(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】部品装着機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
H05K13/04 A
(21)【出願番号】P 2022556310
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2020039616
(87)【国際公開番号】W WO2022085131
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 芳行
(72)【発明者】
【氏名】日野 祐樹
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/102550(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/029750(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/163394(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/167684(WO,A1)
【文献】特開2020-102478(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に移動可能に支持されるヘッド本体と、
前記ヘッド本体に昇降可能に支持される昇降部材と、
前記昇降部材に上下方向に移動可能に支持され、部品を保持する部品保持部と、
前記昇降部材と前記部品保持部との間に介在し、前記部品保持部を前記昇降部材に対して基準位置に保持する弾性体と、
前記部品保持部が前記弾性体の付勢力に抗して前記昇降部材に対して前記基準位置から所定位置まで相対移動したことを検出する検出部と、
前記昇降部材の昇降動作が開始された際の所定加速期間は、前記検出部による検出を休止する制御を行う規制部と、
を備える、部品装着機。
【請求項2】
前記部品装着機は、前記検出部による検出がなされた場合に、前記昇降動作を変更する動作制御部を備え、
前記規制部は、前記所定加速期間は、前記動作制御部による前記昇降動作の変更を禁止する、請求項1に記載された部品装着機。
【請求項3】
前記動作制御部は、前記検出部による検出がなされた場合に、前記部品が移載される基板に前記部品が接触したとして、前記昇降動作を変更する、請求項2に記載された部品装着機。
【請求項4】
前記動作制御部は、前記昇降部材の下降により前記部品が基板に移載される過程において前記検出部による検出がなされた場合に、前記昇降動作を変更する、請求項2又は3に記載された部品装着機。
【請求項5】
前記動作制御部は、前記過程において前記所定加速期間が経過した後、前記検出部による検出がなされた場合に、前記昇降動作を変更する、請求項4に記載された部品装着機。
【請求項6】
前記動作制御部及び前記規制部は、前記基台側に設けられた本機制御装置に含まれており、
前記検出部は、前記昇降部材に取り付けられていると共に、前記ヘッド本体側に設けられて前記本機制御装置に通信接続されるヘッド制御装置に信号入力されており、
前記本機制御装置は、
前記所定加速期間が経過するか否かを判別する経過判別部と、
前記経過判別部により前記所定加速期間が経過したと判別された場合に、前記ヘッド制御装置に対して前記検出部による検出を許可する許可信号を出力する許可指示出力部と、
を有し、
前記ヘッド制御装置は、
前記許可信号が入力されかつ前記検出部による検出がなされた場合に、所定検出信号をオン状態に保持する状態保持部と、
前記本機制御装置に対して前記所定検出信号を出力する信号出力部と、
を有し、
前記動作制御部は、オン状態の前記所定検出信号が入力された場合に、前記昇降動作を変更する、請求項5に記載された部品装着機。
【請求項7】
前記本機制御装置は、前記動作制御部による前記昇降動作の変更後、基板への前記部品の移載が完了した場合に、前記ヘッド制御装置に対して前記検出部による検出を禁止する禁止信号を出力する禁止指示出力部を有し、
前記ヘッド制御装置は、前記禁止信号が入力された場合に、前記所定検出信号をオフ状態に切り替える信号切替部を有する、請求項6に記載された部品装着機。
【請求項8】
前記禁止指示出力部は、前記動作制御部による前記昇降動作の変更後、基板への前記部品の移載が完了しかつ前記昇降部材が所定高さまで上昇した場合に、前記ヘッド制御装置に対して前記禁止信号を出力する、請求項7に記載された部品装着機。
【請求項9】
前記動作制御部は、前記昇降動作の変更として昇降速度を減少させる減速処理を行う、請求項2乃至8の何れか一項に記載された部品装着機。
【請求項10】
前記所定位置は、前記基準位置よりも前記弾性体の収縮方向に定められた位置である、請求項1乃至9の何れか一項に記載された部品装着機。
【請求項11】
前記検出部は、前記昇降部材に固定された光電センサである、請求項1乃至10の何れか一項に記載された部品装着機。
【請求項12】
前記所定加速期間は、前記昇降部材が前記昇降動作を開始してから所定距離移動するまでの期間である、請求項1乃至11の何れか一項に記載された部品装着機。
【請求項13】
基台に移動可能に支持されるヘッド本体と、
前記ヘッド本体に昇降可能に支持される昇降部材と、
前記昇降部材に上下方向に移動可能に支持され、部品を保持する部品保持部と、
前記昇降部材と前記部品保持部との間に介在し、前記部品保持部を前記昇降部材に対して基準位置に保持する弾性体と、
