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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造装置及び製造工場
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A61F13/15 390
A61F13/15 356
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019191335
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021065311
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209107796(CN,U)
【文献】特許第6171119(JP,B1)
【文献】中国実用新案第209107795(CN,U)
【文献】米国特許第04642150(US,A)
【文献】実開昭56-013448(JP,U)
【文献】特開2005-289569(JP,A)
【文献】特開2014-004116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SAP粒子を有するシートを用いて吸収性物品を製造する製造装置本体と、
前記製造装置本体が設置されているフロアよりも低い位置において前記シートの積層体を保持し、重力方向下側から前記製造装置本体に設けられている前記シートの取り込み部へ供給される該シートの進路を変更させるローラを該取り込み部に有し、重力方向下側の前記積層体から重力方向上側の前記取り込み部までの上下の間を所定距離に保ちつつ該シートを供給する供給装置と、を備え
前記供給装置は、前記積層体から前記製造装置本体の取り込み部までの間が前記所定距離を保つように、前記積層体を上昇させる昇降装置である、
吸収性物品の製造装置。
【請求項2】
前記供給装置は、前記製造装置本体が設置されているフロアよりも下のフロアに設置されている、
請求項1に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項3】
前記供給装置は、飛散物の飛散を抑制する防塵手段を有する、
請求項1または2に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項4】
前記積層体とは、前記シートを折り返して積み重ねたものである、
請求項1から3の何れか一項に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項5】
前記製造装置本体は、前記取り込み部から前記シートを水平方向に取り込んで前記吸収性物品を製造する装置であり、
前記供給装置は、前記供給装置を出た前記シートが何らの物体に接触することなく前記取り込み部へ取り込まれるように、重力方向上側へ向けて該シートを供給する、
請求項1から4の何れか一項に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項6】
前記ローラは、重力方向下側から前記取り込み部へ供給される前記シートを該取り込み部から水平方向に取り込むように該シートの進路を変更させる、
請求項1から5の何れか一項に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項7】
前記供給装置は、前記シートを折り返して積み重ねた積層体を台に搭載した状態で保持し、前記製造装置本体に設けられている該シートの取り込み部へ向けて該シートを供給する、
請求項1から6の何れか一項に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項8】
前記供給装置は、前記製造装置本体へ取り込み中の第1の積層体のシートが全て該製造装置本体へ取り込まれた後にシートを供給するための第2の積層体を保持する、
請求項1から7の何れか一項に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項9】
前記供給装置は、前記第1の積層体のシートの終端に前記第2の積層体のシートの始端を接続してシートを前記製造装置本体へ連続的に供給する、
請求項8に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項10】
請求項1からの何れか一項に記載の吸収性物品の製造装置を備える、
