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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両の報知システム、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20231031BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20231031BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231031BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20231031BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20231031BHJP
   B60W 40/10 20120101ALI20231031BHJP
【FI】
B60W30/16
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/13
B60W40/02
B60W40/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019199982
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021070457
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】伊東 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】東谷 光晴
(72)【発明者】
【氏名】南條 弘行
(72)【発明者】
【氏名】池本 宣昭
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182157(JP,A)
【文献】特開2017-091170(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097896(WO,A1)
【文献】特開2017-210171(JP,A)
【文献】特開2016-142236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
B60L 15/20
B60L 50/60
B60L 58/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の状態量としてバッテリのSOC値を検出する状態量検出部(32)と、
前記バッテリのSOC値に基づいて前記車両の運動を計画し、前記車両の運動計画が変化するか否かを判断する計画部(33,35)と、
前記計画部により計画された前記車両の運動計画が変化する場合に、その旨を報知する報知部(34)と、を備え、
前記車両は、前記バッテリの電力に基づいて電動機を駆動させることにより走行する電動車両であって、
前記計画部は、前記車両の先方を走行する先行車両に追従するように前記車両の走行を制御する際に、前記車両の走行エネルギの効率を高める前記車両の運動計画として、前記バッテリのSOC値が所定値以上である場合に、前記車両の惰性走行の開始時期を早めるような前記車両の運動を計画する
車両の報知システム。
【請求項2】
車両の状態量として前記車両の走行抵抗を検出する状態量検出部(43)と、
前記車両の走行抵抗に基づいて前記車両の運動を計画し、前記車両の運動計画が変化するか否かを判断する計画部(33,35)と、
前記計画部により計画された前記車両の運動計画が変化する場合に、その旨を報知する報知部(34)と、を備え、
前記計画部は、前記車両の先方を走行する先行車両に追従するように前記車両の走行を制御する際に、前記車両の走行エネルギの効率を高める前記車両の運動計画として、前記車両の走行抵抗が大きくなるほど、前記車両の惰性走行の開始時期を早めるような前記車両の運動を計画する
車両の報知システム。
【請求項3】
前記計画部は、前記車両の運動計画が基準の運動計画と異なることに基づいて、前記車両の運動計画が変化すると判断する
請求項1又は2に記載の車両の報知システム。
【請求項4】
前記計画部は、前記基準の運動計画として、前記車両の過去の状態量に基づいて計画される運動計画を用いる
請求項に記載の車両の報知システム。
【請求項5】
前記計画部により計画された前記車両の運動計画に基づいて前記車両を自動走行させる走行制御部(30)を更に備える
請求項1~のいずれか一項に記載の車両の報知システム。
【請求項6】
前記報知部は、前記計画部により計画された前記車両の運動計画を更に報知する
請求項1~のいずれか一項に記載の車両の報知システム。
【請求項7】
バッテリの電力に基づいて電動機を駆動させることにより走行する車両のプログラムであって、
