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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】グルホシネートの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/30 20060101AFI20231030BHJP
   C07F 9/6584 20060101ALI20231030BHJP
   C07F 9/28 20060101ALI20231030BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20231030BHJP
【FI】
C07F9/30
C07F9/6584 CSP
C07F9/28
C07B53/00 F
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2023060856
(22)【出願日】2023-04-04
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】202211440553.X
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202310033931.0
(32)【優先日】2023-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523046028
【氏名又は名称】永農生物科学有限公司
【氏名又は名称原語表記】YONGNONG BIOSCIENCES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.3, Weiqi Rd (East), Hangzhou Gulf Economy and Technology Development Zone, Shangyu, Shaoxing, Zhejiang, China
(73)【特許権者】
【識別番号】523122920
【氏名又は名称】▲寧▼夏永▲農▼生物科学有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲湯▼ 文▲傑▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 承▲駿▼
(72)【発明者】
【氏名】李 南
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ 健▲傑▼
(72)【発明者】
【氏名】唐 ▲顕▼重
(72)【発明者】
【氏名】毛 春▲暉▼
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/077989(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/30
C07F 9/6584
C07F 9/28
C07B 53/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるグルホシネート又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法であって、
【化1】
以下の工程を含む:
式(III)の化合物を加水分解して、式(I)の化合物を得ること、
【化2】
ここで、
1はハロゲンであり;
Yは-OR3又は-N(R4)(R5)であり;
1及びR2はそれぞれ独立して、水素、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールから選択されるか、又は
1及びR2はそれらが結合しているN原子と共に3~6員のヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールは、ハロゲン、カルボキシ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、C3~C6シクロアルキル又はC6~C10アリールによって任意に置換され;
3、R4及びR5はそれぞれ独立して、水素、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールから選択されるか、又は
4及びR5は、それらが結合しているN原子と共に3~6員のヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、前記C1~C6アルキルは、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールは、ハロゲン、カルボキシ、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、C3~C6シクロアルキル、又はC6~C10アリールによって任意に置換され;且つ
*はキラル炭素原子の識別に用いられる。
【請求項2】
前記加水分解を酸又は塩基の存在下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸が、塩酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、ギ酸及び酢酸の少なくとも1つから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸が、塩酸又は硫酸から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記塩基が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩又は塩基性炭酸塩、アンモニア水、有機塩基又は有機アミンから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基が、水酸化ナトリウム又はトリエチルアミンから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記加水分解が30~140℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記加水分解が70~110℃の温度で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記グルホシネートの鏡像異性体が、L-グルホシネート又はD-グルホシネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記グルホシネートの任意の比率の鏡像異性体の混合物が、0.1:99.9~99.9:0.1のL-グルホシネート及びD-グルホシネートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記グルホシネートの任意の比率の鏡像異性体の混合物が、50:50~99.9:0.1のL-グルホシネート及びD-グルホシネートを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ハロゲンは、フッ素、塩素、又は臭素から選択され;
1~C6アルキルは、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルから選択され;
2~C6アルケニルは、ビニル、プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル又はイソブテニルから選択され;
2~C6アルキニルは、エチニル、プロピニル、1-ブチニル又は2-ブチニルから選択され;
3~C6シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルから選択され;
3~6員のヘテロシクロアルキルは、N、O及びSの少なくとも1個のヘテロ原子を含むシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルから選択され;
6~C10アリールは、フェニル又はナフチルから選択され、及び/又は
5~10員のヘテロアリールは、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、フリル、チエニル、チアゾリル又はピリジルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記R1、R2、R3、R4及びR5のそれぞれが、水素、C1~C6アルキル又はC3~C6シクロアルキルから独立して選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記R 1 、R 2 、R 3 、R 4 及びR 5 のそれぞれが、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記式(III)の化合物が、式(II)の化合物と、
【化3】
以下のいずれかとの反応により調製される、請求項1に記載の方法:
式(IV)の化合物;式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(VII)の化合物;式(V)の化合物及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物、
【化4】
ここで、
2はハロゲンであり;
1、R2、X1、Y及び*は、請求項1~14のいずれか1項で定義されたとおりであり;
9及びR10は、それぞれ独立して、水素、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員ヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールから選択されるか、又は
