(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】メンテナンス装置及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231031BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/165 303
B41J2/165 305
B41J2/165 401
B41J2/17 207
(21)【出願番号】P 2019190683
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕介
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-153152(JP,A)
【文献】特開2005-161870(JP,A)
【文献】特開2012-71582(JP,A)
【文献】特開2021-20446(JP,A)
【文献】特開2016-190484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0158101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出部からインクを吐出するインクジェットヘッドのメンテナンス装置であって、
前記インク吐出部表面のインクを掻き取るブレード部材と、
前記ブレード部材でインクが掻き取られた前記インク吐出部表面を洗浄液で洗浄するローラ部材と、
前記ブレード部材およびローラ部材を保持するケーシングと、
前記ケーシングに形成された前記洗浄液を貯留する洗浄液貯留部と、
前記ブレード部材で掻き取られたインクを前記洗浄液貯留部に移動させるインク移動部と、を備え、
前記インク移動部は、前記ブレード部材で掻き取られたインクを受ける前記ケーシングの底面に形成された、前記洗浄液貯留部に向かって傾斜する傾斜面である
メンテナンス装置。
【請求項2】
前記ケーシングの底面に設けられた、前記洗浄液貯留部に貯留された洗浄液を前記ケーシングの外へ排出するための排出口と、
前記排出口を塞ぐ蓋部材と、
前記蓋部材を、前記排出口を開閉可能に移動させる開閉機構と、を備えた
請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記ブレード部材で掻き取られたインクを一時的に貯留するインク貯留部と、を備えた
請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
前記インク貯留部が前記洗浄液貯留部に向かって傾くように前記インク貯留部を回動させる回動機構と、を備えた
請求項3に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
前記ケーシングの底面に前記ブレード部材を支持するブレード支持部材を立設し、前記ブレード支持部材により、前記ブレード部材で掻き取られたインクを一時的に貯留する
請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項6】
前記ブレード部材を前記洗浄液貯留部側に傾倒させる傾倒機構と、を備えた、
請求項5に記載のメンテナンス装置。
【請求項7】
前記ブレード部材の両端部を保持するブレード保持部材と、を備え、
前記ブレード保持部材の上端を前記インク吐出部を備えたキャリッジの底面に当接させる
請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項8】
前記ブレード保持部材における前記ブレード部材の保持位置が調整可能である
請求項7に記載のメンテナンス装置。
【請求項9】
前記ブレード保持部材は、回転可能なローラ部材で構成されている
請求項7に記載のメンテナンス装置。
【請求項10】
前記洗浄液貯留部に管を介して洗浄液を供給する洗浄液供給部と、を備え、
前記洗浄液供給部から供給される洗浄液の経路上に前記ブレード部材を配置した
請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項11】
前記洗浄液供給部で供給される洗浄液が水である
請求項10に記載のメンテナンス装置。
【請求項12】
前記ブレード部材が、前記インク吐出部表面に接触している
請求項1~11のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項13】
前記ブレード部材が、前記インク吐出部表面に接触していない
請求項1~11のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項14】
前記ローラ部材は、多孔質からなるウレタン材で構成されている
請求項1~13のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項15】
インク吐出部からインクを吐出させて画像を形成するインクジェット記録装置であって、
前記インク吐出部表面のインクを掻き取るブレード部材と、前記ブレード部材でインクが掻き取られた前記インク吐出部表面を洗浄液で洗浄するローラ部材と、前記ブレード部材およびローラ部材を保持するケーシングと、前記ケーシングに形成された前記洗浄液を貯留する洗浄液貯留部と、前記ブレード部材で掻き取られたインクを前記洗浄液貯留部に移動させるインク移動部と、
を備え、前記インク移動部は、前記ブレード部材で掻き取られたインクを受ける前記ケーシングの底面に形成された、前記洗浄液貯留部に向かって傾斜する傾斜面であるメンテナンス装置を備えた
インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に用いられるインクジェットヘッドのメンテナンス装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドに設けられた複数のノズルからインクを吐出させて、記録媒体に画像を形成している。また、洗浄液に浸したクリーニングローラでノズル表面に残ったインクを清掃するメンテナンス装置も提案されている。
【0003】
さらには、クリーニングローラでノズル表面を清掃する前に、予め、クリーニングブレードでノズル表面に残ったインクを除去して、クリーニングローラの汚れを減らすメンテナンス装置も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、クリーニングブレードで除去したインクが、乾燥してメンテナンス装置内で固まるおそれがあった。
【0006】
また、メンテナンス装置のケーシングに、クリーニングブレードで除去したインクを外部へ排出するための排出口が設けられている場合には、固まったインクが排出口を塞いでしまい、クリーニングブレードで除去したインクを外部へ排出できないという問題もあった。
【0007】
本発明は、上述のような従来の問題点に鑑み、クリーニングブレードで除去したインクがメンテナンス装置内で固まることを減らすことのできるメンテナンス装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば、特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願のメンテナンス装置は、インク吐出部表面のインクを掻き取るブレード部材と、ブレード部材でインクが掻き取られたインク吐出部表面を洗浄液で洗浄するローラ部材と、ブレード部材およびローラ部材を保持するケーシングと、ケーシングに形成された前記洗浄液を貯留する洗浄液貯留部と、ブレード部材で掻き取られたインクを洗浄液貯留部に移動させるインク移動部と、を備え、インク移動部は、ブレード部材で掻き取られたインクを受けるケーシングの底面に形成された、洗浄液貯留部に向かって傾斜する傾斜面を有する。
【0009】
なお、上記メンテナンス装置は本発明の一態様であり、本発明のインクジェット記録装置も、本発明の一側面を反映したメンテナンス装置と同様の構成を有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリーニングブレードで除去したインクがメンテナンス装置内で固まることを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態例に係るインクジェット記録装置を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態例に係るインクジェット記録装置のキャリッジを記録媒体側から見た平面図である。
【
図3】メンテナンス装置を幅方向の一側から見た断面図である。
【
図4】メンテナンス装置をインクが吐出される方向の上側から見た平面図である。
【
図5】5Aは、クリーニング動作時におけるメンテナンス装置とキャリッジとの位置関係を幅方向の一側から見た図である。5Bは、クリーニング動作終了(待機状態)時の退避位置にあるメンテナンス装置とキャリッジとの位置関係を幅方向の一側から見た図である。
【
図6】本発明の実施の形態例に係るインクジェット記録装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図7】クリーニング動作時におけるインクジェット記録装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の他の実施の形態例に係るメンテナンス装置を幅方向の一側から見た断面図である。
【
図9】9Aは、クリーニング動作時におけるメンテナンス装置とキャリッジとの位置関係を幅方向の一側から見た図である。9Bは、クリーニング動作終了(待機状態)時の退避位置にあるメンテナンス装置とキャリッジとの位置関係を幅方向の一側から見た図である。
【
図10】本発明の他の実施の形態例に係るメンテナンス装置を幅方向の一側から見た断面図である。
【
図11】11Aは、クリーニング動作時におけるメンテナンス装置とキャリッジとの位置関係を幅方向の一側から見た図である。11Bは、クリーニング動作終了(待機状態)時の退避位置にあるメンテナンス装置とキャリッジとの位置関係を幅方向の一側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のインクジェット記録装置を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
まず、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という)に係るインクジェット記録装置の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本例のインクジェット記録装置1を示す概略構成図である。
【0014】
図1に示す装置は、記録媒体Rに向けてインク滴を吐出することで画像を形成するインクジェット記録装置である。また、
図1に示すインクジェット記録装置1は、記録媒体Rを搬送する際に、複数のインクジェットヘッドを用いて画像形成を行う1パス描画方式のインクジェット記録装置である。さらに、
図1に示すインクジェット記録装置1では、記録媒体Rの一例として布帛を適用した例を用いて説明する。
【0015】
以下の説明では、記録媒体Rを搬送する方向を搬送方向、記録媒体Rの画像形成面において搬送方向と直交する方向を幅方向とする。そして、搬送方向及び幅方向と直交する方向、すなわちインクが吐出される方向を上下方向とする。
【0016】
図1に示すように、本例のインクジェット記録装置1は、記録媒体Rを搬送する搬送部2と、複数のプリントユニット31、32、33、34、35、36(本例では、6つ)と、送り出し部5と、巻き取り部6と、を備えている。
