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特許7375190炭化水素井管状カラムで使用される鋼管のための装置および鋼管ならびに炭化水素井管状カラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】炭化水素井管状カラムで使用される鋼管のための装置および鋼管ならびに炭化水素井管状カラム
(51)【国際特許分類】
   E21B 17/10 20060101AFI20231030BHJP
   F16L 15/00 20060101ALI20231030BHJP
   F16L 1/00 20060101ALN20231030BHJP
   F16L 57/00 20060101ALN20231030BHJP
【FI】
E21B17/10
F16L15/00
F16L1/00 V
F16L57/00 C
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022526129
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2020080867
(87)【国際公開番号】W WO2021089576
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】19207812.9
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504255249
【氏名又は名称】ヴァルレック オイル アンド ガス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロディ,アラステア ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッツェル,マキシム
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02201177(GB,A)
【文献】国際公開第2004/064215(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/198863(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/095453(WO,A1)
【文献】特開昭52-027001(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0246778(US,A1)
【文献】国際公開第2018/073197(WO,A1)
【文献】実開昭62-046883(JP,U)
【文献】英国特許出願公開第02572832(GB,A)
【文献】国際公開第93/020327(WO,A1)
【文献】米国特許第10197190(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 17/10
F16L 15/00
F16L 1/00
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油およびガス、エネルギーまたは貯蔵用途のための管状カラムで使用される第1の鋼管(20)の部分(22)に固定されるように設計された、前記第1の鋼管のための装置(10;100)であって、
・ 長手方向軸(A1;A’1)に沿って延在し、前記第1の鋼管(20)の前記部分(22)を取り囲むように設計された実質的に円筒形のエンベロープ(11;111)であって、前記エンベロープ(11;111)の2つの自由端部(11c,11d;111c,111d)の間に周方向の隙間(J1;J2)が存在するように開いたリングを形成するエンベロープ(11;111)と、
・ 前記周方向の隙間(J1;J2)の近傍で前記エンベロープ(11;111)に固定され、ロック位置において前記エンベロープ(11;111)の前記自由端部(11c,11d;111c,111d)を互いに接近させるように構成されたロック機構(16;116)と、
を備え、
前記ロック機構(16;116)は、前記エンベロープ(11;111)に枢動可能に取り付けられたロックレバー(17;117)を備え、前記ロックレバー(17;117)は、前記ロックレバー(17;117)が前記エンベロープ(11;111)から半径方向に離れているロック解除位置と、前記ロック位置との間で回転するように構成され、
前記ロック機構(16;116)は、前記ロックレバー(17;117)を前記ロック位置に維持するように構成された保持システム(24,50,52)を備える、
装置(10;100)。
【請求項2】
前記ロック機構(16;116)は、前記ロック位置において前記エンベロープ(11;111)の前記自由端部を互いに接近させながら少なくとも1つのケーブル(40;140,142)をクランプするようにさらに構成される、請求項に記載の装置(10;100)。
【請求項3】
前記ロックレバー(17;117)は、前記ロック位置において前記ケーブル(40;140,142)をクランプするように設計される、請求項に記載の装置(10;100)。
【請求項4】
前記エンベロープ(11;111)は、前記エンベロープの前記長手方向軸(A1;A’1)に平行な軸に沿って、前記周方向の隙間(J1;J2)の近傍に延在する少なくとも1つの長手方向溝(14;114a,114b)を有し、前記長手方向溝(14;114a,114b)は、前記少なくとも1つのケーブル(40;140,142)を受容するように構成される、請求項2または3に記載の装置(10;100)。
【請求項5】
前記ロック機構(16;116)の前記ロックレバー(17;117)の内面は、前記ケーブル(40;140,142)を把持するように構成された複数の歯(17a)を備える、請求項2および請求項のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項6】
前記ロック機構(16;116)は、前記エンベロープ(11;111)の前記自由端部(11c;111c)のうちの一方と前記ロックレバー(17;117)とに取り付けられた少なくとも1つの横方向の押さえねじ(18a,18b;118)を備え、前記押さえねじ(18a,18b;118)は、前記ロック機構(16;116)の前記ロック位置において前記エンベロープ(11;111)の他方の前記自由端部(11d;111d)に設けられた空隙内に位置する、請求項2および請求項のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項7】
前記エンベロープ(11;111)の前記長手方向軸(A1;A’1)に平行な回転軸(A2;A’2)に沿って延在する少なくとも1つの長手方向シャフト(19a,19b;119)を備え、前記ロックレバー(17;117)は、前記長手方向シャフト(19a,19b;119)に枢動可能に取り付けられる、請求項2および請求項のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項8】
