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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】分岐流路切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/22 20060101AFI20231031BHJP
   F16K 7/17 20060101ALI20231031BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F16K11/22 Z
F16K7/17 C
F16K27/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019121742
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021008895
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000222336
【氏名又は名称】トーステ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(72)【発明者】
【氏名】小澤 薫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕治
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-138830(JP,A)
【文献】特開2003-148637(JP,A)
【文献】特開平09-159034(JP,A)
【文献】特開2001-280527(JP,A)
【文献】特開2001-355750(JP,A)
【文献】特開平08-312813(JP,A)
【文献】特開平11-311342(JP,A)
【文献】実公平04-042913(JP,Y2)
【文献】特開2007-120731(JP,A)
【文献】特開2007-085374(JP,A)
【文献】特開2003-329154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/14 - 7/17
F16K 11/22
F16K 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)弁ボディ、
b)前記弁ボディに設けられた直線状の流路、および
c)前記流路の所要部に設けられた弁座、前記弁座に対向して配置されたダイヤフラム、前記ダイヤフラムの背面側中央部に接続して設けられ、該ダイヤフラムの表面側中央部を前記弁座に対して離接する作動軸を備えたダイヤフラム弁
を有する分岐流路切換弁であって、
前記ダイヤフラム弁を2個有しており、
第1ダイヤフラム弁は、弁ボディに設けられた直線状の主流路を開閉する二方弁であり、
第2ダイヤフラム弁は、弁ボディに設けられた直線状の分岐流路を開閉する二方弁であり、
前記主流路と、前記分岐流路とが、同一水平面内で直交するように配置され接続されていることを特徴とする分岐流路切換弁。
【請求項2】
前記主流路から前記分岐流路が分岐する分岐点から、前記第2ダイヤフラム弁のダイヤフラムの中央部までの距離が、前記分岐流路の内径の3倍を超えないことを特徴とする、請求項1に記載の分岐流路切換弁。
【請求項3】
前記第1ダイヤフラム弁の弁ボディと、前記第2ダイヤフラム弁の弁ボディとが別体であり、前記主流路と前記分岐流路とが溶接により接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の分岐流路切換弁。
【請求項4】
前記第1ダイヤフラム弁の弁ボディと、前記第2ダイヤフラム弁の弁ボディとが一体に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の分岐流路切換弁。
【請求項5】
前記第1ダイヤフラム弁の弁ボディおよび前記第2ダイヤフラム弁の弁ボディが、略直角三角柱の形状をしており、
前記第1ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に隣接する一方の側面と、前記第2ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に隣接する一方の側面とが同一水平面内に配置され、
