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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A61B3/14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019067254
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162929
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】芳野 雅幸
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/020635(WO,A1)
【文献】特表2018-504219(JP,A)
【文献】特開2018-078977(JP,A)
【文献】特開2012-034925(JP,A)
【文献】特開2010-259531(JP,A)
【文献】特開2009-219644(JP,A)
【文献】特開2017-217076(JP,A)
【文献】特開2013-074986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 5/50
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 -20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを介して被検眼の眼底へ照明光を照射する照射光学系と、前記対物レンズを前記照射光学系と共用し、更に、前記照明光の眼底反射光を受光する受光素子を有する受光光学系と、を含む撮影光学系と、
前記照射光学系および前記受光光学系の一方または両方を制御することで、撮影条件を異ならせて、少なくとも2枚の眼底画像を前記受光素子からの信号に基づいて取得する撮影制御手段と、
前記撮影条件が異なる少なくとも2枚の前記眼底画像を合成することで合成画像を得る画像処理手段と、を備え、
前記撮影光学系は、視度補正光学系を含み、
前記撮影制御手段は、前記合成画像の基となる少なくとも2枚の前記眼底画像を撮影する際に、前記撮影条件として視度補正光学系における視度補正量を、前記視度補正光学系を制御することで撮影毎に異ならせる眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼底の正面画像を得るための眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼底の正面画像を撮影する眼底撮影装置が、眼科分野において広く利用されている。眼底撮影装置としては、眼底カメラ、走査型レーザー検眼鏡の他、次のような装置が挙げられる。例えば、特許文献1には、眼底上でスリット状の照明光を走査し、照明された眼底領域の像を、走査に従って2次元的な撮像面に逐次投影させることで、眼底の正面画像を得る装置が開示されている。眼底撮影装置の多くにおいては、対物レンズを介して照明光の投受光が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭61-48940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対物レンズを有する装置では、少なくとも一部の撮影条件の下で、対物レンズの表面または裏面で生じる反射光が眼底画像内にアーチファクトとして映り込んでしまう可能性がある。アーチファクトは、眼底画像の中央付近に輝点像(反射像)として現れる。輝点像は、診断および観察の障害となり得る。
【0005】
本開示は、従来技術の問題点の少なくとも1つに鑑みてなされたものであり、アーチファクトが抑制された眼底画像を取得できる眼底撮影装置を提供すること、を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る眼底撮影装置は、対物レンズを介して被検眼の眼底へ照明光を照射する照射光学系と、前記対物レンズを前記照射光学系と共用し、更に、前記照明光の眼底反射光を受光する受光素子を有する受光光学系と、を含む撮影光学系と、前記照射光学系および前記受光光学系の一方または両方を制御することで、撮影条件を異ならせて、少なくとも2枚の眼底画像を前記受光素子からの信号に基づいて取得する撮影制御手段と、前記撮影条件が異なる少なくとも2枚の前記眼底画像を合成することで合成画像を得る画像処理手段と、を備え、前記撮影光学系は、視度補正光学系を含み、前記撮影制御手段は、前記合成画像の基となる少なくとも2枚の前記眼底画像を撮影する際に、前記撮影条件として視度補正光学系における視度補正量を、前記視度補正光学系を制御することで撮影毎に異ならせる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、アーチファクトが抑制された眼底画像を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】1つの実施例に係る装置の外観構成を示した図である。
図2】実施例の撮影ユニットに収容される光学系を示した図である。
図3】実施例に係る装置の制御系を示したブロック図である。
図4A】被検眼の屈折度数に応じた視度補正光学系の動作を説明するための図であり、屈折度数が第1の範囲であるときの視度補正の状態を示す図である。
図4B】被検眼の屈折度数に応じた視度補正光学系の動作を説明するための図であり、屈折度数が第2の範囲であるときの視度補正の状態を示す図である。
図5】第2のアーチファクト抑制処理の概要を説明するための図である。
図6】第3のアーチファクト抑制処理の概要を説明するための図である。
図7図2の光学系による、眼底に対する照明光の照射および走査の態様を示した図である。
図8図2の光学系による、眼底に対する照明光の照射および走査の態様を示した図である。
図9A】第4のアーチファクト抑制処理の概要を説明するための図であり、2つの投光領域から同時に照明光を照射した場合に得られる眼底画像を示す。
図9B】第4のアーチファクト抑制処理の概要を説明するための図であり、2つの投光領域のうち片方から選択的に照明光を照射した場合に得られる眼底画像を示す。
図10】第5のアーチファクト抑制処理の概要を説明するための図である。
図11図2の光学系において、走査部として適用可能なオプティカルチョッパーを示した図である。
図12】第6のアーチファクト抑制処理の概要を説明するための図であり、特に、幅の異なる複数のスリットが形成されたオプティカルチョッパーを用いた例を示している。
図13】装置の撮影動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「概要」
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る眼底撮影装置の実施形態を説明する。以下では、第1および第2実施形態のそれぞれにおいて、被検眼または装置内部での反射・散乱によって生じるアーチファクトが抑制される装置を開示する。各実施形態は、他の実施形態の一部または全部を適宜利用できる。
【0010】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態において、眼底撮影装置(図1参照)は、撮影光学系(例えば、図2参照)、および、制御部(例えば、図3参照)を少なくとも有する。眼科撮影装置は、追加的に、屈折度数情報取得部を有していてもよい。
【0011】
<制御部>
制御部は、眼底撮影装置における各部の制御処理と、演算処理とを行う処理装置(プロセッサ)である。例えば、制御部は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。本実施形態において、制御部は画像処理部を兼ねていてもよい。画像処理部は、眼底画像の生成、および、眼底画像に対する各種画像処理のうち少なくとも何れかを実行する。
【0012】
<撮影光学系>
撮影光学系は、対物レンズを介して被検眼の眼底へ照明光を投受光して、眼底画像を撮影するために利用される。第1実施形態において、撮影光学系は、照射光学系、受光光学系、および、視度補正光学系を有する(図2図4A図4B参照)。
【0013】
照射光学系は、対物レンズを介して被検眼の眼底へ照明光を照射する。追加的に、照射光学系は、照明光を発する光源(照明光源)を有していてもよい。受光光学系は、照明光の眼底反射光を受光する受光素子を有する。受光素子からの信号は、画像処理部へ入力される。画像処理部では、受光素子からの信号に基づいて被検眼の眼底画像が取得(生成)される。なお、本開示では、眼底の正面画像を「眼底画像」と称する。
【0014】
照射光学系と受光光学系とは、少なくとも対物レンズを共用する。その他、照射光学系と受光光学系とは、光路結合部を共用していてもよい。光路結合部は、照明光の投光光路と眼底反射光の受光光路とを、結合および分離する。この場合、光路結合部によって形成される投光光路と受光光路との共通光路上に、対物レンズは配置される。
【0015】
撮影光学系は、眼底上で照明光をスキャンすることによって撮影を行う、走査型の光学系であってもよい。また、撮影光学系は、非走査型の光学系であってもよい。走査型の光学系の一例として、スポットスキャンタイプの光学系と、ラインスキャンタイプの光学系とが挙げられる。スポットスキャンタイプの光学系では、眼底上でスポット状の照明光が、二次元的にスキャンされる。ラインスキャンタイプの光学系では、ライン状の照明光が一方向にスキャンされる。ライン状の照明光は、例えば、眼底上で直線的にスキャンされてもよいし、眼底上で回転スキャンされてもよい。回転スキャンの場合、回転中心は、撮影光学系の光軸であってもよい。走査型の光学系では、点受光素子、ラインセンサ、二次元受光素子(撮影素子)等の中からいずれかを、受光素子として適宜採用し得る。また、非走査型の光学系の一例としては、一般的な眼底カメラの光学系等が挙げられる。
