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特許7375383溝入れ工具のヘッド構造および溝入れ工具
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  • 特許-溝入れ工具のヘッド構造および溝入れ工具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】溝入れ工具のヘッド構造および溝入れ工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/10 20060101AFI20231031BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20231031BHJP
   B23B 29/12 20060101ALI20231031BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B23B27/10
B23B27/04
B23B29/12 Z
B23B27/16 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019159381
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021037568
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】木曽 拓真
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 翔太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 辰伍
(72)【発明者】
【氏名】米澤 潤
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-149653(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221162(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0107540(KR,A)
【文献】特許第7183916(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/10
B23B 27/04
B23B 29/12
B23B 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切れ刃を有する切削インサートを保持可能なヘッド部材と、
前記ヘッド部材が着脱可能に装着されるホルダと、
前記ホルダの内部および前記ヘッド部材の内部にわたって延びるクーラント流通部と、を備え、
前記ヘッド部材は、板状のヘッド本体を有し、
前記ヘッド本体は、
上顎部と、
下顎部と、
上下方向において、前記上顎部の先端側部分と前記下顎部の先端側部分との間に位置し、前記切削インサートが着脱可能に装着されるインサート取付座と、を有し、
前記ホルダは、前記ヘッド本体の板面と接触する取付面を有し、
前記クーラント流通部は、
前記ホルダの外面に開口するクーラント受入口と、
前記ヘッド本体の外面に開口する複数のクーラント噴出口と、
前記クーラント受入口と各前記クーラント噴出口とを連通する複数のクーラント流路と、
前記クーラント流路を閉塞する栓部と、を有し、
前記クーラント流路は、
前記取付面に開口するホルダ側接続口と、
前記ヘッド本体の板面に開口し、前記ホルダ側接続口と接続されるヘッド側接続口と、を有し、
前記クーラント噴出口は、
前記ヘッド本体の先端面のうち前記上顎部に位置する部分に開口する第1クーラント噴出口と、
前記ヘッド本体の先端面のうち前記下顎部に位置する部分に開口する第2クーラント噴出口と、を有し、
前記ホルダ側接続口は、
前記ヘッド本体の板面のうち前記上顎部に位置する部分と対向する第1ホルダ側接続口と、
前記ヘッド本体の板面のうち前記下顎部に位置する部分と対向する第2ホルダ側接続口と、を有し、
前記ヘッド側接続口は、
前記ヘッド本体の板面のうち前記上顎部に位置する部分に配置され、前記第1クーラント噴出口と連通する第1ヘッド側接続口と、
前記ヘッド本体の板面のうち前記下顎部に位置する部分に配置され、前記第2クーラント噴出口と連通する第2ヘッド側接続口と、を有し、
前記栓部は、前記第1ホルダ側接続口、前記第2ホルダ側接続口、前記第1ヘッド側接続口および前記第2ヘッド側接続口のいずれかに取り外し可能に設けられる、
溝入れ工具のヘッド構造。
【請求項2】
前記栓部は、前記ホルダ側接続口および前記ヘッド側接続口のいずれかに着脱可能に螺着される、
請求項1に記載の溝入れ工具のヘッド構造。
【請求項3】
前記クーラント受入口は、複数設けられ、
複数の前記クーラント流路は、各前記クーラント受入口と連通する、
請求項1または2に記載の溝入れ工具のヘッド構造。
【請求項4】
前記クーラント流通部は、複数の前記クーラント受入口同士を連通する連通路を有する、
請求項3に記載の溝入れ工具のヘッド構造。
【請求項5】
前記クーラント流路は、
前記ホルダの内部に位置するホルダ内流路と、
前記ヘッド本体の内部に位置するヘッド内流路と、を有し、
前記ヘッド内流路の内径が、前記ホルダ内流路の内径よりも小さい、
請求項1から4のいずれか1項に記載の溝入れ工具のヘッド構造。
【請求項6】
複数の前記クーラント流路のうち、少なくとも1つの前記クーラント流路の前記ヘッド内流路は、
互いに異なる方向に延びる複数のストレート流路部と、
複数の前記ストレート流路部同士を繋ぐ屈曲流路部と、を有する、
