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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】殺菌装置および室内殺菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20231031BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20231031BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A61L9/20
F24F8/22
A61L2/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019151715
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021029502
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】今村 篤史
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130131(JP,A)
【文献】特表2014-508612(JP,A)
【文献】特開2017-104230(JP,A)
【文献】特開2019-072476(JP,A)
【文献】特開2006-231007(JP,A)
【文献】特開2009-082359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/20
F24F 8/22
F24F 8/80
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配置され、ピーク波長222nmの紫外線を放射する第一の光源と、前記第一の光源から放射された紫外線のうち波長222nmの紫外線を透過する光学フィルタと、前記第一の光源から放射された紫外線を減光させる減光部と、を有する第一の光源部と、
前記筐体内に配置され、波長190nm~300nmの範囲内に含まれる紫外線を放射する第二の光源を有する第二の光源部と、を備え、
前記第一の光源部は、上下に区画した空間のうち側空間に、前記第一の光源から放射され前記光学フィルタおよび前記減光部を通過させた紫外線を照射し、
前記第一の光源部は、さらに、前記上下に区画した空間のうち上側空間に、前記第一の光源から放射され前記光学フィルタおよび前記減光部の少なくとも一方を通過していない紫外線を照射し、
前記第二の光源部は、前記側空間のみに、前記第二の光源から放射された紫外線を照射することを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記第一の光源は、常時点灯していることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記減光部は、複数の開口部を有する板状部材により構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記第一の光源は、前記筐体内において当該筐体の上壁の下面に取り付けられ、下方向に紫外線を放射し、
前記第二の光源は、前記筐体内において当該筐体の側面に取り付けられ、水平方向に紫外線を放射し、
前記筐体の前記第一の光源が取り付けられた面に対向する位置に、前記光学フィルタおよび前記減光部が配置され、
前記筐体の前記第二の光源が取り付けられた面と対向する面に、開口部が形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記第一の光源は、Kr-Clエキシマランプであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記第二の光源は、低圧水銀ランプであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記第二の光源は、Kr-Clエキシマランプであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項8】
室内の上方に設置された請求項1からのいずれか1項に記載の殺菌装置を備えることを特徴とする室内殺菌システム。
【請求項9】
前記殺菌装置は、前記室内の天井および壁の上方の少なくとも一方に取り付けられていることを特徴とする請求項に記載の室内殺菌システム。
【請求項10】
前記室内の壁および床の少なくとも一部に紫外線を反射させる紫外線反射体を備えることを特徴とする請求項またはに記載の室内殺菌システム。
【請求項11】
