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特許7375350被覆層を有する容器の製造方法及び成形型
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】被覆層を有する容器の製造方法及び成形型
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/50 20060101AFI20231031BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20231031BHJP
   B29C 49/02 20060101ALI20231031BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20231031BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20231031BHJP
   B65D 1/02 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
B29C49/50
B29C49/06
B29C49/02
B29C49/22
B29C49/42
B65D1/02 111
B65D1/02 BRL
B65D1/02 BSF
B65D1/02 BSG
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019130297
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021014081
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清都 弘光
(72)【発明者】
【氏名】吉田 創哉
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 仁
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04966543(US,A)
【文献】特表2000-513658(JP,A)
【文献】特開2019-072864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
B65D 1/00-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形により作製される被覆層を備える容器の材料としての、熱可塑性の合成樹脂を用いて形成されたプリフォーム被覆層を有するプリフォームを取得することと、
前記容器が接触する面の一部に前記被覆層の厚さに対応した高さの刃が設けられたブロー成形型に、前記プリフォームを設置することと、
前記プリフォームをブロー成形することで、前記刃によって形成された切り込みを有する被覆層を備える容器を形成することと
を含み、
前記ブロー成形には、前記容器の首部を成形するように構成されたネックインサートであって、前記容器の首部に前記切り込みを形成するように構成された前記刃を有するネックインサートを有する前記ブロー成形型を用い、
前記ネックインサートの前記刃は、前記ネックインサートの型締め時及び型開き時の刃先の移動の軌跡に沿って配置されている、
被覆層を備える容器の製造方法。
【請求項2】
前記ブロー成形には、前記刃が交換可能に取り付けられるように構成された前記ブロー成形型を用いる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
容器の本体の形状を形成するための第1の胴型及び第2の胴型と、
前記容器の底部の形状を形成するための底型と、
前記容器の首部の形状を形成するためのネックインサートと
を含み、
前記ネックインサートは、
前記首部と接触する首部接触面と前記容器のネックリングと接触するネックリング接触面とを有し、
前記首部接触面からネックリング接触面にわたって設けられた刃を備え、
前記ネックインサートの前記刃は、前記ネックインサートの型締め時及び型開き時の刃先の移動の軌跡に沿って配置されている、
前記容器のブロー成形に用いるための成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆層を有する容器の製造方法及び成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を用いてプリフォームを形成し、このプリ
フォームを延伸ブロー成形などによってボトル状に成形することで製造される合成樹脂製
の容器が知られている。合成樹脂製容器は、例えば、各種飲料品を内容物とする飲料用容
器として用いられている。
【0003】
このような容器に種々の機能や特性を持たせるために、容器の周囲を被覆層で覆った複
合容器が知られている。例えば、特許文献1には、複合容器及びその製造方法が開示され
ている。開示されている製造方法では、まず、プラスチック材料製のプリフォームを準備
し、このプリフォームの外側を取り囲むようにプラスチック製部材を設けてこれらを密着
