所定の半径方向距離と、各前記測定された半径方向距離と、の間の前記差に基づいて、前記作業面位置のそれぞれにおける前記第1の作業ロール(102)の前記作業面(102a)の前記半径を取得するステップと、
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記長手方向において離間された前記複数の基準参照点を画定するステップは、
前記基準参照点のそれぞれにセンサ(210)を設けるステップであって、前記センサ(210)のそれぞれは、前記基準参照点と各前記作業面位置との間の半径方向距離を測定するように構成される、ステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の作業ロール(102)は、金属材料を含み、
前記センサ(210)は、前記金属材料に渦電流を誘起するための渦電流センサを備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記作業面位置のそれぞれにおいて、前記第1の作業ロール(102)の前記作業面(102a)の前記半径を取得するステップは、
前記作業面位置のそれぞれに対して、複数の半径を取得するために、前記作業面(102a)の円周回りの複数の半径位置において前記作業面(102a)の半径を取得するステップと、
各前記作業面位置において、前記作業面(102a)の前記半径を取得するために、前記複数の半径を平均するステップと、
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記作業面位置のそれぞれにおいて、前記第1の作業ロール(102)の前記作業面(102a)の前記半径を取得するステップの前に、前記第1の作業ロール(102)および前記第2の作業ロール(104)を、その前記長手方向軸に沿って、所定量へと曲げるステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の作業ロール(102)の前記作業面(102a)が、前記第2の作業ロール(104)の前記作業面(104a)と接触しているとき、前記作業面位置のそれぞれにおいて、前記第1の作業ロール(102)の前記作業面(102a)の前記半径を取得するステップを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の作業ロール(102)の前記作業面(102a)が、前記第2の作業ロール(104)の前記作業面(104a)から離間しているとき、前記作業面位置のそれぞれにおいて、前記第1の作業ロール(102)の前記作業面(102a)の前記半径を取得するステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記長手方向において前記第2の作業ロール(104)に沿って離間された複数の作業面位置を画定するステップと、
前記第2の作業ロール(104)の前記作業面位置のそれぞれにおいて、前記第2の作業ロール(104)の前記作業面(104a)の半径を取得するステップと、
前記第2の作業ロール(104)の前記作業面位置の前記半径に基づいて、前記第2の作業ロール(104)の前記作業面(104a)の長手方向輪郭(104aPA)を取得するステップと、
前記第1の作業ロール(102)および前記第2の作業ロール(104)の前記作業面(102a、104a)の前記長手方向輪郭(102aPA、104aPA)に基づいて、前記第1の作業ロール(102)および前記第2の作業ロール(104)の前記長手方向軸を2等分する前記中心線(CL)の両側の前記ロールギャップの平均寸法における前記差を低減するために、前記共通平面内で、前記第2の作業ロール(104)に対して前記第1の作業ロール(102)を傾斜させるステップと、
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の作業ロール(102)を傾斜させるステップは、前記第1の作業ロール(102)の第1の端部分と第2の端部分とにそれぞれ、第1の力および第2の力を同時に加えるステップを含み、前記第1の力および前記第2の力は、大きさが等しく、方向が反対であり、したがって、前記第1の作業ロール(102)は、前記第1の作業ロール(102)の前記長手方向軸と、前記第1の作業ロール(102)および前記第2の作業ロール(104)の前記長手方向軸を2等分する前記中心線(CL)と、のそれぞれを通りかつ垂直に延びる中心軸回りで回転する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機の作業ロール間のロールギャップを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延機においては、2本の細長い作業ロールが、水平方向に、一方が他方の上に配置される。作業ロールの作業面は、ギャップによって分離される。使用時には、金属製のストリップが、そのギャップを概して水平方向に、かつ作業ロールの長手方向軸に対して直角な移動方向に通過すると、作業ロールにより形成される。