【0017】
搬送部2は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23と、押し付け部材24とを有している。駆動ローラ22と従動ローラ23は、搬送方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、駆動ローラ22及び従動ローラ23は、その軸方向を幅方向と平行にして配置される。駆動ローラ22は、不図示の駆動部に接続されている。そして、不図示の駆動部が駆動した際に、駆動ローラ22は、回転駆動する。
【0018】
搬送ベルト21は、駆動ローラ22と従動ローラ23に巻き掛けられている。搬送ベルト21は、長手方向の両端部が接続された無端状に形成されている。搬送ベルト21には、記録媒体Rが載置される。そして、駆動ローラ22が回転駆動すると、搬送ベルト21は、駆動ローラ22と従動ローラ23の間を循環移動し、載置された記録媒体Rを搬送する。
【0019】
搬送ベルト21における上下方向の上面部には、後述するプリントユニット31、32、33、34、35、36が配置される。また、搬送ベルト21の上面部において、プリントユニット31、32、33、34、35、36よりも搬送方向の上流側には、押し付け部材24が配置されている。
【0020】
押し付け部材24は、ローラ状に形成されている、そして、押し付け部材24は、不図示の支持部により回転可能に支持されている。押し付け部材24は、その軸方向を幅方向と平行にして配置される。また、押し付け部材24の軸方向の長さは、搬送ベルト21の幅方向の長さよりも長く設定されている。そのため、押し付け部材24は、搬送ベルト21の幅方向の一端から他端にかけて延在している。そして、押し付け部材24は、後述する送り出し部5によって搬送部2に搬送された記録媒体Rを搬送ベルト21の上面部に向けて押し付ける。
【0021】
搬送部2の搬送方向の上流側には、送り出し部5が配置されている。送り出し部5は、ローラ状に形成されており、不図示の支持部に回転可能に支持されている。そして、送り出し部5は、回転駆動することで、記録媒体Rを搬送部2に向けて送り出す。
【0022】
また、搬送部2の搬送方向の下流側には、巻き取り部6が配置されている、巻き取り部6は、プリントユニット31、32、33、34、35、36によって画像が形成された記録媒体Rを搬送ベルト21から離反させ、回収する。
【0023】
6つのプリントユニット31、32、33、34、35、36は、搬送ベルト21の上面部に対して所定の間隔tを空けて対向している。6つのプリントユニット31、32、33、34、35、36は、幅方向の長さが記録媒体Rの幅方向の長さよりも長く設定されている。また、6つのプリントユニット31、32、33、34、35、36には、それぞれノズルからインクを吐出するインクジェットヘッド242を有するキャリッジ41、42、43、44、45、46が収容されている。
【0024】
本例では、6つのキャリッジ41、42、43、44、45、46は、図示を省略した昇降装置により、上下方向に移動することができる。従って、搬送ベルト21の上面部に対する間隔tを変更することができ、後述するメンテナンス装置50により、インクジェットヘッドをクリーニングする場合には、キャリッジを上方向に移動させて、間隔tをメンテナンス装置50が挿入できる間隔t1に変更する。
【0025】
なお、本例では、キャリッジを上下方向に移動させて、メンテナンス装置50を挿入する例について説明したが、例えば、搬送ベルト21を下方に移動させることにより、搬送ベルト21の上面とキャリッジとの間隔tを大きくして、メンテナンス装置50を挿入させるようにしてもよい。
【0026】
キャリッジ41、42、43、44、45、46は、搬送方向の上流側から、オレンジ、イエロー、マゼンタ、ブラック、シアン、ブルーの順に配置されている。そして、第1キャリッジ41から順番に、記録媒体Rに向けてインクが吐出される。
【0027】
また、本例のインクジェット記録装置1では、吐出するインクとして上述した単色のインクを用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、記録媒体Rにインクを染み込みやすくする透明な浸透インクを用いてもよい。この場合、浸透インクは、搬送方向の最上流に配置され、他のインクよりも先に記録媒体Rに向けて吐出される。
【0028】
次に、キャリッジ41、42、43、44、45、46の構成について、
図2を参照して説明する。キャリッジ41、42、43、44、45、46は、吐出するインクの違いだけでその他の構成は、同一の構成を有している。そのため、ここでは、第1キャリッジ41の構成について説明する。
図2は、第1キャリッジ41を記録媒体側から見た状態を示す平面図である。
【0029】
図2に示すように、キャリッジ41は、複数(本例では、16個)のインクジェットヘッド242を有している。そして、2つのインクジェットヘッド242が1組となって、1つのインクジェットモジュール243を構成している、そのため、本例のキャリッジ41には、8つのインクジェットモジュール243が設けられている。
【0030】
8つのインクジェットモジュール243は、搬送方向に沿って2列並べられている。そして、一列のインクジェットモジュール243は、幅方向に沿って4つ並べて配置されている。また、8つのインクジェットモジュール243は、2列のインクジェットモジュール243が搬送方向に沿って互い違いの千鳥状に配置されている。
【0031】
なお、インクジェットモジュール243の数及び配置方法は、上述したものに限定されるものではなく、6つ又は10つ以上のインクジェットモジュール243を配置してもよく、インクジェットモジュール243を搬送方向に対して傾斜させて配置してもよい。