前記部品保持部が前記弾性体の付勢力に抗して前記昇降部材に対して前記基準位置から所定位置まで相対移動したことを検出する検出部と、
を有する部品装着機の制御方法であって、
前記昇降部材の昇降動作が開始された際の所定加速期間は、前記検出部による検出を休止する制御を行う規制ステップを備える、部品装着機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品装着機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品を保持して基板に装着する部品装着機が知られている(例えば、特許文献1参照)。部品装着機は、部品の保持から基板への部品の移載までの処理を行う装着ヘッドを備えている。装着ヘッドは、ヘッド本体と、昇降部材と、部品保持部と、を有している。ヘッド本体は、部品装着機の基台に水平方向に移動可能に支持されている。昇降部材は、ヘッド本体に昇降可能に支持されている。部品保持部は、電子部品などの部品を保持する吸着ノズルなどである。部品保持部は、昇降部材の下端に取り付けられている。装着ヘッドは、部品保持部に保持されている部品を、ヘッド本体の水平移動により水平方向に移動させると共に、昇降部材の昇降により上下方向に移動させて、基板に移載する。
【0003】
部品保持部は、昇降部材に弾性体であるスプリングを介して上下方向に移動可能に支持されている。昇降部材が下降して部品保持部の部品が移載される際にその部品が基板に接触すると、部品保持部がスプリングの付勢力に抗して昇降部材に対して基準位置よりも収縮方向に相対移動する。部品装着機は、部品保持部がスプリングの付勢力に抗して昇降部材に対して基準位置よりも収縮方向の所定位置まで相対移動したことを検出する検出部を備えている。検出部は、昇降部材に取り付けられた光電センサなどである。部品移載時に検出部により部品保持部が上記の所定位置まで相対移動したことが検出されると、部品が基板に接触したと認識されて、昇降部材の昇降動作が変更され、具体的には、下降速度が減少され或いはその下降が停止されてその後に上昇が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昇降部材が下降を開始する際には、部品保持部が慣性力によりスプリングの付勢力に抗して昇降部材に対して相対的に上昇する。このため、部品装着のために昇降部材が下降し始めた際にも、検出センサにより部品保持部が上記の所定位置まで相対移動したことが検出されることがある。従って、部品装着時、昇降部材の昇降により部品が基板に接触したと誤認識されるおそれがあり、昇降部材の昇降動作の変更が適切に行われなくなる可能性がある。
【0006】
本明細書は、検出部による昇降部材に対する部品保持部の相対移動の検出について昇降部材の昇降動作の開始時の加速期間を排除することで、その検出部による検出を適切に行うことが可能な部品装着機及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、基台に移動可能に支持されるヘッド本体と、前記ヘッド本体に昇降可能に支持される昇降部材と、前記昇降部材に上下方向に移動可能に支持され、部品を保持する部品保持部と、前記昇降部材と前記部品保持部との間に介在し、前記部品保持部を前記昇降部材に対して基準位置に保持する弾性体と、前記部品保持部が前記弾性体の付勢力に抗して前記昇降部材に対して前記基準位置から所定位置まで相対移動したことを検出する検出部と、前記昇降部材の昇降動作が開始された際の所定加速期間は、前記検出部による検出を休止する制御を行う規制部と、を備える、部品装着機を開示する。
【0008】
また、本明細書は、基台に移動可能に支持されるヘッド本体と、前記ヘッド本体に昇降可能に支持される昇降部材と、前記昇降部材に上下方向に移動可能に支持され、部品を保持する部品保持部と、前記昇降部材と前記部品保持部との間に介在し、前記部品保持部を前記昇降部材に対して基準位置に保持する弾性体と、前記部品保持部が前記弾性体の付勢力に抗して前記昇降部材に対して前記基準位置から所定位置まで相対移動したことを検出する検出部と、を有する部品装着機の制御方法であって、前記昇降部材の昇降動作が開始された際の所定加速期間は、前記検出部による検出を休止する制御を行う規制ステップを備える、部品装着機の制御方法を開示する。
【0009】
本開示によれば、検出部が、部品保持部が弾性体の付勢力に抗して昇降部材に対して基準位置から所定位置まで相対移動したことを検出するのに、昇降部材の昇降動作が開始された際の所定加速期間を排除することができる。従って、検出部による検出を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る部品装着機の構成図である。
【
図2】実施形態の部品装着機が備える装着ヘッドの構成図である。
【
図3】実施形態の部品装着機において装着ヘッドの部品保持部が昇降部材に対して基準位置にあるときに検出センサの投光部の照射する光が部品保持部に遮蔽されることなく受光部に受光される状況を表した図である。
【
図4】実施形態の部品装着機において部品が基板に接触したことにより装着ヘッドの部品保持部が昇降部材に対して収縮方向に相対移動したときに検出センサの投光部の照射する光が部品保持部に遮蔽される状況を表した図である。
【
図5】実施形態の部品装着機において昇降部材の下降動作開始時に装着ヘッドの部品保持部が昇降部材に対して収縮方向に相対移動したときに検出センサの投光部の照射する光が部品保持部に遮蔽される状況を表した図である。