【0016】
<視度補正光学系>
視度補正光学系(図2図4A図4B参照)は、被検眼の屈折度数に応じて、撮影光学系の視度を補正するために利用される。被検眼の屈折度数は、屈折誤差および視度値とも称する。本実施形態において、視度補正光学系は、照射光学系における視度補正量(以下、「照射側補正量」と称する)と受光光学系における視度補正量(以下、「受光側補正量」と称する)とを、それぞれ独立に調整する。
【0017】
視度補正光学系は、撮影光学系の2箇所以上に分かれて配置されていてもよい。この場合、視度補正光学系は、第1視度補正光学系と第2視度補正光学系とを有していてもよい。第1視度補正光学系における視度補正量と第2視度補正光学系における視度補正量とは独立に設定される。例えば、第1視度補正光学系は、照射光学系と受光光学系とのうち一方の光路上に配置されてもよく、この場合、第2視度補正光学系は、一方に対する他方の光路上、又は、照射光学系と受光光学系との共通光路上に配置されてもよい。
【0018】
本実施形態では、第1駆動部(第1ドライバ)と、第2駆動部(第2ドライバ)と、を有していてもよい。第1駆動部と第2駆動部とは、各々独立に、制御部によって制御される。第1駆動部は、第1視度補正光学系に含まれる少なくとも1つの光学素子を駆動する。また、第2駆動部は、第2視度補正光学系に含まれる少なくとも1つの光学素子を駆動する。
【0019】
なお、共通光路に第2視度補正光学系が配置される場合、上記他方の光学系における視度補正量は、第1視度補正光学系における視度補正量と第2視度補正光学系における視度補正量との合計によって定められる。説明の便宜上、第1視度補正光学系と第2視度補正光学系とのうち、照射光学系の視度に影響する一方または両方を、「照射側視度補正光学系」と称し、受光光学系の視度に影響する一方または両方を、「受光側視度補正光学系」と称する場合がある。
【0020】
ところで、対物レンズに関して眼底と共役な位置(つまり、眼底の中間像面の位置)は、被検眼の屈折度数(主には、球面度数)に応じて変位する。なお、図4A図4Bにおいては、中間像面の位置を符号Jとして示す。本実施形態では、中間像面と、受光光学系
の受光面とが共役関係となるように、対物レンズと受光面との間に配置される視度補正光学系が駆動されることによって、眼底の像が受光面において良好に結像される。
【0021】
なお、本開示において「共役」とは、必ずしも完全な共役関係に限定されるものではなく、「略共役」を含むものとする。即ち、各部の技術意義との関係で許容される範囲で、完全な共役位置からズレて配置される場合についても、本開示における「共役」に含まれる。
【0022】
また、照射光学系においても視度補正が行われると、例えば、照明範囲の誤差が抑制されたり、眼底における照明光の光量分布が均一化しやすくなったりすると考えられる。しかしながら、照射側補正量に応じて、照射光学系における集光位置が光軸に沿って変位する。詳細には、照射側補正量がマイナスディオプター側に変移するにつれて、集光位置は対物レンズに近づいていくと考えられる。なお、図4A図4Bにおいては、集光位置を、符号Kとして示す。集光位置が対物レンズの表面に近づくと、対物レンズによる照明光の反射が、アーチファクトとして眼底画像に映り込みやすくなる場合がある。つまり、仮に、照射側補正量を屈折度数に応じて調整するのであれば、被検眼の屈折度数がよりマイナスディオプター側の値であるほど(例えば、より度数の高い近視眼である場合ほど)、アーチファクトが生じやすくなる。
【0023】
<照射側補正量と受光側補正量とを不一致とすることによるアーチファクト抑制>
これに対し、制御部は、視度補正光学系を制御することによって、照射側補正量と受光側補正量とを互いに異なる値に調整してもよい(図4B参照)。例えば、制御部は、被検眼の屈折度数に応じて受光側補正量を調整してもよい。より詳細には、受光側補正量を、屈折度数と略同一なディオプターに調整してもよい。
【0024】
このとき更に、制御部は、対物レンズを介して形成される眼底の中間像を基準として、視度補正光学系を介した照明光の集光位置を調整してもよい(図4B参照)。より詳細には、集光位置が中間像に対して対物レンズからより離れた位置へ配置されるように、照射側補正量が調整されてもよい。これにより、眼底の像が受光光学系の撮像面に対して良好に結像されつつ、対物レンズの反射によるアーチファクトの発生が抑制される。その結果、良好な眼底画像が撮影される。
【0025】
このとき、照射側補正量は、受光側補正量に対して、絶対値がより小さくなるように調整されてもよい。照射側補正量と受光側補正量との差が大きくなるほど、受光光量の低下等の種々の影響が生じやすくなる。そこで、照射側補正量と受光側補正量との間に大きな差が生じないように、各補正量が制限されることで、アーチファクトの発生を抑制しながら、画質の良好な眼底画像を得ることができる。
【0026】
制御部は、照射側補正量と受光側補正量をと互いに異なる値に調整する場合において、照射側補正量を受光側補正量によらず一定の値に調整してもよい。但し、必ずしもこれに限られるものでは無く、同様の場合において、照射側補正量は、受光側補正量毎に異なる値に調整されてもよい。
【0027】
但し、照射側補正量と受光側補正量とが互いに異なる値となるように、各撮影において常に調整される必要は無い。例えば、所定の撮影条件下においては、照射側補正量と受光側補正量とが、互いに一致されてもよい。ここで、アーチファクトが問題とならない撮影条件については、実験および光学シミュレーション等によって予め調べることができる。例えば、照射側補正量と受光側補正量とを一致させた状態でアーチファクトが生じない視度補正量の範囲が、撮影条件として予め定められていてもよい。照射側補正量と受光側補正量とが互いに一致する場合において、照射側補正量と受光側補正量との各々は、屈折度数と略同一なディオプターに調整されてもよい。
【0028】
<撮影モードを屈折度数に応じて切換える>
本実施形態において制御部は、照射側補正量と受光側補正量とを互いに一致させて撮影を行う第1撮影モード(図4A参照)と、照射側補正量と受光側補正量とを互いに異ならせた状態で撮影を行う第2撮影モード(図4B参照)との間で、装置の撮影モードを、被検眼の屈折度数に応じて切換えてもよい。屈折度数は、第1の範囲と、その第1の範囲に対してマイナスディオプター側の第2の範囲とに大別されてもよい。つまり、第2の範囲は、第1の範囲に対して、対物レンズを介して形成される眼底反射光の中間像面(主には、対物レンズの一番近くに形成される中間像面)が、対物レンズの後面へより近づくような範囲である。なお、図4A図4Bにおいては、第1の範囲と対応する視度補正量の範囲が符号A1にて図示した範囲であり、第2の範囲と対応する視度補正量の範囲が符号A2にて図示した範囲である。屈折度数が第1の範囲である場合と第2の範囲である場合との間で、撮影モードが切換えられてもよい。制御部は、屈折度数が第1の範囲である場合に、第1撮影モードに切換えてもよい。この場合、制御部は、照射側補正量と受光側補正量とを、照射側補正量と受光側補正量とを互いに一致させた状態で眼底を撮影してもよい。このとき、照射側補正量と受光側補正量との両方が、屈折度数に応じた値へ調整されてもよい。また、制御部は、屈折度数が第2の範囲である場合には、第2撮影モードに切り替えてもよい。この場合、制御部は、受光側補正量を被検眼の屈折度数に応じて調整すると共に、照射側補正量を受光側補正量に対してより絶対値の小さな値に設定してもよい。
【0029】
第1の範囲と第2の範囲との閾値となる屈折度数の値は、例えば、実験および光学シミュレーション等によって予め調べることができる。例えば、照射側補正量と受光側補正量とを一致させつつ視度補正光学系における視度補正量をプラスディオプター側からマイナスディオプター側へ変化させていったときに、対物レンズの反射によるアーチファクトが生じはじめる値を、閾値として定めてもよい。
【0030】
<走査型の撮影光学系>
ところで、走査型の撮影光学系としては、有害光除去部と、走査部と、を有する装置が知られている。走査型の撮影光学系において、照明光学系は、眼底における撮影範囲の一部に、局所的な照明領域を形成する。典型例としては、スリット状またはスポット状に照明領域を形成する装置が知られている。
【0031】
有害光除去部は、例えば、対物レンズとの間に視度補正光学系を挟んで、受光光学系の光路上に配置される。この場合、有害光除去部は、被検眼の屈折度数に応じた受光側補正量が設定された状態において、少なくとも対物レンズおよび視度補正光学系に関して眼底と共役な位置に配置されてもよい。
【0032】
有害光除去部は、撮影範囲の一部である局所的な撮影領域(以下、「有効領域」と称する)からの眼底反射光を受光素子へ受光させる。また、有害光除去部は、有効領域以外からの光を除去するために利用される。有害光除去部は、例えば、絞りであってもよい。スポットスキャン型の装置における典型的な絞りとしては、ピンホールが挙げられ、スリットスキャン型の装置における典型的な絞りとしては、スリットが挙げられる。この場合、眼底における撮影範囲全体のうち絞りの開口と対応する有効領域からの眼底反射光が選択的に受光素子に導かれ、有効な像として取得される。また、特に、スリットスキャン型の装置では、受光素子そのものが有害光除去部として利用される場合がある。この場合、受光素子として、形状自体がスリット状に形成されたラインセンサが用いられてもよいし、2次元的な撮像面上でライン露光が行われる(換言すれば、ローリングシャッター機能を持つ)CMOSが用いられてもよい。この場合、眼底の撮影範囲全体のうち、ライン状の有効な画素と対応する有効領域からの眼底反射光が選択的に受光素子に導かれ、有効な像として取得される。
【0033】
走査部は、局所的な照明領域と、有効領域(局所的な撮影領域)とを、同期して眼底上で走査させる。走査部は、例えば、照射光学系と受光光学系との間で共用される光スキャナであってもよい。この場合、光スキャナは、照射光学系と受光光学系との共通光路上に配置される。
