(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】推定方法、推定装置、コンピュータプログラム及び学習済みモデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20231031BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20231031BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20231031BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/04
H02J3/00 130
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2019133959
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-05-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年12月 6日に、第41回 情報・システム・利用・技術 シンポジウムにて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩行
(72)【発明者】
【氏名】久保井 大輔
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/151560(WO,A1)
【文献】特開2016-110281(JP,A)
【文献】特開2012-138123(JP,A)
【文献】特開2017-207887(JP,A)
【文献】特開2012-168711(JP,A)
【文献】特開2015-212848(JP,A)
【文献】特開2017-134460(JP,A)
【文献】特開2013-078201(JP,A)
【文献】特開2002-189779(JP,A)
【文献】特開2015-232800(JP,A)
【文献】特開2010-176373(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108510100(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推定対象である対象建物にて所定期間内に消費される電力の総消費量を取得し、
取得した総消費量を、建物にて消費される電力の総消費量と、前記建物の総消費量に関する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルに入力し、
前記学習済みモデルの出力に基づいて、前記対象建物に対応する複数の個別消費量を推定
し、
推定した個別消費量の占有率が第2の閾値以上であるか否かを判定することで、推定した個別消費量が過剰であるか否かを判定する
処理をコンピュータが実行する推定方法。
【請求項2】
前記対象建物にて前記所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量を時系列で示す対象データを取得し、
取得した対象データを、建物にて消費される電力の単位時間ごとの総消費量を時系列で示す時系列データと、前記建物の総消費量に関する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルに入力する
処理をコンピュータが実行する請求項1に記載の推定方法。
【請求項3】
前記対象建物にて前記所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量、及び、前記対象建物周辺の気象に関する気象情報を時系列で示す対象データを取得し、
取得した対象データを、建物にて消費される電力の単位時間ごとの総消費量、及び、建物周辺の気象情報を時系列で示す時系列データと、前記建物の総消費量に関する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルに入力する
処理をコンピュータが実行する請求項1
又は請求項2に記載の推定方法。
【請求項4】
前記対象建物にて前記所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量、及び、前記対象建物の床面積を時系列で示す対象データを取得し、
取得した対象データを、建物にて消費される電力の単位時間ごとの総消費量、及び、建物の床面積を時系列で示す時系列データと、前記建物の総消費量に関する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルに入力する
処理をコンピュータが実行する請求項1から請求項
3のいずれか1つに記載の推定方法。
【請求項5】
建物に関する複数の種類に対応し、前記関係を学習した複数の学習済みモデルの中から前記対象建物の種類に対応する学習済みモデルを選択し、
取得した総消費量を、選択した学習済みモデルに入力する
処理をコンピュータが実行する請求項1から請求項
4のいずれか1つに記載の推定方法。
【請求項6】
複数の時期に対応し、前記関係を学習し
た複数の学習済みモデルの中から、前記対象建物の総消費量が計測された時期に対応する学習済みモデルを選択し、
取得した総消費量を、選択した学習済みモデルに入力する
処理をコンピュータが実行する請求項1から請求項
5のいずれか1つに記載の推定方法。
【請求項7】
推定対象である対象建物にて所定期間内に消費される電力の総消費量を取得する取得部と、
前記取得部が取得した総消費量を、建物にて消費される電力の総消費量と、前記建物の総消費量に関する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルに入力する入力部と、
前記学習済みモデルの出力に基づいて、前記対象建物に対応する複数の個別消費量を推定する推定部と
、
推定した個別消費量の占有率が第2の閾値以上であるか否かを判定することで、推定した個別消費量が過剰であるか否かを判定する判定部と
を備える推定装置。
【請求項8】
推定対象である対象建物にて所定期間内に消費される電力の総消費量を取得し、
取得した総消費量を、建物にて消費される電力の総消費量と、前記建物の総消費量に関する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルに入力し、
前記学習済みモデルの出力に基づいて、前記対象建物に対応する複数の個別消費量を推定
し、
推定した個別消費量の占有率が第2の閾値以上であるか否かを判定することで、推定した個別消費量が過剰であるか否かを判定する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
建物にて消費される電力の
単位時間ごとの総消費量
、及び、建物の床面積を時系列で示す時系列データに、前記建物の総消費量に関する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量が対応付けられている教師データを取得し、
取得した教師データに基づき、推定対象である対象建物にて消費される電力の
単位時間ごとの総消費量
、及び、前記対象建物の床面積を時系列で示す対象データを入力として、前記対象建物に対応する複数の個別消費量を推定する処理に用いられる学習済みモデルを生成する
処理をコンピュータが実行する学習済みモデルの生成方法。
【請求項10】
推定対象である対象建物にて所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量、及び、前記対象建物の床面積を時系列で示す対象データを取得し、
取得した対象データを、建物にて消費される電力の単位時間ごとの総消費量、及び、建物の床面積を時系列で示す時系列データと、前記建物の総消費量に関する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルに入力し、
前記学習済みモデルの出力に基づいて、前記対象建物に対応する複数の個別消費量を推定する
処理をコンピュータが実行する推定方法。
【請求項11】
推定対象である対象建物にて所定期間内に消費される電力の総消費量を取得し、
建物に関する複数の種類に対応し、建物にて消費される電力の総消費量と、前記建物の総消費量に関する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した複数の学習済みモデルの中から前記対象建物の種類に対応する学習済みモデルを選択し、
取得した総消費量を、選択した学習済みモデルに入力し、
前記学習済みモデルの出力に基づいて、前記対象建物に対応する複数の個別消費量を推定する
