(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】自動制御型水中翼システム
(51)【国際特許分類】
B63B 1/24 20200101AFI20231030BHJP
【FI】
B63B1/24
(21)【出願番号】P 2022528348
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 GB2020052883
(87)【国際公開番号】W WO2021094760
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522190672
【氏名又は名称】アルテミス テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】パーシー イアン
(72)【発明者】
【氏名】アングフ ロマン
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-050090(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03453605(EP,A1)
【文献】米国特許第03886884(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中翼システムを有する水上船舶であって、前記水中翼システムは、
コントローラと、
前記水上船舶と係合するためのフォイルであって、前記水上船舶の揚力特性を変化させるように作動可能な複数の調整部材を備えるフォイルと、
プロペラと、
前記フォイルに隣接して配置され、前記プロペラと作動可能または機械的に通信するエンジン及びギアボックスと、
前記コントローラと電気的に通信する複数のセンサであって、各センサが、前記水上船舶の飛行パラメータを監視し、測定された飛行パラメータデータを生成するように構成されている、センサと、を備え、
前記コントローラは、前記調整部材、前記エンジン及び前記センサと通信し、前記コントローラは、前記センサから測定された飛行パラメータデータを受信し、前記受信した測定された飛行パラメータデータに応じて前記エンジンの動作及び前記調整部材の位置を制御するように構成されている、
ことを特徴とする水上船舶。
【請求項2】
前記コントローラ及び前記エンジンと電気的に通信し、前記コントローラによって前記エンジンに電力を供給するように作動可能なバッテリシステムを更に備える、
請求項1に記載の水上船舶。
【請求項3】
前記調整部材の各々は、水上船舶のピッチ、ロール、ヒーブ及びヨーのうちの1つまたは2つ以上を変化させるように作動可能である、
請求項1または請求項2に記載の水上船舶。
【請求項4】
各調整部材は、フラップと、アクチュエータと、を備え、
前記フラップは、前記コントローラによるアクチュエータの作動時に前記フォイルに対して可動である、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の水上船舶。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記フォイル内に一体化される、
請求項4に記載の水上船舶。
【請求項6】
前記複数のフラップの各々は、独立して調節可能である、
請求項4または請求項5に記載の水上船舶。
【請求項7】
前記複数のフラップは、2つの整列したフラップの少なくとも1セットを備える、
請求項4ないし6のいずれか一項に記載の水上船舶。
【請求項8】
前記フォイルは、防水筐体を備え、
前記エンジン及びギアボックスは、前記防水筐体内に配置される、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の水上船舶。
【請求項9】
前記エンジン及びギアボックスは、前記防水筐体と熱的に接触している、
請求項8に記載の水上船舶。
【請求項10】
前記プロペラは、前記ギアボックスに隣接して配置され、前記エンジンの遠位に配置される、
請求項8または請求項9に記載の水上船舶。
【請求項11】
前記測定された飛行パラメータデータは、加速度データ、船舶位置データ(ピッチ、ヒーブ、ヨー、ロール)、アクチュエータ位置データ、外部環境要因及び前記船舶が走行している環境を含むグループから選択される1つまたは2つ以上を含む、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の水上船舶。
【請求項12】