請求項5に記載の溝入れ工具のヘッド構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の溝入れ工具のヘッド構造の、前記ヘッド部材、前記ホルダおよび前記クーラント流通部と、
前記ヘッド本体の前記インサート取付座に着脱可能に装着される前記切削インサートと、を備える、
溝入れ工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝入れ工具のヘッド構造および溝入れ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の溝入れ工具として、例えば特許文献1に記載の突切り工具ホルダが知られている。この突切り工具ホルダは、板状のホルダ本体を備える。ホルダ本体の切削工具座部(インサート取付座)には、切削工具(切削インサート)が受容される。ホルダ本体の端面には、上部出口開口および下部出口開口が設けられ、ホルダ本体の側面には、少なくとも1つの出口開口が設けられる。
【0003】
上部出口開口は、冷却潤滑剤ダクトから流出する冷却潤滑剤噴流を、切削工具の切削縁部に上方から導くことができるように配向される。下部出口開口は、冷却潤滑剤ダクトから流出する冷却潤滑剤噴流を、切削工具の切削縁部に下方から導くことができるように配向される。出口開口は、冷却潤滑剤ダクトから流出する冷却潤滑剤噴流を、切削工具の表面上に側方から導くことができるように配向される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6412580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の溝入れ工具では、クーラント流路が複数設けられており、また近年では3Dプリンタを利用するなどによりクーラント流路の構造が複雑化している。このため、溝入れ工具が装着される工作機械の種類等によっては、各クーラント流路のクーラント供給圧を高く維持することが難しく、切削時にクーラント供給圧が低下して、所望の部位にクーラントを安定して供給できないという問題がある。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、クーラント供給圧の低下を抑制でき、クーラントを所望の部位に安定して供給できる溝入れ工具のヘッド構造および溝入れ工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の溝入れ工具のヘッド構造の一つの態様は、切れ刃を有する切削インサートを保持可能なヘッド部材と、前記ヘッド部材が着脱可能に装着されるホルダと、前記ホルダの内部および前記ヘッド部材の内部にわたって延びるクーラント流通部と、を備え、前記ヘッド部材は、板状のヘッド本体を有し、前記ヘッド本体は、上顎部と、下顎部と、上下方向において、前記上顎部の先端側部分と前記下顎部の先端側部分との間に位置し、前記切削インサートが着脱可能に装着されるインサート取付座と、を有し、前記ホルダは、前記ヘッド本体の板面と接触する取付面を有し、前記クーラント流通部は、前記ホルダの外面に開口するクーラント受入口と、前記ヘッド本体の外面に開口する複数のクーラント噴出口と、前記クーラント受入口と各前記クーラント噴出口とを連通する複数のクーラント流路と、前記クーラント流路を閉塞する栓部と、を有し、前記クーラント流路は、前記取付面に開口するホルダ側接続口と、前記ヘッド本体の板面に開口し、前記ホルダ側接続口と接続されるヘッド側接続口と、を有し、前記クーラント噴出口は、前記ヘッド本体の先端面のうち前記上顎部に位置する部分に開口する第1クーラント噴出口と、前記ヘッド本体の先端面のうち前記下顎部に位置する部分に開口する第2クーラント噴出口と、を有し、前記ホルダ側接続口は、前記ヘッド本体の板面のうち前記上顎部に位置する部分と対向する第1ホルダ側接続口と、前記ヘッド本体の板面のうち前記下顎部に位置する部分と対向する第2ホルダ側接続口と、を有し、前記ヘッド側接続口は、前記ヘッド本体の板面のうち前記上顎部に位置する部分に配置され、前記第1クーラント噴出口と連通する第1ヘッド側接続口と、前記ヘッド本体の板面のうち前記下顎部に位置する部分に配置され、前記第2クーラント噴出口と連通する第2ヘッド側接続口と、を有し、前記栓部は、前記第1ホルダ側接続口、前記第2ホルダ側接続口、前記第1ヘッド側接続口および前記第2ヘッド側接続口のいずれかに取り外し可能に設けられる。
また本発明の溝入れ工具の一つの態様は、上述した溝入れ工具のヘッド構造の、前記ヘッド部材、前記ホルダおよび前記クーラント流通部と、前記ヘッド本体の前記インサート取付座に着脱可能に装着される前記切削インサートと、を備える。
【0008】
本発明では、複数のクーラント流路の途中に、栓部が取り外し可能にそれぞれ設けられる。このため、各クーラント流路から栓部を選択的に取り外すことにより、クーラントを噴出させたい所望の部位に限定してクーラントを供給できる。本発明によれば、クーラント流路が複数設けられていても、またクーラント流路の構造が複雑であっても、所望のクーラント流路のクーラント供給圧を高く維持することができる。すなわち、溝入れ工具が装着される工作機械の種類等に関わらず、クーラント供給圧の低下を抑制でき、クーラントを所望の部位に安定して供給できる。
【0009】
特に、溝入れ加工や突切り加工などを行う溝入れ工具においては、切削インサートが装着される板状のヘッド本体の厚さを小さく抑えることへの要求があり、これにともない、ヘッド本体の一対の板面以外の端面(先端面)などに開口するクーラント噴出口の開口径も小さくなる。この点、本発明によれば、クーラント流路を閉塞する栓部が、ホルダの取付面およびヘッド本体の板面のいずれかに取り外し可能に設けられるため、たとえヘッド本体の板厚が薄くされても、栓部を容易に設けることができる。
【0010】
