(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】身体動作取得装置および該方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20231031BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20231031BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20231031BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20231031BHJP
A61B 5/11 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
G06T7/00 660B
G09B19/00 H
G01B11/00 H
G09B9/00 A
A61B5/11 230
(21)【出願番号】P 2019130362
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】久保 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】須賀 実
(72)【発明者】
【氏名】大谷 卓史
【審査官】小池 正彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-046749(JP,A)
【文献】特開2000-161913(JP,A)
【文献】特開2002-310617(JP,A)
【文献】国際公開第2018/087844(WO,A1)
【文献】篠田之孝、他,モーションキャプチャを用いた身体動作の教育用動作解析システムの構築,平成22年電気学会全国大会講演論文集,第1分冊,日本,電気学会,2010年03月19日,p15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G09B 19/00
G01B 11/00
G09B 9/00
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物を扱う対象者の身体および前記物それぞれにおける複数の箇所に付される複数のマーカと、
前記複数のマーカの各位置を測定する位置測定部と、
前記位置測定部で測定した複数のマーカの各位置に基づいて、前記対象者の身体を複数に分けた複数の身体部位における各重心位置および前記物の重心位置を、前記対象者における身体の動作を表す身体動作情報および前記物の動きを表す物動き情報として求める動作情報処理部とを備え、
前記対象者における身体の動作は、所定の作業の実施に伴う動作であり、
さらに、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量を取得する活動量取得部と、前記活動量取得部で取得した前記筋部の活動量と関連付けて、前記所定の作業における作業結果を取得する作業結果取得部とを備え、
前記作業結果は、前記作業の成果物における精度および前記作業に要した時間である、
身体動作取得装置。
【請求項2】
前記位置測定部は、
互いに異なる複数の方向から、前記複数のマーカを撮像する複数の撮像部と、
前記複数の撮像部で撮像した各画像に基づいて前記複数のマーカの位置を求める位置処理部とを備える、
請求項1に記載の身体動作取得装置。
【請求項3】
前記複数の身体部位は、体幹部、ならびに、左上肢部および右上肢部のうちの少なくとも一方を含む、
請求項1または請求項2に記載の身体動作取得装置。
【請求項4】
前記複数の身体部位は、さらに、左下肢部および右下肢部のうちの少なくとも一方を含む、
請求項3に記載の身体動作取得装置。
【請求項5】
前記対象者における身体の動作は、所定の作業の実施に伴う動作であり、
前記物は、前記作業で用いられるツールである、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の身体動作取得装置。
【請求項6】
前記作業は、研削または研磨の作業、溶接の作業および塗装の作業のうちのいずれかである、
請求項5に記載の身体動作取得装置。
【請求項7】
前記作業は、金型の研削または研磨の作業である、
請求項5に記載の身体動作取得装置。
【請求項8】
前記金型は、車両に用いられる部材を成型するための車両部材成型用金型である、
請求項7に記載の身体動作取得装置。
【請求項9】
所定の閾値以上である作業結果に関連付けられている前記筋部の活動量を前記作業に関わる技能の熟練度の基準として出力する出力部をさらに備える、
請求項
1に記載の身体動作取得装置。
【請求項10】
所定の物を扱う対象者の身体および前記物それぞれにおける複数の箇所に付された複数のマーカの各位置を測定する位置測定工程と、
前記位置測定工程で測定した複数のマーカの各位置に基づいて、前記対象者の身体を複数に分けた複数の身体部位における各重心位置および前記物の重心位置を、前記対象者における身体の動作を表す身体動作情報および前記物の動きを表す物動き情報として求める動作情報処理工程とを備え、
前記対象者における身体の動作は、所定の作業の実施に伴う動作であり、
さらに、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量を取得する活動量取得工程と、前記活動量取得工程で取得した前記筋部の活動量と関連付けて、前記所定の作業における作業結果を取得する作業結果取得工程とを備え、
前記作業結果は、前記作業の成果物における精度および前記作業に要した時間である、
身体動作取得方法。
【請求項11】
前記位置測定工程は、
互いに異なる複数の方向から、前記複数のマーカを撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像した各画像に基づいて前記複数のマーカの位置を求める位置処理工程とを備える、
請求項
10に記載の身体動作取得方法。
【請求項12】
前記複数の身体部位は、体幹部、ならびに、左上肢部および右上肢部のうちの少なくとも一方を含む、
請求項
10または請求項
11に記載の身体動作取得方法。
【請求項13】
前記複数の身体部位は、さらに、左下肢部および右下肢部のうちの少なくとも一方を含む、
請求項
12に記載の身体動作取得方法。
【請求項14】
前記対象者における身体の動作は、所定の作業の実施に伴う動作であり、
前記物は、前記作業で用いられるツールである、
請求項
10ないし請求項
13のいずれか1項に記載の身体動作取得方法。
【請求項15】
前記作業は、研削または研磨の作業、溶接の作業および塗装の作業のうちのいずれかである、
請求項
14に記載の身体動作取得方法。
【請求項16】
前記作業は、金型の研削または研磨の作業である、
請求項
14に記載の身体動作取得方法。
【請求項17】
前記金型は、車両に用いられる部材を成型するための車両部材成型用金型である、
請求項
16に記載の身体動作取得方法。
【請求項18】
所定の閾値以上である作業結果に関連付けられている前記筋部の活動量を前記作業に関わる技能の熟練度の基準として出力する出力工程をさらに備える、
請求項
10に記載の身体動作取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物を扱う身体の動作を取得する身体動作取得装置および身体動作取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身体の動作を解析するためには、まず、身体の動作を取得する必要がある。特に、作業の技能(スキル)は、実際に作業を繰り返し実施し、経験によって獲得されることから、言語化、文書化および図示化し難いため、前記作業に伴う身体の動作を解析することが重要となり、前記作業に伴う身体の動作を取得することが重要となる。