9及びR10は、それらが結合しているN原子と共に3~6員のヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール、又は5~10員のヘテロアリールは、ハロゲン、カルボキシ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、C3~C6シクロアルキル又はC6~C10アリールによって任意に置換される。
【請求項16】
前記反応が酸結合剤の存在下で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酸結合剤がNR111213から選択され、
ここで
11、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールから選択されるか、又は
11、R12及びR13の任意の2つが、それらが結合しているN原子と共に3~6員のヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール、又は5~10員のヘテロアリールは、ハロゲン、カルボキシ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、C3~C6シクロアルキル又はC6~C10アリールによって任意に置換される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
式(II)の化合物と、式(IV)の化合物+式(V)の化合物+式(VII)の化合物の用量の合計と、酸結合剤とのモル比率が1:0.9~5:0.9~5である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
式(II)の化合物と、式(IV)の化合物+式(V)の化合物+式(VII)の化合物の用量の合計と、酸結合剤とのモル比率が1:1.05~1.5:1.05~1.5である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応が無溶媒又は有機溶媒の存在下で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記有機溶媒が、芳香族炭化水素溶媒、アルカン溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アミド溶媒又は硫黄含有溶媒から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記有機溶媒が、トルエン及びクロロベンゼンの少なくとも1つから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記反応が、-20~10℃の温度で1~15時間行われた後、10~120℃の温度で0.5~24時間行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記式(III)の化合物が、以下の工程を含む方法によって調製される、請求項1に記載の方法:
1)式(II)
【化5】
の化合物と以下のいずれかとを反応させて、(VI)の化合物を得ること:
式(IV)の化合物;式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)及び式(VII)の化合物;式(V)の化合物及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物、
【化6】
2)式(VI)の化合物を反応させることにより、式(III)の化合物を調製すること、
ここで、X1、X2、Y、R1、R2、R9、R10及び*は、請求項15で定義されたとおりである。
【請求項25】
工程1)における反応が、-20℃~10℃の温度で1~15時間行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程2)における反応が、10~120℃の温度で0.5~24時間行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
式(I)で表されるグルホシネート又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法であって、
【化7】
以下の工程を含む:
無溶媒又は有機溶媒の存在下で、式(II)の化合物と、
【化8】
以下のいずれかとを反応させることによって、中間体が調製されること:
式(IV)の化合物;式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(VII)の化合物;式(V)の化合物及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物、
【化9】
及び、
酸性、中性又はアルカリ性の条件下で前記中間体を加水分解して(I)の化合物を得ること、
ここで、X1、X2、Y、R1、R2、R9、R10及び*は、請求項15で定義されたとおりである。
【請求項28】
式(III)の化合物又はその塩、鏡像異性体、又は任意の比率の鏡像異性体の混合物であって、
【化10】
ここで、X1、Y、R1、R2及び*は、請求項1~14のいずれか一項で定義されたとおりである。
【請求項29】
式(III)の化合物又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法であって、
【化11】
以下の工程を含む:
式(II)の化合物と、
【化12】
以下のいずれかとを反応させること:
式(IV)の化合物;式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(VII)の化合物;式(V)及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物、
【化13】
ここで、X1、X2、Y、R1、R2、R9、R10及び*は、請求項15で定義されたとおりである。
【請求項30】
式(III)の化合物又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法であって、
【化14】
以下を含む:
式(VI)の化合物を反応させることによって、式(III)の化合物を調製すること、
【化15】
ここで、X1、Y、R1、R2及び*は、請求項15で定義されたとおりである。
【請求項31】
式(VI)の化合物又はその塩、鏡像異性体、又は任意の比率の鏡像異性体の混合物であって、
【化16】
ここで、X1、Y、R1、R2及び*は、請求項1~14のいずれか一項で定義されたとおりである。
【請求項32】
式(VI)の化合物又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法であって、
【化17】
以下を含む:
式(II)の化合物と、
【化18】
以下のいずれかとを反応させること:
式(IV)の化合物;式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(VII)の化合物;式(V)の化合物及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物、
【化19】
ここで、X1、X2、Y、R1、R2、R9、R10及び*は、請求項15で定義されたとおりである。
【請求項33】
式(VI)の化合物又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法であって、
【化20】
以下を含む:
式(II)の化合物と、
【化21】
式(VII)の化合物及び式(VIII)の化合物とを反応させること、
【化22】
ここで、X1、X2、Y、R1、R2及び*は、請求項15で定義されたとおりである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2022年11月17日に出願された中国特許出願第202211440553.X号、中国特許出願第202310033931.0号に対する優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[技術分野]
本出願は農薬除草剤の分野に関し、特にグルホシネートの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
グルホシネート(Glufosinate)は、ドイツのヘキストAGによって開発及び製造され、その化学名は、4-[ヒドロキシ(メチル)ホスホノ]-DL-ホモアラニンであり、グルタミン合成阻害剤、非選択的接触除草剤であり、その作用メカニズムは、植物のグルタミン合成酵素の活性を阻害することにより、グルタミン合成の阻害、窒素代謝の障害、及びアンモニウムイオンの蓄積を引き起こし、それによって植物の代謝を妨害し、植物を死滅させることである。
【0004】
グルホシネートは、除草スペクトルが広く、活性が高く、毒性が低く、土壌中での分解が容易で、作物への安全性が高く、漂流が少なく、環境適合性が高く、迅速な除草剤という特徴があり、メヒシバ及びライグラスなど、100種類以上の一年草及び多年生の広葉雑草やイネ科雑草を防除し、迅速に殺滅できる。
【0005】
通常のグルホシネートは2つの鏡像異性体の混合物であるが、L-異性体のみが活性であり、土壌中で分解されやすく、人や動物への毒性が少なく、環境圧力を大幅に低減することができ、且つ活性及び有性雑草に対する防除効果も通常のグルホシネートより優れている。現在市場に出回っているグルホシネート製品のほとんどはまだそのラセミ体であるが、技術革新及び進歩により、L-異性体が主流市場に参入することは止められないことである。
【0006】
従来のキラルな純粋なL-グルホシネートの合成方法には、主に化学的方法及び生物学的方法がある。そのうち、化学的方法には化学分割方法及び化学合成方法が含まれている。
【0007】