吸収性物品の製造工場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の製造装置及び製造工場に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品は、様々な資材を用いて製造されている(例えば、特許文献1を参照)。吸収性物品に用いられる資材としては、例えば、高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)を有するシート状の資材が挙げられる(例えば、特許文献2-3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6171119号公報
【文献】特開2000-24033号公報
【文献】特開2013-39804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SAPは、粒子状の吸収性樹脂である。よって、SAPを有するシート状の資材は、例えば、不織布等のシートに当該SAPの粒子を付着させた状態となっている。このため、SAP粒子を付着させたシート状の資材が原反として蛇腹状に折り返されて積層された状態にある場合、当該原反を吸収性物品の製造装置へ繰り出す際にSAPの粒子の一部が付着部分から外れ、製造装置の様々な部位にSAPの粒子が飛散する可能性がある。
【0005】
そこで、SAPの粒子や繊維屑等の付着物の飛散による汚染を抑制するべく、例えば、原反の繰り出し部分をカバーで覆う等の飛散防止措置を採ることも考えられるが、原反を取り替える際にカバーが障害となり、作業が困難になる。
【0006】
そこで、本発明は、シート状の資材に付着している付着物による汚染を抑制しつつ、資材の取り替え作業を容易に行うことが可能な吸収性物品の製造装置及び製造工場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、SAP粒子を有するシートの積層体を、製造装置本体が設置されているフロアよりも低い位置に保持することにした。
【0008】
詳細には、本発明は、吸収性物品の製造装置であって、SAP粒子を有するシートを用いて吸収性物品を製造する製造装置本体と、製造装置本体が設置されているフロアよりも低い位置においてシートの積層体を保持し、製造装置本体に設けられているシートの取り込み部へ向けて該シートを供給する供給装置と、を備える。
【0009】
なお、供給装置は、製造装置本体が設置されているフロアよりも下のフロアに設置されていてもよい。
【0010】
また、供給装置は、飛散物の飛散を抑制する防塵手段を有するものであってもよい。
【0011】
また、積層体とは、シートを折り返して積み重ねたものであってもよい。
【0012】
また、製造装置本体は、取り込み部からシートを水平方向に取り込んで吸収性物品を製造する装置であり、供給装置は、供給装置を出たシートが何らの物体に接触することなく取り込み部へ取り込まれるように、重力方向上側へ向けて該シートを供給するものであってもよい。
【0013】
また、供給装置は、重力方向下側から取り込み部へ供給されるシートを該取り込み部から水平方向に取り込むためのローラを該取り込み部に備えるものであってもよい。
【0014】
また、供給装置は、シートを折り返して積み重ねた積層体を台に搭載した状態で保持し、製造装置本体に設けられている該シートの取り込み部へ向けて該シートを供給するものであってもよい。
【0015】
また、供給装置は、製造装置本体へ取り込み中の第1の積層体のシートが全て該製造装置本体へ取り込まれた後にシートを供給するための第2の積層体を保持するものであってもよい。
【0016】
また、供給装置は、第1の積層体のシートの終端に第2の積層体のシートの始端を接続してシートを製造装置本体へ連続的に供給するものであってもよい。
【0017】
また、供給装置は、積層体を昇降する昇降装置であってもよい。
【0018】
また、本発明は、上記何れかの吸収性物品の製造装置を備える吸収性物品の製造工場であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シート状の資材に付着している付着物による汚染を抑制しつつ、資材の取り替え作業を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係る製造装置の一例を示した図である。
図2図2は、SAPシートのSAP粒子や繊維屑等の付着物が飛散する様子の一例を示した図である。
図3図3は、SAPシートの付着物が飛散する様子の比較例を示した図である。
図4図4は、昇降装置の昇降動作を自動制御する制御装置の制御ブロック線図の第1例を示した図である。
図5図5は、昇降装置の昇降動作を自動制御する制御装置の制御ブロック線図の第2例を示した図である。
