(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】青果物の内部品質検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/359 20140101AFI20231031BHJP
【FI】
G01N21/359
(21)【出願番号】P 2019223594
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391017207
【氏名又は名称】三井金属計測機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 典男
(72)【発明者】
【氏名】横井 政陽
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-212335(JP,A)
【文献】特開平08-178838(JP,A)
【文献】特開2007-303940(JP,A)
【文献】特開昭53-127783(JP,A)
【文献】特開平09-085185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01N 33/00 - G01N 33/46
G01J 3/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
B07C 1/00 - B07C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物の内部品質を検査するための内部品質検査装置であって、
前記青果物に対して検査光を照射する
複数の投光手段と、
前記青果物を透過した検査光を受光する
1つの受光手段と、
受光した前記検査光に基づき、前記青果物の内部品質の検査処理を行う演算処理手段と、を備え、
前記検査光は、前記青果物に対しての照射形状が略方形となるように整形され、かつ、前記青果物
の半周以上に亘って照射されるように
、前記複数の投光手段が略円環状に配置され、
前記青果物と、前記投光手段とが、相対的に移動することによって、前記青果物に対する前記検査光の照射領域を移動させ、前記青果物を複数の領域に分割して、内部品質を検査するように構成されることを特徴とする内部品質検査装置。
【請求項2】
前記青果物を搬送する搬送手段をさらに備え、
前記搬送手段により前記青果物を所定方向に搬送することにより、前記青果物と前記投光手段とを相対的に移動するように構成されることを特徴とする請求項
1に記載の内部品質検査装置。
【請求項3】
前記投光手段を移動させる移動機構をさらに備え、
前記移動機構により前記投光手段を所定方向に移動させることにより、前記青果物と前記投光手段とを相対的に移動するように構成されることを特徴とする請求項
1に記載の内部品質検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、パイナップルに生じる黒目病など外観からは判別が困難で、かつ、青果物内部において部分的に生じる内部品質を非破壊で検査するための内部品質検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果実や野菜などの青果物の内部品質を非破壊的に検査する方法として、近赤外分光法が知られている。
近赤外分光法は、例えば、特許文献1,2に開示されるように、青果物に対して近赤外光の波長帯域を含む光を照射し、青果物を透過した透過光及び/又は青果物を反射した反射光を受光することによって、青果物による光強度の減少(光の吸収)に基づいて、その青果物の品質(特性)を測定するものである。
【0003】
内部品質の有無に応じて、光強度の減少が生じる波長やその大小が異なっているため、青果物の内部品質を検査するために、近赤外分光法を用いることで、簡単かつ正確に、青果物の内部品質の有無を検査することができる。
【0004】
特に、空洞果など青果物の内部において、局所的に発生する内部品質を検出するためには、特許文献2~5に開示されるように、複数の光源から近赤外光を照射するとともに、複数の受光部により青果物を透過した透過光を検出することによって、検出漏れを無くすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-174030号公報
【文献】特開2006-98106号公報
【文献】特開平6-288903号公報
【文献】国際公開第01/022062号
【文献】国際公開第05/108956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2~5に開示されるような複数の光源を用いた場合であっても、受光部により検出された透過光は、青果物全体の平均値に対応するものであった。このため、青果物の糖度や酸度などや、例えば、長物、楕円球状の青果物の内部に生じる空洞など、特定箇所に生じる内部障害については検出することができていたが、青果物内部において局所的に生じる、例えば、パイナップルの黒目病などの内部障害を検出することは困難であった。
【0007】
本発明では、このような現状に鑑み、例えば、パイナップルに生じる黒目病など、青果物内部において、不特定箇所に生じる内部障害を含む、青果物の内部品質を非破壊で検査することができる内部品質検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述するような従来技術における課題を解決するために発明されたものであって、本発明の内部品質検査装置は、
