(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/225 20060101AFI20231031BHJP
F16L 13/02 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C03B5/225
F16L13/02
(21)【出願番号】P 2019191016
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
(72)【発明者】
【氏名】藤原 克利
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178714(JP,A)
【文献】特公昭48-035138(JP,B1)
【文献】特開2003-136239(JP,A)
【文献】特開2006-305587(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146446(WO,A1)
【文献】特開2015-160799(JP,A)
【文献】特開昭58-215231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B
F16L
B23K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸が横方向に延びるように設置された状態で溶融ガラスを移送する移送管と、前記移送管の上部に接合されたベント管とを備えたガラス物品の製造装置であって、
前記移送管及び前記ベント管は、白金又は白金合金で構成され、
前記ベント管の一方端にフランジ部
と、前記フランジ部に連なる湾曲部とが設けられ、
前記フランジ部が前記移送管に接合されていることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【請求項2】
前記ベント管が、前記移送管との接続箇所を構成すると共に前記フランジ部
及び前記湾曲部を含んだ接続部と、前記接続部に連なる本体部とを備え、
前記本体部における肉厚が、前記移送管の肉厚よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項3】
前記接続部が、前記本体部に連なる筒状
部を更に含み、
前記湾曲部は、前記フランジ部と前記筒状部との相互間に介在して両者を連続させ、
前記ベント管が、前記本体部と前記接続部とを接合することで構成されることを特徴とする請求項2に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項4】
前記移送管および前記ベント管が、溶融ガラスから気泡を脱泡させるための清澄槽を構成することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のガラス物品の製造装置を用いて、
前記移送管内に充満させた溶融ガラスから気泡を脱泡させる清澄工程を実行することを特徴とするガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板やガラス管等に代表されるガラス物品は、ガラス原料を溶解させて溶融ガラスを生成する溶解工程、溶融ガラスから気泡を脱泡させる清澄工程、溶融ガラスを撹拌して均質化させる均質化工程、溶融ガラスからガラス物品を成形する成形工程等の各工程を経て製造される。
【0003】
上記のガラス物品の製造工程のうち、清澄工程は、一例として特許文献1に開示されるような態様で実行される。
【0004】
同文献に開示された態様においては、清澄工程を実行するための設備として清澄槽を用いる。清澄槽は、溶融ガラスを移送するための移送管(清澄管)と、溶融ガラスから脱泡させた気泡(ガス)を移送管外に排出するためのベント管(通気管)と、移送管を通電加熱するための電極板とを備えている。移送管は管軸が横方向に延びるように設置され、ベント管は移送管の上部に接合されている。移送管内にて溶融ガラスの液面上には気相空間が形成されている。移送管やベント管は、白金又は白金合金で構成されている。
【0005】
上記の清澄槽を用いて清澄工程を実行する際には、移送管を通電加熱することで移送管内を流れる溶融ガラスを加熱しつつ、ガラス原料に配合された清澄剤の作用により溶融ガラスから気相空間に気泡を脱泡させる。気相空間に脱泡させた気泡(ガス)はベント管を通じて移送管外に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、清澄工程を実行するための設備においては、移送管とベント管との接合形態に由来して、下記のような解決すべき問題が生じていた。
【0008】
移送管とベント管とを接合するにあたっては、例えば、移送管の管壁に貫通孔を設けると共に、貫通孔にベント管の端部を挿入した上で、移送管とベント管とを溶接等により接合する。両管の具体的な接合形態としては、