させ複合プリフォームを作製する。次に、ブロー成形型内で複合プリフォームに対してブ
ロー成形を施すことにより、複合プリフォームのプリフォーム及びプラスチック製部材を
一体として膨張させる。このようにして、容器本体の周囲にプラスチック製部材が設けら
れた複合容器が製造される。
【0004】
特許文献1に開示されている複合容器では、容器の廃棄時に容器本体からプラスチック
製部材を容易に剥離して除去できるように、ミシン目状の開口がプラスチック製部材に設
けられている。このミシン目状の開口は、プラスチック製部材の切断を容易にする。この
開口は、複合プリフォームのプラスチック製部材に開口が形成され、その後にブロー成形
されることで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-55524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、被覆層を有する容器において、被覆層の一部に切り込みが設けられた容器を
製造する一手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、被覆層を備える容器の製造方法は、ブロー成形により作製さ
れる被覆層を備える容器の材料としての、熱可塑性の合成樹脂を用いて形成されたプリフ
ォーム被覆層を有するプリフォームを取得することと、前記容器が接触する面の一部に前
記被覆層の厚さに対応した高さの刃が設けられたブロー成形型に、前記プリフォームを設
置することと、前記プリフォームをブロー成形することで、前記刃によって形成された切
り込みを有する被覆層を備える容器を形成することとを含む。
【0008】
本発明の一態様によれば、容器のブロー成形に用いる成形型は、前記容器の本体の形状
を形成するための第1の胴型及び第2の胴型と、前記容器の底部の形状を形成するための
底型と、前記容器の首部の形状を形成するためのネックインサートとを含み、前記ネック
インサートは、前記首部と接触する首部接触面と前記容器のネックリングと接触するネッ
クリング接触面とを有し、前記首部接触面からネックリング接触面にわたって設けられた
刃を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被覆層を有する容器において、被覆層の一部に切り込みが設けられた
容器を製造する一手法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、一実施形態に係る容器の構成例の概略を示す断面図である。
図1B図1Bは、一実施形態に係る容器の首部周辺の構成例の概略を示す斜視図である。
図2図2は、一実施形態に係るプリフォームの構成例の概略を示す断面図である。
図3図3は、一実施形態に係るブロー成形の一例について説明するための図である。
図4図4は、一実施形態に係るブロー成形に用いられる金型の型締め及び型開き時の移動の軌跡の一例を模式的に示す図である。
図5A図5Aは、一実施形態に係るネックインサートの構成例の概略を示す斜視図である。
図5B図5Bは、一実施形態に係るネックインサートの構成例の概略を示す平面図である。
図5C図5Cは、一実施形態に係る第1のネックインサートの構成例の概略を示す正面図である。
図5D図5Dは、一実施形態に係るネックインサートの中央部の構成例の概略を示す拡大斜視図である。
図5E図5Eは、一実施形態に係るネックインサートの刃の近傍の構成例の概略を示す拡大図である。
図5F図5Fは、一実施形態に係るネックインサートの刃の近傍の構成例の概略を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、合成樹脂製容器
に関する。本実施形態は、特に、合成樹脂製容器の製造方法に関する。本実施形態に係る
合成樹脂製容器は、多層構造を有する複合容器である。複合容器は、その廃棄時の被覆層
の剥がしやすさのために、被覆層の一部に切り込みを有する。
【0012】
[容器について]
図1Aは、本実施形態に係る容器100の構成例の概略を示す縦断面図である。図にお
いては、容器100の意匠や機能などのための形状の詳細は省略されており、容器100
の概形のみが描かれている。図1Aに示す例では、容器100は、一端に口を有する有底
の略円筒形状のボトルである。すなわち、図1Aに示すように、容器100は、内容物が
収容される本体110と、内容物が出し入れされ得る本体110よりも細い口部120と
を備える。容器100の口部120と反対側の端部は、底部130として閉じている。本
体110は、略円筒形状の胴部111と、胴部111から口部に向けて徐々に細くなる略
円錐台形状をした肩部112と、肩部112の上端と口部120とをつなぐ略円筒形状を
した首部113とを含む。口部120には、図示しないキャップが取り付けられるように
、ネジ121が形成されている。口部120と本体110との境界には、周方向に沿って
環状に円周方向外側に張り出したネックリング122が設けられている。
【0013】
容器100において、本体110、口部120及び底部130は、容器本体102によ
って一体に形成されている。容器100は、本体110及び底部130において容器本体
