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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】三次元造形機および三次元造形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20231030BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20231030BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231030BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231030BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20231030BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20231030BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/209
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B29C64/112
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022538552
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028428
(87)【国際公開番号】W WO2022018854
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘規
(72)【発明者】
【氏名】山崎 恭輔
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-146467(JP,A)
【文献】特開2016-198896(JP,A)
【文献】特開2012-121175(JP,A)
【文献】特開2014-097658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位層を積み重ねて三次元造形物を製造する三次元造形機であって、
製造途中の前記三次元造形物を載置するステージと、
造形インクを吐出して前記単位層を描画する複数の造形ノズルを保持した造形ヘッドと、
前記造形ヘッドが前記ステージの上方を相対移動するように駆動する駆動部と、
複数の前記造形ノズルの各々が前記造形インクの吐出に使用された使用率および累積使用量の少なくとも一方を演算する演算部と、
複数の前記造形ノズルの間で前記使用率および前記累積使用量の少なくとも一方を均一化するように、前記造形インクの吐出に使用する前記造形ノズルを選択する均一化選択部と、を備え
前記造形ヘッドは、前記ステージの上方を相対移動する移動方向と直交する直交方向に一列に複数の前記造形ノズルを保持しており、
前記均一化選択部は、複数の前記単位層からなる第一の均一化要素に対して前記造形インクの吐出に使用する前記造形ノズルを設定するとともに、複数の前記単位層からなる第二の前記均一化要素に対して第一の前記均一化要素とは異なる前記造形ノズルを設定し、さらに、前記直交方向における前記三次元造形物と複数の前記造形ノズルとの相対位置関係を調整することにより、設定した前記造形ノズルを選択する、
三次元造形機。
【請求項2】
前記三次元造形機は、前記直交方向における前記ステージと前記造形ヘッドとの相対位置関係を調整する調整機構をさらに備え、
前記均一化選択部は、前記調整機構を制御する、
請求項に記載の三次元造形機。
【請求項3】
前記均一化選択部は、複数の前記造形ノズルの各々の前記使用率および前記累積使用量の少なくとも一方に基づいて、前記造形インクの吐出に使用する前記造形ノズルを自動選択する、請求項1または2に記載の三次元造形機。
【請求項4】
前記均一化選択部は、複数の前記造形ノズルの各々の前記使用率および前記累積使用量の少なくとも一方をオペレータに提示し、前記オペレータの指示にしたがって前記造形インクの吐出に使用する前記造形ノズルを選択する、請求項1または2に記載の三次元造形機。
【請求項5】
前記均一化選択部は、前記三次元造形物を構成する複数の前記単位層の形状を表す造形データに基づいて、複数の前記単位層の各々で前記造形インクの吐出に使用する前記造形ノズルを予め選択する、請求項1または2に記載の三次元造形機。
【請求項6】
前記均一化選択部は、前記造形ヘッドが前記ステージの上方を相対移動する移動回数を増加させないことを条件として、前記造形インクの吐出に使用する前記造形ノズルを選択する、請求項1~のいずれか一項に記載の三次元造形機。
【請求項7】
オペレータからの指令に基づいて、通常の場合に前記均一化選択部の機能をオンし、製造速度を優先する場合に前記均一化選択部の機能をオフする制御部をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の三次元造形機。
【請求項8】