具体的に本発明と異なり、例えば栓部をクーラント噴出口に設ける場合には、栓部を設けるためにクーラント噴出口の開口径を大きくする必要が生じ、その分ヘッド本体の板厚が大きくなったり、クーラント噴出口から栓部を取り外したときに、クーラント噴出口の開口径が大きいためにクーラントの噴出速度が低下したりクーラントが所望の部位以外の部位へ無駄に供給されたりする。一方、本発明によれば、クーラント噴出口の開口径を小さく抑えてヘッド本体の板厚も小さく抑えたまま、クーラント流路に栓部を簡単に設けることができる。つまりクーラント噴出口の開口形状に関わらず、栓部によってクーラント流路の連通および遮断を安定して切り替えることができる。
【0011】
上記溝入れ工具のヘッド構造において、前記栓部は、前記ホルダ側接続口および前記ヘッド側接続口のいずれかに着脱可能に螺着されることが好ましい。
【0012】
この場合、栓部は例えばイモネジ等であり、雄ネジ部を有する。ホルダ側接続口およびヘッド側接続口のいずれかは、雌ネジ部を有する。栓部の雄ネジ部は、ホルダ側接続口およびヘッド側接続口のいずれかの雌ネジ部に螺着される。上記構成によれば、栓部の着脱が容易である。
【0013】
上記溝入れ工具のヘッド構造において、前記クーラント受入口は、複数設けられ、複数の前記クーラント流路は、各前記クーラント受入口と連通することが好ましい。
【0014】
この場合、複数のクーラント受入口の中から選択的に1つのクーラント受入口を用いて、複数のクーラント流路にそれぞれクーラントを供給できる。ホルダにおけるクーラント受入口の配置の自由度が増し、各種の工作機械のクーラント供給手段のホース等を、複数のクーラント受入口のいずれかに容易に接続できる。
【0015】
上記溝入れ工具のヘッド構造において、前記クーラント流通部は、複数の前記クーラント受入口同士を連通する連通路を有することが好ましい。
【0016】
この場合、連通路を介して、複数のクーラント流路を各クーラント受入口に容易に連通させることができる。
【0017】
上記溝入れ工具のヘッド構造において、前記クーラント流路は、前記ホルダの内部に位置するホルダ内流路と、前記ヘッド本体の内部に位置するヘッド内流路と、を有し、前記ヘッド内流路の内径が、前記ホルダ内流路の内径よりも小さいことが好ましい。
【0018】
この場合、ヘッド内流路の内径がホルダ内流路の内径よりも小さいので、ホルダ内流路からヘッド内流路に流入したクーラントの流速が高まり、クーラント噴出口から噴出されるクーラントの噴出速度が高められる。
【0019】
上記溝入れ工具のヘッド構造において、複数の前記クーラント流路のうち、少なくとも1つの前記クーラント流路の前記ヘッド内流路は、互いに異なる方向に延びる複数のストレート流路部と、複数の前記ストレート流路部同士を繋ぐ屈曲流路部と、を有することとしてもよい。
【0020】
従来構造では、クーラント流路が屈曲していると、流路を流れるクーラントの流速が低下しやすかった。一方、本発明によれば、所望のクーラント流路のクーラント供給圧を高く維持できるため、上記構成のようにヘッド内流路が屈曲して形成されても、クーラントの流速が低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一つの態様の溝入れ工具のヘッド構造および溝入れ工具によれば、クーラント供給圧の低下を抑制でき、クーラントを所望の部位に安定して供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態の溝入れ工具のヘッド構造および溝入れ工具を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態の溝入れ工具のヘッド構造および溝入れ工具を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態の溝入れ工具のヘッド構造を示す分解斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態の溝入れ工具のヘッド構造を示す分解斜視図である。
図5図5は、ヘッド部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態の溝入れ工具1のヘッド構造10、および溝入れ工具1について、図面を参照して説明する。本実施形態の溝入れ工具1は、例えば溝入れ加工や突切り加工等の切削加工に用いられる切削工具である。溝入れ工具1は、旋盤などの工作機械の刃物台等に着脱可能に装着される。
【0024】
図1図4に示すように、溝入れ工具1のヘッド構造10は、切れ刃2aを有する切削インサート2を保持可能なヘッド部材3と、ヘッド部材3が着脱可能に装着されるホルダ4と、ホルダ4の内部およびヘッド部材3の内部にわたって延びるクーラント流通部5と、ヘッド部材3をホルダ4に固定する複数の固定ネジ8と、締結ネジ11と、を備える。ヘッド部材3は、板状のヘッド本体6を有する。ヘッド本体6は、切削インサート2が着脱可能に装着されるインサート取付座7を有する。ホルダ4は、ヘッド本体6の板面6aと接触する取付面4aを有する。ホルダ4は、軸状または柱状である。インサート取付座7は、ヘッド本体6をその厚さ方向に貫通するスリット状である。インサート取付座7は、ヘッド本体6の一対の板面6a,6bおよび端面6cに開口する。
溝入れ工具1は、ヘッド部材3と、ホルダ4と、クーラント流通部5と、切削インサート2と、複数の固定ネジ8と、締結ネジ11と、を備える。
【0025】
〔方向の定義〕
本実施形態では、XYZ直交座標系を設定して各構成を説明する。
Y軸方向は、ヘッド本体6の一対の板面6a,6bが向く方向であり、溝入れ工具1の幅方向(左右方向)である。幅方向は、第1方向と言い換えてもよい。幅方向のうち、ホルダの取付面4aからヘッド本体6へ向かう方向(+Y側)を右側と呼び、ヘッド本体6からホルダ4の取付面4aへ向かう方向(-Y側)を左側と呼ぶ。右側は、第1方向一方側と言い換えてもよい。左側は、第1方向他方側と言い換えてもよい。