図6に示すように、移送管100の内壁面100aからベント管200の端部200aが突き出ないように、内壁面100aと端部200aとを面一にした状態で両管100,200を接合する形態がある。
【0009】
しかしながら、本形態を採用する場合には、移送管100に設けた貫通孔100bの縁部の形状と、ベント管200の端部200aの形状とを合わせる必要があるために、高度な加工が要求される場合がある。例えば、移送管100とベント管200とが共に円筒状の形状を有する場合、ベント管200の端部200aを挿入するための移送管100の貫通孔100bは、その縁部が三次元的に湾曲した状態となるため、この湾曲に合うようにベント管200の端部200aを加工することが求められる。このような加工の難易度の高さに起因して、設備コストが嵩むという不具合があった。その上、貫通孔100bの縁部とベント管200の端部200aとを高精度に接合することが要求される関係上、これの実現のためには両管100,200を密着させた状態で接合することが求められる。このとき、両管100,200が変形して、両管100,200の接合部300の強度が不足しやすくなる。その結果、清澄工程を実行する際の熱変形等により、両管100,200の接合部300が破損しやすく、設備の寿命が短命化しやすいという不具合があった。
【0010】
そこで、上記の不具合を解消するため、両管の接合形態として、
図7に示すように、移送管100の内壁面100aからベント管200の端部200aを突き出させた状態で両管100,200を接合する形態の採用が考えらえる。
【0011】
しかしながら、本形態を採用した場合でも未だ難点がある。例えば、特許文献1に開示された態様のごとく、移送管100内に気相空間を形成した場合には、移送管100の内壁面100aから突き出たベント管200の端部200aに異物が付着し、端部200aから落下した異物が溶融ガラスに混入してしまう難点がある。一方、気相空間を形成せずに移送管100内を溶融ガラスで充満させた場合には、突き出たベント管200の端部200aの直上流側において、溶融ガラスの流れが停滞した領域や、白金の揮発の原因となるガス溜りが発生してしまう難点がある。
【0012】
従って、上述した不具合や難点を解消できる技術の確立が期待されていた。上記の事情に鑑みなされた本発明は、ガラス物品を製造するに際して、清澄工程を実行するための設備の低コスト化、長寿命化を図ると共に、溶融ガラスへの異物の混入、溶融ガラスの停滞、及びガス溜りの発生を防止することを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための本発明は、管軸が横方向に延びるように設置された状態で溶融ガラスを移送する移送管と、移送管の上部に接合されたベント管とを備えたガラス物品の製造装置であって、ベント管の一方端にフランジ部が設けられ、フランジ部が移送管に接合されていることを特徴とする。
【0014】
本装置では、ベント管の一方端に設けられたフランジ部が移送管に接合されている。つまり、移送管とベント管との接合形態について、移送管の内壁面からベント管の端部が突き出た状態で両管が接合される形態を採用していない。このとおりベント管の端部が突き出ていないので、移送管内に気相空間を形成した場合でも、ベント管の端部への異物の付着が必然的に回避され、ひいては端部から落下した異物が溶融ガラスに混入するような事態が発生しなくなる。一方、移送管内を溶融ガラスで充満させた場合でも、ベント管の端部が突き出ていないので、端部の直上流側で溶融ガラスの停滞やガス溜りの発生が起こり得なくなる。さらには、例えば、ベント管に存在するフランジ部を移送管の貫通孔よりも僅かに大きく作製しておけば、移送管とベント管とを接合するに際して、フランジ部の研削や切断といった低難易度の加工により、フランジ部が移送管に密着する状態に仕上げることができる。これにより、設備コストが嵩むことを回避でき、低コスト化を図ることが可能になる。その上、両管の変形が防がれ、両管の接合部の強度が十分に確保されることから、設備の長寿命化を図ることも可能になる。以上のことから、本装置によれば、ガラス物品を製造するに際して、清澄工程を実行するための設備の低コスト化、長寿命化を図ることが可能となる。また、移送管内に気相空間を形成した場合は溶融ガラスへの異物の混入を防止でき、移送管内を溶融ガラスで充満させた場合は溶融ガラスの停滞、及びガス溜りの発生を防止できる。
【0015】
上記の構成では、ベント管が、移送管との接続箇所を構成すると共にフランジ部を含んだ接続部と、接続部に連なる本体部とを備え、本体部における肉厚が、移送管の肉厚よりも薄いことが好ましい。
【0016】
このようにすれば、ベント管の本体部の肉厚を移送管の肉厚よりも薄くしたことで、ベント管について可及的に軽量化を図ることが可能となり、ベント管の重さに起因した移送管の変形を回避しやすくなる。
【0017】