単位層を積み重ねて製造する三次元造形物を載置するステージ、造形インクを吐出して前記単位層を描画する複数の造形ノズルを保持した造形ヘッド、および、制御プログラムに基づいて前記造形ヘッドが前記ステージの上方を相対移動するように駆動する駆動部を有する三次元造形機と、
複数の前記造形ノズルの各々が前記造形インクの吐出に使用される使用率および累積使用量の少なくとも一方を演算し、複数の前記造形ノズルの間で前記使用率および前記累積使用量の少なくとも一方を均一化するように、前記造形インクの吐出に使用する前記造形ノズルを選択する指令を含む前記制御プログラムを生成するプログラム生成部と、
を備え
前記造形ヘッドは、前記ステージの上方を相対移動する移動方向と直交する直交方向に一列に複数の前記造形ノズルを保持しており、
前記制御プログラムは、
複数の前記単位層からなる第一の均一化要素に対して前記造形インクの吐出に使用する前記造形ノズルを設定するとともに、複数の前記単位層からなる第二の前記均一化要素に対して第一の前記均一化要素とは異なる前記造形ノズルを設定し、さらに、前記直交方向における前記三次元造形物と複数の前記造形ノズルとの相対位置関係を調整することにより、設定した前記造形ノズルを選択する前記指令を含む、
三次元造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数の造形ノズルを用いて三次元造形物を製造する三次元造形機、および三次元造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物を製造する三次元造形機の技術分野では、単位層を積み重ねる積層造形法が主流となっている。多くの三次元造形機は、造形インクを吐出して単位層を描画する複数の造形ノズルと、描画された単位層を固化する固化部と、を備える。三次元造形機は、3Dプリンタと呼称される場合がある。三次元造形機の普及により、各種の物品の製造方法が発展し、とりわけ試作品などの製造が格段に効率化される。この種の三次元造形機に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の立体物造形装置は、一つ以上の造形ノズルを有する第1吐出部および第2吐出部を備え、複数のボクセルが重畳する部分を同じ造形インクで形成する際に、第1吐出部を用いて第1のボクセルを形成するとともに、第2吐出部を用いて第1のボクセルに重畳される第2のボクセルを形成する。これによれば、特定の造形ノズルの使用頻度が高くなることが回避され、吐出部の寿命が短くなることが抑制される、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-132229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の立体物造形装置において、特定の造形ノズルの使用頻度が高くなることが回避される点は好ましい。しかしながら、一般的な三次元造形機では、多数の造形ノズルの配列位置等などに依存して、造形ノズルの使用頻度が偏りやすい。そして、特許文献1の技術は、複数の造形ノズルの使用頻度を均一化するために十分とは言えない。複数の造形ノズルの使用頻度に偏りがある場合、使用機会が多い造形ノズルばかり交換して使用機会が少ない造形ノズルを交換しないことになり、交換作業が非効率になって大きな手間がかかる。
【0006】
それゆえ、本明細書では、複数の造形ノズルの使用率や累積使用量の均一化に寄与することができる三次元造形機、および三次元造形システムを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、単位層を積み重ねて三次元造形物を製造する三次元造形機であって、製造途中の前記三次元造形物を載置するステージと、造形インクを吐出して前記単位層を描画する複数の造形ノズルを保持した造形ヘッドと、前記造形ヘッドが前記ステージの上方を相対移動するように駆動する駆動部と、複数の前記造形ノズルの各々が前記造形インクの吐出に使用された使用率および累積使用量の少なくとも一方を演算する演算部と、複数の前記造形ノズルの間で前記使用率および前記累積使用量の少なくとも一方を均一化するように、前記造形インクの吐出に使用する前記造形ノズルを選択する均一化選択部と、を備える三次元造形機を開示する。
【0008】
また、本明細書は、単位層を積み重ねて製造する三次元造形物を載置するステージ、造形インクを吐出して前記単位層を描画する複数の造形ノズルを保持した造形ヘッド、および、制御プログラムに基づいて前記造形ヘッドが前記ステージの上方を相対移動するように駆動する駆動部を有する三次元造形機と、複数の前記造形ノズルの各々が前記造形インクの吐出に使用される使用率および累積使用量の少なくとも一方を演算し、複数の前記造形ノズルの間で前記使用率および前記累積使用量の少なくとも一方を均一化するように、前記造形インクの吐出に使用する前記造形ノズルを選択する指令を含む前記制御プログラムを生成するプログラム生成部と、を備える三次元造形システムを開示する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示する三次元造形機や三次元造形システムによれば、複数の造形ノズルの各々が造形インクの吐出に使用された使用率および累積使用量の少なくとも一方を演算して、使用率および累積使用量の少なくとも一方を均一化するように、使用する造形ノズルを選択する。したがって、複数の造形ノズルの使用率や累積使用量の均一化に寄与することができる。加えて、複数の造形ノズルの間で劣化速度の偏りが減少するので、複数の造形ノズルを同時に交換する機会が増えて、交換作業の手間が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の三次元造形機の構成を模式的に示す平面図である。