処理をコンピュータが実行する推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定方法、推定装置、コンピュータプログラム及び学習済みモデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物における電力の消費量に基づいて、種々の推定を行う構成が提案されている。例えば、特許文献1では、建物における電力の消費量に基づいて、生活状況を推定する構成が開示されている。生活状況は、建物にいる人の数、調理中であるか否か又は入浴中であるか否か等である。推定結果に基づいて、生活に関する支援又はアドバイスを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物では、エアーコンディショナ、給湯機及び電灯等に電力を供給する複数の用途で電力が消費される。建物において節電を行うためには、電力の消費量が多い用途を知る必要がある。このため、例えば、1日間に建物において消費される電力の消費量の合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を知る必要がある。
【0005】
複数の個別消費量を知る構成として、電力の消費量を計測する電力計を用途ごとに設置し、複数の電力計が示す消費量を取得する構成が考えられる。しかしながら、電力の消費量を用途ごとに実際に計測する場合、複数の電力計を設置しなければならないため、この構成の実現にかかる費用は高い。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量の推定を実現することができる推定方法、推定装置、コンピュータプログラム及び学習済みモデルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る推定方法では、推定対象である対象建物にて所定期間内に消費される電力の総消費量を取得し、取得した総消費量を、建物にて消費される電力の総消費量と、前記建物の総消費量に関する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルの出力に基づいて、前記対象建物に対応する複数の個別消費量を推定し、推定した個別消費量の占有率が第2の閾値以上であるか否かを判定することで、推定した個別消費量が過剰であるか否かを判定する処理をコンピュータが実行する。
【0008】
上記の一態様にあっては、対象建物において、1日間又は1週間等の所定期間内に消費される電力の総消費量を学習済みモデルに入力する。学習済みモデルの出力に基づいて、用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を推定する。このため、用途ごとに個別消費量を計測する必要がなく、複数の個別消費量を推定する構成を安価に実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量の推定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1における推定システムの概略図である。
【
図5】モデル生成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】推定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態2における消費量推定モデルの説明図である。
【
図9】実施の形態3におけるサーバの要部構成を示すブロック図である。
【
図10】モデル生成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】推定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態4における選択テーブルの説明図である。
【
図14】実施の形態5における消費量推定モデルの説明図である。
【
図15】モデル生成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図16】推定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る推定システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における推定システム1の概略図である。推定システム1は、サーバ2及び端末3を備える。サーバ2及び端末3はネットワークNに接続されている。サーバ2は、種々の情報処理、及び、データの送受信等を行う情報処理装置である。サーバ2は、電力の総消費量に基づいて、用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を推定する。推定対象である対象建物4は、事務所、工場、商業施設又は住宅等である。用途は、エアーコンディショナの室外機、エアーコンディショナの室内機、給湯機、電灯及び事務機器等への電力供給である。事務機器は、例えばパーソナルコンピュータである。
【0012】
対象建物4において、1日間又は1週間間等の所定期間内に消費される電力の1時間又は1日間等の単位時間ごとの総消費量を計測する図示しない電力計が設置されている。端末3は、対象建物4において所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量を時系列で示す対象データを取得する。対象データは、所定期間内に電力計が単位時間ごとに計測した複数の総消費量を時系列で示すデータである。使用者は、例えば、通信を介して、又は、可搬型メモリを用いて、端末3に対象データを取得させる。使用者は、総消費量の対象データを、ネットワークNを介してサーバ2へ送信させる。端末3は例えばパーソナルコンピュータである。なお、2時間又は2日間等も単位時間として挙げられる。
【0013】
サーバ2は、端末3から受信した対象データに基づいて、対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を推定する。1つの例として、所定期間が1週間であり、かつ、単位時間が1日間である場合、サーバ2は、複数の総消費量の平均値(1日当たりの電力の消費量)に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を推定する。もう一つの例として、所定期間が1日間であり、かつ、単位時間が1時間である場合、サーバ2は、24個の総消費量の合計(1日間の電力の消費量)に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を推定する。サーバ2は推定装置として機能する。サーバ2は、推定した複数の個別消費量を示す推定データを、ネットワークNを介して、端末3に送信する。端末3は、推定データを受信した場合、受信した推定データが示す複数の個別消費量を表示する。
【0014】
サーバ2は、事務所、工場、商業施設又は住宅等の建物5において所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量を時系列で示す時系列データと、時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係について機械学習を行う。これにより、サーバ2は、対象データを入力として、対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力する消費量推定モデル60(
図2参照)を生成する。サーバ2は、複数の建物5それぞれについて機械学習を行う。
【0015】
従って、消費量推定モデル60は、時系列データと、時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルである。サーバ2は、消費量推定モデル60を用いて、対象建物4に関する複数の個別消費量を推定する。
なお、対象建物4及び建物5の種類は共通であることが好ましい。例えば、対象建物4及び建物5の種類は事務所であってもよい。
【0016】
図2はサーバ2の要部構成を示すブロック図である。サーバ2は、通信部20、記憶部21及び制御部22を有する。これらは内部バス23に接続されている。通信部20は、更に、ネットワークNに接続されている。
【0017】
通信部20は、ネットワークNを介してデータを受信する。通信部20が端末3から受信するデータの1つとして、対象データが挙げられる。通信部20は、制御部22の指示に従って、ネットワークNを介してデータを端末3に送信する。通信部20が端末3に送信するデータの1つとして、推定データが挙げられる。
記憶部21は不揮発性メモリである。記憶部21には、消費量推定モデル60が記憶されている。
【0018】
図3は消費量推定モデル60の説明図である。前述したように、サーバ2は、機械学習を行うことによって消費量推定モデル60を生成する。消費量推定モデル60は、LSTM(Long-Short Term Memory)に係るニューラルネットワークである。LSTMに係るニュートラルネットワークは、RNN(Recurrent Neural Network)の一種である。消費量推定モデル60は、所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量を時系列で示すデータ、即ち、対象データ又は時系列データを入力として、対象データ又は時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対して用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力するニュートラルネットワークである。