化学分割方法は、光学的に純粋なL-グルホシネートを得るために、化学法により合成されたラセミ体D,L-グルホシネート又はその誘導体をキラル分割試薬によって分割することである。特許文献1には、キニン及びシンコニンのようなキラル塩基を用いてジアステレオマー塩の1つを沈澱させ、D,L-ホモアラニン-4-イル-(メチル)ホスホン酸のラセミ化分割によって([L]-又は[D]-ホモアラニン-4-イル-(メチル)ホスホン酸及びその塩を得る方法が開示されている。該方法は、高価なキラル分割試薬を使用する必要があり、収率が低く、明らかな産業化の利点がない。
【0008】
化学合成方法は、天然のキラルアミノ酸又は非対称法によってL-グルホシネートを合成する。
【0009】
特許文献2には、L-ホモセリンラクトン誘導体を原料とし、開環塩素化、エステル化、亜リン酸メチルジエステルとのアルブゾフ反応(Arbuzov反応)、加水分解、精製によりL-グルホシネート塩酸塩を得る方法が開示されている。
【化1】
【0010】
該多段階反応プロセスユニットは操作が便利であるが、アルブゾフ反応原料の塩素化基質の活性が制限されており、通常は比較的高い温度(130~140℃以上)で実行する必要がある。同時に、高温での塩素化アルカンの副生成物と亜リン酸メチルジエステルとの更なる副反応により、その単位消費量が大幅に増加する。さらに、該温度での反応は、一部の原料又は製品のラセミ化によりL-鏡像異性体過剰値が低下する。
【0011】
特許文献3には、アミノ保護又は非保護のハロゲン化ホモセリンエステルを原料とし、モノクロロメチルホスホナイトと縮合して中間体を得、その後加水分解してL-グルホシネートを得る方法が開示されている。
【化2】
【0012】
該方法は、原料としてホモセリンを使用し、環化、塩素化、エステル化、保護基保護などの多段階反応を経て合成され、反応工程が比較的長い。さらに、アルブゾフ反応は必然的にハロゲン化アルカンを生成するが、小分子のハロゲン化炭化水素はクラス3発がん物質であり、大気中のオゾンに破壊的な影響を及ぼす。
【0013】
近年、グルホシネートの需要の継続的な成長に伴い、穏やかな反応条件、高収率、低コスト、及び簡単な操作を備えたグルホシネート合成方法を開発することは、除草剤の使用を減らし、効率を高めるために非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第1995/023805号
【文献】米国特許第5442088号明細書
【文献】中国特許第113490671号明細書
【発明の概要】
【0015】
簡潔にするために、後述する「式(N)の化合物(式(III)の化合物など)」は、式(N)の化合物の任意の光学異性体、幾何異性体、互変異性体又は異性体混合物、又は農業的許容される塩を包含し得る。
【0016】
用語「光学異性体」は、化合物が1つ以上のキラル中心を有する場合、それぞれのキラル中心がR配置又はS配置を取り得、こうして構成される様々の異性体は光学異性体であることを意味する。光学異性体には、すべてのジアステレオ異性体、鏡像異性体、メソフォーム、ラセミ体、又はそれらの混合物が含まれる。例えば、光学異性体は、キラルクロマトグラフィーカラム又はキラル合成によって分離することができる。
【0017】
用語「幾何異性体」は、化合物に二重結合が存在する場合、該化合物にはシス異性体、トランス異性体、E異性体、Z異性体が存在し得ることを意味する。幾何異性体には、シス異性体、トランス異性体、E異性体、Z異性体、又はそれらの混合物が含まれる。
【0018】
用語「互変異性体」は、分子内のある原子が2つの位置間で急速に移動することによって生じる異性体を意味する。当業者は、互変異性体が互いに変換可能であり、ある状態で平衡状態に達して共存することが可能であることを理解できる。
【0019】
特に明記しない限り、本明細書で言及する「式(N)の化合物(式(III)の化合物など)」は、該化合物中の任意の原子をその同位体原子で置換することによって得られる同位体標識化合物も包含する。即ち、本発明は、式(N)の化合物の全ての農業的許容される同位体標識化合物を含む。ここで、1つ又は複数の原子は、自然界で通常見出される原子と同じ原子番号を有しているが、異なる原子質量又は質量数を有する原子により置き換えられる。
【0020】
本発明の化合物に含まれる同位体に適した実施例は以下を含む:2H(D)及び3H(T)などの水素の同位体、11C、13C及び14Cなどの炭素の同位体、37Clなどの塩素の同位体、18Fなどのフッ素の同位体、123I及び125Iなどのヨウ素の同位体、13N及び15Nなどの窒素の同位体、15O、17O、18Oなどの酸素の同位体、35Sなどの硫黄同位体。
【0021】
式(N)の同位体標識化合物は、一般に、当業者に知られている従来の技術によって、又は以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用することによって、本明細書の添付の実施例及び調製に記載の方法と同様の方法で調製することができる。
【0022】
式(N)の化合物は、農業的に許容される塩、例えば式(N)の化合物の酸付加塩及び/又は塩基付加塩の形態で存在し得る。特に明記しない限り、本明細書に使用される「農業的に許容される塩」には、式(N)の化合物に生じ得る酸付加塩又は塩基付加塩が含まれる。
【0023】
式(N)の化合物の農業的に許容される塩には、その酸付加塩及び塩基付加塩が含まれる。適切な酸付加塩は、無毒の塩を形成する酸から形成される。その実施例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロヘキサミンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、六フッ化リン酸塩、2-(4-ヒドロキシベンジル)安息香酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、2-イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、ナフサリン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、セテート、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、グルコース二酸塩、ステアリン酸塩、サリチル酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシラート、及びトリフルオロ酢酸塩があげられるが、これらに限定さえない。適切な塩基付加塩は、無毒の塩を形成する塩基から形成される。その実施例としては、アンモニウム、アルミニウム、アルギニン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、エタノールアミン、カリウム、ナトリウム、リチウム、アミノブタントリオール、及び亜鉛塩が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ヘミ硫酸塩及びヘミカルシウム塩などの酸及び塩基の半塩も形成され得る。本明細書に記載の化合物の農業的に許容される塩を調製する方法は、当業者に知られている。
【0024】
本発明の特定の化合物は、無溶媒和物形態及び溶媒和物形態(水和物形態を含む)で存在し得る。一般的に言うと、式(N)の化合物は、それらが溶媒和物形態で存在するか或いは無溶媒和物形態で存在するかに関わらず、全て本発明の範囲内に含まれる。
【0025】
本発明の特定の化合物は、異なる結晶形態又は非晶質形態で存在し得、それらがどの形態で存在しても、式(N)の化合物は本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
曖昧さを避けるために、本明細書で使用される用語の定義を以下に示す。特に明記しない限り、本明細書で使用される用語の意味は次のとおりである。
【0027】
本明細書で使用される用語「置換される」は、基中の1個以上(好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個)の水素原子が、対応する数の置換基によって独立して置換されていることを意味する。
【0028】
本明細書で使用される用語「独立して」は、置換基の数が複数である場合、これらの置換基は同じでもよく、異なってもよいということを意味する。
【0029】
本明細書で使用される用語「任意の」又は「任意に」は、それが説明する事象が発生する可能性があってもなくてもよいということを意味する。例えば、基が「任意に置換される」というのは、該基が置換されなくてもよく、置換されてもよいということを意味する。
【0030】
本明細書で使用される用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、又はS(O)mここで、mは0、1、又は2であってよい、即ち、硫黄原子S、又はスルホキシド基SO、又はスルホニルS(O)2)を表す。
【0031】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、直鎖及び分枝鎖を含む飽和脂肪族炭化水素を指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は、例えば、1~6個又は1~3個の炭素原子を有する。例えば、用語「C1~C6アルキル」は、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖原子団を指す。用語「C1~C6アルキル」は、その定義内に、「C1~C6アルキル」、「C1~C3アルキル」及び「C1~C4アルキル」という用語が含まれる。アルキル基の実施例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、(R)-2-メチルブチル、(S)-2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,3-ジメチルプロピル、2,3-ジメチルブチル、ヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用される用語「C3~C6シクロアルキル」は、3~6個の環形成炭素原子を有するシクロアルキル基を指す。例えば、C3~C6シクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルが含まれる。