前記コントローラは、前記水上船舶の船体内に配置され、前記フォイルは、前記船体の外部で浮遊喫水線の下に配置される、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の水上船舶。
【請求項13】
前記フォイルと電気的に通信し、前記エンジ
ンに電力を提供するように作動可能なバッテリシステムを更に備える、
請求項12に記載の水上船舶。
【請求項14】
前記フォイルと電気的に通信し、前記エンジン及び前記アクチュエータの両方に電力を提供するように作動可能なバッテリシステムを更に備え、
前記コントローラは、前記水上船舶の船体内に配置され、前記フォイルは、前記船体の外部で浮遊喫水線の下に配置される、
請求項4に記載の水上船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨット、帆船、船舶で使用するための自動制御型電動水中翼システムに関する。詳細には、本発明は、高電力密度電気エンジンを組み込むような水中翼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
帆走式水中翼は、ヨットのようなボートの船体の下に取り付けられる翼状の構造であり、従来のボート設計よりも速度が優れているという利点を提供する。帆走水中翼は、水中翼自身の翼状付属物で機能する。水中の水中翼は、航空機の翼が揚力を提供するのと同様に同じことを実現する。主な相違点は、水は空気よりもかなり密度が高いため、水中翼を航空機の翼ほど大きくする必要がないことである。ボートは、その速度を増加させると、水中翼は、船体の大部分または船体全体さえをも水から持ち上げて濡れ面積を大きく減少させ、船舶が水を通り抜けるときに抗力が減少して速度の増加をもたらす。
【0003】
ほとんどのタイプのボートは、水中翼を収容することができ、帆船も例外ではない。帆走式水中翼は、しばしば、モノハル(mono hull)と呼ばれる単一船体、(2つの船体を有する)カタマラン、または(3つの船体を有する)トリマランである場合がある。複数の船体の場合、船体は、単一の上部デッキによって一緒に保持される。船舶の幅がより広く、より長いほど、帆走式水中翼はより安定する。
【0004】
従来の水中翼は、受動的な方法、即ち、それらの幾何学的形状でのアクティブ制御が存在しない方法、または、能動的な方法、即ち、船舶を上昇または下降させ、ピッチ、ヒーブ及びロール軸によって船舶を制御するようにフラップを用いる方法、のいずれかで使用される。しかしながら、全ての制御は、例えば、機械的レバーアームを用いた制御システムのような手動によるものであり、フラップは、人間の介入が必要であり、これは、ユーザによる豊富な経験を本質的に必要とし、船舶の制御を人為的ミスにさらす。航空機と同様に、より高速でより正確な制御の要件と全体の抗力(より低い抗力は、本来の安定性を犠牲にして得られる)との間には固有のトレードオフが存在する。
【0005】
したがって、人為的ミスが回避され、全体の抗力及び燃料/エネルギー使用量を大幅に削減する水中翼のアクティブ制御の改良された方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、先行技術の問題に対処しようとするものである。本発明の形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態は、水上船舶のための水中翼システムを提供し、水中翼システムは、コントローラと、水上船舶と係合するためのフォイルであって、水上船舶の揚力特性を変化させるように作動可能な複数の調整部材を備えるフォイルと、プロペラと、フォイルに隣接して配置され、プロペラと作動可能または機械的に通信するエンジン及びギアボックスと、コントローラと電気的に通信する複数のセンサであって、各センサは、水上船舶の飛行パラメータを監視し、測定された飛行パラメータデータを生成するように構成されているセンサと、を備えコントローラは、調節部材、エンジン及びセンサと通信し、コントローラは、センサから測定された飛行パラメータデータを受信し、受信された測定された飛行パラメータデータに応じてエンジンの動作及び調整部材の位置を制御するように構成されている。
【0008】
一実施形態では、水中翼システムは、コントローラ及びエンジンと電気的に通信し、コントローラによってエンジンに電力を供給するように作動可能なバッテリシステムを更に備える。
【0009】
調整部材の各々は、水上船舶のピッチ、ロール、ヒーブ及びヨーの1つまたは2つ以上を変化させるように作動可能であるのが好ましい。
