(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】検眼装置及び検眼プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A61B3/028
(21)【出願番号】P 2019089075
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】立花 献
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143553(JP,A)
【文献】特開2018-171228(JP,A)
【文献】特開2018-147416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に向けて測定用光束を投光する投光光学系を少なくとも有する測定手段と、
前記投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、前記投光光学系からの前記測定用光束を導光する固定光学部材と、
を備え、
前記被検眼に前記測定用光束を投光することで、前記被検眼の光学特性を測定する検眼装置であって、
前記被検眼の眼屈折力、または、前記被検眼の前記眼屈折力を矯正手段によって矯正するために設定された矯正度数を取得する取得手段と、
前記被検眼と、前記投光光学系における瞳共役位置と、の位置関係情報を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記位置関係情報に基づいて、前記被検眼と前記瞳共役位置との共役関係を保つように、駆動手段を制御して、前記被検眼に対して前記測定手段を移動させる移動制御手段と、
前記移動制御手段による前記測定手段の移動によって変化する、前記固定光学部材と前記測定手段との間の距離に起因する前記測定用光束の発散収束角の変化を補正する補正手段と、
を備え
、
前記補正手段は、前記取得手段により取得された前記眼屈折力または前記矯正度数と、前記検出手段により検出された前記位置関係情報と、に基づいて、前記測定用光束の発散収束角の変化を補正することを特徴とする検眼装置。
【請求項2】
請求項1の検眼装置において、
前記補正手段は、前記測定用光束の発散収束角が、前記測定手段の移動前と移動後で維持されるように補正することを特徴とする検眼装置。
【請求項3】
請求項1または2の検眼装置において、
前記測定手段は、前記投光光学系と、前記投光光学系の光路中にあって、前記測定用光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、を有する自覚式測定手段であって、
前記補正手段は、前記矯正光学系を制御することで、前記測定用光束の発散収束角の変化を補正することを特徴とする検眼装置。
【請求項4】
被検眼に向けて測定用光束を投光する投光光学系を少なくとも有する測定手段と、
前記投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、前記投光光学系からの前記測定用光束を導光する固定光学部材と、
を備え、
前記被検眼の光学特性を測定する検眼装置にて用いる検眼プログラムであって、
前記検眼装置のプロセッサによって実行されることで、
前記被検眼の眼屈折力、または、前記被検眼の前記眼屈折力を矯正手段によって矯正するために設定された矯正度数を取得する取得ステップと、
前記被検眼と、前記投光光学系における瞳共役位置と、の位置関係情報を検出する検出ステップと、
前記検出
ステップにより検出された前記位置関係情報に基づいて、前記被検眼と前記瞳共役位置との共役関係を保つように、駆動手段を制御して、前記被検眼に対して前記測定手段を移動させる移動制御ステップと、
前記移動
制御ステップによる前記測定手段の移動によって変化する、前記固定光学部材と前記測定手段との間の距離に起因する前記測定用光束の発散収束角の変化を補正する補正ステップと、
を前記検眼装置に実行させ
、
前記補正ステップは、前記取得ステップにより取得された前記眼屈折力または前記矯正度数と、前記検出ステップにより検出された前記位置関係情報と、に基づいて、前記測定用光束の発散収束角の変化を補正することを特徴とする検眼プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の光学特性を測定する検眼装置および検眼プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
検眼装置の一例として、被検眼に向けて測定用光束を投光する投光光学系の光路中に配置され、測定用光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、矯正光学系により矯正された測定用光束を導光する光学部材と、を備えた測定部をもつ自覚式検眼装置が知られている(特許文献1)。このような構成の装置において、検眼時には、被検眼と測定部との位置合わせ(アライメント)が行われ、被検眼の瞳との共役関係を維持した状態で、被検眼に視標が呈示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような構成の装置では、投光光学系の光路中に測定用光束を導光する光学部材が固定配置されている。本発明者らは、アライメントにおいて被検眼に対して測定部を移動させたとき、固定配置された光学部材と測定部との距離の変化等が影響して、被検眼に入射する測定用光束の発散収束角が変化することを見出した。測定用光束の発散収束角が変化すると、被検眼の光学特性を適切に測定できない場合がある。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、被検眼の光学特性を精度よく測定できる検眼装置および検眼プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示は以下の構成を備えることを特徴とする。
(1)本開示の第1態様に係る検眼装置は、被検眼に向けて測定用光束を投光する投光光学系を少なくとも有する測定手段と、前記投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、前記投光光学系からの前記測定用光束を導光する固定光学部材と、備え、前記被検眼に前記測定用光束を投光することで、前記被検眼の光学特性を測定する検眼装置であって、前記被検眼の眼屈折力、または、前記被検眼の前記眼屈折力を矯正手段によって矯正するために設定された矯正度数を取得する取得手段と、前記被検眼と、前記投光光学系における瞳共役位置と、の位置関係情報を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記位置関係情報に基づいて、前記被検眼と前記瞳共役位置との共役関係を保つように、駆動手段を制御して、前記被検眼に対して前記測定手段を移動させる移動制御手段と、前記移動制御手段による前記測定手段の移動によって変化する、前記固定光学部材と前記測定手段との間の距離に起因する前記測定用光束の発散収束角の変化を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、前記取得手段により取得された前記眼屈折力または前記矯正度数と、前記検出手段により検出された前記位置関係情報と、に基づいて、前記測定用光束の発散収束角の変化を補正することを特徴とする。
(2)本開示の第2態様に係る検眼プログラムは、被検眼に向けて測定用光束を投光する投光光学系を少なくとも有する測定手段と、前記投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、前記投光光学系からの前記測定用光束を導光する固定光学部材と、を備え、前記被検眼の光学特性を測定する検眼装置にて用いる検眼プログラムであって、前記検眼装置のプロセッサによって実行されることで、前記被検眼の眼屈折力、または、前記被検眼の前記眼屈折力を矯正手段によって矯正するために設定された矯正度数を取得する取得ステップと、前記被検眼と、前記投光光学系における瞳共役位置と、の位置関係情報を検出する検出ステップと、前記検出ステップにより検出された前記位置関係情報に基づいて、前記被検眼と前記瞳共役位置との共役関係を保つように、駆動手段を制御して、前記被検眼に対して前記測定手段を移動させる移動制御ステップと、前記移動制御ステップによる前記測定手段の移動によって変化する、前記固定光学部材と前記測定手段との間の距離に起因する前記測定用光束の発散収束角の変化を補正する補正ステップと、を前記検眼装置に実行させ、前記補正ステップは、前記取得ステップにより取得された前記眼屈折力または前記矯正度数と、前記検出ステップにより検出された前記位置関係情報と、に基づいて、前記測定用光束の発散収束角の変化を補正することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】検眼装置の内部を正面方向から見た概略構成図である。
【
図4】検眼装置の内部を側面方向から見た概略構成図である。
【
図5】検眼装置の内部を上面方向から見た概略構成図である。
【
図7】測定部における瞳共役位置を説明する図である。
【
図8】視標光束の発散収束角の変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
本開示の実施形態に係る検眼装置の概要について説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0009】
本実施形態における検眼装置は、被検眼の光学特性を測定する。被検眼の光学特性は、被検眼の自覚的な光学特性であってもよく、この場合には、眼屈折力(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)、コントラスト感度、両眼視機能(例えば、斜位量、立体視機能、等)、等の少なくともいずれかが挙げられる。また、被検眼の光学特性は、被検眼の他覚的な光学特性であってもよく、この場合には、眼屈折力(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)、眼軸長、角膜形状、等の少なくともいずれかが挙げられる。