【0033】
本明細書で使用される用語「n員のヘテロシクロアルキル」は、m個の環形成炭素原子、及び(n-m)個の環形成ヘテロ原子を有するシクロアルキル基を指し、前記ヘテロ原子はN、O、及びSの少なくとも1つから選択される。例えば、3員~6員のヘテロシクロアルキル基には、オキセタン、チエタン、アゼチジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書で使用される用語「C6~C10アリール」は、6~10個の炭素原子を含む芳香環を有するアリール基、好ましくはフェニルを指す。
【0035】
本明細書で使用される用語「n員のヘテロアリール」は、芳香環を形成するm個の炭素原子、及び芳香環を形成する(n-m)個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール基を指し、前記ヘテロ原子はN、O及びSの少なくとも1つから選択される。例えば、5員~10員のヘテロアリール基には、ピラジン、ピラゾール、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、ピリジンが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される用語「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲン置換基(最大ペルハロアルキルまで、即ち、アルキル基の各水素原子がいずれもハロゲン原子によって置換される)を有するアルキル基を指す。例えば、「用語「C1~C6ハロアルキル」は、1つ又は複数のハロゲン置換基(最大ペルハロアルキルまで、即ち、アルキル基の各水素原子がいずれもハロゲン原子で置換される)を有するC1~C6アルキル基を指す。別の例として、用語「C1ハロアルキル」は、1、2又は3個のハロゲン置換基を有するメチル基を指す。ハロアルキル基の例としては、CF3、C25、CHF2、CH2F、CH2CF3、CH2Clなどが挙げられる。
【0037】
本明細書において、置換基の数、炭素原子の数、及び環原子の数に関する数の範囲は、該範囲内のすべての整数を1つずつ列挙したものであり、範囲は単純化された表現としてのみ使用される。例えば:「1~4個の置換基」は、1、2、3又は4個の置換基を意味し、「3~8個の炭素原子」は、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を意味する。従って、置換基の数、炭素原子の数、及び環原子の数に関連する数の範囲は、その任意のサブ範囲も包含し、且つ各サブ範囲も本明細書に開示されていると見なされる。
【0038】
一態様において、本出願は式(I)で表されるグルホシネート又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法を提供し、以下の工程を含む:
【化3】
式(III)の化合物を加水分解して、式(I)の化合物を得ること、
【化4】
ここで、
1はハロゲンであり;
Yは-OR3又は-N(R4)(R5)であり;
1及びR2はそれぞれ独立して、水素、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールから選択されるか、又は
1及びR2はそれらが結合しているN原子と共に3~6員のヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールは、ハロゲン、カルボキシ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、C3~C6シクロアルキル又はC6~C10アリールによって任意に置換され;
3、R4及びR5はそれぞれ独立して、水素、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールから選択されるか、又は
4及びR5は、それらが結合しているN原子と共に3~6員のヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールは、ハロゲン、カルボキシ、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、C3~C6シクロアルキル、又はC6~C10アリールによって任意に置換され;且つ
*はキラル炭素原子の識別に用いられる。
【0039】
本発明によると、式(I)の化合物は、単一の鏡像異性体の形態で存在し得る。例えば、本発明の一実施形態において、式(I)の化合物は、純粋なL-グルホシネート又はD-グルホシネートであってもよい。さらに、式(I)の化合物は、鏡像異性体の混合物の形態で存在することもでき、且つ前記鏡像異性体は鏡像異性体の混合物においてそれぞれ任意の比率で存在することができる。例えば、本発明の一実施形態において、式(I)の化合物の任意の比率の鏡像異性体の混合物は、0.1:99.9~99.9:0.1のL-グルホシネート及びD-グルホシネートを含有する。しかし、L-グルホシネートのみが活性であるため、本発明による式(I)の化合物のL-鏡像異性体は、好ましくは鏡像異性体の混合物において好ましくはより大きい比率で存在してもよい。例えば、一実施形態において、式(I)の化合物の任意の比率の鏡像異性体の混合物は、50:50~99.9:0.1(例えば、60:40、70:30、80:20、90:10、95:5又は99:1など)のL-グルホシネート及びD-グルホシネートを含む。
【0040】
本発明の一態様による調製方法において、前記式(III)の化合物の加水分解は中性条件下で直接行うことができる。即ち、水の存在下で直接該加水分解反応を行うことができる。さらに、前記加水分解は、酸又は塩基の存在下で行うことも好ましい。より具体的には、前記酸は、塩酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、ギ酸及び酢酸の少なくとも1つから選択されてもよく、好ましくは塩酸又は硫酸であり;前記塩基は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩又は塩基性炭酸塩、アンモニア水、有機塩基、有機アミン、好ましくは水酸化ナトリウム又はトリエチルアミンから選択されてもよい。また、本発明の一実施形態において、前記加水分解は、30~140℃(例えば、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃など)、好ましくは70~110℃の温度で行うことができる。
【0041】
式(III)の化合物の好ましい実施形態として、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して水素、C1~C6アルキル又はC3~C6シクロアルキルから選択されることができる。好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。さらに、好ましい一実施形態では、本明細書で使用される場合、ハロゲンは、フッ素、塩素又は臭素から選択されてもよく;C1~C6アルキルは、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルから選択されてもよく;C2~C6アルケニルは、ビニル、プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル又はイソブテニルから選択されてもよく;C2~C6アルキニルは、エチニル、プロピニル、1-ブチニル又は2-ブチニルから選択されてもよく;C3~C6シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルから選択されてもよく;3~6員のヘテロシクロアルキルは、N、O及びSの少なくとも1つのヘテロ原子を含むシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルから選択されてもよく;C6~C10アリールは、フェニル又はナフチルから選択されてもよく;及び/又は5~10員のヘテロアリールは、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、フリル、チエニル、チアゾリル又はピリジルから選択されてもよい。
【0042】
式(III)の化合物の代替案として、R1、R2、R3、R4及びR5はさらにそれぞれ独立して-Si(R6)(R7)(R8)から選択されることができ、ここでR6、R7及びR8はそれぞれ独立して、水素、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のへテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールから選択され、ここで前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5員から10員ヘテロアリールは、ハロゲン、カルボキシル、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、C3~C6シクロアルキル又はC6~C10アリールによって任意に置換される。
【0043】
さらに、本発明の一態様による調製方法は、さらに式(III)の化合物を調製する工程を含むことができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記式(III)の化合物は、式(II)の化合物と、
【化5】
以下のいずれかとの反応により調製される:
式(IV)の化合物;式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(VII)の化合物;式(V)の化合物及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物、