【
図6】実施形態の部品装着機における本機制御装置及びヘッド制御装置での制御処理及び両装置間での情報の授受を表した一例のタイムチャートである。
【
図7】実施形態の部品装着機において本機制御装置及びヘッド制御装置が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.部品装着機の構成
一実施形態に係る部品装着機1の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
部品装着機1は、回路基板などの基板2に対して電子部品などの部品3を装着する装置である。基板2への部品3の装着は、例えばはんだ付けで行われる。部品装着機1は、
図1に示す如く、基板搬送装置20と、部品供給装置30と、部品移載装置40と、を備えている。基板搬送装置20、部品供給装置30、及び部品移載装置40はそれぞれ、部品装着機1の本体部である基台10に取り付けられている。
【0012】
基板搬送装置20は、基板2を搬送する装置である。基板搬送装置20は、一対のガイドレール21,22と、コンベアベルト23と、クランプ装置(図示せず)と、を有している。一対のガイドレール21,22は、間隔を空けて互いに平行になるように配置されており、基板2をX方向に向けて案内する。コンベアベルト23は、基板2を載置可能なベルト部材であって、電動モータなどによって輪転可能である。基板2は、一対のガイドレール21,22により案内された状態で、コンベアベルト23により部品装着機1の機内に搬入されてX方向に搬送される。クランプ装置は、基板2がX方向の部品装着位置まで搬送された際に、その基板2を位置決めする。基板2は、部品装着位置で部品3の装着が完了した後、部品装着機1の機外に搬出される。
【0013】
部品供給装置30は、基板2に装着する部品3を部品移載位置に供給する装置である。部品供給装置30は、フィーダ31を有している。フィーダ31は、例えばリールに巻回されたキャリアテープをY方向に送り移動させて、そのキャリアテープに収容されている部品3を部品移載位置まで搬送する。フィーダ31は、基台10に取り付けられたスロット32に着脱可能に装着される。スロット32は、X方向に並んで複数設けられている。部品供給装置30は、複数のフィーダ31を用いて複数種類の部品3を部品移載位置に供給することができる。
【0014】
部品移載装置40は、部品移載位置まで供給された部品3を、部品装着位置に位置決めされている基板2に移載する装置である。部品移載装置40は、Y軸スライダ41と、X軸スライダ42と、装着ヘッド50と、ヘッド制御装置60と、を有している。
【0015】
Y軸スライダ41は、Y軸サーボモータ41aにより、基板2の搬送方向であるX方向に直交するY方向に延びるガイドレール41bに沿って移動可能である。X軸スライダ42は、Y軸スライダ41にX方向に移動可能に取り付けられている。X軸スライダ42は、Y軸スライダ41のY方向への移動に伴ってそのY軸スライダ41に一体で基台10に対してY方向へ移動すると共に、X軸サーボモータ42aにより基台10に対してX方向へ移動する。
【0016】
装着ヘッド50は、部品移載位置に供給された部品3を保持し、その後、その部品3を部品装着位置に位置決めされている基板2まで位置移動させて、その部品3の保持を解除してその部品3を基板2に装着する部材である。装着ヘッド50は、X軸スライダ42に着脱可能かつ交換可能に取り付けられている。装着ヘッド50は、X方向及びY方向に(すなわち、水平方向に)移動可能であると共に、X方向及びY方向の双方に直交するZ方向に昇降可能である。装着ヘッド50は、対象とする部品3の種類やサイズ,形状等に応じて適宜変更可能である。
【0017】
装着ヘッド50は、ヘッド本体51と、昇降部材52と、部品保持部53と、昇降装置54と、回転装置55と、を有している。ヘッド本体51は、基台10に水平方向に移動可能に支持される部材である。すなわち、ヘッド本体51は、X軸スライダ42に取り付け固定されており、X軸スライダ42に一体で水平方向に移動可能である。
【0018】
昇降部材52は、ヘッド本体51にZ方向に昇降可能に支持されるシリンジである。昇降部材52は、また、ヘッド本体51にZ軸回りに回動可能に支持されている。昇降部材52は、ヘッド本体51の軸保持部51aに昇降可能かつ回動可能に保持されている。尚、昇降部材52は、ヘッド本体51に対して複数同時に装着されてよく、それぞれ個別に昇降可能かつ回動可能であってよい。
【0019】
昇降部材52は、昇降装置54によりヘッド本体51に対して昇降することが可能であると共に、回転装置55によりヘッド本体51に対して回動することが可能である。昇降部材52は、昇降装置54による昇降により部品保持部53をヘッド本体51に対して上下方向に移動(昇降)させると共に、回転装置55による回転により部品保持部53をヘッド本体51に対して回動させる。
【0020】
昇降装置54は、昇降部材52をヘッド本体51に対して昇降させる装置である。昇降装置54は、リニアモータ54aと、昇降駆動部材54bと、を有している。リニアモータ54aは、昇降部材52をヘッド本体51に対して昇降させる力を発生する。リニアモータ54aは、ヘッド本体51のモータ保持部51bに固定的に保持されている。
【0021】