102を覆う被覆層104を備える。このように、容器100は、被覆層を有する複合容
器である。本実施形態では、被覆層104は、底部130から本体110の胴部111、
肩部112及び首部113を介して、ネックリング122の下面114までを覆っている
【0014】
容器本体102は、熱可塑性樹脂によって形成される。容器本体102は、例えば、ポ
リエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステル樹脂を
用いて形成される。熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートに
限らず、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非晶ポリアリレート
、ポリ乳酸、ポリエチレンフラノエート又はこれらの共重合体などが用いられてもよい。
また、これらの樹脂の混合物、あるいは、これらの樹脂と他の樹脂との混合物などが用い
られてもよい。また、ポリカーボネート、アクリロニトリル樹脂、ポリプロピレン、プロ
ピレン-エチレン共重合体、ポリエチレンなども使用され得る。
【0015】
被覆層104も、熱可塑性樹脂によって形成される。被覆層104は、容器本体102
を形成する熱可塑性樹脂と非相溶性の熱可塑性樹脂を用いて形成されることが好ましい。
非相溶性の熱可塑性樹脂を用いることで、被覆層104は容器本体102から容易に剥が
され得る。このことは、容器100のリサイクルを容易にする。容器本体102にエチレ
ンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが用いられる場合、被覆層104に、例えば、
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール
共重合体、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド系樹脂などが用い
られることが好ましい。
【0016】
被覆層104は、着色されたり、加飾されたり、種々の機能が持たされたりする。例え
ば着色のため、顔料又は着色剤などが添加されてもよい。被覆層104は、例えば遮光性
を有していてもよい。容器本体102と被覆層104とを容易に分離できることで、着色
された被覆層104にかかわらず、無色透明の容器本体102のリサイクル性が維持され
る。
【0017】
図1Bは、図1Aに示したネックリング122を下側から見た斜視図である。この図に
示されるように、本実施形態に係る容器100では、被覆層104の上端部分に、切り込
み190が設けられている。この切り込み190は、容器本体102を全く又はほとんど
傷つけず、被覆層104のみ又は被覆層104の上層のみが切断された部分である。切り
込み190は、容器本体102から被覆層104を分離するときに、被覆層104を破く
際のきっかけとなる部分である。図1Bに示される範囲において、切り込み190は2本
設けられている。各々の切り込み190は、ネックリング122の下面114の端から首
部113まで線状に設けられている。切り込み190は、首部113の図1Bに見えてい
る部分と反対側にも同様に設けられていてもよい。
【0018】
[容器の製造方法について]
本実施形態に係る容器100の製造方法について説明する。本実施形態では、容器10
0は、いわゆる、2ステージ法によって製造される。すなわち、初めに、射出成形によっ
て有底筒状のプリフォームが作製される。次に、プリフォームは、加熱され、軟化させら
れる。この軟化したプリフォームは、金型内にセットされ、例えば二軸延伸ブロー成形に
より所定の容器形状に成形される。
【0019】
本実施形態で作製されるプリフォームの構成例の概略を図2に示す。本実施形態で作製
されるプリフォーム200は、一端が開口し他端が閉塞した略円筒形状を有する。開口し
ている側には、口部220が形成されている。閉塞した側を底部230と称することにす
る。底部230は、半球形状をしている。口部220と底部230との間の円筒形状の部
分を胴部210と称することにする。
【0020】
プリフォーム200の口部220は、後に行われるブロー成形によって延伸されない。
したがって、プリフォーム200の口部220は、そのまま容器100の口部120とな
る。プリフォーム200の口部220の外周面には、図示しないキャップを取り付けるた
めのネジ221が形成されている。このネジ221は、そのまま容器100のネジ121
となる。また、口部220の胴部210側には、周方向に沿って環状に張り出したネック
リング222が設けられている。このネックリング222は、そのまま容器100のネッ
クリング122となる。
【0021】
プリフォーム200は、口部220、胴部210及び底部230を形成するプリフォー
ム本体202を有する。また、プリフォーム200は、胴部210及び底部230におい
て、プリフォーム本体202を覆うプリフォーム被覆層204を有する。プリフォーム被
覆層204は、底部230からネックリング222の下面214の端部にまで設けられて
いる。
【0022】