【0003】
作業ロール間のギャップを正しく設定することは、効率的な動作を行うための基本である。絶対ギャップ(absolute gap)は、ストリップの必要な厚さを達成するために、正しい寸法でなくてはならない。さらにギャップを、作業ロールの長さに沿って一様な寸法に維持することも重要である。ギャップ寸法が、長さに沿って実質的に一様ではない、すなわち、作業ロールの左側と右側との間のギャップ寸法に差があるような場合、作業ロールをストリップが通過し始めたとき、望ましい長さに含まれる目標とするストリップ厚さが達成されないことになる。さらに左側と右側との間のギャップ寸法のこの差、または「差異のあるギャップ」は、ストリップを、移動軸から横方向に偏移させることになる。
【0004】
差異のあるギャップが存在する理由は以下の通りである。新しい作業ロールが圧延機に装着されたとき、それらは、対称的なロール輪郭を有するように研磨されており、各作業ロールの半径は、作業ロールの長さに沿って実質的に一定である。使用するとき、熱の生成および放散源は、ストリップの中心線に関して必ずしも対称的ではなく、したがって、圧延機を横断する温度差が構成される可能性がある。この熱的な非対称の原因の例は、スピンドル構成(一方の側だけ)、スラスト軸受(これも一方の側だけ)、および作業ロールの軸受からの異なる熱除去率である。この熱プロファイルは、非対称のロール熱膨張を生じ、したがって、ロールギャップが、中心線の一方の側において、他方よりも大きくなる。
【0005】
ストリップが移動軸から偏って進んだとき、「コブル(cobble)」または詰まりを生ずることが多く、スクラップが除去される間、不可避の生産遅延が生ずる。入ってくる厚板が非常に冷却された極端な場合では、圧延することができず、切り分けてスクラップにする必要があり、結果として、さらなる遅延を生ずる。これらの遅延は、すでに圧延している可能性のある粗圧延機へとフィードバックされ、次のコイルに対する粗工程は見送られる。
【0006】
熱間タンデム圧延機の最後のスタンドの後にサイドトリム(side trim)するのが一般的である。これは、回転刃を備える1対のトリマヘッドを用いて行われ、それは、ストリップの各縁部から数十ミリを切り落とす。トリマは、最後のスタンドから、通常、3メートルから4メートルにある。ストリップが偏って進むと、ストリップは、トリマヘッドの1つの中へと詰まってしまう可能性がある。ストリップはまた、反対側にあるトリマヘッドから完全に外れる可能性もある。
【0007】
多くの生産者は、自分の圧延機において、常に、より薄く、より高い強度の製品を圧延しようと努力している。これにより、パーセンテージの点で、差異のあるギャップがストリップの厚さに対して大きくなるにつれて、コブルの危険が増加する。2つの側において、パーセンテージにおける差の低下が大きくなればなるほど、ストリップの湾曲はさらに悪くなる。
【0008】
操作者は、時々、ギャップ設定用の基準を確立するために、何らかのストリップなしに、ロールを合わせることがある。これは、一般にミルゼロ(mill zero)と呼ばれる。しかし、完全なゼロは、時間がかかる可能性がある。さらに、2つの作業ロールの間の摩擦差は、ゼロプロセスそれ自体におけるエラーを生じ、したがって、ギャップ設定におけるエラーを生ずる。
【0009】
使用する場合、操作者は、ストリップの進行を見守り、ストリップが偏って進み始めた場合、介入する。その介入は、ストリップが作業ロールを通過し続ける間に、差異のあるギャップを低減するように、作業ロールの1つを傾斜させることを含む。このようにして、操作者は、ストリップを中心線の方向に戻すことができる。この操作は、コブルを阻止することができるが、手動に集中しており、平均的な作業ロールのギャップ寸法を非常に正確に、迅速に修正することができない。
【0010】
特許文献1は、1対のロール間の挟む(nip)寸法を測定するための計器に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のことを考慮すると、圧延機の作業ロール間のギャップの制御を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の態様によれば、圧延機の第1の作業ロールと第2の作業ロールとの間のロールギャップを制御する方法が提供され、第1の作業ロールおよび第2の作業ロールの作業面は、対向関係に配置され、またロールの各長手方向軸は共通平面内に存在し、使用時に、前記作業面は、圧延用の金属製品を受け入れるためのギャップを形成するように離間されており、方法は、長手方向において第1の作業ロールに沿って離間された複数の作業面位置を画定するステップと、作業面位置のそれぞれにおいて、第1の作業ロールの作業面の半径を取得するステップと、作業面位置の半径に基づいて、作業面の長手方向輪郭を取得するステップと、前記長手方向輪郭に基づいて、第1の作業ロールおよび第2の作業ロールの長手方向軸を2等分する中心線の両側におけるギャップの平均寸法における差を低減するために、共通平面内で、第2の作業ロールに対して第1の作業ロールを傾斜させるステップと、を含む。