前記押さえねじ(18a,18b;118)は、前記ロックレバー(17;117)のための前記長手方向シャフト(19a,19b;119)に固定される、請求項またはに記載の装置(10;100)。
【請求項9】
前記ロックレバー(17;117)は、前記周方向の隙間(J1;J2)の近傍において、中心から外れた部分(17’;117’)を備え、前記ロック位置において前記ロックレバーを回転させるときに、前記中心から外れた部分が前記エンベロープ(11;111)と接触して前記押さえねじ(18a,18b;118)に予め張力が導入されるように、前記中心から外れた部分(17’;117’)は前記回転軸(A2;A’2)に対してオフセットされている、請求項に記載の装置(10;100)。
【請求項10】
前記エンベロープ(11;111)は、少なくとも2つのシェル(12a,12b;112a,112b)を備え、前記シェルは、開位置と、前記シェル(12a,12b;112a,112b)が前記第1の鋼管(20)を取り囲む閉位置との間で、互いに対して連結される、請求項1~のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項11】
前記シェル(12a,12b;112a,112b)は、少なくとも1つのヒンジ(13a,13b;113a,113b)を介して連結される、請求項10に記載の装置(10;100)。
【請求項12】
前記エンベロープ(11;111)の外周面(11b;111b)は、前記ロック位置において前記ロック機構(16;116)の前記ロックレバー(17;117)を受容するように設計された凹部(11i;111i)を有する、請求項および請求項11のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項13】
前記ロックレバー(17;117)は、前記ロック位置における前記エンベロープの前記外周面の形状に一致するように丸みを帯びた形状を有する、請求項および請求項12のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項14】
前記エンベロープ(11;111)は、金属材料から作製される、請求項1~13のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項15】
前記ロック機構(16;116)の前記ロックレバー(17;117)は、金属材料から作製される、請求項および請求項14のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項16】
前記エンベロープ(11;111)の内周面(11a;111a)は、少なくとも1つの回転防止歯(15)を備える、請求項1~15のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項17】
前記保持システム(50)は、前記ロックレバー(17)に設けられた安全クリップ(17d)内に配置された弾性変形可能なストランドを備え、前記ストランドは、前記ストランド(50)の自由端部が前記エンベロープ(11)に設けられた対応するスロット(11j)内に配置される保持位置と、前記自由端部が前記スロット(11j)から離れている自由位置との間で弾性変形可能であるように構成される、請求項に記載の装置(10)。
【請求項18】
前記保持システム(50)は、前記エンベロープ(11)の前記長手方向軸(A1)に実質的に平行な軸に沿って延在する、前記安全クリップ(17d)内に配置された第1の長手方向部分(50a)と、前記第1の長手方向部分(50a)から延在する2つの横方向部分(50b,50c)と、を備え、前記2つの横方向部分(50b,50c)の各々は、前記ロックレバー(17)に設けられた対応する貫通孔(17e,17f)内で外向きに延在する同軸の第2の長手方向部分(50d)および第3の長手方向部分(50e)に接続され、前記保持システム(50)が前記保持位置にあるときに、前記第2の長手方向部分(50d)および前記第3の長手方向部分(50e)の自由端部は、対応する前記スロット(11j)内に位置する、請求項17に記載の装置(10)。
【請求項19】
前記保持システム(52)は、前記押さえねじ(18a,18b)の反対側において、前記ロックレバー(17)の自由端部(17g)から前記エンベロープ(11)に向けて延在する少なくとも1つの突起部(52a,52b)を備え、前記突起部(52a,52b)の自由端部は、前記ロックレバー(17)が前記ロック位置にあるときに前記エンベロープに設けられた対応する孔(11k,11L)内に配置されるように構成された取り付けピンを備える、請求項に記載の装置(10)。
【請求項20】
少なくとも1つの無線周波数識別チップをさらに備える、請求項1~19のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項21】
前記エンベロープ(11;111)は、前記エンベロープ(11;111)の長手方向の一端における前記エンベロープ(11;111)の内側面において前記エンベロープ(11;111)の長手方向軸(A1;A’1)に対して角度をなすテーパ面を形成する内側テーパ面(11g;111g)を備える、請求項1~20のいずれか1項に記載の装置(10;100)。
【請求項22】
前記エンベロープの前記内側テーパ面(11g)を覆う保護カバー(13)を備える、請求項21に記載の装置(10;100)。
【請求項23】
炭化水素井管状カラムにおいて、好ましくは完成管として使用されるように意図された鋼管(20)であって、ピン部と、別の第2の鋼管(30)のピン部を受容するように構成されたボックス部(22)と、請求項1~22のいずれか1項に記載の装置(10;100)と、を含む、
鋼管(20)。
【請求項24】
炭化水素井管状カラムであって、第1のピン部および第1のボックス部(22)を含む第1の管(20)と、前記第1のボックス部(22)に螺合するように構成された第2のピン部(32)および第2のボックス部を含む第2の管(30)と、前記第1の管(20)の前記第1のボックス部(22)に固定されるように取り付けられた請求項1~23のいずれか1項に記載の少なくとも1つの装置(10;110)と、を備える、炭化水素井管状カラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素井の作業、地熱または炭素の回収などの石油およびガス、エネルギーまたは貯蔵用途のための管状カラムで使用されるように意図された金属管のための装置の分野に関し、より詳細には、ケーブルクランプ装置に関する。
【0002】
特に、本発明は、少なくとも1つのケーブルを支持するためのクランプ装置に関し、特に、炭化水素井管状カラムで使用されるように意図された金属管のボックス部のためのクランプ装置に関する。
【0003】
また、本発明は、このようなクランプ装置を具備する金属管に関する。
【背景技術】
【0004】