上記の構成では、接続部が、本体部に連なる筒状部、及びフランジ部と筒状部との相互間に介在して両者を連続させる湾曲部を更に含み、ベント管が、本体部と接続部とを接合することで構成されることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、元々は別部材として作製された本体部と接続部とを接合することでベント管を構成しているため、本体部と接続部との両者を異なる肉厚に作製すれば、両者間に肉厚の差を容易に設けることが可能となる。これにより、上述のベント管のフランジ部の厚みや本体部の肉厚と移送管の肉厚の関係を容易に満足させることができる。また、接続部の筒状部、湾曲部及びフランジ部の厚みが略同じになるので、接続部を破損から的確に保護することが可能となる。
【0019】
上記の構成では、移送管およびベント管が、溶融ガラスから気泡を脱泡させるための清澄槽を構成してもよい。
【0020】
また、上記のガラス物品の製造装置を用いて、移送管内に充満させた溶融ガラスから気泡を脱泡させる清澄工程を実行するガラス物品の製造方法によれば、上記のガラス物品の製造装置と同様に、清澄工程を実行するための設備の低コスト化、長寿命化を図ることが可能となる。また、ベント管の端部が突き出ていないので、端部の直上流側で溶融ガラスの停滞及びガス溜りの発生を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガラス物品を製造するに際して、清澄工程を実行するための設備の低コスト化、長寿命化を図ることが可能となる。また、移送管内に気相空間を形成した場合は溶融ガラスへの異物の混入を防止でき、移送管内を溶融ガラスで充満させた場合は溶融ガラスの停滞、及びガス溜りの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】移送管とベント管との接合形態を模式的に示す図である。
【
図4】清澄槽におけるベント管の周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係るガラス物品の製造装置および製造方法について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態では、ガラス物品の一種としてガラス板を製造する場合を例に挙げて説明する。しかしながら、ガラス板以外のガラス物品(例えば、ガラスロールやガラス管、ガラス繊維等)を製造する場合においても、本発明を適用することが可能である。
【0024】
本実施形態に係るガラス物品の製造方法(以下、単に製造方法と表記)の実行には、
図1に示すガラス物品の製造装置1(以下、単に製造装置1と表記)を用いる。
【0025】
製造装置1は、ガラス板の元となる溶融ガラスGMの流れの上流側から順番に、溶解槽2と、清澄槽3と、均質化槽4(撹拌槽)と、状態調整槽5と、成形装置6とを備えている。これらの設備はガラス供給路7a~7dによって連結されている。なお、製造装置1は、これらの設備の他に、成形装置6により成形されたガラスリボンGRを徐冷するための徐冷炉(図示省略)や、徐冷後のガラスリボンGRから連続的にガラス板を切り出すための切断装置(図示省略)等を備えている。
【0026】
溶解槽2では、槽内に連続的に投入されるガラス原料を順次に溶解させることで、溶融ガラスGMを連続的に生成する溶解工程を実行する。ガラス原料には、後述する清澄工程に用いる清澄剤(例えば、SnO2等)が配合されている。溶解槽2は、ガラス供給路7aにより清澄槽3と接続されている。
【0027】
清澄槽3では、溶解槽2から供給された溶融ガラスGMを加熱しつつ、清澄剤の作用等により溶融ガラスGMから気泡を脱泡させる清澄工程を実行する。清澄槽3は、ガラス供給路7bにより均質化槽4と接続されている。
【0028】
均質化槽4では、撹拌翼を備えたスターラー4aにより清澄後の溶融ガラスGMを撹拌することで、溶融ガラスGMを均質化させる均質化工程を実行する。均質化槽4は、ガラス供給路7cにより状態調整槽5と接続されている。
【0029】
状態調整槽5では、溶融ガラスGMをガラスリボンGRの成形に適した状態にするべく、溶融ガラスGMの温度(粘度)や流量等を調整する状態調整工程を実行する。状態調整槽5は、ガラス供給路7dにより成形装置6と接続されている。
【0030】
成形装置6では、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスGMからガラスリボンGRを連続的に成形する成形工程を実行する。なお、成形装置6は、スロットダウンドロー法、リドロー法、フロート法等の他の成形法によりガラスリボンGRを成形するものであっても構わない。
【0031】
以下、清澄工程を実行するための設備である清澄槽3の具体的な構成について説明する。
【0032】
図2に示すように、清澄槽3は、溶融ガラスGMを移送するための移送管8と、溶融ガラスGMから脱泡させた気泡(ガス)を移送管8外に排出するためのベント管9と、移送管8を通電加熱するための加熱部10とを備えている。移送管8及びベント管9は、いずれも白金又は白金合金で構成されている。なお、移送管8は、煉瓦等の耐火物(図示省略)に囲われるようにして耐火物に収容されている。