【0014】
圧延動作中、作業ロールは、金属製のストリップからロールへの熱伝達に起因して、温度が増加することになる。この温度増加は、ロールの直径を増加させ、したがって、ロール間のギャップの寸法を低減させる。従来の温度および/または摩耗モデルは、ギャップの寸法の低下に対して補償を行うことができるが、そのモデルは、温度における、したがって、ロールの膨張における非対称性に対応することができない。したがって、そのモデルは、ロール間で差異のあるギャップの問題に対処することはない。
【0015】
本発明の方法は、ロールの長さに沿った複数の位置におけるロールの半径を取得し、半径を用いて、ロールの長手方向の輪郭を取得し、かつ中心線の両側のギャップの平均寸法における差を低減する(最小化する、またはなくすことが好ましい)、すなわち、差異のあるギャップを修正するために、長手方向輪郭を用いてロールを傾斜させることにより、この問題を解決する。
【0016】
差異のあるギャップの修正が主な利点であるが、さらなる利点は、中心線(すなわち、平均)のギャップにおけるどんなエラーも識別し、補償できることである。
【0017】
方法は、前記長手方向輪郭に基づいて、第1の作業ロールの作業面の線形成分を画定するステップと、前記線形成分に基づいて、第1の作業ロールおよび第2の作業ロールの長手方向軸を2等分する中心線の両側のギャップの平均寸法における差を低減するために、共通平面内で、第2の作業ロールに対して第1の作業ロールを傾斜させるステップと、を含む。
【0018】
作業面位置のそれぞれにおいて、第1の作業ロールの作業面の前記半径を取得するステップは、第1の作業ロールの非作業面において基準を画定するステップと、長手方向において離間された複数の基準参照点を画定するステップであって、各基準参照点は、作業面位置の1つの半径方向の空間に位置し、かつ基準から所定の半径方向距離にある、ステップと、基準参照点と各作業面位置との間の半径方向距離を測定するステップと、基準からの基準参照点の所定の半径方向距離と各測定された半径方向距離との間の差を取得するステップと、前記差に基づいて、作業面位置のそれぞれにおける第1の作業ロールの作業面の前記半径を取得するステップと、を含むことができる。
【0019】
長手方向において離間された前記複数の基準参照点を画定するステップは、基準参照点のそれぞれにセンサを設けるステップであって、センサのそれぞれは、基準参照点と、各作業面位置と、の間の半径方向距離を測定するように構成される、ステップを含むことができる。
【0020】
第1の作業ロールは金属材料を含み、センサは、金属材料に渦電流を誘起するための渦電流センサを備えることができる。
【0021】
作業面位置のそれぞれにおいて、第1の作業ロールの作業面の前記半径を取得するステップは、作業面位置のそれぞれに対して、複数の半径を取得するために、作業面の円周回りの複数の半径位置において作業面の半径を取得するステップと、各作業面位置において、作業面の前記半径を取得するために、複数の半径を平均するステップと、を含むことができる。
【0022】
方法は、作業面位置のそれぞれにおいて、第1の作業ロールの作業面の前記半径を取得するステップの前に、第1の作業ロールおよび第2の作業ロールを、その長手方向軸に沿って所定量へと曲げるステップを含むことができる。
【0023】
方法は、第1の作業ロールの作業面が第2の作業ロールの作業面と接触しているとき、作業面位置のそれぞれにおいて、第1の作業ロールの作業面の前記半径を取得するステップを含むことができる。
【0024】
方法は、第1の作業ロールの作業面が第2の作業ロールの作業面から離間しているとき、作業面位置のそれぞれにおいて、第1の作業ロールの作業面の前記半径を取得するステップを含むことができる。
【0025】
方法は、長手方向において第2の作業ロールに沿って離間された複数の作業面位置を画定するステップと、第2の作業ロールの作業面位置のそれぞれにおいて、第2の作業ロールの作業面の半径を取得するステップと、第2の作業ロールの作業面位置の半径に基づいて、第2の作業ロールの作業面の長手方向輪郭を取得するステップと、第1の作業ロールおよび第2の作業ロールの作業面の長手方向輪郭に基づいて、第1の作業ロールおよび第2の作業ロールの長手方向軸を2等分する中心線の両側のギャップの平均寸法における差を低減するために、共通平面内で、第2の作業ロールに対して第1の作業ロールを傾斜させるステップと、を含むことができる。