前記紫外線反射体は、フッ素樹脂により構成されていることを特徴とする請求項10に記載の室内殺菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を用いて空間や物品の表面等を殺菌する殺菌装置および室内殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線光源を備える室内殺菌装置として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、水平方向に紫外線を放射する水平照射ユニットと、斜め下方および下方に紫外線を放射する下方照射ユニットとを有する室内殺菌装置を室内の壁に取付け、水平照射ユニットと下方照射ユニットとから放射される紫外線により室内全域を殺菌するようにした技術である。ここで、水平照射ユニットおよび下方照射ユニットは、波長254nmの紫外線を照射する。波長254nmの紫外線は人体に有害であるため、上記特許文献1に記載の技術では、室内に人がいるときは、下方照射ユニットを消灯することにより、紫外線照射による人体への影響を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-130131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、空気清浄目的で用いられる殺菌装置は、人が存在する室内に設置されることが多い。上記特許文献1に記載の技術では、下方照射ユニットを頻繁に消灯する必要があり、効率的に室内の空気を殺菌することができない。
そこで、本発明は、室内に人が存在する場合であっても、人体に対して紫外線による影響を及ぼすことなく、室内の空気を効果的に殺菌することができる殺菌装置および室内殺菌システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る殺菌装置の一態様は、筐体と、前記筐体内に配置され、ピーク波長222nmの紫外線を放射する第一の光源と、前記第一の光源から放射された紫外線のうち波長222nmの紫外線を透過する光学フィルタと、前記第一の光源から放射された紫外線を減光させる減光部と、を有する第一の光源部と、前記筐体内に配置され、波長190nm~300nmの範囲内に含まれる紫外線を放射する第二の光源を有する第二の光源部と、を備え、前記第一の光源部は、上下に区画した空間のうち少なくとも下側空間に、前記第一の光源から放射され前記光学フィルタおよび前記減光部を通過させた紫外線を照射し、前記第二の光源部は、前記上下に区画した空間のうち上側空間のみに、前記第二の光源から放射された紫外線を照射する。
【0006】
このように、上下に区画した空間にそれぞれ別々の紫外線を照射して殺菌を行うことができる。ここで、少なくとも下側空間には、減光された波長222nmの紫外線を照射することができる。したがって、人が存在し得る空間には、人体に対して影響を及ぼさない紫外線を照射して殺菌を行うことができる。また、人が存在しない上側空間には、波長190nm~300nmの範囲内で、人体に影響を与える可能性のある波長範囲を含む紫外線を照射する。したがって、第二の光源部には人体に影響を与える可能性のある波長範囲の紫外線を除くための機構が必要なく、安価で簡易な構成とすることができる。
【0007】
また、上記の殺菌装置において、前記第一の光源は、常時点灯していてもよい。第一の光源部から下側空間に放射される紫外線は、人体に影響を及ぼさない紫外線である。そのため、下側空間に人が存在する場合であっても、第一の光源を消灯する必要はなく、常時点灯しておくことができる。したがって、下側空間における人体の有無に応じて第一の光源の点灯制御を行う必要がない。
さらに、上記の殺菌装置において、前記減光部は、複数の開口部を有する板状部材により構成されていてもよい。この場合、簡易な構成で第一の光源から放射された紫外線を減光することができる。また、開口部の数や大きさによって減光部を通過する紫外線の線量を調整することができるので、下側空間への紫外線の照射線量を調整し、人体の被爆量を適切に調整することができる。
【0008】
また、上記の殺菌装置において、前記第一の光源部は、前記上側空間に、前記第一の光源から放射され前記光学フィルタおよび前記減光部の少なくとも一方を通過していない紫外線を照射してもよい。このように、上側空間には、第一の光源部において適切に人体に影響を及ぼさない紫外線とされる前の光を照射してもよい。この場合、上側空間における紫外線の照射線量を増やすことができ、殺菌効果を高めることができる。
さらに、上記の殺菌装置において、前記第一の光源は、前記筐体内において当該筐体の上壁の下面に取り付けられ、下方向に紫外線を放射し、前記第二の光源は、前記筐体内において当該筐体の側面に取り付けられ、水平方向に紫外線を放射し、前記筐体の前記第一の光源が取り付けられた面に対向する面に、前記光学フィルタおよび前記減光部が配置され、前記筐体の前記第二の光源が取り付けられた面と対向する面に、開口部が形成されていてもよい。この場合、上側空間と下側空間とを適切に区画して別々の紫外線を照射することができる。
【0009】
また、上記の殺菌装置において、前記第一の光源は、Kr-Clエキシマランプとすることができる。この場合、人体の細胞の核には到達しないが細菌の細胞の核には到達する波長222nmにピークを有するスペクトルとすることができる。