図3では、所定期間がK日間であり、かつ、単位時間が1日間である例が示されている。Kは2以上の整数である。単位時間は、例えば1時間であってもよい。この場合、所定期間は例えば1日間である。
【0019】
第1例として、消費量推定モデル60は、所定期間がK日間であり、かつ、単位時間が1日間である場合、消費量推定モデル60は、複数の総消費量の平均値(1日当たりの電力の消費量)に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力する。第2例として、消費量推定モデル60は、所定期間が1日間であり、かつ、単位時間が1時間である場合、消費量推定モデル60は、24個の総消費量の合計(1日当たりの電力の消費量)に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力する。第3例として、消費量推定モデル60は、所定期間が30日間であり、かつ、単位時間が1日間である場合、消費量推定モデル60は、30個の総消費量の合計(1カ月当たりの電力の消費量)に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力する。第4例として、消費量推定モデル60は、所定期間及び単位時間が1時間である場合、消費量推定モデル60は、複数の総消費量の平均値(1時間当たりの電力の消費量)に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力する。
【0020】
消費量推定モデル60は、入力層、中間層及び出力層を有する。入力層は、時系列に従って各時点の入力値、即ち、総消費量を受け付ける複数のニューロンを有する。出力層は、用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力するニューロンを有する。中間層は、入力層が有する複数のニューロンへの入力値に基づいて複数の個別消費量を算出するためのニューロンを有する。中間層のニューロンは、LSTM Blockと呼ばれ、過去の時点での入力値に関する中間層の算出結果を用いて、次の時点の入力値に関する算出を行う。これにより、中間層のニューロンは、直近時点までの時系列データから次の時点の値を算出する。
【0021】
なお、
図3に示すLSTMに係るニュートラルネットワークの構成は一例である。LSTMに係るニュートラルネットワークの構成は、
図3に示す構成に限定されない。中間層の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。出力層のニューロンの数も、1に限定されず、2以上であってもよい。
【0022】
図2に示す制御部22は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の処理素子を有する。消費量推定モデル60での算出は、制御部22の処理素子(コンピュータ)によって実行される。制御部22は、消費量推定モデル60の入力層に対象データ又は時系列データを入力する。
【0023】
具体的には、制御部22は、入力層が有する複数のニューロンそれぞれに、対象データ又は時系列データが示す複数の総消費量を入力する。前述したように、対象データ又は時系列データでは、所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量が時系列で示されている。
図3に示すデータでは、K日間内に消費される電力の1日間ごとの総消費量が時系列で示されている。なお、対象データ又は時系列データは、K時間内に消費される電力の1時間ごとの総消費量が時系列で示されているデータであってもよい。
【0024】
制御部22は、消費量推定モデル60の入力層に、対象データ又は時系列データを入力することによって、消費量推定モデル60の出力として、複数の個別消費量を算出する。制御部22は、教師データを用いて機械学習を行い、消費量推定モデル60を生成する。機械学習では、制御部22は、中間層での算出に用いるパラメータを最適化する。ここで、パラメータは、ニューロン間の重み(結合係数)又は活性化関数の係数等である。
【0025】
図4は教師データの説明図である。教師データでは、共通の建物5において所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量を時系列で示す時系列データに、消費量推定モデル60の出力の正解を示す正解データが対応付けられている。正解データは、共通の建物5について、時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を示す。正解データは、例えば、実際の内訳を示す複数の個別消費量を示す。
【0026】
図4の例では、所定期間がK日間であり、単位時間が1日間である。時系列データはK日間内に消費される1日間ごとの総消費量を時系列で示す。所定期間が1日間であり、かつ、単位時間が1時間である場合、時系列データは、1日間内に消費される1時間ごとの総消費量を時系列で示す。時系列データ及び正解データそれぞれは、消費量推定モデル60に入力されるデータ及び消費量推定モデル60の出力に対応する。消費量推定モデル60に入力されるデータに係る所定期間及び単位時間それぞれは、時系列データに係る所定期間及び単位時間に一致する。消費量推定モデル60が複数の総消費量の平均値に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力する場合、正解データは、複数の総消費量の平均値に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を示すデータである。消費量推定モデル60が複数の総消費量の合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力する場合、正解データは、複数の総消費量の合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を示すデータである。
【0027】
制御部22は、教師データの時系列データを消費量推定モデル60の入力層に入力し、出力層の出力として、複数の個別消費量を算出する。制御部22は、算出した複数の個別消費量と、正解データが示す複数の個別消費量とを比較し、比較結果に基づいて、中間層での算出に用いるパラメータを最適化する。
【0028】
図2に示すように、記憶部21にはコンピュータプログラムP1が記憶されている。制御部22の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムP1を実行することによって、教師データ記憶処理、モデル生成処理及び推定処理を実行する。教師データ記憶処理は、教師データを記憶部21に記憶する処理である。モデル生成処理は、機械学習を行うことによって消費量推定モデル60を生成する処理である。推定処理は、電力の総消費量に基づいて、用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を推定する処理である。
【0029】
なお、制御部22が有する処理素子の数は2以上であってもよい。この場合、複数の処理素子がコンピュータプログラムP1に従って、教師データ記憶処理、モデル生成処理及び推定処理を含む種々の処理を協同で実行してもよい。また、複数の処理素子が消費量推定モデル60で行わる算出を協同で実行してもよい。
【0030】
更に、コンピュータプログラムP1は、コンピュータプログラムP1を読み取り可能に記録した非一時的な記憶媒体A1を用いて、サーバ2に提供されてもよい。記憶媒体A1は、例えば可搬型メモリである。可搬型メモリの例として、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカード、マイクロSDカード又はコンパクトフラッシュ(登録商標)等が挙げられる。記憶媒体A1が可搬型メモリである場合、制御部22の処理素子は、図示しない読取装置を用いて記憶媒体A1からコンピュータプログラムP1を読み取り、読み取ったコンピュータプログラムP1を記憶部21に記憶してもよい。更に、コンピュータプログラムP1は、サーバ2の通信部20を介した通信によって、サーバ2に提供されてもよい。この場合、制御部22の処理素子は、通信部20を通じてコンピュータプログラムP1を取得し、取得したコンピュータプログラムP1を記憶部21に記憶してもよい。
【0031】
制御部22は、通信部20が教師データを受信した場合、又は、図示しないサーバ2の入力部に教師データが入力された場合、教師データ記憶処理を実行する。制御部22は、通信部20が受信した教師データ、又は、入力部に入力された教師データを取得し、取得した記憶部21に記憶する。その後、制御部22は教師データ記憶処理を終了する。
【0032】