図2】三次元造形機の制御の構成を示すブロック図である。
図3A】例示する三次元造形物の第1~第6単位層、および第10~第12単位層の形状を表す造形データを模式的に示した図である。
図3B】三次元造形物の第7~第9単位層の形状を表す造形データを模式的に示した図である。
図4】三次元造形機の動作を説明する動作フローの図である。
図5A】三次元造形物の第1~第3単位層を第一の均一化要素とした場合に、使用する造形ノズルを示した図である。
図5B】第3単位層の造形終了時点で演算した各造形ノズルの使用率を示す一覧表の図である。
図6A図5Aに続き、第4~第6単位層を第二の均一化要素として、使用する造形ノズルを示した図である。
図6B】第6単位層の造形終了時点に演算した各造形ノズルの使用率を示す一覧表の図である。
図7A図6Aに続き、第7~第9単位層を第三の均一化要素として、使用する造形ノズルを示した図である。
図7B】第9単位層の造形終了時点に演算した各造形ノズルの使用率を示す一覧表の図である。
図8】第12単位層の造形終了時点に演算した各造形ノズルの使用率を示す一覧表の図である。
図9A】一番目の三次元造形物を均一化要素とした場合に、使用する造形ノズルを示した図である。
図9B】一番目の三次元造形物の製造終了時点に演算した各造形ノズルの使用率を示す一覧表の図である。
図10A図9Aに続き、二番目の三次元造形物を均一化要素として、使用する造形ノズルを示した図である。
図10B】二番目の三次元造形物の製造終了時点に演算した各造形ノズルの使用率を示す一覧表の図である。
図11A図10Aに続き、三番目の三次元造形物を均一化要素として、使用する造形ノズルを示した図である。
図11B】三番目の三次元造形物の製造終了時点に演算した各造形ノズルの使用率を示す一覧表の図である。
図12】オペレータの指示にしたがい、使用する造形ノズルを図7Aと異なるものとした場合を示す図である。
図13A】第2実施形態の三次元造形機において、三次元造形物の載置位置をステージの右側に調整した状態を示す図である。
図13B】三次元造形物の載置位置をステージの左側に調整した状態を示す図である
図14】第3実施形態の三次元造形システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1実施形態の三次元造形機1の構成
第1実施形態の三次元造形機1の構成について、図1および図2を参考にして説明する。図1の左上の矢印に示されるように、三次元造形機1の前後左右を便宜的に定める。三次元造形機1は、単位層を積み重ねる積層造形法により三次元造形物を製造する。三次元造形物の形状は、複数の単位層の各々の形状を表す造形データによって規定される。三次元造形機1は、駆動部2、ステージ3、造形ヘッド4、複数の造形ノズル5、調整機構6、固化部7、および制御装置8(図2参照)などで構成されている。
【0012】
駆動部2は、前後方向に延在するコンベア装置を用いて構成される。コンベア装置のコンベアベルトは、輪転方向の切り替えが可能とされている。駆動部2は、前側から順番に搬入出エリア21、固化エリア22、および描画エリア23に区分される。搬入出エリア21には、機外からステージ3が搬入される。駆動部2は、制御装置8からの指令にしたがい、ステージ3をエリア間で搬送する。なお、駆動部2は、ステージ3を把持して搬送可能なアームロボット装置を用いて構成されてもよい。
【0013】
ステージ3は、左右方向の幅寸法が駆動部2の幅寸法よりも小さめの矩形の板材で形成される。ステージ3は、始めに搬入出エリア21に搬入される。続いて、ステージ3は、固化エリア22と描画エリア23の間で多数回にわたって往復搬送され、製造途中の三次元造形物が載置される。三次元造形物の製造が終了すると、ステージ3は、三次元造形物と共に搬入出エリア21から機外に搬出される。
【0014】
造形ヘッド4は、描画エリア23の上方に配置される。造形ヘッド4は、描画エリア23に搬送されたステージ3の上方を相対移動する。「相対移動する」とは、造形ヘッド4が移動してもよく、ステージ3が移動してもよいことを表す。本第1実施形態において、駆動部2は、描画エリア23の中でステージ3を前後方向に移動させる。つまり、移動しない造形ヘッド4の下方を、ステージ3が前後方向に移動する。
【0015】
したがって、駆動部2の前後方向は、相対移動の移動方向となり、駆動部2の左右方向は、移動方向と直交する直交方向となる。造形ヘッド4は、直交方向に一列に複数の造形ノズル5を保持している。図1において、八個の造形ノズル5が示されており、実際には、さらに多数の造形ノズル5が造形ヘッド4に保持される。