【0003】
この身体の動作の取得には、比較的簡単に前記身体の動作を取得できることから、例えば、特許文献1のように、光学式モーションキャプチャが利用されることが多い。この光学式モーションキャプチャは、一般に、対象者の身体における各箇所に付される複数のマーカと、身体の動作中における前記複数のマーカを撮像するカメラと、前記カメラで撮像された画像に基づいて前記複数のマーカの位置を前記身体の動作を表す動作情報として求める情報処理装置とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マーカは、対象者の外面に付されるので、マーカの位置を前記動作情報とすると、対象者の体型差や着衣によって、前記動作情報に個人差や誤差の影響が生じてしまう虞がある。この結果、物を扱う身体の動作を取得する場合、前記動作情報で表された身体の動作と前記物の動きとの関係も、前記動作情報に含まれる前記影響により、精度が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、物を扱う身体の動作をより精度良く取得できる身体動作取得装置および身体動作取得方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる身体動作取得装置は、所定の物を扱う対象者の身体および前記物それぞれにおける複数の箇所に付される複数のマーカと、前記複数のマーカの各位置を測定する位置測定部と、前記位置測定部で測定した複数のマーカの各位置に基づいて、前記対象者の身体を複数に分けた複数の身体部位における各重心位置および前記物の重心位置を、前記対象者における身体の動作を表す身体動作情報および前記物の動きを表す物動き情報として求める動作情報処理部とを備え、前記対象者における身体の動作は、所定の作業の実施に伴う動作であり、さらに、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量を取得する活動量取得部と、前記活動量取得部で取得した前記筋部の活動量と関連付けて、前記所定の作業における作業結果を取得する作業結果取得部とを備え、前記作業結果は、前記作業の成果物における精度および前記作業に要した時間である。本発明の他の一態様にかかる身体動作取得方法は、所定の物を扱う対象者の身体および前記物それぞれにおける複数の箇所に付された複数のマーカの各位置を測定する位置測定工程と、前記位置測定工程で測定した複数のマーカの各位置に基づいて、前記対象者の身体を複数に分けた複数の身体部位における各重心位置および前記物の重心位置を、前記対象者における身体の動作を表す身体動作情報および前記物の動きを表す物動き情報として求める動作情報処理工程とを備え、前記対象者における身体の動作は、所定の作業の実施に伴う動作であり、さらに、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量を取得する活動量取得工程と、前記活動量取得工程で取得した前記筋部の活動量と関連付けて、前記所定の作業における作業結果を取得する作業結果取得工程とを備え、前記作業結果は、前記作業の成果物における精度および前記作業に要した時間である。
【0008】
このような身体動作取得装置および身体動作取得方法は、複数のマーカを、対象者の身体および前記物それぞれにおける複数の箇所に付し、複数のマーカの各位置に基づいて、前記対象者の複数の身体部位における各重心位置および前記物の重心位置を、身体動作情報および物動き情報として求める。このように上記身体動作取得装置および身体動作取得方法は、身体動作情報および物動き情報として、複数のマーカの各位置をそのまま用いるのではなく、各身体部位に固有な各身体部位の各重心位置および物に固有な物の重心位置を用いるので、対象者の体型差や着衣による影響、さらに物の大きさの差による影響を低減でき、物を扱う身体の動作をより精度良く取得できる。上記身体動作取得装置および身体動作取得方法は、前記物にもマーカを付すので、前記物動き情報も前記身体動作情報と合わせて取得でき、効率的に、両情報を取得できる。所定の作業に対し、種々の観点から、種々のデータを取得することが可能であるから、前記所定の作業に関わる技能の定量化には、どのような観点で定量化するかが重要である。本発明者は、種々検討した結果、身体の動作によって実施される所定の作業に関わる技能の定量化では、1つの観点として、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量が重要であるとの、新規な知見が得られた。上記身体動作取得装置および身体動作取得方法は、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量を取得し、前記取得した前記筋部の活動量と関連付けて、前記所定の作業における作業結果を取得するので、互いに関連付けられた前記筋部の活動量と前記作業結果とを、技能情報として、取得できる。したがって、前記新規な知見から、上記身体動作取得装置および身体動作取得方法は、技能の定量化に資する技能情報(技能の定量化に役立つ技能情報)を取得できる。
【0009】
他の一態様では、上述の身体動作取得装置において、前記位置測定部は、互いに異なる複数の方向から、前記複数のマーカを撮像する複数の撮像部と、前記複数の撮像部で撮像した各画像に基づいて前記複数のマーカの位置を求める位置処理部とを備える。他の一態様では、上述の身体動作取得方法において、前記位置測定工程は、互いに異なる複数の方向から、前記複数のマーカを撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像した各画像に基づいて前記複数のマーカの位置を求める位置処理工程とを備える。
【0010】
このような身体動作取得装置および身体動作取得方法は、複数の画像に基づいて複数のマーカの位置を求めるので、身体の動作を妨げることなく非接触で簡単に身体動作情報および物動き情報の両情報を取得できる。
【0011】
他の一態様では、これら上述の身体動作取得装置および身体動作取得方法それぞれにおいて、前記複数の身体部位は、体幹部、ならびに、左上肢部および右上肢部のうちの少なくとも一方を含む。
【0012】
両手部や一方の手部で物を把持して扱う場合、その動作は、前記物を把持する左上肢部や右上肢部で、さらに、前記左上肢部や前記右上肢部を支持する体幹部で、特徴付けられる。上記身体動作取得装置および身体動作取得方法は、前記複数の身体部位が、体幹部、ならびに、左上肢部および右上肢部のうちの少なくとも一方を含むので、物を把持して扱う動作の身体動作情報および物動き情報を好適に取得できる。
【0013】
他の一態様では、上述の身体動作取得装置および身体動作取得方法それぞれにおいて、前記複数の身体部位は、さらに、左下肢部および右下肢部のうちの少なくとも一方を含む。
【0014】
体幹部は、両下肢部に体重がかかって両下肢部で支持され、あるいは、主に一方の下肢部に体重がかかって主に一方の下肢部で支持される。このため、両手部や一方の手部で物を把持して扱う場合、その動作は、さらに、左下肢部や右下肢部で特徴付けられる。上記身体動作取得装置および身体動作取得方法は、前記複数の身体部位が、さらに、左下肢部および右下肢部のうちの少なくとも一方を含むので、物を把持して扱う動作の身体動作情報および物動き情報を、より好適に取得できる。
【0015】
他の一態様では、これら上述の身体動作取得装置および身体動作取得方法それぞれにおいて、前記対象者における身体の動作は、所定の作業の実施に伴う動作であり、前記物は、前記作業で用いられるツールである。