さらに、上記の殺菌装置において、前記第二の光源は、低圧水銀ランプとすることができる。この場合、第二の光源部を安価に構成することができる。
また、上記の殺菌装置において、前記第二の光源は、Kr-Clエキシマランプであってもよい。この場合、第二の光源部から人体への影響の少ない紫外線を放射することができる。
【0010】
さらにまた、本発明に係る室内殺菌システムの一態様は、室内の上方に設置された上記のいずれかの殺菌装置を備える。このように、上記の殺菌装置を室内の上方に設置することで、室内を人が存在しない上側空間と人が存在し得る下側空間とに区画して別々の紫外線を照射し、殺菌を行うことができる。下側空間には、減光された波長222nmの紫外線を照射することができるので、室内に人が存在する場合であっても、人体に対して紫外線による影響を及ぼすことなく、室内の空気を効果的に殺菌することができる。
また、上記の室内殺菌システムにおいて、前記殺菌装置は、前記室内の天井および壁の上方の少なくとも一方に取り付けられていてもよい。この場合、室内に存在する人体に影響を及ぼすことなく適切に室内を殺菌することができる。
【0011】
さらに、上記の室内殺菌システムにおいて、前記室内の壁および床の少なくとも一部に紫外線を反射させる紫外線反射体を備えていてもよい。この場合、光源部から放射された紫外線を紫外線反射体によって反射させることができるので、光源部から直接紫外線が照射されないエリアに対して間接的に紫外線を照射することができ、より効果的に殺菌することができる。
また、上記の室内殺菌システムにおいて、前記紫外線反射体は、フッ素樹脂により構成されていてもよい。この場合、適切に紫外線を反射させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、室内に人が存在する場合であっても、人体に対する紫外線による影響を及ぼすことなく、室内の空気を効果的に殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態における室内殺菌システムを示す模式図である。
図2】紫外線のDNAへの吸収レベルを示す図である。
図3】Kr-Clエキシマランプのスペクトルを示す図である。
図4図3の一部を拡大した図である。
図5】減光部の一例である。
図6】減光部の一例である。
図7】殺菌装置の構成例を示す斜視図である。
図8】殺菌装置の構成例を示す断面図である。
図9】エキシマランプの構成例を示す斜視図である。
図10】エキシマランプの構成例を示す分解斜視図である。
図11】殺菌装置の別の構成例を示す断面図である。
図12】殺菌装置の別の構成例を示す断面図である。
図13】殺菌装置の設置例を示す側面図である。
図14】殺菌装置の設置例を示す上面図である。
図15】殺菌装置の別の設置例を示す上面図である。
図16】殺菌装置の別の設置例を示す上面図である。
図17】室内殺菌システムの別の例を示す模式図である。
図18】室内殺菌システムの別の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における室内殺菌システム1000を示す模式図である。
この室内殺菌システム1000は、紫外線を用いて室内の空気や物品の表面に存在する細菌やウイルスなどを殺菌するシステムである。当該室内は、例えば病院やトイレなどとすることができる。
図1に示すように、室内殺菌システム1000は、殺菌装置100を備える。殺菌装置100は、室内200の上方(例えば、人の身長よりも高い部位)に設置され、上下に区画した人が存在しない空間と人が存在し得る空間とに別々の紫外光を照射して、空間や物品の表面を殺菌する。具体的には、殺菌装置100は、人が存在しない第一の空間201に対して、人体に影響を及ぼすおそれのある波長範囲を含む紫外光を照射して殺菌を行い、人の存在し得る空間に対しては、人体に影響を及ぼさない紫外光を照射して殺菌を行う。
【0015】
殺菌装置100は、第一の光源101と、第二の光源102と、光学フィルタ103と、減光部104と、を備える。
第一の光源101は、殺菌作用を有する紫外線UV1を下方向に放射する。具体的には、紫外線UV1は、222nmをピーク波長とする紫外線である。例えば、第一の光源101は、Kr-Cl(クリプトン-塩素)エキシマランプとすることができる。
第二の光源102は、殺菌作用を有する紫外線UV2を水平方向に放射する。具体的には、紫外線UV2は、190nm~300nmの波長範囲の紫外線である。例えば、第二の光源102は、低圧水銀ランプであり、波長254nmの紫外線を放射することができる。
【0016】
図2は、紫外線のDNAへの吸収レベルを示す図である。この図2は、DNAを構成する塩基の1つであるチミン(THYMINE)の吸収レベルを示す。図2において、横軸は紫外線の波長、縦軸は吸収係数である。
