IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エレベータ制御装置 図1
  • 特許-エレベータ制御装置 図2
  • 特許-エレベータ制御装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20231030BHJP
   B66B 1/06 20060101ALI20231030BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B66B5/02 P
B66B1/06 D
B66B11/02 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023001864
(22)【出願日】2023-01-10
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】與那覇 慶一
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-109765(JP,A)
【文献】特開2018-203488(JP,A)
【文献】特開2015-054748(JP,A)
【文献】特開平11-060091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
B66B 1/00- 1/52
B66B 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降方向に連結された第1の乗りかごおよび第2の乗りかごを有するダブルデッキエレベータ装置に適用されるエレベータ制御装置であって、
異常発生後の診断運転において、乗りかご毎に全階床を対象にドア開閉確認を行い、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を除いた階を対象にエレベータの仮運用を実施する運転部を備えるエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記運転部は、
乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を示す情報を所定の記憶部に記憶し、
前記記憶部に記憶した前記情報を用いて、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を除いた階を対象にエレベータの仮運用を実施する、
請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記運転部は、
乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を戸開禁止階とし、
乗りかご毎に前記戸開禁止階における戸開を禁止する一方で前記戸開禁止階でない階における戸開を禁止せずに許可する制御を行う、
請求項1又は2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記運転部は、
かご呼びのあった階が、前記第1の乗りかごにとって前記戸開禁止階に該当し、前記第2の乗りかごにとって前記戸開禁止階に該当しない場合、前記第2の乗りかごがかご呼びに応答するように制御し、
かご呼びのあった階が、前記第2の乗りかごにとって前記戸開禁止階に該当し、前記第1の乗りかごにとって前記戸開禁止階に該当しない場合、前記第1の乗りかごがかご呼びに応答するように制御する、
請求項3に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記運転部は、
かご呼びに対する応答を階床毎に前記第1の乗りかごと前記第2の乗りかごとで分担して行う特定の運転モードを実施する機能を有し、
かご呼びのあった階が、前記第1の乗りかごが担当する階であって、前記第1の乗りかごにとって前記戸開禁止階に該当し、前記第2の乗りかごにとって前記戸開禁止階に該当しない場合、前記分担を一時的に無効にし、前記第2の乗りかごがかご呼びに応答するように制御し、
かご呼びのあった階が、前記第2の乗りかごが担当する階であって、前記第2の乗りかごにとって前記戸開禁止階に該当し、前記第1の乗りかごにとって前記戸開禁止階に該当しない場合、前記分担を一時的に無効にし、前記第1の乗りかごがかご呼びに応答するように制御する、
請求項3に記載のエレベータ制御装置。
【請求項6】
前記運転部は、
前記仮運用の実施後、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を対象に、再度、前記ドア開閉確認を行い、前記仮運用を行う、
請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダブルデッキエレベータ装置では、地震発生時の揺れなどの異常な状態が発生した場合、異常な状態が解消された後に、昇降路内機器、上かご及び下かご(上下かご)の走行、および全階床での上下かごのドア開閉、に異常がないかどうかを診断する診断運転が行われる。診断運転において異常がなければ、エレベータの仮運用(仮復旧)が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-054748号公報
【文献】特開2018-203488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
診断運転においては、昇降路内機器および上下かごの走行に異常がなくても、何れかの階での上下かごの何れかのドア開閉に異常があった場合、診断運転は中止され、仮運用は行われない。その場合、利用者はエレベータを利用することができない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、利用者にとっての不便さを低減することを可能にするエレベータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータ制御装置は、昇降方向に連結された第1の乗りかごおよび第2の乗りかごを有するダブルデッキエレベータ装置に適用されるエレベータ制御装置であって、異常発生後の診断運転において、乗りかご毎に全階床を対象にドア開閉確認を行い、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を除いた階を対象にエレベータの仮運用を実施する運転部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るダブルデッキエレベータ装置の全体構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るエレベータ制御装置によるダブルデッキエレベータ装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、記憶部に記憶する情報の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。