炭化水素井管状カラムまたは作業ストリングは、一般に、互いに取り付けられた複数の管からなる。より詳細には、炭化水素井または同様の坑井のための炭化水素井管状カラムは、一般に、1つのチューブストリングと複数のケーシングストリングとを備える。チューブストリングは、ケーシングストリング内に収容された複数の完成管からなる。ケーシングストリングは、坑井の掘削孔内に配置された複数のケーシング管からなる。ケーシング管は、完成管よりも大きい直径断面を有し、完成管を取り囲む。ケーシングストリングの下部では、ケーシング管は、ライナー管とも呼ばれる。
【0005】
ケーシングストリングは、ボアホールの安定性を維持し、帯水層(water sand)の汚染を防止し、掘削、生産および/または改修(workover)作業中の坑内圧力を制御するために必要である。
【0006】
ケーシング管および完成管は、鋼から作製されており、APIの標準ケーシングおよびチュービングの規格5CTまたは5CRAに従って作製されてもよいが、これに限定されるものではない。例えば、鋼の鋼種は、L80、P110またはQ125規格のうちの1つである。
【0007】
ストリングの2つの管は、ねじ付き継手または接続部によって取り付けられる場合がある。第1の管と第2の管とを接続するための典型的なねじ付き継手は、第1の管の外周面に形成された、ピン端とも呼ばれる雄ねじ部と、第2の管の内周面に形成された、ボックス端とも呼ばれる雌ねじ部と、を含むことができる。これらのねじ部は、第1の管が第2の管に取り付けられるように協働して、ねじ付き継手を形成する。
【0008】
別のタイプの既知のねじ付き継手は、第1の管と第2の管とを取り付けるための連結ボックスを含む場合がある。第1の管および第2の管の各々は、その両端に、外周面に形成された、ピン端とも呼ばれる雄ねじ部を有するパイプを含む。第1の管は、その内周に雌ねじ部が形成された内孔を有する連結ボックスを含む。連結ボックスは、一般に、鋼パイプの一端の雄ねじ部と連結ボックスの雌ねじ部とを介して、その一端に予め接続されている。このような配置により、第1の管は、ピン端とも呼ばれる雄ねじ部と、雌ねじ部を有する連結ボックス部と、を有する。第2の管は、第2の管の雄ねじ部と連結ボックスの雌ねじ部とを介して、第1の管に取り付けられる場合がある。
【0009】
このようなねじ付き管状接続部は、例えば、軸方向張力、軸方向圧縮、内圧曲げ力またはねじり力など、強さまたは方向が変化する場合がある様々に組み合わされた応力を受ける。そのため、ねじ付き管状接続部は、これらの応力を受け、破壊に耐え、密封できるように一般に設計されている。
【0010】
したがって、管のストリングの堅牢性は、一般に、ねじ付き接続部または継手を形成する部品または部分に摩耗がないことに依存する。そこで、雄ねじ部と雌ねじ部とを有する管のねじ部を保護するための装置が提案されてきた。
【0011】
現場での作業では、坑井内に管を設置する前に保護装置を取り外す必要がある。坑井内に管を設置する前の最終段階で、保護装置を取り外すことが好ましい。その場合、保護装置を回して管から外す必要がある。これらの作業は特に時間がかかり、管の管理もする必要がある作業者は、上記作業にも特に注意を払う必要もある。既知の保護装置を使用すると、カラムの設置工程がより複雑になり、カラムの設置中に、管の弱点が保護されないという問題が生じる。
【0012】
さらに、第2の管の雄ねじ部を第1の管の雌ねじ部に取り付ける際には、一般にスタビング(刺し込み)ガイドが使用される。このようなスタビングガイドは、第1の管の端部に第2の管の端部を挿入する前に作業者によって位置決めされ、第1の管に第2の管を螺合させる前に取り外される。このような作業は、カラムの設置の作業時間を長くする。
【0013】
また、炭化水素井管状カラムは、陸上または海上の掘削リングに設置される場合があり、ポンプ、安全弁および他のダウンホール機器などの水中機器に電力を供給する電線を支持するために使用される場合がある。このような電線を収容するために、一般にクランプと呼ばれるツールが使用される。このクランプは、通常、管、特にボックス連結部に設置され、一般に複数の作業者が必要である。したがって、カラムのすべてのボックス連結部にそのようなクランプを設置するには、リグでの作業に時間がかかり、作業コストが高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そのため、「クリティカルパスアクティビティ」とも呼ばれるカラムの設置時間を短縮することが求められている。
【0015】
実際、現在のクリティカルパスアクティビティは、管1つあたり約200秒であり、リグを1日レンタルする際の高額なコストを考慮すると、高額な設置作業となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、上述した欠点を克服することである。
【0017】
特に、本発明の目的は、リグにおけるカラムの管の設置工程に要する時間を短縮する観点から、現場での作業、特にクロスクランプ装置の取り扱いを伴う作業の容易さと速度を向上させることにある。
【0018】
また、本発明は、管の端部の位置合わせを容易に且つ迅速に行うためのスタビングガイドを組み込んでいてもよい。
【0019】
別の態様によれば、本発明の目的は、管の設置工程における、ねじ付き継手を形成するように意図された管の連結ボックス部の保護を改善することである。
【0020】
本発明の一態様によれば、炭化水素井の作業、地熱および炭素の回収などのエネルギーおよび貯蔵用途のための炭化水素井管状カラムで使用される第1の鋼管の部分に固定されるように構成された、第1の鋼管のための装置が提案されている。ここで、該装置は、
・ 長手方向軸に沿って延在し、第1の鋼管の部分を取り囲み、保護し、および/または案内するように構成された実質的に円筒形のエンベロープであって、エンベロープの2つの自由端部の間に周方向の隙間が存在するように360°未満の開いたリングを形成するエンベロープと、
・ 周方向の隙間の近傍でエンベロープに固定され、ロック位置においてエンベロープの自由端部を互いに接近させて、装置を第1の管にしっかりと固定させるように構成されたロック機構と、
を備える。
【0021】
有利には、ロック機構は、エンベロープに枢動可能に取り付けられたロックレバーを備える。ロックレバーは、ロックレバーがエンベロープから半径方向に離れているロック解除位置と、ロックレバーがエンベロープに向けて回転するロック位置との間で回転するように構成される。
【0022】
例えば、ロック機構は、ロック位置においてエンベロープの自由端部を互いに接近させながら少なくとも1つのケーブルをクランプするようにさらに構成される。
【0023】
ケーブルは、電力ケーブル、電気通信ケーブル、制御線、油圧ケーブル、光ファイバーケーブル、薬液注入ケーブル、またはその他の任意のケーブルであってもよい。
【0024】
ロックレバーは、ロック位置において少なくとも1つのケーブルをクランプするように設計されてもよい。
【0025】
したがって、ロック機構は、ロック位置においてエンベロープの周方向の隙間を減少させるように構成される。
【0026】
例えば、エンベロープの半径方向断面は、360°未満、例えば320°~359°の範囲の円弧を形成する。
【0027】
さらに、本発明による装置の働きにより、対応する管に固定するためのツールが必要なく、ケーブルをクランプするためのツールも必要ないため、管のクリティカルパスアクティビティまたは設置時間は、例えば3秒~5秒程度と大幅に減少させることができ、設置作業のコストを大幅に削減することができる。