この図2に示すように、波長222nmと波長254nmとでは、DNAの吸収係数は同等である。つまり、波長222nmの紫外線を照射した場合と、波長254nmの紫外線を照射した場合とでは、細菌細胞内のDNAへ作用するレベルは同等であり、殺菌効果(殺菌スピード)も同レベルであることがわかる。
【0017】
一方で、波長254nmの紫外線は、人体の皮膚の表皮まで透過し、生細胞にダメージを与えることが知られている。これに対して、波長222nmの紫外線は、波長254nmの紫外線に比べてタンパク質への吸収係数が高く、人体の皮膚や目の最表面にて吸収される。そのため、波長222nmの紫外線を人体に照射したとしても、例えば皮膚がんや白内障などといった影響を及ぼすおそれがない。
つまり、波長222nmの紫外線は、人体(肌や目など)に影響を及ぼすことなく殺菌効果が得られる光である。
【0018】
そこで、本実施形態では、上下に区画した空間のうち、少なくとも人301が存在し得る下側空間である第二の空間202には、波長222nmの紫外線を照射するようにする。一方、人301が存在しない上側空間である第一の空間201には、人体への影響にかかわらず殺菌効果が得られる紫外線を照射すればよい。したがって、本実施形態では、第一の空間201には190nm~300nmの紫外線を照射する。
【0019】
図2に示すように、波長300nmを超える紫外線に対するDNAの吸収係数は0となる。つまり、波長300nmを超える紫外線には殺菌効果がない。そのため、上述したように、第二の光源102が放射する紫外線の波長範囲の上限を300nmとしている。一方で、波長190nm未満の紫外線(真空紫外光)は、オゾンを発生させることが知られている。そのため、上述したように、第二の光源102が放射する紫外線の波長範囲の下限を190nmとしている。
【0020】
図1に戻って、光学フィルタ103は、第一の光源101から放射される紫外線UV1のうち、不要な波長をカットする光学フィルタである。具体的には、光学フィルタ103は、波長222nm以外の紫外線をカットし、波長222nmの紫外線を透過する。
図3に示すように、Kr-Clエキシマランプのスペクトルは、人体に影響を及ぼさない波長222nmにピークを持つが、図4図3の破線Aで囲む部分の拡大図を示すように、波長222nm以外の光も僅かに含む。つまり、Kr-Clエキシマランプは、人体に影響を及ぼし得る波長範囲の光を僅かに放射する。
光学フィルタ103は、第一の光源101から放射される紫外線UV1のうち、波長222nmの紫外線UV1’のみを透過して出射する。
【0021】
減光部104は、第一の光源101から放射される紫外線UV1を減光する。本実施形態では、減光部104は、第一の光源101から光学フィルタ103を介して放射される紫外線UV1’を減光する。減光部104は、例えば、石英ガラスに透明な多層膜を蒸着することで形成することができる。
この減光部104は、例えば図5に示すように、複数の開口部104aを有する板状部材とすることができる。ここで、開口部104aの断面形状は、図5に示すように円形状であってもよいし、図6に示すように矩形状であってもよい。また、減光部104における開口度(板状部材の全面積に対する開口部104aの面積の割合)は、減光部104により減光された後の紫外線UV”の照射線量が所定値以下、例えば、人体の被ばく量として許容される最大値25mJ/cm以下となるように調整する。
【0022】
このように、殺菌装置100は、ピーク波長222nmの紫外線UV1を放射する第一の光源101と、第一の光源101から放射された紫外線UV1のうち波長222nmの紫外線UV1’を透過する光学フィルタ103と、第一の光源101から放射された紫外線UV1を減光させる減光部104と、を有する第一の光源部と、波長190nm~300nmの範囲内に含まれる紫外線UV2を放射する第二の光源102を有する第二の光源部と、を備える。
そして、第一の光源部は、室内200の上下に区画された空間のうち、下側空間である第二の空間202に、第一の光源101から放射され光学フィルタ103および減光部104を通過した紫外線UV1”を照射する。第二の光源部は、室内200の上下に区画された空間のうち、上側空間である第一の空間201のみに、第二の光源102から放射された紫外線UV2を照射する。
【0023】
また、第一の光源部は、図1に示すように光学フィルタ103が第一の光源101から離間して配置されている場合、第一の空間201に、第一の光源101から放射された紫外線UV1を照射することができる。さらに、第一の光源部は、光学フィルタ103と減光部104とが離間して配置されている場合、第一の空間201に、第一の光源101から放射され光学フィルタ103を透過した紫外線UV1’を照射することができる。
つまり、本実施形態では、人の存在しない第一の空間201では、波長222nmの紫外線と波長254nmの紫外線とが照射され、人体に影響を及ぼすおそれのある波長範囲を含む紫外線により殺菌が行われる。一方、第二の空間202では、減光された波長222nmの紫外線のみが照射され、人体に影響を及ぼさない波長を有する紫外線により殺菌が行われる。この第二の空間202では、人体に影響を及ぼさない照射線量まで低減された222nmの紫外線が照射されるため、第二の空間202に人が存在している間も紫外線照射を停止する必要がなく、第一の光源101は常時点灯させることができる。