【0010】
一実施形態では、エンジンは、モータ-発電機ユニット(MGU)と呼ばれる高出力密度の電気エンジンを備える。
【0011】
一実施形態では、各調節部材は、フラップと、アクチュエータと、を備え、フラップは、コントローラによるアクチュエータの作動時にフォイルに対して可動である。調節部材は、流体力学的フェアリング内に収容されるのが好ましい。
【0012】
アクチュエータは、フォイルに一体化されているのが好ましい。しかしながら、代替的に、アクチュエータは、フォイル及び船舶のそれぞれのサイズに応じて船舶内に一体化されていてもよいことを理解されたい。
【0013】
一実施形態では、複数のフラップの各々は独立して調節可能である。これにより、水中の船舶の位置に対してより優れた制御を提供する。
【0014】
更なる実施形態では、複数のフラップは、2つの整列したフラップの少なくとも1セットを備える。しかしながら、必要に応じて、フラップの各セット内に追加のフラップを提供することもできる。
【0015】
一実施形態では、フォイルは、第1の開放端部と第1の開放端部と対向する第2の端部と、を有する貫通する細長いチャネルを画定し、第1の開放端部と第2の端部とは、相互に流体連通している。
【0016】
プロペラは、細長いチャネルの第2の端部に配置されるのが好ましい。即ち、細長いチャネルの第1の端部は、船舶の走行方向に配置され、プロペラは、第1の端部の遠位に配置される。したがって、流体は、第1の端部から第2の端部へチャネルを通って流れる。エンジンは、第1の開放端部とプロペラとの間の細長いチャネル内に配置されるのが好ましく、フォイル軸とエレベータとの間の細長いチャネル内に配置されるのがより好ましい。即ち、チャネルを通る流体流は、チャネル内に配置されたエンジン及びギアボックスのための冷却を提供している。
【0017】
一実施形態では、フォイルは、細長いチャネルがフォイルの外部と流体連通するように複数の流体入口を備えている。入口は、スロットまたはえら状部分を備えることができる。しかしながら、当業者に知られている入口のあらゆる他の適切な形状を、スロットまたはえら状部分に加えて、またはその代わりに用いることができる。
【0018】
流体入口は、エンジン及びギアボックスの両方の一方に隣接するフォイルの周囲に放射状に配置されるのが好ましい。流体入口は、細長いチャネルの長さに沿って、規則的に間隔を空けて配置されるか、または、例えば、エンジンを通過する冷却された流体流を促すように第1の端部寄りの領域のように、細長いチャネルの特定の領域により集中されるのが好ましい。
【0019】
別の実施形態では、フォイルは、エンジン及びギアボックスが内部に配置される防水ギアボックス筐体を備え、エンジン及びギアボックスの両方は、ギアボックス筐体内に精密に嵌合する。
【0020】
精密な嵌合は、使用中にエンジン及び/またはギアボックスによって発生された熱が、ギアボックス筐体との接触によって移行され、次いで沈められた水中の周囲の水により冷却されるように、エンジン及びギアボックスをギアボックス筐体と熱的に接触させることを可能にする。エンジン及びギアボックスを冷却するために、機械的または強制的な水流を必要としない。
【0021】
エンジンは、ギアボックスに隣接して配置されるのが好ましい。エンジンは、MGUを備え、ギアボックスは、遊星減速ハードウェアを有し、両者は、防水ギアボックス筐体内に配置されている。ギアボックス筐体は、フォイルの一部を形成し、エンジンをフォイル構造体に対して位置決めする。
【0022】
ギアボックス筐体は、周囲環境の水への熱伝達によってエンジン及びギアボックスを冷却するために、熱伝導性である。ギアボックス筐体は金属を備えるのが好ましく、被覆されたまたは非腐食性/耐食性の素材金属を備えるのが好ましい。しかしながら、当業者に知られる適切なかつ腐食に対して高い耐性をもつものを、ギアボックス筐体用の金属を使用する代わりに、またはそれに加えて使用できることは理解されたい。
【0023】
プロペラは、効率損失を最小限に抑えるために、短いプロペラ軸を介してギアボックスに隣接して配置されている。
【0024】
従来のフォイルと同様に、本発明の各フォイルは、2つの揚力面から構成され、垂直な揚力を提供するエレベータ(水平部)と、エレベータを運ぶとともに、順番に横力を提供し操作を提供することが主目的の軸と、で構成される。
【0025】