【0034】
また、走査部は、照射光学系に設けられた第1走査部と、第1走査部をは別体であり、受光光学系に設けられる第2走査部と、を含んでいてもよい。この場合において、スリットスキャン型の装置の一例においては、局所的な照明領域をスリット状に形成するために、第1のスリット状部材が照射光学系の光路上に配置されてもよい。第1走査部は、第1のスリット状部材と、第1スリット状部材を光軸と交差する方向へ動かす駆動部と、を有していてもよい。更に、有害光除去部として第2スリット状部材が用いられる場合、第2走査部は、第2スリット状部材と、第2スリット状部材を光軸と交差する方向へ動かす駆動部と、を有していてもよい。第1走査部の駆動部と第2走査部の駆動部とは、別体のデバイスであってもよいし、共通のデバイスであってもよい。
【0035】
また、スリットスキャン型の装置において、受光素子としてCMOSが用いられる場合、第2走査部は、CMOSが、第2走査部を兼用することができる。すなわち、上記のローリングシャッター機能によるライン露光が第1走査部と同期して制御されてもよい。この場合、受光素子であるCMOSは、有害光除去部と第2走査部とを、兼用する。これにより、光学系の部品点数が抑制される。
【0036】
<視度補正に伴う像高変化の抑制>
上記のような走査型の撮影光学系においては、仮に、眼底上において照明光が照射される領域の位置と有効領域の位置とがズレてしまうと、受光光量が低下したり、画像が全く得られなくなってしまったりすることが考えられる。
【0037】
これに対し、視度補正光学系は、照射側補正量と受光側補正量とが一致する場合と、互いに異なる場合と、の間で、照射光学系および受光光学系の各々において、視度補正光学系よりも像側の領域における像高を維持するテレセントリック光学系を含んでいてもよい。(但し、ここでは、照射光学系および受光光学系のいずれにおいても、被検眼側を物体側と称し、視度補正光学系を挟んで被検眼と反対側を像側と称している。)照射側補正量と受光側補正量とが不一致な状態であっても、眼底上において照明光が照射される領域の位置と有効領域の位置とのズレが生じ難い。従って、上記のテレセントリック光学系には、走査型の撮影光学系を持つ装置において、アーチファクトの発生を抑制したときに眼底画像を良好に撮影できるという効果がある。但し、テレセントリック光学系は、許容される精度の範囲で、略テレセントリックな光学系であってもよい。
【0038】
なお、テレセントリック光学系は、より詳細には、第1テレセントリック光学系と、第2テレセントリック光学系と、を有していてもよい。第1テレセントリック光学系は、視度補正光学系よりも像側の領域における像高を受光側補正量の変化に関わらず維持する。第2テレセントリック光学系は、眼底上における照明光の主光線の光線高さを照射側補正量の変化に関わらず維持する。
【0039】
また、非走査型の撮影光学系においても、上記のテレセントリック光学系は有用である。すなわち、視度補正に伴う眼底像の倍率変化と、照明ムラの変化とが、テレセントリック光学系によって、抑制される。
【0040】
<視度補正量に応じた撮影条件の調整>
アーチファクトの発生を抑制するために照射側補正量が受光側補正量と異なる値に調整される結果、眼底上で照明光が照射される領域の外縁がぼけてしまったり、照明光が照射される領域の位置が有効領域の位置に対してズレてしまったりする場合が考えられる。これらの場合では、照射側補正量が受光側補正量とが一致している場合と比べて、受光光量が低下しやすくなる。
【0041】
これに対し、本実施形態では、照射側補正量と受光側補正量とが互いに一致している場合と、照射側補正量と受光側補正量とが互いに異なる値である場合と、の間で、制御部が、眼底へ照射される照明光の光量、受光素子のゲイン、露光時間、のうち少なくとも何れかを切換える切換制御を実行してもよい。より詳細には、照射側補正量と受光側補正量とが互いに一致している場合に対して、照射側補正量と受光側補正量とが互いに異なる値である場合では、照明光の光量、受光素子のゲイン、露光時間、のうち少なくとも何れかを増大させる。これにより、照射側補正量と受光側補正量とが不一致な状態であっても、ダイナミックレンジの広い眼底画像を得ることができる。この切換制御は、撮影モードの切換えと連動していてもよい。なお、露光時間を増大させるために、制御部は、走査速度を遅くしてもよい。また、連続的に複数枚の眼底画像を撮影し、複数枚の画像を加算することによって1枚の撮影画像を撮影する装置においては、加算に用いる眼底画像の枚数を増加させることで、露光時間を実質的に増大させることができる。
【0042】
<屈折度数取得部>
屈折度数情報取得部は、被検眼の屈折度数に関する情報として、屈折度数情報を取得する。例えば、屈折度数情報取得部は、被検眼を測定することによって屈折度数情報を取得する測定部であってもよい。この場合、屈折度数情報取得部である測定部には、撮影光学系の少なくとも一部が利用されてもよい。例えば、屈折度数情報取得部は、受光光学系におけるフォーカス状態を検出し、フォーカス状態の検出結果に基づいて屈折度数情報を取得してもよい。より詳細には、受光光学系における視度補正量である受光側補正量を変化させつつ、フォーカス状態を検出して、最も良好なフォーカス状態となったときの受光側補正量の値が、屈折度数情報として取得されてもよい。但し、受光側補正量に限られるものではなく、受光側補正量(または、照射側補正量)を変化させるために駆動される駆動部における駆動量、駆動部によって変位される光学素子の位置情報、のいずれか等が、屈折度数情報として取得されてもよい。フォーカス状態は、撮影光学系を介して取得される眼底画像に基づいて検出されてもよい。この場合、フォーカス状態は、眼底画像のコントラスト情報として検出されてもよい。また、フォーカス指標の指標像が映り込んだ眼底画像に基づいて、フォーカス状態が検出されてもよい。フォーカス指標の一例として、スプリット指標が知られている(図2参照)。スプリット指標は、プリズムで分離された2つの指標像として眼底へ投影される。2つの指標像の位置関係に基づいてフォーカス状態が検出されてもよい。この場合、屈折度数情報取得部は、フォーカス指標を投影する指標投影部を含む。
【0043】
なお、屈折度数情報取得部は、必ずしも測定部に限定されない。例えば、屈折度数情報取得部は、眼底撮影装置とは別体の装置で予め測定された屈折度数情報が入力され、これにより屈折度数情報を取得する構成であってもよい。この場合、屈折度数情報取得部は、制御部と、別体の装置、外付け記憶媒体、ユーザインターフェイス、のいずれか等と眼科測定装置とを接続するためのポートと、を含んでいてもよい。別体の装置としては、例えば、自覚式、又は他覚式の屈折検査装置が挙げられる。外付け記憶媒体には、予め屈折度数情報が記憶されており、制御部は該記憶媒体から屈折度数情報を読み出すことで、該情報を取得してもよい。また、ユーザインターフェイスは屈折度数情報を手動で入力するために利用されてもよい。この場合、屈折度数情報は、検者による入力結果として取得されてもよい。
【0044】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。
【0045】
第2実施形態に係る眼底撮影装置は、対物レンズの反射によるアーチファクトを抑制するための処理(以下、アーチファクト抑制処理)が実行される。第2実施形態において、アーチファクト抑制処理は、被検眼の屈折度数が予め定められた範囲に含まれる場合には自動的に実行され、範囲外に含まれる場合には実行されない。換言すれば、眼底画像を撮影する際にアーチファクト抑制処理を実行しない第1モードと、眼底画像を撮影する際にアーチファクト抑制処理を実行する第2モードと、の間で撮影モードが、制御部によって、屈折度数に基づいて切換えられる。
【0046】
第1実施形態において説明したように、照射光学系と受光光学系との両方において屈折度数に応じた視度補正が行われる場合は、屈折度数がマイナスディオプター側であるほどアーチファクトは生じやすくなる。そこで、第2実施形態では、屈折度数が第1の範囲に含まれる場合と、屈折度数が第2の範囲に含まれる場合とのうち、前者の場合に、第1モードに設定され、後者の場合に第2モードに設定されてもよい。その結果として、被検眼の屈折度数に関わらず、アーチファクトの発生が抑制された眼底画像が得られる。また、屈折度数が相対的にプラスディオプター側でありアーチファクトが生じ難い被検眼を撮影する際には、アーチファクト抑制処理に基づく眼底画像への影響、および、撮影に伴う被検者の負担、等の少なくともいずれかが防止される。
【0047】
なお、第1実施形態における照射側補正量(照射光学系における視度補正量)と受光側補正量(受光光学系における視度補正量)とを不一致な状態へ設定するための視度補正光学系の駆動が、種々のアーチファクト抑制処理のうち1つに相当する。但し、第2実施形態におけるアーチファクト抑制処理は、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、アーチファクト抑制処理において、被検眼の組織に対するアーチファクトの位置が互いに異なる複数枚の眼底画像が撮影され、複数枚の眼底画像が合成されることによって合成画像が生成されてもよい(例えば、以下の第2および第5のアーチファクト抑制処理)。また、以下の説明において例示する種々の動作が採用されてもよい。
【0048】
以下、第1実施形態との相違箇所を中心に、第2実施形態の詳細構成を説明する。第2実施形態に係る眼底撮影装置は、撮影光学系、画像処理部、屈折度数取得部、および、制御部を少なくとも有する。これらの各構成については、第1実施形態についての記載のうち、<制御部>、<画像処理部>、<撮影光学系>、および、<屈折度数取得部>の項目を適宜援用できる。
【0049】
<第2のアーチファクト抑制処理>