昇降駆動部材54bは、リニアモータ54aの発生する力により昇降部材52をヘッド本体51に対して昇降させる駆動部材である。昇降駆動部材54bは、ヘッド本体51の軸保持部51aの径方向外方において昇降部材52の軸線に沿って上下方向に延在している。昇降駆動部材54bは、リニアモータ54aの駆動によりヘッド本体51に対して上下方向に昇降する。昇降駆動部材54bは、ヘッド本体51のガイド51cにより昇降可能に案内される。昇降駆動部材54bは、上下方向中央部に設けられた係合部54cを有している。係合部54cは、昇降部材52の係合部52aに係合されている。昇降駆動部材54bは、係合部54cが昇降部材52の係合部52aに係合された状態でリニアモータ54aの駆動により昇降することで、昇降部材52にその昇降部材52を昇降させる力を伝達する。
【0022】
回転装置55は、昇降部材52をヘッド本体51に対して回動させる装置である。回転装置55は、回転モータ55aを有している。回転モータ55aは、昇降部材52をヘッド本体51に対して回動させる力を発生する。回転モータ55aは、ヘッド本体51に固定的に保持されている。
【0023】
部品保持部53は、部品を保持する部材である。部品保持部53は、例えば、部品移載位置に到達した部品3を負圧などを用いて吸着すると共に、その吸着した部品をその解除により部品装着位置に位置決めされた基板2上に載置する吸着ノズルなどである。部品保持部53は、昇降部材52に上下方向に移動可能に支持されている。部品保持部53は、昇降部材52の昇降及び回転に伴って一体で昇降すると共に回転する。部品保持部53は、装着ヘッド50の作動開始前は、部品移載位置よりも高くかつ部品装着位置に位置決めされている基板2の位置よりも高い退避位置に退避されている。尚、部品保持部53は、昇降部材52に対して複数同時に装着されてよい。また、部品保持部53は、昇降部材52に着脱可能かつ交換可能に装着されてよい。
【0024】
装着ヘッド50は、スプリング56を有している。スプリング56は、昇降部材52と部品保持部53との間に介在するコイルスプリングである。スプリング56は、部品保持部53が昇降部材52に対して上下方向に移動するのを許容している。部品保持部53は、常態では、昇降部材52に対して部品保持部53の重力とスプリング56の付勢力との釣り合い位置に保持されている。すなわち、スプリング56は、昇降部材52と部品保持部53との上下方向の相対移動を許容しつつ、その相対移動時に部品保持部53を昇降部材52との釣り合い位置に向けて付勢する。
【0025】
昇降部材52は、スプリング56の上端を支持するフランジ部52bを有している。フランジ部52bは、昇降部材52の軸本体部の下端部に固定されている。フランジ部52bは、スプリング56の上端部を保持する保持筒部52cを有している。保持筒部52cは、フランジ部52bの下面から下方へ円筒状に突出するように形成されている。
【0026】
部品保持部53は、軸部53aと、先端ノズル部53bと、フランジ部53cと、を有している。軸部53aは、昇降部材52の中心に開いた軸孔に内挿される管状の部位である。先端ノズル部53bは、部品3を吸着保持する管状の部位である。先端ノズル部53bは、軸部53aの下端に固定されている。先端ノズル部53bは、軸部53aのエア孔に連通するエア孔を有している。先端ノズル部53bは、その先端ノズル部53bのエア孔に軸部53aのエア孔を通じて負圧が導かれることにより、その先端ノズル部53bの下端に部品3を吸着する。
【0027】
フランジ部53cは、スプリング56の下端を支持する部位である。フランジ部53cは、先端ノズル部53bの上端部に固定されている。フランジ部53cは、スプリング56の下端部を保持する保持筒部53dを有している。保持筒部53dは、フランジ部53cの上面から上方へ円筒状に突出するように形成されている。
【0028】
部品装着機1は、本機制御装置70と、部品カメラ81と、基板カメラ82と、を備えている。部品カメラ81は、部品保持部53に保持されている部品3を下方から撮像するカメラである。部品カメラ81は、部品装着機1の基台10に固定されている。部品カメラ81は、光軸が上方に向くように基台10に設置されている。基板カメラ82は、基板2を上方から撮像するカメラである。基板カメラ82は、部品移載装置40のX軸スライダ42に固定されている。基板カメラ82は、光軸が下方に向くようにX軸スライダ42に設置されている。部品カメラ81の撮像した画像データ及び基板カメラ82の撮像した画像データは、本機制御装置70に供給される。
【0029】
本機制御装置70は、基板搬送装置20、部品供給装置30、及び部品移載装置40の制御を行う装置である。本機制御装置70は、CPUやROM,RAMなどが設けられたコンピュータを主体に構成されている。本機制御装置70には、部品装着機1が設置される工場のサーバや部品装着機1に設けられる各種センサなどから送信される情報や上記のカメラ81,82からの画像データなどが入力される。本機制御装置70は、各種制御プログラムに従って、入力情報に基づいて駆動を指令する制御信号を生成して、各装置20,30,40に対して出力する。
【0030】
例えば、本機制御装置70は、部品カメラ81からの画像データを処理して、部品保持部53に保持されている部品3の保持位置や保持姿勢を検出する。また、本機制御装置70は、基板カメラ82からの画像データを処理して、部品装着位置に位置決めされている基板2の位置などの状態を検出する。そして、本機制御装置70は、その部品3の保持位置や保持姿勢及びその基板2の状態などに基づいて、実際に基板2に部品3を装着する位置を装着予定位置から補正して設定し、その設定した装着位置に合わせて部品保持部53の目標位置及び回転角度を補正する。本機制御装置70は、部品移載装置40に対して、その補正後の目標位置及び回転角度に応じて部品保持部53を移動させる指令を行うと共に、部品保持部53での部品3の保持を実行する或いは解除する指令を行う。