前記第1ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に隣接する他方の側面と、前記第2ダイヤフラム弁の弁ボディの一方の底面とが一体に形成されており、
前記第1ダイヤフラム弁の弁ボディの中心軸に沿って主流路が設けられ、前記第2ダイヤフラム弁の弁ボディの中心軸に沿って分岐流路が設けられ、
前記第1ダイヤフラム弁の弁ボディおよび前記第2ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に対向する側面のそれぞれに、前記第1ダイヤフラム弁および前記第2ダイヤフラム弁が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の分岐流路切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種流体配管、特に、医薬品工業、食品工業等における各種流体配管において好適に用いることができる、流路切換弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品等の製造設備のラインには、流路切換弁が使用され、製品またはその原材料である流体(以下、「流体」という。)の流路の切換が行われているが、医薬品、食品等の製造現場では、不純物の混入や雑菌の発生を抑えて衛生度を高めるために厳密な管理が行われている。
【0003】
従来、一方向より流入する流体を二方向に分岐するためには、T字管やベント管を用いた配管構造が採用されることが多かったが、これら従来の配管構造では、制御弁を閉めたときに流体が流路内に滞留し雑菌等が繁殖し易い、配管作業が面倒である、配管に広いスペースを必要とする、といった多くの問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するため、特許文献1および特許文献2には、それぞれ図7および図8に示すように、水平方向に配置された主流路11に第1ダイヤフラム弁13を設け、主流路11から水平方向に第1分岐流路12-1を設け、第1分岐流路12-1から鉛直方向に第2ダイヤフラム弁14および第2分岐流路12-2を設けた分岐流路切換弁10が提案されている。
【0005】
図7および図8に示される分岐流路切換弁10では、弁ボディ15内の第1分岐流路12-1が主流路11と水平に配置されていることから、第1分岐流路12-1内に、主流路11に流れる流体によっては置換できない流体(以下、「置換不能流体」という。)が滞留するのを防止できるものの、次のような問題が生じる。
【0006】
まず、特許文献1および特許文献2の分岐流路切換弁10では、第2分岐流路12-2が鉛直方向に配置されているため、この分岐流路切換弁10を組み込んだ配管設備は、鉛直方向の高さが高くなってしまい、操作部が水平方向だけでなく鉛直方向にも散在する等の操作性が悪くなるという問題が生じ、また、配管設備の安定性・耐震性を向上させるために余分な設備を設ける必要が生じる。すなわち、複数散在する手動弁のハンドルの操作勝手が悪くなり、配管設備が高温となる滅菌工程において操作者がやけどを負う危険があり、また、配管設備の高さが高くなり安定性に欠けることとなる。
【0007】
さらに、特許文献1および特許文献2の分岐流路切換弁10では、第1分岐流路12-1を水平方向に流れる流体が、第2ダイヤフラム弁14に衝突して方向を変え、第2分岐流路12-2を鉛直方向に流れるため、流体の圧力損失が大きくなるという問題が生じる。
【0008】
さらに、特許文献1および特許文献2の分岐流路切換弁10では、第2分岐流路12-2が鉛直方向に配置されているため、これに、水平方向に配置された流路を接続する場合には、接続部の流路内面のスチーム滅菌が十分に行えないという問題が生じる。すなわち、流路が水平方向に配置されている場合には、スチーム滅菌の際に流路底面に集まる凝集水はスチームの流れにより流されるため流路の内面全体を高温(例えば121℃以上)で一定時間(例えば30分間以上)維持できるが、鉛直方向に配置された流路と水平方向に配置された流路の接続部には、スチームの流れによっては流すことのできない凝集水が残留し、高温で一定時間維持できずスチーム滅菌が十分に行えない部分が生じることとなる。
【0009】
また、特許文献3には、図9に示すように、入口ポート21から出口ポート22に至る流路、および入口ポート21から出口ポート23に至る流路の2本の流路を、同一水平面内に配置し、2つの開口部24、25にそれぞれダイヤフラム(図示せず)を設けた切換弁ハウジング20が提案されている。