第2のアーチファクト抑制処理では、撮影光学系の光軸と被検眼の視軸との位置関係を切換えて眼底画像が少なくとも2回撮影される。更に、少なくとも2回の撮影によって得られた複数枚の眼底画像が画像処理部によって合成される。その結果として、装置は、アーチファクトが抑制された眼底画像である合成画像を取得する(図5参照)。なお、図5図10において、アーチファクトを符号N,又は、符号N1,N2で示す。画像処理部は、複数枚の眼底画像のうち少なくとも1枚(第1眼底画像という)におけるアーチファクトを含む領域を、その領域と眼底組織に対する位置関係が同じ画像領域であって,他の眼底画像の画像領域を用いて補完することで、合成画像を生成する。より詳細には、複数枚の眼底画像のうち少なくとも1枚におけるアーチファクトを含む領域を、他の画像において対応する画像領域で置き換えてもよい。また、複数枚の眼底画像の画像加算によって、アーチファクトを含む領域が補完されてもよい。
【0050】
第2のアーチファクト抑制処理を実行するために、眼底撮影装置は、位置調整部を有していてもよい。位置調整部は、撮影光学系の光軸と被検眼の視軸との位置関係を変更することによって、眼底画像における眼底組織に対してアーチファクトの発生位置を調整する。位置調整部は、固視光学系を含んでいてもよい。固視光学系は、被検眼に固視標を呈示する。固視光学系は、撮影光学系の光軸と交差する方向に関し、固視標の呈示位置を複数の位置に切換え可能であってもよい。また、位置調整部は、撮影光学系を被検眼に対して移動させる駆動部を含んでいてもよい。例えば、駆動部は、被検眼の前眼部を中心として撮影光学系を旋回させることによって、撮影光学系の光軸と被検眼の視軸との位置関係を変更してもよい。勿論、位置調整部は、固視光学系と駆動部との両方を含んでもよい。
【0051】
第2のアーチファクト抑制処理に関するより詳細な内容については、例えば、本出願人による特開特開2017-184787号公報等を参照されたい。
【0052】
<第3のアーチファクト抑制処理>
第3のアーチファクト抑制処理では、眼底画像と背景画像とに基づく背景差分が、画像処理部によって実行され、その結果として、アーチファクトが抑制された眼底画像が生成される(図6参照)。ここでいう背景画像は、眼底画像に対する背景画像であって、少なくとも対物レンズによるアーチファクトを含んでいる。背景画像は、対物レンズの前面側を、レンズカバーなどで蓋した状態で撮影された画像であってもよい。
【0053】
第3のアーチファクト抑制処理に関するより詳細な内容については、例えば、本出願人による特開2017-217076号公報等を参照されたい。
【0054】
<第4,第5のアーチファクト抑制処理の前提となる装置構成>
第4,第5のアーチファクト抑制処理は、いずれも撮影光学系が以下のような構成であることを前提とする。即ち、撮影光学系は、スリットスキャン型の光学系である。例えば、図2に示す光学系であってもよい。撮影光学系は、スリット形成部、走査部、および、投受光分離部、を少なくとも有する。追加的に、撮影光学系は、光源、撮像素子、および、光路分岐部等を有していてもよい。
【0055】
スリット形成部は、被検眼の眼底上で照明光をスリット状に形成する。スリット形成部は、例えば、スリット状の透光部(例えば、開口)が、眼底と共役な面内に配置されたものであってもよい。
【0056】
走査部は、眼底上でスリット状に形成された照明光を、スリットに対して交差する方向へ走査する。図2図7に示すように、走査部は、スリット状に形成された照明光を、眼底上で、スリットと交差する方向(詳細には、スリットの長手方向と交差する方向)に走査する。走査部は、スリット形成部をスリットと交差する方向に移動させることによって、照明光を走査するものであってもよい。この種の走査部としては、メカニカルシャッター、液晶シャッター、オプティカルチョッパー(図11参照)、および、ドラムリール等が例示される。
【0057】
スリットの走査方向は、好ましくは、スリットと直交する方向である。但し、スリットの直交方向に対して斜め方向であってもよい。
【0058】
また、走査部は、スリット形成部を通過した光の向きを、変化させる部材であってもよい。例えば、ガルバノスキャナ等の各種の光スキャナが、走査部として利用されてもよい。光を旋回させて走査を行うタイプの走査部は、被検眼の瞳と共役な位置に置かれてもよい。
【0059】
撮影光学系は、更に、光路結合部、および、対物レンズを有していてもよい。
【0060】
光路結合部は、照明光の投光光路と眼底反射光の受光光路とを結合および分離する。光路結合部によって形成される、投光光路と受光光路との共通光路上に、対物レンズは配置される。このとき、撮影光学系の光軸(以下、「撮影光軸」ともいう)と、対物レンズの光軸とが一致していることが望ましい。
【0061】
各種のビームスプリッターを、光路結合部として利用できる。この場合、光路結合部は、穴開きミラーであってもよいし、単なるミラーであってもよいし、ハーフミラーであってもよいし、その他のビームスプリッターであってもよい。
【0062】
投受光分離部は、被検眼の瞳上において、照明光が投光される区域(投光領域)と、照明光による眼底反射光が取り出される区域(受光領域)と、を分離する。
【0063】
詳細には、図2図8に示すように、投受光分離部によって、投光領域が、照明光の走査方向に関して互いに分離した2つの位置に形成される。2つの投光領域は、撮影光軸を挟むように形成されてもよい。なお、第1実施形態において、投受光分離部は、投光領域を少なくとも2つ形成するものであればよく、3つ以上の投光領域を形成するものであってもよい。各々の投光領域を通過した照明光は、眼底上で、同一のスリット状領域を照射する。そして、走査部の駆動に伴い、スリット状の領域が走査される。
【0064】
図8に示すように、投受光分離部によって、受光領域が、2つの投光領域に挟まれるように形成される。つまり、一方の投光領域、受光領域、他方の投光領域、の順に、各領域が一列に並んで形成される。また、受光領域は、撮影光軸上に形成されてもよい。投光領域と受光領域とは、互いに重なり合わないように配置されてもよい。その場合、角膜や中間透光体で、照明光の一部が反射および散乱を起こし、眼底画像にフレアーを生じさせることが軽減される。
【0065】
投受光分離部は、照明光の投光光路、および、受光光路にそれぞれ配置される複数の部材を含んでいてもよい。
【0066】
投受光分離部は、その一部が、例えば、照明光の投光光路における瞳共役面上において、照明光の走査方向に関して互いに離れた少なくとも2つの位置に照明光の照射位置を設定するものであってもよい。この場合、2つの照射位置に、照明光を発する光源がそれぞれ配置されてもよいし、2つの照射位置に、照明光を通過させる開口がそれぞれ配置されてもよい。
【0067】
換言すれば、投受光分離部は、被検眼の瞳と共役な位置において走査方向に関して互いに異なる位置に配置される、2つの照明光源、または、2つの見かけ上の照明光源を、少なくとも含むものであってもよい。これにより、投光領域は、照明光の走査方向に関して互いに分離した2つの位置に形成される。より好ましくは、2つの照明光源、または、2つの見かけ上の照明光源は、撮影光軸に対して対称に配置されてもよい。これにより、2つの投光領域を、撮影光軸に関して対称に形成できる。2つの光源、または、2つの見かけ上の光源からの投光状態は、後述の制御部によって、光源毎に制御可能であってもよい。投光状態が光源毎に制御される結果として、照明光を通過させるか否かが、各々の投光領域に対して個別に設定される。勿論、投受光分離部は、3つ以上の照明光源、または、3つ以上の見かけ上の照明光源を含むものであってもよい。
【0068】
なお、投光状態としては、光源または見かけ上の光源からの照明光が被検眼に到達する状態と、到達しない状態と、の2種類の状態が少なくともあり得る。投光状態の切換は、光源の点灯制御によって実現されてもよい。また、光源、又は、見かけ上の光源から被検眼へ向かう光束を選択的に遮ぎるシャッターを駆動制御することによって、投光状態が切換えられてもよい。
【0069】
また、投受光分離部は、その一部が、照明光の受光光路における瞳共役面上において、2つの投光領域に挟まれる領域である受光領域からの眼底反射光を撮像面側へ通過させ、それ以外の光を撮像面側へ通過させなくするものであってもよい。例えば、投受光分離部は、受光領域からの眼底反射光を撮像面側へ通過させ、それ以外の光を遮光する遮光部材を含むものであってもよい。遮光部材は、例えば、受光光路において瞳共役面上に配置されてもよい。例えば、遮光部材として、撮影光軸を中心に開口を有する絞りが設けられた場合、絞りの開口像によって、受光領域が形成される。
【0070】
投受光分離部に遮光部材が含まれる場合、遮光部材は、前述の光路結合部と共用されていてもよいし、別体であってもよい。
【0071】
<第4のアーチファクト抑制処理>
上記の装置構成において、制御部は、照明光を通過させるか否かを、被検眼の瞳上の2つの投光領域に対して個別に設定してもよい。この場合、制御部は、2つの投光領域の一方(いずれか)から選択的に投光された照明光に基づいて、眼底画像を撮影してもよい。
【0072】
ところで、眼底画像における撮影光軸の近傍位置には、対物レンズのレンズ面の中心部で照明光が反射されることによる、反射像(輝点像、アーチファクトの一種)が生じる場合がある。投光領域は撮影光軸から離れていることから、反射像は、眼底画像における撮影光軸の位置からややズレた位置に出現しやすい。一例として、2つの投光領域の両方から照明光を同時に投光して撮影した眼底画像を、図9Aに示す。図9Aに示すように、2つの投光領域に対応して、眼底画像の画像中心部において、撮影光軸を挟んだ2箇所で、反射像(符号N1,N2で示す)が生じ得る。2つの反射像は、走査方向に並んで(つまり、走査方向に関して異なる位置に)出現する。
【0073】
これに対し、本実施形態では、2つの投光領域のうち一方から選択的に照明光を眼底へ投光して、眼底画像が撮影される。これによって、対物レンズにおいて、反射像を生じさせる箇所が上記の場合に対して半減される。その結果として、図9Bに示すように、眼底画像における反射像を半減できる。このように、被検眼の瞳上における2つの投光領域のうち、一方から選択的に照明光を眼底へ投光して、眼底画像を撮影することは、アーチファクトを軽減するうえで、有利である。