少なくとも一つの処理部(33)に、
前記車両の状態量としてバッテリのSOC値を検出させ、
前記バッテリのSOC値に基づいて前記車両の運動を計画し、前記車両の運動計画が変化するか否かを判断させ、
前記車両の運動計画が変化する場合に、その旨を報知させ、
前記車両の先方を走行する先行車両に追従するように前記車両の走行を制御する際に前記車両の走行エネルギの効率を高める前記車両の運動計画として、前記バッテリのSOC値が所定値以上である場合に、前記車両の惰性走行の開始時期を早めるような前記車両の運動を計画させる
プログラム。
【請求項8】
少なくとも一つの処理部(33)に、
車両の状態量として前記車両の走行抵抗を検出させ、
前記車両の走行抵抗に基づいて前記車両の運動を計画し、前記車両の運動計画が変化するか否かを判断させ、
前記車両の運動計画が変化する場合に、その旨を報知させ、
前記車両の先方を走行する先行車両に追従するように前記車両の走行を制御する際に前記車両の走行エネルギの効率を高める前記車両の運動計画として、前記車両の走行抵抗が大きくなるほど、前記車両の惰性走行の開始時期を早めるような前記車両の運動を計画させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の報知システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の車両の走行制御装置がある。特許文献1に記載の走行制御装置は、車両の走行抵抗を算出する走行抵抗算出部と、車両の速度を制御する速度制御部とを備えている。速度制御部は、車両の速度が車速範囲の上限速度となるまで車両を目標加速度で加速させるバーン制御と、車両の速度が車速範囲の下限速度となるまで車両を惰性走行させるコースティング制御とを交互に実行する。また、走行制御装置は、車速範囲の幅である車速幅、及び目標加速度を、走行抵抗算出部により算出された車両の走行抵抗に基づいて変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-142236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の車両の走行制御装置では、車両の走行抵抗に基づいて車速幅及び目標加速度が変化すると、当然に車両の運動状態が変化することとなる。この際、車両の運動状態が変化する状況であることを車両の乗員が認知することができていれば、仮に車両の運動状態が変化した場合であっても、車両の乗員が違和感を抱く可能性は低い。この点、車両の走行抵抗は、例えば車両が受けている自然風の強さに応じて変化する。自然風の強さ等、車両の走行抵抗を変化させる要因となる事象は、車両の乗員にとって認知し難い事象となっている。そのため、車両の走行抵抗に基づいて車両の運動状態が変化すると、車両の乗員は何が原因で車両の運動状態が変化したかを認知することができないため、車両の乗員が違和感を抱く可能性がある。
【0005】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の乗員が抱く違和感を軽減することができる車両の報知システム、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両の報知システムは、状態量検出部(32)と、計画部(33,35)と、報知部(34)と、を備える。状態量検出部は、車両の状態量としてバッテリのSOC値を検出する。計画部は、バッテリのSOC値に基づいて車両の運動を計画し、車両の運動計画が変化するか否かを判断する。報知部は、計画部により計画された車両の運動計画が変化する場合に、その旨を報知する。車両は、バッテリの電力に基づいて電動機を駆動させることにより走行する電動車両である。計画部は、車両の先方を走行する先行車両に追従するように車両の走行を制御する際に、車両の走行エネルギの効率を高める車両の運動計画として、バッテリのSOC値が所定値以上である場合に、車両の惰性走行の開始時期を早めるような車両の運動を計画する
上記課題を解決する他の車両の報知システムは、状態量検出部(43)と、計画部(33,35)と、報知部(34)と、を備える。状態量検出部は、車両の状態量として車両の走行抵抗を検出する。計画部は、車両の走行抵抗に基づいて車両の運動を計画し、車両の運動計画が変化するか否かを判断する。報知部は、計画部により計画された車両の運動計画が変化する場合に、その旨を報知する。計画部は、車両の先方を走行する先行車両に追従するように車両の走行を制御する際に、車両の走行エネルギの効率を高める車両の運動計画として、車両の走行抵抗が大きくなるほど、車両の惰性走行の開始時期を早めるような車両の運動を計画する。