【0016】
造形ノズル5は、造形インクを下方に吐出して、ステージ3上または製造途中の三次元造形物の上側に単位層を描画する。八個の造形ノズル5は、同じ造形インクを使用する。造形インクをインク容器から造形ノズル5に補給する作業は、図略のメンテナンス機構を用いて、全自動または半自動で行われる。造形インクは、一般的な印刷用インクと比較して成分や粘度などの物性が相違するため、造形ノズル5の劣化を促進しがちである。このため、造形ノズル5を交換するサイクルは、一般的な印刷用ノズルよりも短くなる。
【0017】
なお、描画エリア23内に、図略の平坦化部が設けられてもよい。平坦化部は、描画された直後の液状の単位層の表面を平坦化する。これにより、単位層の表面の凹凸が整えられて高さが均一化され、造形精度が向上する。
【0018】
調整機構6は、直交方向におけるステージ3と造形ヘッド4との相対位置関係を調整する。本第1実施形態において、ステージ3は直交方向に移動しない。調整機構6は、図1の矢印Aに示されるように、造形ヘッド4を直交方向に移動させる。調整機構6は、ステージ3に対する造形ノズル5の直交方向の位置を変更する用途や、造形ヘッド4をメンテナンス位置に移動させる用途に用いられる。図1に示されるように、全ての造形ノズル5がステージ3の上方を移動する位置を、造形ヘッド4の標準位置と呼称する。調整機構6として、ボールねじ送り機構やリニアモータ機構を用いることができ、これらに限定されない。
【0019】
固化部7は、固化エリア22の上方に配置されている。固化部7は、描画された単位層を固化する。詳述すると、まず、単位層が上部に描画された製造途中の三次元造形物が、ステージ3と共に固化エリア22まで搬送される。次に、固化部7は、上部の液状の単位層に接近するまで下降し、その後に、単位層を固化する。固化する方法として、紫外線照射法を例示でき、これに適合する造形インクが用いられる。
【0020】
制御装置8は、コンピュータ装置を用いて構成される。制御装置8は、図2に示されるように、駆動部2、複数の造形ノズル5、調整機構6、および固化部7を制御する。さらに、制御装置8は、ソフトウェアを用いて実現された三つの機能部、すなわち演算部81、均一化選択部82、および制御部83を有する。
【0021】
演算部81は、複数の造形ノズル5の各々が造形インクの吐出に使用された使用率および累積使用量の少なくとも一方を演算する。均一化選択部82は、複数の造形ノズル5の間で使用率および前記累積使用量の少なくとも一方を均一化するように、造形インクの吐出に使用する造形ノズル5を選択する。
【0022】
さらに、均一化選択部82は、一つまたは複数の単位層からなる第一の均一化要素に対して造形インクの吐出に使用する造形ノズル5を設定するとともに、第二の均一化要素に対して第一の均一化要素とは異なる造形ノズル5を設定する。また、均一化選択部82は、複数の造形ノズル5の各々の使用率および累積使用量の少なくとも一方に基づいて、造形インクの吐出に使用する造形ノズル5を自動選択する。
【0023】
さらに、均一化選択部82は、直交方向における三次元造形物と複数の造形ノズル5との相対位置関係を調整することにより、造形インクの吐出に使用する造形ノズル5を選択する。具体的には、均一化選択部82は、調整機構6を制御して、使用する造形ノズル5を選択する。また、均一化選択部82は、造形ヘッド4がステージ3の上方を相対移動する移動回数を増加させないことを条件として、造形インクの吐出に使用する造形ノズル5を選択する。均一化選択部82の機能については、様々な応用および変形が可能であるので、後で詳述する。
【0024】
制御部83は、オペレータからの指令に基づいて、均一化選択部82の機能のオン、オフを切り替える。後述するように均一化選択部82の機能を用いることで、複数の造形ノズルの使用率や累積使用量の均一化に寄与するという課題を解決することができる。しかしながら、均一化選択部82は、わずかとは言え三次元造形物の製造速度を低下させる。したがって、オペレータは、通常の場合に均一化選択部82の機能をオンし、製造速度を優先する場合に均一化選択部82の機能をオフするように指令する。
【0025】
2.三次元造形物Mの例示
三次元造形機1の動作の説明に先立ち、図3Aおよび図3Bを参考にして、概念的な三次元造形物Mの一例を説明する。例示する三次元造形物Mは、第1~第12単位層までの12層の造形データで表される。また、各単位層の形状は、8×8の合計64個のボクセルを用いて表されるものとする。図3Aおよび図3Bにおいて、ステージ3の左前隅のボクセルは、B(1,1)で表され、右前隅のボクセルは、B(1,8)で表される。さらに、左後隅のボクセルは、B(8,1)で表され、右後隅のボクセルは、B(8,8)で表される。実際の三次元造形物は、さらに多数の単位層およびさらに多数のボクセルを用いた造形データで表されて、形状精度が高められる。
【0026】