図5はモデル生成処理の手順を示すフローチャートである。制御部22は、例えば、記憶部21に教師データが記憶されている状態でモデル生成処理の実行が指示された場合にモデル生成処理を実行する。モデル生成処理の実行指示は、実行を指示する指示データの通信部20への送信、又は、サーバ2が有する図示しない操作部の操作等によって実現される。
【0033】
モデル生成処理では、制御部22は、記憶部21に記憶されている複数の教師データから1つの教師データを選択する(ステップS1)。記憶部21に記憶されている教師データの数が1つである場合、ステップS1では、制御部22は、記憶部21に記憶されている1つの教師データを選択する。次に、制御部22は、ステップS1で選択した教師データに含まれる総消費量の時系列データを消費量推定モデル60に入力し(ステップS2)、消費量推定モデル60の出力として、用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を算出する(ステップS3)。
【0034】
次に、制御部22は、ステップS2で算出した複数の個別消費量を、ステップS1で選択した教師データに含まれる正解データが示す複数の個別消費量と比較する(ステップS4)。次に、制御部22は、消費量推定モデル60の出力が、正解データが示す複数の個別消費量に近似するように、中間層での算出に用いるパラメータを更新する(ステップS5)。これにより、消費量推定モデル60が新たに生成される。
【0035】
制御部22は、ステップS5を実行した後、記憶部21に記憶されている全ての教師データが選択されたか否かを判定する(ステップS6)。制御部22は、全ての教師データを選択していないと判定した場合(S6:NO)、ステップS1を実行し、パラメータを再び更新する。ステップS1では、制御部22は、モデル生成処理において選択されていない教師データを選択する。全ての教師データが選択されるまで、制御部22はパラメータを更新し続ける。
【0036】
制御部22は、全ての教師データを選択したと判定した場合(S6:YES)、記憶部21に記憶されている全ての教師データを削除し(ステップS7)、モデル生成処理を終了する。
【0037】
以上のように、モデル生成処理では、制御部22は、教師データ記憶処理で取得した教師データに基づき、消費量推定モデル60を生成する。
なお、モデル生成処理において、1つの教師データを用いてパラメータを更新する回数は1回に限定されない。制御部22は、1つの教師データを用いて、パラメータを2回以上更新してもよい。
【0038】
図6は推定処理の手順を示すフローチャートである。制御部22は、推定処理を周期的に実行する。推定処理では、制御部22は、まず、通信部20が、端末3から対象データを受信したか否かを判定する(ステップS11)。前述したように、対象データは、対象建物4において、所定期間内に消費される電力の総消費量を時系列で示すデータである。通信部20が受信した対象データは制御部22によって取得される。制御部22は取得部として機能する。
【0039】
制御部22は、通信部20が対象データを受信していないと判定した場合(S11:NO)、推定処理を終了する。次の周期が到来した場合、制御部22は、再び、ステップS11を実行する。制御部22は、推定処理を繰り返し実行し、通信部20が対象データを受信するまで待機する。
【0040】
制御部22は、通信部20が対象データを受信したと判定した場合(S11:YES)、通信部20が受信した対象データを、消費量推定モデル60に入力する(ステップS12)。制御部22は入力部としても機能する。次に、制御部22は、消費量推定モデル60の出力として、対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を算出する(ステップS13)。これにより、対象建物4に対応する複数の個別消費量が推定される。制御部22は推定部としても機能する。
【0041】
ステップS13において制御部22が算出する複数の個別消費量は、1日間ごとに計測される複数の総消費量の平均値(1日当たりの電力の消費量)、1時間ごとに計測される24個の総消費量の合計(1日当たりの電力の消費量)、1日間ごとに計測される30個の総消費量の合計(1カ月当たりの電力の消費量)、又は、1時間ごとに計測される複数の総消費量の平均値(1時間当たりの電力の消費量)等に対応する複数の個別消費量である。
【0042】
次に、制御部22は、ステップS13で算出した各個別消費量が過剰であるか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14の第1例として、複数の用途に対応する複数の第1閾値が予め設定されており、制御部22は、共通の用途について、ステップS13で算出した各個別消費量を第1閾値と比較する。制御部22は、個別消費量が第1閾値以上である場合に個別消費量が過剰であると判定する。制御部22は、個別消費量が第1閾値未満である場合に個別消費量が過剰ではないと判定する。1つの例として、共通の用途について、各第1閾値は、標準的な建物において消費される個別消費量に設定されている。もう1つの例として、各第1閾値は、複数の建物5に対応し、かつ、用途が共通する複数の個別消費量の平均値に設定されている。
【0043】
ステップS14の第2例として、制御部22は、対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対して、各個別消費量が占める占有率を算出する。ここで、消費量推定モデル60が複数の総消費量の平均値に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力する場合、制御部22は、複数の総消費量の平均値に対して、各個別消費量が占める占有率を算出する。消費量推定モデル60が複数の総消費量の合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力する場合、制御部22は、複数の総消費量の合計に対して、各個別消費量が占める占有率を算出する。
【0044】
複数の用途に対応する複数の第2閾値が予め設定されており、制御部22は、共通の用途について、算出した各占有率を第2閾値と比較する。制御部22は、占有率が第2閾値以上である場合に個別消費量が過剰であると判定する。制御部22は、占有率が第2閾値未満である場合に個別消費量が過剰ではないと判定する。1つの例として、共通の用途について、各第2閾値は、標準的な建物において消費される個別消費量の占有率に設定されている。もう1つの例として、各第2閾値は、複数の建物5に対応し、かつ、用途が共通する複数の個別消費量の占有率の平均値に設定されている。
【0045】
ステップS14の第3例として、制御部22は、共通の用途について、ステップS13で算出した各個別消費量を、複数の建物5に消費される複数の個別消費量と比較する。制御部22は、比較結果に基づいて、ステップS13で算出した各個別消費量が過剰であるか否かを判定する。
【0046】
制御部22は、ステップS14を実行した後、通信部20に指示して、判定結果データ及び推定データを、ネットワークNを介して端末3に送信させる(ステップS15)。判定結果データは、ステップS13で算出した各個別消費量について、ステップS14で行われた判定の結果、即ち、個別消費量が過剰であるか否かを示す。推定データは、制御部22がステップS13で算出した複数の個別消費量を示す。端末3は、通信部20から判定結果データ及び推定データを受信した場合、受信したこれらのデータの内容を表示する。
【0047】
使用者は、推定データの内容に基づいて、対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を確認することができる。使用者は、判定結果データの内容に基づいて、過剰である個別消費量の用途を確認することができる。
【0048】
制御部22は、ステップS15を実行した後、推定処理を終了する。次の周期が到来した場合、制御部22は推定処理のステップS11を再び実行し、通信部20が対象データを受信するまで待機する。
【0049】
以上のように、サーバ2は、対象データに基づいて複数の個別消費量を推定する。このため、対象建物4について、用途ごとに個別消費量を計測する必要がなく、複数の個別消費量を推定する構成を安価に実現することができる。時系列データを用いて生成された消費量推定モデル60に、対象データ、即ち、時系列で示された複数の総消費量を入力するので、複数の個別消費量が正確に推定される。
【0050】
(実施の形態2)
実施の形態1では、複数の個別消費量の推定に用いる対象データとして、対象建物4において所定期間内に消費される電力の総消費量のみを時系列で示すデータが用いられている。対象データは、総消費量だけではなく、他の情報も時系列で示すデータであってもよい。
以下では、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と共通しているため、実施の形態1と共通する構成部には実施の形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図7は、実施の形態2における消費量推定モデル60の説明図である。実施の形態1の説明で述べたように、消費量推定モデル60の入力層には、対象データ又は時系列データが入力される。実施の形態2では、