(全体構成)
図1は、実施形態に係るダブルデッキエレベータ装置の全体構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係るダブルデッキエレベータ装置(以下、単に「エレベータ」ともいう)1は、昇降路内で昇降する外かご2と、外かご2の内部で昇降方向に連結される上かご3及び下かご4(上下かごと称することがある)と、昇降路上部などに設置されて外かご2を昇降させるかご駆動部5と、昇降路上部などに設置されて、図示しないテールコードを介して上下かごと電気的に接続され、かつ、かご駆動部5を制御することで、上下かごの昇降を制御するエレベータ制御装置7と、昇降路上部などに設置されて昇降路に及んだ地震を感知する地震感知部8とを備える。
【0009】
かご駆動部5は、ロープ式の駆動機構として、一端部が外かご2に接続されるロープ5aと、ロープ5aの他端部に接続される釣合錘(カウンタウェイト)5bと、ロープ5aが巻き掛けられるシーブ5cと、シーブ5cを回転させる駆動源5dとを備える。そして、駆動源5dがシーブ5cを回転させることで、外かご2は、昇降路内の図示しないレールに案内されて昇降する。なお、かご駆動部5は、当該ロープ式の駆動機構に限られず、例えば、リニアモータ式または油圧式の駆動機構を備えてもよい。
【0010】
(エレベータ制御装置7の構成)
エレベータ制御装置7は、診断運転部7a(以下、「運転部7a」と称す)および記憶部7bを備える。地震感知部8は、地震の揺れを計測する地震計を含む。
【0011】
運転部7aは、地震感知部8が地震による揺れを感知した場合に、上下かごをも最寄階に着床させ、地震計が非検出の状態になってから一定時間経過後に、診断運転を行う機能を備えている。
【0012】
運転部7aは、地震発生後の診断運転においては、(1)昇降路内機器の設置位置、(2)上下かごの通常走行(定格走行)、および(3)全階床での上下かごのドア開閉、に異常がないかどうかを診断する。特に、上記(3)の診断では、乗りかご毎に(すなわち、上かご3及び下かご4のそれぞれについて)、全階床を対象にドア開閉確認を行い、少なくとも乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を示す情報を生成する。
【0013】
さらに運転部7aは、ドア開閉異常以外の異常検出が無いことを条件に、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を示す情報を用いて、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を除いた階を対象に(すなわち、ドア開閉を行える階のみを対象に)エレベータの仮運用(仮復旧)を実施する機能を有する。
【0014】
上記(3)の診断において何れかの階での上下かごの何れかのドア開閉に異常があった場合、一般的なダブルデッキエレベータ装置では、診断運転は中止され、仮運用は行われないが、本実施形態では、そうではなく、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を除いた階を対象にエレベータの仮運用を行う。
【0015】
ドア開閉異常のあった階を示す情報は、記憶部7b上で管理される。すなわち、運転部7aは、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を示す情報を記憶部7bに記憶した上で、記憶部7bに記憶した情報を用いて、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を除いた階を対象にエレベータの仮運用を実施する。
【0016】
ドア開閉異常のあった階を示す情報は、記憶部7b上では、戸開禁止階(戸開が禁止される階)を示す情報として記憶される。すなわち、運転部7aは、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を戸開禁止階として記憶部7bに記憶しておき、上記仮運用において、記憶部7bに記憶される乗りかご毎の戸開禁止階を示す情報を用いて、乗りかご毎に戸開禁止階における戸開を禁止する一方で戸開禁止階でない階における戸開を禁止せずに許可する制御を行う。
【0017】
なお、記憶部7b上には、乗りかご毎の戸開禁止階を示す情報に加え、乗りかご毎の戸開許容階(戸開が禁止されずに許容される階)を示す情報も併せて記憶してもよい。そのようにすると、仮運用中に、各乗りかごの戸開を禁止すべきか許容すべきかの判定を即座に行いやすくなる。
【0018】
運転部7aは、上記仮運用において、かご呼びのあった階が、上かご3にとって戸開禁止階に該当し、下かご4にとって戸開禁止階に該当しない場合、下かご4がかご呼びに応答するように制御する。また、かご呼びのあった階が、下かご4にとって戸開禁止階に該当し、上かご3にとって戸開禁止階に該当しない場合、上かご3がかご呼びに応答するように制御する。
【0019】
上記したような制御を行うことにより、上下かごが使用できなくなる条件が減り、また、上下かごが相互に利用可能な階を補うことになるため、利用できない階を減らすことが可能になる。
【0020】
また、運転部7aは、かご呼びに対する応答を、階床毎に、上かご3と下かご4とで分担して行う特定の運転モード(例えば、上かご3が偶数階からのかご呼びに応答し、下かご4が奇数階からのかご呼びに応答する運転モード)を実施する機能を有する。
【0021】
上記特定の運転モードにおいては、運転部7aは、かご呼びのあった階が、上かご3が担当する階であって、上かご3にとって戸開禁止階に該当し、下かご4にとって戸開禁止階に該当しない場合、上記分担を一時的に無効にし、下かご4がかご呼びに応答するように制御する。また、かご呼びのあった階が、下かご4が担当する階であって、下かご4にとって戸開禁止階に該当し、上かご3にとって戸開禁止階に該当しない場合、上記分担を一時的に無効にし、上かご3がかご呼びに応答するように制御する。