図6図6は、防塵手段の設置箇所の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る製造装置について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0022】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る製造装置1の一例を示した図である。製造装置1は、使い捨ておむつや生理用ナプキン、尿取りパッド等の各種吸収性物品を製造する装置であり、製造装置本体2と昇降装置3(本願でいう「供給装置」の一例である)とを備える。製造装置本体2は、不織布や吸収体、糸ゴム、フィルム等の各種資材を使っておむつを組み立てる装置である。また、昇降装置3は、製造装置本体2が使用する資材の1つであるSAPシ
ート4を積み重ねた積層体5を台に搭載可能な昇降装置である。
【0023】
製造装置本体2は、例えば、ロール状に巻かれた長尺の資材を連続的に取り込んで吸収性物品を組み立てる装置である。よって、製造装置本体2は、例えば、昇降装置3に搭載されているSAPシート4を積層体5の上側から順に取り込んでおむつを組み立てる。
【0024】
製造装置1は、製造工場Tの建屋内に設置されている。製造工場Tの建屋内は、階層構造になっている。そして、製造装置本体2が製造工場Tの上側フロアF2、昇降装置3が製造工場Tの下側フロアF1に据え付けられている。下側フロアF1は、上側フロアF2よりも低い。そして、下側フロアF1に据え付けられている昇降装置3は、上側フロアF2に届く高さを有している。また、昇降装置3は、上部が製造装置本体2に設けられたSAPシート4の取り込み部付近に位置するように据え付けられている。このため、製造装置本体2に設けられたSAPシート4の取り込み部付近には、上側フロアF2よりも低い位置から引き上げられて製造装置本体2に取り込まれるSAPシート4が上側フロアF2に接触するのを防ぐローラ6が設けられている。本実施形態の製造装置1は、昇降装置3から重力方向上側へ向けて供給されたSAPシート4が、重力方向下側から製造装置本体2の取り込み部へ取り込まれる。そして、製造装置本体2では、SAPシート4が取り込み部から水平方向に取り込まれる。よって、ローラ6では、重力方向下側から供給されるSAPシート4の進行方向が水平方向へ進路変更されることになる。製造装置1の取り込み部にローラ6が設けられているため、製造装置1は、昇降装置3を出て重力方向上側へ向かうSAPシート4を、取り込み部のローラ6に触れるまでは何らの物体に接触させることなく、取り込み部へ取り込むことが可能となる。
【0025】
なお、図1では、製造工場Tの建屋内が下側フロアF1と上側フロアF2の2層構造で図示されているが、製造工場T内はこのような形態に限定されるものではない。製造工場Tの建屋内は3層以上の構造を有していてもよい。この場合、昇降装置3は、製造装置本体2が設置されているフロアの1つ下のフロアに設置されていてもよいし、2つ以上下のフロアに設置されていてもよい。
【0026】
また、図1では、製造装置本体2に設けられたSAPシート4の取り込み部が上側フロアF2の端部付近に位置し、昇降装置3が下側フロアF1と上側フロアF2とを繋ぐ吹き抜け部分に設置されている様子が図示されているが、昇降装置3は、このような吹き抜け部分に設置される形態に限定されるものではない。昇降装置3は、例えば、上側フロアF2に設けられた開口部からその下方へ延在するように設置されていてもよい。
【0027】
また、図1では、下側フロアF1が地上階に位置し、上側フロアF2が地上階の1つ上の階に位置している様子が図示されているが、製造工場Tはこのような形態に限定されるものではない。製造工場Tは、例えば、上側フロアF2が地上階に位置し、下側フロアF1が地上階の1つ下の階に位置していてもよい。
【0028】
昇降装置3が据え付けられている下側フロアF1では、昇降装置3に搭載するSAPシート4の積層体5や、その他の資材の搬入が行われる。また、製造装置本体2が据え付けられている上側フロアF2では、製造装置本体2で製造された吸収性物品の搬出が行われる。
【0029】
上記のように構成される製造装置1において、昇降装置3は、次のような動作を行う。すなわち、昇降装置3に搭載されている積層体5の積層方向の厚み(高さ)は、SAPシート4が製造装置本体2へ取り込まれることにより、徐々に小さくなる。このため、積層体5が搭載されている部分の高さが一定の場合、積層体5から製造装置本体2の取り込み部までの距離が徐々に広がる。そこで、昇降装置3は、積層体5から製造装置本体2の取