【0032】
また、インクジェットヘッド242は、複数のノズル244を有している。そして、インクジェットヘッド242は、ノズル244からインクを記録媒体Rに向けて吐出する。これにより、搬送ベルト21に載置された記録媒体Rに画像が形成される。
【0033】
図3及び
図4は、本例のメンテナンス装置50の全体概略図である。
図3は、メンテナンス装置50を幅方向の一側から見た際の断面図であり、
図4は、メンテナンス装置50をインクが吐出される方向の上側から見た際の平面図である。
【0034】
メンテナンス装置50は、インクジェットヘッド242のインク吐出面41aをクリーニングするための装置である。本例では、各キャリッジに対して同一構成のメンテナンス装置50が設けられているので、ここでは、キャリッジ41に設けられているメンテナンス装置50を用いて説明する。
【0035】
図3に示すように、メンテナンス装置50は、インクジェットヘッド242のインク吐出面41aに残ったインクを掻き取って除去するクリーニングブレードとしてのブレード部材52と、ブレード部材52でインクが掻き取られたインク吐出部41aを洗浄液で清掃するクリーニングローラとしてのローラ部材222と、ブレード部材52およびローラ部材222を保持するケーシング226と、を備えている。また、メンテナンス装置50は、図示しない移動装置により、幅方向に移動可能に構成されている。
【0036】
ブレード部材52は、インク吐出面41aのインクを掻き取るためのブレード状の部材であって、
図4に示すようにキャリッジ41に配置された複数のインクジェットヘッド242(本例では4列)にわたって搬送方向に延在する状態で、ケーシング226に保持されている。また、ブレード部材52は、ケーシング226の移動方向上流側に、ブレード支持部材55に支持された状態で、ケーシング226の底面に立設されている。なお、ブレード支持部材55は、ブレード部材52で掻き取ったインクを通過させる隙間を有する板状部材で構成されている。
【0037】
本例のブレード部材52は、ケーシング226が幅方向に移動するときに、インク吐出面41aに対して非接触な状態で当該インク吐出面41aに残ったインクに接触する。非接触な状態であっても、インクに対する濡れ性を利用してインクをブレードに伝わらせることにより、インク吐出面41aからインクを掻き取って除去することができる。ブレード部材52をインク吐出面41aに対して非接触な状態とすることで、インク吐出面41aの劣化を防ぎ、インクジェットヘッド242の寿命を長くすることができる。なお、本例のブレード部材52は、金属製の矩形板で構成されている。ブレード部材52に用いられる金属材料は、例えばステンレス等、インクにより侵食されない性質を有することが好ましい。
【0038】
一般に、ブレード部材52の上端とインク吐出面41aとの距離が小さくなる程、インク吐出面41aに残るインク量は少なくなる。従って、ブレード部材52によるインクの掻き取り時には、ブレード部材52とインク吐出面41aとの距離は0より大きく、かつ0.5mm以下であることが好ましい。本例では、ブレード部材52の上端とインク吐出面41aとの距離を0.3mm~0.4mmに設定する。
【0039】
本例では、ブレード部材52とインク吐出面41aとの距離を0より大きくして非接触としているが、ブレード部材52の上端をインク吐出面41aと同じ高さ位置になるように配置して、ブレード部材52をインク吐出面41aに接触させるようにしてもよい。この場合には、ブレード部材52の材質は、弾性変形可能な素材、例えばEPDM、フッ素ゴムなどによって構成する。ブレード部材52をインク吐出面41aに対して接触状態とすることで、インク吐出面41aに残留したインクの除去効率をあげて、ローラ部材222に付着するインクの量を減らすことができる。
【0040】
ローラ部材222は、インク吐出面41aに当接して、当該インク吐出面41aに付着したインクを吸収して洗浄するものであり、インク吸収性のウレタン等で形成された円筒状のスポンジローラで構成されている。ローラ部材222は、水溶性有機溶剤によりインク吐出面41aを洗浄するものであって、ブレード部材52に対してケーシング226の移動方向下流側に配置されている。
【0041】
ローラ部材222は、
図4に示すようにキャリッジ41に配置された複数のインクジェットヘッド242にわたって搬送方向に延在する状態で、ケーシング226に保持されている。また、ローラ部材222は、回転軸222aと、多孔質部材222bとを有している。回転軸222aは、搬送方向に延びる部材であって、ケーシング226に固定されている。多孔質部材222bは、回転軸222aの周囲に配置された円筒状の多孔質部材、例えばスポンジである。
【0042】
多孔質部材222bは、該部材中で最も高い位置が、インク吐出面41aに接触するように配置されている。すなわち、本例では、多孔質部材222bの最も高い位置が、ブレード部材52の上端の高さ位置よりも高い位置になるようにケーシング226に保持されている。また、多孔質部材222bは、回転軸222aに対して回転可能に設けられており、メンテナンス装置50が移動して、多孔質部材222bがインク吐出面41aに接触することにより回転する。なお、ローラ部材222は、モータ等により自動的に回転させるようにしてもよい。
【0043】
ケーシング226は、ブレード部材52とローラ部材222を保持する部材である。ケーシング226の底部には、インク吐出面41aの洗浄に使用する水溶性有機溶剤等の洗浄液Lを貯留するための洗浄液貯留部230が形成されている。なお、ローラ部材222は、多孔質部材222bの最も低い位置が、洗浄液貯留部230に貯留された洗浄液Lに浸る状態で、ケーシング226に保持されている。
【0044】