後のブロー成形において、プリフォーム本体202が延伸されて容器100の容器本体
102が形成され、プリフォーム被覆層204が延伸されて容器100の被覆層104が
形成される。プリフォーム本体202とプリフォーム被覆層204とは、一体として延伸
される。
【0023】
プリフォーム200は、例えばいわゆるダブルモールド成形(二色成形)法によって作
製される。プリフォーム200の作製方法は、ダブルモールド成形に限らない。プリフォ
ーム200の作製には、コンプレッション成形などが用いられてもよい。また、熱収縮材
料をプリフォーム本体202の周囲に配置して熱収縮させることで、プリフォーム被覆層
204が形成されてもよい。ただし、ダブルモールド成形によれば、プリフォーム200
の底部230の全体を覆うように、プリフォーム被覆層204を容易に形成することがで
きる。すなわち、容器100の底部130の全体を覆う被覆層104を容易に形成するこ
とができる。
【0024】
プリフォーム200は加熱され、ブロー成形装置へと搬送され、ブロー成形型に設置さ
れる。加熱後のプリフォーム200に対するブロー成形によって、容器100が形成され
る。ブロー成形装置は、次々と搬送されてくる加熱後のプリフォーム200を、複数のブ
ロー成形型を用いて次々とブロー成形する。ブロー成形に用いられる材料としてのプリフ
ォームは、同じ工場内で作製されてもよいし、他の工場で作製された物が調達されてもよ
く、その取得の方法は問わない。
【0025】
ブロー成形について、図3に示す模式的断面図を参照して説明する。図3において、破
線は、ブロー成形前のプリフォーム200の形状を模式的に示す。
【0026】
プリフォーム200は、保持具380に保持されて搬送される。保持具380は、略円
筒形状を有しており、プリフォーム200の口部220に挿入される。ブロー成形型にお
いて、口部220は、その周囲を囲む固定部材385によって固定される。プリフォーム
200の胴部210などネックリング222から底部230側は、閉じられたときに中空
のキャビティを有するブロー成形型310内に配置される。
【0027】
ブロー成形型310は、例えば、容器100の主に本体110の形状を形成する第1の
胴型311及び第2の胴型312と、容器100の主に底部130の形状を形成する底型
313と、容器100の首部113の形状を形成するネックインサート400とを有する
。ネックインサート400は、第1の胴型311及び第2の胴型312の首部113にお
ける入れ子型となっている。ネックインサート400は、第1の胴型311に嵌め込まれ
る第1のネックインサート401と、第2の胴型312に嵌め込まれる第2のネックイン
サート402とを含む。ここに示したブロー成形型310の構成は一例であり、ブロー成
形型310の構成は、これに限らない。
【0028】
型締めされたブロー成形型310内に配置されたプリフォーム200は、例えば、延伸
ロッドと加圧エアーとを用いて延伸される。例えば、図示しない延伸ロッドにより軸方向
に延伸されつつ、プリフォーム200内に吹き込まれる加圧エアーにより軸方向及び周方
向に延伸される。その結果、ブロー成形型310の内面形状に応じた容器100が形成さ
れる。ここで、プリフォーム200のプリフォーム本体202と、プリフォーム被覆層2
04とは、一体に延伸される。その結果、容器本体102とそれを覆う被覆層104とが
形成される。その後、ブロー成形型310は型開きされ、形成された容器100が取り出
される。
【0029】
[成形型について]
図4に本実施形態に係るブロー成形型の、型締め時及び型開き時の、ブロー成形型の移
動の軌跡を模式的に示す。この図に示すように、第1のネックインサート401が嵌め込
まれた第1の胴型311及び第2のネックインサート402が嵌め込まれた第2の胴型3
12は、移動中心Oを中心に円弧を描くように移動する。
【0030】
図5A乃至図5Fに、本実施形態に係るネックインサート400の構成例の概略を示す
図5Aは斜視図であり、図5Bは平面図であり、図5C図5Bに示すC-C線矢視図
、すなわち、第1のネックインサート401の正面図であり、図5Dは中央部の拡大斜視
図であり、図5E図5Bに示す円E部分の拡大図であり、図5F図5Cに示す円F部
分の拡大図である。
【0031】
第1のネックインサート401と第2のネックインサート402とはパーティング面に
対して対称の形状を有する。第1のネックインサート401及び第2のネックインサート
402の各々の本体410は、半円板形状の概形において、容器100の首部113が嵌
まる孔420を形成する半円形状の切り欠きを有する形状をしている。本体410におい
て、容器100の口部120側に配置される面を第1の面411と称し、容器100の底
部130側に配置される面を第2の面412と称することにする。本体410の第1の面
411の孔420を形成する切り欠きの近傍には、容器100のネックリング122が嵌
まる窪みが設けられ、他の部分より薄くなっている。ネックリング122の下面114と
接触するように構成された面をネックリング接触面432と称し、首部113と接触する
ように構成された面を首部接触面434と称することにする。
【0032】