【化6】
ここで、
2はハロゲンであり;
1、R2、X1、Y及び*は、前述で定義されたとおりであり;
9及びR10は、それぞれ独立して、水素、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員ヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールから選択されるか、又は
9及びR10は、それらが結合しているN原子と共に3~6員のヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール、又は5~10員のヘテロアリールは、ハロゲン、カルボキシ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、C3~C6シクロアルキル又はC6~C10アリールによって任意に置換される。
【0045】
上記に記載の式(III)の化合物の調製工程において、使用される式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び/又は式(VII)の化合物は、初期反応物として反応系に添加してもよく、他の化合物のその場反応によって調製されてもよい。例えば、式(IV)の化合物は、式(VII)の化合物と式(VIII)の化合物NHR12とのその場反応によって、又は式(V)の化合物と式(VII)の化合物とのその場反応によって調製されることができる;そして、式(V)の化合物(ここで、R9及びR10はそれぞれR1及びR2に対応し得る)は、式(VII)の化合物と式(VIII)の化合物とのその場反応によって調製されることができる。式(III)の化合物を調製するための代替案として、式(III)の化合物は、式(II)の化合物を式(VII)の化合物及び式(VIII)の化合物と反応させることによって得ることも可能である。さらに、上記の式(III)の化合物を調製する様々な工程において、各原料の供給順序に制限はなく、任意の順序で各原料を反応系に供給することができる。
【0046】
本発明によると、上記に記載の式(III)の化合物を調製するための工程は、好ましくは、酸結合剤の存在下で実施することができる。具体的には、前記酸結合剤は、NR111213から選択されることができ、ここでR11、R12及びR13は、それぞれ独立して水素、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール又は5~10員のヘテロアリールから選択されてもよく、又はR11、R12及びR13のいずれか2つがそれが結合しているN原子と共に3~6員のヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール、又は5~10員のヘテロアリールは、ハロゲン、カルボキシル、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、C3~C6シクロアルキル又はC6~C10アリールによって任意に置換されてもよい。
【0047】
さらに、式(VIII)の化合物NHR12は、上記酸結合剤の一般式に一致するため、即ち、酸結合剤としての要件も満たしているため、選択肢として、過剰な式(VIII)の化合物を添加して反応に好ましい存在である酸結合剤とすることが可能である。本発明の好ましい一実施形態において、前記酸結合剤は、過剰の式(VIII)の化合物、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン及びピペリジンの少なくとも1つから選択されることができる。
【0048】
さらに、上記に記載の式(III)の化合物を調製するための工程は、無溶媒又は有機溶媒の存在下で行うことができる。本発明の一実施形態において、前記有機溶媒は、芳香族炭化水素溶媒(ベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、クメン、ジイソプロピルベンゼン、ハロゲン化ベンゼン又はジハロベンゼンなど)、アルカン溶媒(n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなど)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム又は四塩化炭素など)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、二酸素六環又はジグライムなど)、エステル溶媒(酢酸エチル、酢酸イソプロピル又は酢酸ブチルなど)、アミド溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N-メチルピロリドン又は1,3-ジメチル-2-イミダゾリノンなど)、又は硫黄含有溶媒(ジメチルスルホキシド又はスルホランなど)から選択され、好ましくは、前記有機溶媒は、トルエン及びクロロベンゼンの少なくとも1つから選択される。
【0049】
上記に記載の式(III)の化合物を調製するための工程における各反応物の用量及び反応条件は、実際の必要性及び当業者の知識に従って調整してもよい。本発明の一実施形態において、式(II)の化合物と、式(IV)の化合物+式(V)の化合物+式(VII)の化合物の用量の合計と、酸結合剤とのモル比率は1:0.9~5:0.9~5、好ましくは1:1.05~1.5:1.05~1.5であり得る。本発明の別の実施形態において、前記反応は、-20~10℃(例えば、-10℃、-5℃、0℃又は5℃など)の温度で1~15時間(例えば、2時間、4時間、6時間又は12時間など)行い、その後10~120℃(例えば、20℃、40℃、60℃、80℃又は100℃など)の温度で0.5~24時間(例えば、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、18時間など)行うことができる。
【0050】
式(III)の化合物を調製する代替案として、前記式(III)の化合物は、さらに以下の工程を含む方法によって調製されることができる:
1)式(II)の化合物と以下のいずれかとを反応させて、(VI)の化合物を得ること:
式(IV)の化合物;式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)及び式(VII)の化合物;式(V)の化合物及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物、
【化7】
2)式(VI)の化合物を反応させることにより、式(III)の化合物を調製すること、
ここで、X1、X2、Y、R1、R2、R9、R10及び*は、上記で定義されたとおりである。
【0051】
該代替案において、反応原料は基本的に前述の案と同様であり、その違いは、式(VI)の化合物が後続の反応の中間体として明確に得られることである。したがって、該代替案における反応原料、反応系、及び反応条件の選択は、いずれも式(III)の化合物を調製するための前述の案を参照することができ、不必要な重複を避けるために、ここでは繰り返さない。反応条件を例として挙げると、工程1)の反応は、-20℃~10℃の温度で1~15時間行われることができ、工程2)の反応は、10~120℃の温度で0.5~24時間行われることができる。
【0052】
第2の態様において、本出願は式(I)で表されるグルホシネート又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法を提供し、以下の工程を含む:
【化8】
無溶媒又は有機溶媒の存在下で、式(II)の化合物と、
【化9】
以下のいずれかとを反応させることによって、中間体が調製されること:
式(IV)の化合物;式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(VII)の化合物;式(V)の化合物及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物、
【化10】
及び、
酸性、中性又はアルカリ性の条件化で前記中間体を加水分解して(I)の化合物を得ること、
ここで、X1、X2、Y、R1、R2、R9、R10及び*は、上記で定義されたとおりである。
【0053】
本発明の第2の態様による調製方法における有機溶媒及び加水分解の条件などは本発明の一態様を参照することができ、不必要な重複を避けるために、ここでは繰り返さない。
【0054】
第3の態様において、本出願は式(III)の化合物又はその塩、鏡像異性体、又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を提供し、
【化11】
ここで、X1、Y、R1、R2及び*は、上記で定義されたとおりである。
【0055】
好ましくは、前記式(III)の化合物は本発明の一態様を参照して調製されることができる。
【0056】
第4の態様において、本出願は式(III)の化合物又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法を提供し、以下の工程を含む:
【化12】
式(II)の化合物と、
【化13】
以下のいずれかとを反応させること:
式(IV)の化合物;式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(VII)の化合物;式(V)及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物、
【化14】
ここで、X1、X2、Y、R1、R2、R9、R10及び*は、上記で定義されたとおりである。
【0057】
第5の態様において、本出願は式(III)の化合物又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法を提供し、以下を含む:
【化15】