【0074】
<第5のアーチファクト抑制処理>
制御部は、2つの投光領域のうち一方から選択的に照明光を眼底へ投光して1枚目の眼底画像を撮影した後、更に、照明光が投光される投光領域を他方へ切換え、他方から選択的に照明光を投光して2枚目の眼底画像を撮影してもよい。このような2回の撮影によって、対物レンズによる反射像等のアーチファクトの出現位置が、撮影に利用した投光領域に応じて互いに異なる、2枚の眼底画像が得られる。1回目の撮影と2回目の撮影の間で、被検眼と撮影光学系との位置関係を変化させずに撮影が行われてもよい。また、2枚目の眼底画像の撮影は、1枚目の眼底画像の撮影から連続的に、且つ、自動的に実行されることが望ましい。
【0075】
本実施形態では、2枚の眼底画像を撮影する際に、被検眼と撮影光学系との位置関係を変化させる必要が無く、しかも、光源の点灯切換、あるいは、シャッターの駆動等により、比較的短時間で、被検眼の瞳上における投光領域を切換えできる。よって、2枚の眼底画像が短時間で撮影可能である。結果、1枚目の眼底画像と2枚目の眼底画像とを連続的に撮影しても、被検者の負担が抑制される。また、照明光が可視光であったとしても、1枚目の撮影後、速やかに2枚目の撮影が行われるので、1枚目の撮影に起因する縮瞳が2枚目の撮影において与える影響を抑制できる。
【0076】
ここで、縮瞳の影響としては、照明光および眼底反射光が虹彩でケラレることで、眼底画像が暗くなること等が例示される。画像中心部と画像周辺部との間におけるケラレの影響(明るさの変化)は、必ずしも一様ではない。例えば、画像の周辺部では、撮影画角が大きくなるほどケラレの影響を受けやすくなることがあり得る。
【0077】
第5のアーチファクト抑制処理では、これらの2枚の眼底画像を合成処理することによって、1枚の眼底画像(以下、「合成画像」と称する)を生成してもよい。合成処理は、画像処理部によって実行される。本実施形態では、アーチファクトの影響が抑制された画像を得るために、合成処理が行われる。合成手法には、以下に例示するように、種々の手法がありうる。
【0078】
例えば、2枚の眼底画像のうち、一方の眼底画像におけるアーチファクトを含む領域を、その領域と対応する他方の眼底画像の一部と置き換えることで、合成画像が生成されてもよい(図10参照)。このとき、走査線単位で置き換えが行われてもよい。例えば、アーチファクトとして前述の反射像が生じる場合、一方の眼底画像の画像中心部に生じる反射像を、他方の眼底画像において対応する領域と置き換えられることで、合成画像が生成されてもよい。
【0079】
また、2枚の眼底画像の加算平均画像として、合成画像を生成してもよい。この場合、反射像と、それ以外の領域との間で、異なる加算比率を与えて加算平均処理が行われてもよい。
【0080】
なお、反射像が生じる領域は、視度によって多少の変動はあるものの、撮影光軸を基準とする略一定の範囲となる。このため、2枚の眼底画像において、合成処理で他方の画像と合成される領域は、予め定められていてもよい。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、眼底画像に対して反射像の検出処理を行い、検出処理の結果に基づいて、合成される領域を個別に設定してもよい。また、視度に応じて合成される領域が設定されてもよい。
【0081】
なお、制御部は、合成画像と対応する走査範囲の一部のみの走査に基づいて1枚目の眼底画像を撮影し、投光領域を切換えたうえで、残り一部の走査に基づいて2枚目の眼底画像を撮影し、各眼底画像を合成(コラージュ)することで、合成画像を生成してもよい。この場合、走査範囲は、撮影光軸を中心として2分割され、分割された2つの走査範囲において、それぞれ眼底画像を撮影することが好ましい。なお、この場合、合成処理は、必ずしも画像処理に限定されるものでは無い。例えば、照明光が、走査範囲の分割位置に到来したタイミングで、照明光を投光させる投光領域を切換えることで、撮像面上に、合成画像を形成できる。
【0082】
この場合において、2枚の眼底画像の間で、眼底上の走査範囲と照明光が投光される投光領域との関係は、2枚の眼底画像の間で交差していることが好ましい。例えば、2つの投光領域が上下方向に並べて配置されると共に、眼底上で照明光が上下方向に走査される場合、上側の投光領域から照明光を通過させるときは、眼底の下半分の走査に基づいて1枚目の眼底画像を撮影し、下側の投光領域から照明光を通過させるときは、眼底の上半分の走査に基づいて2枚目の眼底画像を撮影し、両者から合成画像を生成してもよい。この場合、各々の投光領域との関係で、対物レンズの反射像、および、フレアー等のアーチファクトが含まれ難い部分を撮影した画像同士が合成される。従って、アーチファクトが抑制された合成画像を得ることができる。
【0083】
この合成処理に代えて、次のような撮影制御が実行されてもよい。即ち、撮影時に眼底上を走査する照明光が、2分割の境界位置に到来したタイミングで、投光領域が制御部によって切換えられてもよい。合成処理を必要とせずに、反射像が抑制された合成画像が生成される。
【0084】
<第6のアーチファクト抑制処理>
第6のアーチファクト抑制処理では、撮影光学系の光軸と被検眼の視軸との位置関係を変更しないで、眼底画像が2回(少なくとも2回)撮影される。2回の撮影の間で、制御部は、位置関係以外の撮影条件を切換える。これにより、アーチファクトが抑制された第1の眼底画像と、第1の眼底画像に対して画質を優先させた第2の眼底画像と、を撮影し、第2の眼底画像におけるアーチファクトを含む領域へ、第1の眼底画像において対応する領域を合成する。その結果として、装置は、アーチファクトが抑制された眼底画像である合成画像を取得する。
【0085】
第6のアーチファクト抑制処理では、2回の撮影の間に撮影光学系の光軸と被検眼の視軸との位置関係を変更しないので、第2のアーチファクト抑制処理と比べて、より短時間で2回の撮影を行って、合成画像を得ることができる。
【0086】
画質とアーチファクトの生じ難さとがトレードオフとなる各種条件が、2回の撮影の間で変更される撮影条件となり得る。
【0087】
例えば、2回の撮影の間で、制御部は、視度補正量に関する撮影条件を変更してもよい。この場合において、第1の眼底画像は、例えば、前述の第1実施形態におけるアーチファクト抑制処理を行って得られる眼底画像であってもよい。すなわち、照射側補正量を、受光側補正量と異なる値に調整して撮影された眼底画像であってもよい。この場合、第2の眼底画像は、照射側補正量と受光側補正量とが一致された状態で撮影された眼底画像であってもよい。
【0088】
また、例えば、2回の撮影の間で、制御部は、眼底反射光と有害光との分離状態に関する条件を変更してもよい。この場合において、第1の眼底画像は、第2の眼底画像と比べて輝度が低くなるような撮影条件で撮影され得る。
【0089】
例えば、第1の眼底画像を撮影する場合には、投光光学系または受光光学系の少なくともいずれかに配置される絞りの開口を、第2の眼底画像を撮影する場合と比べて縮小してもよい。例えば、上記のスリットスキャン型の光学系においては、スリット形成部における透光部(例えば、開口)の大きさが、第1の眼底画像を撮影する場合では、第2の眼底画像を撮影する場合と比べて縮小されてもよい。また、受光光学系に設けられた有害光除去部(例えば、絞り)にける眼底反射光の通過領域が、第1の眼底画像を撮影する場合は、第2の眼底画像を撮影する場合と比べて制限されてもよい。これにより、対物レンズ等の反射による有害光が、撮像面上に導かれる眼底反射光から好適に分離される。結果、アーチファクトが抑制された眼底画像を取得しやすくなる。
【0090】
スリットスキャン型の光学系の場合、スリット形成部および有害光除去部のうち一方または両方は、可変スリットであってもよい。つまり、照射領域、有効領域(撮影領域)、またはその両方の幅を、第1の幅と、第1の幅よりも広い第2の幅と、の間で切換可能であってもよい。この場合、スリット形成部および有害光除去部のうち一方または両方は、第1の幅と対応する第1スリット開口と、第2の幅と対応する第2スリット開口との少なくとも2種類のスリット開口を有していてもよい。
【0091】
この場合において、装置は、図12に示すように、回転体(例えば、ホイール)を備えるオプティカルチョッパーを、走査部として有していてもよい。オプティカルチョッパーにおいて、1つの円周上に複数のスリット開口が並んで配置される回転体が、スリット形成部および有害光除去部のうち一方または両方となる。オプティカルチョッパーにおいて、回転体は回転駆動される。これによって、複数のスリット開口が連続的に照明光または戻り光の光路に対して横断される。回転体の形状は、例えば、図12に示すようなディスク状(ホイール状)であってもよいし、円筒状であってもよい。円筒状の回転体においては、円筒側面に複数のスリットが形成される。なお、回転体は、一定速度で駆動されてもよい。
【0092】
図12の例において、回転体は、第1の幅と対応する第1スリット開口が連続して1つ又は2つ以上配置される第1エリアと、第2の幅と対応する第2スリット開口が連続して1つ又は2つ以上配置される第2エリアと、を備える。この場合、制御部は、第1エリアが光路を通過する第1期間と、第2エリアが光路を通過する第2期間と、の間で、眼底上における照明領域または有効領域(撮影領域)の幅が切替わる。制御部は、第1期間で得られる眼底画像を、第1の眼底画像として取得し、第2期間で得られる眼底画像を、第2の眼底画像として取得し、両者の合成画像を生成してもよい。
【0093】
なお、照明光が可視光である場合には、2枚の眼底画像のうち、画質を優先させた第2の眼底画像を先に撮影し、後から第1の眼底画像を撮影することが好ましい。そこで、制御部は、第2の眼底画像、第1の眼底画像の順に、所定間隔で2枚の眼底画像を撮影する連続撮影動作(連続撮影処理)を実行してもよい。所定間隔は、可視光による撮影から縮瞳が解消するまでの時間(数十秒程度)から十分短い間隔であることが好ましい。