【0022】
このような制御を行うことにより、運転モード上、片かごしか止まれない階において、そのかごが戸開できない場合であっても、もう一方のかごが戸開可能であれば、戸開可能なかごに応答させてその階にて戸開させることができる。
【0023】
さらに運転部7aは、仮運用の実施後、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階(すなわち戸開禁止階)を対象に、再度、上記ドア開閉確認を行い、上記仮運用を行う機能を備えていてもよい。そのようにすると、仮運用実施前と比べてドア開閉異常のあった階が減っている場合もあり得るため、利用者にとっての利便性がさらに向上する可能性がある。
【0024】
(動作)
次に、本実施形態に係るダブルデッキエレベータ装置の動作について説明する。図2は、エレベータ制御装置7によるダブルデッキエレベータ装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0025】
まず、通常運転中に地震感知部8が、昇降路へ及んだ地震による揺れを感知すると(S11)、エレベータ制御装置7は、上下かごを最寄階に着床させて、無方向戸開放として待機させる(S12)。
【0026】
この状態で、地震による揺れが停止した、地震感知部8が所定の大きさの揺れを感知しなくなった(例えば地震計が非検出の状態になった)タイミングから一定時間が経過したとき(S13のYes)、エレベータ制御装置7は、エレベータの診断運転を開始する(S14)。診断運転では、昇降路内機器の設置位置の異常有無が確認されるとともに、上下かごの通常走行の異常有無が確認される。
【0027】
エレベータ制御装置7は、昇降路内機器の設置位置の異常有無の確認、および、上下かごの通常走行の異常有無の確認の何れかで、異常が検出されたか否かを判定する(S15)。
【0028】
ステップS15において異常が検出された場合(S15のYes)、エレベータ制御装置7は、診断運転を中止し(S16)、エレベータを休止させる(S17)。一方、ステップS15において異常が検出されなかった場合(S15のNo)、エレベータ制御装置7は、上下かごのそれぞれについて全階床を対象にドア開閉確認を行い、少なくとも乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を示す情報を生成し、その情報を記憶部7bに記憶する(S18)。
【0029】
ここで、記憶部7bに記憶する情報の例を、図3の表に示す。
【0030】
図3は、上かご3及び下かご4のそれぞれについて戸開禁止階の情報および戸開許容階の情報が両方とも記憶部7bに記憶される場合の例を模式的に示している。×は戸開禁止階を表し、○は戸開許容階を表す。図3の例では、上かご3については、3階が戸開禁止階であり、これ以外の階が戸開許容階である。下かご4については、2階が戸開禁止階であり、これ以外の階が戸開許容階である。
【0031】
ただし、図3の例は一例であって、この例に限定されるものではない。例えば、上かご3と下かご4のそれぞれの戸開禁止階が判れば戸開許容階も判るため、戸開許容階の情報は記憶されていなくても構わない。逆に、上かご3と下かご4のそれぞれの戸開許容階が判れば戸開禁止階が判るため、戸開許容階の情報が記憶され、戸開禁止階の情報が記憶されないようにしてもよい。上かご3及び下かご4のそれぞれについて、単純に戸開禁止階の情報のみが記憶部7bに記憶される形であってもよいし、単純に戸開許容階の情報のみが記憶部7bに記憶される形であってもよい。
【0032】
次に、エレベータ制御装置7は、記憶部7bに記憶した情報に基づき、何れかの階で上下かごの何れかのドア開閉の異常が検出されたかを判定する(S19)。
【0033】
ステップS19において何れの異常も検出されなかった場合(S19のNo)、エレベータ制御装置7は、エレベータの仮運用(仮復旧)を実施する(S20)。一方、ステップS19において何れかの異常が検出された場合(S19のYes)、エレベータ制御装置7は、記憶部7bに記憶した情報を用いて、乗りかご毎にドア開閉の異常が検出された階を除いた階を対象にエレベータの仮運用(仮復旧)を実施する(S21)。
【0034】
以上詳述したように、実施形態によれば、診断運転において、乗りかご毎に(すなわち、上かご3及び下かご4のそれぞれについて)、全階床を対象にドア開閉確認を行い、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を示す情報を用いて、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を除いた階を対象にエレベータの仮運用を行う。これにより、上下かごが使用できなくなる条件が減り、また、上下かごが相互に利用可能な階を補うことになるため、利用できない階を減らすことが可能になる。
【0035】
なお、上記実施形態では、地震による揺れに応じてエレベータ制御装置7が動作する場合の例を示したが、地震による揺れに限らず、例えば強風などによる揺れに応じてエレベータ制御装置7が動作するように構成してもよい。その場合、地震感知部8に限らず、強風などの何らかの原因による揺れを感知する感知部を設ければよい。また、揺れを感知する感知部は、上下かごの両方もしくは何れか一方に設置してもよい。また、揺れに限らず、エレベータに関わる何らかの異常の感知に応じてエレベータ制御装置7が動作するように構成してもよい。その場合、揺れを感知する感知部ではなく、上記異常を感知する感知部を設ければよい。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1…ダブルデッキエレベータ装置、2…外かご、3…上かご(第1の乗りかご)、4…下かご(第2の乗りかご)、5…かご駆動部、5a…ロープ、5b…釣合錘、5c…シーブ、5d…駆動源、7…エレベータ制御装置、7a…診断運転部(運転部)、7b…記憶部、8…地震感知部。
【要約】
【課題】利用者にとっての不便さを低減する。
【解決手段】実施形態のエレベータ制御装置は、昇降方向に連結された第1の乗りかごおよび第2の乗りかごを有するダブルデッキエレベータ装置に適用されるエレベータ制御装置であって、異常発生後の診断運転において、乗りかご毎に全階床を対象にドア開閉確認を行い、乗りかご毎にドア開閉異常のあった階を除いた階を対象にエレベータの仮運用を実施する運転部を備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3