青果物の内部品質を検査するための内部品質検査装置であって、
前記青果物に対して検査光を照射する複数の投光手段と、
前記青果物を透過した検査光を受光する1つの受光手段と、
受光した前記検査光に基づき、前記青果物の内部品質の検査処理を行う演算処理手段と、を備え、
前記検査光は、前記青果物に対しての照射形状が略方形となるように整形され、かつ、前記青果物の半周以上に亘って照射されるように、前記複数の投光手段が略円環状に配置され、
前記青果物と、前記投光手段とが、相対的に移動することによって、前記青果物に対する前記検査光の照射領域を移動させ、前記青果物を複数の領域に分割して、内部品質を検査するように構成されることを特徴とする。
【0010】
また、前記青果物を搬送する搬送手段をさらに備え、
前記搬送手段により前記青果物を所定方向に搬送することにより、前記青果物と前記投光手段とを相対的に移動するように構成することができる。
【0011】
また、前記投光手段を移動させる移動機構をさらに備え、
前記移動機構により前記投光手段を所定方向に移動させることにより、前記青果物と前記投光手段とを相対的に移動するように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、青果物の略半周に亘って検査光を照射するとともに、青果物Tを複数の領域に分割して、内部品質を検査することによって、青果物において検査光が透過しない箇所が生じることなく、また、青果物の分割された領域毎に内部品質を検査しているため、例えば、パイナップルに生じる黒目病など、青果物内部において、不特定箇所に生じる内部障害であっても、精度良く発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態の内部品質検査装置の構成を示す平面図
【
図3】
図3は、青果物に対する検査光の照射領域を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、青果物の検査領域の移動を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の内部品質検査装置の別の実施形態における構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいて、より詳細に説明する。
図1は、本実施形態の内部品質検査装置の構成を示す平面図、
図2は、
図1のA-A線における断面図である。
【0015】
図1,2に示すように、本実施形態の内部品質検査装置10は、青果物Tを所定方向に搬送する搬送手段12と、搬送手段12の側方及び上方に略円環状に設けられた複数の投光手段14a~14hと、搬送手段12の下方に設けられた受光手段16と、受光手段16により受光した光強度に基づき青果物Tの検査処理を行う演算処理手段18と、を備えている。
【0016】
搬送手段12は、青果物Tを所定方向に搬送可能なものであって、搬送手段12の下方に設けられた受光手段16に、青果物Tを透過した検査光(透過光)が受光可能なように構成されている。このような搬送手段12として、本実施形態では、
図2に示すような、穴あきトレー12aを用いたトレーコンベアを用いているが、これに限らず、例えば、青果物Tの大きさよりも小さい幅だけ離間して配置された2条のベルトコンベアであってもよい。
【0017】
投光手段14a~14hはそれぞれ、青果物Tに対して照射形状が略方形となるように整形された検査光を照射するように構成される。そして、略円環状に配置された投光手段14a~14hから検査光を照射することによって、
図2,3に示すように、青果物Tの略半周に亘って、検査光が照射(検査光の照射領域M)されることとなる。
【0018】
本実施形態では、複数の投光手段14a~14hを用いて青果物Tの略半周に亘って、検査光を照射するようにしているが、例えば、LEDアレイなどからなる1つの投光手段によって照射するようにしても構わない。
【0019】
投光手段14a~14hとしては、検査光として、400~1700nmの波長を含む光、より好ましくは、500~1100nmの波長を含む光を照射することができるものであれば、特に限定されるものではないが、光源として、例えば、ハロゲンランプ、ナトリウムランプ、蛍光管、ネオン管、LED(Light Emitting Diode)、レーザー光源などを用いることができ、また、波長可変光源を用いてもよい。
【0020】
投光手段14a~14hの光源として、ハロゲンランプなど光束が拡散する光源を用いる場合には、スリットやコリメーターなどの光学系(図示せず)によって、光束を整形し、照射形状が、搬送方向における青果物Tの幅よりも細い帯状となるように調整するように構成される。
【0021】
受光手段16としては、このような検査光を受光可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、Si、InGaAs、Ge、PbSなどのフォトダイオードであってもよいし、また、これらのフォトダイオードを用いたエリアカメラ、ラインカメラ、分光器、イメージング分光器、マルチバンドカメラなどを用いることができる。
【0022】