【0016】
このような身体動作取得装置および身体動作取得方法は、ツールを用いる作業の実施に伴う動作の身体動作情報および物動き情報を好適に取得できる。
【0017】
他の一態様では、上述の身体動作取得装置および身体動作取得方法それぞれにおいて、前記作業は、研削または研磨の作業、溶接の作業および塗装の作業のうちのいずれかである。
【0018】
前記作業が研削または研磨の作業である場合、上記身体動作取得装置および身体動作取得方法は、研削または研磨の作業の実施に伴う動作の身体動作情報および物動き情報を好適に取得できる。前記作業が溶接の作業である場合、上記身体動作取得装置および身体動作取得方法は、溶接の作業の実施に伴う動作の身体動作情報および物動き情報を好適に取得できる。前記作業が塗装の作業である場合、上記身体動作取得装置および身体動作取得方法は、塗装の作業の実施に伴う動作の身体動作情報および物動き情報を好適に取得できる。
【0019】
他の一態様では、上述の身体動作取得装置および身体動作取得方法それぞれにおいて、前記作業は、金型の研削または研磨の作業である。
【0020】
このような上記身体動作取得装置および身体動作取得方法は、金型の研削または研磨の作業の実施に伴う動作の身体動作情報および物動き情報を好適に取得できる。
【0023】
他の一態様では、これら上述の身体動作取得装置において、所定の閾値以上である作業結果に関連付けられている前記筋部の活動量を前記作業に関わる技能の熟練度の基準として出力する出力部をさらに備える。他の一態様では、これら上述の身体動作取得方法において、所定の閾値以上である作業結果に関連付けられている前記筋部の活動量を前記作業に関わる技能の熟練度の基準として出力する出力工程をさらに備える。
【0024】
このような身体動作取得装置および身体動作取得方法は、前記技能の熟練度の基準を出力できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる身体動作取得装置および身体動作取得方法は、物を扱う身体の動作をより精度良く取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態における身体動作取得装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】作業者に対する、前記身体動作取得装置で用いられる複数のマーカの取り付け位置、および、前記身体動作取得装置で用いられるフォースプレートの配置位置を説明するための図である。
【
図3】身体における各部位の各重心位置を説明するための図である。
【
図4】作業の内容および前記作業に用いられるテストピースを説明するための図である。
【
図5】実施形態における身体動作取得装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】Eクラスに属する被験者およびAクラスに属する被験者それぞれにおける視線移動量の分布を示すヒストグラムである。
【
図7】時間経過に対する、前記各重心位置の変位を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0028】
図1は、実施形態における身体動作取得装置の構成を示すブロック図である。
図2は、作業者に対する、前記身体動作取得装置で用いられる複数のマーカの取り付け位置、および、前記身体動作取得装置で用いられるフォースプレートの配置位置を説明するための図である。
図3は、身体における各部位の各重心位置を説明するための図である。
図3では、各部位の各重心位置は、●で示されている。
【0029】
実施形態における身体動作取得装置Dは、所定の物を扱う対象者における身体の動作を表す身体動作情報および前記物の動きを表す物動き情報を取得する装置である。本実施形態では、身体動作取得装置Dは、さらに、前記身体の動作を解析するための解析情報も取得するように構成されている。このような身体情報取得装置Dは、例えば、
図1に示すように、身体動作情報および物動き情報を取得するために、複数の撮像部11-1~11-kと(kは2以上の整数)、制御処理部5における後述の位置処理部51、動作情報処理部53および制御部56と、記憶部9とを備え、解析情報を取得するために、外力測定部2と、視線測定部3と、形状測定部41と、計時部42と、制御処理部5における後述の活動量処理部52、視線処理部54、作業結果処理部55および制御部56と、記憶部9とを備え、身体動作取得装置Dの入出力インターフェースとして、入力部6と、出力部7と、インターフェース部(IF部)8とを備える。制御部56および記憶部9は、身体動作情報および物動き情報の取得と、解析情報の取得とで、共用されている。
【0030】
複数の撮像部11-1~11-kは、それぞれ、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、複数のマーカを付された対象者に対し、互いに異なる複数の方向から、前記複数のマーカを撮像して画像(画像データ)を生成する装置である。例えば、対象者が入る直方体の空間(例えば4m×4m×2m等)における上方の4個のコーナーに4個の撮像部11-1~11-4が前記空間の中央領域を向くように光軸を斜め下方に向けて配置され、前記空間における下方の4個のコーナーに4個の撮像部11-5~11-8が前記空間の中央領域を向くように光軸を斜め上方に向けて配置される。これによって8個の撮像部11-1~11-8は、それぞれ、対象者に対し、互いに異なる8方向から、対象者に付されたマーカを撮像して画像を生成する。複数の撮像部11-1~11-kは、それぞれ、前記撮像して生成した画像を制御処理部5へ出力し、制御処理部5は、これら複数の撮像部11-1~11-kからの複数の画像を互いに関連付けて記憶部9に記憶する。より具体的には、このような撮像部11-1~11-kは、それぞれ、例えば、撮像対象における赤外の光学像を所定の結像面上に結像する結像光学系、前記結像面に受光面を一致させて配置され、前記撮像対象における赤外の光学像を電気的な信号に変換するエリアイメージセンサ、および、エリアイメージセンサの出力を画像処理することで前記撮像対象における赤外の画像を表すデータである画像データを生成する画像処理部等を備えるデジタル赤外線カメラである。
【0031】
前記複数のマーカは、それぞれ、赤外光(赤外線)を反射する部材であり、所定の物を扱う対象者(作業者、被験者)の身体および前記物それぞれにおける複数の箇所に付される。複数のマーカMKは、例えば、
図2に示すように、19個の各身体部位の各重心位置を測定するために、対象者の身体LBにおける41個の各箇所それぞれに取り付けられ、さらに、前記物の重心位置を測定するために、前記物における3個の各箇所それぞれに取り付けられる。19個の身体部位は、本実施形態では、例えば、頭部、首部、胸部、右肩部、左肩部、右上腕部、左上腕部、右前腕部、左前腕部、右手部、左手部、腰部、尻部、右腸骨部、左腸骨部、右膝部、左膝部、右足部および左足部である。身体の動きを好適に解析するために、複数の撮像部11-1~11-kにおけるサンプリング周波数は、例えば100[Hz]である。前記対象者における身体の動作は、身体動作情報として、本実施形態では、例えば
図3に示すように、19個の各身体部位それぞれの各重心位置(各重心位置の時間変位)で表され、前記対象者における身体の動きにより生じる前記物の動きは、物動き情報として、前記物の重心位置(重心位置の時間変位)で表される。
【0032】