【0094】
可視光を用いて2枚の眼底画像を短時間の間に撮影する場合、縮瞳が生じ、後から撮影される画像においては、瞳孔での照明光のケラレによって、周辺部が暗くなりやすい。これに対し、画質を優先させた第2の眼底画像を先に撮影し、後から第1の眼底画像を撮影することで、合成画像において、周辺部まで良好な眼底画像が得られやすい。
【0095】
走査部がオプティカルチョッパーである場合、装置は、更に、回転体の回転位置を検出するセンサを備えてもよい。センサからの信号に基づいて、撮像素子の露光および画像の掃き出しが制御されてもよい。
【0096】
「実施例」
次に、図1図4図11,および、図13を参照して、第1実施形態及び第2実施形態に係る眼底撮影装置の実施例を示す。
【0097】
眼底撮影装置1(以下、単に、「撮影装置1」と省略する)は、被検眼の眼底上で照明光をスリット状に形成し、眼底上でスリット状に形成された領域を走査し、照明光の眼底反射光を受光することで、眼底の正面画像を撮影する。
【0098】
<装置の外観>
図1を参照して、撮影装置1の外観構成を説明する。撮影装置1は、撮影ユニット3を有する。撮影ユニット3は、図2で示す光学系を主に備える。撮影装置1は、基台7、駆動部8、顔支持ユニット9、および、顔撮影カメラ110を有し、これらを用いて、被検眼Eと撮影ユニット3との位置関係を調整する。
【0099】
駆動部8は、基台7に対して左右方向(X方向)及び前後方向(Z方向であり、換言すれば、作動距離方向)に移動できる。また、駆動部8は、更に、撮影ユニット3を、駆動部8上で被検眼Eに対して3次元方向に移動させる。駆動部8には、予め定められた各可動方向に駆動部8または撮影ユニット3を移動させるためのアクチュエータを有しており、制御部80からの制御信号に基づいて駆動される。顔支持ユニット9は、被検者の顔を支持する。顔支持ユニット9は基台7に固定されている。
【0100】
顔撮影カメラ110は、撮影ユニット3に対する位置関係が一定となるように、筐体6に固定されている。顔撮影カメラ110は、被検者の顔を撮影する。制御部100は、撮影された顔画像から被検眼Eの位置を特定し、駆動部8を駆動制御することで、特定した被検眼Eの位置に対して撮影ユニット3を位置合わせする。
【0101】
また、撮影装置1は、モニタ120を更に有している。モニタ120には、眼底観察像、眼底撮影像、前眼部観察像等が表示される。
【0102】
<実施例の光学系>
次に、図2を参照して、撮影装置1の光学系を説明する。撮影装置1は、撮影光学系(眼底撮影光学系)10と、前眼部観察光学系40と、を有している。これらの光学系は、撮影ユニット3に設けられている。
【0103】
図2において、被検眼の瞳と共役な位置には撮影光軸上に『△』を、眼底共役位置には撮影光軸上に『×』を付して、それぞれ示す。
【0104】
撮影光学系10は、照射光学系10aと、受光光学系10bと、を有する。実施例において、照射光学系10aは、光源ユニット11、レンズ13、スリット状部材15a、レンズ17a,17、ミラー18、穴開きミラー20、および、対物レンズ22を有する。受光光学系10bは、対物レンズ22、穴開きミラー20、レンズ25a,25b、スリット状部材15b、および、撮像素子28を有する。なお、穴開きミラー20は、照射光学系10aと受光光学系10bとの光路を結合する光路結合部である。穴開きミラー20は、光源からの照明光を、被検眼E側へ反射し、被検眼Eからの眼底反射光のうち、開口を通過した一部を、撮像素子側へ通過させる。穴開きミラー20以外の種々のビームスプリッターを用いることができる。例えば、穴開きミラー20に代えて、穴開きミラー20と透光部と反射部が逆転したミラーが光路結合部として用いられてもよい。但し、この場合、ミラーの反射側に受光光学系10bの独立光路が置かれ、ミラーの透過側に照射光学系10aの独立光路が置かれる。また、穴開きミラー、および、その代替手段としてのミラーは、それぞれ、ハーフミラーと遮光部との組み合わせに、更に置き換えることができる。
【0105】
本実施例において、光源ユニット11は、波長帯が異なる複数種類の光源を有している。例えば、光源ユニット11は、可視光源11a,11bと、赤外光源11c,11dとを有する。このように、本実施例の光源ユニット11には、波長毎に光源が2つずつ設けられている。同じ波長の2つの光源は、瞳共役面上において、撮影光軸Lから離れて配置される。2つの光源は、図2における走査方向であるX方向に沿って並べられており、撮影光軸Lに関して軸対称に配置される。図2に示すように、2つの光源の外周形状は、走査方向に比べて、走査方向と交差する方向が長い矩形形状であってもよい。
【0106】
2つの光源からの光は、レンズ13を通過して、スリット状部材15に照射される。本実施例において、スリット状部材15aは、Y方向に沿って細長く形成された透光部(開口)を持つ。これにより、眼底共役面において、照明光がスリット状に形成される(眼底上でスリット状に照明された領域を、符号Bとして図示する)。
【0107】
図2において、スリット状部材15aは、透光部が撮影光軸LをX方向に横切るようにして、駆動部15cによって変位される。これにより、本実施例における照明光の走査が実現される。なお、本実施例では、受光系側でも、スリット状部材15bによる走査が行われる。本実施例では、投光側と受光側のスリット状部材は、1つの駆動部(アクチュエータ)によって、連動して駆動される。
【0108】
照射光学系10aでは、各光源の像が、レンズ13から対物レンズ22までの光学系によってリレーされて、瞳共役面上で結像される。つまり、瞳共役面上において、走査方向に関して分離した位置に、2つの光源の像が形成される。このようにして、本実施例では、瞳共役面上における2つの投光領域P1,P2は、2つの光源の像として形成される。
【0109】
また、スリット状部材15aを通過したスリット状の光は、レンズ17aから対物レンズ22までの光学系によってリレーされて、眼底Er上に結像する。これにより、眼底Er上で照明光がスリット状に形成される。照明光は、眼底Er上で反射され、瞳孔Epから取り出される。
【0110】
ここで、穴開きミラー20の開口は、被検眼の瞳と共役なので、眼底画像の撮影に利用される眼底反射光は、被検眼の瞳上において穴開きミラー開口の像(瞳像)を通過する一部に制限される。このように、被検眼の瞳上における開口の像が、本実施例における受光領域Rとなる。受光領域Rは、2つの投光領域P1,P2(2つの光源の像)に挟まれて形成される。また、各像の結像倍率、開口の径、2つの光源の配置間隔が適宜設定された結果として、受光領域Rと、2つの投光領域P1,P2とは、瞳上において互いに重ならないように形成される。これにより、フレアーの発生が良好に軽減される。
【0111】
対物レンズ22および穴開きミラー20の開口を通過した眼底反射光は、レンズ25a,25bを介して、眼底共役位置に、眼底Erのスリット状領域を結像する。このとき、結像の位置にスリット状部材15bの透光部が配置されていることで、有害光が除去される。
【0112】
撮像素子28は、眼底共役位置に配置されている。本実施例では、スリット状部材15bと撮像素子28の間にリレー系27が設けられており、これにより、スリット状部材15bと撮像素子28との双方が、眼底共役位置で配置される。その結果、有害光の除去と、結像との両方が、良好に行われる。これに代えて、撮像素子28とスリット状部材15bとの間のリレー系27を省略し、両者を近接配置してもよい。本実施例では、撮像素子28として、2次元的な受光面を持つデバイスが用いられている。例えば、CMOS、二次元CCD等であってもよい。撮像素子28には、スリット状部材15bの透光部で結像した、眼底Erのスリット状領域の像が投影される。撮像素子28は、赤外光および可視光の両方に感度を持つ。
【0113】
本実施例では、スリット状の照明光が眼底Er上で走査されるに従って、撮像素子28の走査線毎に、眼底Er上の走査位置の像(スリット状の像)が順次投影される。このように、撮像素子には、時分割で走査範囲の全体像が投影される。結果として、走査範囲の全体像として、眼底Erの正面画像が撮像される。
【0114】
なお、実施例において受光系における走査部は、メカニカルにスリットを走査するデバイスであったが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、受光光学系側の走査部は、電子的にスリットを走査するデバイスであってもよい。一例として、撮像素子28がCMOSである場合、CMOSのローリングシャッター機能によって、スリットの走査が実現されてもよい。この場合、撮像面上で露光される領域を、投光系における走査部と同期して変位させることで、有害光を除去しつつ、効率良く撮影できる。また、液晶シャッター等を、電子的にスリットを走査する走査部として用いることもできる。
【0115】
撮影光学系10は、視度補正部を有している。本実施例では、照射光学系10aの独立光路、受光光学系10bの独立光路、のそれぞれに視度補正部(視度補正光学系17,25)が設けられている。以下では、便宜上、照射側の視度補正光学系を照射側視度補正光学系17と称し、受光側の視度補正光学系を受光側視度補正光学系25と称する。本実施例の照射側視度補正光学系17は、レンズ17a,レンズ17bおよび駆動部17c(図3参照)を含む。また、本実施例の受光側視度補正光学系25は、レンズ25a、レンズ25b、および、駆動部25c(図3参照)を含む。照射側視度補正光学系17においてはレンズ17aとレンズ17bとの間隔が、受光側視度補正光学系25においては、レンズ25aとレンズ25bとの間隔が変更される。これにより照射光学系10aと受光光学系10bとの各々において視度補正が行われる。
【0116】