【0028】
装置は、リグでの作業前に取り付けられ得、管の取り扱いを妨げない。
【0029】
有利には、エンベロープは、エンベロープの軸に平行な軸に沿って、周方向の隙間の近傍に延在する少なくとも1つの長手方向溝を有する。溝は、少なくとも1つのケーブルを受容するように構成される。
【0030】
代替的に、エンベロープの外周面は、長手方向に平行な2つ以上の溝を有する。各溝は、少なくとも1つのケーブルを受容するように構成される。
【0031】
代替的に、長手方向溝は、2つ以上のケーブルを受容するように構成されてもよい。
【0032】
溝は、エンベロープの側方端部の両方に設けられてもよい。
【0033】
例えば、長手方向溝は、エンベロープの長手方向の長さに等しい長手方向の長さを有してもよい。
【0034】
代替的に、長手方向溝は、第1の部分と、第1の部分と同軸の第2の部分と、を有し、第1の部分および第2の部分の各々は、エンベロープの側方端部のうちの一方に設けられてもよい。
【0035】
例えば、ロック機構のロックレバーの内面は、ロックレバーのロック位置においてケーブルを把持できるように構成された複数の歯または割れ線(stretch marks)を有する。
【0036】
歯は、例えば互いに平行であってもよい。
【0037】
有利には、ロック機構は、エンベロープの自由端部のうちの一方とロックレバーとに取り付けられた少なくとも1つの横方向の押さえねじ(cap screw)またはロックロッドを備える。ここで、押さえねじは、ロック機構のロック位置において他方の自由端部に設けられた空隙内に位置する。
【0038】
代替的に、ロック機構は、少なくとも2つの平行な横方向の押さえねじを備えてもよい。ここで、押さえねじの各々は、エンベロープの自由端部のうちの一方とロックレバーとに取り付けられ、ロック機構のロック位置において他方の自由端部に設けられた空隙内に位置する。
【0039】
装置は、エンベロープの長手方向軸に平行な回転軸に沿って延在する少なくとも1つの長手方向枢動軸またはシャフトを備えてもよい。ここで、ロックレバーは、シャフトに枢動可能に取り付けられる。
【0040】
代替的に、装置は、少なくとも2つの同軸の長手方向シャフトを備えてもよい。ここで、ロックレバーは、シャフトに枢動可能に取り付けられる。
【0041】
例えば、押さえねじは、ロックレバーのための長手方向シャフトに固定される。
【0042】
一実施形態において、ロックレバーは、周方向の隙間の近傍において、中心から外れた部分を備える。ここで、ロック位置においてロックレバーを回転させるときに、中心から外れた部分がエンベロープと接触して押さえねじに予め張力が導入されるように、中心から外れた部分は回転軸に対してオフセットされている。
【0043】
ロックレバーの中心から外れた部分は、保持システムとして機能する。実際、ロックレバーの長手方向回転軸を中心にレバーを回転させるときに、中心から外れた部分は、第2の自由端部の近傍でエンベロープと接触して、押さえねじに予め張力が導入される。
【0044】
実際、レバーのシャフトに接続されている押さえねじは、対応する空隙に挿入されて、エンベロープの第2の自由端部に向けて第1の自由端部を接近させることができる。押さえねじがその初期位置に戻るように、ロックレバーのロック位置において押さえねじに予め張力が導入される。周方向の隙間の近傍にあるロックレバーの特殊な形状により、ロックレバーをロック位置に維持することができる。
【0045】
一実施形態において、エンベロープは、少なくとも2つのフレームまたはシェルを備える。少なくとも2つのフレームまたはシェルは、開位置と、シェルが第1の鋼管を取り囲む閉位置との間で、互いに対して連結される。
【0046】
代替的に、エンベロープは、上記以外の数、例えば3つ以上の連結シェルを備えてもよい。
【0047】
シェルは、例えば、少なくとも1つのヒンジ、例えば、2つ以上ヒンジを介して連結される。
【0048】
エンベロープの外周面は、ロック位置においてロック機構のロックレバーを受容するように設計された凹部を有してもよい。ロック位置において、ロックレバーはエンベロープの半径方向寸法を超えて半径方向に延在していないため、ケーシングに管を設置する際に、ロックレバーが損傷を受けることはない。
【0049】
例えば、ロックレバーは、ロック位置におけるエンベロープの外周面の形状に一致するように丸みを帯びた形状を有する。このような丸みを帯びた形状は、ロック位置におけるロック機構のロック強度を強化する。
【0050】
エンベロープは、例えば鋼などの金属材料から作製される。
【0051】
ロック機構のロックレバーは、例えば金属材料、または、例えばプラスチック材料から作製される。
【0052】
一実施形態において、エンベロープの内周面は、ロック機構がロック位置にあるときに第1の管に対するエンベロープの回転を防止するために、少なくとも1つの回転防止歯またはリブを備える。
【0053】
一実施形態において、ロック機構は、ロックレバーをロック位置に維持するように構成された保持システムを備える。
【0054】
保持システムは、例えば、ロックレバーに取り付けられた押しボタンピンを備えてもよく、ロックレバーをロック位置に維持するためにエンベロープに設けられた対応する孔に挿入されるように構成されてもよい。代替的に、押しボタンは、エンベロープに取り付けられてもよく、ロックレバーに設けられた対応する孔に挿入されるように構成されてもよい。また、ロックレバーをロック位置に維持するために、他の保持システムが使用されてもよい。
【0055】
別の実施形態において、保持システムは、ロックレバーに設けられた安全クリップ内に配置された弾性変形可能なストランドを備える。ストランドは、ストランドの自由端部がエンベロープに設けられた対応するスロット内に配置される保持位置と、自由端部がスロットから離れている自由位置との間で弾性変形可能であるように構成される。
【0056】
例えば、保持システムは、エンベロープの長手方向軸に実質的に平行な軸に沿って延在する、安全クリップ内に配置された第1の長手方向部分と、第1の長手方向部分から延在する2つの横方向部分と、を備える。2つの横方向部分の各々は、ロックレバーに設けられた対応する貫通孔内で外向きに延在する、同軸の第2および第3の長手方向部分に接続される。保持システムが保持位置にあるときに、第2および第3の長手方向部分の自由端部は、対応するスロット内に位置する。
【0057】
したがって、保持システムは、使用される材料および/またはその寸法によって、例えば、保持システムの2つの横方向部分を互いに押し付けるときにわずかな干渉(solicitation)を受けて変形することができ、これらの部分が干渉を受けないときにその初期位置に戻ることができる。
【0058】
保持システムは、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、または弾性変形可能な任意の材料などの熱可塑性材料を含む、柔軟に変形可能且つ跳ね返ることができる材料から作製されてもよい。