対象者における身体の動作は、物を扱う動作であれば、任意の動作であって良い。好ましくは、一例では、前記身体の動作は、任意の所定の作業の実施に伴う動作であり、前記作業は、例えば、物品の製造作業や物品の運搬作業等だけでなく、芸能やスポーツ等を含んで良い。前記物は、前記作業で用いられる任意の所定の物であり、好ましくは、一例では、前記物は、前記作業で用いられるツールである。より具体的には、本実施形態では、前記作業は、車両に用いられる部材を成型するための車両部材成型用金型に対する研削または研磨の作業である。この場合では、前記ツールは、一例では、ハンドグラインダー(Hand Grinder)である。もちろん、これに限定されるものではなく、例えば、前記作業は、溶接の作業であり、前記ツールは、例えばトーチ等の溶接機であり、また例えば、前記作業は、塗装の作業であり、前記ツールは、例えばスプレーガン等の塗装用具である。好適には、前記作業は、車両の製造に関わる作業であり、前記ツールは、前記作業に関わるツールである。
【0033】
なお、上述では、前記マーカは、赤外光を反射する部材であり、これに応じて撮像部11は、デジタル赤外線カメラであるが、前記マーカは、所定の色、例えば対象者の着衣の色と異なる色の部材であって良く、この場合、撮像部11は、可視光のカメラであって良い。
【0034】
図1に戻って、外力測定部2は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、前記対象者の身体に作用する外力を測定する装置である、外力測定部2は、その測定結果(身体に作用する外力)を制御処理部5へ出力する。制御処理部5は、後述のように位置処理部51で求められた身体動作情報および物動き情報と関連付けて、この測定結果を記憶部9に記憶する。外力測定部2は、例えば、XYZの各成分で、変位、速度および加速度それぞれを測定するAMTI社製のフォースプレートを備える。本実施形態では、3個の第1ないし第3フォースプレート2-1~2-3が用いられ、
図2に示すように、第1フォースプレート2-1は、前記対象者の右足部に作用する外力を測定するように、床上に配置され、第2フォースプレート2-2は、前記対象者の左足部に作用する外力を測定するように、第1フォースプレート2-1と左右方向に沿って並置して前記床上に配置され、第3フォースプレート2-3は、前記ツールを把持する手部に作用する外力(前記ツールからの反力)を測定するように、作業対象(後述の検証実験の例ではテストピースTP)が載置され、前記対象者が作業する作業台上に配置される。これら第1ないし第3フォースプレート2-1~2-3におけるサンプリング周波数は、撮像部11のサンプリングに同期するように、100[Hz]である。
【0035】
視線測定部3は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、前記対象者における注視点の位置(注視点位置)を測定する装置である。視線測定部3は、その測定結果(注視点位置)を制御処理部5へ出力する。制御処理部5は、位置処理部51で求められた身体動作情報および物動き情報と関連付けて、この測定結果を記憶部9に記憶する。視線測定部3は、例えば、角膜反射法により非接触で注視点を3次元座標値で測定するTobii Technology社製のアイトラッカーを備える。前記アイトラッカーにおけるサンプリング周波数は、注視点の動きを好適に解析するために、例えば50[Hz]である。
【0036】
形状測定部41は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、測定対象(後述の検証実験の例では作業後のテストピースTP)の形状を測定する装置である。形状測定部41は、その測定結果(測定対象の形状)を制御処理部5へ出力する。制御処理部5は、位置処理部51で求められた身体動作情報および物動き情報と関連付けて、この測定結果を記憶部9に記憶する。形状測定部41は、例えば、3次元座標値で測定対象の形状を測定する、KEYENCE社製の3D形状測定機を備える。
【0037】
計時部42は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、前記作業に要した時間(作業時間)を測定する装置であり、例えば、ストップウォッチ等である。計時部42は、その測定結果(作業時間)を制御処理部5へ出力する。制御処理部5は、位置処理部51で求められた身体動作情報および物動き情報と関連付けて、この測定結果を記憶部9に記憶する。
【0038】
入力部6は、制御処理部5に接続され、例えば、取得開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば対象者名等の身体動作情報および物動き情報を取得する上で必要な各種データを身体動作取得装置Dに入力する機器であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチやキーボードやマウス等である。出力部7は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、入力部6から入力されたコマンドやデータ、撮像部11の画像、各部2、3、41、42の各測定結果(解析情報)、ならびに、身体動作取得装置Dによって取得された身体動作情報および物動き情報等を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0039】
なお、入力部6および出力部7からいわゆるタッチパネルが構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部6は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部7は、表示装置である。このタッチパネルでは、前記表示装置の表示面上に前記位置入力装置が設けられ、前記表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置を触れると、前記位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として身体動作取得装置Dに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い身体動作取得装置Dが提供される。
【0040】
IF部8は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、IrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部8は、外部機器との間で通信を行う回路であり、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等であっても良い。
【0041】
記憶部9は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、複数の撮像部11-1~11-kで撮像した各画像に基づいて複数のマーカの位置を求める位置処理プログラムや、前記位置処理プログラムで求めた複数のマーカの各位置、および、外力測定部2で測定した外力に基づいて前記対象者の各身体部位における各筋活動量(各筋部の各活動量)を求める活動量処理プログラムや、前記位置処理プログラムで求めた複数のマーカの各位置に基づいて、前記対象者の身体を複数に分けた複数の身体部位における各重心位置および前記物の重心位置を、前記対象者における身体の動作を表す身体動作情報および前記物の動きを表す物動き情報として求める動作情報処理プログラムや、視線測定部3で測定した対象者の注視点の位置に基づいて前記対象者の視線移動量に関する視線情報を求める視線処理プログラムや、形状測定部41で測定した形状に基づいて寸法精度(加工精度)を求める作業結果処理プログラムや、身体動作取得装置Dの各部11、2、3、41、42、6~9を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。前記各種の所定のデータには、撮像部11の画像、各部2、3、41、42の各測定結果、画像や各測定結果を所定の処理手法に従って情報処理した処理結果(例えば上述の重心位置や視線移動量等)および対象者名等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部9は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部9は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部5のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0042】