【0010】
特許文献3の切換弁ハウジング20では、2本の流路が同一水平面内に平行に配置されていることから、置換不能流体の滞留を防止でき、配管設備の鉛直方向の高さは抑えられるが、2つの出口ポート22および23が近接して配置されていることから、これに他の流路を接続するためにはエルボ管を介在させることが必要となり、上記のように流体の圧力損失が大きくなり、また、設置スペースが大きくなるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平9-159034号公報
【文献】特開2001-355750号公報
【文献】米国特許第5427150号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、置換不能流体の滞留が防止できると共に、配管設備の鉛直方向の高さおよび流体の圧力損失を低く抑えることができ、配管設備の流路内面のスチーム滅菌を十分に行うことのできる分岐流路切換弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の分岐流路切換弁は、
a)弁ボディ、b)前記弁ボディに設けられた直線状の流路、およびc)前記流路の所要部に設けられた弁座、前記弁座に対向して配置されたダイヤフラム、前記ダイヤフラムの背面側中央部に接続して設けられ、該ダイヤフラムの表面側中央部を前記弁座に対して離接する作動軸を備えたダイヤフラム弁を有する分岐流路切換弁であって、
前記ダイヤフラム弁を2個有しており、
第1ダイヤフラム弁の弁ボディに設けられた主流路と、第2ダイヤフラム弁の弁ボディに設けられた分岐流路とが、同一水平面内で直交するように配置され接続されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の分岐流路切換弁は、主流路から分岐流路が分岐する分岐点から、第2ダイヤフラム弁のダイヤフラムの中央部までの距離が、分岐流路の内径の3倍を超えないことが好ましい。
【0015】
また、本発明の分岐流路切換弁は、第1ダイヤフラム弁の弁ボディと、第2ダイヤフラム弁の弁ボディとを別体とすることもできるし、一体に形成することもできる。
【0016】
第1ダイヤフラム弁の弁ボディと、第2ダイヤフラム弁の弁ボディとを別体とする場合には、分岐流路の出口と、第2ダイヤフラム弁の入口流路とを溶接により接続することが好ましい。
【0017】
第1ダイヤフラム弁の弁ボディと、第2ダイヤフラム弁の弁ボディとを一体に形成する場合には、
第1ダイヤフラム弁の弁ボディおよび第2ダイヤフラム弁の弁ボディを略直角三角柱の形状とし、
第1ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に隣接する一方の側面と、第2ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に隣接する一方の側面とを同一水平面内に配置し、
第1ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に隣接する他方の側面と、第2ダイヤフラム弁の弁ボディの一方の底面とを一体に形成し、
第1ダイヤフラム弁の弁ボディの中心軸に沿って主流路を設け、第2ダイヤフラム弁の弁ボディの中心軸に沿って分岐流路を設け、
第1ダイヤフラム弁の弁ボディおよび第2ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に対向する側面のそれぞれに、第1ダイヤフラム弁および第2ダイヤフラム弁を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の分岐流路切換弁は、主流路と分岐流路とを同一水平面内で直角に配置することにより、置換不能流体の滞留が防止できると共に、配管設備の鉛直方向の高さおよび流体の圧力損失を低く抑えることができ、配管設備の流路内面のスチーム滅菌を十分に行うことができる。
【0019】
また、主流路から分岐流路が分岐する分岐点から、第2ダイヤフラム弁のダイヤフラムの中央部までの距離を、分岐流路の内径の3倍を超えないように設定することにより、流路の切り換えに伴って生じる流体の滞留量を抑え、洗浄を短時間・容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態の側面図である。
図2】本発明の第1実施形態の上面図である。
