(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両用電源装置の制御方法、及び車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20231031BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20231031BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20231031BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20231031BHJP
B60R 21/0136 20060101ALI20231031BHJP
E05B 77/12 20140101ALI20231031BHJP
E05B 81/64 20140101ALI20231031BHJP
【FI】
B60L3/00 H
B60L50/60
B60L58/18
B60L1/00 L
B60R21/0136 310
E05B77/12
E05B81/64
(21)【出願番号】P 2019150465
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】白石 潜
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 真也
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-097269(JP,A)
【文献】国際公開第2017/109852(WO,A1)
【文献】特開2005-232854(JP,A)
【文献】特開2015-073353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60W 10/00-20/50
B60R 21/0136
E05B 77/12
E05B 81/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電源装置の制御方法であって、
前記車両用電源装置は、
車両の駆動力を発生させるモータに電力を供給する駆動用電源と、
前記モータへの電力の供給を制御するモータ制御装置、及び、前記車両のドアの施錠及び解錠を行うドアロックへの電力の供給を制御するドアロック制御装置に、電力を供給する補機用電源と、
前記駆動用電源及び前記補機用電源と別体で設けられ、電力を供給するバックアップ用電源と、を備えており、
前記制御方法は、
前記車両が障害物と衝突したか否かを判定する衝突判定ステップと、
前記衝突判定ステップにおいて前記車両が障害物と衝突したと判定された場合に、前記バックアップ用電源から供給される電力を用いて前記モータ制御装置を動作させ、前記車両が障害物と衝突する前に前記駆動用電源から電力の供給を受けていた車載機器が蓄えている電荷を前記モータに供給させることによって該車載機器を放電させる放電ステップと、
前記放電ステップ
が終了した後に、前記バックアップ用電源から供給される電力を用いて前記ドアロック制御装置を動作させ、前記ドアの解錠を行う解錠ステップと、を有する、
ことを特徴とする、車両用電源装置の制御方法。
【請求項2】
車両用電源装置であって、
車両の駆動力を発生させるモータへの電力の供給を制御するモータ制御装置と、
前記車両のドアの施錠及び解錠を行うドアロックへの電力の供給を制御するドアロック制御装置と、
前記モータに電力を供給する駆動用電源と、
前記モータ制御装置及び前記ドアロック制御装置に電力を供給する補機用電源と、
前記駆動用電源及び前記補機用電源と別体で設けられ、電力を供給するバックアップ用電源と、
前記車両が障害物と衝突したか否かを判定する衝突判定装置と、を備え、
前記衝突判定装置が、前記車両が障害物と衝突したと判定した場合に、
前記モータ制御装置は、前記バックアップ用電源から供給される電力を用いて動作し、前記車両が障害物と衝突する前に前記駆動用電源から電力の供給を受けていた車載機器が蓄えている電荷を前記モータに供給させることによって該車載機器を放電させる放電制御を実行し、
前記ドアロック制御装置は、前記放電制御の実行
終了後に、前記バックアップ用電源から供給される電力を用いて動作し、前記ドアの解錠を行う解錠制御を実行する、
ことを特徴とする車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源装置の制御方法、及び車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータを駆動源とする電気自動車の普及が進んでいる。このような車両には、モータに電力を供給するリチウムイオン電池等の駆動用電源が搭載されている。駆動用電源が出力した直流電力は、インバータ等の車載機器に供給され、交流電力に変換された後にモータに供給される。電気自動車には、駆動用電源の他にも、インバータ等を制御する制御装置や、当該制御装置に電力を供給する補機用電源も搭載されている。
【0003】
車両の走行に必要な大きなトルクをモータで発生させるため、駆動用電源は高電圧の直流電力を出力する。この電力は、車載機器の回路のコンデンサ等に電荷として蓄えられる。車両が障害物(例えば、他車両や路上の構造物等)と衝突する事故が発生した際の安全性を高めるために、法規では、車両の衝突から所定時間内に、所定の車載機器の電圧を所定値以下となるまで低下させることが義務付けられている。そのような放電の方法として、インバータを動作させて車載機器からモータに電荷を供給し、モータにおいて電気エネルギを熱エネルギに変換するものが知られている。また、法規は、車両の衝突時に、乗員の脱出を可能にするため、車両のドアを速やかに解錠することも義務付けている。