り込み部までの間が所定距離を保つように、積層体5を徐々に上昇させる。ここで、所定距離とは、SAPシート4の捩れを、積層体5から引き上げてから製造装置本体2に取り込まれるまでの間に解消するために必要な距離である。この所定距離は、SAPシート4の物性や製造装置本体2の取り込み速度に応じて適宜決定される。この所定距離が保たれることにより、折り返しによって蛇腹状になっているSAPシート4の折り目を伸ばして捩れを取り除くことが可能となる。また、積層体5からSAPシート4を水平方向へ引き伸ばすと、折り返されたSAPシート4の折り目が伸ばされる際に、積層体5へ断続的な衝撃が加わる。この点、上記の製造装置1であれば、SAPシート4を積層体5から重力方向上側へ向けて供給することにより、折り返されたSAPシート4の折り目が伸ばされる際に積層体5へ加わる断続的な衝撃が解消され、SAPシート4の搬送速度が安定する。例えば、積層体5として搬送用のパレット等に搭載するために、折り返しによって蛇腹状になっているSAPシート4の折り目の間隔が1~2m程度設けられている場合、蛇腹状になっているSAPシート4の折り目を伸ばして捩れを取り除くには、所定距離を5m程度に設定する。
【0030】
積層体5を搭載する昇降装置3が、製造装置本体2の取り込み部よりも低い位置に積層体5を保持することで、製造装置本体2がSAPシート4の表面のSAP粒子や繊維屑で汚染されるのを防ぐことができる。図2は、SAPシート4のSAP粒子や繊維屑等の付着物が飛散する様子の一例を示した図である。SAPシート4は、折り返されて積み重ねられた状態の積層体5から引き上げられて製造装置本体2へ取り込まれるため、シート状の基材に設けられている飛散物7の一部が引き上げに伴って基材から外れ、或いは、基材に付着していたその他の付着物が基材から外れる。基材から外れた飛散物7は、SAPシート4の周囲へ飛散する。
【0031】
図3は、SAPシートの付着物が飛散する様子の比較例を示した図である。積層体105が製造装置101の製造装置本体102とほぼ同じ高さに置かれている場合、製造装置本体102に取り込まれるSAPシート104の捩れを解消するために必要な距離を確保し、或いは、折り返されて積み重ねられた状態の積層体5から製造装置本体102へのスムーズな取り込みを行うために、例えば、図3に示されるように、SAPシート104を積層体105の上の方へ案内するローラ106が高所に設けられる。このため、折り返されて積み重ねられた状態の飛散物107が、積層体5から引き上げられて製造装置本体2へ取り込まれる際、シート状の基材に設けられている飛散物107の一部が引き上げに伴って基材から外れ、或いは、基材に付着していたその他の付着物が基材から外れる。基材から外れた飛散物107は、SAPシート104の周囲へ飛散する。
【0032】
ここで、図2図3を見比べると判るように、製造装置1では、昇降装置3に搭載されている積層体5が、製造装置本体2が据え付けられている上側フロアF2よりも低い位置に設けられているため、SAPシート4の周囲へ飛散した飛散物7が製造装置本体2へ到達しにくい。一方、製造装置101では、積層体105が製造装置101の製造装置本体102とほぼ同じ高さに置かれているため、SAPシート104の周囲へ飛散した飛散物107が製造装置本体102へ到達しやすい。
【0033】
製造装置本体2,102は、様々な資材を組み合わせて吸収性物品を組み立てる装置であるため、飛散物が装置の周辺に舞っていると、意図しない箇所にSAP粒子や繊維屑が付着して不良品が発生したり、或いは、製造装置のセンサ等を汚して製造装置の動作不良を招いたりする虞がある。よって、吸収性物品の製造においては、製造装置本体2,102周辺の清浄度を高めることが肝要である。この点、製造装置1であれば、製造装置101に比べて、製造装置本体2の周囲に飛散物7が飛散しにくい。また、製造装置1であれば、飛散物7が主に下側フロアF1へ飛散するので、製造装置1で製造された完成品を取り扱う上側フロアF2が飛散物7に汚染されにくい。よって、製造装置1であれば、製造
装置101に比べて、不良品の発生や製造装置の動作不良が生じにくい。この結果、製造装置1であれば、製造装置101に比べて製品の品質向上や歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0034】
なお、昇降装置3の昇降動作は、製造装置1に設けられた制御装置によって自動的に行われてもよいし、或いは、オペレータが手動操作で行ってもよい。昇降装置3の昇降動作を自動で実現する場合には、積層体5から製造装置本体2の取り込み部までの間を所定距離に保つ手段の一つとして、例えば、昇降装置3の上部に設けた光学式の測距センサで、センサから積層体5の上部までの間の距離を測定し、当該測定結果を基に昇降装置3の駆動部を作動させるものが挙げられる。或いは、例えば、積層体5の重量を重量センサで測定し、当該測定結果を基に昇降装置3の駆動部を作動させるものが挙げられる。或いは、例えば、製造装置本体2に取り込まれたSAPシート4の長さを基に昇降装置3の駆動部を作動させるものが挙げられる。
【0035】