図3Aに示されるように、三次元造形物Mの下部の第1~第6単位層の形状M1は、概ね円形である。この形状M1は、ステージ3の中央に造形される。この形状M1は、図3Aの小円に示されるように、第3~第6行および第3~第6列にかけて配列された12個のボクセルで表される。また、三次元造形物Mの上部の第10~第12単位層の形状M3は、下部の形状M1と同一である。形状M1および形状M3を造形するために、連続的に並ぶ四個の造形ノズル5を使用するという制約がある。
【0027】
図3Bに示されるように、三次元造形物Mの中間部の第7~第9単位層の形状M2は、下部の形状M1よりも大きい。かつ、形状M2は、駆動部2の前後方向に線対称(図3Bでは上下に対称)であって、左側の方が右側よりも大きい。この形状M2は、図3Bの小円に示されるように、第1~第8行および第2~第6列にかけて配列された24個のボクセルで表される。形状M2を造形するために、連続的に並ぶ五個の造形ノズル5を使用するという制約がある。
【0028】
なお、上述した概念例では、第6単位層の形状M1のすぐ上に、第7単位層の大きな形状M2を造形することとしているが、実際には造形することが難しい。実際の製造においては、下側から上側へと単位層の形状を徐々に大きくする方法や、仮支柱を併せて造形し、造形終了後に仮支柱を切断する方法が用いられる。
【0029】
3.第1実施形態の三次元造形機1の動作
次に、例示した三次元造形物Mを三次元造形機1が製造する動作について、図4の動作フローおよび図5Aから図8に至る造形進捗状況を参考にして説明する。動作フローの開始時に、八個の造形ノズル5は、交換された直後の未使用品であるとする。また、以降の説明では、八個の造形ノズル5を左から右へと順番に、第1ノズル51~第8ノズル58と呼称する。図4のステップS1で、駆動部2によりステージ3が機外から描画エリア23まで搬入される。
【0030】
次のステップS2で、制御装置8の均一化選択部82は、第一の均一化要素を設定する。ここでは、均一化要素として三つの単位層を用いる場合について説明する。この場合、第一の均一化要素として、第1~第3単位層が設定される。以下、第二の均一化要素として第4~第6単位層が設定され、第三の均一化要素として第7~第9単位層が設定され、第四の均一化要素として第10~第12単位層が設定される。
【0031】
次のステップS3で、均一化選択部82は、複数の造形ノズル5の間で使用率および累積使用量の少なくとも一方を均一化するように、造形インクの吐出に使用する造形ノズル5を自動選択する。ここで、第1ノズル51~第8ノズル58は、すべて未使用品であり、使用率および累積使用量に差が無い。そこで、均一化選択部82は、図5Aに示された造形ヘッド4の標準位置を自動選択し、換言すると、第3ノズル53~第6ノズル56を自動選択する。したがって、第一の均一化要素の造形に関して、第1ノズル51、第2ノズル52、第7ノズル57、および第8ノズル58は使用されない。
【0032】
次のステップS4で、ステージ3は、駆動部2に駆動されて前後方向に移動し、第3ノズル53~第6ノズル56は、ステージ3上に描画を行う。詳述すると、第3ノズル53は、B(3,4)およびB(3,5)の2個のボクセルを描画する。第4ノズル54は、B(4,3)~B(4,6)の4個のボクセルを描画する。第5ノズル55は、B(5,3)~B(5,6)の4個のボクセルを描画する。第6ノズル56は、B(6,4)およびB(6,5)の2個のボクセルを描画する。これにより、液状の第1単位層の描画が終了する。
【0033】
この後、ステージ3は、駆動部2に駆動されて固化エリア22まで搬送される。そして、ステージ3上の液状の第1単位層は、固化部7により固化され、第1単位層の造形が終了する。さらに、第1単位層の上側に描画および固化が行われて第2単位層が造形される。さらに、第2単位層の上側に描画および固化が行われて第3単位層が造形され、第1単位層から第3単位層までの造形が終了する。均一化選択部82は、均一化要素の中では造形ヘッド4を移動させずに、形状M1に対して同じ造形ノズル5を選択する。
【0034】
次のステップS5で、演算部81は、複数の造形ノズル5の各々が造形インクの吐出に使用された使用率を演算する。演算に際して、使用回数で表される累積使用量が先に求められる。演算方法について、第3ノズル53を例にして詳細に説明する。第一の均一化要素の中で、第3ノズル53は、造形インクを吐出する機会が24回(=8ボクセル×3単位層)あり、実際に造形インクを吐出した累積使用量は6回(=2ボクセル×3単位層)である。したがって、第3ノズル53の使用率は、25%(=6回÷24回×100%)となる。なお、累積使用量として、使用回数以外のパラメータ、例えば、造形インクを吐出している時間や、吐出した造形インクの量などを用いてもよい。
【0035】
演算の結果は、図5Bに示される。図示されるように、第1ノズル51、第2ノズル52、第7ノズル57、および第8ノズル58の使用率は0%である。第3ノズル53および第6ノズル56の使用率は25%である。第4ノズル54および第5ノズル55の使用率は50%である。なお、前述した仮支柱を造形する場合、仮支柱の描画に使用された使用回数も当然考慮される。
【0036】