制御処理部5は、身体動作取得装置Dの各部11、2、3、41、42、6~9を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、身体動作情報および物動き情報を取得するための回路である。制御処理部5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部5には、前記制御処理プログラムが実行されることによって、位置処理部51、活動量処理部52、動作情報処理部53、視線処理部54、作業結果処理部55および制御部56が機能的に構成される。
【0043】
制御部56は、身体動作取得装置Dの各部11、2、3、41、42、6~9を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、身体動作取得装置D全体の制御を司るものである。
【0044】
位置処理部51は、複数の撮像部11-1~11-kで撮像した各画像に基づいて前記複数のマーカの各位置を求めるものである。赤外光を反射するマーカを撮像部11(11-1~11-k)で撮像することによって生成された画像では、前記マーカを写し込んだ画像領域は、その画素値がその周囲の画素値と異なるので(例えば、前記マーカを写し込んだ画像領域の画素は、その周囲の画素より明るく、その画素値が高い)、位置処理部51は、まず、前記各画像それぞれについて、当該画像を2値化処理等の画像処理することで、当該画像から、マーカを写し込んだ画像領域を抽出し、当該画像での、前記抽出した画像領域の2次元座標値を求める。そして、位置処理部51は、同一のマーカについて、異なる複数の撮像部11で撮像された各画像から抽出された各画像領域の各2次元座標値から、カメラパラメータ(前記異なる複数の撮像部11における各配置位置および各姿勢(各光軸方向))を用いた、いわゆるエピポーラマッチングにより、前記マーカの位置として前記マーカの3次元座標値を求める。
【0045】
本実施形態では、複数の撮像部11-1~11-kおよび位置処理部51は、前記複数のマーカの各位置を測定する位置測定部の一例に相当し、例えば、OptiTrack Japan社製の光学式モーションキャプチャを備えて構成される。
【0046】
活動量処理部52は、位置処理部51で求めた複数のマーカの各位置、および、外力測定部2で測定した外力に基づいて、前記対象者の各身体部位における各筋活動量を求めるものである。前記活動量処理プログラムは、筋骨格モデリングシミュレーションソフトウェアであり、例えば、株式会社テラバイト社製のAnyBodyである。前記筋骨格モデリングシミュレーションでは、位置処理部51で求めた複数のマーカの各位置から求められた関節角度と、外力測定部2で測定した外力とに基づいて関節トルクが推定され、筋活動量が推定される。このAnyBodyをインストールすることによって、活動量処理部52が機能的に構成される。
【0047】
そして、活動量処理部52は、前記求めた各身体部位における各筋活動量に基づいて、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量(筋活動量)を求める。本実施形態では、前記作業がグラインダー作業であり、後述の知見から、活動量処理部52は、体幹部に関わる筋部の活動量、さらに、下肢部に関わる筋部の活動量を、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量として求める。より具体的には、活動量処理部52は、頭部、首部、胸部、腰部および尻部の各筋活動量を集約(総和)することによって、体幹部に関わる筋部の活動量を求め、左腸骨部、左膝部および左足部の各筋活動量を集約することによって、左下肢部に関わる筋部の活動量を求め、そして、右腸骨部、右膝部および右足部の各筋活動量を集約することによって、右下肢部に関わる筋部の筋活動量を求める。なお、さらに、左下肢部に関わる筋部の活動量と右下肢部に関わる筋部の筋活動量とが集約(加算)され、下肢部に関わる筋部の活動量とされても良い。
【0048】
動作情報処理部53は、前記位置測定部で測定した複数のマーカの各位置に基づいて、前記対象者の身体を複数に分けた複数の身体部位における各重心位置および前記物の重心位置を、前記対象者における身体の動作を表す身体動作情報および前記物の動きを表す物動き情報として求めるものである。より具体的には、動作情報処理部53は、各サンプリングタイミング(上述の例ではサンプリング周波数100[Hz]での各サンプリングタイミング)それぞれにおいて、位置処理部51で求めた複数のマーカの各位置に基づいて19個の各身体部位それぞれの各重心位置を求める。例えば、19個の各身体部位それぞれにおいて、当該身体部位に関わる複数のマーカの位置から当該身体部位の重心位置を求める第1演算式が予め求められて記憶部9に記憶され、動作情報処理部53は、19個の各身体部位それぞれについて、位置処理部51で求めた当該身体部位に関わる複数のマーカの各位置から前記第1演算式に基づいて当該身体部位の重心位置を求める。同様に、物(本実施形態ではツール)に関わる複数のマーカの位置から前記物の重心位置を求める第2演算式が予め求められて記憶部9に記憶され、動作情報処理部53は、位置処理部51で求めた前記物に関わる複数のマーカの各位置から前記第2演算式に基づいて前記物の重心位置を求める。本実施形態では、さらに、動作情報処理部53は、19個の各身体部位それぞれにおいて、当該身体部位における重心の移動範囲(最大変位)を求め、前記物における重心の移動範囲を求める。本実施形態では、身体動作情報は、各身体部位の各重心位置だけでなく、これら各移動範囲を含み、物動き情報は、物の重心位置だけでなく、この移動範囲を含む。
【0049】
視線処理部54は、視線測定部3で測定した対象者の注視点の位置に基づいて前記対象者の視線移動量に関する視線情報を求めるものである。より具体的には、視線処理部54は、第1時点での第1注視点位置と、前記第1時点から所定の時間経過後の第2時点での第2注視点位置との間の距離である視線移動量を視線情報の1つとして求める。より詳しくは、視線処理部54は、各サンプリングタイミング(上述の例ではサンプリング周波数50[Hz]での各サンプリングタイミング)それぞれにおいて、互いに隣接する2個のサンプリングタイミング間における注視点の移動距離を前記対象者の視線移動量として求める。すなわち、各サンプリングタイミングそれぞれにおいて、前回のサンプリングタイミングで測定された注視点の位置から、今回のサンプリングタイミングで測定された注視点の位置までの距離が前記対象者の視線移動量として求められる。本実施形態では、さらに、視線処理部54は、前記対象者の視線移動量における平均値および標準偏差を前記視線情報の他の1つとして求める。
【0050】