ケーシング226の底面には、洗浄液貯留部230に貯留されている使用済みの洗浄液をケーシング226の外へ排出するための排出口227が形成されている。排出口227には、排出口227の開口を塞ぐための蓋部材としてのキャップ228が設けられている。また、排出口227の近傍には、排出口227に対してキャップ228を開閉可能にする開閉機構240が設けられている。開閉機構240は、図示しないソレノイドと、ソレノイドとキャップ228とを連結するアームとを備え、ソレノイドの回転によってアームを移動させることにより、排出口227に対してキャップ228を開閉させる。
【0045】
ケーシング226の移動方向上流側の底面には、ブレード部材52によりインク吐出面41aから掻き取られたインクを受けるためのインク受け部210が形成されている。インク受け部210には、ブレード部材52によりインク吐出面41aから掻き取られたインクが洗浄液貯留部230に移動できるように、ケーシング226の底面を洗浄液貯留部230側に傾けた、インク移動部としての傾斜面211が形成されている。すなわち、本例では、インク受け部210の移動方向上流側の高さを、移動方向下流側の高さよりも高くすることで、洗浄液貯留部230側に傾いた傾斜面211が形成されている。これにより、ブレード部材52で掻き取られたインク吐出面41aの残インクは、傾斜面211を伝って洗浄液貯留部230まで移動し、洗浄液貯留部230の洗浄液Lと混ざることができる。
【0046】
図5は、本例のメンテナンス装置とキャリッジとの位置関係を示す図である。
図5Aは、クリーニング動作時におけるメンテナンス装置50とキャリッジ41との位置関係を幅方向の一側から見た図であり、
図5Bは、クリーニング動作終了(待機状態)時の退避位置にあるメンテナンス装置50とキャリッジ41との位置関係を幅方向の一側から見た図である。
【0047】
メンテナンス装置50は、図示しない移動機構により、インクジェットヘッド242の長手方向(幅方向)に移動可能となっている。
図5Bに示すように、メンテナンス装置50は、画像形成動作時や待機状態時には、インクジェットヘッド242からのインク吐出を阻害しないようにすることと図示しないパージ受け部との干渉を避けるため、キャリッジ41の長手方向端部より外側の退避位置で待機するようになっている。
【0048】
また、メンテナンス装置50の退避位置において、ケーシング226の上部には、洗浄液貯留部230に洗浄液を供給するための洗浄液供給ポンプ220が配設されている。本例では、洗浄液供給ポンプ220から伸びる洗浄液管221の一部を、ブレード部材52の真上に配置する。これにより、洗浄液供給ポンプ220で洗浄液を供給する際に、ブレード部材52に付着しているインクを洗い流すことができる。
【0049】
洗浄液供給ポンプ220で供給する洗浄液としては、インクと性状が類似した液体を用いることが好ましく、インクと同じ試剤の液体を用いることが、インクの性状の類似性を良くする点で特に好ましい。ここで、インクと性状が類似した液体とは、インクと混ざっても凝集を起こさず、かつインクの粘度や表面張力といった特性を大きく変化させないような液体をいう。そのような液体としては、例えば、染料または顔料を除いたインク液が適当である。また、防腐剤等を入れることが洗浄液の長期保存の点で好ましい。なお、洗浄液として、通常の水を用いてもよい。
【0050】
また、メンテナンス装置50の退避位置において、ケーシング226の下部には、洗浄液貯留部230からブレード部材52で掻き取られたインクが混じった廃液として排出される廃洗浄液L1を溜める廃洗浄液溜め235が設けられている。なお、排出口227には、廃洗浄液溜め235と連結している図示しないチューブが接続されている。
【0051】
図5Aに示すように、クリーニング動作時には、図示しない昇降装置により上方へ移動したキャリッジ41と搬送ベルト21との間に、メンテナンス装置50が挿入できる空間t1が形成される。
【0052】
メンテナンス装置50が、空間t1を図の矢印に示すように幅方向に沿って移動することに伴い、移動方向上流側のブレード部材52でインク吐出面41aの残インクL2を掻き取って除去し、移動方向下流側のローラ部材222でインクが掻き取られた後のインク吐出面41aを清掃して、メンテナンス装置50によるインクジェットヘッドのクリーニング動作が行われる。このとき、ブレード部材52に掻き取られたインクL2は、ケーシング226の傾斜面211を伝って移動して、洗浄液貯留部230の洗浄液Lに混ざる。
【0053】
なお、クリーニング動作が終了すると、昇降装置によりキャリッジ41が下方に移動して、
図5Bに示すように、待機状態に復帰する。その後、開閉機構240により、キャップ228が開放されて、洗浄液貯留部230の廃洗浄液L1が廃洗浄液溜め235に排出される。
【0054】
以上述べたように、本例のインクジェット記録装置1のメンテナンス装置50によれば、ブレード部材52でインク吐出面41aから掻き取られたインクを、メンテナンス装置50のケーシング226に形成された傾斜面211に沿って洗浄液貯留部230まで移動させて、洗浄液貯留部230の洗浄液Lと混ぜることができる。これにより、ブレード部材52で掻き取られたインクが、ケーシング226内で乾燥してメンテナンス装置50内で固まることを防止することができる。
【0055】
また、キャップ228を開放することにより、ブレード部材52で掻き取られたインクL2を、廃洗浄液L1として廃洗浄液溜め235へ排出することができる。従って、ブレード部材52で掻き取られたインクは、乾燥しない状態で排出口227を通過するので、インクで排出口227が塞がれることを防止できる。
【0056】
次に、インクジェット記録装置1の内部構成について、
図6を用いて説明する。
【0057】