【0026】
X軸方向は、Y軸方向と直交する方向である。X軸方向は、ホルダ4の中心軸が延びる方向であり、溝入れ工具1の軸方向(長手方向)である。軸方向は、第2方向と言い換えてもよい。ホルダ4は、工作機械の刃物台等に装着されるシャンク部4bと、軸方向においてシャンク部4bとは異なる位置に配置されるヘッド支持部4cと、を有する。軸方向のうち、シャンク部4bからヘッド支持部4cへ向かう方向(+X側)を先端側と呼び、ヘッド支持部4cからシャンク部4bへ向かう方向(-X側)を基端側と呼ぶ。本実施形態では切削インサート2が、ヘッド本体6の端面6cから切れ刃2aを先端側へ突出させた姿勢で、インサート取付座7に装着される。このため先端側は、突出方向と言い換えてもよい。先端側は、第2方向一方側と言い換えてもよい。基端側は、第2方向他方側と言い換えてもよい。
【0027】
Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向と直交する方向である。Z軸方向は、溝入れ工具1の上下方向(高さ方向)である。上下方向は、第3方向と言い換えてもよい。第3方向のうち、切削インサート2のすくい面2bが向く方向(+Z側)を上側と呼び、すくい面2bが向く方向とは反対方向(-Z側)を下側と呼ぶ。上側は、第3方向一方側と言い換えてもよい。下側は、第3方向他方側と言い換えてもよい。
【0028】
なお本実施形態において、左側、右側、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0029】
〔ホルダ〕
ホルダ4は、例えば鋼材等の金属製である。ホルダ4は、シャンク部4bと、ヘッド支持部4cと、取付面4aと、を有する。
シャンク部4bは、軸方向に延びる角柱状である。シャンク部4bは、ホルダ4のうち先端部以外の部分を構成する。シャンク部4bの中心軸に垂直な断面形状は、四角形状である。
【0030】
ヘッド支持部4cは、ホルダ4のうち先端部を構成する。ヘッド支持部4cの幅方向の長さは、シャンク部4bの幅方向の長さよりも大きい。ヘッド支持部4cの上下方向の長さは、シャンク部4bの上下方向の長さよりも大きい。ヘッド支持部4cの軸方向の長さは、シャンク部4bの軸方向の長さよりも小さい。ヘッド支持部4cは、凹部4dと、複数のネジ穴9と、を有する。
【0031】
凹部4dは、ヘッド支持部4cの右側を向く側面から左側に窪む凹状である。凹部4dは、ヘッド支持部4cにおいて右側、先端側および上側へ向けて開口する切り欠き状である。凹部4dは、右側を向く少なくとも1つの壁面を含む、複数の壁面(内壁面)により構成される。
【0032】
複数のネジ穴9は、第1ネジ穴9aと、第2ネジ穴9bと、第3ネジ穴9cと、を有する。
第1ネジ穴9aは、凹部4dにおいて右側を向く壁面に開口する。第1ネジ穴9aは、幅方向に延びる。第1ネジ穴9aは、互いに間隔をあけて複数設けられる。
第2ネジ穴9bは、ヘッド支持部4cの先端面に開口する。第2ネジ穴9bは、軸方向に延びる。第2ネジ穴9bは、互いに間隔をあけて複数設けられる。
第3ネジ穴9cは、ヘッド支持部4cの上面に開口する。第3ネジ穴9cは、下側へ向かうに従い左側へ向けて傾斜して延びる。
【0033】
取付面4aは、凹部4dにおいて右側を向く壁面に配置される。本実施形態では取付面4aが、凹部4dの右側を向く壁面全体を構成する。取付面4aは、幅方向に垂直な方向に拡がる平面状である。
【0034】
〔ヘッド部材〕
ヘッド部材3は、金属製である。ヘッド部材3は、例えば、3Dプリンタを用いて金属の粉末材料を溶融させながら積層させることにより形成されてもよい。ヘッド部材3は、ヘッド本体6と、ヘッド固定板3aと、を有する。
【0035】
ヘッド本体6は、平板状であり、一対の板面6a,6bが幅方向を向く。一対の板面6a,6bのうち、第1の板面6aは、左側を向く。一対の板面6a,6bのうち、第2の板面6bは、右側を向く。ヘッド本体6の端面6cは、先端側を向き、一対の板面6a,6b同士を接続する。端面6cは、先端面6cと言い換えてもよい。
【0036】
ヘッド本体6は、上顎部6dと、下顎部6eと、連結部6fと、インサート取付座7と、スリット部6gと、第1ネジ挿入孔6hと、を有する。
上顎部6dは、ヘッド本体6の上側部分を構成する。
下顎部6eは、ヘッド本体6の下側部分を構成する。下顎部6eは、上顎部6dの下側に、上顎部6dと上下方向に隙間をあけて配置される。下顎部6eの先端側の端部は、上顎部6dの先端側の端部よりも先端側に突出する。下顎部6eの基端側の端部は、上顎部6dの基端側の端部よりも基端側に突出する。下顎部6eの上下方向の長さは、上顎部6dの上下方向の長さよりも大きい。
【0037】
連結部6fは、上顎部6dの基端部の下部と、下顎部6eの先端部と基端部との間に位置する中間部分の上部と、を連結する。連結部6fは弾性変形可能である。連結部6fが弾性変形することで、上顎部6dの下面と下顎部6eの上面との間の上下方向の間隔が変化する。つまり連結部6fは、上顎部6dと下顎部6eとを弾性変形可能に連結する。
【0038】
インサート取付座7は、上下方向において、上顎部6dの先端側部分と下顎部6eの先端側部分との間に位置する。インサート取付座7は、ヘッド本体6において先端側、左側および右側に開口する切り欠き状またはスリット状である。図3図5に示すように、インサート取付座7は、押圧面7aと、台座面7bと、突き当て面7cと、を有する。
【0039】
押圧面7aは、上顎部6dの下面のうち先端側部分を構成する。押圧面7aは、軸方向(X軸方向)に垂直な断面形状が、下側へ向けて凸となるV字状である。押圧面7aは、切削インサート2の上面に接触する。押圧面7aは、切削インサート2を上側から押さえる。