図3】本発明の第1実施形態の第2ダイヤフラム弁近辺の構造を示す部分断面図である。
図4】本発明の第2実施形態の側面図である。
図5】本発明の第2実施形態の上面図である。
図6】本発明の第2実施形態の弁ボディ本体の側面図である。
図7】特許文献1に記載された、従来の分岐流路切換弁の部分断面図である。
図8】特許文献2に記載された、従来の分岐流路切換弁の斜視図である。
図9】特許文献3に記載された、従来の分岐流路切換弁の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の分岐流路切換弁の主要な特徴は、ダイヤフラム弁を2個有しており、第1ダイヤフラム弁の弁ボディに設けられた直線状の主流路と、第2ダイヤフラム弁の弁ボディに設けられた直線状の分岐流路とが、同一水平面内で直交するように配置され接続されていることにある。これにより、置換不能流体の滞留が防止でき、不純物の混入や雑菌の繁殖を抑えることができ、洗浄を短時間・容易に行うことができると共に、配管設備の鉛直方向の高さおよび流体の圧力損失を低く抑えることができ、配管設備の流路内面のスチーム滅菌を十分に行うことができる。
【0022】
さらに、主流路から分岐流路が分岐する分岐点から、第2ダイヤフラム弁のダイヤフラムの中央部までの距離が、分岐流路の内径の3倍を超えないようにすることにより、流路の切り換えに伴って生じる流体の滞留量を抑え、洗浄を短時間・容易に行うことができる。
【0023】
以下に、本発明の分岐流路切換弁の第1実施形態および第2実施形態について、図面も参照しながら具体的に説明するが、これらにより本発明が限定されるものではない。
【0024】
<本発明の分岐流路切換弁の第1実施形態>
本発明の第1実施形態の分岐流路切換弁の全体の構造について、図1および図2を用いて説明する。図1は、第1実施形態の側面図を示し、図2は第1実施形態の上面図を示すものである。
【0025】
第1実施形態の分岐流路切換弁は、第1ダイヤフラム弁1および第2ダイヤフラム弁2の2個のダイヤフラム弁を有し、第1ダイヤフラム弁1が設置された第1ダイヤフラム弁の弁ボディ1-1には直線状の主流路1-2が設けられ、また、第2ダイヤフラム弁2が設置された第2ダイヤフラム弁の弁ボディ2-1には直線状の分岐流路2-2が設けられている。そして、主流路1-2と、主流路1-2に接続された分岐流路2-2とは、同一平面内で直交するように配置されている。
【0026】
また、第1実施形態の分岐流路切換弁では、第1ダイヤフラム弁1の弁ボディ1-1と、第2ダイヤフラム弁2の弁ボディ2-1とは別体として構成されており、主流路1-2と、分岐流路2-2とが接続されている。主流路1-2と分岐流路2-2との接続は、溶接により行うことが好ましい。
【0027】
本発明の第1実施形態の分岐流路切換弁の詳細な構造および動作について、図3を用いて説明する。図3は、第1実施形態の第2ダイヤフラム弁2近辺の構造を示す部分断面図であり、第1ダイヤフラム弁1は図示されていないが、主流路1-2の奥側に設けられている。
【0028】
本発明の分岐流路切換弁では、第1ダイヤフラム弁1および第2ダイヤフラム弁2の2個のダイヤフラム弁の構造は同じであるので、ダイヤフラム弁の構造を、図3を用いて第2ダイヤフラム弁2で代表して説明する。なお、( )内は、第1ダイヤフラム弁1の部材を示している。
【0029】
第2ダイヤフラム弁2(第1ダイヤフラム弁1)では、分岐流路2-2(主流路1-2)内に設置された弁座2-3(弁座1-3)に対向して、ダイヤフラム2-4(図示せず)を設け、ダイヤフラム2-4(図示せず)の表面側中央部を弁座2-3(弁座1-3)に対して離接することにより、第2ダイヤフラム弁2(第1ダイヤフラム弁1)を開閉する。
【0030】
第2ダイヤフラム弁2(第1ダイヤフラム弁1)の開閉は、ダイヤフラム2-4(図示せず)の背面側中央部に接続される作動軸2-5(図示せず)を軸方向に進退駆動することにより行われる。作動軸2-5(図示せず)の進退駆動は、図3に示すようにシリンダエア等の流体を供給して行うこともできるし、図7および8に示されるように手動で行うこともできる。
【0031】
第1実施形態の分岐流路切換弁では、次のようにして流路の切換が行われる。
<主流路1-2に流体を流す状態:A> 第1ダイヤフラム弁1を開、第2ダイヤフラム弁2を閉とする。
<分岐流路2-2に流体を流すように切換えた状態:B> 第1ダイヤフラム弁1を開から閉とし、第2ダイヤフラム弁2を閉から開とする。