図6は、インクジェット記録装置1の内部構成のうち、インクジェットヘッドのクリーニング動作に関する構成を示すブロック図である。
この図に示すように、インクジェット記録装置1は、制御部180を備えている。
【0058】
制御部180は、公知のCPU、RAM、ROMを備えており、インクジェット記録装置1の各部を統括制御するようになっている。
【0059】
制御部180には、ヘッド制御部181、圧力制御部182、洗浄液供給制御部183、移動制御部184、蓋部材制御部185、ブレード傾倒制御部187等が接続されている。
【0060】
ヘッド制御部181は、各インクジェットヘッドと接続されており、当該インクジェットヘッドによるインクの吐出を制御する。
【0061】
圧力制御部182は、各インクジェットヘッド内の圧力を制御する。
【0062】
洗浄液供給制御部183は、洗浄液供給ポンプ220を制御して、メンテナンス装置50に供給される洗浄液の量を制御する。
【0063】
移動制御部184は、図示を省略した移動装置を制御して、メンテナンス装置50を幅方向に移動させたり、図示を省略した昇降装置を制御して、キャリッジを上下方向に移動させたりする。
【0064】
蓋部材制御部185は、開閉機構240を制御して、キャップ228を移動させて排出口227の開閉を行う。
【0065】
ブレード傾倒制御部187は、傾倒機構270を制御して、ブレード支持部材55を回動させることで、ブレード部材52をケーシング226の底面に対して傾ける。
【0066】
次に、インクジェットヘッドのクリーニング時におけるインクジェット記録装置1及びメンテナンス装置50の動作について、
図7を用いて説明する。
図7は、インクジェットヘッドのクリーニング時におけるインクジェット記録装置1の動作を示すフローチャートである。
【0067】
まず、前提として、ヘッド制御部181によるインクジェットヘッドによるフラッシング動作を停止させた後、圧力制御部182によるインクジェットヘッドの背圧制御を停止させる。
【0068】
次に、インクジェットヘッドを図示しないパージ受け部に対向させた状態で、圧力制御部182により、インクジェットヘッド内のインクを所定時間加圧パージする(ステップS1)。これにより、インクジェットヘッド内の気泡がインクとともにパージされ、パージ受け部に収容される。このとき、インクジェットヘッドのインク吐出面41aには少量のインクが残留する。
【0069】
次に、移動制御部184により、キャリッジを上方に移動させて、搬送ベルト21とインクジェットヘッドとの間に、メンテナンス装置50を進入させる空間t1を形成する(ステップS2)。なお、キャリッジを移動させる前に、洗浄液貯留部230の洗浄液の量が不足している場合には、洗浄液供給ポンプ220により洗浄液を補填する。また、ギヤ等によりローラ部材222に対して接離可能に設けられている図示しない絞り軸を圧接させて、ローラ部材222に含まれる洗浄液の量を調整する。
【0070】
つぎに、移動制御部184により、退避位置にあるメンテナンス装置50のケーシング226を幅方向に移動させて、ブレード部材52及びローラ部材222によるクリーニング動作を実施する(ステップS3)。このとき、ブレード部材52によりインク吐出面41aから掻き取られたインクは、傾斜面211を伝って洗浄液貯留部230の洗浄液と混ざるので、インクが乾燥してメンテナンス装置50内で固まることを防ぐことができる。
【0071】
すべてのインクジェットヘッドのインク吐出面41aのクリーニング動作が終了すると、移動制御部184は、クリーニング動作時と反対方向にケーシング226を移動させて、メンテナンス装置50を最初の退避位置に戻す(ステップS4)。
【0072】
つぎに、蓋部材制御部185は、開閉機構240により、排出口227を塞いでいるキャップ228を移動させて、ケーシング226の底面に形成されている排出口227を開放する(ステップS5)。これにより、洗浄液貯留部230に移動して貯留されていたブレード部材52で掻き取られたインクが、洗浄液とともにメンテナンス装置50の外部へ排出される。これにより、ブレード部材52で掻き取られたインクを乾燥させない状態で排出口227から排出することができるので、排出口227が固まったインクで塞がれることを防止できる。なお、ローラ部材222を回転させて、残っている洗浄液で清掃を行ってから、洗浄液を排出するようにしてもよい。
【0073】
つぎに、蓋部材制御部185は、開閉機構240によりキャップ228を移動させて、ふたたび排出口227を閉じる(ステップS6)。そして、洗浄液供給制御部183は、洗浄液供給ポンプ220により、新たな洗浄液を洗浄液貯留部230に充填して、つぎのクリーニング動作に備える(ステップS7)。
【0074】
図8は、他の実施形態例のメンテナンス装置150を幅方向の一側から見た断面図である。
図8に示すように、本例のメンテナンス装置150は、ケーシング226の移動方向上流側に、ブレード部材52で掻き取られたインクを一時的に貯留するインク受け部材60を備えている。
【0075】
インク受け部材60には、ブレード部材52で掻き取られたインクを一時的に貯留するインク貯留部260が形成されている。インク受け部材60は、回動可能にケーシング226に保持されており、水平状態と洗浄液貯留部230側へ傾いた状態との間で姿勢が変位する。インク受け部材60の回動機構として、インク受け部材60の底面には、メンテナンス装置150が退避位置にあるときに、インク受け部材60が洗浄液貯留部230側へ傾くように付勢するバネ部材262が設けられている。インク受け部材60が洗浄液貯留部230側へ傾くことで、インク移動部としての傾斜面261が形成され、ブレード部材52で掻き取られたインクが傾斜面261を伝って洗浄液貯留部230へ移動する。
【0076】