台座面7bは、下顎部6eの上面のうち先端側部分を構成する。台座面7bは、軸方向に垂直な断面形状が、上側へ向けて凸となるV字状である。台座面7bは、切削インサート2の下面に接触する。台座面7bは、切削インサート2を下側から支持する。
突き当て面7cは、下顎部6eの上部に配置されて、先端側を向く。突き当て面7cは、軸方向に略垂直な平面状である。突き当て面7cは、切削インサート2の基端側を向く端面に接触する。突き当て面7cは、切削インサート2を基端側から支持する。
【0040】
スリット部6gは、インサート取付座7の基端側に配置され、インサート取付座7と連通する。スリット部6gは、上下方向において上顎部6dと下顎部6eとの間に位置する。スリット部6gは、ヘッド本体6において左側および右側に開口するスリット状である。
【0041】
第1ネジ挿入孔6hは、下顎部6eの基端部に配置される。第1ネジ挿入孔6hは、下顎部6eを幅方向(Y軸方向)に貫通する。つまり第1ネジ挿入孔6hは、下顎部6eをその板厚方向に貫通する。第1ネジ挿入孔6hは、複数設けられる。
【0042】
ヘッド固定板3aは、ヘッド本体6の左側を向く第1の板面6aから突出する。ヘッド固定板3aは、軸方向(X軸方向)に垂直な方向に拡がる平板状である。ヘッド固定板3aは、四角形板状である。ヘッド固定板3aの上下方向の長さは、ヘッド固定板3aの幅方向(Y軸方向)の長さよりも大きい。ヘッド固定板3aは、第2ネジ挿入孔3bを有する。
【0043】
第2ネジ挿入孔3bは、ヘッド固定板3aを軸方向に貫通する。つまり第2ネジ挿入孔3bは、ヘッド固定板3aをその板厚方向に貫通する。第2ネジ挿入孔3bは、複数設けられる。
【0044】
〔切削インサート〕
図1および図2に示すように、切削インサート2は、軸方向に延びる軸状または柱状である。切削インサート2は、略四角形柱状である。切削インサート2は、ヘッド本体6のインサート取付座7に着脱可能に装着される。切削インサート2は、すくい面2bと、逃げ面2cと、切れ刃2aと、を有する。
【0045】
すくい面2bは、切削インサート2の軸方向の端部に配置され、上側を向く。
逃げ面2cは、切削インサート2の軸方向の端部に配置され、先端側、左側および右側を向く。
切れ刃2aは、すくい面2bと逃げ面2cとの交差稜線に形成される。切れ刃2aは、ヘッド本体6から先端側、左側および右側に突出して配置される。本実施形態では切れ刃2aが、正面刃と、一対の側面刃と、を有する。正面刃は、幅方向(Y軸方向)に延びる。一対の側面刃は、正面刃の幅方向の両端部に接続し、該端部から基端側へ向けて延びる。このため切れ刃2aは、上面視で略コ字状である。
本実施形態では切削インサート2が、すくい面2b、逃げ面2cおよび切れ刃2aの組を、切削インサート2の軸方向の両端部に一対有する。
【0046】
〔クーラント流通部〕
クーラント流通部5は、図示しない工作機械のクーラント供給手段のホース等に接続される。クーラント流通部5の内部には、クーラント供給手段から供給されたクーラントが流通する。図1および図2に示すように、本実施形態ではクーラント流通部5が、ヘッド支持部4cの内部およびヘッド本体6の内部にわたって延びる。クーラント流通部5は、クーラント受入口5a,5bと、クーラント噴出口5c,5dと、クーラント流路5e,5fと、栓部5g,5hと、連通路5iと、を有する。
【0047】
クーラント受入口5a,5bは、ホルダ4の外面に開口する。本実施形態ではクーラント受入口5a,5bが、ヘッド支持部4cの外面に開口する。クーラント受入口5a,5bのいずれか一方には、図示しない工作機械のクーラント供給手段のホース等が接続され、他方はプラグ等の栓部材により塞がれる。クーラント受入口5a,5bは、クーラント流通部5の流路の一部を構成し、クーラント流通部5の流路の中で最も内径が大きい。クーラント受入口5a,5bは、複数設けられる。クーラント受入口5a,5bのうち、第1クーラント受入口5aは、ヘッド支持部4cの左側を向く側面に開口し、幅方向に延びる。クーラント受入口5a,5bのうち、第2クーラント受入口5bは、ヘッド支持部4cの下面に開口し、上下方向に延びる。
【0048】
クーラント噴出口5c,5dは、ヘッド本体6の外面に開口する。本実施形態ではクーラント噴出口5c,5dが、ヘッド本体6の先端面6cに開口する。クーラント噴出口5c,5dは、クーラント流通部5の流路の一部を構成し、クーラント流通部5の流路の中で最も内径が小さい。クーラント噴出口5c,5dは、複数設けられる。クーラント噴出口5c,5dは、第1クーラント噴出口5cと、第2クーラント噴出口5dと、を有する。
【0049】
第1クーラント噴出口5cは、先端面6cのうち上顎部6dに位置する部分に開口する。第1クーラント噴出口5cは、切削インサート2のすくい面2bおよび切れ刃2aに向けて開口する。
第2クーラント噴出口5dは、先端面6cのうち下顎部6eに位置する部分に開口する。第2クーラント噴出口5dは、切削インサート2の逃げ面2cおよび切れ刃2aに向けて開口する。
【0050】
クーラント流路5e,5fは、複数設けられる。複数のクーラント流路5e,5fは、後述する連通路5iを介して間接的に、または連通路5iを介さず直接的に、各クーラント受入口5a,5bと接続される。つまり複数のクーラント流路5e,5fは、各クーラント受入口5a,5bと連通する。複数のクーラント流路5e,5fは、第1クーラント流路5eと、第2クーラント流路5fと、を有する。
【0051】
複数のクーラント流路5e,5fは、クーラント受入口5a,5bと各クーラント噴出口5c,5dとを連通する。