照射光学系10aの駆動部17cと、受光光学系10bの駆動部25cとは、独立に駆動可能である。その結果、本実施例では、図4Bに示すように、照射光学系10aにおける視度補正量である照射側補正量と、受光光学系10bにおける視度補正量である受光側補正量とを、それぞれ独立に設定できる。
【0117】
本実施例において、照射側視度補正光学系17と、受光側視度補正光学系25と、の各々は、テレセントリック光学系を含む。各々のテレセントリック光学系は、視度補正量が変化しても像側の領域における像高さを維持する。これにより、眼底上における照射光学系のスリット開口と受光光学系のスリット開口との位置関係を、照射側補正量と受光側補正量とのバランスに関わらず一定に保つことができる。このため、眼底上における照射光学系のスリット開口と受光光学系のスリット開口とを、照射側補正量と受光側補正量とのバランスに関わらず常に一致させることができる。また、視度補正量の変化に応じた画像サイズの変化を抑制できる。
【0118】
図2に示すように、更に、撮影光学系10は、フォーカス指標投影光学系の1例として、スプリット指標投影光学系50を有する。スプリット指標投影光学系50は、2つのスプリット指標を眼底に投影する。スプリット指標は、フォーカス状態の検出に利用される。また、本実施例では、フォーカス状態の検出結果から、被検眼Eの屈折度数が取得される。
【0119】
スプリット指標投影光学系50は、例えば、光源51(赤外光源)と、指標板52と、偏角プリズム53とを少なくとも有していてもよい。本実施例において、指標板52は、受光光学系50における撮像面と対応する位置へ配置されている。同様に、各々のスリット状部材15a,15bとも対応する位置へ配置される。詳細には、照射側および受光側の視度補正量が0Dである場合に、正視眼(0D眼)の眼底と略共役な位置に、視標板52は配置される。偏角プリズム53は、指標板52よりも被検眼側において、指標板52に近接して配置される。
【0120】
指標板52は、例えば、スリット光を指標として形成する。偏角プリズム53は、視標板52を介した指標光束を分離し、スプリット指標を形成する。分離されたスプリット指標は、照射側視度補正光学系17から対物レンズ22までを介して、被検眼の眼底へ投影される。このため、スプリット指標は、眼底画像(例えば、眼底観察画像)に映り込む。
【0121】
指標板52が眼底共役位置からズレている場合は、眼底上で2つのスプリット指標は分離しており、指標板52が眼底共役位置に配置される場合は、2つのスプリット指標は一致される。共役関係は、偏角プリズム53と被検眼Erとの間に配置される照射側視度補正光学系17によって調整される。そこで、本実施例では、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを一致させつつデフォーカスが行われる。このとき、スプリット指標の分離状態が、フォーカス状態を示す。2つのスプリット指標が合致されるように、照射側および受光側の視度補正量が各々が調整されることによって、撮像面とスリット状部材15a,15bとの各々が、眼底と共役な位置関係となる。
【0122】
撮像面とスリット状部材15a,15bとの各々が眼底と共役な位置関係であるときの視度補正量から、被検眼Eの屈折度数を導くことができる。そこで、本実施例において、更に、レンズ17aとレンズ17bとの間隔、または、レンズ25aとレンズ25bとの間隔のうちいずれかを読み出すエンコーダ(図示を省略する)を有していてもよく、エンコーダからの信号に基づいて、被検眼Eの屈折度数が取得されてもよい。
【0123】
なお、走査部は、例えば、図11に示すようなオプティカルチョッパーであってもよい。オプティカルチョッパーは、外周に複数のスリットが形成されたホイール持ち、ホイールを回転させることで、高速にスリットをスキャンできる。
【0124】
ここで、図2では、照射光学系10aの光源ユニット11からミラー18までと、受光光学系10bの穴開きミラー20から撮像素子28までとが、X方向に並列されているが、例えば、穴開きミラー20とミラー18との向きを、図示した状態から90°回転させ、両者をY方向に並列させることによって、オプティカルチョッパーを走査部として適用可能になる。この場合、図11に示すように、ホイールの上端と下端との2箇所で、照射光学系10aの光軸と受光光学系10bの光軸とをそれぞれ横切らせることで、1体のオプティカルチョッパーで、投光系および受光系の走査を、容易に同期させることができる。
【0125】
<前眼部観察光学系>
次いで、前眼部観察光学系40を説明する。前眼部観察光学系40は、対物レンズ22とダイクロイックミラー43と、を撮影光学系10と共用する。前眼部観察光学系40は、更に、光源41、ハーフミラー45、撮像素子47等を含む。撮像素子47は、二次元撮像素子であり、例えば瞳孔Epと光学的に共役な位置に配置される。前眼部観察光学系40は、赤外光で前眼部を照明し、前眼部の正面画像を撮影する。
【0126】
なお、図2に示した前眼部観察光学系40は一例に過ぎず、他の光学系とは独立した光路で前眼部を撮像してもよい。
【0127】
<実施例の制御系>
次に、図3を参照して、撮影装置1の制御系を説明する。本実施例では、制御部100によって、撮影装置1の各部の制御が行われる。また、便宜上、撮影装置1で得られた各種画像の画像処理についても、制御部100によって行われるものとする。換言すれば、本実施例では、制御部100が、画像処理部を兼用している。
【0128】
制御部100は、各部の制御処理と、演算処理とを行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。制御部100は、記憶部101と、バス等を介して電気的に接続されている。
【0129】
記憶部101には、各種の制御プログラムおよび固定データ等が格納される。また、記憶部101には、一時データ等が記憶されてもよい。
【0130】
撮影装置1による撮影画像は、記憶部101に記憶されていてもよい。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、外部の記憶装置(例えば、LANおよびWANで制御部100に接続される記憶装置)へ撮影画像が記憶されてもよい。
【0131】
また、制御部100は、駆動部8、光源11a~11d、駆動部15c、駆動部17c、駆動部25c、撮像素子28、光源41、撮像素子47、光源51、入力インターフェイス110、およびモニタ120等の各部とも電気的に接続されている。
【0132】
また、制御部100は、入力インターフェイス110(操作入力部)から出力される操作信号に基づいて、上記の各部材を制御する。入力インターフェイス110は、検者の操作を受け付ける操作入力部である。例えば、マウスおよびキーボード等であってもよい。
【0133】
<実施例の動作説明>
次に、図13のフローチャートに基づいて、撮影動作を説明する。
【0134】
撮影装置1は、被検者の顔が顔支持部9に対して配置され、顔検出カメラ110の撮影範囲に含まれることによって、自動的に撮影動作がスタートしてもよい。
【0135】
まず、顔検出カメラ110と前眼部観察光学系40とによる撮影が並行して行われるようになり(S1)、両者の撮影結果を用いたアライメント調整が実行される(S2)。
【0136】
詳細には、制御部100は、顔画像に含まれる左右眼の一方の位置を検出し、その位置情報に基づいて駆動部8を駆動させる。これにより、前眼部観察が可能な位置まで、撮影ユニット4の位置を調整する。
【0137】
次に、前眼部正面画像に基づいて、アライメント基準位置が設定され、設定されたアライメント基準位置へとアライメントが誘導される。本実施例では、前眼部正面画像に基づいて被検眼Eと撮影ユニット3との位置関係が、制御部100によって調整される。本実施例において、制御部100は撮像素子47からの信号に基づいて、前眼部観察像における瞳孔中心と、画像中心(本実施例では、撮影光軸Lの位置)とが略一致する位置関係を目標とする第1基準位置が、設定される。そして、第1基準位置からのアライメントずれを検出し、アライメントずれが解消される方向へと撮影ユニット4を上下左右方向へ移動させる。このとき、例えば、前眼部観察画像上における瞳孔中心と撮影光軸とのズレ量に基づいて第1基準位置とのアライメントずれが検出されてもよい。また、眼底撮影装置1が、例えば、角膜頂点にアライメント指標を投影するアライメント投影光学系を有している場合、アライメント指標と撮影光軸とのズレ量に基づいてアライメントずれが検出されてもよい。
【0138】
また、制御部100は、瞳孔Epに前眼部観察画像のピントが合うように撮影ユニット4を前後方向へ移動させる。これにより、装置から被検眼までの距離が、所定の作動距離に調整される。
【0139】
このように、本実施例では、S2のアライメント調整の結果として、被検眼と撮影ユニット4との位置関係が、被検眼の瞳上における受光領域Rの中心(つまり、撮影光軸)が瞳孔中心と一致するような位置(本実施例における第1基準位置)へと調整される。
【0140】
第1撮影モードが設定された後、制御部100は、眼底観察画像の撮影および表示を開始する(S3)。詳細には、制御部100は、光源11c,11dを同時に点灯させると共に、駆動部15cの駆動を開始させ、眼底Er上の所定の範囲で、スリット状の照明光が、繰り返し走査される。所定回数(少なくとも1回)の走査毎に、撮像素子28から出力される信号に基づいて、略リアルタイムに撮影された眼底画像が、眼底観察画像として、随時生成される。制御部100は、眼底観察画像を、略リアルタイムな動画像として、モニタ120へ表示させてもよい。
【0141】
次に、眼底観察画像に基づいて、照射光学系および受光光学系におけるフォーカス状態が調整される(S4)。本実施例では、アライメント完了後、視度補正光学系を駆動してフォーカス調整が行われる。このとき、本実施例では、照射側視度補正光学系17と、受光側視度補正光学系25との、両方が駆動される。
【0142】