式(VI)の化合物を反応させることによって、式(III)の化合物を調製すること、
【化16】
ここで、X1、Y、R1、R2及び*は、上記で定義されたとおりである。
【0058】
第6の態様において、本出願は式(VI)の化合物又はその塩、鏡像異性体、又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を提供し、
【化17】
ここで、X1、Y、R1、R2及び*は、請上記で定義されたとおりである。
【0059】
好ましくは、前記式(VI)の化合物は本発明の一態様を参照して調製されることができる。
【0060】
第7の態様において、本出願は式(VI)の化合物又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法を提供し、以下を含む:
【化18】
式(II)の化合物と、
【化19】
以下のいずれかとを反応させること:
式(IV)の化合物;式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)の化合物及び式(VII)の化合物;式(V)化合物及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物、
【化20】
ここで、X1、X2、Y、R1、R2、R9、R10及び*は、上記で定義されたとおりである。
【0061】
第8の態様において、本出願は式(VI)の化合物又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法を提供し、以下を含む:
【化21】
式(II)の化合物と、
【化22】
式(VII)の化合物及び式(VIII)の化合物とを反応させること、
【化23】
ここで、X1、X2、Y、R1、R2及び*は、上記で定義されたとおりである。
【0062】
第9の態様において、本出願は式(IV)の化合物及び式(V)の化合物;式(IV)及び式(VII)の化合物;又は式(IV)の化合物、式(V)の化合物及び式(VII)の化合物を含む、組成物を提供し、
【化24】
ここで、X2、R1、R2、R9、R10及び*は、上記で定義されたとおりである。
【0063】
第10の態様において、本出願は式(I)で表されるグルホシネート又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物の調製における、第9の態様による組成物の用途を提供する。
【化25】
【0064】
当業者は、本出願の一態様に記載された定義及び優先事項が他の態様にも適用可能であることを理解することができる。当業者は、本出願の様々な態様による実施形態が、本出願の主題及び思想から逸脱することなく、様々な方法で組み合わせることができ、これらの組合せも本願の範囲に含まれることを理解することができる。
【0065】
研究の結果、先行技術に比べて、本発明は少なくとも以下の有益な効果を含むことが判明された:
1.反応メカニズムが異なるため、ミカエリス-アルブゾフ(Michaelis-Arbuzov)反応におけるハロゲン化炭化水素の副生成物を回避することができ、該ハロゲン化炭化水素の副生成物は通常、塩化エチル、塩化メチルであり、いずれもクラス3の発がん物質であり、大気中のオゾンに破壊的な影響があり、したがって、上記副生成物の分離、精製及び収集などの為の設備及び技術投資が省略され、上記副生成物による潜在的な環境及び安全上のリスクも回避することができる;
2.ミカエリス-アルブゾフ反応よりも反応が穏やかで、反応温度を前者に比べて30~80℃下げることができるため、L-グルホシネートを調製する際の高温でのL体のラセミ化も抑えることができ、それによって生成物のL体の純度を向上させることができる;及び
3.原料のソースを簡素化し、亜リン酸メチルジエステルを中間体として使用することなく、直接メチルホスフィンジクロリドを原料として使用することにより、原料コストを削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特に明記しない限り、各実施例で使用したすべての反応物はいずれも商業的供給元から入手している;合成実験及び生成物の分析、検出で使用した機器及び設備は、いずれも有機合成で一般的に使用されている従来の機器及び設備である。
【0067】
<実施例1:L-グルホシネート塩酸塩(I-1)の合成>
【化26】
【0068】
1)化合物(IV-1)の合成
【化27】
ジエチルアミン(26.28g、0.359mol、2.1eq.)を、トルエン100gに加え、窒素保護下で温度を-5~5℃に下げ、メチルホスフィンジクロリド(20g、0.171mol、1.0eq.)を添加し始める。同時に、システムの温度を-5~5℃に保つ。滴下後、0.5時間保温反応させて化合物(IV-1)を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)154.08([M+1]+、100%); 31P NMR(33MHz)δ:144.57。
【0069】
2)化合物(VI-1)の合成
窒素保護下で、化合物(II-1)(26.92g、0.163mol、0.95eq.)を、トルエン50gに加え、ジエチルアミン(11.89g、0.163mol、0.95eq.)を加え、均一に撹拌した後、氷浴冷却下で上記化合物(IV-1)供給液を滴下し、反応液の内温を5~10℃に制御し、滴下後2時間保温反応をさせ、窒素加圧下で濾過し、濾過ケーキをトルエンで2回洗浄し、ろ液を合わせて化合物(VI-1)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)283.11([M+1]+、100%)。
【0070】
3)化合物(III-1)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-1)溶液をゆっくりと80~85℃に昇温させ、10時間保温反応させて化合物(III-1)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)247.18([M-Cl]+、100%); 31P NMR(33MHz)δ:71.40。
【0071】
4)化合物(I-1)の合成
上記化合物(III-1)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-1)(収率83.5%、含有率98.1%、ee値97.3%)30.1gを得た。
m/z(ESI)182.07([M+1]+、100%);
31P NMR(243 MHz、D2O)δ:53.67;
1H NMR(600 MHz、D2O)δ:4.10(t、J = 6.1 Hz、1H)、2.25 - 2.05(m、2H)、1.99 - 1.75(m、2H)、1.47(d、J = 14.1 Hz、3H);
13 C NMR(151 MHz、D2 O)δ:171.29、52.96(d、J = 16.6 Hz)、25.25(d、J = 93.0 Hz)、22.72(d、J = 2.6 Hz)、13.61(d、J = 92.5 Hz)。
【0072】
<実施例2:L-グルホシネート塩酸塩(I-1)の合成>
【化28】
【0073】
1)化合物(IV-2)の合成
【化29】
窒素保護下、予め-5~5℃に冷却したトルエン100gに、ジメチルアミン(16.20g、0.360mol、2.1eq.)をゆっくりと添加し、メチルホスフィンジクロリド(20g、0.171mol、1.0eq.)を滴下し始める。同時に、システム温度を-5~5℃に保つ。滴下後、0.5時間保温反応させて化合物(IV-2)を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)126.04([M+1]+、100%); 31P NMR(33MHz)δ:150.61.
【0074】
2)化合物(VI-2)の合成
窒素保護下、化合物(II-1)(27.20g、0.164mol、0.96eq.)を、トルエン50gに加え、氷浴冷却下で、ジメチルアミン(7.41g、0.164mol、0.96eq.)をゆっくりと添加し、反応溶液の内温を5~10℃に制御し、上記化合物(IV-2)供給液を滴下し、滴下後、2時間保温反応させ、窒素加圧下で濾過し、濾過ケーキをトルエンで2回洗浄し、ろ液を合わせて化合物(VI-2)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)255.12([M+1]+、100%)。
【0075】
3)化合物(III-2)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-2)溶液をゆっくりと80~85℃まで昇温させ、7時間保温反応させて、化合物(III-2)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)219.14([M-Cl]+、100%);31P NMR(33MHz)δ:78.20。
【0076】
4)化合物(I-1)の合成
上記化合物(III-2)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-1)(収率78.5%、含有率97.6%、ee値95.3%)28.7gを得る。
【0077】
<実施例3:L-グルホシネート塩酸塩(I-1)の合成>
【化30】
【0078】
1)化合物(V-1)の合成
【化31】
ジエチルアミン(51.30g、0.701mol、4.1eq.)を150gのトルエンに加え、窒素保護下で-5~5℃に下げ、メチルホスフィンジクロリド(20g、0.171mol、1.0eq.)を添加し始める。同時に、システム温度を-5~5℃に保つ。滴下後、0.5時間保温反応させて化合物(V-1)を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)191.17([M+1]+、100%);31P NMR(33MHz)δ:79.29.