具体的に、第1クーラント流路5eは、第1クーラント受入口5aと、第1クーラント噴出口5cとを連通する。つまり第1クーラント受入口5aと第1クーラント噴出口5cとは、第1クーラント流路5eを介して互いに連通する。また第1クーラント流路5eは、第1クーラント受入口5aおよび後述する連通路5iを介して、第2クーラント受入口5bと、第1クーラント噴出口5cとを連通する。つまり第2クーラント受入口5bと第1クーラント噴出口5cとは、連通路5i、第1クーラント受入口5aおよび第1クーラント流路5eを介して互いに連通する。
【0052】
第2クーラント流路5fは、第2クーラント受入口5bと、第2クーラント噴出口5dとを連通する。つまり第2クーラント受入口5bと第2クーラント噴出口5dとは、第2クーラント流路5fを介して互いに連通する。また第2クーラント流路5fは、第2クーラント受入口5bおよび後述する連通路5iを介して、第1クーラント受入口5aと、第2クーラント噴出口5dとを連通する。つまり第1クーラント受入口5aと第2クーラント噴出口5dとは、連通路5i、第2クーラント受入口5bおよび第2クーラント流路5fを介して互いに連通する。
【0053】
クーラント流路5e,5fは、ホルダ内流路5j,5kと、ヘッド内流路5m,5nと、ホルダ側接続口5p,5qと、ヘッド側接続口5r,5sと、を有する。
ホルダ内流路5j,5kは、ホルダ4の内部に位置する。本実施形態ではホルダ内流路5j,5kが、ヘッド支持部4cの内部に位置する。ホルダ内流路5j,5kは、第1ホルダ内流路5jと、第2ホルダ内流路5kと、を有する。
【0054】
第1ホルダ内流路5jは、第1クーラント受入口5aの右側の端部に接続される。第1ホルダ内流路5jは、第1クーラント受入口5aの右側の端部から右側へ向かうに従い、先端側へ向けて延びる。第1ホルダ内流路5jの右側の端部は、複数のホルダ側接続口5p,5qのうち第1ホルダ側接続口5pと接続される。第1ホルダ内流路5jは、第1クーラント受入口5aと、第1ホルダ側接続口5pとを連通する。
【0055】
第2ホルダ内流路5kは、第2クーラント受入口5bの上側の端部に接続される。第2ホルダ内流路5kは、第2クーラント受入口5bの上側の端部から右側へ向けて延びる。第2ホルダ内流路5kの右側の端部は、複数のホルダ側接続口5p,5qのうち第2ホルダ側接続口5qと接続される。第2ホルダ内流路5kは、第2クーラント受入口5bと、第2ホルダ側接続口5qとを連通する。
【0056】
ヘッド内流路5m,5nは、ヘッド部材3の内部に位置する。本実施形態ではヘッド内流路5m,5nが、ヘッド本体6の内部に位置する。ヘッド内流路5m,5nの内径は、ホルダ内流路5j,5kの内径よりも小さい。ヘッド内流路5m,5nは、上顎部6d内に配置される第1ヘッド内流路5mと、下顎部6e内に配置される第2ヘッド内流路5nと、を有する。
【0057】
第1ヘッド内流路5mは、第1クーラント噴出口5cと接続される。第1ヘッド内流路5mは、第1クーラント噴出口5cから基端側へ向けて直線状に延びる。第1ヘッド内流路5mの基端側の端部は、複数のヘッド側接続口5r,5sのうち第1ヘッド側接続口5rと接続される。第1ヘッド内流路5mの基端側の端部は、第1ヘッド側接続口5rのうち右側の端部と接続される。第1ヘッド内流路5mは、第1クーラント噴出口5cと、第1ヘッド側接続口5rとを連通する。
【0058】
第2ヘッド内流路5nは、第2クーラント噴出口5dと接続される。第2ヘッド内流路5nは、第2クーラント噴出口5dから基端側へ向かうに従い下側へ向けて延びる部分(後述する第1ストレート流路部5t)と、基端側へ向かうに従い上側へ向けて延びる部分(後述する第2ストレート流路部5u)と、を有する。第2ヘッド内流路5nの基端側の端部は、複数のヘッド側接続口5r,5sのうち第2ヘッド側接続口5sと接続される。第2ヘッド内流路5nの基端側の端部は、第2ヘッド側接続口5sのうち右側の端部と接続される。第2ヘッド内流路5nは、第2クーラント噴出口5dと、第2ヘッド側接続口5sとを連通する。
【0059】
第2ヘッド内流路5nは、互いに異なる方向に延びる複数のストレート流路部5t,5uと、複数のストレート流路部5t,5u同士を繋ぐ屈曲流路部5vと、を有する。つまり複数のクーラント流路5e,5fのうち、少なくとも1つのクーラント流路5fのヘッド内流路5nは、複数のストレート流路部5t,5uと、屈曲流路部5vと、を有する。
【0060】
複数のストレート流路部5t,5uのうち第1ストレート流路部5tは、第2クーラント噴出口5dと接続される。第1ストレート流路部5tは、第2クーラント噴出口5dから基端側へ向かうに従い下側へ向けて直線状に延びる。複数のストレート流路部5t,5uのうち第2ストレート流路部5uは、第2ヘッド側接続口5sと接続される。第2ストレート流路部5uは、第2ヘッド側接続口5sから先端側へ向かうに従い下側へ向けて直線状に延びる。屈曲流路部5vは、第1ストレート流路部5tの基端側の端部と、第2ストレート流路部5uの先端側の端部とを接続する。
【0061】
図1図3に示すように、ホルダ側接続口5p,5qは、ホルダ4の取付面4aに開口する。ホルダ側接続口5p,5qは、幅方向(Y軸方向)においてヘッド本体6の第1の板面6aと対向する。複数のホルダ側接続口5p,5qは、第1の板面6aのうち上顎部6dに位置する部分と幅方向に対向する第1ホルダ側接続口5pと、第1の板面6aのうち下顎部6eに位置する部分と幅方向に対向する第2ホルダ側接続口5qと、を有する。
【0062】
第1ホルダ側接続口5pは、取付面4aから左側へ向かうに従い基端側へ向けて延びる。第1ホルダ側接続口5pの中心軸と、第1ホルダ内流路5jの中心軸とは、互いに同軸に配置される。本実施形態では第1ホルダ側接続口5pが、第1ホルダ側接続口5pの内周面に雌ネジ部を有する。
【0063】
第2ホルダ側接続口5qは、取付面4aから左側へ向けて延びる。第2ホルダ側接続口5qの中心軸と、第2ホルダ内流路5kの中心軸とは、互いに同軸に配置される。本実施形態では第2ホルダ側接続口5qが、第2ホルダ側接続口5qの内周面に雌ネジ部を有する。