本実施形態では、本体410のネックリング接触面432及び首部接触面434には、
切り込み190を形成するための刃440が設けられている。本実施形態では、第1のネ
ックインサート401及び第2のネックインサート402の各々に、第1の刃441と第
2の刃442の2つの刃440が設けられている。この刃440の高さは、容器100の
被覆層104の厚さとおよそ一致している。本実施形態では、ブロー成形時に首部113
はほとんど延伸されないので、被覆層104の厚さはプリフォーム被覆層204の厚さと
一致する。
【0033】
ブロー成形時に第1のネックインサート401及び第2のネックインサート402がプ
リフォーム200の首部を挟んだとき、プリフォーム被覆層204が、この刃440で切
断される。その結果、ブロー成形後の容器100の被覆層104には、首部113におい
て、切り込み190が形成される。
【0034】
刃の高さは、被覆層104の厚さと一致していなくても、わずかに低かったり、わずか
に高かったりしても、被覆層104の厚さに対応していればよい。刃の高さが被覆層10
4の厚さよりもわずかに低ければ、被覆層104は切り込み190によって完全に切り離
されず、溝が形成された状態となる。この場合も、当該切り込み190から被覆層104
は破断しやすくなる。また、刃の高さが被覆層104の厚さよりもわずかに高ければ、容
器本体102にわずかな傷がつくが、実用上問題なければそれでもよい。
【0035】
上述の通り、型締め及び型開き時に、第1のネックインサート401及び第2のネック
インサート402は円弧を描いて移動し、これに伴って、第1のネックインサート401
及び第2のネックインサート402に設けられた刃440も円弧を描いて移動する。そこ
で、本実施形態の刃440は、次のように設けられている。すなわち、首部接触面434
から突き出ている刃440は、型締め及び型開き時に首部113の被覆層104に対して
垂直に刺さるように設けられている。したがって、図5Bに示すように、首部接触面43
4から突き出ている刃440は、移動中心Oに対して刃先の移動の軌跡が描く円弧に沿っ
て、すなわち当該円弧の刃440の取り付け位置における接線の方向に突き出ている。ま
た、ネックリング接触面432から突き出ている刃440は、型締め及び型開き時にネッ
クリング122の下面114に刃先が線を描くように、刃先がその移動経路に沿うように
設けられている。したがって、図5Bに示すように、刃440は、移動中心Oに対して刃
先の移動の軌跡が描く円弧に沿って、すなわち当該円弧の刃440の取り付け位置におけ
る接線に沿って設けられている。このように、刃440は、第1のネックインサート40
1及び第2のネックインサート402の移動の軌跡に沿って配置されている。このように
刃440が配置されることで、型締め及び型開きに伴う刃440の動きによって、被覆層
104が引きちぎられることはなく、被覆層104には細い切り込み190が形成される
【0036】
ネックインサート400の寸法の一例を図5B図5E及び図5Fに示す。図5Bに示
すネックインサート400に形成される容器100の首部113が挿入される孔420の
直径φ1は、例えば26.2mmである。図5Eに示す刃440が接する円の直径φ2は
、例えば24.7mmである。
【0037】
型締め及び型開きの際の第1のネックインサート401及び第2のネックインサート4
02の移動中心Oに近い側に配置されている刃440を第1の刃441とし、移動中心O
から遠い側に配置されている刃440を第2の刃442とする。図5Bに示す、移動中心
Oから、ネックインサート400の中心までの距離、すなわちネックインサート400の
中心の軌跡の半径R1は、例えば120.0mmである。移動中心Oから、第1の刃44
1までの距離、すなわち第1の刃441の軌跡の半径R2は、例えば114.4mmであ
る。移動中心Oから、第2の刃442までの距離、すなわち第2の刃442の軌跡の半径
R3は、例えば126.4mmである。第1の刃441の先端から第2の刃442の先端
までの距離L1は、例えば12mmである。
【0038】
図5Eに示すように、第1の刃441の刃先の首部接触面434からの高さは、移動中
心Oに近い側で高さL11が例えば0.53mm、移動中心Oから遠い側で高さL12が
例えば0.97mmとなっている。第2の刃442の刃先の首部接触面434からの高さ
は、移動中心Oから遠い側で高さL21が例えば0.57mm、移動中心Oに近い側で高
さL22が例えば1.08mmとなっている。図5Fに示すように、刃440の刃先のネ
ックリング接触面432からの高さL3は、例えば0.5mmとなっている。
【0039】
図5E及び図5Fに示すように、刃440の先端の曲率半径R11,R21,R31は
、例えば0.1mmであり、刃440の刃角θ1,θ2,θ3は、例えば30°である。
刃440の首部接触面434又はネックリング接触面432との接続部分の曲率半径R1
2,R13,R22,R23,R32,R33は、例えば0.2mmである。
【0040】
これらの寸法は一例であって、適宜に変更され得る。
【0041】
ネックインサート400では、例えば、切削加工及び研削加工などにより形成されたネ