【0031】
基板搬送装置20、部品供給装置30、及び部品移載装置40はそれぞれ、本機制御装置70からの駆動指令に従って作動される。基板搬送装置20が作動されると、基板2がX方向に搬送されて部品装着位置に位置決めされる。部品供給装置30が作動されると、部品3がY方向に送り移動されて部品移載位置に供給される。部品移載装置40が作動されると、装着ヘッド50の部品保持部53での部品3の保持/保持解除が実行されると共に、その装着ヘッド50が位置移動されて部品保持部53を部品移載位置と基板2の位置との間で移動させる。
【0032】
部品移載装置40のヘッド制御装置60は、装着ヘッド50を制御する装置である。具体的には、この制御対象は、部品保持部53のX方向への位置移動、Y方向への位置移動、Z方向への位置移動、及びZ軸回りの位置移動、並びに装着ヘッド50(具体的には、部品保持部53)での部品3の保持/保持解除である。ヘッド制御装置60は、CPUやROM,RAMなどが設けられたコンピュータを主体に構成されている。ヘッド制御装置60は、本機制御装置70に接続されている。ヘッド制御装置60は、本機制御装置70からの駆動指令に従って装着ヘッド50を制御する。
【0033】
ヘッド制御装置60は、上記したY軸サーボモータ41a、X軸サーボモータ42a、リニアモータ54a、及び回転モータ55aに接続されていると共に、エア負圧源のバルブ(図示せず)に接続されている。ヘッド制御装置60は、部品保持部53が所望のXYZ位置に移動されるように各モータ41a,42a,54a,55aを駆動させると共に、適切な位置で部品保持部53での部品3の保持/保持解除が行われるようにエア負圧源のバルブを開閉駆動させる。
【0034】
各モータ41a,42a,54a,55a及び上記のバルブはそれぞれ、ヘッド制御装置60からの駆動指令に従って駆動される。各モータ41a,42a,54a,55aがそれぞれ駆動されると、Y軸スライダ41がY方向に移動され、X軸スライダ42がX方向に移動され、装着ヘッド50の昇降部材52がZ方向に昇降され、その昇降部材52がZ軸回りに回動されることで、部品保持部53が所望のXYZ位置まで移動されて保持される。また、バルブが開閉駆動されると、部品保持部53に負圧が導かれることで部品3が保持され、或いは、その負圧が無くなることでその部品3の保持が解除される。
【0035】
部品装着機1は、検出センサ90を備えている。検出センサ90は、部品保持部53がスプリング56の付勢力に抗して昇降部材52に対して基準位置から所定位置まで相対移動したことを検出するセンサである。尚、基準位置とは、部品保持部53の重力とスプリング56の付勢力とが釣り合う位置のことである。また、所定位置とは、装着ヘッド50を用いた基板2への部品3の装着時に部品保持部53に保持されている部品3が基板2(尚、基板2上に塗布されたはんだを含む。)に接触した際に部品保持部53に作用する反力によって、部品保持部53が昇降部材52に対して上方へ相対移動する際に達する高さ位置のことであって、上記の基準位置よりもスプリング56の収縮方向の位置に定められている。
【0036】
検出センサ90は、投光部91と受光部92とを有する透過型の光電センサである。検出センサ90は、昇降部材52に固定されており、昇降部材52の昇降に伴って一体で昇降する。投光部91は、光を照射する部位である。受光部92は、投光部91から照射された光を受光する部位である。
【0037】
投光部91及び受光部92は、昇降部材52に互いに略同じ高さ位置に取り付けられている。投光部91及び受光部92は、
図3に示す如く部品保持部53が上記の基準位置に位置するときに投光部91の照射した光が昇降部材52及び部品保持部53に遮蔽されることなく直接に受光部92に受光される一方、
図4に示す如く部品保持部53が上記の基準位置よりもスプリング56の収縮方向の所定位置に位置するときにその投光部91の光が部品保持部53に遮蔽されることで受光部92に受光されないように、配置されている。
【0038】
検出センサ90は、ヘッド制御装置60に接続されている。検出センサ90の検出結果(具体的には、受光部92での受光有無の結果)は、ヘッド制御装置60に信号入力されている。ヘッド制御装置60は、検出センサ90から入力される信号に基づいて部品保持部53が昇降部材52に対してスプリング収縮方向の所定位置まで相対移動したか否かを判別する。ヘッド制御装置60は、後に詳述する如く、その判別結果に応じた信号を本機制御装置70に供給する。本機制御装置70は、ヘッド制御装置60から供給される信号に基づいて、装着ヘッド50の昇降部材52の昇降動作を制御する。
【0039】
2.装着ヘッドの動作
本機制御装置70は、部品移載位置に供給された部品3が部品装着位置に位置決めされた基板2に装着される過程で、部品移載装置40の装着ヘッド50を制御する。具体的には、装着ヘッド50の制御は、以下の工程(A)~(E)の順に行われる。
(A)部品移載位置への部品保持部53の移動(尚、この移動には、部品移載位置よりも高い部品保持部53が退避される退避位置からの下降が含まれる)。
(B)部品保持部53での部品3の保持。
(C)部品装着位置に位置決めされている基板2への部品保持部53の移動(尚、この移動には、部品移載位置からの上昇、部品カメラ81が部品3を撮像する撮像位置への移動、基板2への下降が含まれる)。
(D)部品保持部53での部品3の保持解除。