図7に示すように、対象データ及び時系列データそれぞれでは、所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量に加えて、気象情報及び床面積が時系列に示されている。入力層が有する複数のニューロンそれぞれが受け付ける入力値は、総消費量、気象情報及び床面積である。
図7には、所定期間がK日間であり、かつ、単位時間が1日間である例が示されている。対象データ及び時系列データそれぞれは、1日間隔で総消費量、気象情報及び床面積を示す。実施の形態1の説明で述べたように、所定期間がK時間であり、かつ、単位時間が1時間であってもよい。この場合、対象データ及び時系列データそれぞれは、1時間間隔で総消費量、気象情報及び床面積を示す。
【0052】
対象データ及び時系列データそれぞれの総消費量は、実施の形態1と同様に、対象建物4及び建物5において所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量である。対象データ及び時系列データそれぞれの気象情報は、対象建物4及び建物5周辺の気象に関する情報である。
図7の例では、気象情報として、所定期間における対象建物4又は建物5周辺の平均気温、平均湿度及び天気が示されている。対象データ及び時系列データそれぞれの床面積は、対象建物4及び建物5の床面積である。
【0053】
対象建物4周辺の気温は、例えば、対象建物4周辺に設置されている温度計によって計測される。対象建物4周辺の湿度は、例えば、対象建物4周辺に設置されている湿度計によって計測される。対象建物4の上空の画像を撮影する撮影機、例えばカメラが設置されていてもよい。この場合、対象建物4周辺の天気は撮影機が撮影した画像に基づいて判断されてもよい。対象建物4周辺の気温、湿度及び天気は、インターネットの情報であってもよい。端末3は実施の形態1と同様に対象データを取得する。
【0054】
実施の形態2における消費量推定モデル60では、実施の形態1と同様に、入力層が有する複数のニューロンは、時系列に従って、各時点の入力値を受け付ける。ここで、ニューロンが受け付ける入力値は、各時点の総消費量、気象情報及び床面積である。実施の形態2における消費量推定モデル60において、中間層及び出力層は実施の形態1と同様に作用する。
【0055】
図8は教師データの説明図である。実施の形態2における教師データでは、実施の形態1と同様に、時系列データに正解データが対応付けられている。実施の形態2において、制御部22は、教師データ記憶処理及びモデル生成処理を実施の形態1と同様に実行する。実施の形態1の説明で述べたように、モデル生成処理では、制御部22は、教師データ記憶処理で取得した教師データに基づき、消費量推定モデル60を生成する。従って、消費量推定モデル60は、建物5において所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量、建物5周辺の気象情報、及び、建物5の床面積を時系列で示す時系列データと、時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルである。
【0056】
実施の形態2において、制御部22は推定処理を実施の形態1と同様に実行する。従って、制御部22は、対象データを取得し、取得した対象データを消費量推定モデル60に入力する。制御部22は、消費量推定モデル60の出力として、対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を算出する。これにより、対象建物4に対応する複数の個別消費量が推定される。
【0057】
実施の形態2におけるサーバ2は、実施の形態1におけるサーバ2が奏する効果を同様に奏する。更に、実施の形態2におけるサーバ2では、複数の個別消費量の推定に用いる要素として、対象建物4周辺の気象に関する気象情報と、対象建物4の床面積が更に含まれるので、複数の個別消費量がより正確に推定される。
【0058】
なお、気象情報は、平均気温、平均湿度又は天気に限定さない。気象情報として、平均気温の代わりに、単位時間ごとに計測された1つの気温、単位時間内における最高気温又は単位時間内における最低気温等を用いてもよい。同様に、平均湿度の代わりに、単位時間内に計測された1つの湿度、単位時間内における最高湿度又は所定期間内における最低湿度等を用いてもよい。気象情報の数は、3に限定されず、1、2又は4以上であってもよい。
【0059】
対象データ及び時系列データそれぞれでは、所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量と、気象情報とが時系列に示され、床面積が除かれていてもよい。この場合、消費量推定モデル60は、建物5において所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量、及び、建物5周辺の気象情報を時系列で示す時系列データと、時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルである。この構成であっても、複数の個別消費量の推定に用いる要素として、対象建物4周辺の気象に関する気象情報が更に含まれるので、複数の個別消費量がより正確に推定される。
【0060】
同様に、対象データ及び時系列データそれぞれでは、所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量と、床面積とが時系列に示され、気象情報が除かれていてもよい。この場合、消費量推定モデル60は、建物5において所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量、及び、建物5の床面積を時系列で示す時系列データと、時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルである。この構成であっても、複数の個別消費量の推定に用いる要素に、対象建物4の床面積が更に含まれるので、複数の個別消費量がより正確に推定される。
【0061】
(実施の形態3)
実施の形態1では、サーバ2には、時系列データと、時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した消費量推定モデル(学習済みモデル)の数は1つである。しかしながら、消費量推定モデルの数は、1に限定されず、2以上であってもよい。
以下では、実施の形態3について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と共通しているため、実施の形態1と共通する構成部には実施の形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図9は、実施の形態3におけるサーバ2の要部構成を示すブロック図である。実施の形態3における記憶部21には、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・が記憶されている。これらは、実施の形態1における消費量推定モデル60と同様に構成されている。従って、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・それぞれでは、建物5において所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量を時系列で示す時系列データと、時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係が学習されている。複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・それぞれの入力層には、対象データ及び時系列データが入力される。対象データ及び時系列データそれぞれは、実施の形態1の説明で述べたように、所定期間内における電力の総消費量を時系列で示す。複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・それぞれの出力層は、対象データ又は時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を出力する。
【0063】
複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・は、建物5に関する複数の種類と、時期とに対応する。実施の形態1の説明で述べたように、建物5の種類として、事務所、工場、商業施設又は住宅等が挙げられる。時期として月が挙げられる。
【0064】
実施の形態3において、制御部22は、実施の形態1と同様に教師データ記憶処理を実行する。実施の形態3において、教師データは、時系列データ及び正解データに加えて、モデルデータが含まれている。モデルデータは、消費量推定モデル60a,60b,・・・中で、自身の教師データに含まれている時系列データ及び正解データを用いて生成を行うべき消費量推定モデルを示す。
【0065】