フォーカス調整処理において、制御部100は、まず、光源51を点灯することにより、眼底に対してスプリット指標の投影を開始する。制御部100は、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを一致させつつ補正量を変化させてデフォーカスを行う。また、制御部100は、補正量が変化する毎に、スプリット指標の分離状態を眼底観察画像から検出し、スプリット指標が合致するまで、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを調整する。このような調整の結果として、撮像面とスリット状部材15a,15bとの各々が、眼底と共役な位置関係となる。
【0143】
また、本実施例では、スプリット指標が合致したときの視度補正量が、屈折度数情報として、制御部100によって取得される(S5)。
【0144】
次に、制御部100は、撮影モードを、屈折度数情報に基づいて設定する。まず、屈折度数情報である視度補正量を、予め定められた閾値と比較する(S6)。本実施例では、照射側補正量と受光側補正量とのそれぞれが-12Dに対してマイナスディオプター側である場合にアーチファクトが生じるものと仮定して、屈折度数の閾値として「-12D」が採用されている。つまり、図4Bにおいて符号A1で示す第1の範囲は、本実施例において「-12D」よりもプラスディオプター側の範囲である。また、符号A2で示す第2の範囲は、本実施例におい「-12D」、および、それよりもマイナスディオプター側の範囲である。但し、対物レンズ22の反射によるアーチファクトが生じる視度の範囲は、装置の光学設計に応じて異なるので、装置の光学設計に応じた値を閾値として採用してもよい。
【0145】
本実施例では、被検眼の屈折度数が「-12D」よりもプラスディオプター側の値である場合は、第1撮影モードに設定さる(S6:No)。一方、被検眼の屈折度数が「-12D」またはそれよりもマイナスディオプター側の値である場合は、第2撮影モードに設定される(S6:Yes)。
【0146】
第1撮影モードでは、S8の処理に進み、視度補正量以外の撮影条件が、撮影モードに応じて調整される(S8)。調整後、眼底画像が撮影される(S9)。このとき、観察用の光源11c,11dからの発光を停止し、その後、撮影用の光源11a,11bを点灯させてもよい。この場合、光源11a,11bから照射される可視光に基づいて眼底の撮影画像が、撮影の結果として取得される。
【0147】
本実施例において、第1撮影モードでは、照射側補正量と受光側補正量との各々が一致された状態で、眼底画像が撮影される(図4A参照)。撮影の際、照射側補正量と受光側補正量とは、フォーカス調整処理(S5)での調整直後の値となっている。従って、視度補正量はアーチファクトが問題とならない範囲であるうえ、撮像面とスリット状部材15a,15bとの各々が眼底と共役な位置関係となっている状態で眼底が撮影される。従って、良好な眼底画像が撮影される。
【0148】
一方、第2撮影モードでは、照射側補正量が、スプリット指標が合致したときの値に対して、プラスディオプター側に変移される(図4B参照)。これにより、照明光の集光位置が対物レンズから遠ざかるので、対物レンズ22の反射によるアーチファクトが生じ難くなる。本実施例において、変移後の照射側補正量の値は、固定値であってもよいし、受光側補正量と一致しない範囲で受光側補正量に応じて変動してもよい。本実施例において、照射側補正量は、閾値よりもプラスディオプター側の値である「-10D」に変移される。但し、必ずしもこれに限られるものでは無く、閾値へ変移されてもよい。
【0149】
次に、視度補正量以外の撮影条件が、第2撮影モードに応じて調整される。このとき、照射光学系における視度補正量がベストフォーカスからずれているので、照明光として照射されるスリット光は、眼底上でぼけてしまう。これにより、受光光学系におけるスリット15bの開口を通過する眼底反射光が減少することで、受光光量の低下を招く。
【0150】
そこで、制御部100は、光源11a,11bまたは光源11c,11dから出力される照明光の光量、撮像素子28のゲイン、露光時間のうち、いずれかを、第1撮影モードに比べて、第2撮影モードでは増大させる。これにより、照明光として照射されるスリット光がS7の処理の結果として眼底上でボケてしまうことによる、画質の低下が抑制される。
【0151】
そして、制御部100は、撮影条件の調整後、眼底画像を撮影する(S9)。第2撮影モードでは、照射側補正量と受光側補正量との各々が不一致の状態で、眼底画像が撮影される。これにより、本実施例では、近視眼を撮影する場合であっても、アーチファクトの発生が抑制される。撮影の際、受光光学系10bにおける視度補正量は、フォーカス調整処理(S5)での調整直後の値となっている。従って、眼底と撮像面とは共役となっているので、眼底画像においてピンボケが抑制される。また、第2撮影モードでは、スリット15aが眼底Erと非共役な位置関係に配置されるので、照明光として照射されるスリット光が眼底上でボケてしまう。しかしながら、照明光の光量、撮像素子28のゲイン、露光時間のうち、いずれかの撮影条件が第1撮影モードに比べて増大されているので、適正なダイナミックレンジを持つ眼底画像が得られやすい。
【0152】
画像処理によって眼底画像上のアーチファクトを抑制する方式では、画像処理の痕跡が画像中に残ってしまう場合が考えられる。これに対し、本実施例では、アーチファクトを抑制するための画像処理は必ずしも必要としないので、眼底画像においては、眼底の組織がより自然に描写される。
【0153】
また、第2モードでは、照明光量または露光時間が増大されることで、被検者への負担が第1モードに比べて増大するものと考えられる。しかし、撮影開始(撮影用の照明光の照射開始)から完了までの時間は、比較的短いことから、負担の増加幅は、比較的少ないものと考えられる。従って、近視の度数が高い被検眼を撮影する場合であっても、被検者に大きな負担を与えることなく、アーチファクトの抑制された眼底画像を撮影できる。
【0154】
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、本開示を実施するうえで、実施形態の内容を適宜変更することができる。
【0155】
<視度補正光学系の変容例>
例えば、上記実施例では、視度補正光学系17,25として、レンズ間隔に応じた視度補正量が設定される光学系を、一例として示した。但し、視度補正光学系は、必ずしもこれに限定されるものでは無く、種々の光学系を採用することができる。例えば、図2に示した光学系の場合、レンズ17aの代わりに、スリット状部材15aが光軸方向に変位することによって照射光学系10aにおける視度補正が可能となる。スリット状部材15a
が光軸方向に変位することによって、集光点Kの位置が、光軸方向に変位される。また、同様に、レンズ25bの代わりに、スリット状部材15bが光軸方向に変位することによ
って、受光光学系10bにおける視度補正が可能となる。この場合、レンズ27および撮
像素子28についれも、スリット状部材25bと連動して、移動されてもよい。また、更
に、この場合は、を1つの駆動部がスリット状部材15aによる走査と、スリット状部材15bによる走査と、を行うことは難しくなるので、スリット状部材15aと、スリット
状部材15bとは、それぞれ駆動部を有していてもよい。
【0156】
<蛍光撮影時の撮影制御>
また、例えば、上記各実施形態において、眼底撮影装置は、眼底反射光に基づく眼底画像を撮影するだけでなく、更に、眼底から発せられる蛍光に基づく眼底画像である蛍光眼底画像を撮影してもよい。
【0157】
この場合、照射光学系からは照明光が励起光として照射される。照明光の波長域は、所期する蛍光物質に応じて適宜設定され得る。蛍光物質は、造影剤(例えば、インドシアニングリーン、および、フルオレセイン等)でもよいし、眼底に蓄積した自発蛍光物質(例えば、リポフスチン)であってもよい。
【0158】
受光光学系では、励起光に基づく眼底からの蛍光が、受光素子へ導かれる。蛍光撮影が行われる場合において、受光光学系の独立光路上には、バリアフィルタが配置される。バリアフィルタは、励起光と同じ波長域の光を遮光し蛍光を通過させるような分光特性を持つ。これにより、励起光の眼底反射光と眼底からの蛍光とのうち、蛍光が選択的に受光素子へ受光される。その結果、眼底蛍光画像が良好に得られる。バリアフィルタを挿脱する駆動部を、眼底撮影装置は有していてもよい。また、バリアフィルタの挿脱は、制御部によって制御されてもよい。
【0159】
制御部は、通常撮影モードと、蛍光撮影モードと、の間で撮影モードを切換えてもよい。通常撮影モードは、眼底反射光に基づく眼底画像を撮影するために設定される。蛍光撮影モードは、蛍光眼底画像を撮影するために設定される。制御部は、撮影モードに応じて、バリアフィルタの挿脱を制御してもよい。この場合、制御部は、通常撮影モードではバリアフィルタを退避させる。また、制御部は、蛍光撮影モードではバリアフィルタを挿入させる。ここで、蛍光撮影モードでは、バリアフィルタによって、励起光の眼底反射光だけでなく、対物レンズによる反射光も遮られる。故に、上記実施形態で示した、各種のアーチファクト抑制処理を、蛍光撮影モードにおいては実行する必要は無い。そこで、蛍光撮影モードにおいて、被検眼の屈折誤差に関わらずアーチファクト抑制処理が、制御部によって実行されなくてもよい。例えば、照射光学系における視度補正量(照射側補正量)と、受光光学系における視度補正量(受光側補正量)と、を不一致とすることで、アーチファクトの発生を抑制する装置においては、蛍光撮影モードでは、照射側補正量と受光側補正量とが一致するように、各々の値が屈折誤差に応じて調整される。
【符号の説明】
【0160】
1 眼底撮影装置
10 撮影光学系
10a 照射光学系
10b 受光光学系
17,25 視度補正光学系
22 対物レンズ
100 制御部
150 オプティカルチョッパー
E 被検眼
Er 眼底

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13