【0010】
検眼装置は、測定手段(例えば、測定部7)を備える。測定手段は、被検眼に向けて測定用光束を投光する投光光学系を少なくとも有する。例えば、検眼装置は、投光光学系を有し、被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式測定手段(例えば、自覚式測定光学系25)を備えてもよい。また、検眼装置は、投光光学系を有し、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式測定手段(例えば、他覚式測定光学系10)を備えてもよい。なお、検眼装置は、自覚式測定手段と、他覚式測定手段と、をどちらも備えた検眼装置であってもよい。
【0011】
<自覚式測定手段>
自覚式測定手段は、投光光学系(例えば、投光光学系30)を備えてもよい。自覚式測定手段における投光光学系は、被検眼に向けて視標光束を投光する。投光光学系は、被検眼に向けて投光された視標光束を導光する少なくとも1つの光学部材を有してもよい。
【0012】
また、自覚式測定手段は、矯正光学系(例えば、矯正光学系60)を備えてもよい。矯正光学系は、投光光学系の光路中に配置され、視標光束の光学特性(例えば、球面度数、円柱度数、円柱軸、偏光特性、及び、収差量、等の少なくともいずれか)を変化させる。
【0013】
<投光光学系>
投光光学系は、視標呈示手段を備えてもよい。視標呈示手段は、被検眼に視標を呈示する。この場合、投光光学系は、被検眼に向けて視標呈示手段から出射された視標光束を投光する。例えば、視標呈示手段としては、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ31)を用いることができる。ディスプレイは、LCOS(Liquid crystal on silicon)、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)等であってもよい。また、例えば、視標呈示手段としては、光源とDMD(Digital Micromirror Device)を用いることができる。一般的に、DMDは反射率が高く明るい。このため、偏光を用いるLCDを用いた場合と比べて、視標光束の光量を維持することができる。また、例えば、視標呈示手段としては、視標呈示用の可視光源と視標板を用いることができる。視標板は回転可能なディスク板であり、複数の視標をもっていてもよい。このような場合、被検眼に視標光束が導光される光路上において、視標板がモータ等により回転され、視標が切り換え配置される。
【0014】
<矯正光学系>
矯正光学系は、視標光束の光学特性を変更可能な構成であればよい。
【0015】
例えば、矯正光学系は、光学素子を制御することで、視標光束の球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度、等の少なくともいずれかを変更可能としてもよい。光学素子は、球面レンズ、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、ロータリプリズム、波面変調素子、可変焦点レンズ、等の少なくともいずれかであってもよい。もちろん、これらの光学素子とは異なる光学素子であってもよい。
【0016】
また、例えば、矯正光学系は、被検眼に対する視標の呈示位置(呈示距離)を光学的に変えることで、被検眼の球面度数を矯正してもよい。この場合、視標の呈示位置を光学的に変更するために、視標表示手段を光軸方向に移動させる構成としてもよい。また、この場合、視標の呈示位置を光学的に変更するために、光路中に配置された光学素子(例えば、球面レンズ等)を光軸方向に移動させる構成としてもよい。
【0017】
なお、矯正光学系は、光学素子を制御する構成と、視標表示手段を光軸方向に移動させる構成と、光路中に配置された光学素子を光軸方向に移動させる構成と、を組み合わせた構成であってもよい。
【0018】
本実施形態において、矯正光学系は、被検眼の眼前に光学素子を配置する眼屈折力測定ユニット(フォロプタ)であってもよい。例えば、眼屈折力測定ユニットは、可変焦点レンズを有し、可変焦点レンズの屈折力を変化させる構成であってもよい。また、例えば、眼屈折力測定ユニットは、複数の光学素子が同一円周上に配置されたレンズディスクと、レンズディスクを回転させるための駆動手段(例えば、モータ)と、を有し、駆動手段の駆動によって、光学素子を電気的に切り換える構成であってもよい。もちろん、眼屈折力測定ユニットは、可変焦点レンズと、レンズディスク及び駆動手段と、を有する構成であってもよい。これらの構成を備える場合、被検眼に向けた視標光束は、眼屈折力測定ユニットを介して投影される。
【0019】
また、本実施形態において、矯正光学系は、視標表示手段と、投光光学系から視標光束を被検眼に向けて導光するための光学部材と、の間に光学素子を配置して、光学素子を制御することで、視標光束の光学特性を変更する構成であってもよい。すなわち、矯正光学系は、ファントムレンズ屈折計(ファントム矯正光学系)の構成であってもよい。この場合、例えば、矯正光学系によって矯正された視標光束は、光学部材を介して被検眼に導光される。
【0020】
<他覚式測定手段>
他覚式測定手段は、投光光学系(例えば、投影光学系10a)を備えてもよい。他覚式測定手段における投光光学系は、被検眼の眼底に測定光束を投光する。また、他覚式測定手段は、受光光学系(例えば、受光光学系10b)を備えてもよい。受光光学系は、被検眼の眼底に測定光束が反射された眼底反射光束を受光する。
【0021】
<固定光学部材>
検眼装置は、固定光学部材を備える。固定光学部材は、投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、投光光学系からの測定用光束を導光する固定光学部材である。固定光学部材は、被検眼に、投光光学系に投光され、さらに、矯正光学系に矯正された測定用光束を導光するための固定光学部材であってもよい。例えば、固定光学部材としては、凹面鏡(例えば、凹面ミラー85)、レンズ、等の少なくともいずれかを用いることができる。
【0022】
なお、本実施形態では、固定光学部材として凹面鏡を用いることで、被検眼に呈示する視標を光学的に所定の検査距離に配置している。所定の部材を実距離に配置する必要がないため、装置を省スペース化することができる。
【0023】
<取得手段>
検眼装置は、取得手段(例えば、制御部70)を備えていてもよい。取得手段は、被検眼の光学特性を取得する。取得手段は、被検眼の光学特性として、検眼装置における自覚式測定手段または他覚式測定手段により測定された測定結果に基づく光学特性を取得してもよい。また、取得手段は、検眼装置とは異なる装置にて測定された測定結果に基づく光学特性を受信することで取得してもよい。また、取得手段は、検者による操作手段(例えば、モニタ4)の操作により入力された値を光学特性として取得してもよい。なお、取得手段は、被検眼の光学特性として、これらの光学特性に基づいた、被検眼を矯正するための矯正度数(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等の少なくともいずれか)を取得する構成であってもよい。
【0024】
<検出手段>
検眼装置は、検出手段(例えば、制御部70)を備える。検出手段は、被検眼と、投光光学系における瞳共役位置と、の位置関係情報を検出する。被検眼と瞳共役位置との位置関係情報は、被検眼(例えば、角膜頂点位置または瞳孔位置)と瞳共役位置との各々の位置座標であってもよい。また、被検眼と瞳共役位置との位置関係情報は、被検眼と瞳共役位置との距離であってもよい。なお、検出手段は、被検眼及び瞳共役位置の少なくともいずれかを検出することによって、被検眼と瞳共役位置との位置関係情報を検出してもよい。
【0025】
例えば、検出手段は、被検眼と瞳共役位置との位置関係情報に基づくずれ量を検出する構成としてもよい。また、例えば、検出手段は、被検眼と瞳共役位置との位置関係情報に基づくずれ量から判定される被検眼と測定手段との位置合わせの状態(アライメント状態)を検出する構成としてもよい。一例として、この場合には、アライメントが適正とされる基準位置を設定し、被検眼の基準位置に対するずれ量を検出することで、アライメント状態を検出してもよい。なお、例えば、基準位置は、被検眼の瞳孔位置が瞳共役位置と一致する位置であってもよい。
【0026】
本実施形態においては、被検眼が基準位置にアライメントされた際の、被検眼から所定の部材(例えば、呈示窓3、測定部7、等)までの距離を、作動距離として用いてもよい。この場合、基準位置は、被検眼と検眼装置との作動距離を適正な作動距離とするための位置であってもよく、正視眼の瞳孔位置が瞳共役位置と一致する位置であってもよい。
【0027】
<移動制御手段>
検眼装置は、移動制御手段(例えば、制御部70)を備える。移動制御手段は、検出手段により検出された位置情報に基づいて、被検眼と瞳共役位置との共役関係を保つように、駆動手段(例えば、左眼用駆動部9L、右眼用駆動部9R)を制御し、被検眼に対して測定手段を移動させる。これによって、被検眼に位置ずれが生じても、被検眼と投光光学系の瞳共役位置とを一致させ、被検眼と瞳共役位置との共役関係を維持するように、被検眼と測定手段との間の距離が自動的に調整される。このため、被検眼と測定手段の位置合わせが容易に行われる。
【0028】
例えば、本実施形態において、移動制御手段は、被検眼に対して測定手段の全体を移動させる構成としてもよい。また、例えば、本実施形態において、移動制御手段は、被検眼に対して、測定手段に収納された投光光学系における少なくとも一部の部材を移動させる構成としてもよい。移動制御手段は、投光光学系の瞳共役位置を移動させることが可能な構成であればよい。
【0029】
<補正手段>
検眼装置は、補正手段(例えば、制御部70)を備える。補正手段は、移動手段による測定手段の移動によって変化する、固定光学部材と測定手段との間の距離に起因する測定用光束の発散収束角の変化を補正する。すなわち、補正手段は、被検眼と瞳共役位置との共役関係を保つことによって変化する倍率(つまり、瞳倍率)に起因した測定用光束の発散収束角の変化を補正する。例えば、測定用光束の発散収束角とは、測定用光束が発散する発散角から測定用光束が収束する収束角までを表すいずれかの角度であってもよい。