【0024】
図7は、殺菌装置100の具体的構成の一例である。
この図7に示すように、殺菌装置100は、開口部105aを有する筐体105を備え、筐体105内において当該筐体105の上壁の下面に第一の光源101を取り付け、筐体105内において当該筐体105の側面に第二の光源102を取り付けた構成とすることができる。この場合、図8に示すように、第一の光源101は下方向に紫外線を放射し、第二の光源102は水平方向に紫外線を放射する。
【0025】
筐体105の第一の光源101が取り付けられた面に対向する位置には、光学フィルタ103および減光部104を配置することができる。例えば、光学フィルタ103は、第一の光源101の光出射側に取り付けることができる。また、減光部104は、筐体105の下面に複数の開口部を形成した構成とすることができる。
また、開口部105aは、筐体105の第二の光源102が取り付けられた面と対向する面に形成することができる。
【0026】
図9は、光学フィルタ103を取り付けた第一の光源101の概念図である。図10は、図9に示す光学フィルタ103付きの第一の光源101の分解斜視図である。
図10に示すように、第一の光源101は、筐体111と、蓋部112と、を備える。筐体111内には、互いに離間して配置される電極ブロック121と、2本のエキシマランプ122と、が格納されている。エキシマランプ122は、電極ブロック121に設けられた溝内に載置され、固定部材123により電極ブロック121に密着され、固定されている。なお、エキシマランプ122の固定方法は上記に限定されない。
また、蓋部112の中央部には、光学フィルタ103が取り付けられている。例えば、蓋部112の中央部に開口を設け、当該開口を光学フィルタ103で塞いだ構成とすることができる。
【0027】
エキシマランプ122は、石英などの紫外線を透過する材料により構成された発光管を有する。発光管は、一端が封止され、管内が真空排気された後、放電空間に発光ガスが封入され、他端が封止される。発光ガスは、Kr-Clとすることができる。この場合、エキシマランプ122はピーク波長222nmの紫外線を放射する。
電極ブロック121に、点灯電源から50kHz~5MHz程度の高周波の交流の高電圧が印加されると、発光管を介して、この高電圧が印加される。このとき、発光ガスが封入されている放電空間内でプラズマが生じ、発光ガスの原子が励起されてエキシマ状態となり、この原子が基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる。
【0028】
図7に示す殺菌装置100は、図9に示す光学フィルタ103付きの第一の光源101を、蓋部112を下方に向けて、筐体105の上壁の下面に取り付けたものである。
このような構成により、図8に示すように、第一の光源101から放射され光学フィルタ103を介して放射された波長222nmの紫外線UV1’は、減光部104を通過することによりその照射線量が低減され、減光された波長222nmの紫外線UV1”として筐体105から下方向に照射される。また、第二の光源102から放射された波長254nmの紫外線UV2は、筐体105の開口部105aから水平方向に照射される。
【0029】
なお、図8に示す殺菌装置100では、第二の光源102が、波長254nmの紫外線UV2を放射する低圧水銀ランプである場合について説明したが、第二の光源102は、殺菌効果を有する190nm~300nmの波長範囲の紫外線を放射する光源であればよく、ピーク波長222nmの紫外線を放射するKr-Clエキシマランプであってもよい。つまり、図11に示すように、Kr-Clエキシマランプである第二の光源102を筐体105の側面に取り付け、ピーク波長222nmの紫外線UV2’を水平方向に放射してもよい。このように、第二の光源102は、第一の光源101と同一構成を有する光源であってもよい。ただし、Kr-Clエキシマランプよりも低圧水銀ランプのほうが安価であるため、第二の光源102として低圧水銀ランプを用いた方が、殺菌装置100を安価に構成することができる。
【0030】
また、図8に示す殺菌装置100では、第一の光源101に光学フィルタ103が取り付けられている場合について説明したが、図12に示すように、光学フィルタ103は第一の光源101から離間して、減光部104の近傍に配置されていてもよい。
さらに、図8図11および図12に示す殺菌装置100では、筐体105の下面が減光部104を構成する場合について説明したが、筐体105とは別に減光部104を設けてもよい。例えば、筐体105の第一の光源101が取り付けられた面に開口部を形成し、筐体105の第一の光源101が取り付けられた面と対向する位置に減光部104を配置するようにしてもよい。
【0031】