上記課題を解決するプログラムは、バッテリの電力に基づいて電動機を駆動させることにより走行する車両のプログラムであって、少なくとも一つの処理部(33)に、車両の状態量としてバッテリのSOC値を検出させ、バッテリのSOC値に基づいて車両の運動を計画し、車両の運動計画が変化するか否かを判断させ、車両の運動計画が変化する場合に、その旨を報知させ、車両の先方を走行する先行車両に追従するように車両の走行を制御する際に車両の走行エネルギの効率を高める車両の運動計画として、バッテリのSOC値が所定値以上である場合に、車両の惰性走行の開始時期を早めるような車両の運動を計画させる。
上記課題を解決する他のプログラムは、少なくとも一つの処理部(33)に、車両の状態量として車両の走行抵抗を検出させ、車両の走行抵抗に基づいて車両の運動を計画し、車両の運動計画が変化するか否かを判断させ、車両の運動計画が変化する場合に、その旨を報知させ、車両の先方を走行する先行車両に追従するように車両の走行を制御する際に車両の走行エネルギの効率を高める車両の運動計画として、車両の走行抵抗が大きくなるほど、車両の惰性走行の開始時期を早めるような車両の運動を計画させる。
【0007】
この構成によれば、車両の走行抵抗等の状態量に応じて車両の運動計画が変化する場合には、その旨が報知部により報知されるため、その報知を通じて車両の乗員は車両の運動計画が変化することを認知できる。よって、実際に車両の運動計画が変化する場合に乗員が抱く違和感を軽減することができる。
【0008】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の車両の報知システム、及びプログラムによれば、車両の乗員が抱く違和感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の車両の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態のACCECUにより実行される処理の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、第1実施形態のACCECUによる理想走行範囲に対する自車両の逸脱量の算出方法の一例を示すグラフである。
図4図4は、第1実施形態のACCECUにより用いられる車速と確率との関係を示すグラフである。
図5図5は、電気系コンポーネントの温度TCと重み付け係数kとの関係を示すマップである。
図6図6は、バッテリのSOC値SBと重み付け係数kとの関係を示すグラフである。
図7図7は、第1実施形態の報知装置の表示例を模式的に示す図である。
図8図8(A),(B)は、第1実施形態の報知装置の表示例を模式的に示す図である。
図9図9(A),(B)は、第1実施形態の報知装置の表示例を模式的に示す図である。
図10図10は、第1実施形態の変形例のACCECUにより実行される処理の手順を示すフローチャートである。
図11図11は、第2実施形態の車両の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両の報知システムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
図1に示されるように、車両10は、モータジェネレータ20の他、インバータ装置21と、バッテリ22と、クラッチ23とを備えている。本実施形態の車両10は、モータジェネレータ20の動力に基づいて走行する、いわゆる電動車両である。本実施形態では、モータジェネレータ20が電動機に相当する。
【0012】
バッテリ22は、充電及び放電の可能なリチウムイオン電池等の二次電池からなる。インバータ装置21は、バッテリ22に充電されている直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力をモータジェネレータ20に供給する。モータジェネレータ20は、インバータ装置21から供給される交流電力に基づき駆動し、第1動力伝達軸24を回転させる。第1動力伝達軸24はクラッチ23を介して第2動力伝達軸25に連結されている。クラッチ23は、第1動力伝達軸24と第2動力伝達軸25とを連結することによりそれらの間の動力の伝達を可能とする接続状態と、第1動力伝達軸24と第2動力伝達軸25との連結を解除することによりそれらの間の動力の伝達を遮断する非接続状態とに遷移可能である。クラッチ23が接続状態である場合、モータジェネレータ20から第1動力伝達軸24に伝達される動力は、第2動力伝達軸25、ディファレンシャルギア26、及び駆動軸27を介して車両10の車輪28に伝達される。これにより車輪28が回転することで車両10が走行する。
【0013】
モータジェネレータ20は、車両10の制動時に回生発電を行う。すなわち、車両10の制動時に車輪28に作用する制動力は、駆動軸27、ディファレンシャルギア26、第2動力伝達軸25、クラッチ23、及び第1動力伝達軸24を介してモータジェネレータ20に入力される。モータジェネレータ20は、この車輪28から入力される動力に基づいて発電する。モータジェネレータ20により発電される電力は、インバータ装置21により交流電力から直流電力に変換されてバッテリ22に充電される。
