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特許7375398計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法
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  • 特許-計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法 図1
  • 特許-計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法 図2
  • 特許-計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法 図3
  • 特許-計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法 図4
  • 特許-計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/58 20200101AFI20231031BHJP
   G01R 31/66 20200101ALI20231031BHJP
   H02H 3/05 20060101ALI20231031BHJP
   H02H 11/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G01R31/58
G01R31/66
H02H3/05 B
H02H11/00 140
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019166795
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021043128
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】塚田 健
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 肇士
(72)【発明者】
【氏名】山口 国彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剣一
(72)【発明者】
【氏名】福田 正幸
(72)【発明者】
【氏名】大野 善弘
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-189425(JP,A)
【文献】特開2005-024263(JP,A)
【文献】特開2003-270282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01R 31/08
H02H 3/05
H02H 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電系統の主回路系統の保護制御に必要な電圧または電流を取り出すための計器用変成器が取り付けられていて、該計器用変成器の前記主回路とは反対側の回路である二次側回路にケーブルを使用して保護継電器が接続されていて、前記保護継電器の取替・増設・除却・改造のいずれかを含む改修をしたに、前記計器用変成器と改修した前記保護継電器とを接続するケーブルの前記保護継電器に対する接続状態を電気的に検査する計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定において、
前記二次側回路のケーブルの前記計器用変成器近傍に試験用の三相交流を印加する保護リレー試験装置を接続し、前記二次側回路のケーブルの前記保護継電器近傍に電圧電流位相差計を接続して、
改修後の前記保護継電器に対する前記ケーブルの接続状態に誤接続または接触不良がないかどうかを検査することを特徴とする計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法。
【請求項2】
前記試験用の三相交流として、不平衡三相交流を印加することを特徴とする請求項1に記載の計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主回路に計器用変成器が取り付けられていて、計器用変成器に保護継電器が接続される二次側回路の改修後の接続状態を検査する計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用の主回路には、系統の保護制御を行うために計器用変圧器(以下、VTと称する)や計器用変流器(以下、CTと称する)等の計器用変成器が取り付けられていて、その二次側回路には保護継電器が接続されている。計器用変成器や保護継電器が経年劣化等によって寿命を迎えた際には、それらの機器を交換する必要がある。このとき、二次側回路の健全性を担保するために、計器用変成器や保護継電器の接続が正常に行われているかを確認する試験が行われる。
【0003】
二次側回路における計器用変成器や保護継電器の接続状態を確認する方法としては、接続作業を完了した後に、複数系統ある主回路のうち、試験を行う側の主回路において試験系統を構築する方法が知られている。この方法では、試験を行う側の主回路を充電状態として保護継電器に電圧・電流を印加し、その電圧および電流の量と位相差を測定することにより、接続状態を確認していた。
【0004】
しかしながら、上記の方法であると、1つの系統を試験専用に使用するため、例えば送電線の場合、通常は2系統ある主回路に接続されている全ての需要家を、試験を行う側の主回路から切り離す必要がある。このため、関係する複数の需要家と交渉し許諾を得るまでに長い期間を要することとなる。また二次側回路における計器用変成器や保護継電器の接続状態を確認する際には、設備停止計画に基づき需要家と取り決めた時刻に実施することとなる。このため、作業実施箇所においては試験系統が構築されるまでの間は待機となり、多くの待ち時間が発生してしまう。
【0005】