測定された飛行パラメータデータは、加速度データ、船舶位置データ(ピッチ、ヒーブ、ヨー、ロール)、アクチュエータ位置データ、外部環境要因(例えば、風、波の高さ)及び水を介した船舶の動き及び船舶が走行している環境に関する任意の他の有用なデータを含むグループから選択される1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0026】
コントローラは、水上船舶の船体内に配置され、フォイルは、水上船舶の船体外部の浮遊喫水線の下に配置されるのが好ましい。
【0027】
更なる実施形態では、水中翼システムは、フォイルと電気的に通信し、エンジン及び調整部材に電力を提供するように作動可能なバッテリシステムを更に備える。それに代えて、調節部材は、油圧を用いて作動させることができる。このようなバッテリシステムは、パワーエレクトロニクス制御ユニット(PECU)を備えることができる。
【0028】
本発明の第2の形態は、本発明の第1の形態による水中翼システムを含む水上船舶を提供する。本発明の第1の形態による水中翼システムは、製造中に新たな船舶の一部として一体的に提供されてもよく、既存の船舶への組み込み用に提供されてもよいことは理解されたい。両方の場合において、船舶は、水中翼システムにより提供されるすべての利点を有する。そのような利点は、以下のとおりである:
・低減された流体力学的抵抗は、船舶の(一定量のバッテリ電源のための)自動性の増大を提供する
・走行中の船舶の人間を必要としない最適化制御を提供し、これにより人為的ミスを回避する
・リアルタイムで測定された飛行パラメータデータに応じたフラップの調整を介した、走行高さのような水中での船舶の制御された位置決め
・水中での船舶の走行中、エンジン及びギアボックス周りに水流が生じるため、機械的なエンジン冷却システムを必要としない
・化石燃料の使用は、船舶の走行中に必要とされず、全ての電力は、走行を最適化するための船舶のニーズに応じて、バッテリシステムから慎重に制御された方法で提供される
・水中での船舶の位置が慎重に制御され、最適化された走行高さが水環境にさらされる船体の量を減少させるので、乗員の乗り心地が増大する
・船舶の洗浄は著しく低減される
【0029】
したがって、本発明の水中翼システムは、完全水中アクティブ制御のフォイリング水上船舶の自動制御を提供しながら、高速の海洋移動に対する高効率及び低消費推進システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】モノハル船舶に一体化された、本発明の第1の形態による水中翼システムの一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1の水中翼システムのフォイル及びプロペラの正面図である。
【
図3】
図2のフォイル及びプロペラの側面図である。
【
図4】
図2のフォイル及びプロペラの斜視図である。
【
図5】
図2のフォイル及びプロペラを上から見た図である。
【
図6】ギアボックス及びエンジン装置とフォイル体の内面との間で水流の冷却を有するギアボックス及びエンジン装置の第1の例を示す、
図2のフォイル及びプロペラのX-Y断面図である。
【
図7】
図6のギアボックス及びエンジン装置を示す、
図2のフォイル及びプロペラのZ-X断面図である。
【
図8】ギアボックス筐体を介した熱伝導冷却を有するギアボックス及びエンジン装置の第2の例を示す、
図2のフォイル及びプロペラのX-Y断面図である。
【
図9A】ハウジングがフォイルに取り付けられている、
図8のギアボックス及びエンジン装置の変形例を示す断面図である。
【
図9B】ハウジングがフォイルに取り付けられている、
図8のギアボックス及びエンジン装置の変形例を示す断面図である。
【
図9C】ハウジングがフォイルに取り付けられている、
図8のギアボックス及びエンジン装置の変形例を示す断面図である。
【
図9D】ハウジングがフォイルに取り付けられている、
図8のギアボックス及びエンジン装置の変形例を示す断面図である。
【
図10A】ハウジングがフォイルの一部により提供されている、
図8のギアボックス及びエンジン装置の更なる変形例を示す断面図である。
【
図10B】ハウジングがフォイルの一部により提供されている、
図8のギアボックス及びエンジン装置の更なる変形例を示す断面図である。
【
図11】ハウジングがフォイルから分離されている、ギアボックス及びエンジン装置の更なる変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態による水中翼システムの一実施形態を備えたモノハル船舶10の形態の水上船舶を示す。水中翼システムは、船舶10の船体14内に配置されたコントローラ12を備える。