<主流路1-2に流体を流すように再び切換えた状態:C> 第1ダイヤフラム弁1を閉から開とし、第2ダイヤフラム弁2を開から閉とする。
【0032】
図7および図8に示すような従来の分岐流路切換弁10では、第1分岐流路12-1が主流路11と水平に配置されていることから、第1分岐流路12-1内の、置換不能流体の滞留を防止できるものの、次のような問題が生じる。
1)第2分岐流路12-2が鉛直方向に配置されているため、この分岐流路切換弁10を組み込んだ配管設備は、鉛直方向の高さが高くなってしまい、操作部が水平方向だけでなく鉛直方向にも散在する等の操作性が悪くなるという問題が生じ、また、配管設備の安定性・耐震性を向上させるために余分な設備を設ける必要が生じる。すなわち、複数散在する手動弁のハンドルの操作勝手が悪くなり、配管設備が高温となる滅菌工程において操作者がやけどを負う危険があり、また、配管設備の高さが高くなり安定性に欠けることとなる。
2)第1分岐流路12-1を水平方向に流れる流体が、第2ダイヤフラム弁14に衝突して方向を変え、第2分岐流路12-2を鉛直方向に流れるため、流体の圧力損失が大きくなるという問題が生じる。
3)第2分岐流路12-2が鉛直方向に配置されているため、これに、水平方向に配置された流路を接続する場合には、接続部の流路内面のスチーム滅菌が十分に行えないという問題が生じる。
【0033】
すなわち、流路が水平方向に配置されている場合には、スチーム滅菌の際に流路底面に集まる凝集水はスチームの流れにより流されるため流路の内面全体を高温(例えば121℃以上)で一定時間(例えば30分間以上)維持できるが、鉛直方向に配置された流路と水平方向に配置された流路の接続部には、スチームの流れによっては流すことのできない凝集水が残留し、高温で一定時間維持できずスチーム滅菌が十分に行えない部分が生じることとなる。
【0034】
しかしながら、本発明の第1実施形態の分岐流路切換弁では、直線状の主流路1-2と直線状の分岐流路2-2とが、同一水平面内で直交するように配置されているため、上記1)~3)のような問題は生じない。
【0035】
また、図9に示すような従来の切換弁ハウジング20では、2本の流路が同一水平面内に平行に配置されていることから、置換不能流体の滞留を防止でき、配管設備の鉛直方向の高さは抑えられるが、2つの出口ポート22および23が近接して配置されていることから、これに他の流路を接続するためにはエルボ管を介在させることが必要となり、上記のように流体の圧力損失が大きくなり、また、設置スペースが大きくなるという問題が生じる。
【0036】
しかしながら、本発明の第1実施形態の分岐流路切換弁では、直線状の主流路1-2と直線状の分岐流路2-2とが、同一水平面内で直交するように配置されており、主流路1-2の出口と、分岐流路2-2の出口とは近接していないため、このような問題は生じない。
【0037】
本発明の分岐流路切換弁において用いられる、第1ダイヤフラム弁1および第1ダイヤフラム弁1のダイヤフラムとしては、表面側(すなわち、弁座側)にテフロン(ポリテトラフルオロエチレンで、デュポン社の登録商標)等の耐薬品性に優れ、耐水性や表面滑性も良好なフッ素樹脂からなる層を有し、この層の裏側にゴム製のバックアップ層を設けたものを好適に使用できる。
【0038】
<本発明の分岐流路切換弁の第2実施形態>
本発明の第2実施形態の分岐流路切換弁について、図4~6を用いて説明する。図4は、第2実施形態の側面図を示し、図5は第2実施形態の上面図を示し、図6は第2実施形態の弁ボディを示すものである。
【0039】
第2実施形態の分岐流路切換弁は、第1実施形態の分岐流路切換弁と略同様の構造を有し同様の動作を行うものであるが、第1ダイヤフラム弁1の弁ボディ1-1と、第2ダイヤフラム弁2の弁ボディ2-1とが一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0040】
すなわち、第2実施形態の分岐流路切換弁は、
第1ダイヤフラム弁1の弁ボディ1-1および第2ダイヤフラム弁2の弁ボディ2-1が、略直角三角柱の形状をしており、
第1ダイヤフラム弁1の弁ボディ1-1の直角部に隣接する一方の側面Cと、第2ダイヤフラム弁2の弁ボディ2-1の直角部に隣接する一方の側面Fとが同一水平面内に配置され、
第1ダイヤフラム弁1の弁ボディ1-1の直角部に隣接する他方の側面Dと、第2ダイヤフラム弁2の弁ボディ2-1の一方の底面Gとが一体に形成されており、