図10はモデル生成処理の手順を示すフローチャートである。制御部22は、実施の形態1と同様に、記憶部21に教師データが記憶されている状態でモデル生成処理の実行が指示された場合にモデル生成処理を実行する。
実施の形態3におけるモデル生成処理の一部分は、実施の形態1におけるモデル生成処理と共通する。このため、実施の形態3におけるモデル生成処理において、実施の形態1におけるモデル生成処理と共通する部分、即ち、ステップS1~S7の詳細な説明を省略する。
【0066】
モデル生成処理では、制御部22は、ステップS1を実行した後、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の中から、ステップS1で選択した教師データのモデルデータが示す消費量推定モデルを選択する(ステップS21)。制御部22は、ステップS21を実行した後、ステップS2を実行する。実施の形態3におけるステップS2では、制御部22は、ステップS1で選択した教師データに含まれる総消費量の時系列データを、ステップS21で選択した消費量推定モデルに入力する。その後、制御部22は、ステップS3~S5を順次実行する。これにより、制御部22がステップS21で選択した消費量推定モデルの中間層での算出に用いるパラメータが更新され、消費量推定モデルが新たに生成される。
【0067】
以上のように、モデル生成処理では、制御部22は、教師データ記憶処理で取得した教師データに基づき、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の少なくとも1つを生成する。
なお、実施の形態3におけるモデル生成処理においても、1つの教師データを用いてパラメータを更新する回数は1回に限定されない。制御部22は、1つの教師データを用いて、パラメータを2回以上更新してもよい。
【0068】
実施の形態3において、制御部22は、実施の形態1と同様に推定処理を実行する。推定処理において、制御部22は、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の中から消費量推定モデルを選択する。
図9に示すように、記憶部21には、消費量推定モデルの選択に用いる選択テーブルT1が更に記憶されている。
【0069】
図11は選択テーブルT1の説明図である。選択テーブルT1には、種類フィールド、時期フィールド及び消費量推定モデルフィールドが設けられている。種類フィールドには、建物5の種類が示されている。
図11の例では、建物5の種類として、事務所、工場及び商業施設等が示されている。時期フィールドでは、種類フィールドが示す複数の種類それぞれに対応付けて時期が示されている。
図11の例では、時期として、1月から12月までの月が示されている。消費量推定モデルフィールドでは、種類フィールド及び時期フィールドが示す種類及び時期の各組合せに対応付けて、選択すべき消費量推定モデルが示されている。消費量推定モデルフィールドで示す消費量推定モデルは、消費量推定モデル60a,60b,・・・の1つである。
【0070】
対象建物4には、電力計に加えて、対象建物4の種類を示す種類データが記憶されている記憶部と、年、月、日及び時刻を示す時計部とが設置されている。実施の形態3における端末3は、実施の形態1と同様に対象データを取得するとともに、消費量推定モデルの選択に必要な選択用データを取得する。選択用データは、対象建物4の種類と、対象データが示す複数の総消費量が計測された時期とを示す。ここで、対象データは、選択用データとともに取得されるデータである。時期は、電力計が総消費量を計測した時点において時計部が示す月である。選択テーブルT1及び選択用データに基づいて、消費量推定モデルを選択することができる。
【0071】
使用者は、例えば、通信を介して、又は、可搬型メモリを用いて、端末3に対象データ及び選択用データを取得させる。使用者は、対象データ及び選択用データを、ネットワークNを介してサーバ2へ送信させる。
【0072】
図12は推定処理の手順を示すフローチャートである。制御部22は、実施の形態1と同様に、推定処理を周期的に実行する。
実施の形態3における推定処理の一部分は、実施の形態1における推定処理と共通する。このため、実施の形態3における推定処理において、実施の形態1における推定処理と共通する部分、即ち、ステップS12~S15の詳細な説明を省略する。
【0073】
推定処理では、制御部22は、まず、通信部20が、端末3から対象データ及び選択用データを受信したか否かを判定する(ステップS31)。制御部22は、通信部20が対象データ及び選択用データを受信していないと判定した場合(S31:NO)、推定処理を終了する。次の周期が到来した場合、制御部22は、再び、ステップS31を実行する。制御部22は、推定処理を繰り返し実行し、通信部20が対象データ及び選択用データを受信するまで待機する。
【0074】
制御部22は、通信部20が対象データ及び選択用データを受信したと判定した場合(S31:YES)、制御部22は、選択テーブルT1に基づいて、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の中から、通信部20が受信した選択用データが示す種類及び時期に対応する消費量推定モデルを選択する(ステップS32)。例えば、選択用データが種類及び時期として、事務所及び1月を示す場合、ステップS32では、制御部22は、選択テーブルT1に基づいて消費量推定モデル60aを選択する。制御部22は、ステップS32を実行した後、ステップS12~S15を順次実行する。
【0075】
ステップS12では、制御部22は、通信部20が受信した対象データを、ステップS32で選択した消費量推定モデルに入力する。ステップS13では、制御部22は、ステップS32で選択した消費量推定モデルの出力として、対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を算出する。
【0076】
実施の形態3において、制御部22はステップS14を実施の形態1と同様に実行する。ステップS14の第1例では、用途、種類及び時期に対応する複数の第1閾値が予め設定されている。制御部22は、共通の用途、種類及び時期について、ステップS13で算出した各個別消費量を第1閾値と比較する。1つの例として、共通の用途、種類及び時期について、第1閾値は、標準的な建物において消費される個別消費量に設定されている。もう1つの例として、各第1閾値は、種類が共通する複数の建物5に対応し、かつ、用途及び時期が共通する複数の個別消費量の平均値に設定されている。
【0077】
ステップS14の第2例では、用途、種類及び時期に対応する複数の第2閾値が予め設定されている。制御部22は、共通の用途、種類及び時期について、ステップS13で算出した各個別消費量の占有率を第2閾値と比較する。1つの例として、共通の用途、種類及び時期について、第2閾値は、標準的な建物において消費される個別消費量の占有率に設定されている。もう1つの例として、各第2閾値は、種類が共通する複数の建物5に対応し、かつ、用途及び時期が共通する複数の個別消費量の占有率の平均値に設定されている。
【0078】
実施の形態3における推定処理では、複数の個別消費量の推定に、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の中で、対象建物4の種類と、対象データが示す複数の総消費量を計測した時期とに対応する消費量推定モデルを用いるので、複数の個別消費量がより正確に推定される。実施の形態3におけるサーバ2は、実施の形態1におけるサーバ2が奏する効果を同様に奏する。
【0079】
なお、実施の形態3においては、時期は、月に限定されず、例えば、季節であってもよい。時期が季節である場合、例えば、1月、2月及び12月の期間が冬に対応し、3月から5月までの期間が春に対応し、6月から8月までの期間が夏に対応し、9月から11月までの期間が秋に対応する。この場合、選択テーブルT1において、共通の種類に対応する1月、2月及び12月の消費量推定モデルが共通しており、共通の種類に対応する3月から5月の消費量推定モデルが共通している。更に、共通の種類に対応する6月から8月の消費量推定モデルが共通しており、共通の種類に対応する9月から11月の消費量推定モデルが共通している。時期が季節である場合、選択テーブルT1の時期フィールドにおいて、春、夏、秋及び冬の1つが示されてもよい。
【0080】
(実施の形態4)
実施の形態3において、時期は、電力計が総消費量を計測した時点に対応する月又は季節である。しかしながら、時期は、月又は季節に限定されない。
以下では、実施の形態4について、実施の形態3と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態3と共通しているため、実施の形態3と共通する構成部には実施の形態3と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0081】