【0032】
バッテリシステム16が、コントローラ10に隣接して配置され、コントローラ10と電気的に通信する。
図1の実施形態では、バッテリシステム16は、パワーエレクトロニクス制御ユニット(PECU)を備える。
【0033】
フォイル18は、浮遊喫水線の下のフォイル船体の外面上に配置される。フォイル18は、走行中に船舶10の揚力特性を変化させるように作動可能な複数の調整部材19を備えている。各調節部材は、フラップ20と、関連するアクチュエータ22と、を備える。アクチュエータ22は、電動式または油圧式のいずれかとすることができ、(
図1に示されるように)フォイル18と一体化されるか、または、船舶サイズ及び関連するフォイルサイズに応じて船舶10自体の中に配置されてもよい。アクチュエータ22は、関連するフラップ20の位置を制御するように作動して、ヒーブ(即ち浮遊喫水線26に対する走行高さ24)、ピッチ、ロール及び推力において船舶を制御する。走行高さ24は、
図1に示され、水面(浮遊喫水線26)とフォイリング喫水線28との間の距離に基づく。フォイリング喫水線は、フォイル/船体に対して飛行中に水の自由表面が位置する箇所のことをいう。喫水線は、ボートが浮いているとき、(アルキメデスの静圧力に基いて)排除した量を得るためにどれくらい船体を沈ませる必要があるかよって画定される。フォイリングする場合、フォイル喫水線は、最小のフォイル浸水(垂直部「軸」)の間での最適条件であり、自由表面が近接していることからエレベータ52を換気させずに、抗力を減少させる。
【0034】
図2の実施形態では、調整部材13は、フラップ20が内部に配置された流体力学的フェアリング21を更に備える。
【0035】
図2から
図5では、各フォイルは、4つのフラップ20を備え、各フラップ20は、関連するアクチュエータ22により独立して作動可能である。
【0036】
フォイル18は、垂直軸30によって船舶10の船体14に連結されている。
【0037】
プロペラ32が、走行中に水介して船舶10を駆動するためのフォイル18に取り付けられている。プロペラ32及びフォイル18は、
図2から
図7により詳細に示されている。
【0038】
図6及び
図7に示される第1の実施形態では、フォイル18は、細長いチャネル36を画定する本体34を備える。細長いチャネル36は、第1の開放端部38と、第1の端部38に対向する第2の端部40と、を有し、第1及び第2の端部38、40は、互いに流体連通している。プロペラ32は、チャネル36の第2の端部40でフォイルに取り付けられている。
【0039】
エンジン42及び整列されたギアボックス44は、細長いチャネル36内に取り付けられ、プロペラ駆動軸46に機械的に連結されている。第1の端部では、電気ハーネス50が、エンジン42に電気的に連結されている。エンジン42は、MGUである。
【0040】
エンジン42は、第2の対向する端部で、垂直軸30を通って延びる電気ハーネス50を介して、バッテリシステム16及びコントローラ10に電気的に連結され、使用時には、電気ハーネス50は、バッテリシステム16から、プロペラ32を回転させるようにギアボックス44を介してプロペラ駆動軸46を駆動するエンジン42へ、エネルギーを移行するようになっている。エンジン42は、発電機として作用し、バッテリシステム16からエネルギーを供給してギアボックス44を駆動する。
【0041】
電気ハーネス50は、従来の機械的連結ではなく、可撓性の電気接続である。フォイル18を通って垂直に延びる機械的連結ではない可撓性の電気ハーネス50の存在は、フォイル内の接続のより合理化された封じ込めを可能にし、したがって、増大した流体力学的効率を有する改良されたフォイルプロファイルを可能にする。
【0042】
流体入口42は、チャネル36がフォイル18の外部と流体連通する、即ち、外部の水が流体入口42を通ってチャネル44に流入することができるように、本体34の周囲に放射状に設けられている。これにより、水は、船舶10が水中を走行しているとき、流体入口42を通ってチャネル36に流れ、チャネル36の第2の端部40に向かう方向に、エンジン42及びギアボックス44を通過して流れる。更に、水は、チャネル36の第1の開放端部38を通って引き込まれ、また、エンジン42及びギアボックス44を通過して第2の端部40に向かって流れる。チャネル36への且つエンジン42及びギアボックス44周囲の外部の水流は、使用中にエンジン及びギアボックスを冷却するように機能し、過熱を防止し、冷却システムが存在しない場合に可能な速度よりも速い速度でエンジン及びギアボックスの動作を可能とする。