次のステップS6で、制御装置8は、造形が終了したか否か、すなわち第12単位層の造形が終了したか否かを判定して、動作フローの分岐先を決定する。この時点で、第3単位層までの造形が終了しているので、動作フローはステップS7に進められる。ステップS7で、均一化選択部82は、第二の均一化要素(第4~第6単位層の形状M1)を設定して、動作フローをステップS3に戻す。
【0037】
2回目のステップS3で、均一化選択部82は、図5Bに示された使用率を参照し、使用率を均一化するように造形ノズル5を自動選択する。ここで、第1ノズル51、第2ノズル52、第7ノズル57、および第8ノズル58は、使用率が他よりも低く、優先的に選択される。均一化選択部82は、第4~第6単位層の形状M1の描画に使用する造形ノズル5を、二つの選択肢から選ぶ。すなわち、均一化選択部82は、第1ノズル51~第4ノズル54、または、第5ノズル55~第8ノズル58を設定する。
【0038】
図6Aは、第1ノズル51~第4ノズル54が選択された場合を示している。図示されるように、調整機構6は、均一化選択部82からの制御にしたがい、造形ヘッド4の位置を造形ノズル5の二個分だけ標準位置から右方に調整する。したがって、2回目のステップS4で、第1ノズル51~第4ノズル54を使用した描画、および固化が3回繰り返される。描画および固化の詳細な動作は、1回目と同様である。
【0039】
上述したように、均一化選択部82は、均一化要素が切り替わったときに造形ヘッド4を移動させ、同じ形状M1に対して異なる造形ノズル5を選択することができる。なお、使用率を均一化することは、使用率の偏りを低減することを意味する。均一化選択部82は、造形データの制約が許す範囲内で、使用率が低い造形ノズル5の使用を優先し、使用率が高い造形ノズル5の使用を控える。
【0040】
さらに、2回目のステップS5で、演算部81は、複数の造形ノズル5の各々の使用率を再び演算する。ここで、造形ノズル5の累積使用量は、第一の均一化要素における使用回数、および第二の均一化要素における使用回数が加算されて求められる。また、造形ノズル5の各々が造形インクを吐出する機会は、48回に増加する。
【0041】
演算の結果は、図6Bに示される。図示されるように、第7ノズル57および第8ノズル58の使用率は0%のままである。第1ノズル51および第6ノズル56の使用率は12.5%である。第2ノズル52および第5ノズル55の使用率は25%である。第3ノズル53および第4ノズル54の使用率は37.5%である。この後、動作フローは、ステップS6からステップS7に進められる。ステップS7で、均一化選択部82は、第三の均一化要素(第7~第9単位層の形状M2)を設定して、動作フローをステップS3に戻す。
【0042】
3回目のステップS3で、均一化選択部82は、図6Bに示された使用率を参照し、使用率を均一化するように造形ノズル5を自動選択する。ここで、第7ノズル57および第8ノズル58は、使用率が0%で他よりも低く、優先的に選択される。均一化選択部82は、第7~第9単位層の形状M2の描画に使用する造形ノズル5を、第4ノズル54~第8ノズル58に設定する。
【0043】
図7Aは、使用する造形ノズル5として、第4ノズル54~第8ノズル58が選択された場合を示している。図示されるように、調整機構6は、均一化選択部82からの制御にしたがい、造形ヘッド4の位置を造形ノズル5の二個分だけ標準位置から左方に調整する。したがって、3回目のステップS4で、第4ノズル54~第8ノズル58を使用した描画、および固化が3回繰り返される。描画および固化の詳細な動作は、1回目および2回目と同様である。
【0044】
さらに、3回目のステップS5で、演算部81は、複数の造形ノズル5の各々の使用率を再び演算する。演算の結果は、図7Bに示される。図示されるように、第1ノズル51の使用率は8.3%である。第2ノズル52および第8ノズル58の使用率は16.7%である。第3ノズル53の使用率は25%である。第4ノズル54~第7ノズル57の使用率は33.3%である。この後、動作フローは、ステップS6からステップS7に進められる。ステップS7で、均一化選択部82は、第四の均一化要素(第9~第12単位層の形状M3=M1)を設定して、動作フローをステップS3に戻す。
【0045】
4回目のステップS3で、均一化選択部82は、図7Bに示された使用率を参照し、使用率を均一化するように造形ノズル5を自動選択する。ここで、第1ノズル51は、使用率が8.3%と他よりも低く、優先的に選択される。均一化選択部82は、第10~第12単位層の形状M3(=M1)の描画に使用する造形ノズル5を、第1ノズル51~第4ノズル54に設定する。調整機構6は、図6Aと同様に、造形ヘッド4の位置を造形ノズル5の二個分だけ標準位置から右方に調整する。したがって、4回目のステップS4で、第1ノズル51~第4ノズル54を使用した描画、および固化が3回繰り返される。
【0046】
さらに、4回目のステップS5で、演算部81は、複数の造形ノズル5の各々の使用率を再び演算する。演算の結果は、図8に示される。4回目のステップS6で、第12単位層の造形が終了して、三次元造形物Mの製造が終了しており、動作フローはステップS8に分岐される。ステップS8で、駆動部2によりステージ3および製造された三次元造形物Mが機外に搬出される。この後、動作フローは、ステップS1に戻される。