上述した従来の計器用変成器や保護継電器の接続状態を確認する方法の課題を解決する手段としては、例えば特許文献1に開示されているような計器用変成器の試験装置を用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-131074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法は、主回路にパルス発生装置を取り付けするもので、CT14の二次側回路20にパルス信号を送出し配線の判別は可能であるが、保護継電器の入力電気量としての測定には使えない信号である。また、主回路へ作業者が昇降する行為は安全措置が必須となるため、極力回避すべき業務である。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、二次側回路における計器用変成器や保護継電器の接続状態を確認する際に主回路を充電することなく、且つ効率的に接続状態を確認することが可能な計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法の代表的な構成は、主回路に計器用変成器が取り付けられていて、計器用変成器に保護継電器が接続される二次側回路の改修後の接続状態を検査する計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定において、主回路を停電させた状態とし、改修した二次側回路の接続を維持した状態とし、改修した二次側回路の一端に試験用の三相交流を印加する保護リレー試験装置を接続し、改修した二次側回路の他端に電圧電流位相差計を接続して、改修後の二次側回路の接続状態を検査することを特徴とする。
【0010】
上記構成では、二次側回路の検査を行う側の主回路を停電させた状態で、すなわち充電することなく接続状態を確認する検査を行う。このとき、改修後の二次側回路の接続状態を維持した状態で保護リレー試験装置を接続することにより、接続後の計器用変成器と保護継電器の接続線を切り離すことなくそれらの接続状態を確認することができる。
【0011】
上記試験用の三相交流として、不平衡三相交流を印加するとよい。かかる構成によれば、電圧や電流の大きさと位相値をより明確に確認することができる。また三相不平衡の試験電圧・電流を印加すると、電圧・電流の大きさを測定するだけで相別・相順を確認することが可能になるため、効率的に作業することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二次側回路における計器用変成器や保護継電器の接続状態を確認する際に主回路を充電することなく、且つ効率的に接続状態を確認することが可能な計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法を提供することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態にかかる計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法について説明する図である。
図2】二次側回路における電流の流れを説明する図である。
図3】試験装置から印加する三相交流を不平衡三相交流とする場合について説明する図である。
図4】二次側回路における計器用変成器や保護継電器の接続状態を確認する従来の接続確認方法について説明する図である。
図5】二次側回路における計器用変成器や保護継電器の接続状態を確認する従来の接続確認方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
まず従来技術について図4および図5を用いて説明する。図4および図5は、計器用変成器の二次側回路20における計器用変成器と保護継電器18の接続状態を確認する従来の接続確認方法について説明する図である。図4に示すように、複数の鉄塔10a・10bの間の主回路12には、計器用変成器として、ガス遮断器50に取り付けられた計器用変流器(以下、CT14と称する)や、計器用変圧器(以下、VT16と称する)が取り付けられている。これらのCT14やVT16は、二次側回路20・24において保護継電器18に接続されている。主回路12において地絡等の異常が発生し、それがCT14やVT16を通じて保護継電器18によって検出されると、保護継電器18は主回路12における通電を停止する。
【0016】
CT14やVT16、保護継電器18を改修(交換)した際には、二次側回路20・24におけるそれらの接続状態を確認する。このとき、図4では、一方の変電所の変圧器30aから他方の変電所の変圧器30bに対して送電し、主回路12を充電状態とする。そして、保護継電器18に測定器34を接続し、電圧および電流の量と位相差を測定することにより二次側回路20・24における接続状態を確認する。
【0017】
しかしながら、上記の方法は接続線20や24の誤接続等により保護継電器18が主回路12の通電を誤って停止した場合に、送電中の需要家が停止してしまうため、試験系統から送電中の需要家は切替しておき、充電する主回路12に試験を行う計器用変成器のみを接続する必要がある。したがって、需要家からの許諾を得たり、他の工事の計画を避けたりする必要があり、実施するまでに長い期間や多くの調整業務が必要になる。また二次側回路20・24における計器用変成器や保護継電器18の接続状態を確認する際には、設備停止計画に基づき需要家と取り決めた時刻に実施することとなる。このため、作業実施箇所においては試験系統を構成するまでの間は待機となり、多くの待ち時間が発生してしまう。加えて、接続状態を確認する際には、制御所の制御装置32a・32bによって変圧器30a・30bを制御しなくてはならないため、多くの人員が必要となる。
【0018】
そこで図5に示すような試験装置40を用いた接続状態の確認方法が考えられる。この方法では、図5に示すように、主回路12を停電状態とし、接続後の保護継電器18とCT14との間の接続線20は、スイッチ16aのような安全装置が設けられていないため接続線20を端子台等で一度切り離し、VT16の接続線24は、配置されているスイッチ16aをオフにする。これにより、二次側回路20・24は主回路12から切り離された状態となる。そして、この状態において、保護継電器18に測定器34を接続し、試験装置40を二次側回路20・24に接続線22で接続する。その後、試験装置40から二次側回路20・24に試験電圧・電流を印加し、電圧および電流の量と位相差を測定する。