【0059】
別の実施形態において、保持システムは、押さえねじの反対側において、ロックレバーの自由端部からエンベロープに向けて延在する少なくとも1つの突起部(lug)を備える。この突起部の自由端部は、ロックレバーがロック位置にあるときにエンベロープに設けられた対応する孔内に配置されるように構成された取り付けピンを備える。
【0060】
例えば、保持システムは、ロックレバーの自由端部から延在する2つの突起部を備える。これらの突起部の自由端部は、ロックレバーがロック位置にあるときにエンベロープに設けられた対応する孔内に配置されるように構成された取り付けピンを備える。
【0061】
さらに、上述した装置は、少なくとも1つの無線周波数識別チップ、または追跡装置、または製品マーキングを備える。
【0062】
エンベロープは、内側テーパ面によって半径方向内側に区切られていてもよい。内側テーパ面は、第2の完成管のためのスタビングガイドとして機能してもよい。例えば、内側テーパ面は、エンベロープの外周面の長手方向軸に対して、20°~70°の範囲の角度、例えば45°~50°の範囲の角度をなす。
【0063】
例えば、装置は、エンベロープの内側テーパ面を覆う一時的な保護カバー(closure)をさらに備える。保護カバーは、輸送中の管のねじを保護することを目的とする。
【0064】
保護カバーは、プラスチックから作製されてもよく、金属材料から作製されてもよい。
【0065】
例えば、装置は、少なくとも1つの無線周波数識別チップ、または追跡装置、または製品マーキングをさらに備える。
【0066】
例えば、無線周波数識別チップは、エンベロープの外周面に設けられた溝上に位置する。
【0067】
別の態様によれば、本発明は、炭化水素井の作業、地熱または炭素の回収などのエネルギーおよび貯蔵用途のための管状カラムにおいて、好ましくは完成管として使用されるように意図された鋼管に関する。管は、雄部と、別の第2の鋼管の雄部を受容するように構成されたボックス部と、上述したような装置と、を含む。
【0068】
別の態様によれば、本発明は、炭化水素井管状カラムに関する。炭化水素井管状カラムは、第1のピン部および第1のボックス部を含む第1の管と、第1のボックス部に螺合するように構成された第2のピン部および第2のボックス部を含む第2の管と、第1の管の第1のボックス部に固定されるように取り付けられた上述した少なくとも1つの装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明およびその利点は、添付の図面を参照して非限定的に例示された特定の実施形態に関する以下の詳細な説明からより明確になるであろう。
図1】本発明の一実施形態によるケーブルクランプ装置の斜視図であり、第1の管に取り付けられ、ロックレバーがケーブルのロック位置にある状態を示している。
図2a図1の装置を示す図であり、ロックレバーがロック解除位置にある状態を示している。
図2b】一時的な保護カバーを有する図1の装置を示す図である。
図3a図1の装置の正面図である。
図3b図3aの詳細図である。
図4a図3aの装置の上面図である。
図4b図4aの装置の別の実施形態を示す図である。
図5図2aの装置を示す図であり、第1の管に取り付けられる前の、開位置にある状態を示している。
図6図2aの装置の詳細図である。
図7図4aの線VII-VIIに沿った断面図である。
図8】ロック位置にあるロックレバーの保持機構の実施例を示す図である。
図9】ロック位置にあるロックレバーの保持機構の実施例を示す図である。
図10】本発明の別の実施形態によるケーブルクランプ装置の斜視図であり、第1の管に取り付けられ、ロックレバーがケーブルのロック位置にある状態を示している。
図11図10の装置の断面図であり、ロック機構のロックレバーがロック位置にある状態を示している。
図12図10の装置の断面図であり、ロック機構のロックレバーがロック解除位置にある状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下の説明において、「長手方向」、「横方向」、「縦方向」、「前」、「後(ろ)」、「左」および「右」という用語は、図に示すように、通常の直交基準点に従って定義されている。これは、
・ 水平および正面から見て左右に延在する長手方向軸X、
・ 長手方向軸Xに垂直、且つ正面から見て前後に延在する横軸Y、および
・ 長手方向軸Xおよび横軸Yに直交する縦軸Z
を含む。
【0071】
ケーブルクランプ装置10の一実施形態が、図1図9に示されている。ケーブルクランプ装置10は、長手方向軸A1に沿って延在し、リグでの作業前に、完成管などの第1の管20に取り付けられるように設計されている。
【0072】
第1の管20は、長手方向軸A1に沿ってケーブルクランプ装置と同軸に配置される。第1の管20は、実質的に円筒形であり、ピン部とも呼ばれる第1の下端部(図示せず)を備える。第1の下端部は、第1の下端部の外周面に設けられた雄ねじ(図示せず)を有する。第1の管20は、第1の下端部とは反対側の、ボックス部とも呼ばれる第2の上端部22をさらに備える。第2の上端部22は、ボックス部の内周面に設けられた雌ねじ22aを有する。
【0073】
図7に示すように、第1の管20の第1の下端部の雄ねじ部は、下部管の雌ねじ部(図示せず)と協働するように設計されており、第1の管20の雌ねじ部22は、上部管30の雄ねじ部32の雄ねじ32aと協働するように設計されている。
【0074】
ケーブルクランプ装置10は、第1の管20の第2の上端部22の周りに取り付けられる。代替的に、第1の管は、実質的に円筒形の形状を有するスリーブを形成する連結ボックスであってもよい。連結ボックスは、下部管の雄ねじ(図示せず)および後続の上部管30の雄ねじと協働するように設計された、内周面に設けられた内側雌ねじを有する。
【0075】
装置10は、例えば鋼などの金属材料から作製された円筒形のエンベロープ11を備える。エンベロープ11は、第1の管20の外径と実質的に等しい直径を有する内側円筒面11aによって半径方向内側に区切られている。
【0076】
さらに、エンベロープ10は、外側円筒面11bによって半径方向外側に区切られており、2つの接線方向自由端部11cおよび11dによって周方向に区切られている。
【0077】
図4に示すように、エンベロープ11の半径方向断面は、角度αの周りで円弧を形成する。角度αは、エンベロープ11の半径方向断面の接線方向自由端部11cおよび11dが周方向の隙間J1だけ周方向に離間するように選択される。角度αは、360°未満であり、例えば320°~359°の範囲、また、例えば320°~350°の範囲である。
【0078】
エンベロープ11は、第1の管20のボックス部22を取り囲むように設計されている。ただし、エンベロープは、管のどの部分にも取り付けられてもよい。
【0079】
さらに、エンベロープ11は、2つの側方端部11eおよび11fによって区切られている。
【0080】
図に示すように、エンベロープ11は、2つの実質的に円筒形のシェル12aおよび12bを備える。2つの実質的に円筒形のシェル12aおよび12bは、図1図4に示すような、シェルが第1の鋼管20を取り囲む閉位置と、図5に示すような開位置との間で、互いに対して連結される。