【0047】
2回目のステップS1で、駆動部2により新しいステージ3が描画エリア23まで搬入される。新しいステージ3に対するステップS3で、均一化選択部82は、図8に示された使用率を参照し、使用率を均一化するように造形ノズル5を選択する。図8において、第1ノズル51および第8ノズル58は、使用率が他よりも低く、優先的に選択される。かつ、第5ノズル55および第6ノズル56は、第3ノズル53および第4ノズル54と比較して使用率が低いので、優先的に選択される。したがって、均一化選択部82は、新しいステージ3において第1~第3単位層の形状M1の描画に使用する造形ノズル5を、第5ノズル55~第8ノズル58に設定する。
【0048】
第1実施形態の三次元造形機1によれば、複数の造形ノズル5の各々が造形インクの吐出に使用された使用率および累積使用量の少なくとも一方を演算して、使用率および累積使用量の少なくとも一方を均一化するように、使用する造形ノズル5を選択する。したがって、複数の造形ノズル5の使用率や累積使用量の均一化に寄与することができる。加えて、複数の造形ノズル5の間で劣化速度の偏りが減少するので、複数の造形ノズル5を同時に交換する機会が増えて、交換作業の手間が削減される。
【0049】
これに対して、従来技術では、造形ヘッド4を標準位置に固定して使用する。このため、三次元造形物Mの製造を継続している間、第1ノズル51、第7ノズル57、および第8ノズル58は、全く使用されない。一方、第5ノズル55は、他と比較して使用率が高いので劣化が進行し、頻繁に交換することになる。三次元造形機1によれば、使用する第1ノズル51~第8ノズル58を選択することにより、それらの使用率を均一化して、劣化速度の偏りを削減することができる。
【0050】
なお、三次元造形物Mの造形データは既知である。したがって、均一化選択部82は、図5Aから図8に至る造形進捗状況を、実際に行う以前にシミュレーションすることができる。つまり、均一化選択部82は、三次元造形物Mを構成する複数の単位層の形状を表す造形データに基づいて、複数の単位層の各々で造形インクの吐出に使用する造形ノズル5を予め選択することができる。これによれば、前もって一連の演算処理を実行でき、均一化要素の造形が終了するたびに演算処理を行う必要がなくなる。
【0051】
4.均一化要素が異なる第1応用形態
第1実施形態のステップS2において、均一化選択部82は、均一化要素として三つの単位層を用いるが、均一化要素として一つの三次元造形物Mを用いてもよい。この場合、1回目のステップS3で、均一化選択部82は、第1ノズル51~第8ノズル58がすべて未使用品であることから、図9Aに示された造形ヘッド4の標準位置を選択する。そして、均一化選択部82は、均一化要素の造形(三次元造形物Mの製造)が終了するまで、造形ヘッド4の標準位置を変更しない。つまり、均一化選択部82は、第2ノズル52~第6ノズル56を自動選択したことになる。したがって、第1ノズル51、第7ノズル57、および第8ノズル58は、使用されない。
【0052】
次のステップS4で、第1~第12単位層の各々を造形するための描画および固化が12回繰り返される。次のステップS5で、演算部81は、複数の造形ノズル5の各々が造形インクの吐出に使用された使用率を演算する。演算の結果は、図9Bに示される。図示されるように、第1ノズル51、第7ノズル57、および第8ノズル58の使用率は0%である。次のステップS6で、第12単位層の造形が終了して三次元造形物Mが製造されているので、動作フローはステップS8に分岐される。ステップS8で、駆動部2によりステージ3および製造された三次元造形物Mが機外に搬出される。この後、動作フローは、ステップS1に戻される。
【0053】
2回目のステップS1で、駆動部2により二つ目のステージ3が描画エリア23まで搬入される。2回目のステップS3で、均一化選択部82は、図9Bに示された使用率を参照し、使用率が低い第7ノズル57および第8ノズル58を含むように、第4ノズル54~第8ノズル58を選択する。この後、2回目のステップS4で、二個目の三次元造形物Mが製造される。さらに、2回目のステップS5で、演算部81は、図10Bに示された使用率を演算する。図示されるように、第1ノズル51の使用率は、0%のままである。
【0054】
この後、動作フローは、ステップS8を経由してステップS1に戻され、三つ目のステージ3が描画エリア23まで搬入される。3回目のステップS3で、均一化選択部82は、図10Bに示された使用率を参照し、使用率が0%の第1ノズル51を含むように、第1ノズル51~第5ノズル55を選択する。この後の3回目のステップS5で、演算部81は、図11Bに示された使用率を演算する。図示されるように、第1ノズル51の使用率は、6%まで増加したが、他と比較して未だ低い。したがって、四つ目のステージ3に対して、均一化選択部82は、図11Bと同様に、第1ノズル51~第5ノズル55を選択する。
【0055】
5.オペレータの指示にしたがう第2応用形態