【0004】
スペースの制約から、上述した補機用電源は、車両前部のモータルームに設けられることが多い。車両が正面衝突した場合等でも、インバータを制御する制御装置や、車両のドアロックを制御する制御装置に電力をより安定的に供給する手段として、補機用電源の他に、バックアップ用電源を車両に搭載することが考えられる。
【0005】
特許文献1は、車両のドアの解錠装置をしている。当該装置は、主電源から独立しているバックアップ用電源(予備電源)を備えており、このバックアップ用電源から、ドアロックを制御する制御装置に電力を供給する。この構成によれば、主電源から電力を供給できなくなった場合でも、バックアップ用電源から制御装置に電力を供給し、ドアの解錠を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した法規に確実に対応するため、ドアの解錠のみならず、車載機器の放電も、バックアップ用電源から供給する電力を用いて行うことが考えられる。しかしながら、車両の衝突後、短時間に大きな電力を出力可能なバックアップ用電源を用いようとすると、当該バックアップ用電源が大型化するという課題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、バックアップ用電源から供給される電力を用いてドアの解錠及び車載機器の放電を確実に行うことができる車両用電源装置の制御方法、及び車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明は、車両用電源装置の制御方法であって、車両用電源装置は、車両の駆動力を発生させるモータに電力を供給する駆動用電源と、モータへの電力の供給を制御するモータ制御装置、及び、車両のドアの施錠及び解錠を行うドアロックへの電力の供給を制御するドアロック制御装置に、電力を供給する補機用電源と、駆動用電源及び補機用電源と別体で設けられ、電力を供給するバックアップ用電源と、を備えており、制御方法は、車両が障害物と衝突したか否かを判定する衝突判定ステップと、衝突判定ステップにおいて車両が障害物と衝突したと判定された場合に、バックアップ用電源から供給される電力を用いてモータ制御装置を動作させ、車両が障害物と衝突する前に駆動用電源から電力の供給を受けていた車載機器が蓄えている電荷をモータに供給させることによって車載機器を放電させる放電ステップと、放電ステップが終了した後に、バックアップ用電源から供給される電力を用いてドアロック制御装置を動作させ、ドアの解錠を行う解錠ステップと、を有する、ことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、車両が障害物と衝突した場合、まず、放電ステップにより、バックアップ用電源から供給される電力を用いて車載機器を放電させる。そして、放電ステップが終了した後に、解錠ステップにより、バックアップ用電源から供給される電力を用いてドアの解錠を行う。このように、電圧降下が顕著に生じる開始タイミングを異ならせることにより、モータ制御装置及びドアロック制御装置のそれぞれの動作に十分な電力を供給し、車載機器の放電及び車両のドアの解錠を行うことができる。
【0012】
上述した目的を達成するために、本発明の他の形態は、車両用電源装置であって、車両の駆動力を発生させるモータへの電力の供給を制御するモータ制御装置と、車両のドアの施錠及び解錠を行うドアロックへの電力の供給を制御するドアロック制御装置と、モータに電力を供給する駆動用電源と、モータ制御装置及びドアロック制御装置に電力を供給する補機用電源と、駆動用電源及び補機用電源と別体で設けられ、電力を供給するバックアップ用電源と、車両が障害物と衝突したか否かを判定する衝突判定装置と、を備え、衝突判定装置が、車両が障害物と衝突したと判定した場合に、モータ制御装置は、バックアップ用電源から供給される電力を用いて動作し、車両が障害物と衝突する前に駆動用電源から電力の供給を受けていた車載機器が蓄えている電荷をモータに供給させることによって車載機器を放電させる放電制御を実行し、ドアロック制御装置は、放電制御の実行終了後に、バックアップ用電源から供給される電力を用いて動作し、ドアの解錠を行う解錠制御を実行する、ことを特徴とする。
【0013】
この形態でも、電圧降下が顕著に生じる開始タイミングを異ならせることにより、モータ制御装置及びドアロック制御装置のそれぞれの動作に十分な電力を供給し、車載機器の放電及び車両のドアの解錠を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バックアップ用電源から供給される電力を用いてドアの解錠及び車載機器の放電を確実に行うことができる車両用電源装置の制御方法、及び車両用電源装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る車両用電源装置を搭載した車両のレイアウト図である。
【
図2】
図1のバックアップ用電源からモータ制御装置及びドアロック制御装置に流れる電流を示すタイムチャートである。
【
図3】