殺菌装置100は、図13に室内200の側面図を示すように、室内200の壁の上方に設置することができる。このとき、殺菌装置100は、図14に室内200の上面図を示すように、室内200の壁の中央部に設置することができる。
この場合、殺菌装置100は、図13および図14に示すように、当該殺菌装置100が設置された壁に対向する壁に向けて水平方向に紫外線UV2を照射する。つまり、殺菌装置100は、人が存在しない第一の空間201に、波長254nmの紫外線UV2を照射する。また、殺菌装置100は、図13に示すように、下方向に向けて紫外線UV1”を照射する。つまり、殺菌装置100は、人が存在する第二の空間202に、減光された波長222nmの紫外線UV1”を照射する。
図13に示すように、殺菌装置100が図8に示す構成を有する場合、減光部104(筐体105の下面)によって室内200が第一の空間201と第二の空間202とに区画される。
【0032】
なお、殺菌装置100の設置数および設置位置は、図14に示す設置数および設置位置に限定されない。例えば殺菌装置100は、室内200の天井から吊り下げてもよい。この場合、例えば図15に示すように、4台の殺菌装置100を天井の中央に設置し、四方の壁に向けて紫外線UV2を照射するようにしてもよい。また、図16に示すように、4台の殺菌装置100を天井の中央に設置し、各コーナーに向けて紫外線UV2を照射するようにしてもよい。ただし、殺菌装置100を天井の中央に設置する場合、天井に設置された照明と干渉しない位置に設置する。
【0033】
以上説明したように、本実施形態における室内殺菌システム1000は、室内200の上方に設置された殺菌装置100を備える。殺菌装置100は、筐体105と、筐体105内に配置された第一の光源部および第二の光源部と、を備える。
第一の光源部は、ピーク波長222nmの紫外線を放射する第一の光源101と、第一の光源101から放射された紫外線のうち波長222nmの紫外線を透過する光学フィルタ103と、第一の光源101から放射された紫外線を減光させる減光部104と、を備える。また、第二の光源部は、波長190nm~300nmの範囲内に含まれる紫外線を放射する第二の光源102を備える。そして、第一の光源部は、上下に区画した空間のうち下側空間である第二の空間202に、第一の光源101から放射され光学フィルタ103および減光部104を通過した紫外線UV1”を照射し、第二の光源部は、上下に区画した空間のうち上側空間である第一の空間201のみに、第二の光源102から放射された紫外線UV2を照射する。
【0034】
ここで、第一の光源101は、筐体105内において当該筐体105の上壁の下面に取り付けられ、下方向に紫外線UV1を放射する。また、第二の光源102は、筐体105内において当該筐体105の側面に取り付けられ、水平方向に紫外線UV2を放射する。そして、筐体105の第一の光源101が取り付けられた面に対向する位置に、光学フィルタ103および減光部104が配置され、筐体105の第二の光源102が取り付けられた面と対向する面には、開口部105aが形成されている。
【0035】
これにより、殺菌装置100は、上下に区画した空間にそれぞれ別々の紫外線を照射して殺菌を行うことができる。具体的には、人が存在しない第一の空間201には、波長190nm~300nmの範囲内で、人体に影響を与える可能性のある波長範囲を含む紫外線を照射し、人が存在し得る第二の空間202には、人体に対して影響を及ぼさない線量に調整された波長222nmの紫外線を照射することができる。したがって、室内200に人が存在する場合であっても、人体に対して紫外線による影響を及ぼすことなく、室内200の空気を効果的に殺菌することができる。
【0036】
また、図8に示すように、光学フィルタ103を第一の光源101の光出射側に取り付け、筐体105の下面で減光部104を構成した場合、第一の光源部は、第一の空間201に、第一の光源101から放射され減光部104を通過していない紫外線UV1’を照射することができる。この場合、第一の空間201には、第一の光源部からの紫外線UV1’と第二の光源部からの紫外線UV2とが照射されることになり、紫外線UV2のみを照射する場合と比較して第一の空間201への照射線量を増やすことができ、殺菌効果を高めることができる。
【0037】
また、例えば図12に示すように、光学フィルタ103を第一の光源101に対向する位置に、第一の光減101から離間して配置した場合、第一の光源部は、第一の空間201に、第一の光源101から放射された紫外線UV1を照射することができる。この場合にも、上述した図8に示す構成と同様に、第一の空間201への紫外線の照射線量を増やすことができ、殺菌効果を高めることができる。
【0038】
また、第一の光源部から第二の空間202に放射される紫外線UV1”は、人体に影響を及ぼさない紫外線であるため、第一の光源101は、第二の空間202における人体の有無にかかわらず常時点灯しておくことができる。したがって、第一の光源101の点灯/消灯の制御が必要なく、構成を簡略化することができる。