第1実施形態のステップS3において、均一化選択部82は、複数の造形ノズル5の各々の使用率に基づいて、使用する造形ノズル5を自動選択するが、オペレータの指示にしたがうようにしてもよい。この場合、2回目のステップS3で、均一化選択部82は、図5Bに示された使用率をオペレータに提示し、オペレータの指示にしたがって使用する造形ノズル5を選択する。
【0056】
例えば、調子の悪い第8ノズル58の使用を禁止する指示をオペレータが行った場合を想定する。この場合、均一化選択部82は、第1実施形態における二つの選択肢、すなわち、第1ノズル51~第4ノズル54、または、第5ノズル55~第8ノズル58のうち、必然的に前者を選択する。さらに、3回目のステップS3で、均一化選択部82は、図12に示されるように、第8ノズル58を除外して、第3ノズル53~第7ノズル57を選択する。図12図7Aを比較すればわかるように、オペレータの指示により、使用する造形ノズル5が一個分だけずらされる。
【0057】
6.第2実施形態の三次元造形機
次に、第2実施形態の三次元造形機について、図13Aおよび図13Bを参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態の三次元造形機は、調整機構6の有無および均一化選択部82の機能が第1実施形態と相違し、その他の部位が第1実施形態と同じである。第2実施形態において、調整機構6は省略され、造形ヘッド4は、ヘッド取り付け座61に固定的に設けられ、常に標準位置に位置する。
【0058】
また、均一化選択部82は、ステージ3の直交方向における三次元造形物Mの載置位置を調整する。具体的に、均一化選択部82は、奇数番目に製造する三次元造形物Mの載置位置をステージ3の右側に寄せる。これによれば、均一化選択部82は、図13Aに示されるように、第4ノズル54~第8ノズル58を選択したことになる。また、均一化選択部82は、偶数番目に製造する三次元造形物Mの載置位置をステージ3の左側に寄せる。これによれば、均一化選択部82は、図13Bに示されるように、第1ノズル51~第5ノズル55を選択したことになる。このように、ステージ3における三次元造形物Mの載置位置を固定せず、直交方向に調整することで、八個の造形ノズル5の全てを使用して、使用率を均一化する効果が生じる。
【0059】
7.第3実施形態の三次元造形システム1S
次に、第3実施形態の三次元造形システム1Sについて、図14を参考にして説明する。三次元造形システム1Sは、三次元造形機1Aおよびプログラム生成部9で構成される。三次元造形機1Aは、第1実施形態と同様の駆動部2、ステージ3、造形ヘッド4、複数の造形ノズル5、調整機構6、および固化部7を備え、制御装置8Aの機能が第1実施形態と相違する。制御装置8Aは、プログラム生成部9が生成した制御プログラム91にしたがって駆動部2などを制御する。駆動部2は、制御プログラム91に基づいて造形ヘッド4がステージ3の上方を相対移動するように駆動する。
【0060】
プログラム生成部9は、三次元造形機1Aと別体のコンピュータ装置を用いて構成される。プログラム生成部9は、少なくとも第1実施形態で説明した演算部81および均一化選択部82の機能を有する制御プログラム91を生成する。制御プログラム91は、三次元造形機1Aに転送されて実行される。あるいは、三次元造形機1Aは、プログラム生成部9内の制御プログラム91にアクセスして実行する。第3実施形態の三次元造形システム1Sにおいて、三次元造形機1Aは、第1実施形態、第1応用形態、および第2応用形態と同じ動作を行うことができる。
【0061】
8.実施形態の応用および変形
なお、均一化要素として、三つの単位層や一つの三次元造形物M以外を用いることができる。例えば、均一化要素として一つの単位層を用いる場合、第1単位層を描画する造形ノズル5と、第2単位層を描画する造形ノズル5とを異なるものにすることができる。また、均一化要素として二つの三次元造形物Mを用いる場合、二つの三次元造形物Mを造形する造形ノズル5は共通化され、三つ目の三次元造形物Mを造形する造形ノズル5は異なるものとされる。
【0062】
また、均一化選択部82は、造形ヘッド4がステージ3の上方を相対移動する移動回数を増加させないことを条件とするが、この条件を取り払ってもよい。この場合、例えば、第1単位層の描画を2回に分け、1回目に第1ノズル51および第2ノズル52を用いて第1単位層の半分を描画し、2回目に第7ノズル57および第8ノズル58を用いて第1単位層の残り半分を描画する。これによれば、複数の造形ノズル5の使用率の均一化の程度を格段に向上でき、一方で製造に掛かる所要時間が増加する。その他にも、第1~第3実施形態は、様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、1A:三次元造形機 1S:三次元造形システム 2:駆動部 21:搬入出エリア 22:固化エリア 23:描画エリア 3:ステージ 4:造形ヘッド 5:造形ノズル 51~58:第1ノズル~第8ノズル 6:調整機構 61:ヘッド取り付け座 7:固化部 8、8A:制御装置 81:演算部 82:均一化選択部 83:制御部 9:プログラム生成部 91:制御プログラム
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14