また、ブレード部材52は、ブレード部材52の両端に設けられた別部材のブレード保持部材263によって保持されている。また、ブレード保持部材263は、上端に曲部を有する矩形状の部材で構成されている。なお、ブレード保持部材263の本数は2本に限られることなく、ブレード部材52の両端を保持することに加えて、ブレード部材52の中央部を保持するようにしてもよい。
【0077】
ブレード保持部材263は、クリーニング動作時において、その上端がキャリッジの底面のノズル吐出面41a以外の部分に当接するように、インク受け部材60の底面に立設されている。このように、ブレード保持部材263をノズル吐出面41a以外の部分に突き当てることにより、ブレード部材52の接触によるノズル吐出面41aの劣化を防ぐことができる。
【0078】
また、本例のブレード保持部材263は、シムを挟んでブレード部材52を保持固定しているので、シム分だけブレード部材52の保持位置(高さ)を調整することができる。なお、本例では、ブレード部材52の保持位置を調整して、ブレード部材52の上端とインク吐出面41aとの距離を0.3mm~0.4mmに設定する。
【0079】
また、ブレード保持部材263を回転するコロ部材で構成するようにしてもよい。これにより、ブレード保持部材263とキャリッジとの摩擦抵抗を少なくして、ケーシング226の移動をスムーズに行うことができる。
【0080】
図9は、本例のメンテナンス装置とキャリッジとの位置関係を示す図である。
図9Aは、クリーニング動作時におけるメンテナンス装置150とキャリッジ41との位置関係を幅方向の一側から見た図であり、
図9Bは、クリーニング動作終了(待機状態)時における退避位置のメンテナンス装置150を幅方向の一側から見た図である。
【0081】
図9Aに示すように、メンテナンス装置150が、空間t1を図中矢印の幅方向に沿って移動することに伴い、移動方向上流側のブレード部材52でインク吐出面41aの残インクL2を掻き取って除去し、移動方向下流側のローラ部材222でインクが掻き取られた後のインク吐出面41aを清掃して、メンテナンス装置150によるインクジェットヘッドのクリーニング動作が行われる。本例では、ブレード部材52で掻き取れたインクL2は、キャリッジ41からの押付力でバネ部材262が圧縮されて水平状態に保たれているインク受け部材60のインク貯留部260に一時的に貯留される。
【0082】
本例では、ブレード部材52で掻き取られたインクを一時的に貯留するインク貯留部260を設けることにより、クリーニング動作中は、ブレード部材52で掻き取られたインクを洗浄液貯留部230の洗浄液Lから完全分離して、ローラ部材222の表面を汚さないようにすることができる。
【0083】
なお、キャリッジ41の下流側端部に、ブレード保持部材263を挿入しやすくするためのテーパ264を設けてもよい。また、本例では、メンテナンス装置150の移動に伴って、インク受け部材60の位置状態を変える構成としたが、インク受け部材60を回動させるモータ等を別途設け、制御部180により、インク受け部材60の姿勢を変えるようにしてもよい。
【0084】
クリーニング動作が終了すると、メンテナンス装置150は画像形成動作が行える退避位置に復帰する。このとき、キャリッジ41からの押圧力がなくなると、バネ部材262の付勢力により、
図9Bに示すように、インク受け部材60の姿勢が洗浄液貯留部230側へ傾いた状態となる。これにより、インク貯留部261に一時的に貯留されていたインクが洗浄液貯留部230に移動する。その後、開閉機構240により、キャップ228が開放されて、洗浄液貯留部230の廃洗浄液L2が廃洗浄液溜め235に排出される。
【0085】
本例のメンテナンス装置150によれば、ブレード部材52でインク吐出面41aから掻き取られたインクは、インク受け部材60が傾くことにより形成された傾斜面261に沿って洗浄液貯留部230まで移動して、洗浄液貯留部230の洗浄液Lと混ざる。これにより、ブレード部材52で掻き取られたインクが乾燥して、メンテナンス装置150内で固まることを防止できる。
【0086】
また、キャップ228を開放することにより、ブレード部材52で掻き取られたインクを洗浄液とともに、廃洗浄液溜め235へ排出することができる。これにより、ブレード部材52で掻き取られたインクを乾燥させない状態で排出口227から排出できるので、固まったインクで排出口227が塞がれることを防止できる。
【0087】
なお、本例では、洗浄液供給ポンプ220から伸びる洗浄液管221の一部を、ブレード部材52の真上に配置する。これにより、洗浄液供給ポンプ220で洗浄液を供給する際に、ブレード部材52に付着しているインクを洗い流すことができる。
【0088】
図10は、他の実施形態例のメンテナンス装置250を幅方向の一側から見た断面図である。
図10に示すように、本例のメンテナンス装置250は、ケーシング226の移動方向上流側に、ブレード部材52で掻き取られたインクを一時的に貯留するインク貯留部70が設けられている。
【0089】
インク貯留部70は、ブレード部材52を支持するブレード支持部材71をケーシング226の底面に対して立設することで、ブレード支持部材71とケーシング226の底面との間に形成される。ブレード支持部材71は、隙間のない板状部材で構成されており、下端をケーシング226の底面に設けられた図示しない回転軸と連結することで、ケーシング226の底面に対して傾動可能に保持されている。
【0090】
ブレード支持部材71の近傍には、ブレード支持部材71をケーシング226の底面に対して傾動可能にする傾動機構270が設けられている。傾動機構270は、図示しないソレノイドと、ソレノイドとブレード支持部材71とを連結するアームとを備え、ソレノイドの回転によってアームを移動させることにより、ブレード支持部材71をケーシング226の底面に対して傾動させる。