【0030】
補正手段は、言い換えると、移動手段による測定手段の移動によって変化する、固定光学部材と測定手段との間の距離に起因する測定用光束の発散収束状態の変化を補正する。なお、測定用光束の発散収束状態とは、測定用光束が発散した発散光束、測定用光束が平行な平行光束、測定用光束が収束した収束光束、等を表すいずれかの状態である。
【0031】
本実施形態において、補正手段は、測定用光束の発散収束角が、被検眼に対する測定手段の移動前と移動後で維持されるように補正する構成であってもよい。一例として、補正手段は、被検眼に対する測定手段のアライメント完了状態と、その後に発生した被検眼の位置ずれに応じて測定手段を移動させた状態と、において測定用光束の発散収束角が維持されるように補正してもよい。これによって、被検眼に適切な測定用光束を入射させ、被検眼の光学特性を精度よく取得することができる。
【0032】
補正手段は、取得手段により取得された光学特性と、検出手段により検出された被検眼と瞳共役位置との位置関係情報と、に基づいて、測定用光束の光学特性を補正するようにしてもよい。この場合、補正手段は、取得手段により取得された被検眼の他覚的な光学特性と、被検眼と瞳共役位置との位置関係情報と、に基づいて、測定用光束の光学特性を補正するようにしてもよい。また、この場合、補正手段は、取得手段により取得された被検眼の自覚的な光学特性(あるいは、被検眼を矯正する矯正度数)と、被検眼と瞳共役位置との位置関係情報と、に基づいて、測定用光束の光学特性を補正するようにしてもよい。これによって、被検眼の光学特性ごとに程度が異なる測定用光束の発散収束角の変化を容易に補正し、被検眼の光学特性を精度よく取得することができる。
【0033】
なお、本実施形態において、補正手段は、自覚式測定手段が備える矯正光学系を制御することによって、測定用光束の光学特性を補正するようにしてもよい。これによって、新たな部材を設ける必要がなく、簡易的な構成で測定用光束の発散収束角を補正し、被検眼の光学特性を精度よく取得することができる。
【0034】
補正手段は、測定用光束の発散収束角を補正するための補正量を設定する補正量設定手段を備える構成としてもよい。補正量設定手段は、予め、被検眼の光学特性と、被検眼と瞳共役位置と位置関係情報と、に基づく補正量を設定する構成であってもよい。例えば、この場合、補正量設定手段は、被検眼の光学特性と、被検眼と瞳共役位置と位置関係情報と、に基づく演算処理により、補正量を算出してもよい。また、例えば、この場合、補正量設定手段は、被検眼の光学特性と、被検眼と瞳共役位置と位置関係情報と、に基づく補正テーブルを記憶手段(例えば、メモリ75)記憶手段から呼び出すことで、補正量を取得してもよい。
【0035】
例えば、補正手段は、補正量設定手段により設定された補正量に基づいて、測定用光束の発散収束角を補正してもよい。また、補正手段は、補正量を設定せず、演算処理や補正テーブルを用いて直接的に測定用光束の発散収束角を補正してもよい。
【0036】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【0037】
<実施例>
本実施形態に係る自覚式検眼装置の一実施例について説明する。
【0038】
図1は、自覚式検眼装置の外観図である。例えば、自覚式検眼装置(以下、検眼装置)1は、筐体2、呈示窓3、モニタ4、顎台5、基台6、前眼部撮像光学系100、等を備える。
【0039】
筐体2は、基台6に固定される。筐体2の内部には、後述する測定部7が設けられる。呈示窓3は、被検者の眼(被検眼E)に視標を呈示するために用いる。モニタ4は、被検眼Eの光学特性の測定結果等を表示する。モニタ4は、タッチパネル機能をもつディスプレイである。すなわち、モニタ4が操作部(コントローラ)として機能する。なお、モニタ4はタッチパネル式でなくてもよく、モニタ4と操作部とを別に設ける構成であってもよい。この場合には、マウス、ジョイスティック、キーボード、携帯端末、等の少なくともいずれかを操作部として用いてもよい。モニタ4から入力された操作指示に応じた信号は、後述する制御部70に出力される。顎台5は、基台6に固定される。顎台5は、被検眼Eと検眼装置1との距離を一定に保つために用いる。なお、顎台5に限定されず、額当て、顔当て、等を用いて、被検眼Eと検眼装置1との距離を一定に保つ構成としてもよい。
【0040】
前眼部撮像光学系100は、被検者の顔を撮像するために用いる。前眼部撮像光学系100は、図示なき撮像素子とレンズで構成される。前眼部撮像光学系100は、左眼EL及び右眼ERの少なくとも一方を撮像して、その前眼部画像を取得する。前眼部撮像光学系100による前眼部の撮像は、後述する制御部70に制御される。また、前眼部撮像光学系100により取得された前眼部画像は、後述する制御部70に解析される。
【0041】
<測定部>
測定部7からの視標光束は、呈示窓3を介して被検眼Eに導光される。測定部7は、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rを備える。測定部7は、左右一対の後述する自覚式測定部と、左右一対の後述する他覚式測定部と、を有する。本実施例における左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rは、同一の部材で構成される。もちろん、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rは、その少なくとも一部が異なる部材で構成されてもよい。
【0042】
図2は、測定部7を示す図である。
図2では、測定部7として、左眼用測定部7Lを例に挙げる。右眼用測定部7Rは、左眼用測定部7Lと同様の構成であるため省略する。例えば、左眼用測定部7Lは、自覚式測定光学系25、他覚式測定光学系10、第1指標投影光学系45、第2指標投影光学系46、観察光学系50、等を備える。
【0043】
<自覚式測定光学系>
自覚式測定光学系25は、被検眼Eの光学特性を自覚的に測定する自覚式測定部の構成の一部として用いられる(詳細は後述する)。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力を測定する自覚式測定部を例に挙げる。なお、被検眼Eの光学特性は、眼屈折力の他、コントラスト感度、両眼視機能(例えば、斜位量、立体視機能、等)、等であってもよい。例えば、自覚式測定光学系25は、投光光学系(視標投光系)30、矯正光学系60、及び、補正光学系90、で構成される。
【0044】
<投光光学系>
投光光学系30は、被検眼Eに向けて視標光束を投影する。例えば、投光光学系30は、ディスプレイ31、投光レンズ33、投光レンズ34、反射ミラー36、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、対物レンズ14、等を備える。
【0045】
ディスプレイ31には、視標(固視標、検査視標、等)が表示される。ディスプレイ31から出射した視標光束は、投光レンズ33、投光レンズ34、反射ミラー36、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、対物レンズ14、の順に光学部材を経由して、被検眼Eに投影される。
【0046】
<矯正光学系>
矯正光学系60は、投光光学系30の光路中に配置される。また、矯正光学系60は、ディスプレイ31から出射した視標光束の光学特性を変化させる。例えば、矯正光学系60は、乱視矯正光学系63、駆動機構39、等を備える。
【0047】
乱視矯正光学系63は、被検眼Eの円柱度数や乱視軸角度を矯正するために用いる。乱視矯正光学系63は、投光レンズ33と投光レンズ34の間に配置される。乱視矯正光学系63は、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズ61aと円柱レンズ61bで構成される。円柱レンズ61aと円柱レンズ61bは、回転機構62aと回転機構62bの駆動によって、光軸L2を中心として、各々が独立に回転する。なお、本実施例では、乱視矯正光学系63として、円柱レンズ61aと円柱レンズ61bを用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。乱視矯正光学系63は、円柱度数、乱視軸角度、等を矯正できる構成であればよい。一例としては、投光光学系30の光路に矯正レンズを出し入れしてもよい。
【0048】
駆動機構39は、モータ及びスライド機構からなる。駆動機構39は、後述する駆動ユニット95を光軸L2方向に移動させることで、ディスプレイ31を光軸L2方向に移動させる。他覚式測定では、ディスプレイ31を移動させることで、被検眼Eに雲霧をかけることができる。自覚式測定では、ディスプレイ31を移動させることで、被検眼Eに対する視標の呈示位置(呈示距離)を光学的に変更し、被検眼Eの球面度数を矯正することができる。すなわち、本実施例では、ディスプレイ31の位置を変更することで、被検眼Eの球面度数を矯正する球面矯正光学系が構成されている。なお、球面矯正光学系の構成は、本実施例とは異なっていてもよい。例えば、多数の光学素子を光路中に配置することで、球面度数を矯正してもよい。また、例えば、レンズを光路中に配置し、レンズを光軸方向に移動させることで、球面度数を矯正してもよい。
【0049】
なお、本実施例では、球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度を矯正する矯正光学系が例示されている。しかし、矯正光学系は、他の光学特性(例えば、プリズム値、等)を矯正してもよい。プリズム値が矯正されることで、被検眼が斜位眼であっても、被検眼に視標光束が適切に投影される。
【0050】