対象建物4の記憶部には、平日である日と、休日である日とを示すカレンダー情報が記憶されている。実施の形態4における端末3は、実施の形態3と同様に対象データ及び選択用データを取得する。選択用データが示す時期は、平日及び休日の一方である。電力計が総消費量を計測した日が平日である場合、選択用データは、時期として平日を示す。電力計が総消費量を計測した日が休日である場合、選択用データは、時期として休日を示す。
【0082】
図13は実施の形態4における選択テーブルT1の説明図である。実施の形態4においては、選択テーブルT1の時期フィールドにおいて、時期として、平日及び休日の一方が示されている。
【0083】
実施の形態4において、サーバ2の制御部22は、教師データ記憶処理、モデル生成処理及び推定処理を実施の形態3と同様に実行する。実施の形態4におけるサーバ2は、実施の形態3におけるサーバ2が奏する効果を同様に奏する。
【0084】
なお、実施の形態3,4において、選択用データが示す内容は、種類及び時期の一方であってもよい。選択用データは、対象建物4の種類を示すと仮定する。この場合、選択テーブルT1は、種類フィールド及び消費量推定モデルフィールドによって構成される。選択テーブルT1では、対象建物4に関する複数の種類それぞれに、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・中の1つが対応付けられている。推定処理のステップS32では、サーバ2の制御部22は、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の中から、通信部20が受信した選択用データが示す種類に対応する消費量推定モデルを選択する。この場合であっても、複数の個別消費量の推定に、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の中で、対象建物4の種類に対応する消費量推定モデルを用いるので、複数の個別消費量がより正確に推定される。用途及び種類に対応する複数の第1閾値及び複数の第2閾値が予め設定されている。
【0085】
選択用データは、複数の総消費量が計測された時期を示すと仮定する。この場合、選択テーブルT1は、時期フィールド及び消費量推定モデルフィールドによって構成される。選択テーブルT1では、複数の総消費量が計測された時期それぞれに、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・中の1つが対応付けられている。推定処理のステップS32では、サーバ2の制御部22は、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の中から、通信部20が受信した選択用データが示す時期に対応する消費量推定モデルを選択する。この場合であっても、複数の個別消費量の推定に、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の中で、対象データが示す複数の総消費量を計測した時期に対応する消費量推定モデルを用いるので、複数の個別消費量がより正確に推定される。用途及び時期に対応する複数の第1閾値及び複数の第2閾値が予め設定されている。
【0086】
また、実施の形態3,4において、消費量推定モデル60a,60b,・・・それぞれは、実施の形態2における消費量推定モデル60と同様に構成されていてもよい。従って、対象データ及び時系列データそれぞれは、所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量に加えて、気象情報及び床面積の両方又は一方を時系列に示すデータであってもよい。消費量推定モデル60a,60b,・・・それぞれは、実施の形態3の説明で述べたように、時系列データと、時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルである。実施の形態3,4において、消費量推定モデル60a,60b,・・・それぞれが、実施の形態2における消費量推定モデル60と同様に構成されている場合、実施の形態3,4におけるサーバ2は、実施の形態2におけるサーバ2が奏する効果を同様に奏する。
【0087】
更に、実施の形態3,4において、種類の例として、事務所、工場、商業施設又は住宅等を挙げた。しかしながら、種類は、更に、細分化されてもよい。例えば、商業施設の代わりに、デパート、博物館及び美術館等の複数の種類の建物が示されてもよい。
【0088】
(実施の形態5)
実施の形態1において、消費量推定モデル60は、LSTMに係るニュートラルネットワークに限定されない。
以下では、実施の形態5について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と共通しているため、実施の形態1と共通する構成部には実施の形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0089】
図14は実施の形態5における消費量推定モデル60の説明図である。実施の形態5における消費量推定モデル60は、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)である。消費量推定モデル60は、入力層、複数の中間層及び出力層を有する。
図14には、中間層の数が2である例が示されている。なお、中間層の数は3以上であってもよい。
【0090】
入力層、中間層及び出力層それぞれは、一又は複数のニューロンを有する。各層のニューロンは、前後の層に存在するニューロンと一方向に所望の重み及びバイアスで結合されている。入力層のニューロンの数と同数の成分を有するベクトルが、消費量推定モデル60に、入力データとして入力される。消費量推定モデル60の入力層には、対象データ又は時系列データ、即ち、複数の総消費量が入力される。
【0091】
なお、複数の中間層に畳み込みを行う層が含まれていてもよい。この層では、入力されたデータに、畳み込みフィルタを含む適宜のフィルタを適用し、フィルタを適用した後に得られる複数のデータを次の層に出力する。
【0092】
入力層の各ニューロンに入力された入力値は、最初の中間層に入力される。この中間層において、重み及びバイアスを含む活性化関数を用いて出力が算出される。算出された値が次の中間層に入力される。以下同様にして、出力層の出力が算出されるまで次々と後の層に伝達される。なお、ニューロン間を結合する重み及びバイアス等のパラメータは、誤差逆伝播法を用いて学習される。
【0093】
消費量推定モデル60は、実施の形態1と同様に、時系列データと、時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量との関係を学習した学習済みモデルである。サーバ2の制御部22は、時系列データ及び正解データを含む教師データを用いて機械学習を行い、消費量推定モデル60を生成する。機械学習では、制御部22は、中間層での算出に用いるパラメータを最適化する。実施の形態5における教師データは、
図4に一例が示されている実施の形態1における教師データと同様である。
【0094】
実施の形態5における消費量推定モデル60の出力層は、複数の個別消費量に関する複数の組合せそれぞれについて、入力層に入力された対象データ又は時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量の組合せに該当する確率を出力する。
【0095】
用途は、実施の形態1の説明で述べたように、エアーコンディショナの室外機、エアーコンディショナの室内機、給湯機、電灯及び事務機器等への電力供給である。
図14の例では、出力層の一番上のニューロンは、室外機及び室内機等の個別消費量が0kWh及び10kWh等である確率を出力する。「kWh」は、電力の消費量に関する単位である。
【0096】
サーバ2の制御部22は、対象データを消費量推定モデル60の入力層に入力することによって、複数の個別消費量に関する組合せの確率を算出する。制御部22は、例えば、確率が最も高い組合せに対応する複数の個別消費量を、入力層に入力された対象データ又は時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量であると推定する。
【0097】
実施の形態5において、サーバ2の制御部22の処理素子は、実施の形態1と同様に、コンピュータプログラムP1を実行することによって、教師データ記憶処理、モデル生成処理及び推定処理を実行する。実施の形態5における教師データ記憶処理は、実施の形態1における教師データ記憶処理と同様である。教師データ記憶処理では、制御部22は、通信部20が受信した教師データ、又は、入力部に入力された教師データを取得し、取得した記憶部21に記憶する。その後、制御部22は教師データ記憶処理を終了する。
【0098】
図15はモデル生成処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態5において、サーバ2の制御部22は、実施の形態1と同様に、記憶部21に教師データが記憶されている状態でモデル生成処理の実行が指示された場合にモデル生成処理を実行する。