【0091】
図11は、本例のメンテナンス装置とキャリッジとの位置関係を示す図である。
図11Aは、クリーニング動作時におけるメンテナンス装置250とキャリッジ41との位置関係を幅方向の一側から見た図であり、
図11Bは、画像形成動作時(クリーニング動作終了時)における退避位置のメンテナンス装置250を幅方向の一側から見た図である。
図11Cは、廃洗浄液の排出時における退避位置のメンテナンス装置250を幅方向の一側から見た図である。
【0092】
図11Aに示すように、メンテナンス装置250が図中矢印の幅方向に沿って移動することに伴い、移動方向上流側のブレード部材52でインク吐出面41aの残インクを掻き取って除去し、移動方向下流側のローラ部材222でインクが掻き取られた後のインク吐出面41aを清掃して、メンテナンス装置250によるインクジェットヘッド242のクリーニング動作が行われる。ブレード部材52で掻き取られたインクは、ケーシング226の底面に対して垂直に保たれたブレード支持部材71により堰き止められて形成されるインク貯留部70に一時的に貯留される。インク貯留部70の底面には、ケーシング226の底面を洗浄液貯留部230側に傾けたインク移動部としての傾斜面211が形成されている。
【0093】
本例では、ブレード部材52で掻き取られたインクを一時的に貯留するインク貯留部70を設けることにより、クリーニング動作中は、ブレード部材52で掻き取られたインクを洗浄液貯留部230の洗浄液Lから完全分離して、ローラ部材222の表面を汚さないようにすることができる。
【0094】
クリーニング動作が終了すると、メンテナンス装置250は待機状態の退避位置に復帰する。このとき、傾動機構270により、ブレード支持部材71を洗浄液貯留部230側へ傾けることで、インク貯留部70に一時的に貯留されていたインクL2が、ケーシング226の傾斜面211に沿って洗浄液貯留部230に移動して、洗浄液と混ざり合う。本例では、同時に、ブレード支持部材71に支持されているブレード部材52も洗浄液に浸されるので、ブレード部材52に付着したインクを洗い流すことができる。
【0095】
その後、
図11Cに示すように、開閉機構240によりキャップ228が開放されて、洗浄液貯留部230の洗浄液L1が廃洗浄液溜め235に排出される。そして、傾動機構270により、ブレード支持部材71をケーシング226の底面に対して垂直となる位置に移動させた後、洗浄液供給ポンプ220により、新たな洗浄液を洗浄液貯留部230に充填して、つぎのクリーニング動作に備える。
【0096】
本例のメンテナンス装置250によれば、ブレード部材52でインク吐出面41aから掻き取られたインクは、ケーシング226の底面に形成された傾斜面211に沿って洗浄液貯留部230まで移動して、洗浄液貯留部230の洗浄液と混ざり合う。これにより、ブレード部材52で掻き取られたインクが乾燥して、メンテナンス装置250内で固まることを減らすことができる。
【0097】
さらには、キャップ228を開放することにより、ブレード部材52で掻き取られたインクを洗浄液とともに、廃洗浄液溜め235へ排出することができる。これにより、ブレード部材52で掻き取られたインクを乾燥させない状態で排出口227から排出することができるので、固まったインクで排出口227が塞がれることを防止できる。
【0098】
以上、本例に係るメンテナンス装置50及びインクジェット記録装置1について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0099】
すなわち、上述した実施形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、本実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0100】
本例では、ブレード部材52の真上に洗浄液菅221を配置しているが、洗浄液の供給経路上にブレード部材52を配置すれば、洗浄液供給ポンプ220で洗浄液を供給する際に、ブレード部材52に付着しているインクを洗い流すことができる。
【0101】
例えば、本例では、排出口227を通じて洗浄液貯留部230の廃洗浄液をメンテナンス装置50の外部へ排出するようにしているが、例えば、ケーシング226自体を傾ける構成とすることで排出口227を通さずに廃洗浄液L1を排出してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1・・・インクジェット記録装置
2・・・搬送部
5・・・送り出し部
6・・・巻き取り部
21・・・搬送ベルト
22・・・駆動ローラ
23・・・従動ローラ
24・・・押し付け部材
31~36・・・プリントユニット
41~46・・・キャリッジ
41a・・・ヘッド吐出面
50、150、250・・・メンテナンス装置
52・・・ブレード部材
55・・・ブレード支持部材
60・・・インク受け部材
70・・・インク貯留部
71・・・ブレード支持部材
180・・・制御部
181・・・ヘッド制御部
182・・・圧力制御部
183・・・洗浄液供給制御部
184・・・移動制御部
185・・・蓋部材制御部
187・・・ブレード傾倒制御部
210・・・インク受け部
211、261・・・傾斜面(インク移動部)
220・・・洗浄液供給ポンプ
221・・・洗浄液管
222・・・ローラ部材
222a・・・回転軸
222b・・・多孔質部材
226・・・ケーシング
227・・・排出口
228・・・キャップ
230・・・洗浄液貯留部
235・・・廃洗浄液溜め
240・・・開閉機構
242・・・インクジェットヘッド
243・・・インクジェットモジュール
244・・・ノズル
260・・・インク貯留部
262・・・バネ部材
263・・・ブレード保持部材
270・・・傾動機構