【0026】
第1の作業ロールを傾斜させるステップは、第1の作業ロールの各第1の端部分および第2の端部分に対して第1の力および第2の力を同時に加えるステップを含むことができ、第1の力および第2の力は、大きさが等しく、かつ方向が反対であり、したがって、第1の作業ロールは、第1の作業ロールの長手方向軸と、第1の作業ロールおよび第2の作業ロールの長手方向軸を2等分する中心線と、のそれぞれを通りかつ垂直に延びる中心軸回りで回転する。
【0027】
次に、例として添付図を参照して実施例を述べるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】1対の作業ロールを備える圧延機の概略的な側面図である。
【
図2】作業ロール、およびその間のギャップの概略的な正面図である。
【
図4a】作業ロールの1つを用いた測定デバイスを示す図である。
【
図4b】作業ロールの1つを用いた測定デバイスを示す図である。
【
図5a】作業ロールの1つを用いた測定デバイスを示す図である。
【
図5b】作業ロールの1つを用いた測定デバイスを示す図である。
【
図6】作業ロールの測定に関するデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、圧延機100は、各バックアップロール106、108によってそれぞれが支持される第1の作業ロール102および第2の作業ロール104を備える。第1の作業ロール102および第2の作業ロール104、ならびにバックアップロール106、108の長手方向軸は、単一の共通平面(
図1では鉛直平面)内に存在する。1対の油圧式ロール負荷シリンダ110a、110b(その1つだけが
図1で見える)が、その各バックアップロール106を介して、第1の作業ロール102に回転力を加えるように配置される。第2の作業ロール104およびその各バックアップロール108の位置は、圧延機100の基部に位置する1対のウェッジ(wedge)112a、112bにより設定される。この例では、第1の作業ロール102および第2の作業ロール104は、鋼から構成される。(
図1の圧延機100は、典型的な熱間圧延機構成である。冷間圧延機では、油圧式ロール負荷シリンダは、底部にあることが多く、ウェッジは上部にある。本発明は、熱間圧延と冷間圧延との両方に適用可能であり、したがって、ウェッジと油圧式ロール負荷シリンダとの位置は、逆にできることが理解されよう。)
【0030】
第1の作業ロール102および第2の作業ロール104は、圧延動作中に摩耗する傾向があり、したがって、それらは、そのロール面が圧延に確実に適するように、定期的に再研磨される。再研磨すると、作業ロール102、104の直径を、その新しい(最大)寸法から、不適合(最小)寸法へと減少させる。新しいもの、部分的に摩耗したもの、不適合な直径の作業ロールの混合されたものが、いつでも圧延機100内に存在する可能性がある。油圧式ロール負荷シリンダ110a、110bが、これらの直径変化が生ずる位置範囲に対応することは、実際的ではなく、したがって、ウェッジ112a、112bを含めて、それを調整することにより、第2の作業ロール104の上部が望ましい位置になるようにする。この位置は、概して、ストリップ通過線114、またはその近くであり、それは作業ロール直径の操作者が入力した値から決定される。
【0031】
図2を参照すると、圧延機の動作中に、例えば、本明細書の上記で論じた理由により、対向する第1の作業ロール102と第2の作業ロール104との間に差異のあるギャップが存在する可能性がある。図面で示されるように、中心線CLは、第1の作業ロール102および第2の作業ロール104の長手方向軸を2等分する。中心線CLの左側において、ギャップは、大きな寸法成分G1を有するが、中心線CLの右側では、ギャップGは、より小さな寸法成分G2を有し、中心線CLにおいては、ギャップは、平均された寸法成分G3、すなわち、(G1+G2)/2を有する。図面では、2つの側の間のギャップ寸法の差は、説明のため誇張されていることが理解されよう。そうではなくて、ギャップは、左側でより小さな成分を有し、右側でより大きな成分を有し得ることもさらに理解されよう。
【0032】