(E)部品保持部53の退避移動(尚、この移動には、退避位置への上昇が含まれる)。
【0040】
まず、装着ヘッド50は、工程(A)で、部品保持部53に部品3が保持されていない状態で、部品供給装置30により部品移載位置に供給された部品3の部品保持部53への保持を実現すべく、部品保持部53を退避位置から部品移載位置まで移動させる。装着ヘッド50は、工程(A)で部品保持部53を部品移載位置まで移動させた後、工程(B)で、部品保持部53に部品3を保持すべく、部品保持部53の先端ノズル部53bの先端に負圧を供給する。かかる処理が行われると、部品移載位置の部品3が部品保持部53の先端ノズル部53bの先端に吸着されて保持される。
【0041】
装着ヘッド50は、工程(B)で部品保持部53に部品3を保持させた後、工程(C)で、その部品3を部品カメラ81に撮像させるべく、部品保持部53を部品カメラ81の撮像位置まで移動させると共に、その部品3を基板2に移載すべく、部品保持部53を部品装着位置に位置決めされている基板2まで移動させる。装着ヘッド50は、工程(C)で部品保持部53を基板2まで移動させた後、工程(D)で、部品保持部53での部品3の保持を解除すべく、部品保持部53への負圧の供給を停止する。かかる処理が行われると、部品保持部53での部品3の保持が解除され、その部品3が基板2上に載置されてはんだを介して基板2に装着される。そして、装着ヘッド50は、工程(D)で部品保持部53での部品3の保持を解除した後、工程(E)で、その部品保持部53を退避位置まで移動させる。
【0042】
また特に、上記の工程(C)で部品保持部53が部品3を保持した状態で基板2まで移動される過程では、その部品3が基板2に接触すること(すなわち、接触検出)が検出センサ90を用いて検出され、その接触検出がなされた場合に装着ヘッド50において昇降部材52ひいては部品保持部53の昇降動作を変更する制御(以下適宜、動作変更制御と称す。)が行われる。この動作変更制御は、一般的には、昇降部材52が下降する下降速度を減少させる減速動作、その下降を停止させる停止動作、又はその下降から上昇へ切り替える切替動作を含む。
【0043】
本機制御装置70は、動作制御部71を有している。動作制御部71は、上記の工程(C)で、検出センサ90による検出がなされた場合、具体的には、投光部91の照射した光が受光部92に受光されなくなることにより、部品保持部53がスプリング56の付勢力に抗して昇降部材52に対して基準位置よりもスプリング収縮方向の所定位置まで相対移動することが検出された場合に、上記の動作変更制御を行う部位である。
【0044】
基板2への部品3の装着時において、検出センサ90により部品保持部53がスプリング56の付勢力に抗して昇降部材52に対して基準位置よりも収縮方向の所定位置まで相対移動することが検出された場合は、一般的には、部品保持部53の保持する部品3が基板2に接触してその反力により部品保持部53が昇降部材52に対して上昇したと判断できる。そして、この場合においてダッチダウン制御動作により部品保持部53の下降速度の減速等が行われると、基板2に装着される部品3への衝撃が緩和される。従って、基板2への部品3の装着時における部品3の損傷を防止することができる。
【0045】
一方、上記の工程(C)において昇降部材52の昇降動作(具体的には、下降動作)が開始されるときには、部品保持部53に、その部品保持部53をスプリング56の付勢力に抗して昇降部材52に対して基準位置よりも収縮方向に相対移動させる慣性力が作用する。かかる慣性力が大きいと、基板2への部品3の接触と同じく、
図5に示す如く、部品保持部53がスプリング56の付勢力に抗して昇降部材52に対して基準位置よりも収縮方向の所定位置まで相対移動することがあるので、この場合は、部品3が基板2に接触したと誤検出されるおそれがある。
【0046】
そこで、本機制御装置70は、規制部72を有している。規制部72は、工程(C)で昇降部材52の昇降動作(具体的には、下降動作)が開始された際にその下降動作に伴う慣性力が作用する所定加速期間において動作制御部71による動作変更制御を禁止する部位である。
【0047】
上記の所定加速期間は、工程(C)での昇降部材52の下降開始時に部品保持部53に作用する慣性力によって、部品保持部53をスプリング56の付勢力に抗して昇降部材52に対して基準位置よりも収縮方向の所定位置まで相対移動させる加速が生じる可能性がある期間のことである。尚、この所定加速期間は、上記の慣性力の影響によって部品保持部53が昇降部材52に対して上下動する状態が継続する期間であってよい。また、この所定加速期間は、例えば、昇降部材52が下降動作が開始された高さ位置から上記の加速が無くなる高さ位置(すなわち、等速になる高さ位置)まで下降する期間、又は、昇降部材52の下降動作が開始された時点から上記の加速が無くなる時点(すなわち、等速になる時点)までの期間である。
【0048】
上記の所定加速期間に動作制御部71による動作変更制御が禁止されれば、部品3が基板2に接触したとの誤検出に基づいて昇降部材52の昇降動作が変更されるのを回避することができ、その昇降動作を変更するタイミングとしてその昇降動作(具体的には、下降動作)の開始時の加速期間を排除することができるので、その昇降動作の変更すなわち動作変更制御を適切に行うことができる。
【0049】
3.本機制御装置及びヘッド制御装置での制御処理