【0079】
2)化合物(VI-1)の合成
窒素保護下で、化合物(II-2)(32.84g、0.163mol、0.95eq.)を、トルエン50gに加え、氷浴冷却下で上記化合物(V-1)供給液を滴下し、反応溶液の内温を5~10℃に制御し、滴下後2時間保温反応させ、窒素加圧下で濾過し、濾過ケーキをトルエンで2回洗浄し、ろ液を合わせて化合物(VI-1)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)283.13([M+1]+、100%)。
【0080】
3)化合物(III-1)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-1)溶液をゆっくりと80~85℃に昇温させ、10時間保温反応させ、化合物(III-1)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)247.17([M-Cl]+、100%);31P NMR(33MHz)δ:71.10.
【0081】
4)化合物(I-1)の合成
上記化合物(III-1)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-1)(収率73.5%、含有率97.5%、ee値97.5%)26.7gを得る。
【0082】
<実施例4:L-グルホシネート塩酸塩(I-1)の合成>
【化32】
【0083】
1)化合物(V-2)の合成
【化33】
窒素保護下で、温度を-5~5℃に下げ、ジメチルアミン(31.63g、0.701mol、4.1eq.)を、トルエン150gにゆっくりと添加し、メチルホスフィンジクロリド(20g、0.171mol、1.0eq.)を添加し始める。同時に、システムの温度を-5~5℃に保つ。滴下後、0.5時間保温反応させて化合物(V-2)を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)135.09([M+1]+、100%);31P NMR(33MHz)δ:87.63.
【0084】
2)化合物(VI-2)の合成
窒素保護下で、化合物(II-2)(32.84g、0.163mol、0.95eq.)を、トルエン50gに加え、氷浴冷却下で、上記化合物(V-2)供給液を滴下し、反応溶液の内温を5~10℃に制御し、滴下後、2時間保温反応させ、窒素加圧下でろ過し、ろ過ケーキをトルエンで2回洗浄し、ろ液を合わせて化合物(VI-2)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)255.11([M+1]+、100%)。
【0085】
3)化合物(III-2)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-2)溶液をゆっくりと80~85℃に加熱し、8時間保温反応させて化合物(III-2)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)219.12([M-Cl]+、100%);31P NMR(33MHz)δ:77.90。
【0086】
4)化合物(I-1)の合成
上記化合物(III-2)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-1)(収率70.5%、含有率96.2%、ee値97.3%)25.9gを得る。
【0087】
<実施例5:DL-グルホシネート塩酸塩(I-2)の合成>
【化34】
【0088】
1)化合物(IV-1)の合成
【化35】
ジエチルアミン(27.53g、0.376mol、2.2eq.)を、トルエン100gに加え、窒素保護下で、温度を-5~5℃に下げ、メチルホスフィンジクロリド(20g、0.171mol、1.0eq.)を添加し始める。同時に、システム温度を-5~5℃に保つ。滴下後、0.5時間保温反応させて化合物(IV-1)を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0089】
2)化合物(VI-3)の合成
窒素保護下、化合物(II-3)(27.77g、0.168mol、0.98eq.)を、トルエン50gに加え、ジエチルアミン(12.26g、0.168mol、0.98eq.)を加え、均一に攪拌した後、氷浴冷却下で、上記化合物(IV-1)供給液を滴下し、反応液の内温を5~10℃に制御し、滴下後2時間保温反応させ、窒素加圧下でろ過し、ろ過ケーキをトルエンで2回洗浄し、ろ液を合わせて化合物(VI-3)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0090】
3)化合物(III-3)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-3)溶液をゆっくりと80~85℃に昇温させ、10時間保温反応させて、化合物(III-3)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0091】
4)化合物(I-2)の合成
上記化合物(III-3)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-2)(収率81.5%、含有量98.5%)30.2gを得る。
【0092】
<実施例6:DL-グルホシネート塩酸塩(I-2)の合成>
【化36】
【0093】
1)化合物(IV-2)の合成
【化37】
窒素保護下で、温度を-5~5℃に下げ、ジメチルアミン(16.20g、0.359mol、2.1eq.)を、トルエン100gにゆっくりと添加し、メチルホスフィンジクロリド(20g、0.171mol、1.0eq.)を添加し始める。同時に、システムの温度を-5~5℃に保つ。滴下後、0.5時間保温反応させて、化合物(IV-2)を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0094】
2)化合物(VI-4)の合成
窒素保護下で、化合物(II-3)(27.48g、0.166mol、0.97eq.)を、トルエン50gに加え、氷浴冷却下で、ジメチルアミン(7.48g、0.166mol、0.97eq.)をゆっくりと添加し、反応液の内温を5~10℃に制御し、上記化合物(IV-2)供給液を滴下し、滴下後2時間保温反応させ、窒素加圧下でろ過し、ろ過ケーキをトルエンで2回洗浄し、ろ液を合わせて化合物(VI-4)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0095】
3)化合物(III-4)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-4)溶液を、ゆっくりと80-85℃に昇温させ、6時間保温反応させて、化合物(III-4)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0096】
4)化合物(I-2)の合成
上記化合物(III-4)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-2)(収率77.5%、含有率96.8%)28.9gを得る。
【0097】
<実施例7:DL-グルホシネート塩酸塩(I-2)の合成>
【化38】
【0098】
1)化合物(V-1)の合成
【化39】
ジエチルアミン(52.55g、0.719mol、4.2eq.)を、トルエン150gに加え、窒素保護下で、温度を-5~5℃に下げ、メチルホスフィンジクロリド(20g、0.171mol、1.0eq.)を添加し始める。同時に、システム温度を-5~5℃に保つ。滴下後、0.5時間反応させて、化合物(V-1)を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0099】
2)化合物(VI-3)の合成
窒素保護下で、化合物(II-4)(32.84g、0.163mol、0.95eq.)を、トルエン50gに加え、氷浴冷却下で、上記化合物(V-1)供給液を滴下し、反応溶液の内温を5~10℃に制御し、滴下後2時間保温反応させ、窒素加圧下で濾過し、濾過ケーキをトルエンで2回洗浄し、濾液を合わせて化合物(VI-3)を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0100】
3)化合物(III-3)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-3)溶液をゆっくりと80~85℃に昇温させ、10時間保温反応させて化合物(III-3)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0101】
4)化合物(I-2)の合成
上記化合物(III-3)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-2)(収率71.1%、含有率97.8%)25.7gを得る。