図2をさらに参照すると、第1の作業ロール102の中央部分は、第1の作業ロール102の端部分に位置する1対の非作業面102b、102cの間で延びる作業面102aを備える。図面に示されてないが、第2の作業ロール104も同様に、1対の非作業面104b、104cの間で延びる作業面104aを備える。作業ロール102、104に関して本明細書で使用される場合、「作業面」は、圧延動作中に、金属のストリップと接触する作業ロールの表面を意味するが、「非作業面」は、概して金属のストリップと接触しない作業ロールの表面を意味する。圧延動作中に、非作業面102b、102c、104b、104cは、作業面102a、104aよりも大幅に低温であると予想され、したがって、摩耗および変形がより少ない傾向にある。金属のストリップ幅の外側では、摩耗がない(ミルゼロの場合、ロール対ロール接触からのどんな摩耗も無視できる)。作業ロール102、104は、これらの点においてより低温であるため、それらはまた、より少ない熱膨張を有する。非作業面102b、102cの長手方向長さに対する作業面102aの長手方向長さの比は、
図2で示されたものとは異なることもできることが理解されよう。
【0033】
図3aおよび
図3bを参照すると、この例では、作業ロール測定デバイス200は、離間され、かつ細長い横断部材204により共に接続された1対の伸縮式サポートアーム202a、202bを備える。横断部材204の各端部には、横断部材204の長手方向軸回りで枢動するように配置されたサポートフット206a、206bが設けられる。細長いセンサビーム208の2つの端部は、各サポートフット206a、206bに(例えば、ボルトにより)取り付けられ、したがって、センサビーム208は、横断部材204の下に、かつそれと平行な関係で、サポートフット206a、206bの間で延びる。複数のセンサ210が、センサビーム208に取り付けられる。この例では、センサ210は、長手方向に、センサビーム208に沿って単一の列(または線)で配置され、またギャップにより互いに離間されている。この例では、25個のセンサ210がある。この例では、センサ210は、渦電流センサを備える。
【0034】
作業ロール測定デバイス200は、圧延機100に取り付けられるように適合され(または代替的に、圧延機100の一体部分を形成することもできる)、したがって、センサビーム208は、伸縮式サポートアーム202a、202bにより、第1の作業ロール102および第2の作業ロール104の方向に、またそこから離れるように選択的に移動可能である。
【0035】
圧延機100の動作シーケンスを次に述べるものとする。
【0036】
(1)新しい作業ロールが圧延機に導入されたとき、それらは、熱的な反りはなく、(あるとすれば)研磨反りだけを有することになる。この時点で、ミルゼロシーケンスが常に必要である。以下で述べられるように、輪郭測定のための基準を確立するために、この後に、輪郭測定シーケンスが行われる。したがって、圧延機100はゼロに合わされる。ミルゼロ化は、作業ロール102、104が触れたとき、油圧式ロール負荷シリンダ110a、110bの延びを確立するための一連の動作である。この情報は、ギャップ設定を行うために有用である。圧延機100をゼロにするために、油圧式ロール負荷シリンダ110a、110bは、作業ロール102、104が触れるまで、位置を移動し、触れた時点で、制御は力制御へと切り替えられ、力は、ゼロ化する負荷まで増加される。作業ロール102、104は、まだ接触状態にある間に回転される。力が安定し、かつ2つの側で等しくなった後、シリンダの延びが記録され、バックアップロール106、108の規定された回転数(例えば、2回)にわたって平均される。取得された平均的なシリンダの延びは、ゼロまたは基準の延びとなる。
【0037】
(2)第1の作業ロール102および第2の作業ロール104は、一定の速度で回転され、金属のストリップが、作業ロール102、104の間を通過する。差異のあるギャップ、および油圧式ロール負荷シリンダ110a、110bの位置がサンプリングされ、一方、回転および移動平均値が記憶される。ストリップの操作トリム(strip steer trim)もまた平均化され、記憶されることが好ましい。
【0038】
(3)ストリップが通過する最後に向けて、第1の作業ロール102および第2の作業ロール104は速度を落とす。このとき、差異のあるギャップの平均値、および油圧式ロール負荷シリンダ110a、110bの位置(および好ましくは、ストリップの操作トリムの平均値)が凍結され、かつ次のコイルを開始するための準備として記憶される。
【0039】
(4)ストリップがロールのくわえ込み部を離れた後、油圧式ロール負荷シリンダ110a、110bは、第1の作業ロール102および第2の作業ロール104を、その長手方向軸に沿って所定の曲げ度合へと曲げるように力を加えるべく制御される。
【0040】
(5a)
図4aから