【0033】
本実施形態では、移送管8内に溶融ガラスGMを充満させた状態、すなわち、移送管8の内壁面8aの全領域を溶融ガラスGMに接触させた状態で、清澄工程を実行する(
図4を参照)。
【0034】
移送管8は、管軸8bが横方向(本実施形態では水平方向)に延びるように設置されている。移送管8の上流側端部はガラス供給路7aと接続され、下流側端部はガラス供給路7bと接続されている。ベント管9は移送管8の上部に接合されており、移送管8から上方に突き出ている。移送管8の熱変形を防止するため、環状やC字状の補強部材を内壁面8aに設けてもよい。また、溶融ガラスGMを撹拌するために、邪魔板を内壁面8aに設けてもよい。
【0035】
なお、本実施形態では、移送管8は、管軸8bが水平方向に延びるように設置されているが、この限りではなく、管軸8bが水平面に対して角度30°以下の範囲内で傾斜するように設置されていてもよい。また、本実施形態では、単一のベント管9が移送管8に接合されているが、この限りではない。例えば、溶融ガラスGMの流れ方向に間隔を空けた状態で、複数のベント管9が移送管8に接合されていてもよい。
【0036】
加熱部10は、移送管8における上流側端部および下流側端部のそれぞれに配置されている。加熱部10は、移送管8の外壁面8cを囲むように設けられたフランジ12と、フランジ12の上部に形成された電極13とを備えている。加熱部10は、電極13に所定の電圧が印加されるのに伴って移送管8を通電加熱する。これにより、清澄槽3は、清澄工程の実行に際して、移送管8内を流れる溶融ガラスGMを所定の温度に加熱(例えば1300℃~1500℃)する。
【0037】
ここで、移送管8とベント管9との接合形態について説明する。
【0038】
図3に示すように、移送管8は円筒状をなしている。移送管8の管壁のうちの上部(本実施形態では頂部)には貫通孔8dが形成されている。貫通孔8dは、孔軸に沿う方向(移送管8の径方向に一致)から視て円形の形状を有する。貫通孔8dの縁部は、移送管8の管壁の湾曲に倣って三次元的に湾曲している。ベント管9は、一方端にフランジ部9aが設けられた円筒状をなしている。
【0039】
移送管8とベント管9との両管8,9を接合する際には、ベント管9のフランジ部9aを移送管8に接合する。
【0040】
両管8,9を接合するための準備として、まず、ベント管9のフランジ部9aをカッターにより切断したり、グラインダーにより研削したりすることで、フランジ部9aのサイズを移送管8の貫通孔8dのサイズに合わせる。ここで、切断や研削に伴ってフランジ部9aのサイズを小さくすることで、フランジ部9aのサイズ調節を行うことから、調節前の段階のフランジ部9aのサイズは、予め貫通孔8dのサイズよりも大きくしておく。また、上記のサイズ調節に加えて、三次元的に湾曲した貫通孔8dの縁部に倣ってフランジ部9aの外周端が湾曲するように調節(以下、湾曲調節と表記)を行う。
【0041】
その後、フランジ部9aを貫通孔8dに挿入すると共に、フランジ部9aの外周端と貫通孔8dの内周面とを突き合せた状態の下で、両管8,9を溶接により接合する。このとき、
図4に示すように、移送管8の内壁面8aとフランジ部9aの下面9aa(溶融ガラスGMに臨む面)との間に段差が形成されないように、両者8a,9aaを面一に揃えた状態で両管8,9を接合する。
【0042】
なお、本実施形態では、移送管8とベント管9との両管8,9が共に円筒状に形成されているが、これに限定されるものではない。両管8,9の少なくとも一方が他の筒状の形状に形成されていても構わない。また、本実施形態では、移送管8内に溶融ガラスGMを充満させているが、移送管8内にて溶融ガラスGMの液面上に気相空間が形成されるようにしてもよい。この場合、移送管8の貫通孔8dは、溶融ガラスGMの液面よりも上方に位置してさえいれば、必ずしも管壁の頂部に設けなくてもよい。
【0043】
図4に示すように、ベント管9は、溶融ガラスGMの液面の上方に位置しており、液面から脱泡した気泡B(ガス)がベント管9内を通過して移送管8外に排出される。ベント管9は、移送管8との接続箇所を構成する接続部9xと、接続部9xに連なる円筒状の本体部9yとを備えている。
【0044】
接続部9xは、上記のフランジ部9aに加えて、本体部9yに連なる円筒状の筒状部9bと、フランジ部9aと筒状部9bとの相互間に介在して両者9a,9bを連続させる湾曲部9cとを含んでいる。なお、ベント管9の管軸9dは、移送管8の管軸8bに対して直交する方向に延びている。接続部9xは、円筒状の部材の端部に曲げ加工を施すことによって湾曲部9c及びフランジ部9aを形成することで作製される。
【0045】
筒状部9bは、その内径が本体部9yの内径と同一寸法となっている。これにより、筒状部9bの内周面と本体部9yの内周面との両者間に段差が形成されることなく、両者が面一に揃えられている。なお、接続部9xと本体部9yとの両者9x,9yは、溶接により接合されている。
【0046】