【0081】
代替的に、エンベロープは、上記以外の数、例えば3つ以上の連結シェルを備えてもよい。また、エンベロープは、第1の管に滑動可能に取り付けられた単一のシェルを備えてもよい。
【0082】
シェルは、2つのヒンジ13aおよび13bを介して連結される。代替的に、シェルは、1つのヒンジ、または4つ以上のヒンジを介して連結されてもよい。
【0083】
エンベロープ11の外周面11bは、周方向の隙間J1の近傍で、2つの同軸の長手方向溝部分14aおよび14bを含む1つの長手方向溝14を有する。溝部分14aおよび14bは、少なくとも1つのケーブル40を受容するように構成される。
【0084】
溝部分14aおよび14bの各々は、エンベロープ11の側方端部11eおよび11fのうちの一方に設けられる。
【0085】
ケーブル40は、電線、制御線、油圧ケーブルまたは光ファイバーケーブルであってもよい。
【0086】
代替的に、図4aに示すように、エンベロープ11の外周面11bは、2つ以上の長手方向に平行な溝14および14’を有してもよい。溝14および14’の各々は、少なくとも1つのケーブルを受容するように構成される。
【0087】
代替的に、長手方向溝の各々は、2つ以上のケーブルを受容するように構成されてもよい。
【0088】
さらに、エンベロープは、内側テーパ面11gによって半径方向内側に区切られている。内側テーパ面は、第2の完成管30のためのスタビングガイドとして機能する。例えば、内側テーパ面11gは、エンベロープ11の外周面11bの長手方向軸A1に対して20°~45°の範囲の角度をなす。
【0089】
図2aに示すように、装置10は、エンベロープ11の内側テーパ面11gを覆う一時的な保護カバー13を備える。保護カバー13は、輸送中の管のねじを保護することを目的とする。
【0090】
図5に示すように、エンベロープ11の内周面11aは、第1の管20上でロックされたときに第1の管20に対するエンベロープ11の回転を防止するために、平行な複数の回転防止歯15を備える。
【0091】
装置10は、周方向の隙間J1の近傍でエンベロープ11に固定されたロック機構16をさらに備える。
【0092】
ロック機構16は、エンベロープ11に枢動可能に取り付けられたロックレバー17を備える。ロックレバー17は、ロックレバー17がエンベロープ11に向けて回転して図1に示すケーブル40をクランプする図1図3および図4に示すロック位置と、ロックレバーがエンベロープ11から半径方向に離れている図2図5および図6に示すロック解除位置との間で枢動可能である。ロック機構17は、ロック位置において図4aおよび図4bに示すエンベロープ11の周方向の隙間J1を減少させるように構成される。
【0093】
換言すると、ロック機構16は、ロック位置においてエンベロープ11の自由端部11cおよび11dを周方向に互いに接近させるように構成されており、これにより、特にエンベロープ11の回転防止歯15を介して、第1の管20上に装置10をしっかりと固定することができる。
【0094】
ロック機構16は、エンベロープ11の自由端部11cのうちの一方とロックレバー17とに取り付けられた2つの平行な横方向の押さえねじ18aおよび18bを備える。非限定的な一例として、押さえねじは、ねじであってもよく、ロッドであってもよい。
【0095】
押さえねじ18aおよび18bの各々は、ロックレバー17のロック位置においてエンベロープ11の他方の自由端部11dに設けられた対応する貫通孔11hに挿入される。代替的に、ロック機構は、少なくとも1つの横方向の押さえねじを備えてもよく、3つ以上の平行な押さえねじを備えてもよい。ここで、空隙は貫通孔11hであるが、スロットまたは切り欠き部であってもよく、押さえねじ18aおよび18bを通過させるように設計された他の形状を有してもよい。
【0096】
図6に詳細に示すように、ロック機構16は、2つの同軸の長手方向シャフト19aおよび19bをさらに備える。シャフト19aおよび19bは、エンベロープ11の長手方向軸A1に平行な回転軸A2に沿って延在する。ロックレバー17は、シャフト19aおよび19bに枢動可能に取り付けられる。押さえねじ18aおよび18bは、対応するシャフト19aおよび19bに取り付けられる。
【0097】
周方向の隙間J1の近傍におけるロックレバー17の断面は、回転軸A2に対して中心から外れた部分17’を有する。これにより、シャフト19aおよび19bを通過するようにロックレバー17の長手方向回転軸A2の周りでレバーを回転させたときに、ロックレバー17は、第2の自由端部11dの近傍でエンベロープ11と接触して、シャフト19aおよび19bが変位される。シャフト19aおよび19bに接続されている押さえねじ18aおよび18bは、対応する空隙に挿入されて、エンベロープ11の第2の自由端部11dに向けて第1の自由端部11cが移動される。周方向の隙間の近傍にあるロックレバー17の特殊な形状により、ロックレバーをロック位置に維持することができる。このように、押さえねじ18aおよび18bに予め張力が導入されると、ロックレバー17の中心から外れた部分17’は、ロック位置においてロックレバーの保持システムとして機能する。
【0098】
代替的に、装置は、エンベロープ11に固定された少なくとも1つの長手方向シャフトを備えてもよい。ここで、ロックレバー17は、シャフトに枢動可能に取り付けられる。
【0099】
図6に示すように、ロック機構16のロックレバー17の内面(参照符号なし)は、ロックレバー17のロック位置においてケーブル40を把持するように構成された複数の平行な歯17aまたは割れ線を備える。
【0100】
図4aおよび図4bに示すように、ロックレバー17の外面17bは、ロックレバー17のロック位置におけるエンベロープ11の外周面11bの形状に一致するように丸みを帯びた形状を有する。
【0101】
図3aに示すように、ロックレバー17は、ロックレバー17を容易に操作するために、ロックロッド18aおよび18bの反対側でハンドル部17cを備える。
【0102】
ロック機構16のロックレバー17は、例えば金属材料から作製される。また、ロックレバー17は、プラスチック材料から作製されてもよい。
【0103】
図6に示すように、ロック機構16は、ロックレバー17をロック位置に維持するように構成された追加の保持システム24をさらに備える。例えば、保持システム24は、ロックレバー17に取り付けられた押しボタンピンを備える。押しボタンピンは、ロックレバー17をロック位置に維持するためにエンベロープ11に設けられた対応する孔(参照符号なし)に挿入されるように構成される。代替的に、押しボタンは、エンベロープに取り付けられてもよく、ロックレバーに設けられた対応する孔に挿入されるように構成されてもよい。保持システムは、このような実施例に限定されるものでなく、ロックレバーをロック位置に維持するように構成された他の任意の要素を備えてもよい。
【0104】
図8を参照して、ロック位置におけるロックレバー17の保持システム50の別の実施例を説明する。
【0105】