【0014】
車両10は、EV(Electric Vehicle)ECU(Electronic Control Unit)30と、MG(Motor Generator)ECU31と、バッテリECU32と、ACC(Adaptive Cruise Control)ECU33と、HMI(Human Machine Interface)ECU34とを備えている。各ECU30~34は、ROM、RAM等の記憶装置やCPU等を有するマイクロコンピュータを中心に構成されており、記憶装置に予め記憶されているプログラムを実行することにより各種制御を実行する。
【0015】
MGECU31は、EVECU30からの指令に基づいてインバータ装置21の駆動を制御することにより、モータジェネレータ20の動作を制御する。例えばEVECU30は、モータジェネレータ20の出力動力の指令値である動力指令値をMGECU31に送信する。MGECU31は、EVECU30から送信される動力指令値を受信すると、この動力指令値に応じた動力がモータジェネレータ20から出力されるようにインバータ装置21の駆動を制御する。また、MGECU31は、減速時等の車両10の制動時には、モータジェネレータ20の回生発電により発電された電力がバッテリ22に充電されるようにインバータ装置21を駆動させる。さらに、MGECU31は、モータジェネレータ20及びインバータ装置21の温度を監視しており、それらの温度情報をEVECU30に送信する。
【0016】
バッテリECU32は、バッテリ22のSOC(State Of Charge)値を検出するとともに、検出されたSOC値に基づいてバッテリ22の状態を管理している。なお、SOC値は、バッテリ22の完全放電状態を「0[%]」と定義し、バッテリ22の満充電状態を「100[%]」と定義した上で、バッテリ22の充電状態を「0[%]~100[%]」の範囲で表したものである。また、バッテリECU32は、バッテリ22の温度を監視しており、その温度情報をEVECU30に送信する。
【0017】
EVECU30は、運転者の運転要求に応じた走行を実現するために必要な動力指令値、例えばアクセルペダルの踏み込み量に応じた動力指令値を演算するとともに、演算された動力指令値をMGECU31に送信することにより、運転者の運転要求に応じた車両10の走行を実現する。また、EVECU30は、ACCECU33からの要求に応じた動力指令値をMGECU31に送信することにより、ACCECU33の要求に応じた車両10の走行を実現する。なお、EVECU30は、MGECU31からモータジェネレータ20及びインバータ装置21のそれぞれの温度の情報を取得することができるとともに、バッテリECU32からバッテリ22のSOC値及び温度の情報を取得することができる。
【0018】
車両10は、通信装置40と、ミリ波レーダ装置41と、撮像装置42と、車両状態量検出装置43とを備えている。
通信装置40は、車両10の周囲を走行する周辺車両や、道路上に設けられている交通管理装置との双方向通信を可能とするための装置である。通信装置40は、周辺車両との通信により周辺車両の各種情報を取得したり、交通管理装置との通信により各種交通情報を取得したりする。交通情報には、信号機の設置場所や渋滞情報等が含まれている。通信装置40は、取得した各種情報をACCECU33に送信する。
【0019】
ミリ波レーダ装置41は、車両10の周辺に電波を発するとともに、その電波の反射波に基づいて、車両10の周辺に存在する物体を検知する。ミリ波レーダ装置41により検知される物体には、車両10の周辺を走行する他車両の他、車両の周辺に存在する人や障害物等が含まれている。ミリ波レーダ装置41は、検知された物体の情報をACCECU33に送信する。
【0020】
撮像装置42は、車両10の周辺を所定の周期で撮像することにより車両10の周辺の画像データを生成する。撮像装置42は、生成された画像データをACCECU33に送信する。
車両状態量検出装置43は車両10の各種状態量を検出する。例えば、車両状態量検出装置43は、車両10の状態量として、車両10の速度や重量、走行抵抗を検出する。車両状態量検出装置43は、車両10の各座席に設けられている重量計により車両10の乗員に総重量を検出するとともに、検出された乗員の総重量を、乗員が乗っていない車両10の基本重量に加算することにより車両10の重量を検出する。なお、車両10の基本重量は、予め計測された重量が用いられている。また、車両状態量検出装置43は、車両10の速度の時間的な変化量を検出するとともに、検出された車両10の速度の時間的な変化量と車両10の重量とから演算式に基づいて車両10の走行抵抗を演算する。
【0021】