【0019】
上述したように二次側回路20と主回路12を切り離すと、図2(b)に示すように、試験装置40から印加した電流は、二次側回路20のみに流れる。したがって、主回路12側への電流の流れを好適に防ぐことができる。しかしながら、このような方法であると、試験後に計器用変成器(特にCT14)と保護継電器18を再度接続するため、接続後の確認が必要となり、上述した確認方法へ帰結する。
【0020】
次の本発明の実施形態について図1から図3を用いて説明する。図1は、本実施形態にかかる計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法(以下、測定方法と称する)について説明する図である。図2は二次側回路20における電流の流れを説明する図である。本実施形態の測定方法では、主回路12に計器用変成器(CT14、VT16)が取り付けられていて、計器用変成器に保護継電器18が接続される二次側回路20・24の改修後の接続状態を検査する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の測定方法においても、まず主回路12を停電させた状態(充電しない状態)として、計器用変成器を改修し、計器用変成器(CT14、VT16)と保護継電器18を接続したとする。次に試験を行うのであるが、このとき、改修した計器用変成器の二次側回路20・24において、計器用変成器と保護継電器18との接続を維持した状態とする。すなわち本実施形態の測定方法では、スイッチ16aをOFF状態として、二次側回路20・24をCT14やVT16の機器の端子台から外さず、試験装置40(保護リレー試験装置)を二次側回路20・24の一端に接続線22で接続する。例えば、CT14やVT16を改修した場合には、接続線22を使い試験装置40をそれらの端子に接続する。
【0022】
改修した二次側回路20・24の一端に試験装置40を接続したら、改修した二次側回路20・24の他端に測定器34(電圧電流位相差計)を接続する。例えば、CT14やVT16を改修した場合には、保護継電器18の端子に測定器34を接続する。そして、二次側回路20・24に対して試験装置40から試験用の三相交流を印加し、改修後の二次側回路20・24の接続状態を検査する。
【0023】
二次側回路20と主回路12を分断しない状態とすると、図2(a)に示すように、試験装置40から印加した電流は、二次側回路20だけでなくCT14にも流れるように考えられるが、二次側回路20はCT14を介して主回路12と磁気的に結合しているため、試験装置40が印加する電流は、主回路12の停止によりCT14側へ流れることができず、電流のほぼ全てが保護継電器18側へ流れる(数mAの極めて微量の電流はCT14側へ流れるが試験品質に全く影響しない大きさである)。したがって二次側回路20の切り離しを必要としない。
【0024】
上記説明したように、本実施形態の測定方法では、二次側回路20・24の検査を行う側の主回路12を停電させた状態で、すなわち充電することなく接続状態を確認する検査を行う。これにより、主回路12を充電させるために生じる不都合を好適に解消することができる。
【0025】
また本実施形態の測定方法では、改修後の二次側回路20・24と主回路12の接続状態を維持した状態で試験装置40を接続する。これにより、接続後の計器用変成器と保護継電器18の接続線を切り離すことなくそれらの接続状態を確認することができる。したがって、接続後の計器用変成器と保護継電器18の接続線を分断して接続状態を確認するといった問題は発生しない。
【0026】
図3は、試験装置40から印加する三相交流を不平衡三相交流とする場合について説明する図である。変圧器30a、30bから主回路12を充電する場合には、平衡三相交流しか印加できない。したがって、地絡などの障害が発生しない限り、零相電流は0、すなわち検出されない。故に零相回路の確認が不足する。
【0027】
図3(a)は、不平衡三相交流の電圧値を示す図である。図3(a)では、第1相(U)、第2相(V)および第3相(W)の全ての相電圧値を異ならせている。これにより、それらの間の線間電圧値も異なることとなる。図3(b)は、不平衡三相交流の電流値を示す図である。図3(b)に示すように、第1相(U)、第2相(V)および第3相(W)は、相電流値も全て異ならせている。
【0028】
二次側回路20・24に対して図3に示すような不平衡三相交流を印加することにより、各相における電圧電流の大きさおよびその差が固定される。したがって、電圧電流の大きさを測定するだけで、相を区別することが可能となる。またこのような不平衡三相交流を印加することにより、平衡三相交流を印加した場合には検出できない零相電流を検出することができる。このように、三相不平衡の試験電圧・電流を印加すると、電圧・電流の大きさを測定するだけで零相回路も含めた相別・相順を確認することが可能になるため、品質よく効率的に検査することが可能となる。
【0029】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、主回路に計器用変成器が取り付けられていて、計器用変成器に保護継電器が接続される二次側回路の改修後の接続状態を検査する計器用変成器の二次側回路の電圧電流位相測定方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10a…鉄塔、10b…鉄塔、12…主回路、14…CT、16…VT、16a…スイッチ、18…保護継電器、20…二次側回路、22…接続線、24…二次側回路、30a…変圧器、30b…変圧器、32a…制御装置、32b…制御装置、34…測定器、40…試験装置、50…ガス遮断器
図1
図2
図3
図4
図5