保持システム50は、ロックレバーがロック位置に維持されない自由位置と、ロックレバーがロック位置に維持される保持位置との間で弾性変形可能であるように構成された薄いストランドの全体形状を有する。保持位置は、保持システム50の待機位置に対応する。
【0106】
保持システム50は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、または弾性変形可能な任意の材料などの熱可塑性材料を含む、柔軟に変形可能且つ跳ね返ることができる材料から作製されてもよい。
【0107】
保持システム50は、エンベロープ11の長手方向軸A1に実質的に平行な軸に沿って延在する第1の長手方向部分50aを備える。第1の長手方向部分50aは、ロックレバー17に設けられた安全クリップ17d内に配置される。
【0108】
保持システム50は、第1の長手方向部分50aからハンドル部17cに向けて延在する2つの横方向部分50bおよび50cを備える。2つの横方向部分50bおよび50cの各々は、第2の長手方向部分50dおよび第3の長手方向部分50eに接続される。第2の長手方向部分50dおよび第3の長手方向部分50eは同軸にあり、ロックレバー17に設けられた対応する貫通孔17eおよび17fにおいて外向きに延在する。
【0109】
第2の長手方向部分50dおよび第3の長手方向部分40eのそれぞれの自由端部は、図8に示すように保持システム50が保持位置にあるときにエンベロープ11に設けられた対応するスロット11j内に位置する。
【0110】
第2の長手方向部分50dおよび第3の長手方向部分50eのそれぞれの自由端部には、エンベロープ11とレバー17との間に位置する、保持システム50を保持するための保持リング50fおよび50gが設けられてもよい。
【0111】
矢印F1およびF2に沿って保持システム50の2つの横方向部分50bおよび50cを互いに向けて押すと、第2の長手方向部分50dおよび第3の長手方向部分50eが互いに向けて並進移動して、保持システム50の自由端部がエンベロープ11に設けられたスロット11jからロック解除される。
【0112】
保持システム50は、2つの横方向部分50bおよび50cが干渉を受けないときにその待機位置に戻るように構成される。
【0113】
換言すると、保持システムは、使用される材料および/またはその寸法によって、例えば、矢印F1およびF2に沿って保持システム50の2つの横方向部分50bおよび50cを互いに向けて押すときにわずかな干渉を受けて変形することができ、これらの部分が干渉を受けないときにその初期位置に戻ることができる。
【0114】
図9を参照して、ロック位置におけるロックレバー17の保持システム52の別の実施例を説明する。
【0115】
ロックレバー17には、ロックロッド18aおよび18bの反対側で自由端部17gが設けられる。
【0116】
保持システム52は、ロックレバー17の自由端部17gからエンベロープ11に向けて延在する2つの平行な突起部52aおよび52bを備える。突起部52aおよび52bのそれぞれの自由端部は、ロックレバーがロック位置に維持されたときにエンベロープに設けられた対応する孔11kおよび11L内に位置するように構成された取り付けピン(参照符号なし)を備える。
【0117】
代替的に、保持システム52は、単一の突起部を備えることができる。
【0118】
エンベロープ11の外周面11bは、ロック位置においてロック機構16のロックレバー17を受容するように設計された凹部11iを有する。図4に示すように、ロック位置では、ロックレバー17は、エンベロープ11の半径方向寸法を超えて半径方向に延在していないため、ケーシングに管を設置する際に、ロックレバーが損傷を受けることはない。
【0119】
ケーブル40のための溝14は、ロックレバー17のための凹部11iに開口している。
【0120】
ケーブルクランプ装置100の別の実施形態が図10図12に示されている。ケーブルクランプ装置100は、図1図9のケーブルクランプ装置10と同様のものである。ケーブルクランプ装置100は、長手方向軸A’1に沿って延在し、第1の管20、特に第1の管20の第2の上端部22の周りに取り付けられるように設計されている。
【0121】
装置100は、例えば鋼などの金属材料から作製された円筒形のエンベロープ111を備える。エンベロープ111は、第1の管20の外径と実質的に等しい直径を有する内側円筒面111aによって半径方向内側に区切られている。
【0122】
さらに、エンベロープ100は、外側円筒面111bによって半径方向外側に区切られており、2つの接線方向自由端部111cおよび111dによって周方向に区切られている。
【0123】
図11に示すように、エンベロープ111の半径方向断面は、角度α’の周りで円弧を形成する。角度α’は、エンベロープ111の半径方向断面の接線方向自由端部111cおよび111dが周方向の隙間J2だけ周方向に離間するように選択される。角度α’は、360°未満であり、例えば320°~359°の範囲、また、例えば320°~350°の範囲である。
【0124】
エンベロープ111は、第1の管20のボックス部22を取り囲むように設計されている。ただし、エンベロープは、管のどの部分にも取り付けられてもよい。
【0125】
さらに、エンベロープ111は、2つの側方端部111eおよび111fによって区切られている。
【0126】
図に示すように、エンベロープ111は、2つの実質的に円筒形のシェル112aおよび112bを備える。2つの実質的に円筒形のシェル112aおよび112bは、図10および図11に示すような、シェルが第1の鋼管20を取り囲む閉位置と、図12に示すような開位置との間で、互いに対して連結される。
【0127】
代替的に、エンベロープは、上記以外の数、例えば3つ以上の連結シェルを備えてもよい。また、エンベロープは、第1の管に滑動可能に取り付けられた単一のシェルを備えてもよい。
【0128】
シェルは、2つのヒンジ113aおよび113bを介して連結される。代替的に、シェルは、1つのヒンジ、または4つ以上のヒンジを介して連結されてもよい。
【0129】
エンベロープ111の外周面111bは、周方向の隙間J2の近傍で、2つの長手方向に平行な溝114aおよび114bを有する。溝114aおよび114bの各々は、少なくとも1つのケーブル140および142を受容するように構成される。
【0130】
溝114aおよび114bの各々は、エンベロープ111の側方端部111eおよび111fのうちの一方に設けられる。
【0131】
ケーブル140および142は、電線、制御線、油圧ケーブルまたは光ファイバーケーブルであってもよい。ケーブルは、同じタイプのものであってもよく、異なるタイプのものであってもよい。
【0132】
代替的に、長手方向溝の各々は、2つ以上のケーブルを受容するように構成されてもよい。
【0133】
さらに、エンベロープ111は、内側テーパ面111gによって半径方向内側に区切られている。内側テーパ面は、第2の完成管30のためのスタビングガイドとして機能する。例えば、内側テーパ面111gは、エンベロープ111の外周面111bの長手方向軸A’1に対して20°~45°の範囲の角度をなす。
【0134】