【0102】
<実施例8:DL-グルホシネート塩酸塩(I-2)の合成>
【化40】
【0103】
1)化合物(V-2)の合成
【化41】
窒素保護下で、温度を-5~5℃に下げ、ジメチルアミン(31.24g、0.693mol、4.05eq.)を、トルエン150gにゆっくりと添加し、メチルホスフィンジクロリド(20g、0.171mol、1.0eq.)を添加し始める。同時に、システムの温度を-5~5℃に保つ。滴下後、0.5時間保温反応させて、化合物(V-2)を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0104】
2)化合物(VI-4)の合成
窒素保護下で、化合物(II-4)(32.84g、0.163mol、0.95eq.)を、トルエン50gに加え、氷浴冷却下で、上記化合物(V-2)供給液を滴下し、反応溶液の内温を5~10℃に制御し、滴下後2時間保温反応させ、窒素加圧下でろ過し、ろ過ケーキをトルエンで2回洗浄し、ろ液を合わせて化合物(VI-4)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0105】
3)化合物(III-4)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-4)溶液をゆっくりと80~85℃に昇温させ、8時間保温反応させて化合物(III-4)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0106】
4)化合物(I-2)の合成
上記化合物(III-4)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-2)(収率72.5%、含有率97.2%)26.4gを得る。
【0107】
<実施例9:L-グルホシネート塩酸塩(I-1)の合成>
【化42】
【0108】
1)化合物(VI-1)の合成
窒素保護下で、化合物(II-1)(40.37g、0.244mol、0.95eq.)を、トルエン150gに加え、ジエチルアミン(57.24g、0.783mol、3.05eq.)を添加し、均一に攪拌した後、氷浴冷却下で、メチルホスフィンジクロリド(30.0g、0.257mol、1.0eq.)を滴下し、反応液の内温を5~10℃に制御し、滴下後2時間保温反応させ、窒素加圧下でろ過し、ろ過ケーキをトルエンで2回洗浄し、ろ液を合わせて化合物(VI-1)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0109】
2)化合物(III-1)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-1)溶液をゆっくりと80~85℃に昇温させ、10時間保温反応させて化合物(III-1)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
【0110】
3)化合物(I-1)の合成
上記化合物(III-1)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-1)(収率85.5%、含有率98.5%、ee値97.5%)46.0gを得る。
【0111】
<実施例10:L-グルホシネート塩酸塩(I-1)の合成>
【化43】
【0112】
1)化合物(VI-5)の合成
窒素保護下で、化合物(II-1)(33.78g、0.204mol、0.95eq.)を、トルエン150gに加え、氷浴冷却下で、メチルホスフィンジクロリド(25.1g、0.215mol、1.0eq.)をゆっくりと滴下する。同時に、アンモニア(18.46g、1.084mol、5.05eq.)をゆっくりと添加し、反応溶液の内温を5~10℃に制御し、滴下後2時間保温反応させ、窒素加圧下でろ過し、ろ過ケーキをトルエンで2回洗浄し、ろ液を合わせて化合物(VI-5)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)227.07([M+1]+、100%)。
【0113】
2)化合物(III-5)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-5)溶液をゆっくりと60~65℃に昇温させ、10時間保温反応させて、化合物(III-5)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)191.11([M-Cl]+、100%);
【0114】
3)化合物(I-1)の合成
上記化合物(III-5)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-1)(収率69.5%、含有率97.5%、ee値97.2%)31.5gを得る。
【0115】
<実施例11:L-グルホシネート塩酸塩(I-1)の合成>
【化44】
【0116】
1)化合物(IV-3)の合成
【化45】
N-メチルアニリン(50.73g、0.473mol、2.05eq.)を、トルエン100gに加え、窒素保護下で、温度を-5~5℃に下げ、メチルホスフィンジクロリド(27g、0.231mol、1.0eq.)を添加し始める。同時に、システムの温度を-5~5℃に保つ。滴下後、0.5時間保温反応させて、化合物(IV-3)を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(CI)188.05([M+1]+、100%);31P NMR(33MHz)δ:140.51。
【0117】
2)化合物(VI-6)の合成
化合物(II-1)(37.48g、0.226mol、0.98eq.)を、トルエン50gに加え、N-メチルアニリン(24.25g、0.226mol、0.98eq.)を添加し、均一に攪拌した後、氷浴冷却下で、上記化合物(IV-3)供給液を滴下し、反応液の内温を5~10℃に制御し、滴下後5時間保温反応させ、窒素加圧下でろ過し、ろ過ケーキをトルエンで2回洗浄し、ろ液を合わせて化合物(VI-6)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)317.13([M+1]+、100%)。
【0118】
3)化合物(III-6)の合成
窒素の保護下で、上記化合物(VI-6)溶液をゆっくりと80~85℃に昇温させ、12時間保温反応させて化合物(III-6)溶液を得、溶液はそのまま次の反応で使用することができる。
m/z(ESI)281.15([M-Cl]+、100%);31P NMR(33MHz)δ:60.31。
【0119】
4)化合物(I-1)の合成
上記化合物(III-6)溶液に、30%塩酸150gを加え、95~105℃に加熱して反応させる。反応終了後、減圧蒸留により脱溶媒乾固し、無水エタノール150gを加え、加熱還流、冷却、結晶化、吸引ろ過、乾燥して白色固体の目的物(I-1)(収率71.5%、含有率97.5%、ee値96.1%)36.1gを得る。
【0120】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態の具体的な内容に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で本発明の技術的解決策について種々の簡単な変更を加えることが可能であり、これらの簡単な変更はすべて本発明の保護範囲に属する。
【0121】
さらに、上述の具体的な実施形態に記載された種々の具体的な技術的特徴は、矛盾しない限り、任意の適切な方法で組み合わせることが可能であり、不必要な重複を避けるために、様々の可能な組み合わせ方法について、本発明は特に説明しないことに留意されたい。
【0122】
さらに、本発明の種々の異なる実施形態の間で任意の組み合わせを行うことも可能であり、本発明の趣旨に反しない限り、それらも本発明の開示内容として捉えるべきである。
【要約】      (修正有)
【課題】穏やかな反応条件、高収率、低コスト、及び簡単な操作を備えたグルホシネート合成方法を提供する。
【解決手段】式(III)の化合物を加水分解して、式(I)で表されるグルホシネート又はその塩、鏡像異性体又は任意の比率の鏡像異性体の混合物を調製する方法である。本方法は、反応メカニズムの違いにより、ミカエリス-アルブゾフ反応におけるハロゲン化炭化水素副生成物を回避することができる。

[X1はハロゲン;Yは-OR3又は-N(R4)(R5);R1及びR2は夫々独立に、H、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル等;R3、R4及びR5は夫々独立に、H、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクロアルキル、C6~C10アリール等を表す。]
【選択図】なし