演算処理手段18は、投光手段14a~14h及び受光手段16の動作を制御するとともに、受光手段16によって取得された測定値に基づき、青果物Tの検査を行う。このような演算処理手段18としては、例えば、演算手段、記憶手段、通信手段などを有するコンピュータとすることができ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、汎用サーバなどであってもよいし、マイクロコントローラなどの形態とすることもできる。
【0023】
なお、演算処理手段18は、受光手段16によって取得された測定値、すなわち、透過光の光量値をそのまま用いて検査を行ってもよいし、例えば、受光手段16として分光機能を有するものを用いている場合には、透過光のスペクトルを測定値として用いることもできる。もしくは、投光手段14a~14hから受光手段16に直接検査光を照射した際に受光手段16によって受光した直接光のスペクトルと、透過光のスペクトルとに基づき算出される吸光度スペクトルを測定値としてもよいし、この吸光度スペクトルを波長に対して2次微分したデータを測定値としてもよい。すなわち、青果物Tの検査内容に応じて、測定値を適宜変換させることで、検査内容に対して最適な測定値を用いることが好ましい。
【0024】
このように構成される本実施形態の内部品質検査装置10では、演算処理手段18において、測定値に基づき、例えば、青果物Tの糖度、酸度、熟度、内部障害などの内部品質を検査することができる。コンピュータにより扱いやすくするため、内部品質は数値化し、品質値とすることが好ましい。また、品質値として異常の有無を検査する場合には、ブール型(Boolean datatype)のデータとすることもできる。なお、このような内部品質の検査方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
【0025】
なお具体的には、本実施形態の内部品質検査装置10では、以下のようにして、青果物Tの内部品質の検査を行うことができる。
搬送手段12の穴あきトレー12aに青果物Tを載置した状態で、所定方向に一定速度で搬送する。
図4(a)に示すように、青果物Tが検査光の照射領域に到達すると、投光手段14a~14hから青果物Tに対して検査光を照射するとともに、受光手段16によって青果物Tを透過した検査光(透過光)を受光する。
【0026】
演算処理手段18は、受光手段16によって取得された測定値に基づき、青果物Tにおける検査光の照射領域(青果物Tの第1領域M1)の内部品質を検査する。
【0027】
搬送手段12により青果物Tを搬送するに伴い、
図4(b)、(c)に示すように、青果物Tにおける検査光の照射領域が、第M領域M
M、第N領域M
Nと移動する(M,Nは自然数であり、M<N。)。受光手段16は、このように検査光の照射領域を移動させながら、照射領域における測定値を順次取得し、これに基づき、演算処理手段18は、各照射領域における内部品質を順次検査する。青果物Tに対する照射領域をいくつに分割するかは、青果物Tの種類や大きさに応じて適宜決定することができる。
【0028】
このように、青果物Tの略半周に亘って検査光を照射するとともに、青果物Tを複数の領域に分割して、内部品質を検査することによって、青果物Tにおいて検査光が透過しない箇所が生じることなく、また、青果物Tの分割された領域毎に内部品質を検査しているため、例えば、パイナップルに生じる黒目病など、青果物内部において、不特定箇所に生じる内部障害であっても、精度良く発見することができる。
【0029】
なお、青果物Tに対する検査光の照射領域は、例えば、搬送手段12の穴あきトレー12aの位置を、リニアエンコーダーなどを用いて検出することによって把握するように構成することができる。
【0030】
図5は、本発明の内部品質検査装置の別の実施形態における構成を示す平面図、
図6は、
図5のB-B線における断面図である。
本実施形態における内部品質検査装置10は、基本的には、
図1~4に示す内部品質検査装置10と同様な構成であり、同様な構成要素には、同じ符合を付して、その詳細な説明を省略する。
【0031】
本実施形態の内部品質検査装置10では、青果物Tを載置する穴あきトレー52aを有する載置台52と、投光手段14a~14hを一定速度で所定方向に移動させる移動機構54と、を備えている。
【0032】
図1~4に示す内部品質検査装置10では、穴あきトレー12aに載置した青果物Tを搬送手段12によって搬送することで、青果物Tに対する検査光の照射領域を移動させていたが、本実施形態の内部品質検査装置10では、青果物Tは載置台52に載置した状態で、投光手段14a~14hを移動機構54によって移動させることで、青果物Tに対する検査光の照射領域を移動させる。
【0033】
このように構成した場合であっても、
図1~4に示す内部品質検査装置10と同様に内部品質の検査を行うことが可能となる。
すなわち、青果物Tと投光手段14a~14hとを相対的に移動させることで、青果物Tに対する検査光の照射領域を移動させ、青果物Tを複数の領域に分割して、内部品質を検査することができる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 内部品質検査装置
12 搬送手段
12a 穴あきトレー
14a 投光手段
14b 投光手段
14c 投光手段
14d 投光手段
14e 投光手段
14f 投光手段
14g 投光手段
14h 投光手段
16 受光手段
18 演算処理手段
52 載置台
52a 穴あきトレー
54 移動機構
M 検査光の照射領域
T 青果物