また、本実施例では、円柱度数及び乱視軸角度を矯正する乱視矯正光学系63と、球面度数を矯正する駆動機構39が別で設けられている。しかし、球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度が同一の構成によって矯正されてもよい。例えば、波面を変調させる光学系によって、球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度が矯正されてもよい。また、複数の光学素子(例えば、球面レンズ、円柱レンズ、および分散プリズム等の少なくともいずれか)が同一円周上に配置されたレンズディスクと、レンズディスクを回転させるアクチュエータが、矯正光学系として用いられてもよい。この場合、レンズディスクが回転されて、光軸L2上に位置する光学素子が切り替えられることで、種々の光学特性が矯正される。また、光軸L2上に配置された光学素子(例えば、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、およびロータリプリズム等の少なくともいずれか)が、アクチュエータによって回転されてもよい。
【0051】
<補正光学系>
補正光学系90は、対物レンズ14と偏向ミラー81(後述)の間に配置される。補正光学系90は、自覚式測定で生じる光学収差(例えば、非点収差、等)を補正するために用いる。補正光学系90は、円柱度数と乱視軸角度を調整することで、非点収差を補正する。補正光学系90は、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズ91aと円柱レンズ91bで構成される。円柱レンズ91aと円柱レンズ91bは、回転機構92aと回転機構92bの駆動によって、光軸L3を中心として、各々が独立に回転する。なお、本実施例では、補正光学系90として、2枚の正の円柱レンズ91aと円柱レンズ91bを用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。補正光学系90は、非点収差を矯正できる構成であればよい。例えば、この場合には、光軸L3に補正レンズを出し入れしてもよい。
【0052】
<他覚式測定光学系>
他覚式測定光学系10は、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式測定部の構成の一部として用いられる(詳細は後述する)。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力を測定する他覚式測定部を例に挙げて説明する。なお、被検眼Eの光学特性は、眼屈折力の他、眼軸長、角膜形状、等であってもよい。例えば、他覚式測定光学系10は、投影光学系10a、受光光学系10b、及び、補正光学系90、で構成される。
【0053】
投影光学系(投光光学系)10aは、被検眼Eの瞳孔中心部を介して、被検眼Eの眼底にスポット状の測定指標を投影する。例えば、投影光学系10aは、光源11、リレーレンズ12、ホールミラー13、プリズム15、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、対物レンズ14、等を備える。
【0054】
光源11は、測定光束を出射する。光源11は、被検眼Eの眼底と共役な関係となっている。ホールミラー13のホール部は、被検眼Eの瞳孔と共役な関係となっている。プリズム15は、光束偏向部材である。プリズム15は、被検眼Eの瞳孔と共役な位置から外れた位置に配置され、プリズム15を通過する測定光束を光軸L1に対して偏心させる。プリズム15は、光軸L1を中心として、駆動部(モータ)23により回転駆動される。ダイクロイックミラー35は、他覚式測定光学系10の光路と、後述する自覚式測定光学系25の光路と、を共通にする。すなわち、ダイクロイックミラー35は、他覚式測定光学系10の光軸L1と、自覚式測定光学系25の光軸L2と、を同軸にする。ダイクロイックミラー29は、光路分岐部材である。ダイクロイックミラー29は、投影光学系10aによる測定光束と、自覚式測定光学系25による測定光束と、を反射して被検眼Eに導く。
【0055】
受光光学系10bは、被検眼Eの眼底で反射された眼底反射光束を、被検眼Eの瞳孔周辺部を介してリング状に取り出す。例えば、受光光学系10bは、対物レンズ14、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー35、プリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、撮像素子22、等を備える。リングレンズ20は、リング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外の領域に遮光用のコーティングを施した遮光部と、から構成される。リングレンズ20は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。受光絞り18と撮像素子22は、被検眼Eの眼底と共役な関係となっている。撮像素子22からの出力は、制御部70に入力される。
【0056】
本実施例において、投影光学系10aが備える光源11と、受光光学系10bが備える受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、及び撮像素子22と、投光光学系30が備えるディスプレイ31と、は駆動機構39により光軸方向に一体的に移動可能となっている。つまり、光源11、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、撮像素子22、及び、ディスプレイ31、が駆動ユニット95として同期し、駆動機構39がこれらを一体的に移動させる。例えば、駆動機構39が移動した移動位置は、図示なきポテンショメータによって検出される。
【0057】
駆動ユニット95は、外側のリング光束が各経線方向に関して撮像素子22上に入射するように、他覚式測定光学系10の一部を光軸方向に移動させる。すなわち、他覚式測定光学系10の一部を被検眼Eの球面屈折誤差(球面屈折力)に応じて光軸L1方向に移動させることで、球面屈折誤差を補正し、被検眼Eの眼底に対して光源11、受光絞り18及び撮像素子22が光学的に共役になるようにする。なお、ホールミラー13とリングレンズ20は、駆動ユニット95の移動量にかかわらず、被検眼Eの瞳と一定の倍率で共役になるように配置されている。
【0058】
上記の構成において、光源11から出射された測定光束は、リレーレンズ12、ホールミラー13、プリズム15、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、対物レンズ14、を経て被検眼Eの眼底上にスポット状の点光源像を形成する。このとき、光軸周りに回転するプリズム15によって、ホールミラー13におけるホール部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は高速に偏心回転される。眼底に投影された点光源像は、反射・散乱されて被検眼Eから射出し、対物レンズ14によって集光され、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー35、高速回転するプリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17を介して受光絞り18の位置に再び集光され、コリメータレンズ19とリングレンズ20とによって撮像素子22にリング状の像が結像する。
【0059】
例えば、プリズム15は、投影光学系10aと受光光学系10bの共通光路に配置されている。例えば、眼底からの反射光束は投影光学系10aと同じプリズム15を通過するため、それ以降の光学系では、あたかも瞳孔上における投影光束・反射光束(受光光束)の偏心がなかったかのように逆走査される。
【0060】
なお、本実施例において、他覚式測定部の構成は変更することが可能である。例えば、他覚式測定部は、瞳孔周辺部から眼底にリング状の測定指標を投影し、瞳孔中心部から眼底反射光を取り出し、撮像素子22にリング状の眼底反射像を受光させる構成を備えていてもよい。また、他覚式測定部はシャックハルトマンセンサを備えていてもよいし、スリットを投影する位相差方式の構成を備えていてもよい。
【0061】
<第1指標投影光学系及び第2指標投影光学系>
例えば、本実施例においては、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46が、補正光学系90と、偏向ミラー81との間に配置される。もちろん、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46の配置位置は、これに限定されない。例えば、第1指標投影光学系45と第2指標投影光学系46は、筐体2のカバーに備えられていてもよい。例えば、この場合には、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46が、呈示窓3の周囲に配置される構成が挙げられる。
【0062】
例えば、第1指標投影光学系45は、光軸L3を中心に配置されたリング状の赤外光源を備える。例えば、第1指標投影光学系45は、被検眼Eの角膜にアライメント指標を投影するための近赤外光を発する。例えば、第2指標投影光学系46は、第1指標投影光学系45とは異なる位置に配置されたリング状の赤外光源を備える。なお、
図2では、便宜上、第1指標投影光学系45と第2指標投影光学系46におけるリング状の赤外光源の一部(断面部分)のみが図示されている。本実施例において、第1指標投影光学系45は、被検者眼の角膜に無限遠のアライメント指標を投影する。また、第2指標投影光学系46は、被検者眼の角膜に有限遠のアライメント指標を投影する。なお、第2指標投影光学系46から出射されるアライメント光は、観察光学系50によって被検眼の前眼部を撮影するための前眼部撮影光としても用いられる。また、第1指標投影光学系45および第2指標投影光学系46の光源は、リング状の光源に限定されず、複数の点状の光源、またはライン状の光源等であってもよい。
【0063】
<観察光学系>
観察光学系(撮像光学系)50は、対物レンズ14、ダイクロイックミラー29、撮像レンズ51、撮像素子52、等を備える。ダイクロイックミラー29は、前眼部観察光及びアライメント光を透過する。撮像素子52は、被検眼Eの前眼部と略共役な位置に配置された撮像面をもつ。撮像素子52からの出力は、制御部70に入力される。これによって、被検眼Eの前眼部画像は撮像素子52により撮像され、モニタ4上に表示される。なお、この観察光学系50は、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46によって、被検眼Eの角膜に形成されるアライメント指標像を検出する光学系を兼ね、制御部70によってアライメント指標像の位置が検出される。