湾曲部9cは、フランジ部9aと筒状部9bとの双方に対して滑らかに連なった状態で湾曲している。この湾曲部9cの機能としては、上述したフランジ部9aのサイズ調節や湾曲調節を行う際に、湾曲部9cを変形させる(湾曲部9cのRを変化させる)ことで、サイズ調節や湾曲調節を容易にする機能がある。
【0047】
フランジ部9a、筒状部9b、及び湾曲部9cを含んだ接続部9xの肉厚T1は、本体部9yの肉厚T2よりも厚くなっている。なお、フランジ部9aと筒状部9bと湾曲部9cとのうち、湾曲部9cについては、上述したフランジ部9a及び湾曲部9cを形成するための曲げ加工に伴って不可避的に厚みが薄くなる(例えば、約10%薄くなる)。そのため、曲げ加工の前後で肉厚T1と肉厚T2との大小関係が変化しないように、曲げ加工前の段階における肉厚T1を選定しておく。
【0048】
ベント管9のフランジ部9aの厚みT1は、移送管8の肉厚T3よりも厚くなっている。しかしながら、これに限定されるものではなく、厚みT1と肉厚T3とが同一の厚みであってもよく、或いは、厚みT1は肉厚T3よりも薄くてもよい。フランジ部9aの厚みT1が、移送管8の肉厚T3以上であれば、移送管8の管壁とフランジ部9aとの間で電気抵抗が等しくなる、或いは、移送管8の管壁に比べてフランジ部9aの電気抵抗が小さくなる。このため、清澄工程の実行に際して通電加熱を行った場合に、フランジ部9aの過度な発熱を回避しやすくなり、設備の破損を防止する上で有利となる。なお、本実施形態のごとく、厚みT1を肉厚T3よりも厚くする場合、清澄工程の実行に伴う通電加熱において、フランジ部9aの発熱不足を防止する観点から、例えば厚みT1の上限値を肉厚T3の2倍とすればよい。
【0049】
ベント管9の本体部9yの肉厚T2は、移送管8の肉厚T3よりも薄くなっている。ここで、肉厚T2が過度に薄くなるとベント管9の強度が不足するため、強度不足を防止する観点から、肉厚T2の下限値は肉厚T3の半分(0.5倍)とすることが好ましい。
【0050】
以下、上記の製造装置1および製造方法による主たる作用・効果について説明する。
【0051】
上記の製造装置1では、ベント管9の一方端に設けられたフランジ部9aが移送管8に接合されている。このとおり、移送管8の内壁面8aからベント管9の端部が突き出るような構成を採用していない。そのため、突き出たベント管9の端部の直上流側で溶融ガラスGMの停滞やガス溜りが発生するような事態が起こり得なくなる。さらに、低難易度の加工(切断や研削)によりフランジ部9aが移送管8に密着する状態に仕上げられるので、設備コストが嵩むことを回避でき、低コスト化を図ることが可能になる。加えて、接合する際の両管8,9の変形が防がれる。これにより、両管8,9の接合部の強度が十分に確保され、設備の長寿命化を図ることも可能になる。
【0052】
なお、上記の製造装置1および製造方法によれば、上記の実施形態とは異なり、移送管8内にて溶融ガラスGMの液面上に気相空間が形成される場合にも、以下のような作用・効果が得られる。すなわち、移送管8の内壁面8aからベント管9の端部が突き出ていないので、ベント管9の端部への異物の付着が必然的に回避され、端部から落下した異物が溶融ガラスGMに混入するような事態が発生しなくなる。
【0053】
ここで、本発明に係るガラス物品の製造装置および製造方法は、上記の実施形態で説明した構成や態様に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、ベント管9のフランジ部9aが移送管8の貫通孔8dに挿入されると共に、フランジ部9aの外周端と貫通孔8dの内周面とを突き合せた状態の下で、両管8,9が溶接により接合されている。しかしながら、例えば
図5に示すように、フランジ部9aを貫通孔8dの縁部に沿わせつつ、フランジ部9aを移送管8上に重ね合わせた状態の下で、両管8,9が溶接により接合されるようにしてもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、移送管8が清澄槽3を構成しているが、これに限定されるものではない。例えば、清澄槽3に代えてガラス供給路7a~7dを構成してもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、接続部9xは、例えば円筒状の部材の端部に曲げ加工を施すことによって湾曲部9c及びフランジ部9aを形成することで作製されるが、これに限定されるものではない。例えば、接続部9xは、ドーナツ状の板状部材の内周側端部に曲げ加工を施すことによって湾曲部及び円筒状の本体部を形成することで作製されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 製造装置
3 清澄槽
8 移送管
8b 移送管の管軸
9 ベント管
9a フランジ部
9b 筒状部
9c 湾曲部
9x 接続部
9y 本体部
B 気泡
GM 溶融ガラス
T1 接続部の肉厚(フランジ部の厚み)
T2 本体部の肉厚
T3 移送管の肉厚