【0039】
さらに、減光部104は、図5および図6に示すように、複数の開口部104aを有する板状部材により構成することができる。このように、簡易な構成で第一の光源101から放射された紫外線を減光することができる。また、開口部104aの数や大きさによって減光部104を通過する紫外線の線量を調整することができるので、下側空間である第二の空間202への紫外線UV1”の照射線量を、人体の被爆量として許容される量に適切に調整することができる。
【0040】
また、減光部104は、図5および図6に示すように複数の開口部104aを有する板状部材により構成である場合、光学フィルタ103に入射角0°で入射して光学フィルタ103から出射される光のみを通過させることができる。
光学フィルタ103は、光線の入射角によって透過率が異なるという特性を有する。具体的には、波長220nmの紫外光は、入射角0°で光学フィルタ103に入射させた場合、8割が透過するが、入射角40°以上では、ほぼ透過率は0となる。逆に、入射角40°以上では、人体に影響を与える可能性のある、波長230nm以上の紫外光が透過するようになる。
したがって、減光部104が、光学フィルタ103に垂直に入射された紫外線を通過させる構成であれば、波長222nmの紫外線のみを第二の空間202に照射することができ、人体に影響を与える不要な紫外線が第二の空間202に到達することを適切に防止することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態における室内殺菌システム1000では、人の存在しない空間に対しては、人体に影響を及ぼす可能性のある波長範囲を含む紫外線を高い線量で照射し、人の存在する可能性の高い空間に対しては、人体に影響を及ぼす可能性のある波長範囲を除いた紫外線を低い線量で照射することができる。したがって、室内に人が存在する場合であっても、人体に対して紫外線による影響を及ぼすことなく、室内の空気を効果的に殺菌することができる。
【0042】
(変形例)
上記実施形態における室内殺菌システム1000は、図17に示すように、室内200の壁の少なくとも一部に、紫外線を反射させる紫外線反射体210を備えていてもよい。紫外線反射体210は、フッ素樹脂により構成することができる。例えば、紫外線反射体210は、壁面にフッ素樹脂をスプレーすることで形成することができる。
紫外線反射体210は、第一の空間201において、殺菌装置100から水平方向に放射される紫外線UV2が照射される壁に設けることが好ましい。また、紫外線反射体210は、第二の空間202の壁および床に設けることが好ましい。これにより、殺菌装置100から下方向に放射される紫外線UV1”は、第二の空間202において紫外線反射体210によって反射され、紫外線UV1”が真上から照射された場合に影になるエリアにも紫外線UV1”を照射することができる。したがって、例えば机302の天板の裏に付着した細菌等を殺菌することができる。
【0043】
また、上記実施形態における殺菌装置100は、図18に示すように、減光部104が第一の光源101の直前に配置されていてもよい。この場合、第一の光源101から放射された紫外線UV1は、減光部104により減光された後、光学フィルタ103を透過し、減光された波長222nmの紫外線UV1”として放射される。つまり、第一の光源部から第二の空間202に対して紫外線UV1”が照射される。そして、第一の空間201には、第一の光源101から放射された紫外線UV1と、第一の光源101から放射され減光部104を通過した紫外線と、第二の光源102から放射された紫外線UV2とが照射される。
【0044】
このように、第一の光源部は、第一の空間201に、第一の光源101から放射され光学フィルタ103を透過していない紫外線を照射してもよい。この場合にも、上述した図1に示す殺菌装置100と同様の効果が得られる。
また、この場合、減光部104は、第一の光源101から放射された紫外線UV1を、光学フィルタ103に垂直に(入射角0°で)入射させることができる。したがって、波長222nmの紫外線を適切に第二の空間202に照射し、人体に影響を与えるような不要な紫外線が第二の空間202に照射されることを防止することができる。
【0045】
さらに、上記実施形態においては、第一の光源101を常時点灯させる場合について説明したが、第一の光源101は必要に応じて消灯させてもよい。例えば室内200に人感センサ等を設け、第二の空間202内に人が存在することを検知した場合に、第一の光源101を消灯させてもよい。
【符号の説明】
【0046】
100…殺菌装置、101…第一の光源、102…第二の光源、103…光学フィルタ、104…減光部、104a…開口部、105…筐体、105a…開口部、111…筐体、112…蓋部、121…電極ブロック、122…エキシマランプ、123…固定部材、200…室内、1000…室内殺菌システム
図1
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