ACCECU33は、通信装置40を通じて周辺車両の各種情報や交通情報を取得する。また、ACCECU33は、ミリ波レーダ装置41から送信される物体の検知情報、及び撮像装置42から送信される車両10の周辺の画像データに基づいて、車両10に対する物体の相対位置や相対速度等の情報を取得する。ACCECU33は、通信装置40、ミリ波レーダ装置41、及び撮像装置42により、車両10の先方を走行する先行車両や、車両10の側方や後方を走行する車両の情報を取得する。なお、以下では、先行車両を含め、車両10の側方や後方を走行する車両を「周辺車両」と総称する。
【0022】
また、ACCECU33は、車両状態量検出装置43により車両10の速度や重量、走行抵抗等の車両10の各種状態量を取得する。ACCECU33は、取得可能なそれらの情報に基づいて車両10の運転支援制御を実行する。車両10の運転支援制御には、運転者が操作することなく車両10を自動的に走行させる自動走行制御と、運転者が車両10をマニュアル操作している際に車両10の電費を高めることが可能な運転方法を運転者に報知する運転方法報知制御とが含まれている。
【0023】
具体的には、ACCECU33は、自動走行制御として、例えば車両10に設けられた所定の操作部が乗員により操作されることに基づいて、先行車両に追従するように車両10の走行を制御するACC(Adaptive Cruise Control)制御を実行する。ACCECU33は、ACC制御の実行の際に、通信装置40、ミリ波レーダ装置41、及び撮像装置42により先行車両を検出する。ACCECU33は、車両10を先行車両に追従させるために必要な加速度を演算するとともに、演算された加速度を加速度指令値としてEVECU30に送信する。加速度指令値は、車両10を加速させる場合には正の値に設定され、車両10を減速させる場合には負の値に設定される。また、加速度及び減速度が大きいほど、加速度指令値の絶対値は大きい値に設定される。EVECU30は、ACCECU33から送信される加速度指令値が正の値及び負の値のいずれであるかに基づいて、車両10を加速させるか、減速させるかを判断する。EVECU30は、車両10を加速させる場合には、加速度指令値に対応した目標動力値を演算するとともに、演算された目標動力値に応じた動力がモータジェネレータ20から出力されるようにインバータ装置21の駆動を制御する。一方、EVECU30は、車両10を減速させる場合には、モータジェネレータ20において回生発電が行われるようにインバータ装置21の駆動を制御する。
【0024】
また、ACCECU33は、運転方法報知制御として、車両10の重量及び走行抵抗、並びに周辺車両の情報に基づいて車両10の速度プロファイルを計画する。速度プロファイルは、車両10の電費を高めることが可能な車両10の将来的な速度の推移を示すものである。ACCECU33は、計画された速度プロファイルに応じた車両10の運転方法を報知情報としてHMIECU34に送信する。HMIECU34は、ACCECU33から送信される報知情報に基づいて、車両10に搭載された報知装置50を制御することにより、車両10の操作情報を報知装置50から報知する。本実施形態の報知装置50は、各種情報を表示可能な表示装置が用いられている。本実施形態では、ACCECU33、各ECU30~34、通信装置40、ミリ波レーダ装置41、撮像装置42、車両状態量検出装置43、及び報知装置50により報知システム60が構成されている。
【0025】
次に、図2を参照して、ACCECU33により実行される運転方法報知制御の具体的な処理手順について説明する。
図2に示されるように、ACCECU33は、まず、ステップS10の処理として、通信装置40、ミリ波レーダ装置41、及び撮像装置42により検出可能な情報に基づいて、周辺車両の現在の状態量を取得する。周辺車両の現在の状態量には、周辺車両の相対距離、相対速度、及び相対加速度等が含まれている。本実施形態では、周辺車両の状態量が、自車両10の周辺環境の状態量に相当する。
【0026】
ACCECU33は、ステップS10に続くステップS11の処理として、周辺車両の将来の状態量を予測する。予測される周辺車両の状態量には、周辺車両の将来の相対位置、相対距離、相対速度、相対加速度の時系列的なデータ等が含まれている。具体的には、ACCECU33は、周辺車両の状態量の現在の値及び過去の値から演算式やモデル等を用いて、現在から所定時間経過後までの将来の状態量を予測する。これにより、ACCECU33は、現在から所定時間経過後までの周辺車両の挙動を予測することができる。
【0027】
なお、ステップS11の予測処理は、周辺車両の状態量の現在の値及び過去の値に限らず、その他の周辺車両の状態量に関する情報に基づいて実行してもよい。本予測は、過去の車両走行データを基に、周辺車両の挙動を所定の確率モデルで表現して、時系列波形として予想してもよいし、現在走行している地点を過去に走行した車両の走行データを統計的に処理して、ある地点における車両の減速や割り込み確率を算出してもよい。予想時間は、通常走行における加速度で走行車速として考え得る全車速まで至れるだけの時間とする。例えば、加速度の範囲は、「-1[G]」から「1[G]」の範囲に設定し、全車速は、「0[km/h]」から法廷制限車速とすればよい。