エンベロープ111の内周面111aは、第1の管20上でロックされたときに第1の管20に対するエンベロープ111の回転を防止するために、複数の平行な回転防止歯(図示せず)を備えてもよい。
【0135】
装置100は、周方向の隙間J2の近傍でエンベロープ111に固定されたロック機構116をさらに備える。
【0136】
ロック機構116は、エンベロープ111に枢動可能に取り付けられたロックレバー117を備える。ロックレバー117は、ロックレバー117がエンベロープ111に向けて回転してケーブル140および142をクランプする図10および図11に示すロック位置と、ロックレバー117がエンベロープ111から半径方向に離れている図12に示すロック解除位置との間で枢動可能である。ロック機構117は、ロック位置においてエンベロープ111の周方向の隙間J2を減少させるように構成される。
【0137】
換言すると、ロック機構116は、ロック位置においてエンベロープ111の自由端部111cおよび111dを周方向に互いに接近させるように構成されており、これにより、特にエンベロープ111の回転防止歯を介して、第1の管20上に装置100をしっかりと固定することができる。
【0138】
ロック機構116は、エンベロープ111の自由端部111cのうちの一方とロックレバー117とに取り付けられた1つの横方向の押さえねじ118を備える。非限定的な一例として、押さえねじは、ねじであってもよく、ロッドであってもよい。
【0139】
押さえねじ118は、ロックレバー117のロック位置においてエンベロープ111の他方の自由端部111dに設けられた対応する貫通孔111hに挿入される。代替的に、ロック機構116は、2つの平行な横方向の押さえねじを備えてもよく、3つ以上の平行な押さえねじを備えてもよい。ここで、空隙はスロットまたは切り欠き部111hであるが、貫通孔であってもよく、押さえねじ118を通過させるように設計された他の形状を有してもよい。
【0140】
ロック機構116は、1つの長手方向シャフト119をさらに備える。シャフト119は、エンベロープ111の長手方向軸A’1に平行な回転軸A’2に沿って延在する。ロックレバー117は、シャフト119に枢動可能に取り付けられる。押さえねじ118は、シャフト119に取り付けられる。
【0141】
図11および図12に示すように、周方向の隙間J2の近傍におけるロックレバー117の断面は、回転軸A’2に対して中心から外れた部分117’を有する。これにより、シャフト119を通過するようにロックレバー117の長手方向回転軸A’2の周りでレバー117を回転させたときに、ロックレバー117は、第2の自由端部111dの近傍でエンベロープ111と接触して、シャフト119が変位される。シャフト119に接続されている押さえねじ118は、対応する空隙に挿入されて、エンベロープ111の第2の自由端部111dに向けて第1の自由端部111cが移動される。周方向の隙間J2の近傍にあるロックレバー117の特殊な形状により、ロックレバーをロック位置に維持することができる。このように、押さえねじ118に予め張力が導入されると、ロックレバー117の中心から外れた部分117’は、ロック位置においてロックレバーの保持システムとして機能する。
【0142】
代替的に、装置は、2つ以上の平行な長手方向シャフトを備えてもよい。ここで、ロックレバー117は、シャフトに枢動可能に取り付けられる。
【0143】
ロック機構116のロックレバー117の内面(参照符号なし)は、ロックレバー117のロック位置においてケーブル140および142を把持するように構成された複数の平行な歯(図示せず)または割れ線を備えてもよい。
【0144】
エンベロープ111の外周面111bは、ロック位置においてロック機構116のロックレバー117を受容するように設計された凹部111iを有する。図11に示すように、ロック位置では、ロックレバー117は、エンベロープ111の半径方向寸法を超えて半径方向に延在していないため、ケーシングに管を設置する際に、ロックレバーが損傷を受けることはない。
【0145】
図11に示すように、ロックレバー117の外面(参照符号なし)は、ロックレバー117のロック位置におけるエンベロープ111の外周面111bの形状に一致するように丸みを帯びた形状を有する。
【0146】
ロック機構116のロックレバー117は、例えば金属材料から作製される。また、ロックレバー117は、プラスチック材料から作製されてもよい。
【0147】
ロック機構116は、図6に示す保持システム24、図8を参照して説明した保持システム50または図9を参照して説明した保持システム52のような追加の保持システムをさらに備えてもよい。図に示すように、エンベロープ11および111は、装置10および100の重量を減少させるために材料が凹んでいる部分(参照符号なし)を有してもよい。
【0148】
装置10および100は、例えばエンベロープ11および111の外面の溝内に位置する無線周波数識別チップ(RFIDチップ)(図示せず)をさらに含んでいてもよい。チップは、管および/またはねじ部の寸法などのデータを含んでいてもよい。チップの働きにより、そのようなデータを決定するために装置を管から取り外す必要はない。
【0149】
また、装置10および100は、管20のボックス部22が受けるおよび/または掘削流体またはセメントの圧力、ならびにボックス部および/または掘削流体またはセメントの温度を監視するために、圧力センサおよび温度センサなどのセンサ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0150】
完成管20は、その製造直後でリグに設置される前に、装置10を具備していてもよい。装置10および100は、管20の輸送および保管中にその管のボックス部22を完全に保護することができるため、保護装置とみなすことができる。
【0151】
第1の完成管20の設置後に、その表面によって形成されたファンネルが後続の完成管30を案内してもよい。これにより、後続の完成管30雄ねじ部32は、第1の管20のボックス部22に挿入される。したがって、本装置は、追加のツールを必要とすることなく、後続の完成管のためのスタビングガイドとして機能する。第1および第2の管は、炭化水素井管状カラムで使用されるように意図された金属管である。
【0152】
本発明による装置10および100は、ケーブルをクランプし、管のボックス部を保護し、第1の管の雌ねじ部への第2の管の雄ねじ部の挿入を案内するように構成された多目的ツールである。本装置は、このように3つの機能を有し、ケーシングに完成管を設置する前に取り外す必要がない。
【0153】
さらに、本発明による装置の働きにより、対応する管に固定するためのツールが必要なく、ケーブルをクランプするためのツールも必要ないため、管のクリティカルパスアクティビティまたは設置時間は、例えば3秒~5秒程度と大幅に減少させることができ、設置作業のコストを大幅に削減することができる。このように、本装置は、ケーシングストリングまたは掘削孔における管の設置工程を容易にすることができる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12