図5bを次に参照すると、作業ロール測定デバイス200の伸縮式サポートアーム202a、202bが、センサビーム208を、第1の作業ロール102へと移動するために延ばされる。作業ロール測定デバイス200の各サポートフット206a、206bは、サポートフット206a、206bを横断部材204上で枢動できるようにする軸受206a1、206b1と、第1の作業ロール102に接触させられる1対の離間されたガイドホイール(またはローラ)206a2と、を備え、サポートフット206a、206bの枢動アクションは、第1の作業ロール102に対するガイドホイール206a2の自己調整を提供する。ガイドホイール206a2は、例えば、ポリウレタンなど、第1の作業ロール102の表面を損傷する、または跡を付けることのない材料から構成されることが好ましい。
【0041】
作業ロール測定デバイス200がそのように配置された状態の
図4bおよび
図5bを特に参照すると、センサビーム208は、第1の作業ロール102の作業面102a上に、かつそれに沿って、長手方向に存在し、センサビーム208は、わずかな半径方向ギャップだけ、作業面102aから離間されている。したがって、センサビーム208に取り付けられたセンサ210のそれぞれ1つは、センサ210の下の作業面102a上の各位置へと下方に突き出ており、前記各位置は、作業面102aの長さに沿って延びる。さらに、作業ロール測定デバイス200のサポートフット206a、206bのそれぞれは、第1の作業ロール102の2つの非作業面102b、102cの一方の上に位置する。
【0042】
作業ロール測定デバイス200に関して、ガイドホイール206a2からのセンサ210のそれぞれの距離は事前に決定される。したがって、第1の作業ロール102の非作業面102b、102c上で、ガイドホイール206a2の位置は、測定のための基準を提供する。すなわち、非作業面102b、102cに対するガイドホイール206a2の接触点は、基準を提供する。言い換えると、非作業面102b、102cは、実質的に、測定基準を提供する。さらに、センサ210の位置は、複数の基準参照点を提供する。温度センサを、非作業面102b、102cの温度を測定して基準の確立を支援するために、ガイドホイール206a2に隣接して設けることができる。
【0043】
第1の作業ロール102が一定の速度で回転され、センサ210が起動される。第1の作業ロール102が回転すると、センサ210のそれぞれは、センサと、センサ210の下の、作業面102a上の各(突き出た)位置と、の間の半径方向距離を繰り返し測定する。測定値は、データベースに記憶される。非作業面102b、102cの回転半径におけるどんな変動も、サポートフット206a、206bが枢動できるようにする軸受206a1、206b1により適応される。
【0044】
測定値が得られ記憶された後、作業ロール測定デバイス200の伸縮式サポートアーム202a、202bは、センサビーム208を第1の作業ロール102から移動して離すために後退される。
【0045】
(5b)各センサから非作業面102b、102c上の基準までの所定の半径方向距離に関する前述の知識を用いると、作業面102a上の前記位置のそれぞれの基準からの半径方向距離が取得される。位置のそれぞれに関して、作業面102aの円周回りの半径の平均が計算される。したがって、作業面102aの回転半径が、作業面102aの長さに沿って、前記位置のそれぞれで取得される。
【0046】
図6は、作業面102aの長さに沿った回転半径の、すなわち、実際の作業面102aの長手方向輪郭102aPAの例示的なプロットを示す。回転半径が、中心線CLに関して対称的である理想的な輪郭102aPIを表す放物線がさらに図に含まれている。このように、作業面102aの実際の長手方向輪郭102aPAは、理想的なものではなく、したがって、中心線CLの両側におけるギャップの平均寸法の差を低減するために、修正が必要であることが分かる。
【0047】
(5c)このために、適切な従来の数学的方法を用いて、長手方向輪郭102aPAの線形成分102aLが得られる。線形成分102aLのピークツーピークの振幅が、油圧式ロール負荷シリンダ110a、110bに対する入力として使用されて、第1の作業ロール102および第2の作業ロール104の平面内で、第2の作業ロール104に対して第1の作業ロール102を傾斜させる。このように、中心線の両側のロールギャップの平均寸法における差は低減され、好ましくは最小化される。傾斜の視覚的な表示が、操作者に提供されることが好ましい。
【0048】
第1の作業ロール102を傾斜させている間に、油圧式ロール負荷シリンダ110a、110bの一方が後退し、他方が延ばされ、その調整は、合計の圧延力が、一定に保たれるように等しく反対方向であり、したがって、ストリップの厚さが、圧延動作中に変化することはない。
【0049】
好ましくは、差異のあるギャップ、および油圧式ロール負荷シリンダ110a、110bの位置の、以前に取得され、かつ記憶された平均値(また好ましくは、ストリップの操作トリムの平均値)は、圧延動作中に微調整を行うために、傾斜および平均ギャップデータと組み合わされる。