【0028】
ACCECU33は、ステップS11に続くステップS12の処理として、自車両10の状態量を取得する。
具体的には、ACCECU33は、モータジェネレータ20の温度TM、インバータ装置21の温度TI、及びバッテリ22の温度TB等の情報をMGECU31及びバッテリECU32から取得する。本実施形態では、モータジェネレータ20の温度TMが電動機の温度に相当する。また、インバータ装置21の温度TI及びバッテリ22の温度TBが、電動機の周辺機器の温度に相当する。以下では、モータジェネレータ20の温度TM、インバータ装置21の温度TI、及びバッテリ22の温度TBのいずれかの温度を「電気系コンポーネントの温度TC」と称する。なお、ACCECU33は、各温度TM,TI,TBの代表温度を電気系コンポーネントの温度TCとして用いてもよい。
【0029】
また、ACCECU33は、バッテリECU32からバッテリ22のSOC値SBの情報を取得する。さらに、ACCECU33は、車両状態量検出装置43から車両10の速度や重量M、走行抵抗RL等の情報を取得する。本実施形態では、MGECU31、バッテリECU32、通信装置40、ミリ波レーダ装置41、撮像装置42、及び車両状態量検出装置43が状態量検出部に相当する。
【0030】
ACCECU33は、ステップS12に続くステップS13の処理として、ステップS12の処理において取得した車両10の状態量に基づいて、車両10の電費を高めることが可能な車両10の将来の速度プロファイルを計画する。速度プロファイルの計画は具体的には以下のような手法により行われる。
【0031】
N個の周辺車両が存在する場合、値iを「1≦i≦N」の範囲の整数と定義したとき、i番目の周辺車両の走行に対して車両10が所定の状態量b(t,M,RL)で走行するとする。状態量b(t,M,RL)は、例えば時間t、車両10の重量M、及び車両10の走行抵抗RLを変数とする速度の関数である。そして、車両10が状態量b(t,M,RL)で走行するとき、車両10に発生する制動エネルギが「Ebrk i(b(t,M,RL))」で表せるとする。「Ebrk i(b(t,M,RL))」は、現在から所定時間経過後までの期間に車両10を減速させた際に発生する制動エネルギの予測値である。
【0032】
また、i番目の周辺車両に対する車両10の追従性能は、図3に示されるように、例えば車両10を先行車両に追従させる上で理想的な車間距離の範囲を理想走行範囲Sとすると、現在から所定時間経過後までの期間における理想走行範囲Sに対する車両10の予想位置の逸脱量yにより評価することができる。理想走行範囲Sは、i番目の周辺車両の予想走行位置を基準に設定されており、周辺車両の予測走行位置から演算式等を用いて求めることができる。そして、車両10の追従性能評価値C(b(t,M,RL))は、理想走行範囲Sに対する車両10の予想位置の逸脱量yを用いて、以下の式f1により求めることが可能である。なお、式f1の「T」は、予測時間である。
【0033】
【数1】

以上により、N個の周辺車両に対する自車両の制動エネルギの期待値Ebrk(b(t,M,RL))、及び追従性能評価値の期待値C(b(t,M,RL))は、以下の式f2,f3のように定義することができる。
【0034】
【数2】


なお、式f2,f3の「p」は、i番目の周辺車両の挙動の発生確率である。詳しくは、i番目の周辺車両の挙動の予測結果には所定の不確かさが含まれていることを考慮して、本実施形態では、車両10が状態量b(t,M,RL)で走行する際にi番目の周辺車両の状態量が出現する確からしさを示すパラメータとして確率pが用いられている。例えば、所定の時刻におけるi番目の周辺車両の車速は、図4に示されるような確率として表すことができる。
【0035】
上記の自車両の制動エネルギの期待値Ebrk(b(t,M,RL))、及び追従性能評価値の期待値C(b(t,M,RL))を用いることにより、以下の式f4で表されるような評価関数FE1を作成することができる。
【0036】
【数3】



なお、式f4の「k」は、制動エネルギ及び追従性能評価値のそれぞれの重み付け係数である。係数kは、「0≦k≦1」の範囲で設定される。係数kは、電気系コンポーネントの温度TCやバッテリ22のSOC値SBに基づいてマップや演算式等を用いて決定される。例えば、図5に示されるように、電気系コンポーネントの温度TCが高くなるほど、係数kは、より大きい値に設定される。また、図6に示されるように、バッテリ22のSOC値SBが取り得る値の範囲において、上側閾値SBth1以上の領域を上側領域とし、下側閾値SBth2以下の領域を下側領域とするとき、SOC値SBが「SBth2<SB<SBth1」の中間領域の値である場合よりも、SOC値SBが上限領域又は下限領域の値である場合の方が、係数kは、より大きい値に設定される。本実施形態では、上側閾値SBth1及び下側閾値SBth2が、バッテリ22のSOC値SBに対して設定される所定値に相当する。