作業結果処理部55は、形状測定部41で測定した形状に基づいて寸法精度(加工精度)を求めるものである。形状測定部41で測定した前記作業の成果物における形状が作業結果の1つとされて良いが、本実施形態では、作業結果処理部44は、前記作業の成果物における精度(寸法精度、加工精度)を作業結果の1つとして求める。
【0051】
そして、作業結果処理部55は、活動量処理部52で求めた前記作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量(本実施形態では、体幹部の筋活動量、左下肢部の筋活動量、右下肢部の筋活動量(または下肢部の筋活動量))と関連付けて、前記作業における作業結果(本実施形態では、寸法精度および作業時間)を記憶部9に記憶し、必要に応じて出力部7やIF部8に出力する。動作情報処理部53は、活動量処理部52で求めた前記筋部の活動量と関連付けて、前記作業における作業者(対象者)の身体動作情報および物動き情報を記憶部9に記憶し、必要に応じて出力部7やIF部8に出力する。視線処理部54は、活動量処理部52で求めた前記筋部の活動量と関連付けて、前記作業における作業者の視線情報を記憶部9に記憶し、必要に応じて出力部7やIF部8に出力する。
【0052】
ここで、これら複数の撮像部11-1~11-k、位置処理部51、外力測定部2および活動量処理部52は、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量を取得する活動量取得部ADを構成し、活動量取得部の一例に相当する。これら形状測定部41、計時部42および作業結果処理部55は、前記活動量取得部で取得した前記筋部の活動量と関連付けて、前記所定の作業における作業結果を取得する作業結果取得部4を構成し、作業結果取得部の一例に相当する。本実施形態では、前記作業は、上述したように、その一例として、車両部材成型用金型の研削または研磨の作業であるため、前記作業の成果物は、研削または研磨された作業後の車両部材成型用金型である。このため、本実施形態では、前記作業結果は、前記作業の成果物における精度(加工精度、寸法精度)および前記作業に要した時間(作業時間)であり、これらを測定するために、作業結果取得部の一例として、形状測定部41および計時部42が用いられている。したがって、形状測定部41および計時部42は、前記作業および前記作業結果に応じて適宜な装置に変更される。
【0053】
なお、上述では、複数の撮像部11-1~11-k、外力測定部2、視線測定部3、形状測定部41および計時部42は、それぞれ、制御処理部5に接続され制御処理部5の制御に従って稼働したが、複数の撮像部11-1~11-k、外力測定部2、視線測定部3、形状測定部41および計時部42のうちの1または複数(全部を含む)は、制御処理部5とは個別に稼働し、画像や測定結果が入力部6からオペレータ(ユーザ)によって身体動作取得装置Dに入力されて取得されても良く、あるいは、画像や測定結果を記録または記憶した記録媒体(例えばCD-R等)または記憶媒体(USBメモリ等)からIF部8を介して取得されても良い。この場合では、入力部6やIF部8が、前記活動量取得部や前記作業結果取得部や付加取得部の一例に相当する。
【0054】
次に、前記新たな知見の検証および身体動作取得装置の動作について説明する。
図4は、作業の内容および前記作業に用いられるテストピースを説明するための図である。
図4Aは、模式的に作業前のテストピースを示す斜視図であり、
図4Bは、模式的に作業後のテストピースを示す斜視図である。
図5は、実施形態における身体動作取得装置の動作を示すフローチャートである。
図6は、Eクラスに属する被験者およびAクラスに属する被験者それぞれにおける視線移動量の分布を示すヒストグラムである。
図6の横軸は、視線移動量の各階級であり、その縦軸は、頻度である。
図7は、時間経過に対する、前記各重心位置の変位を説明するための図である。
【0055】
この検証では、前記作業は、前記ツールとしてグラインダーを用いた、上述の金型の研削または研磨の作業(グラインダー作業)である。より具体的には、このグラインダー作業は、金型を粗く削る荒工程と、粗く削った表面を滑らかな表面になるように研磨する仕上工程の2工程を備えるが、グラインダー作業による切削精度(作業対象の寸法精度、加工精度)を向上させるためには、通常、荒工程の作業を高精度かつ高効率に実施することが重要である。このため、前記検証の実験として、金型に見立てたテストピースTPに対しグラインダー作業における荒工程の作業を被験者(対象者、作業者)に実施させ、身体動作取得装置Dによる各測定が実施された。
【0056】
このテストピースTPは、例えば、
図4Aに示すように、中央部に機械加工により深さ0.1mmで一方向に帯状に延びる凹条TPbを形成した100×100×35mmのSS材(一般構造用圧延鋼材)である。このテストピースTPに対し、前記荒工程の作業は、凹条TPbを形成することによって凹条TPbの両側それぞれに形成された高さ0.1mmの凸部TPa、TPcの一方、例えば、凸部TPcをハンディ型のグラインダーで均一に0.1mmだけ研削する作業である。このような荒工程の作業後、テストピースTPには、
図4Bに示すように、凹条TPbの底面と略面一な研削平面部TPdが形成される。被験者は、初級者から熟練者までを含む46名である。
【0057】
これら46名の各被験者は、順次に、前記テストピースTPに対し前記荒工程の作業を実施する。その実施中、上述の身体動作取得装置Dが用いられ、まず、複数の撮像部11それぞれによって当該被験者およびそのツールに付された複数のマーカの各画像が生成され、当該被験者の被験者名(被験者ID)と互いに関連付けられて記憶部9に記憶され(S1-1)、外力測定部12(12-1~12-3)によって当該被験者における身体に作用する外力が測定され、当該被験者の被験者名と互いに関連付けられて記憶部9に記憶され(S1-2)、位置処理部51によって、処理S1-1で複数の撮像部11-1~11-kによって生成された各画像に基づいて前記複数のマーカの各位置が求められ、当該被験者の被験者名と互いに関連付けられて記憶部9に記憶され(S2)、動作情報処理部53によって、処理S2で位置処理部51によって求めた前記複数のマーカの各位置に基づいて、当該被験者における身体動作情報(各身体部位の各重心位置およびその移動範囲)および物動き情報(ツールの重心位置およびその移動範囲)が求められ、当該被験者の被験者名と互いに関連付けられて記憶部9に記憶され(S3)、活動量処理部52によって、これら位置処理部51で求めた複数のマーカの各位置、および、外力測定部2で測定した外力に基づいて、当該被験者の各身体部位における各筋活動量(各筋部の各活動量)が求められ、当該被験者の被験者名と互いに関連付けられて記憶部9に記憶される(S4)。続いて、活動量処理部52によって、これら求められた各身体部位の各筋活動量に基づいて、前記作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量として、体幹部(Trunk)の筋活動量(Muscle active mass)、左下肢部の筋活動量(Left foot)、右下肢部の筋活動量(Right foot)(または下肢部の筋活動量))が求められ、記憶部9に記憶される(S5)。ここで、この検証では、さらに、左肩部、左上腕部、左前腕部および左手部の各筋活動量が左上肢部(Left arm)の筋活動量として集約され、右肩部、右上腕部、右前腕部および右手部の各筋活動量が、右上肢部(Right arm)の筋活動量として集約され、これら体幹部、左下肢部、右下肢部、左上肢部および右上肢部の各筋活動量が総筋活動量(Total)として集約される。
【0058】