【0064】
図1図2図4および図5に示すように、ヘッド側接続口5r,5sは、ヘッド本体6の板面6aに開口し、幅方向(Y軸方向)において取付面4aと対向する。ヘッド側接続口5r,5sは、取付面4aのホルダ側接続口5p,5qと接続される。ヘッド側接続口5r,5sの内径は、ホルダ側接続口5p,5qの内径と略同じである。ヘッド内流路5m,5nの内径は、ヘッド側接続口5r,5sの内径よりも小さい。複数のヘッド側接続口5r,5sは、第1の板面6aのうち上顎部6dに位置する部分に配置される第1ヘッド側接続口5rと、第1の板面6aのうち下顎部6eに位置する部分に配置される第2ヘッド側接続口5sと、を有する。
【0065】
第1ヘッド側接続口5rは、第1の板面6aから右側へ向けて延びる。第1ヘッド側接続口5rの中心軸は、第1ヘッド内流路5mの中心軸と略直交する。
第2ヘッド側接続口5sは、第1の板面6aから右側へ向けて延びる。第2ヘッド側接続口5sの中心軸は、第2ヘッド内流路5nの中心軸(第2ストレート流路部5uの中心軸)と略直交する。
【0066】
栓部5g,5hは、クーラント流路5e,5fを閉塞する。栓部5g,5hは、ホルダ側接続口5p,5qおよびヘッド側接続口5r,5sのいずれかに取り外し可能に設けられる。図3に示すように、本実施形態では栓部5g,5hが、ホルダ側接続口5p,5q内に着脱可能に収容される。
【0067】
栓部5g,5hは、例えばイモネジ等であり、外周面に雄ネジ部を有する。栓部5g,5hは、ホルダ側接続口5p,5qおよびヘッド側接続口5r,5sのいずれかに着脱可能に螺着される。本実施形態では栓部5g,5hが、ホルダ側接続口5p,5qに着脱可能に螺着される。具体的には、栓部5g,5hの雄ネジ部が、ホルダ側接続口5p,5qの雌ネジ部に螺着される。
【0068】
なお図4および図5に示すように、栓部5g,5hは、ヘッド側接続口5r,5s内に着脱可能に収容されてもよい。
また栓部5g,5hは、ヘッド側接続口5r,5sに着脱可能に螺着されてもよい。この場合、ヘッド側接続口5r,5sは、ヘッド側接続口5r,5sの内周面に雌ネジ部を有し、栓部5g,5hの雄ネジ部は、ヘッド側接続口5r,5sの雌ネジ部に螺着される。
【0069】
栓部5g,5hは、複数設けられる。複数の栓部5g,5hは、第1栓部5gと、第2栓部5hと、を有する。
図3に示すように、本実施形態では第1栓部5gが、第1ホルダ側接続口5pに取り外し可能に設けられる。なお図4および図5に示すように、第1栓部5gは、第1ヘッド側接続口5rに取り外し可能に設けられてもよい。
図3に示すように、本実施形態では第2栓部5hが、第2ホルダ側接続口5qに取り外し可能に設けられる。なお図5に示すように、第2栓部5hは、第2ヘッド側接続口5sに取り外し可能に設けられてもよい。
【0070】
図1および図2に示すように、連通路5iは、複数のクーラント受入口5a,5b同士を連通する。連通路5iは、第1クーラント受入口5aの下端部と第2クーラント受入口5bの上端部とに接続され、上下方向(Z軸方向)に延びる。連通路5iは、第1クーラント受入口5aおよび第2クーラント受入口5bを介して、第1クーラント流路5eと第2クーラント流路5fとを連通する。
【0071】
複数の固定ネジ8は、第1固定ネジ8aと、第2固定ネジ8bと、を有する。
第1固定ネジ8aは、ヘッド本体6をヘッド支持部4cに固定する。第1固定ネジ8aは、ヘッド本体6の第1ネジ挿入孔6hに挿入され、ヘッド支持部4cの第1ネジ穴9aに螺着される。第1固定ネジ8aは、複数設けられる。
第2固定ネジ8bは、ヘッド固定板3aをヘッド支持部4cに固定する。第2固定ネジ8bは、ヘッド固定板3aの第2ネジ挿入孔3bに挿入され、ヘッド支持部4cの第2ネジ穴9bに螺着される。第2固定ネジ8bは、複数設けられる。
【0072】
締結ネジ11は、上顎部6dを下側へ向けて押圧した状態で、ヘッド支持部4cの第3ネジ穴9cに螺着される。締結ネジ11が上顎部6dを下側へ押圧することで、連結部6fが弾性変形させられ、上顎部6dは下側へ変位する。これにより、インサート取付座7に配置された切削インサート2は、上顎部6dの下面(押圧面7a)と下顎部6eの上面(台座面7b)との間でクランプされる。
【0073】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の溝入れ工具1のヘッド構造10および溝入れ工具1では、複数のクーラント流路5e,5fの途中に、栓部5g,5hが取り外し可能にそれぞれ設けられる。このため、各クーラント流路5e,5fから栓部5g,5hを選択的に取り外すことにより、クーラントを噴出させたい所望の部位に限定してクーラントを供給できる。
具体的に、例えば、すくい面2bおよび切れ刃2aにクーラントを供給して切屑を折りやすくするなどの切屑コントロールを行いたい場合は、第1クーラント流路5eの第1ホルダ側接続口5pから第1栓部5gを取り外して、第1クーラント噴出口5cからクーラントを噴出させる。また、逃げ面2cおよび切れ刃2aにクーラントを供給して逃げ面摩耗を効果的に抑制したい場合は、第2クーラント流路5fの第2ホルダ側接続口5qから第2栓部5hを取り外して、第2クーラント噴出口5dからクーラントを噴出させる。
【0074】
本実施形態によれば、クーラント流路5e,5fが複数設けられていても、またクーラント流路5e,5fの構造が複雑であっても、所望のクーラント流路5e,5fのクーラント供給圧を高く維持することができる。すなわち、溝入れ工具1が装着される工作機械の種類等に関わらず、クーラント供給圧の低下を抑制でき、クーラントを所望の部位に安定して供給できる。
【0075】