【0064】
<検眼装置内部構成>
以下、検眼装置1の内部構成について説明する。
図3は、本実施例に係る検眼装置1の内部を正面方向(
図1のA方向)から見た概略構成図である。
図4は、本実施例に係る検眼装置1の内部を側面方向(
図1のB方向)から見た概略構成図である。
図5は、本実施例に係る検眼装置1の内部を上面方向(
図1のC方向)から見た概略構成図である。なお、
図4及び
図5では、説明の便宜上、左眼用測定部7Lの光軸のみを示している。
【0065】
例えば、検眼装置1は、自覚式測定部と、他覚式測定部と、を備える。例えば、自覚式測定部及び他覚式測定部において、測定部7からの視標光束は、光学部材(例えば、後述する凹面ミラー85)の光軸Lに一致する光路を通過して被検眼Eに導光されてもよい。また、例えば、自覚式測定部及び他覚式測定部において、測定部7からの視標光束は、光学部材(例えば、後述する凹面ミラー85)の光軸Lから外れた光路を通過して被検眼Eに導光されてもよい。例えば、本実施例において、光軸Lは凹面ミラー85の球中心に向かう軸である。なお、以下では、測定部7からの視標光束が凹面ミラー85の光軸Lから外れた経路を通過する構成を例に挙げる。すなわち、測定部7からの視標光束が凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射され、その反射光束が被検眼Eに導光される。
【0066】
例えば、自覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー81、駆動機構82、駆動部83、反射ミラー84、凹面ミラー85で構成される。なお、自覚式測定部はこの構成に限定されない。例えば、反射ミラー84を有しない構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束が、偏向ミラー81を介した後に凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射されてもよい。また、例えば、ハーフミラーを有する構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束を、ハーフミラーを介して凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向に照射し、その反射光束を被検眼Eに導光してもよい。なお、本実施例では凹面ミラー85を配置しているが、凹面ミラー85ではなく、凸レンズを配置した構成であってもよい。
【0067】
例えば、他覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー81、反射ミラー84、凹面ミラー85で構成される。なお、他覚式測定部はこの構成に限定されない。例えば、反射ミラー84を有しない構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束が、偏向ミラー81を介した後に凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射されてもよい。また、例えば、ハーフミラーを有する構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束を、ハーフミラーを介して凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向に照射し、その反射光束を被検眼Eに導光してもよい。なお、本実施例では凹面ミラー85を配置しているが、凹面ミラー85ではなく凸レンズを配置した構成であってもよい。
【0068】
例えば、検眼装置1は、左眼用駆動部9Lと右眼用駆動部9Rとを有し、左眼用測定部7L及び右眼用測定部7RをそれぞれX方向に移動することができる。例えば、左眼用測定部7L及び右眼用測定部7Rが移動されることによって、偏向ミラー81と測定部7との間の距離が変更され、Z方向における視標光束の呈示位置が変更される。これによって、矯正光学系60によって矯正された視標光束を被検眼Eに導光し、矯正光学系60によって矯正された視標光束の像が被検眼Eの眼底に形成されるように、測定部7をZ方向に調整することができる。
【0069】
例えば、偏向ミラー81は、左右一対にそれぞれ設けられた、右眼用の偏向ミラー81Rと左眼用の偏向ミラー81Lとを有する。例えば、偏向ミラー81は、矯正光学系60と被検眼Eとの間に配置される。すなわち、本実施例における矯正光学系60は、左右一対に設けられた左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系とを有しており、左眼用の偏向ミラー81Lは左眼用矯正光学系と左眼ELの間に配置され、右眼用の偏向ミラー81Rは右眼用矯正光学系と右眼ERの間に配置される。例えば、偏向ミラー81は、瞳の共役位置に配置されることが好ましい。
【0070】
例えば、左眼用の偏向ミラー81Lは、左眼用測定部7Lから投影される光束を反射し、左眼ELに導光する。また、例えば、左眼用の偏向ミラー81Lは、左眼ELで反射された反射光を反射し、左眼用測定部7Lに導光する。例えば、右眼用の偏向ミラー81Rは、右眼用測定部7Rから投影される光束を反射し、右眼ERに導光する。また、例えば、右眼用の偏向ミラー81Rは、右眼ERで反射された反射光を反射し、右眼用測定部7Rに導光する。なお、本実施例においては、測定部7から投影される光束を反射し、被検眼Eに導光する偏向部材として、偏向ミラー81を用いる構成を例に挙げて説明しているがこれに限定されない。偏向部材は、測定部7から投影される光束を反射し、被検眼Eに導光する偏向部材であればよい。例えば、偏向部材としては、プリズムやレンズ等が挙げられる。
【0071】
例えば、駆動機構82は、モータ(駆動部)等からなる。例えば、駆動機構82は、左眼用の偏向ミラー81Lを駆動するための駆動機構82Lと、右眼用の偏向ミラー81Rを駆動するための駆動機構82Rと、を有する。例えば、駆動機構82の駆動によって、偏向ミラー81は回転移動する。例えば、駆動機構82は、水平方向(X方向)の回転軸、及び鉛直方向(Y方向)の回転軸に対して偏向ミラー81を回転させる。すなわち、駆動機構82は偏向ミラー81をXY方向に回転させる。なお、偏向ミラー81の回転は、水平方向又は鉛直方向の一方であってもよい。
【0072】
例えば、駆動部83は、モータ等からなる。例えば、駆動部83は、左眼用の偏向ミラー81Lを駆動するための駆動部83Lと、右眼用の偏向ミラー81Rを駆動するための駆動部83Rと、を有する。例えば、駆動部83の駆動によって、偏向ミラー81はX方向に移動する。例えば、左眼用の偏向ミラー81L及び右眼用の偏向ミラー81Rが移動されることによって、左眼用の偏向ミラー81L及び右眼用の偏向ミラー81Rとの間の距離が変更され、被検眼Eの瞳孔間距離にあわせて、左眼用光路と右眼用光路との間のX方向における距離を変更することができる。
【0073】
なお、例えば、偏向ミラー81は、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれにおいて複数設けられてもよい。例えば、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれにおいて、2つの偏向ミラーが設けられる(例えば、左眼用光路で2つの偏向ミラー等)構成が挙げられる。この場合、一方の偏向ミラーがX方向に回転され、他方の偏向ミラーがY方向に回転されてもよい。例えば、偏向ミラー81が回転移動されることによって、矯正光学系60の像を被検眼の眼前に形成するためのみかけの光束を偏向させることにより、像の形成位置を光学的に補正することができる。
【0074】
例えば、凹面ミラー85は、右眼用測定部7Rと左眼用測定部7Lとで共有される。例えば、凹面ミラー85は、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、で共有される。すなわち、凹面ミラー85は、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、を共に通過する位置に配置されている。もちろん、凹面ミラー85は、右眼用光路と左眼用光路とで共有される構成でなくてもよい。すなわち、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、でそれぞれ凹面ミラーが設けられる構成であってもよい。例えば、凹面ミラー85は、矯正光学系を通過した視標光束を被検眼Eに導光し、矯正光学系を通過した視標光束の像を被検眼Eの眼前に形成する。なお、本実施例においては凹面ミラー85を用いる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、種々の光学部材を用いることができる。例えば、光学部材としては、レンズや平面ミラー等を用いることができる。
【0075】
例えば、凹面ミラー85は、自覚式測定部と、他覚式測定部と、で兼用される。例えば、自覚式測定光学系25から投影された視標光束は、凹面ミラー85を介して、被検眼Eに投影される。例えば、他覚式測定光学系10から投影された測定光は、凹面ミラー85を介して、被検眼Eに投影される。また、例えば、他覚式測定光学系10から投影された測定光の反射光は、凹面ミラー85を介して、他覚式測定光学系10の受光光学系10bに導光される。なお、本実施例においては、他覚式測定光学系10による測定光の反射光が、凹面ミラー85を介して、他覚式測定光学系10の受光光学系10bに導光される構成を例に挙げているがこれに限定されない。例えば、他覚式測定光学系10による測定光の反射光は、凹面ミラー85を介さない構成であってもよい。
【0076】