ックインサート400の本体410に、例えばトムソン刃が交換可能な刃440として取
り付けられてもよい。また、ネックインサート400の本体410とともに、刃440も
切削加工、研削加工、放電加工などにより形成されてもよい。刃440を本体410と別
体とすることで、刃440のみの交換が可能になるといったように、メンテナンス性は高
くなる。
【0042】
本実施形態によれば、ブロー成形時にプリフォーム200がネックインサート400で
挟まれたときに、ネックインサート400に設けられた刃440によって、プリフォーム
被覆層204に切り込みが形成される。その結果、ブロー成形によって作製された容器1
00の被覆層104に切り込み190が形成される。このような切り込み190が設けら
れることで容器100のリサイクル性は向上する。すなわち、容器100の使用後の容器
100を破棄する際に、被覆層104は、切り込み190から容易に切り裂かれ、容器本
体102から被覆層104が容易に分離され得る。このように、切り込み190は、被覆
層104を切り裂く際の分離起点として機能し得る。被覆層104は、立体的な意匠を備
える加飾層として容器の美感に貢献したり、遮光性など容器の機能に貢献したり、種々の
付加価値を容器100に与えられる。
【0043】
なお、本実施形態によれば、ブロー成形時に切り込み190を形成するので、容器10
0に対する切り込み190の位置を一定に合わせることが容易である。本実施形態によれ
ば、ブロー成形時には位置合わせが行われるので、切り込み190を形成するために改め
て位置合わせする手間をかける必要がない。
【0044】
[変形例]
上述の実施形態では、切り込み190は、正面と背面とにそれぞれ2本並んで設けられ
ているがこれに限らない。切り込み190の数、配置される位置などは適宜に変更され得
る。
【0045】
上述の実施形態では、切り込み190として、連続した切り込みを示した。しかしなが
ら切り込みはこれに限らない。切り込みは、飛び飛びに形成され、いわゆるミシン目のよ
うに設けられてもよい。この場合、刃440は、飛び飛びに設けられた刃となる。
【0046】
上述の実施形態では、ネックインサート400の一部にのみ刃440が設けられ、容器
100の首部113の一部のみに切り込み190が設けられる例を示したがこれに限らな
い。すなわち、ネックインサート400を、刃440を有する有刃型としたがこれに限ら
ない。第1の胴型311、第2の胴型312、底型313なども刃を有する有刃型として
もよい。例えば、第1の胴型311及び第2の胴型312などにも飛び飛びの刃が設けら
れ、容器100の胴部111にも飛び飛びに切り込みがいわゆるミシン目のように設けら
れてもよい。このようなミシン目としての切り込みは、被覆層104を切り裂く際の分離
ガイドとして機能し得る。刃が第1の胴型311又は第2の胴型312等に設けられる場
合、この刃に触れる被覆層104は、ブロー成形によって延伸された被覆層104である
。したがって、刃の高さは延伸後の被覆層104の厚さを考慮して決定される。また、こ
の場合も、型開き時に刃が被覆層104を切り裂くことがないように、第1の胴型311
又は第2の胴型312等の移動の軌跡に沿って刃が設けられる。
【0047】
上述の実施形態では、型締め時及び型開き時に、第1の胴型311及び第1のネックイ
ンサート401、第2の胴型312及び第2のネックインサート402などが、円弧状の
軌跡を描いて移動する例を挙げたがこれに限らない。これらの金型は、例えば直線状など
他の軌跡を描いて移動してもよい。その場合も、刃440の向きは金型の軌跡と一致する
ように設けられ、刃440は被覆層104に対して垂直に移動し、金型の移動に伴って刃
440が被覆層104を引っ掻くことがないように構成されている。
【0048】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実
施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であること
はいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
100 容器
102 容器本体
104 被覆層
110 本体
111 胴部
112 肩部
113 首部
114 ネックリングの下面
120 口部
121 ネジ
122 ネックリング
130 底部
190 切り込み
200 プリフォーム
202 プリフォーム本体
204 プリフォーム被覆層
210 胴部
214 ネックリングの下面
220 口部
221 ネジ
222 ネックリング
230 底部
310 ブロー成形型
311 第1の胴型
312 第2の胴型
313 底型
380 保持具
385 固定部材
400 ネックインサート
401 第1のネックインサート
402 第2のネックインサート
410 本体
411 第1の面
412 第2の面
420 孔
432 ネックリング接触面
434 首部接触面
440 刃
441 第1の刃
442 第2の刃
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F