特に、溝入れ加工や突切り加工などを行う溝入れ工具1においては、切削インサート2が装着される板状のヘッド本体6の厚さつまり幅方向(Y軸方向)の寸法を小さく抑えることへの要求があり、これにともない、ヘッド本体6の一対の板面6a,6b以外の端面(先端面)6cなどに開口するクーラント噴出口5c,5dの開口径も小さくなる。この点、本実施形態によれば、クーラント流路5e,5fを閉塞する栓部5g,5hが、ホルダ4の取付面4aおよびヘッド本体6の板面6aのいずれかに取り外し可能に設けられるため、たとえヘッド本体6の板厚が薄くされても、栓部5g,5hを容易に設けることができる。
【0076】
具体的に本実施形態と異なり、例えば栓部をクーラント噴出口に設ける場合には、栓部を設けるためにクーラント噴出口の開口径を大きくする必要が生じ、その分ヘッド本体の板厚が大きくなったり、クーラント噴出口から栓部を取り外したときに、クーラント噴出口の開口径が大きいためにクーラントの噴出速度が低下したりクーラントが所望の部位以外の部位へ無駄に供給されたりする。一方、本実施形態によれば、クーラント噴出口5c,5dの開口径を小さく抑えてヘッド本体6の板厚も小さく抑えたまま、クーラント流路5e,5fに栓部5g,5hを簡単に設けることができる。つまりクーラント噴出口5c,5dの開口形状に関わらず、栓部5g,5hによってクーラント流路5e,5fの連通および遮断を安定して切り替えることができる。
【0077】
また本実施形態では、栓部5g,5hが、ホルダ側接続口5p,5qおよびヘッド側接続口5r,5sのいずれかに着脱可能に螺着される。
この場合、栓部5g,5hの着脱が容易である。
【0078】
また本実施形態では、クーラント受入口5a,5bが複数設けられ、複数のクーラント流路5e,5fは、各クーラント受入口5a,5bと連通する。
この場合、複数のクーラント受入口5a,5bの中から選択的に1つのクーラント受入口5a,5bを用いて、複数のクーラント流路5e,5fにそれぞれクーラントを供給できる。ホルダ4におけるクーラント受入口5a,5bの配置の自由度が増し、各種の工作機械のクーラント供給手段のホース等を、複数のクーラント受入口5a,5bのいずれかに容易に接続できる。
【0079】
また本実施形態では、クーラント流通部5が、複数のクーラント受入口5a,5b同士を連通する連通路5iを有する。
この場合、連通路5iを介して、複数のクーラント流路5e,5fを各クーラント受入口5a,5bに容易に連通させることができる。
【0080】
また本実施形態では、ヘッド内流路5m,5nの内径が、ホルダ内流路5j,5kの内径よりも小さい。
この場合、ホルダ内流路5j,5kからヘッド内流路5m,5nに流入したクーラントの流速が高まり、クーラント噴出口5c,5dから噴出されるクーラントの噴出速度が高められる。
【0081】
また本実施形態では、複数のクーラント流路5e,5fのうち少なくとも1つのクーラント流路5fのヘッド内流路5nが、複数のストレート流路部5t,5uと、これらのストレート流路部5t,5u同士を繋ぐ屈曲流路部5vと、を有する。
従来構造では、クーラント流路が屈曲していると、流路を流れるクーラントの流速が低下しやすかった。一方、本実施形態によれば、所望のクーラント流路5e,5fのクーラント供給圧を高く維持できるため、上記構成のようにヘッド内流路5nが屈曲して形成されても、クーラントの流速が低下することを抑制できる。
【0082】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0083】
前述の実施形態では、クーラント流通部5が、2つのクーラント受入口5a,5bと、2つのクーラント噴出口5c,5dと、2つのクーラント流路5e,5fと、2つの栓部5g,5hと、1つの連通路5iと、を有する例を挙げたが、これらに限らない。
クーラント流通部5は、3つ以上のクーラント受入口を有していてもよい。クーラント流通部5は、3つ以上のクーラント噴出口を有していてもよい。クーラント流通部5は、3つ以上のクーラント流路を有していてもよい。クーラント流通部5は、3つ以上の栓部を有していてもよい。クーラント流通部5は、複数の連通路を有していてもよい。
【0084】
前述の実施形態では、栓部5g,5hが複数設けられる例を挙げたが、これに限らない。例えば1つの栓部5gが、ホルダ側接続口5p,5qのいずれかに取り外し可能に設けられてもよく、ヘッド側接続口5r,5sのいずれかに取り外し可能に設けられてもよい。
【0085】
また前述の実施形態では、栓部5g,5hがホルダ側接続口5p,5qおよびヘッド側接続口5r,5sのいずれかに着脱可能に螺着される例を挙げたが、これに限らない。
栓部は、ホルダ側接続口5p,5qおよびヘッド側接続口5r,5sのいずれかに着脱可能に嵌合する柱状体等であってもよい。また栓部は、ホルダ側接続口5p,5qおよびヘッド側接続口5r,5sのいずれかに取り外し可能に設けられる板状体等であってもよい。
【0086】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の溝入れ工具のヘッド構造および溝入れ工具によれば、クーラント供給圧の低下を抑制でき、クーラントを所望の部位に安定して供給できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0088】
1…溝入れ工具
2…切削インサート
2a…切れ刃
3…ヘッド部材
4…ホルダ
4a…取付面
5…クーラント流通部
5a,5b…クーラント受入口
5c,5d…クーラント噴出口
5e,5f…クーラント流路
5g,5h…栓部
5i…連通路
5j,5k…ホルダ内流路
5m,5n…ヘッド内流路
5p,5q…ホルダ側接続口
5r,5s…ヘッド側接続口
5t,5u…ストレート流路部
5v…屈曲流路部
6…ヘッド本体
6a…板面
7…インサート取付座
10…溝入れ工具のヘッド構造
図1
図2
図3
図4
図5