【0043】
図では、流体入口48は、スロットまたはえら状部分として示されている。しかしながら、当業者に知られ、フォイル18の外部からチャネル36へ及びエンジン42及びギアボックス44の周りに水を循環させるのに適した、任意の適切な形状の流体入口が、
図6及び
図7に示されるスロットまたはえら状部分に加えて、またはそれに代えて、使用できることは理解されたい。更に、流体入口42の数及び位置は、エンジン42及びギアボックス44を通過する流体流の十分な量が、船舶10の走行中に達成されるのに必要な冷却を提供することを可能にするならば、図面に示されるものから変更することができる。
【0044】
図8に示される第2の実施形態では、フォイル18は、エンジン42及びギアボックス44が収容される収容空間を画定するハウジング60を備える。ハウジング60は、エンジン44のための防水筐体を提供する。エンジン42及びギアボックス44は、ハウジング60内で互いに隣接して配置され、ハウジング60は、トルク及び回転をエンジン42からギアボックス44に伝達する軸66を介して連結されている。使用中に生成された熱がハウジング60によってエンジン42とギアボックス44から吸収され、次いで、周囲の水へ放熱されるように、エンジン42及びギアボックス44の両方の外表面はハウジング60の内表面に隣接して配置され、したがって、ハウジング60内のエンジン42及び/またはギアボックス44を通過する流体の機械的または強制的な流れの必要性を回避する、効率的な冷却システムを提供する。
【0045】
プロペラ32は、エンジン42の遠位においてギアボックス44に連結され、プロペラ軸33を介してギアボックス44に係合されている。プロペラ32は、従来の方法で鍵35を有する円錐形構造によってプロペラ軸33に連結する。プロペラ軸33は、ベアリングを介してギアボックス44に入り、ギアボックス歯車(図示せず)に連結する。
【0046】
プロペラ軸33は、ハウジング60の完全防水性を維持するシールを通っててハウジング60に入る。
【0047】
ハウジング60の反対側で、ハウジング60は、インターフェース62においてフォイル18に連結する。ハウジング60は、フォイル(図示せず)上でフランジにボルト留めされる。インターフェース62は、シールされ、チャネルが、ハウジング60を出て、フォイル18の垂直軸30に沿って垂直に延びるように、パワートレーンアセンブリ64の電気ハーネス63用に設けられ、エンジン42及びギアボックス42と船舶10の船体14に配置されたコントローラとの間の電気的接続を提供する。シールは、ハウジング60の完全防水性を維持するようにハウジング60から電気ハーネス64の出口点に設けられている。
【0048】
図8に示される実施形態では、ギアボックス42は、遊星ギアボックスであり、エンジン44は、モータ-発電機ユニット(MGU)である。しかしながら、これは一実施形態にすぎず、当業者は、ギアボックスハウジング60内で同一の構造を達成するように代替的なギアボックス及びエンジンを使用することができることは理解されたい。
【0049】
本発明の水中翼システムでは、船舶10は、コントローラ12と電気通信している複数のセンサ(図示せず)を更に備え、各センサは、船舶10の1つまたは2つ以上の飛行パラメータを監視し、監視された飛行パラメータに基づいて測定された飛行パラメータデータを生成するように構成されている。この測定された飛行パラメータデータは、次いで、測定された飛行パラメータデータを使用して水中を走行する船舶10を最適化するのにエンジン及び調節部材13に必要な調整を決定するように、コントローラ10に提供される。調節部材13は、流体力学的フェアリングと共に
図2及び
図3に示されている。コントローラ10は、次いで、エンジン42と通信してプロペラ32の動作を制御する。コントローラ12は、更に、測定された飛行パラメータデータに応じて、調整部材13の位置を制御するようにアクチュエータ22と通信する。これは、水中の船舶の速度及び/または水中の船舶10の位置、即ち水中の船舶10のヒーブ、ピッチ、ロール及び/または水力に影響を与える効果を有する。
【0050】
センサは、測定された飛行パラメータデータを、継続的に、またはコントローラからの要求に応じて、あるいは所定のプログラムされた方法で、コントローラに提供することができる。明らかに、継続的に提供されるデータは、エンジンの動作及び水中の船舶10の位置に影響を与えるようにコントローラ12からの連続的なフィードバックを生成し、水中の船舶10の連続的に最適化された走行を提供する。