そして、前記実施中、計時部42によって当該被験者の作業時間が作業結果の1つとして測定され、作業結果処理部55によって、前記作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量と関連付けられて記憶部9に記憶され(S1-3)、視線測定部3によって当該被験者の注視点が測定され、当該被験者の被験者名と互いに関連付けられて記憶部9に記憶され(S1-4)、視線処理部54によって、当該被験者の視線情報(視線移動量、その平均値および標準偏差)が求められ、当該被験者の被験者名と互いに関連付けられて記憶部9に記憶される(S6)。さらに、作業の終了後に、形状測定部41によって作業後のテストピースTPの形状が測定され、当該被験者の被験者名と互いに関連付けられて記憶部9に記憶され(S1-5)、作業結果処理部55によって、前記測定された形状に基づいて寸法精度が求められ、前記作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量と関連付けられて記憶部9に記憶される(S7)。なお、当該被験者における身体の動作、外力および注視点の各測定(動作分析の時間)は、荒工程の研削開始からの2分間とされた。そして、これら測定や演算された複数のマークの各位置、外力、作業時間、注視点、テストピースTPの形状、身体動作情報、物動き情報、視線情報および寸法精度が、前記作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量(この例では体幹部、左下肢部および右下肢部の各筋活動量)共に制御処理部5によって出力部7に出力され、終了される(S8)。
【0059】
技能の定量化の検証に当たって、まず、技能の熟練度に応じて5個のAクラスないしEクラスが設定された。Aクラスは、熟練度が最低である初級者のクラスである。Bクラスは、熟練度が普通(中級)である中級者のクラスである。Cクラスは、熟練度が準上級である準上級者のクラスである。Dクラスは、熟練度が上級である上級者のクラスである。Eクラスは、熟練度が最高である最上級者のクラスである。上述のグラインダー作業における荒工程では、その技能の熟練度が上がるほど、寸法精度(加工精度)が高く、作業効率が高い、すなわち、作業時間が短い、と考えられ、さらに、バラツキが少ないと考えられる。そこで、本実施形態では、寸法精度および作業時間それぞれの各標準偏差σが求められ、寸法精度が高く作業時間が短い方から、略3σ以内の範囲がEクラスに設定され、略3σを超え、略2.5σ以内である範囲がDクラスに設定され、略2.5σを超え、略2σ以内である範囲がCクラスに設定され、略2σを超え、略1σ以内である範囲がDクラスに設定され、略1σを超える範囲がAクラスに設定されるように、各クラスを分ける寸法および作業時間の各閾値(寸法閾値、作業時間閾値)が設定された。具体的には、各クラスを分ける各寸法閾値[mm]および各作業時間閾値[min]は、表1の通りである。
【0060】
【0061】
ここで、テストピースTPに対する寸法精度は、例えば、凹条TPbの底面を含む平面を基準平面とし、研削平面部TPdに仮想的に設定された正方格子の各格子点を各測定点とし、各測定点それぞれにおいて、前記基準平面に対する高さ方向の差(前記基準平面からの高さまたは深さ)を求め、各測定点の各差の各絶対値における平均値として求められる。寸法精度の平均値Avesは、0.032[mm]であり、その標準偏差σsは、0.022[mm]であり、作業時間の平均値Avetは、14.4[min]であり、その標準偏差σtは、8.0[min]であった。
【0062】
このようなクラス分けでは、46名の被験者は、3名がAクラスに属し、11名がBクラスに属し、13名がCクラスに属し、14名がDクラスに属し、5名がEクラスに属するように、分けられた。Eクラスに属する5名は、官能評価であるが、他の被験者等から、熟練度が最上級であると見られており、Aクラスに属する3名は、新人であることから、表1によるクラス分けは、妥当である。なお、上述では、AクラスとEクラスとの間に、Bクラス、CクラスおよびDクラスの3個のクラスが設けられたが、AクラスとEクラスとの間のクラス数は、任意で良く、1個でも、2個でも4個以上であっても良い。
【0063】
発明者は、作業中、人間が作業状況を視覚によって認識して作業状況を判断し、この判断結果に応じて身体を動作させ、作業を進行させることから、身体の動作によって実施される所定の作業に関わる技能の定量化には、人間が判断して動作する一連の行動情報となる、眼球運動、身体動作および筋活動量を用いることができると、考え、Eクラスに属する被験者PeとAクラスに属する被験者Paとを、筋活動量、視線情報および身体動作情報それぞれの観点から、比較が行われた。特に、技能における、いわゆるコツは、身体動作における力の入れ具合、すなわち、筋活動量に関係する。
【0064】
筋活動量は、最大可能筋力Fmax[N]に対する筋力F[N]の割合であり、単位は、[%]である。筋活動量の比較に当たって、活動量処理部52によって求められた19個の各身体部位における各筋活動量(各筋部の各活動量)は、身体を大きく分けると、体幹部、右上肢部、左上肢部、右下肢部および左下肢部に分けられるので、上述のように、これら5個の部位に集約された。この5大部位の各筋活動量におけるEクラスに属する被験者PeとAクラスに属する被験者Paとの比較結果は、表2の通りである。
【0065】
【0066】
表2から分かるように、Eクラスに属する被験者Peの筋活動量は、Aクラスに属する被験者Paと比較すると、グラインダー作業に要求される姿勢を維持するための体幹部の筋活動量の割合が最も高く、左右下肢部の各筋活動量の差が少ない。一方、Aクラスに属する被験者Paの筋活動量は、左側の割合が高く、左に偏っている。さらに、Eクラスに属する被験者Peの総筋活動量は、Aクラスに属する被験者Paと比較すると、少なく、したがって、Eクラスに属する被験者Peは、少ない総筋活動量でグラインダーに反力を与えている(表2におけるTotalおよびTool reaction forceの各欄参照)。以上から、Eクラスに属する被験者Peは、Aクラスに属する被験者Paに較べ、作業中、身体の軸がしっかりしており、左右のずれが少なく、自身の発した力を効率よくグラインダー(ツール)に伝達している。
【0067】
以上のことから、身体の動作によって実施される所定の作業に関わる技能の定量化では、1つの観点として、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量が重要であり、Eクラスに属する被験者Peの筋活動量とAクラスに属する被験者Paの筋活動量とは、有意な差がある。そして、前記筋部の活動量は、体幹部に関わる筋部の活動量を含むことが好ましく、前記筋部の活動量は、さらに、下肢部に関わる筋部の活動量を含むことが好ましい。
【0068】
視線情報に関し、視線移動量におけるEクラスに属する被験者PeとAクラスに属する被験者Paとの比較結果は、
図6の通りである。なお、まばたき等によるエラー値は、除去されている。
【0069】
図6から分かるように、この例では、Eクラスに属する被験者Peの視線移動量は、約350付近に集中し、視線移動量の標準偏差は、12.9である。一方、Aクラスに属する被験者Paの視線移動量は、約300付近から約750付近までに拡がり、視線移動量の標準偏差は、111.5である。したがって、Eクラスに属する被験者Peの視線移動量は、Aクラスに属する被験者Paの視線移動量に較べ、少なく、Eクラスに属する被験者Peは、グラインダー作業における注目部位を理解しており、前記注目部位に視線を集中させていると考えられる。一方、Aクラスに属する被験者Paの視線移動量は、多く、Aクラスに属する被験者Paは、グラインダー作業における注目部位が定まらず、グラインダー作業を進行させるための情報探しや判断遅れが生じ、これによって時間が消費されていると考えられる。さらに、視線移動量に応じて頭部が変位して姿勢に影響を与えるから、切削精度(加工精度、寸法精度)にも影響すると考えられる。このため、相対的に視線移動量の少ないEクラスに属する被験者Peは、相対的に、寸法精度が高く、作業時間が短い一方、相対的に視線移動量の多いAクラスに属する被験者Paは、相対的に、寸法精度が低く、作業時間が長い。