図1のモータ制御装置及びドアロック制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図4】別実施形態に係る車両用電源装置のバックアップ用電源からモータ制御装置及びドアロック制御装置に流れる電流を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る車両用電源装置2について説明する。まず、
図1を参照して、車両用電源装置2を搭載した車両1について説明する。
図1は、車両用電源装置2を搭載した車両1のレイアウト図であり、車両1の前部を示している。
【0017】
車両1の不図示の運転席及び助手席の前方には、モータルーム11が形成されている。モータルーム11には、モータ12及びインバータ13が配置されている。モータ12は、交流電力の供給を受けてトルクを発生させ、車両1の前輪10を回転させる回転電機である。インバータ13は、複数のコンデンサやスイッチング素子を有する電子機器である。インバータ13は、スイッチング素子のオン状態とオフ状態とを切り替えることによって直流電力を三相の交流電力に変換し、モータ12に供給する。また、モータルームには、後述する駆動用電源21から供給される電力を変圧する不図示のコンバータ等の機器も配置されている。
【0018】
また、車両1は、運転席側のドア14d、助手席側のドア14pと、それぞれの施錠及び解錠を行うドアロック15d,15pを備えている。ドアロック15d,15pは、不図示のアクチュエータを有している。当該アクチュエータが、受信する施錠信号と解錠信号に基づいて動作することにより、ドア14d,14pの施錠及び解錠が行われる。
【0019】
車両用電源装置2は、このような構成を備えている車両1に搭載され、車載機器に対し、その動作に必要な電力を供給する。車両用電源装置2は、駆動用電源21及び補機用電源22を備えている。
【0020】
駆動用電源21は、電力を蓄えるリチウムイオン電池である。駆動用電源21は、車両前後方向及び車両幅方向において車両1の略中央部に配置されており、車両1の運転席及び助手席の下方から、後部座席の下方まで延びている。車両1の後部側面には不図示の充電口が設けられており、駆動用電源21は、車両1の外部からこの充電口を介して供給される電力を蓄えることができる。駆動用電源21は、ハーネス21aを介して、高電圧の直流電力をインバータ13に出力できるように構成されている。
【0021】
補機用電源22は、12Vの直流電力を出力可能な鉛蓄電池である。補機用電源22は、モータルーム11に配置されている。補機用電源22は、不図示の発電機が発生させた電力の供給を受け、該電力を蓄えることができるように構成されている。
【0022】
さらに、車両用電源装置2は、モータ制御装置23、ドアロック制御装置24d,24p、衝突判定装置25、及び加速度センサ26を備えている。これらの車載機器は、車両1に搭載された不図示のCAN(Controller Area Network)を介して、所定のプロトロコルを用いて互いに通信可能に構成されている。
【0023】
モータ制御装置23は、モータ12への電力の供給を制御する電子制御装置である。モータ制御装置23は、モータルーム11に配置されている。詳細には、モータ制御装置23は、インバータ13に制御信号を送信してインバータ13からモータ12に供給する電力を制御し、これにより、モータ12の動作を制御する。
【0024】
ドアロック制御装置24d,24pは、それぞれ、ドアロック15d,15pを制御する電子制御装置である。ドアロック制御装置24d,24pは、ドア14d,14pの近傍に配置されている。ドアロック制御装置24d,24pは、ドアロック15d,15pに施錠信号及び解錠信号を送信することにより、ドアロック15d,15pのアクチュエータを動作させ、ドア14d,14pの施錠及び解錠を行う。つまり、ドアロック制御装置24d,24pは、各アクチュエータが動作するのに十分な電力を、施錠信号及び解錠信号として、ドアロック15d,15pに供給する。ドアロック制御装置24d,24pは、それぞれ、ドアロック15d,15pとユニット化されていてもよい。
【0025】
衝突判定装置25は、車両1が障害物(例えば、他車両や路上の構造物等)と衝突したか否かを判定する電子機器である。衝突判定装置25は、モータルーム11に配置されている。衝突判定装置25は、車両1の加速度を検出する加速度センサ26から信号を受信し、当該信号に基づいて、車両1が障害物と衝突したか否かを判定する。詳細には、衝突判定装置25は、加速度センサ26から受信する信号に基づく値を積分し、所定期間における積分値が閾値を超えた場合に、車両1が障害物と衝突したと判定する。衝突判定装置25は、車両1が障害物と衝突したと判定した場合、モータ制御装置23、ドアロック制御装置24d,24pや、不図示のエアバッグ装置に衝突信号を送信する。
【0026】
さらに、車両用電源装置2は、バックアップ用電源27を備えている。バックアップ用電源27は、電力を蓄えることができるキャパシタである。バックアップ用電源27は、駆動用電源21及び補機用電源22と別体で設けられ、助手席の下方に配置されている。バックアップ用電源27の容量は、駆動用電源21や補機用電源22の容量よりも小さい。
【0027】
図1は、補機用電源22の電力供給経路を、補機用電源22から延びる実線の矢印として示している。補機用電源22は、インバータ13、モータ制御装置23、ドアロック制御装置24d,24p、及び衝突判定装置25に電力を供給することができる。
【0028】
また、