【0051】
センサは、船体及びフォイル中に埋め込まれた複数の位置に配置されるのがよく、これらに限定されないが、加速度、位置(ピッチ、ヒーブ、ヨー、ロール)、走行高さデータ、アクチュエータ位置データ及び水中の船舶の動きに関連する任意の他の有用なパラメータを監視または測定することを含む、船舶10の様々な飛行パラメータを測定することもできる。
【0052】
図9Aは、ハウジング60をフォイル18に取り付けた場合の装置を示し、
図9Bから
図9Dは、これがどのように達成されるかに関する変形例を示す。
【0053】
図9Bは、ハウジング60がギアボックス42の一部として提供され、組立時に、エンジン44がギアボックスハウジング60の中に挿入され、次いで、ハウジング60が従来の方法で防水にされる場合の装置を示す。
【0054】
図9Cでは、ハウジング60は、エンジン44の一部として設けられており、組立時に、ギアボックス42はエンジンハウジング60の中に挿入され、次いで、ハウジング60が従来の方法で防水にされる。
【0055】
図9Dは、ハウジング60がエンジン42及びギアボックス44の両方と区別される装置を示す。エンジン42及びギアボックス44は、ハウジング60の両端部から互いに向けてハウジング60の中へと挿入される。それに代えて、エンジン42とギアボックス44とが、同じ端部からハウジング60の中に順番に挿入されてもよい。次いで、ハウジング60は、エンジン42及びギアボックス44内で両方を内部に収納するように従来の方法で防水にされる。
【0056】
図10Aは、ハウジング60がフォイル18の一部によって提供される場合の装置を示す。エンジン42は、ギアボックス44に続いてハウジング60の中に挿入され、その後、ハウジング60が従来の方法で防水にされてフォイル18内にエンジン42及びギアボックス44の両方を保持する。
【0057】
それに代えて、
図10Bに示されるように、ハウジング60は、フォイル18を通るチャネルとして提供されてもよい。エンジン42及びギアボックス44は、ハウジング60の両端部から互いに向かってハウジング60の中へと挿入される。ハウジング60は、次いで、フォイル18内にエンジン42及びギアボックス44の両方を収納するように従来の方法で防水にされる。
【0058】
最後に、
図11は、ハウジング60がフォイル18から空間的に分離されている装置を示す。ハウジング装置の組立は、
図9Bから
図9Dに記載されとおりでもよいことは理解されたい。
【0059】
図1は、2つのフォイル18を有し、そのうちの一方は、本発明による水中翼システムであり、他方は、本発明の推進システムのないフォイルを備えた船舶を示す。船舶は、(1つは前方寄りに、もう1つは船舶の後方寄りの)最低でも2つのフォイルを備え、その一方または両方が本発明の推進機能を有することができることは理解されたい。複数のフォイル18が設けられる場合、各フォイル18の各フラップ20のためのアクチュエータ22は、単一のコントローラ12によって独立して制御される。
【0060】
船舶は、本発明の1つの水中翼システムと1つの非推進フォイルユニットとを備えることができる。しかしながら、船舶の重量が動き回るのにより大きな推力を必要とする場合、船舶は、推進力を備えた2つのフォイルを備えることができる。
【0061】
本発明の水中翼システムは、したがって、人間を必要としない飛行制御を可能にする。各フォイル18は、常に、最適な性能、即ち低い抗力になるよう調節且つ設定されているため、水中の抗力の著しい低減が保証される。これは、一定のバッテリ容量に対してより優れた自動性範囲またはクルーズ速度の増加のいずれかの技術的利点を提供する。
【0062】
本発明の水中翼システムにより使用されるエンジン冷却は、水流冷却でも熱伝達冷却でも、別個の機械的冷却システムの必要性を否定し、それにより、システムの複雑さ及び重量を低減して、効率性及びバッテリ寿命の増加に貢献する。
【0063】
本発明の水中翼システムは、最適性能を達成するように、新たに構築された船舶10の一体部分として提供されることも、または既存の船舶10に組み込むこともできることは理解されたい。
【0064】
最後に、本発明の水中翼システムの使用は、船舶10のより少ない船体14が周囲の水環境にさらされるため、乗客にとって乗り心地が増加する最適な性能を提供し、それによって、滑らかな乗り心地を確保することができる。