本機制御装置70は、規制部72での機能を実現するため、ヘッド制御装置60との間で情報の授受を行う。本機制御装置70は、経過判別部73と、許可指示出力部74と、禁止指示出力部75と、を有している。また、ヘッド制御装置60は、状態保持部61と、信号出力部62と、信号切替部63と、を有している。
【0050】
経過判別部73は、装着ヘッド50の部品保持部53での部品3の保持後、工程(C)で昇降部材52の下降動作が開始された際の所定加速期間が経過するか否かを判別する部位である。許可指示出力部74は、経過判別部73により所定加速期間が経過したと判別された場合に、ヘッド制御装置60に対して検出センサ90による検出を許可して有効とする許可信号を出力する部位である。禁止指示出力部75は、工程(C)の完了後、工程(D)での部品3の保持解除によって基板2への部品3の移載が完了した場合に、ヘッド制御装置60に対して検出センサ90による検出を禁止して無効とする禁止信号を出力する部位である。
【0051】
状態保持部61は、許可指示出力部74から出力された許可信号が入力されかつ検出センサ90による検出がなされた場合に、所定検出信号をオン状態に保持する部位である。この所定検出信号は、昇降部材52の下降動作の開始時における所定加速期間の経過後、部品保持部53がスプリング56の付勢力に抗して昇降部材52に対して基準位置よりもスプリング56の収縮方向の所定位置まで相対移動した場合に、オン状態になる。
【0052】
信号出力部62は、本機制御装置70に対して所定検出信号を出力する部位である。本機制御装置70は、信号出力部62からの所定検出信号に基づいて、上記の所定加速期間を除いた期間で部品保持部53が昇降部材52に対して上記の所定位置まで相対移動したか否かを判別することができる。
【0053】
信号切替部63は、禁止指示出力部75から出力された禁止信号が入力された場合に、所定検出信号をオフ状態に切り替える部位である。この所定検出信号は、オン状態になった後、基板2への部品3の移載が完了した場合に、オン状態からオフ状態へ切り替えられる。
【0054】
上記構成を有する部品装着機1においては、装着ヘッド50の部品保持部53での部品保持後の工程(C)で、例えば
図6に示す如く時刻T0で昇降部材52の下降動作が開始されると(
図7に示すステップS100)、本機制御装置70の経過判別部73が上記の所定加速期間が経過するか否かを判別する(ステップS110)。そして、時刻T2でその所定加速期間が経過したと判別されると、許可指示出力部74がヘッド制御装置60に対して許可信号を出力する(ステップS120)。
【0055】
ヘッド制御装置60は、検出センサ90から入力される信号に基づいて、部品保持部53が昇降部材52に対してスプリング収縮方向の所定位置まで相対移動したことが検出されるか否かを判別する(ステップS200)。ヘッド制御装置60において本機制御装置70から許可信号が入力されかつ時刻T3で検出センサ90によるその相対移動が生じたことの検出がなされると、状態保持部61が所定検出信号をオン状態に保持する(ステップS210)。この場合には、信号出力部62が時刻T4でオン状態の所定検出信号を本機制御装置70に出力する(ステップS220)。
【0056】
尚、上記の所定検出信号は、時刻T3でオン状態になった後、後述の時刻T7でオフ状態に切り替わる前に、時刻T5で検出センサ90による検出が無くなってもすなわち投光部91からの光が受光部92に受光されることとなっても、オン状態に保持される。
【0057】
本機制御装置70において、許可指示出力部74からヘッド制御装置60へ許可信号が出力された後にヘッド制御装置60からオン状態の所定検出信号が入力されると、動作制御部71が、昇降部材52の昇降動作を変更する動作変更制御を実行する(ステップS130)。かかる動作変更制御が行われると、昇降部材52の下降速度の減速等が行われる。本機制御装置70は、動作変更制御の実行後、工程(D)で部品保持部53での部品3の保持を解除してその部品3を基板2に移載し、部品3をはんだを介して基板2に装着する。
【0058】
本機制御装置70は、動作変更制御の実行後、部品保持部53での部品3の保持を解除して基板2への部品3の移載を完了したか否かを判別する(ステップS140)。そして、その部品移載が完了したと判別すると、次に、工程(E)で昇降部材52が所定高さまで上昇したか否かを判別する(ステップS150)。尚、この所定高さは、退避位置を基準にしてその高さ位置よりも所定距離分だけ低い高さ位置、基板2に部品3を移載した移載位置を基準にしてその高さ位置よりも所定距離分だけ高い高さ位置、又は、工程(E)での退避移動の開始時点から所定時間が経過したときの高さ位置である。
【0059】
本機制御装置70において、時刻T6で昇降部材52が所定高さまで上昇すると、禁止指示出力部75がヘッド制御装置60に対して禁止信号を出力する(ステップS160)。ヘッド制御装置60において本機制御装置70から禁止信号が入力されると、時刻T7で信号切替部63が所定検出信号をオン状態からオフ状態へ切り替える(ステップS230)。
【0060】
このように、部品装着機1においては、本機制御装置70とヘッド制御装置60との間で情報(具体的には、許可信号、所定検出信号、及び禁止信号)の授受が行われることにより、動作制御部71の実行する動作変更制御が、昇降部材52の下降動作の開始時の所定加速期間を除いたタイミングで行われる。すなわち、その下降動作の開始時の所定加速期間(時刻T0~T2の期間)には、例え時刻T1で検出センサ90による検出がなされたとしても、部品保持部53の部品3が基板2に接触していないとして、動作変更制御が実行されない。
【0061】