より詳細には、例えば、本実施例においては、自覚式測定部における凹面ミラー85から被検眼Eまでの間の光軸と、他覚式測定部における凹面ミラー85から被検眼Eまでの間の光軸と、が少なくとも同軸で構成されている。例えば、本実施例においては、ダイクロイックミラー35によって、自覚式測定光学系25の光軸L2と他覚式測定光学系10の光軸L1とが合成され、同軸となっている。
【0077】
<自覚式測定部の光路>
以下、自覚式測定部の光路について説明する。例えば、自覚測定部は、矯正光学系60を通過した視標光束を、凹面ミラー85によって被検眼方向に反射することで被検眼Eに視標光束を導光し、矯正光学系60を通過した視標光束の像を光学的に所定の検査距離となるように被検眼Eの眼前に形成する。例えば、このとき、矯正光学系60を通過した視標光束は、凹面ミラー85の光軸Lから外れた光路を通過して凹面ミラー85へ入射し、凹面ミラー85の光軸Lから外れた光路を通過するように反射されて、被検眼Eに導光される。例えば、被検者から見た視標は、被検眼Eからディスプレイ31までの実際の距離よりも遠方にあるように見える。すなわち、凹面ミラー85を用いることで被検眼Eに対する視標の呈示距離を延長し、所定の検査距離の位置に視標光束の像が見えるように、被検者に視標を呈示することができる。
【0078】
より詳細に説明する。なお、以下の説明においては左眼用光路を例に挙げて説明するが、右眼用光路においても左眼用光路と同様の構成となっている。例えば、左眼用の自覚測定部において、左眼用測定部7Lのディスプレイ31から投影された視標光束は、投光レンズ33を介して、乱視矯正光学系63に入射する。乱視矯正光学系63を通過した視標光束は、反射ミラー36、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、対物レンズ14を経由して、補正光学系90に入射する。補正光学系90を通過した視標光束は、左眼用測定部7Lから左眼用の偏向ミラー81Lに向けて導光される。左眼用測定部7Lから出射されて左眼用の偏向ミラー81で反射された視標光束は、反射ミラー84により凹面ミラー85に向けて反射される。例えば、ディスプレイ31から出射した視標光束は、このように光学部材を経由することで左眼ELに到達する。
【0079】
これによって、左眼ELの眼鏡装用位置(例えば、角膜頂点位置から12mm程度)を基準として、矯正光学系60により矯正された視標が左眼ELの眼底上に形成される。従って、乱視矯正光学系63があたかも眼前に配置されたことと、球面度数の矯正光学系(本実施例においては、駆動機構39の駆動)による球面度数の調整が眼前で行われたことと、が等価になっており、被検者は凹面ミラー85を介して自然な状態で視標の像を視準することができる。なお、本実施例においては、右眼用光路においても、左眼用光路と同様の構成であり、左眼EL及び右眼ERの眼鏡装用位置(例えば、角膜頂点位置から12mm程度)を基準として、左右一対の矯正光学系60により矯正された視標が、両被検眼の眼底上に形成されるようになっている。このようにして、被検者は自然視の状態で視標を直視しつつ検者に対する応答を行い、視標が適正に見えるまで矯正光学系60による矯正を図り、その矯正値に基づいて自覚的に被検眼の光学特性の測定を行う。
【0080】
<他覚式測定部の光路>
次いで、他覚式測定部の光路について説明する。なお、以下の説明においては左眼用光路を例に挙げて説明するが、右眼用光路においても左眼用光路と同様の構成となっている。例えば、左眼用の他覚測定部において、他覚式測定光学系10における投影光学系10aの光源11から出射された測定光は、リレーレンズ12から対物レンズ14までを介して補正光学系90に入射する。補正光学系90を通過した測定光は、左眼用測定部7Lから左眼用の偏向ミラー81Lに向けて投影される。左眼用測定部7Lから出射されて左眼用の偏向ミラー81で反射された測定光は、反射ミラー84によって凹面ミラー85に向けて反射される。凹面ミラーによって反射された測定光は、反射ミラー84を透過して左眼ELに到達し、左眼ELの眼底上にスポット状の点光源像を形成する。このとき、光軸周りに回転するプリズム15によって、ホールミラー13のホール部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は高速に偏心回転される。
【0081】
左眼ELの眼底上に形成された点光源像の光は、反射・散乱されて被検眼Eを射出し、測定光が通過した光路を経由して対物レンズ14により集光され、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー35、プリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17までを介する。ミラー17までを介した反射光は、受光絞り18の開口上で再び集光され、コリメータレンズ19にて略平行光束(正視眼の場合)とされ、リングレンズ20によってリング状光束として取り出され、リング像として撮像素子22に受光される。受光したリング像を解析することによって、他覚的に被検眼Eの光学特性を測定することができる。
【0082】
<制御部>
図6は、本実施例に係る検眼装置1の制御系を示す図である。例えば、制御部70には、モニタ4、不揮発性メモリ75(以下、メモリ75)、測定部7が備える光源11、撮像素子22、ディスプレイ31、撮像素子52等の各種部材が電気的に接続されている。また、例えば、制御部70には、駆動部9、駆動機構39、回転機構62aと62b、駆動部83、回転機構92aと92bがそれぞれ備える図示なき駆動部が電気的に接続されている。
【0083】
例えば、制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、検眼装置1における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、検眼装置1の動作を制御するための各種プログラム、各種検査のための視標データ、初期値等が記憶されている。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0084】
例えば、メモリ75は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ75としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を使用することができる。例えば、メモリ75には、自覚式測定部及び他覚式測定部を制御するための制御プログラムが記憶されている。
【0085】
<制御動作>
検眼装置1の制御動作について説明する。
【0086】
<被検眼に対する瞳共役位置の検出と測定部のアライメント>
検者は、被検者に、顎を顎台5に載せて呈示窓3を観察するように指示する。また、検者は、モニタ4を操作し、被検眼Eを固視させるための固視標を選択する。制御部70は、モニタ4からの入力信号に応じて、ディスプレイ31に固視標を表示する。これによって、被検眼Eには固視標が投影される。
【0087】
続いて、検者は、モニタ4を操作し、被検眼Eと測定部7との位置合わせ(アライメント)を開始するためのスイッチを選択する。制御部70は、モニタ4からの入力信号に応じて、被検眼Eの角膜に第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46によるアライメント指標像を投影する。また、制御部70は、アライメント指標像を用いて、被検眼Eにおける角膜頂点位置Ekのアライメント基準位置に対するX方向、Y方向、及びZ方向(作動距離方向)へのずれを検出する。なお、本実施例では、このような被検眼のずれを、アライメント指標像を用いて検出しているが、電気信号の受光位置等を用いて検出する構成としてもよい。
【0088】
さらに、制御部70は、ずれに基づいて測定部7を移動させる。例えば、本実施例では、投光光学系30の光路中に凹面ミラー85が固定配置され、ずれに基づいて測定部7のみが移動されてもよい。また、例えば、本実施例では、投光光学系30の光路中に凹面ミラー85が移動可能に配置され、ずれに基づいて測定部7と凹面ミラー85とが一体的に移動されてもよい。
【0089】
これによって、被検眼Eが適正な作動距離に配置され、アライメントが完了される。例えば、本実施例における適正な作動距離とは、被検眼Eから呈示窓3までの距離であり、被検眼Eの瞳孔位置Epと瞳共役位置R1が一致する状態の距離である(詳細は後述する)。
【0090】
図7は、測定部7における瞳共役位置を説明する図である。
図7(a)は、被検眼Eに対するアライメントが完了し、被検眼Eが測定部7に対して適正な作動距離にある状態である。
図7(b)は、被検眼Eが
図7(a)の状態から移動し、被検眼Eが測定部7に対して適正とは異なる作動距離にある状態である。
図7(c)は、
図7(b)の状態から測定部7を移動させることで、被検眼Eが測定部7に対して適正な作動距離となった状態である。なお、
図7では、便宜上、被検眼E、呈示窓3、凹面ミラー85(ここでは凸レンズに置き換えて説明する)、及び測定部7を直線上に配置して簡略化する。また、
図7では、被検眼Eが所定の位置Z1に位置するとき、その瞳孔位置Epに瞳共役位置R1が一致する測定部7の位置を、測定部7の初期位置T1とする。
【0091】
例えば、
図7(a)のように、被検眼Eが初期位置T1にある測定部7に対して適正な作動距離g1にあれば、被検眼Eの瞳孔位置Epと、被検眼Eが適正な作動距離g1にあるときの瞳位置R1と、が一致する。また、被検眼Eが初期位置T1にある測定部7に対して適正な作動距離g1にあれば、瞳孔位置Epと、検眼装置1の内部にある瞳共役位置R2と、が所定の位置関係となる。一例として、瞳孔位置Epから凹面ミラー85までの距離と、凹面ミラー85から瞳共役位置R2までの距離と、がともに同一(略同一)の距離WDとなる。このため、被検眼Eが初期位置T1にある測定部7に対して適正な作動距離g1にあれば、瞳孔位置Ep(瞳位置R1)と、瞳共役位置R2とが、凹面ミラー85を介して光学的に共役となる。
【0092】
しかし、例えば、