第1ダイヤフラム弁1の弁ボディ1-1の中心軸に沿って主流路1-2が設けられ、第2ダイヤフラム弁2の弁ボディ2-1の中心軸に沿って分岐流路2-2が設けられ、
第1ダイヤフラム弁1の弁ボディ1-1および第2ダイヤフラム弁2の弁ボディ2-1の直角部に対向する側面E、Hのそれぞれに、第1ダイヤフラム弁1および第2ダイヤフラム弁2が設けられていることを特徴とするものである。
【0041】
第2実施形態の第1ダイヤフラム弁1の弁ボディ1-1と、第2ダイヤフラム弁2の弁ボディ2-1とは、予め一体物として作成されていてもよいし、個別に作成した後、溶接等により接合されてもよい。図6に示される弁座1-3および弁座2-3には、それぞれ、第1ダイヤフラム弁1および第2ダイヤフラム弁2の他の部材が形成される。
【0042】
本発明の分岐流路切換弁では、流体が分岐流路切換弁内に滞留するのを防止するために、
1)図6に示すように、第1ダイヤフラム弁1の弁座1-3における流体と接する部分の垂直方向最下端、第2ダイヤフラム弁2の弁座2-3における流体と接する部分の垂直方向最下端、主流路1-2の内面の垂直方向最下端、および分岐流路2-2の垂直方向最下端を、同一水平面I内に配置すること、
2)図3に示すように、主流路1-2から分岐流路2-2が分岐する分岐点から、第2ダイヤフラム弁2のダイヤフラムの中央部までの距離Aが、分岐流路の内径Bの3倍を超えないようにすること、
等の配置調整が必要となるが、第2実施形態のように、第1ダイヤフラム弁1の弁ボディ1-1と、第2ダイヤフラム弁2の弁ボディ2-1とが一体に形成した場合には、配置調整を簡単に行うことができ、また、分岐流路切換弁をコンパクトにできる。
【0043】
このように、発明の分岐流路切換弁は、主流路と分岐流路とを同一水平面内で直角に配置することにより、置換不能流体の滞留が防止でき、不純物の混入や雑菌の繁殖を抑えることができ、洗浄を短時間・容易に行うことができると共に、配管設備の鉛直方向の高さおよび流体の圧力損失を低く抑えることができ、配管設備の流路内面のスチーム滅菌を十分に行うことができる。
【0044】
また、主流路から分岐流路が分岐する分岐点から、第2ダイヤフラム弁のダイヤフラムの中央部までの距離を、分岐流路の内径の3倍を超えないように設定することにより、流路の切り換えに伴って生じる流体の滞留量を抑え、洗浄を短時間・容易に行うことができる。
【0045】
なお、主流路から分岐流路が分岐する分岐点から、第2ダイヤフラム弁のダイヤフラムの中央部までの距離が長くなると、主流路に流れる流速(一般的に2m/s以下)によっては置換できない流体(置換不能流体)が生じる。この置換不能流体を置換するために、主流路に流れる流速を必要以上に高速とすると、無駄なエネルギーを要することとなる。
【符号の説明】
【0046】
1 第1ダイヤフラム弁
1-1 (第1ダイヤフラム弁の)弁ボディ
1-2 (第1ダイヤフラム弁の)主流路
1-3 (第1ダイヤフラム弁の)弁座
2 第2ダイヤフラム弁
2-1 (第2ダイヤフラム弁の)弁ボディ
2-2 (第2ダイヤフラム弁の)分岐流路
2-3 (第2ダイヤフラム弁の)弁座
2-4 (第2ダイヤフラム弁の)ダイヤフラム
2-5 (第2ダイヤフラム弁の)作動軸
A 主流路から分岐流路が分岐する分岐点から、第2ダイヤフラム弁のダイヤフラムの中央部までの距離
B 分岐流路の内径
C 第1ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に隣接する一方の側面
D 第1ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に隣接する他方の側面
E 第1ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に対向する側面
F 第2ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に隣接する一方の側面
G 第2ダイヤフラム弁の弁ボディの一方の底面
H 第2ダイヤフラム弁の弁ボディの直角部に対向する側面
I 水平面
10 分岐流路切換弁
11 主流路
12-1 第1分岐流路
12-2 第2分岐流路
13 第1ダイヤフラム弁
14 第2ダイヤフラム弁
15 弁ボディ
20 切換弁ハウジング
21 入口ポート
22,23 出口ポート
24,25 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9