実施の形態5におけるモデル生成処理の一部分は、実施の形態1におけるモデル生成処理と同様である。実施の形態5におけるモデル生成処理において、実施の形態1におけるモデル生成処理と共通する部分、即ち、ステップS1,S2,S6の詳細な説明を省略する。
【0099】
モデル生成処理のステップS2では、実施の形態1と同様に、制御部22は、ステップS1で選択した教師データに含まれる時系列データを消費量推定モデル60に入力する。次に、制御部22は、消費量推定モデル60の出力として、複数の個別消費量に関する複数の組合せの確率を算出する(ステップS41)。これらの確率は、複数の個別消費量に関する複数の組合せそれぞれについて、入力層に入力された時系列データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量の組合せに該当する確率である。
【0100】
次に、制御部22は、ステップS1で選択した教師データの正解データと、ステップS41の算出結果とに基づいて、中間層での算出に用いるパラメータを更新する(ステップS42)。具体的には、ステップS42では、制御部22は、消費量推定モデル60の出力について、正解データが示す複数の個別消費量に最も近い複数の個別消費量の組合せの確率が高くなるように、パラメータを更新する。制御部22は、ステップS42を実行した後、ステップS6を実行する。
【0101】
消費量推定モデル60が、複数の個別消費量の組合せそれぞれについて、対象データ又は時系列データが示す複数の総消費量の平均値に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量の組合せに該当する確率を出力すると仮定する。この場合、正解データは、複数の総消費量の平均値に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を示すデータである。
【0102】
同様に、消費量推定モデル60が、複数の個別消費量の組合せそれぞれについて、対象データ又は時系列データが示す複数の総消費量の合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量の組合せに該当する確率を出力すると仮定する。この場合、正解データは、複数の総消費量の合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を示すデータである。
【0103】
実施の形態5におけるモデル生成処理においても、制御部22は、教師データ記憶処理で取得した教師データに基づき、消費量推定モデル60を生成する。
なお、実施の形態5におけるモデル生成処理においても、1つの教師データを用いてパラメータを更新する回数は1回に限定されない。制御部22は、1つの教師データを用いて、パラメータを2回以上更新してもよい。
【0104】
図16は推定処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態5において、制御部22は、実施の形態1と同様に推定処理を周期的に実行する。
実施の形態5における推定処理の一部分は、実施の形態1における推定処理と同様である。実施の形態5における推定処理において、実施の形態1における推定処理と同様である部分、即ち、ステップS11,S12,S14,S15の詳細な説明を省略する。
【0105】
推定処理のステップS12では、実施の形態1と同様に、制御部22は、通信部20が受信した対象データを消費量推定モデル60に入力する。次に、制御部22は、消費量推定モデル60の出力として、複数の個別消費量に関する複数の組合せの確率を算出する(ステップS51)。これらの確率は、複数の個別消費量に関する複数の組合せそれぞれについて、入力層に入力された対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量の組合せに該当する確率である。
【0106】
次に、制御部22は、ステップS51で算出した確率に基づいて、複数の個別消費量に関する複数の組合せそれぞれについて、入力層に入力された対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量を推定する(ステップS52)。ステップS52では、例えば、制御部22は、確率が最も高い組合せに対応する複数の個別消費量を、対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を示す複数の個別消費量として推定する。
【0107】
制御部22は、ステップS52を実行した後、ステップS14,S15を順次実行する。ステップS14では、制御部22は、ステップS52で推定した各個別消費量が過剰であるか否かを判定する。ステップS15では、実施の形態1と同様に、制御部22は、通信部20に指示して、判定結果データ及び推定データを、ネットワークNを介して端末3に送信させる。判定結果データは、ステップS52で推定した各個別消費量それぞれについて、ステップS14で行われた判定結果を示す。推定データは、制御部22がステップS52で推定した複数の個別消費量を示す。
【0108】
制御部22は推定処理を実行することによって、実施の形態1と同様に、使用者は、推定データの内容に基づいて、対象データが示す複数の総消費量の平均値又は合計に対する用途ごとの内訳を確認することができる。使用者は、判定結果データの内容に基づいて、過剰である個別消費量の用途を確認することができる。
実施の形態5におけるサーバ2は、実施の形態1におけるサーバ2が奏する効果を同様に奏する。
【0109】
なお、実施の形態2において、消費量推定モデル60は実施の形態5と同様に構成されてもよい。この場合、対象データ及び時系列データそれぞれでは、所定期間内に消費される電力の単位時間ごとの総消費量に加えて、気象情報及び床面積の両方又は一方が時系列に示されている。生成処理では、実施の形態5と同様に、消費量推定モデル60が出力した複数の確率に基づいて、パラメータを更新する。推定処理では、実施の形態5と同様に、消費量推定モデル60が出力した複数の確率に基づいて、複数の個別消費量を推定する。
【0110】
また、実施の形態3,4において、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・それぞれは実施の形態5と同様に構成されてもよい。生成処理では、実施の形態5と同様に、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の中で選択された消費量推定モデルが出力した複数の確率に基づいて、選択された消費量推定モデルのパラメータを更新する。推定処理では、実施の形態5と同様に、複数の消費量推定モデル60a,60b,・・・の中で選択された消費量推定モデルが出力した複数の確率に基づいて、複数の個別消費量を推定する。
【0111】
なお、実施の形態5において、消費量推定モデル60は、時系列データを用いて生成された学習済みモデルに限定されず、例えば、複数の総消費量の平均値又は合計を用いて生成された学習済みモデルであってもよい。この場合、教師データは、建物5において時系列で計測された複数の総消費量の平均値、又は、これらの総消費量の代表値等を示す消費量データと正解データとを含む。モデル生成処理では、時系列データの代わりに消費量データを用いる。対象データは、対象建物4において時系列で計測された複数の総消費量の平均値、又は、これらの総消費量の代表値等を示す。消費量推定モデル60が、時系列データを用いて生成された学習済みモデルではない場合であっても、用途ごとに個別消費量を計測する必要がなく、複数の個別消費量を推定する構成が安価に実現される。
【0112】
また、実施の形態2における消費量推定モデル60及び実施の形態3,4における複数の消費量推定モデル60a,60b・・・それぞれが実施の形態5と同様に構成された場合において、これらの消費量推定モデルは、時系列データとは異なるデータ、例えば、消費量データを用いて生成された学習済みモデルであってもよい。
【0113】
実施の形態1~5において、複数の個別消費量の推定と、消費量推定モデル60又は消費量推定モデル60a,60b,・・・の生成とを行う装置は、情報処理を行う装置であればよいので、サーバ2に限定されない。サーバ2の代わりにパーソナルコンピュータを用いてもよい。更に、複数の個別消費量を推定する推定装置と、消費量推定モデル60又は消費量推定モデル60a,60b,・・・を生成する生成装置は異なっていてもよい。この場合、推定装置に記憶されている消費量推定モデルを、生成装置で生成した消費量推定モデルに更新する。
【0114】
実施の形態1~5で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
開示された実施の形態1~5はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0115】
2 サーバ(推定装置)
4 対象建物
5 建物
22 制御部(取得部、入力部、推定部)
60,60a,60b,・・・ 消費量推定モデル(学習済みモデル)
P1 コンピュータプログラム