図7(b)のように、被検眼Eがアライメント完了後に移動した場合等は、被検眼Eが初期位置T1にある測定部7に対して適正な作動距離g1になく、瞳孔位置Epが瞳位置R1からZ方向にずれていることがある。例えば、このような場合、制御部70は、投光光学系30の光路中に凹面ミラー85を固定配置し、被検眼Eのずれに基づいて測定部7のみを移動させる。より詳細には、制御部70は、瞳孔位置Epを物点とした際の凹面ミラー85における結像点R3(瞳結像位置R3)と、瞳共役位置R2と、が一致するように、凹面ミラー85に対して測定部7をZ方向に移動させ、アライメントを調整する。
【0093】
例えば、制御部70は、アライメント指標像を用いて被検眼Eの角膜頂点位置Ekを検出し、角膜頂点位置Ekに基づいて瞳孔位置Epを検出する。角膜頂点位置Ekから所定の距離(例えば、3mm)だけ奥側に瞳孔位置Epがあるとされるため、角膜頂点位置Ekを検出することで瞳孔位置Epを検出することができる。また、制御部70は、アライメント指標像を用いて瞳孔位置Epから呈示窓3までの距離G(作動距離G)を検出し、距離Gと、測定部7の初期位置T1における適正な作動距離g1と、のずれ量δz(言い換えると、瞳孔位置Epの瞳位置R1に対するずれ量δz)に基づいて、測定部7を移動させる移動量δzpを算出する。
【0094】
例えば、測定部7の移動量δzpは、凹面ミラー85の焦点距離f、瞳孔位置Epから凹面ミラー85までの距離(すなわち、WD+δz)、及び凹面ミラー85から瞳結像位置R3までの距離(すなわち、WD-δzp)を用いた以下の数式で求めることができる。
【数1】
【0095】
制御部70は、移動量δzpに基づき、凹面ミラー85に対して測定部7を光軸L4方向へ一体的に移動させる。これによって、
図7(c)に示すように、測定部7が初期位置T1から移動位置T2へ移動し、瞳共役位置R2が瞳結像位置R3に一致される。制御部70が測定部7を移動させることで、被検眼Eの瞳孔位置Epと、瞳共役位置R2と、の共役関係が保たれ、被検眼Eに対する測定部7のアライメントが完了する。
【0096】
<自覚式測定の開始>
検者は、被検眼Eと測定部7とのアライメントが完了すると、被検眼に対する自覚式測定を開始する。検者は、モニタ4を操作して、被検眼Eの眼屈折度を所定の値(例えば、0D等)に矯正するため矯正度数を設定する。検者は、被検眼Eの光学特性(例えば、被検眼Eの他覚式測定における光学特性、被検眼Eの自覚式測定における光学特性、等)を予め取得しておき、これに基づいて矯正度数を設定してもよい。
【0097】
<アライメントずれによる視標光束の変化>
被検眼Eと測定部7とのアライメントが完了した後、被検眼EのZ方向のずれ量δzに応じて測定部7が移動量δzpだけ移動すると、被検眼Eの眼屈折度を所定の値で矯正できない場合がある。つまり、被検眼EのZ方向のずれ量δz(言い換えると、測定部7のZ方向の移動量δzp)によっては、被検眼Eに所望の矯正度数を付加できず、被検眼Eの眼屈折度が所定の値とは異なる別の値で矯正されてしまうことがある。このような現象は、被検眼Eに対して測定部7を移動させることによって、投光光学系30の光路中に固定配置された凹面ミラー85に対して測定部7が移動され、被検眼Eに入射する視標光束の発散収束角(すなわち、視標光束の発散収束状態)が変化するために生じる。以下、視標光束の発散収束角の変化について説明する。
【0098】
図8は、視標光束の発散収束角の変化を説明する図である。
図8(a)は、被検眼Eに対するアライメントが完了し、被検眼Eが位置Z1にある状態である。
図8(b)は、被検眼Eが
図8(a)の状態から移動し、被検眼Eが位置Z1から凹面ミラー85へ近づく方向にずれた状態である。
図8(c)は、被検眼Eが
図8(a)の状態から移動し、被検眼Eが位置Z1から凹面ミラー85へ離れる方向にずれた状態である。なお、
図8では、便宜上、被検眼E、凹面ミラー85(凸レンズに置き換えて説明する)、及び測定部7を直線上に配置し、さらに、測定部7が備える対物レンズ14、投光レンズ33、及び投光レンズ34を1枚の凸レンズMに置き換えて簡略化する。また、
図8では、被検眼Eが正視眼(眼屈折度が0D)である場合を例に挙げる。
【0099】
例えば、
図8(a)のように、被検眼Eが位置Z1にある場合、アライメントにより、測定部7は初期位置T1に配置される。このとき、ディスプレイ31から出射した視標光束は、凸レンズMに屈折され、検眼装置1の内部にある眼底共役位置Q2を通過し、凹面ミラー85に屈折される。凹面ミラー85を介した視標光束は、平行光となって(つまり、角度0度で)被検眼Eへ入射し、検眼装置1の外部にある眼底共役位置Q1にて集光する。この場合は、被検眼Eの眼底Efに眼底共役位置Q1が一致する。例えば、このような状態では、被検眼Eに呈示される光学的な検査視標の位置(すなわち、光学的なディスプレイ31の位置)が被検眼Eの前方無限遠に配置され、被検眼Eに所望の矯正度数(例えば、ここでは被検眼Eが正視眼なので0D)を付加することができる。
【0100】
これに対して、例えば、
図8(b)のように、被検眼Eが位置Z1よりも凹面ミラー85側にずれ量δz1だけ近づいた場合、測定部7は初期位置T1から移動量δzp1だけ移動する。これにともなって、眼底共役位置Q2及び瞳共役位置R2が、凹面ミラー85から離れる方向に移動する。ディスプレイ31から出射した視標光束は、凸レンズMに屈折され、移動した眼底共役位置Q2を通過し、凹面ミラー85に屈折される。凹面ミラー85を介した視標光束は、平行光ではなく収束光となって(つまり、収束角度θ1で)被検眼Eへ入射し、眼底共役位置Q1にて集光する。この場合は、被検眼E(測定部7)が移動して
図8(a)から
図8(b)の状態になり、視標光束の状態が変化して被検眼Eの眼底Efよりも手前側に眼底共役位置Q1が配置される。このような状態では、被検眼Eに呈示される光学的な検査視標の位置が、被検眼Eの無限遠よりも手前に配置されてしまうため、被検眼Eに所望の矯正度数とは異なる度数が付加されるようになる。
【0101】
同様に、例えば、
図8(c)のように、被検眼Eが位置Z1よりも凹面ミラー85側からずれ量δz2だけ離れた場合、測定部7は初期位置T1から移動量δzp2だけ移動する。これにともなって、眼底共役位置Q2及び瞳共役位置R2が、凹面ミラー85へ近づく方向に移動する。ディスプレイ31から出射した視標光束は、凸レンズMに屈折され、移動した眼底共役位置Q2を通過し、凹面ミラー85に屈折される。凹面ミラー85を介した視標光束は、平行光ではなく発散光となって(つまり、発散角度θ2で)被検眼Eへ入射し、眼底共役位置Q1にて集光する。この場合は、被検眼E(測定部7)が移動して
図8(a)から
図8(c)の状態になり、視標光束の状態が変化して被検眼Eの眼底Efよりも奥側に眼底共役位置Q1が配置される。このような状態では、被検眼Eに呈示される光学的な検査視標の位置が、被検眼Eの後方に配置されてしまうため、被検眼Eに所望の矯正度数とは異なる度数が付加されるようになる。
【0102】
例えば、上述のように、被検眼Eに入射する視標光束の収束発散角(すなわち、視標光束の収束角度、視標光束の発散角度、等)が変化すると、被検眼Eに呈示される光学的な検査視標の位置が変化する。このため、被検眼Eに所望の矯正度数とは異なる度数が付加される。なお、このような視標光束の収束発散角は、被検眼Eの眼屈折度の絶対値が大きいほど(言い換えると、被検眼Eに付加する矯正度数の絶対値が大きいほど)、変化が大きくなる。また、このような視標光束の収束発散角は、投光光学系30の光路中に固定配置される凹面ミラー85の屈折力が大きいほど、変化が大きくなる。
【0103】
<視標光束の補正>
そこで、本実施例では、被検眼Eと測定部7とのアライメントにより変化する視標光束の収束発散角が、被検眼E(測定部7)の移動前と移動後で一定の角度となるように、視標光束の光学特性を補正する。言い換えると、被検眼Eと測定部7とのアライメントにより変化する視標光束の収束発散状態(収束光束、平行光束、あるいは発散光束)が、被検眼Eの移動前と移動後で維持されるように、視標光束の光学特性を補正する。これによって、被検眼Eに所望の矯正度数を付加することができる。
【0104】
図9は、視標光束の補正を説明する図である。
図9(a)は、被検眼Eが位置Z1に、測定部7が初期位置T1にあり、被検眼Eに平行光が入射した状態(
図8(a)と同様の状態)である。
図9(b)は、被検眼Eが位置Z1から、測定部7が初期位置T1から各々ずれ、被検眼Eに発散光が入射した状態(
図8(c)と同様の状態)である。
図9(c)は、
図9(b)の状態から視標光束を補正し、被検眼Eに平行光が入射した状態である。なお、
図9でも、被検眼Eは正視眼とし、ここでは、被検眼Eに所定の球面度数を付加するために、視標光束がもつ球面屈折力を補正する場合を例に挙げる。
【0105】
本実施例において、被検眼Eは正視眼であるので、被検眼Eを矯正するための球面度数S1(被検眼Eに付加する球面度数S1)が0Dに設定されてもよい。制御部70は、検者が設定した球面度数S1に応じて、測定部7における各々の光学系を制御し、測定部7内から出射する視標光束の球面屈折力を0Dに調整する。例えば、制御部70は、検者が設定した球面度数S1に応じて、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させ、ディスプレイ31を球面度数S1(ここでは、0D)に対応する位置N1に配置する。これによって、測定部7内から出射する視標光束の球面屈折力が0Dに調整される。
【0106】
このとき、被検眼EにZ方向のずれがない
図9(a)の状態では、被検眼Eに測定部7内から出射した視標光束が平行光で入射し、眼底Efで集光する。このため、被検眼Eは設定された球面度数S1の通り、0Dで矯正される。しかし、被検眼EがZ方向にずれ量δzだけずれた
図9(b)の状態では、被検眼Eに測定部7内から出射した視標光束が発散光で入射し、眼底Efよりも奥側で集光する。このため、被検眼Eには、ディスプレイ31が球面度数S1に対応する位置N1に配置されていても、球面度数S1とは異なる値が付加される。例えば、被検眼Eは、0Dではなく+1Dで矯正される。
【0107】
そこで、制御部70は、
図9(b)の状態となった場合、測定部7内から出射する視標光束の球面屈折力を、所定の球面屈折力S2(以下、補正球面屈折力S2と称す)に調整することで、被検眼Eに入射する視標光束を
図9(a)と同様の平行光とし、
図9(c)に示す状態とする。