【0050】
第1の作業ロール102の作業面102aの長手方向輪郭102aPAと共に、ストリップの前の通過からの油圧式ロール負荷シリンダ110a、110bの操作および差異のある位置は、圧延機100の熱的かつ/または摩耗モデルに提供され得る。作業面102aの半径の記憶された測定値は、ロール輪郭が、第1の作業ロール102の寿命中の経過時間と共にどのように変化するかに関する知識を取得するために使用することができる。
【0051】
前述の例では、第1の作業ロール102の作業面102aのセンサ測定値は、第1の作業ロール102が回転している間に得られ、また作業面102aの長さに沿った位置のそれぞれに対して、作業面102aの円周回りの半径の平均が計算される。あまり好ましくないが、作業面102aのセンサ測定値は、第1の作業ロール102が静止している間に得ることもでき、また作業面102aの長さに沿った位置のそれぞれに対して、半径方向距離の単一の測定が行われ、これらの単一の測定を、作業面102aの長手方向輪郭を取得するために使用することもできる。
【0052】
第1の作業ロール102の作業面102aの長手方向輪郭102aPAは、様々な機能を用いて取得することができ、線形成分102aLもそれらのうちの単なる1つであることが理解されよう。例えば、長手方向輪郭102aPAは、作業ロールの単位長さ当たりの曲線下の面積に関して取得することもできる。
【0053】
センサは、第1の作業ロール102の作業面102aへの距離を測定するのに適した任意の形態をとることができ、渦電流センサは一例に過ぎないことを理解されたい。さらにセンサ210を除外して、第1の作業ロール102の長さに沿った作業面位置のそれぞれにおける作業面102aの半径を取得するために、何らかの他の手段を使用することができる。例えば、作業面102aの写真画像を撮り、これらのものから半径を取得することができる。
【0054】
前述の例では、第1の作業ロール102の作業面102aだけが測定され、長手方向輪郭が取得される。この例では、第2の作業ロール104の作業面104aの長手方向輪郭104aPAは、概して第1のものと同様であると仮定されている。別の例では、第2の作業ロール104の作業面104aもまた測定され、前記作業面104aの長手方向輪郭104aPAも、上記で述べられた方法で取得される。第2の作業ロール104のこの知識は、ロールギャップのより正確な制御を可能にする。
【0055】
第1の作業ロール102および第2の作業ロール104の一方、あるいは両方の作業面が測定されるとしても、測定中に、ロールが、互いに接触した状態にある、またはそれらはギャップだけ離間され得る。
【0056】
第1の作業ロール102および第2の作業ロール104の非作業面102b、102c、104b、104cの温度を測定することが望ましいこともあり得る。これは、接触または非接触温度センサにより行うことができる。これらの温度を用いると、測定される作業ロールの伸びを用いて、幅にわたるロール温度を推定することが可能になる。
【0057】
デバイスおよび制御方式は、行われる測定において拡張することもできる。それは、圧延機における他のスタンドのいくつかまたはすべてに対して使用することもできる。さらなる距離センサを、作業ロール全体の反りを測定するために、参照点の間に適合させることもできる。真の反りのフィードバックは、次の製品に対するロール曲げ設定を行うための数学的モデルへの入力として使用することができる。温度センサは、熱的なプロファイルを測定するために適合され得る。
【0058】
本発明は、その好ましい実施形態に関して述べられてきているが、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく、多くの異なる方法において変更できることを理解されたい。
【符号の説明】
【0059】
100 圧延機
102 第1の作業ロール
102a 作業面
102aL 線形成分
102aPA 長手方向輪郭
102aPI 理想的な輪郭
102b 非作業面
102c 非作業面
104 第2の作業ロール
104a 作業面
104b 非作業面
104c 非作業面
104aPA 長手方向輪郭
106 バックアップロール
108 バックアップロール
110a 油圧式ロール負荷シリンダ
110b 油圧式ロール負荷シリンダ
112a ウェッジ
112b ウェッジ
114 ストリップ通過線
200 作業ロール測定デバイス
202a 伸縮式サポートアーム
202b 伸縮式サポートアーム
204 横断部材
206a サポートフット
206a1 軸受
206a2 ガイドホイール
206b サポートフット
206b1 軸受
208 センサビーム
210 センサ
CL 中心線
D 基準
G ギャップ
G1 大きな寸法成分
G2 小さな寸法成分
G3 平均された寸法成分