図4は、昇降装置3の昇降動作を自動制御する制御装置の制御ブロック線図の第1例を示した図である。制御装置が、例えば、図4に示す制御ブロック線図のように設計されていれば、測距センサ、重量センサ、或いは、製造装置本体2に取り込まれたSAPシート4の長さに基づいて検出される、積層体5から製造装置本体2の取り込み部までの間の実際の距離の値と、予め設定された距離(所定距離)の設定値との差分に応じて昇降装置3の駆動部が動く。よって、製造装置本体2にSAPシート4が取り込まれることによって積層体5の厚みが徐々に減少しても、積層体5から製造装置本体2の取り込み部までの間が所定距離に保たれる。
【0036】
また、所定距離とは、一定の距離に限られない。昇降装置3は、積層体5から製造装置本体2の取り込み部までの間の距離を、製造装置本体2の動作速度に応じて変更してもよい。この場合、昇降装置3は、例えば、製造装置本体2の動作速度が速くなると、積層体5から製造装置本体2の取り込み部までの間の距離を当該動作速度に応じて長くする。製造装置本体2の動作速度が速くなると、製造装置本体2に取り込まれるSAPシート4の速度が増すため、SAPシート4の捩れが解消するのに要する距離を更に確保する必要がある。また、製造装置本体2の動作速度が速くなると、SAPシート4の周囲に飛散する飛散物7の飛散範囲が広がるため、飛散物7が飛散する箇所を製造装置本体2から更に遠ざける必要がある。そこで、積層体5から製造装置本体2の取り込み部までの間の距離が、製造装置本体2の動作速度に応じて長くなるように制御装置が昇降装置3の昇降動作の駆動部を作動させれば、製造装置本体2の動作速度に応じた適切な距離を積層体5から製造装置本体2の取り込み部までの間に確保することができる。
【0037】
図5は、昇降装置3の昇降動作を自動制御する制御装置の制御ブロック線図の第2例を示した図である。制御装置が、例えば、図5に示す制御ブロック線図のように設計されていれば、測距センサ、重量センサ、或いは、製造装置本体2に取り込まれたSAPシート4の長さに基づいて検出される、積層体5から製造装置本体2の取り込み部までの間の実際の距離の値と、予め設定された距離(所定距離)の設定値との差分の他、製造装置本体2の動作速度に応じて昇降装置3の駆動部が動く。よって、製造装置本体2にSAPシート4が取り込まれることによって積層体5の厚みが徐々に減少しても、積層体5から製造装置本体2の取り込み部までの間は、製造装置本体2の動作速度に応じた所定距離に保たれる。
【0038】
また、上記実施形態では、折り返されて積層された積層体5が図1等で図示されていたが、製造装置1は、このような積層体5を取り扱う装置に限定されるものではない。製造装置1は、例えば、SAPシート4を軸に巻き付けたロール状の積層体を昇降装置3に搭載したものであってもよい。
【0039】
また、昇降装置3は、飛散物7が周囲へ飛散するのを抑制する防塵手段が設けられていてもよい。図6は、防塵手段の設置箇所の一例を示した図である。例えば、図6に示されるように、昇降装置3を側方および上方から覆う防塵カバー8が昇降装置3に取り付けられていてもよい。昇降装置3が防塵カバー8によって側方および上方から覆われていれば、SAPシート4の周囲に飛散した飛散物7が防塵カバー8の内部に留まる。よって、SAPシート4の周囲に飛散した飛散物7が昇降装置3の周囲から製造装置本体2へ舞い上がるのを抑制することができる。このような防塵手段は、防塵カバー8のようなシート状のものに限定されるものでなく、昇降装置3の構造材に固定された壁板や天板であってもよい。また、上側フロアF2の床材や転落防止用の板材等の各種物品を防塵カバー8の一種としてもよい。
【0040】
昇降装置3の上部には、製造装置本体2へ取り込まれるSAPシート4が通過するための開口が必要であるが、昇降装置3が防塵カバー8によって側方および上方から殆ど覆われていれば、昇降装置3の周囲へ舞い散る飛散物7の量を可及的に抑制することができる。また、当該開口においても、例えば、エアカーテン装置等を設けることにより、空気流の膜で飛散物7の通過を更に抑制することができる。
【0041】
ところで、製造装置1は、下側フロアF1に設置された昇降装置3を1つのみ有するものに限定されるものではない。製造装置1には、下側フロアF1や上側フロアF2にその他の装置等が配置されていてもよい。
【0042】