【0108】
例えば、本実施例において、補正球面屈折力S2は、被検眼Eに付加する球面度数S1と、被検眼EのZ方向におけるずれ量δzと、の関数(例えば、S2=S2(S1,δz))で表すことができる。制御部70は、被検眼Eが
図9(a)の状態からZ方向へずれて
図9(b)の状態となったとき、このような関数が成り立つように、被検眼EをZ方向のずれがない状態(ずれ量δz=0)に置き換え、被検眼Eに所望の球面度数S1を付加できるような視標光束の球面屈折力(補正球面屈折力S2)を算出する。
【0109】
制御部70は、求めた補正球面屈折力S2に基づき、測定部7における各々の光学系を制御して、測定部7内から出射する視標光束の球面屈折力を補正球面屈折力S2に調整する。例えば、制御部70は、ディスプレイ31を補正球面屈折力S2に対応する位置N2に配置する。これによって、被検眼Eの瞳孔位置Epと、瞳共役位置R2と、の共役関係を維持したまま、眼底共役位置Q1及び眼底共役位置Q2が光軸L4方向へ移動し、被検眼Eの眼底Efと、眼底共役位置Q1及び眼底共役位置Q2と、が共役関係になる。
【0110】
このとき、ディスプレイ31から出射した視標光束は、凸レンズMに屈折され、眼底共役位置Q2を通過し、凹面ミラー85に屈折されることで、被検眼Eへ平行光となって入射し、眼底Ef(眼底共役位置Q1)で集光する。これによって、測定部7内から出射する視標光束の球面屈折力は0Dとは異なる値(ここでは補正球面屈折力S2)に設定された状態となるが、視標光束が補正され、被検眼Eは球面度数S1(0D)で矯正されるようになる。つまり、本実施例では、式2を用いることで、被検眼Eに一定の球面度数(ここでは、球面度数S1)を与えることができる。
【0111】
例えば、本実施例において、このように視標光束を補正した場合、制御部70は、モニタ4に表示する測定結果として、被検眼Eが実際に矯正されている球面度数を表示させるようにしてもよい。より詳細には、測定部7内で設定される球面度数ではなく、被検眼Eに向けて補正球面屈折力S2をもった視標光束を導光することによって、被検眼Eに実際に入射する視標光束の球面度数を表示させるようにしてもよい。これによって、被検眼Eに入射する視標光束が補正されていることを考慮し、被検眼Eに実際に付加される球面度数が出力されるので、検者は被検眼の光学特性を精度よく取得することができる。
【0112】
なお、上記では、被検眼Eが凹面ミラー85から離れる方向へずれ、被検眼Eに発散光が入射する場合での視標光束の発散収束角の補正を例に挙げたが、被検眼Eが凹面ミラー85に近づく方向へずれ、被検眼Eに収束光が入射する場合での視標光束の発散収束角の補正についても、同様に考えることができる。
【0113】
また、上記では、被検眼Eに所望の球面度数S1を付加する場合を例に挙げたが、被検眼Eに所望の円柱度数を付加する場合についても、式2を用いて同様に補正することができる。例えば、この場合、制御部70は、式2より求められた補正円柱度数に基づき、円柱レンズ61aと61bを光軸L2周りに回転させることで、視標光束の発散収束角を補正してもよい。
【0114】
以上説明したように、例えば、本実施例における検眼装置は、被検眼に対して、被検眼と瞳共役位置との共役関係を保つように測定部を移動させたことによって変化する、固定光学部材と測定部との間の距離に基づいた測定用光束の発散収束角の変化を補正する。これによって、被検眼に対する測定部の移動前と移動後で測定用光束の発散収束角が維持されるため、被検眼に適切な測定用光束を入射させ、被検眼の光学特性を精度よく取得することができる。
【0115】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、被検眼の光学特性を取得し、被検眼の光学特性と、被検眼と投光光学系における瞳共役位置との位置情報と、に基づいて、測定用光束の発散収束角の変化を補正する。これによって、被検眼の光学特性ごとに程度が異なる測定用光束の発散収束角の変化を容易に補正し、被検眼の光学特性を精度よく取得することができる。
【0116】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、被検眼に向けて測定用光束を投光する投光光学系と、投光光学系の光路中にあって、測定用光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、を有し、矯正光学系を制御することで、測定用光束の光学特性を補正する。これによって、新たな部材を設ける必要がなく、簡易的な構成で測定用光束の発散収束角を補正し、被検眼の光学特性を精度よく取得することができる。
【0117】
また、例えば、本実施例における検眼装置では、投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材として凹面鏡を用い、凹面鏡に反射された測定用光束を被検眼に導光する。これによって、被検眼に呈示する視標が光学的に所定の検査距離に配置される。所定の部材を実距離となるように配置しなくてもよいため、装置を省スペース化することができる。
【0118】
<変容例>
なお、本実施例では、被検眼E(測定部7)がZ方向へずれることによって変化する視標光束の発散収束角を、被検眼E(測定部7)の移動前と移動後で維持することで補正する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検眼EがZ方向へずれることによって、視標光束が凹面ミラー85に入射する領域が変化し、凹面ミラー85による収差が発生することがある。このため、本実施例では、視標光束の発散収束角と、凹面ミラー85による収差と、を各々考慮して、視標光束を補正するようにしてもよい。
【0119】
なお、本実施例では、視標光束の球面屈折力を補正し、測定部7内から出射する視標光束を補正球面屈折力S2とするため、ディスプレイ31の配置位置を変更する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、測定部7内から出射する視標光束を補正球面屈折力S2とするため、別途、光学部材を挿抜する構成としてもよい。同様に、例えば、視標光束の円柱屈折力を補正し、測定部7内から出射する視標光束を補正円柱屈折力とするため、別途、光学部材を挿抜する構成としてもよい。
【0120】
球面屈折力や円柱屈折力の補正に用いるこれらの光学部材は、被検眼Eに向けてディスプレイ31から出射する視標光束が通過する光軸上(例えば、光軸L2上あるいは光軸L3上)であれば、いずれの位置に挿抜してもよい。光学部材としては、レンズ(例えば、球面レンズ、円柱レンズ、等)、プリズム、ミラー、等を使用することができる。
【0121】
なお、本実施例においては、視標光束の球面屈折力を補正するために、式2に示す数式を用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、視標光束の球面屈折力を補正するために、被検眼Eのずれ量δzと、被検眼Eに付加する矯正度数S1と、に基づく補正球面屈折力S2を予め対応付けた補正テーブルをメモリ75に記憶しておく構成としてもよい。この場合、制御部70は、ずれ量δz及び球面度数S1から球面屈折力S2を取得し、球面屈折力S2に応じてディスプレイ31の配置位置を制御することで、視標光束の球面屈折力を補正してもよい。
【0122】
なお、本実施例では、被検眼Eが位置Z1からZ方向にずれたときに、被検眼Eに入射する視標光束の発散収束角を補正する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検眼Eのずれ量δzによっては、視標光束の発散収束角の変化がわずかであるため、視標光束を補正しなくてもよい場合がある。このような構成とする際には、被検眼Eのずれ量δzに対して許容範囲を設定し、ずれ量δzが許容範囲を超えるか否かを検出することで、視標光束を補正するか否かを判定してもよい。許容範囲は、被検眼Eの眼屈折度毎に、予め実験やシミュレーション等から設定されていてもよい。
【0123】
なお、本実施例では、被検眼に対する自覚式測定において、視標光束の発散収束角を補正する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検眼に対する他覚式測定において、このような補正が行われてもよい。他覚式測定では、被検眼Eの眼底Efに向けて光源11から測定光束が照射され、眼底にて反射された眼底反射光束が、撮像素子22にリング像として撮像される。このとき、被検眼Eと測定部7とのアライメントにより、被検眼EのZ方向のずれ量δzに応じて測定部7が移動量δzpだけ移動すると、眼底反射光束の発散収束角が変化し、眼底反射光束に基づくリング像の形状や大きさが変化することがある。
【0124】
このため、制御部70は、被検眼EのZ方向のずれ量δzを利用して、光軸L2方向への駆動ユニット95の移動位置、あるいは円柱レンズ91a及び91bの回転角度、等を制御し、被検眼EにZ方向のずれがない状態と同様の眼底反射光束が入射するようにしてもよい。これによって、測定部7の移動前と移動後で眼底反射光束の発散収束角は維持され、眼底反射光束に基づく正しいリング像を得ることができる。制御部70は、リング像を解析処理して各経線方向の眼屈折力を求め、この眼屈折力に対して所定の処理を行うことで、被検眼Eの他覚値(すなわち、被検眼Eの他覚式測定における光学特性)を精度よく取得することができる。
【0125】
もちろん、制御部70は、上記のように駆動ユニット95の移動位置や円柱レンズ91a及び91bの回転角度を制御するのではなく、被検眼Eと測定部7とのアライメントにより変化したリング像から予め他覚値を求めておき、被検眼EのZ方向のずれ量δzを利用してこの他覚値を補正することで、精度のよい測定結果を取得することもできる。
【符号の説明】
【0126】
1 自覚式検眼装置
2 筺体
4 モニタ
5 顎台
7 測定部
10 他覚式測定光学系
25 自覚式測定光学系
30 投光光学系
45 第1指標投影光学系
46 第2指標投影光学系
50 観察光学系
60 矯正光学系
70 制御部
75 メモリ
81 偏向ミラー
84 ハーフミラー
85 凹面ミラー
90 補正光学系
100 前眼部撮像光学系