図1は、バックアップ用電源27の電力供給経路を、バックアップ用電源27から延びる破線の矢印として示している。バックアップ用電源27は、インバータ13、モータ制御装置23、及びドアロック制御装置24d,24pに電力を供給することができる。
【0029】
車両1が障害物と衝突することなく、正常に動作している場合、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pは、補機用電源22から供給される電力を用いて動作することができる。モータ制御装置23は、インバータ13を制御することによってモータ12の動作を制御し、モータ12に走行用のトルクを発生させる。また、ドアロック制御装置24d,24pは、乗員の要求等に応じて、ドア14d,14pの施錠及び解錠を行う。このとき、補機用電源22は、単独で、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pの動作に十分な電力を出力する。つまり、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pは、バックアップ用電源27から電力の供給を受けることなく、補機用電源22から供給される電力のみを用いて動作することができる。
【0030】
これに対し、車両1が障害物と衝突し、補機用電源22やその電力供給経路が損傷し、補機用電源22からモータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pに電力を供給できない場合、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pは、バックアップ用電源27から供給される電力を用いて動作することができる。つまり、バックアップ用電源27は、単独で、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pの動作に十分な電力を出力する。
【0031】
次に、
図2を参照しながら、車両1が障害物と衝突した場合のモータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pの動作について説明する。
図2は、バックアップ用電源27からモータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pに流れる電流を示すタイムチャートである。
【0032】
時刻t1に、車両1が障害物と衝突したと衝突判定装置25が判定すると、衝突判定装置25は、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pに衝突信号を送信する。そして、まず、当該衝突信号を受信したモータ制御装置23が、バックアップ用電源27から供給される電力を用いて、動作を開始する。このとき、バックアップ用電源27からモータ制御装置23に電流I1が流れる。
【0033】
バックアップ用電源27から供給される電力を用いて動作するモータ制御装置23は、インバータ13を制御して、インバータ13等の車載機器のコンデンサ等に蓄えられていた電荷をモータ12に供給させる。詳細には、モータ制御装置23は、インバータ13のスイッチング素子のオン状態とオフ状態とを適宜切り替え、トルクを発生させない電流(「d軸電流」と称される。)がモータ12に流れるように、車載機器からモータ12に電荷を供給させる。この結果、モータ12において電気エネルギが熱エネルギに変換され、車載機器の放電が行われる。
【0034】
時刻t1から時間taが経過した時刻t2に、モータ制御装置23は、バックアップ用電源27から供給される電力を用いた動作を停止する。時間taは、車載機器を放電させるのに十分な時間(例えば、5秒)に設定されている。
【0035】
時刻t2から時間tbが経過した時刻t3に、ドアロック制御装置24d,24pが、バックアップ用電源27から供給される電力を用いて、動作を開始する。このとき、バックアップ用電源27からドアロック制御装置24d,24pのそれぞれに、電流I2が流れる。電流I2は、前述した電流I1よりも大きい。
【0036】
バックアップ用電源27から供給される電力を用いて動作するドアロック制御装置24d,24pは、ドアロック15d,15pに解錠信号を送信し、それぞれのアクチュエータを動作させる。この結果、ドア14d,14pの解錠が行われる。
【0037】
解錠信号の送信を終えた時刻t4に、ドアロック制御装置24d,24pは、バックアップ用電源27から供給される電力を用いた動作を停止する。車載機器が放電し、ドア14d,14pが解錠されたことにより、乗員は、ドア14d,14pを介して安全に脱出することができる。
【0038】
次に、
図3を参照しながら、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pが実行する処理について説明する。
図3は、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pが実行する処理を示すフローチャートである。当該処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0039】
ステップS1では、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pが、衝突判定装置25から衝突信号を受信したか否かを判定する。衝突信号を受信していないと判定した場合(S1:NO)、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pは、バックアップ用電源27から供給される電力を用いることなく、処理を終了する。これに対し、衝突信号を受信したと判定した場合(S1:YES)、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pは、ステップS2に進む。ステップS1は、本発明に係る「衝突判定ステップ」に相当する。