上記の製造装置1では、製造装置本体2への積層体5の補充作業を作業者が上側フロアF2で行うことができる。すなわち、製造装置本体2に取り込まれるSAPシート4を繰り出している積層体5の残量が減少し、SAPシート4の終端が製造装置本体2へ取り込まれるタイミングが近付くと、SAPシート4の終端に新たな積層体5のSAPシート4の始端が繋がるように作業者が作業を行う。この作業は、製造装置本体2の取り込み部付近で行われることになるが、製造装置1であれば、昇降装置3によって下側フロアF1から上がってくる積層体5を取り扱うので、昇降装置3の上部付近で当該作業を行うことが可能である。よって、例えば、図3に示した製造装置101のようにSAPシート104が製造装置本体102の取り込み部付近で上の方にローラ106で引き回されている場合に比べると、SAPシート4の終端に新たな積層体5のSAPシート4の始端を繋ぐ作業が容易である。また、この作業は、製造装置本体2の取り込み部付近で行われるので、昇降装置3が防塵カバー8によって側方および上方から覆われていても、作業に支障を生ずることが無い。この作業が行われる際は、積層体5が搭載されている昇降装置3の台が上側フロアF2と同じ高さになっていると、作業者の作業性が向上する。
【0043】
なお、昇降装置3には、例えば、SAPシート4の終端に新たな積層体5のSAPシート4の始端を繋ぐ作業を自動的に行う装置が備わっていてもよい。この場合、昇降装置3は、複数ある積層体5を保持可能であることが好ましい。例えば、積層体5を搭載する台が昇降装置3に複数備わっていれば、積層体5を複数保持することが可能となる。昇降装置3にこのような装置が備わっていれば、各積層体5のシートを途切れさせることなく製造装置本体2へ連続的に供給することが可能となる。また、昇降装置3には、積層体5を搭載する台へ積層体5を自動で載せ替える装置が設けられていてもよいし、当該載せ替え装置へ空の台が自動で移動するような移動機構が設けられていてもよい。
【0044】
また、上記の製造装置1では、飛散物7が飛散しやすい下側フロアF1が、製造装置本体2が据え付けられている上側フロアF2とは別のフロアになっているため、例えば、製造工場T内の空調を行う空調機の吸気口を下側フロアF1に配置し、空調機の吹き出し口を上側フロアF2に配置することで、昇降装置3付近において上側フロアF2から下側フ
ロアF1へ向かう気流を発生させれば、下側フロアF1に飛散する飛散物7が上側フロアF2の製造装置本体2へ舞うのを抑制することが可能となる。或いは、製造工場T内の空気を排気する換気装置の排気ファンを下側フロアF1に設置することで、昇降装置3付近において上側フロアF2から下側フロアF1へ向かう気流を発生させれば、下側フロアF1に飛散する飛散物7が上側フロアF2の製造装置本体2へ舞うのを抑制することが可能となる。前者の空調機を用いる場合には、飛散物7を捕獲可能なフィルタを空調機の吸気口に設けることが好ましい。
【0045】
また、上記実施形態の製造装置1では、積層体5が昇降装置3に保持されていたが、積層体5は、昇降機能を有しない架台等に搭載されていてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、シート状の基材の表面にSAP粒子を付着させたものを前提に説明していたが、上記の製造装置1は、例えば、SAP粒子を透液性不織布やティッシュなどのシートで包んだもの、別装置で作成したパルプ入りの吸収体にSAP粒子を含ませたものを、上記SAPシート4に代えて用いてもよい。
【0047】
また、上記のSAPシート4は、シート状の基材の表面において、SAP粒子が位置ずれしないように接着剤等で固定されたものであってもよいし、基材のシートに複数の小空間を設けてこの小空間内にSAP粒子を収納したものであってもよい。
【0048】
また、昇降装置3には、例えば、吸収性物品に用いられる吸収体を製造する装置が併設されており、当該製造装置で製造されたSAP粒子付きの吸収体のシートが積層体5として搭載されてもよい。この場合、当該製造装置は、昇降装置3が設置されている下側フロアF1に設置されることになる。例えば、吸収体を製造する装置が製造装置本体2内に備わっている場合、製造装置1の製造能力は製造装置本体2内の吸収体製造装置の能力の影響を受けやすい。一方、昇降装置3にこのような吸収体製造装置が併設されていれば、例えば、一つの製造装置1に対して2以上の吸収体製造装置を設けることも可能となるため、製造装置1の製造能力を可及的に高めることが可能となる。例えば、既設の製造装置本体2に対し、装置の動作速度や設置スペースなどの都合で組み込むことのできない吸収体製造装置があったとしても、昇降装置3に併設することで、当該吸収体製造装置による吸収体のシートの供給が可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1・・製造装置
2・・製造装置本体
3・・昇降装置
4・・SAPシート
5・・積層体
6・・ローラ
7・・飛散物
8・・防塵カバー
9・・制御装置
T・・製造工場
F1・・下側フロア
F2・・上側フロア
101・・製造装置
102・・製造装置本体
104・・SAPシート
105・・積層体
106・・ローラ
107・・飛散物
図1
図2
図3
図4
図5
図6