このため、昇降部材52の下降動作の開始時の所定加速期間において、部品保持部53の部品3が基板2に接触したとの誤検出に基づいて動作変更制御が行われるのを回避することができる。すなわち、検出センサ90を用いて昇降部材52に対して部品保持部53が接近する相対移動の検出を行うタイミングないしはその相対移動の検出に伴う動作変更制御の実行すなわち昇降部材52の昇降動作の変更を行うタイミングとして、下降動作開始時の所定加速期間を排除することができる。従って、検出センサ90を用いた相対移動の検出ないしは昇降部材52の昇降動作の変更を適切に行うことができる。
【0062】
また、上記の如く昇降部材52の昇降動作の変更を行うタイミングとして下降動作開始時の所定加速期間を排除することとすれば、その昇降動作の変更を適切に行ううえで、その昇降動作(具体的には、下降動作)の開始時において昇降部材52に対して部品保持部53が接近する相対移動の移動量を小さく抑えることは不要であり、更に、その移動量の抑制のためにその昇降動作開始時の加速度を小さくすることは不要である。従って、基板2に部品3を装着する際の昇降動作開始時の装着速度が低下するのを回避することができ、基板生産の生産性が低下するのを防止することができる。
【0063】
尚、上記の実施形態においては、スプリング56が特許請求の範囲に記載した「弾性体」に、検出センサ90が特許請求の範囲に記載した「検出部」に、規制部72が昇降部材52の昇降動作(具体的には、下降動作)が開始された際にその下降動作に伴う慣性力が作用する所定加速期間において動作制御部71による動作変更制御を禁止することが特許請求の範囲に記載した「規制ステップ」に、それぞれ相当している。
【0064】
4.変形形態
ところで、上記の実施形態においては、昇降部材52と部品保持部53との間に介在する弾性体がスプリング56である。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、昇降部材52と部品保持部53との間に介在する弾性体は、ゴム状部材などの弾性力ないしは付勢力を発生するものであればよい。
【0065】
また、上記の実施形態においては、部品保持部53がスプリング56の付勢力に抗して昇降部材52に対して基準位置よりも収縮方向の所定位置まで相対移動したことを検出する接触検出を行う検出センサ90として、投光部91と受光部92とを有する透過型の光電センサを用いることとしている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、検出センサ90として反射型の光電センサを用いることとしてもよいし、検出センサ90としてカメラを用いることとしてもよい。
【0066】
また、上記の実施形態においては、検出センサ90による接触検出を、部品保持部53全体とその部品保持部53全体を昇降させる昇降部材52との相対移動に基づいて行うこととしている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、部品保持部53の先端ノズル部53bが軸部53aに対して上下方向に相対移動することが許容されている構成においては、検出センサ90による接触検出を、その部品保持部53の先端ノズル部53bと軸部53aとの相対移動に基づいて行うものに適用することとしてもよい。
【0067】
また、上記の実施形態においては、検出センサ90による接触検出がなされた場合に、動作制御部71が、昇降部材52の昇降動作を変更する動作変更制御を行うこととし、その昇降動作の開始時は、規制部72が、その動作制御部71による動作変更制御を禁止することとしている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、昇降部材52の昇降動作の開始時以外は、検出センサ90による部品保持部53がスプリング56の付勢力に抗して昇降部材52に対して基準位置から所定位置まで相対移動したことの検出を行うが、その昇降部材52の昇降動作の開始時は、その検出センサ90による検出を行わないものに適用することとしてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態においては、部品装着機1が、部品移載装置40の制御を行う本機制御装置70と、検出センサ90に接続して部品移載装置40の装着ヘッド50を制御するヘッド制御装置60と、を備え、本機制御装置70とヘッド制御装置60との間で情報の授受が行われ、所定加速期間は動作制御部71による動作変更制御が禁止される。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、部品装着機1が、検出センサ90に接続すると共に装着ヘッド50の制御を含め部品移載装置40の制御を行う制御装置を備え、その制御装置において所定加速期間は動作制御部71による動作変更制御が禁止されるシステムに適用することとしてもよい。
【0069】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1:部品装着機、2:基板、3:部品、10:基台、20:基板搬送装置、30:部品供給装置、40:部品移載装置、41:Y軸スライダ、42:X軸スライダ、50:装着ヘッド、51:ヘッド本体、52:昇降部材、53:部品保持部、54:昇降装置、55:回転装置、56:スプリング、60:ヘッド制御装置、61:状態保持部、62:信号出力部、63:信号切替部、70:本機制御装置、71:動作制御部、72:規制部、73:経過判別部、74:許可指示出力部、75:禁止指示出力部。