【0040】
ステップS2では、モータ制御装置23が、バックアップ用電源27から供給される電力を用いて、動作を開始する。そして、モータ制御装置23は、ステップS3で、放電制御を実行する。つまり、モータ制御装置23は、インバータ13等の車載機器のコンデンサ等に蓄えられていた電荷をモータ12に供給させ、車載機器を放電させる。ステップS3は、本発明に係る「放電ステップ」に相当する。
【0041】
ステップS4では、モータ制御装置23が、モータ制御装置23の動作開始から時間taが経過したか否かを判定する。時間taが経過したと判定した場合(S4:YES)、モータ制御装置23は、ステップS5に進む。
【0042】
ステップS5では、モータ制御装置23が、バックアップ用電源27から供給される電力を用いた動作を停止する。これにより、モータ制御装置23は、放電制御の実行を終了する。
【0043】
ステップS6では、ドアロック制御装置24d,24pは、モータ制御装置23がバックアップ用電源27から供給される電力を用いた動作を停止してから時間tbが経過したか否かを判定する。時間tbが経過したと判定した場合(S6:YES)、ドアロック制御装置24d,24pは、ステップS7に進む。
【0044】
ステップS7では、ドアロック制御装置24d,24pが、バックアップ用電源27から供給される電力を用いて、動作を開始する。そして、ドアロック制御装置24d,24pは、ステップS8で、解錠制御を実行する。つまり、ドアロック制御装置24d,24pは、ドアロック15d,15pに解錠信号を送信し、それぞれのアクチュエータを動作させ、ドア14d,14pの解錠を行う。ステップS8は、本発明に係る「解錠ステップ」に相当する。
【0045】
解錠信号の送信後、ドアロック制御装置24d,24pは、ステップS9で、バックアップ用電源27から供給される電力を用いた動作を停止する。
【0046】
次に、本実施形態の構成に基づく作用効果について説明する。
【0047】
上記構成によれば、車両1が障害物と衝突した場合、まず、放電ステップにより、バックアップ用電源27から供給される電力を用いて車載機器を放電させる。そして、放電ステップの開始タイミング(
図2に示される時刻t
1)から所定時間(
図2に示される時間t
a)経過後に、解錠ステップにより、バックアップ用電源27から供給される電力を用いてドア14d,14pの解錠を行う。このように、電圧降下が顕著に生じる開始タイミングを異ならせることにより、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pのそれぞれの動作に十分な電力を供給し、車載機器の放電及び車両のドア14d,14pの解錠を行うことができる。
【0048】
また、放電ステップが終了した後に、解錠ステップを開始する。この構成によれば、モータ制御装置23及びドアロック制御装置24d,24pのそれぞれの動作に十分な電力を、より確実に供給し、車載機器の放電及び車両1のドア14d,14pの解錠を行うことができる。
【0049】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0050】
上記実施形態では、モータ制御装置23がバックアップ用電源27から供給される電力を用いた動作を停止した時刻t
2から時間t
bが経過した後に、ドアロック制御装置24d,24pが、バックアップ用電源27から供給される電力を用いて動作を開始する。しかしながら、本発明は、この形態に限定されない。例えば、
図4に示されるように、時刻t
2において、モータ制御装置23の動作停止と同時に、ドアロック制御装置24d,24pが、バックアップ用電源27から供給される電力を用いて動作を開始してもよい。
図4は、別実施形態に係る車両用電源装置のバックアップ用電源からモータ制御装置及びドアロック制御装置に流れる電流を示すタイムチャートである。また、ドアロック制御装置24d,24pは、モータ制御装置23の動作停止に先駆けて、バックアップ用電源27から供給される電力を用いて動作を開始してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、
図1に示されるように、インバータ13、モータ制御装置23、及びドアロック制御装置24d,24pは、バックアップ用電源27と電気的に接続されている。本発明では、インバータ13等とバックアップ用電源27とを電気的に接続/切断するように切替可能なリレーを設けてもよい。この場合、例えば、衝突判定装置25から受信する衝突信号に基づいて、インバータ13等がバックアップ用電源27と電気的に接続されるように当該リレーを切り替えれば、車両1が障害物と衝突した場合のみ、バックアップ用電源27から電力を供給することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 車両
12 モータ
13 インバータ(車載機器)
14d,14p ドア
15d,15p ドアロック
2 車両用電源装置
21 駆動用電源
22 補機用電源
23 モータ制御装置
24d,24p ドアロック制御装置
25 衝突判定装置
27 バックアップ用電源