【0070】
以上のことから、身体の動作によって実施される所定の作業に関わる技能の定量化では、他の1つの観点として、前記所定の作業に伴う視線移動量が重要であり、Eクラスに属する被験者Peにおける視線移動量のバラツキ(一例では上述の分布の拡がり範囲や標準偏差)とAクラスに属する被験者Paにおける視線移動量のバラツキとは、有意な差がある。
【0071】
身体動作情報に関し、身体の動きにおけるEクラスに属する被験者PeとAクラスに属する被験者Paとの比較結果は、
図7の通りである。
図7の上段は、時間経過に対する、各重心位置の各変位を示すグラフであり、その左側は、Eクラスに属する被験者Peのグラフを示し、その右側は、Aクラスに属する被験者Paのグラフを示す。
図7の下段は、前記重心の移動範囲(最大変位)を示し、その左側は、Eクラスに属する被験者Peの移動範囲を示し、その右側は、Aクラスに属する被験者Paの移動範囲を示す。
図7には、ツール(Tool)の結果も示されている。
【0072】
図7から分かるように、この例では、Eクラスに属する被験者Peでは、体幹部の動きが小さく、ツールのグラインダーと前腕部における左右への動きが同調している。一方、Aクラスに属する被験者Paでは、ツールのグラインダーと体幹部を含む全身の動きが同調している。
【0073】
以上のことから、身体の動作によって実施される所定の作業に関わる技能の定量化では、他の1つの観点として、前記所定の作業に伴う身体の動きが重要であり、Eクラスに属する被験者Peにおける身体の動きとAクラスに属する被験者Paにおける身体の動きとは、有意な差がある。
【0074】
なお、前記処理S8において、制御処理部5は、左上肢部の筋活動量および右上肢部の筋活動量も出力部7に出力しても良い。
【0075】
以上説明したように、本実施形態における身体動作取得装置Dおよびこれに実装された身体動作取得方法は、複数のマーカを、対象者の身体および前記物それぞれにおける複数の箇所に付し、複数のマーカの各位置に基づいて、前記対象者の複数の身体部位における各重心位置および前記物の重心位置を、身体動作情報および物動き情報として求める。このように上記身体動作取得装置Dおよび身体動作取得方法は、身体動作情報および物動き情報として、複数のマーカの各位置をそのまま用いるのではなく、各身体部位に固有な各身体部位の各重心位置および物に固有な物の重心位置を用いるので、対象者の体型差や着衣による影響、さらに物の大きさの差による影響を低減でき、物を扱う身体の動作をより精度良く取得できる。上記身体動作取得装置Dおよび身体動作取得方法は、前記物にもマーカを付すので、前記物動き情報も前記身体動作情報と合わせて取得でき、効率的に、両情報を取得できる。
【0076】
上記身体動作取得装置Dおよび身体動作取得方法は、複数の画像に基づいて複数のマーカの位置を求めるので、身体の動作を妨げることなく非接触で簡単に身体動作情報および物動き情報の両情報を取得できる。
【0077】
両手部や一方の手部で物を把持して扱う場合、その動作は、前記物を把持する左上肢部や右上肢部で、さらに、前記左上肢部や前記右上肢部を支持する体幹部で、特徴付けられる。このことは、
図7を用いて上述したように、Eクラスに属する被験者Peでは、体幹部の動きが小さく、ツールのグラインダーと前腕部における左右への動きが同調していることからも理解される。上記身体動作取得装置Dおよび身体動作取得方法は、前記複数の身体部位が、体幹部、ならびに、左上肢部および右上肢部のうちの少なくとも一方を含むので、物を把持して扱う動作の身体動作情報および物動き情報を好適に取得できる。
【0078】
体幹部は、両下肢部に体重がかかって両下肢部で支持され、あるいは、主に一方の下肢部に体重がかかって主に一方の下肢部で支持される。このため、両手部や一方の手部で物を把持して扱う場合、その動作は、さらに、左下肢部や右下肢部で特徴付けられる。このことは、表2を用いて上述したように、Eクラスに属する被験者Peの筋活動量は、Aクラスに属する被験者Paと比較すると、グラインダー作業に要求される姿勢を維持するための体幹部の筋活動量の割合が最も高く、左右下肢部の各筋活動量の差が少ないことからも理解される。上記身体動作取得装置Dおよび身体動作取得方法は、前記複数の身体部位が、さらに、左下肢部および右下肢部のうちの少なくとも一方を含むので、物を把持して扱う動作の身体動作情報および物動き情報を、より好適に取得できる。
【0079】
上記身体動作取得装置Dおよび身体動作取得方法は、ツールを用いる作業の実施に伴う動作の身体動作情報および物動き情報を好適に取得できる。
【0080】
上記身体動作取得装置Dおよび身体動作取得方法は、研削または研磨の作業、本実施形態では、金型の研削または研磨の作業の実施に伴う動作の身体動作情報および物動き情報を好適に取得できる。なお、前記作業が溶接の作業や塗装の作業も同様である。
【0081】
上記身体動作取得装置Dおよび身体動作取得方法は、前記所定の作業に要求される姿勢を維持する筋部の活動量を取得し、前記取得した前記筋部の活動量と関連付けて、前記所定の作業における作業結果を取得するので、互いに関連付けられた前記筋部の活動量と前記作業結果とを、技能情報として、取得できる。したがって、前記新規な知見から、上記身体動作取得装置Dおよび身体動作取得方法は、技能の定量化に資する技能情報(技能の定量化に役立つ技能情報)を取得できる。
【0082】
なお、上述の実施形態において、身体動作取得装置Dおよびこれに実装された身体動作取得方法は、制御処理部5によって、所定の閾値以上である作業結果に関連付けられている前記筋部の活動量を前記技能の熟練度の基準として出力部7に出力しても良い。これによれば、前記技能の熟練度の基準が出力できる。例えば、グラインダー作業の例では、熟練度が最高である最上級者のEクラスを弁別する寸法精度および作業時間(表1に示す例では、0.03[mm]および10[min])が前記所定の閾値とされ、Eクラスに属する被験者Peにおける体幹部に関わる筋部の活動量、左下肢部に関わる筋部の活動量、右下肢部に関わる筋部の活動量(または下肢部に関わる筋部の活動量)が出力部7に出力される。この場合において、さらに、Eクラスに属する被験者Peにおける視線情報が出力部7に出力され、Eクラスに属する被験者Peにおける身体動作情報が出力部7に出力されても良い。さらに、これらの場合において、技能を継承する作業者における体幹部に関わる筋部の活動量、左下肢部に関わる筋部の活動量、右下肢部に関わる筋部の活動量(または下肢部に関わる筋部の活動量)が出力部7に出力されても良い。これによれば、このような技能の定量化に資する基準と前記作業者の測定結果とを比較参照することで、前記作業者は、定量的な観点から、自己と基準との相違を認識でき、効率よく、技能を習熟できる。
【0083】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0084】
D 身体動作取得装置
AD 活動量取得部
1 位置測定部
2 外力測定部
4 作業結果取得部
5 制御処理部
6 入力部
7 出力部
8 インターフェース部(IF部)
9 記憶部
11-1~11-k 複数の撮像部
41 形状測定部
42 計時部
51 位置処理部部
52 活動量処理部
53 動作情報処理部
54 視線処理部
55 作業結果処理部
56 制御部