【0037】
式f4で示される評価関数FE1の値が最小となるように車両10の状態量b(t,M,RL)を決定すれば、追従性能を確保しつつ、制動エネルギが抑制された車両10の状態量b(t,M,RL)を求めることができる。換言すれば、追従性能を確保しつつ、電費を改善することの可能な車両10の状態量b(t,M,RL)を求めることができる。
【0038】
以上の手法に基づいて、ACCECU33は、図2に示されるステップS13の処理を実行する。具体的には、ACCECU33は、制動エネルギEbrk i(b(t,M,RL))の演算式として、例えば予め実験等により求められた演算式を用いる。
また、ACCECU33は、ステップS12の処理で取得した予測情報のうち、i番目の周辺車両の予測状態量に基づいて、i番目の周辺車両の予想走行軌跡を走行モデル等から演算する。さらに、ACCECU33は、演算されたi番目の周辺車両の予想走行軌跡に基づいて理想走行範囲Sを求めることにより、車両10の追従性能評価値C(b(t,M,RL))の演算式を決定する。
【0039】
また、ACCECU33は、予め記憶装置に記憶されている走行モデルと、i番目の周辺車両の状態量とに基づいて、i番目の周辺車両の状態量の発生確率pを演算する。 このようにして、ACCECU33は、上記の式f4における制動エネルギEbrk i(b(t,M,RL))の演算式、追従性能評価値C(b(t,M,RL))の演算式、及び発生確率pを決定した後、評価関数FE1の値が最小となるように車両10の状態量b(t,M,RL)を決定する。評価関数FE1の最小化にあたっては、車両10の挙動を複数通り考え、それらのそれぞれの時の評価関数の値を算出するとともに、それらのうち評価関数FE1の値が最小となる車両10の状態量b(t,M,RL)を選んでもよいし、最適化手法を用いて決定してもよい。状態量b(t,M,RL)は車両10の速度の関数であるため、以上の演算により、ACCECU33は、評価関数FE1の値が最小となるような、すなわち車両10の電費が最小となるような車両10の将来的な速度プロファイルV(t)を得ることができる。速度プロファイルV(t)は、現在からの経過時間tに応じた車両10の速度を示すものである。本実施形態では、ACCECU33が、車両10の運動を計画する計画部に相当する。また、車両10の速度プロファイルV(t)が運動計画及び速度計画に相当する。
【0040】
以上のように速度プロファイルV(t)が演算されることにより、速度プロファイルV(t)は、制動エネルギEbrk i(b(t,M,RL))、逸脱量y(b(t,M,RL))、及び重み付け係数kに基づいて設定されることとなる。
ここで、図6に示されるように、重み付け係数kは、SOC値SBが中間領域の値である場合よりも、バッテリ22のSOC値SBが上限領域又は下限領域の値である場合の方が、より大きい値に設定される。したがって、バッテリ22のSOC値SBが上限領域又は下限領域の値である場合には、速度プロファイルV(t)において制動エネルギEbrk i(b(t,M,RL))の影響が大きくなるため、車両10が減速し易くなる。車両10の減速は、車両10を惰性走行させることにより、あるいは車両10の制動や回生発電を実行することにより行われる。したがって、バッテリ22のSOC値SBが上側閾値SBth1以上である場合、又はバッテリ22のSOC値SBが下側閾値SBth2以下である場合には、車両10が惰性走行し易くなる。具体的には、車両10の惰性走行の開始時期が早まったり、車両10の惰性走行の実行頻度が増加したりすることとなる。
【0041】
また、図5に示されるように、重み付け係数kは、電気系コンポーネントの温度TCが高くなるほど、より大きい値に設定される。したがって、電気系コンポーネントの温度TCが高くなるほど、速度プロファイルV(t)において制動エネルギEbrk i(b(t,M,RL))の影響が大きくなるため、車両10が減速し易くなる。すなわち、電気系コンポーネントの温度TCが高くなるほど、車両10が惰性走行し易くなるため、車両10の惰性走行の開始時期が早まったり、車両10の惰性走行の実行頻度が増加したりする。
【0042】
さらに、制動エネルギEbrk i(b(t,M,RL))及び逸脱量y(b(t,M,RL))は車両10の重量M及び走行抵抗RLの関数となっている。ここで、各関数は、重量Mが大きくなるほど、逸脱量y(b(t,M,RL))の値よりも制動エネルギEbrk i(b(t,M,RL))の値の方が大きくなるような関数となっている。また、各関数は、走行抵抗RLが大きくなるほど、逸脱量y(b(t,M,RL))の値よりも制動エネルギEbrk i(b(t,M,RL))の値の方が大きくなるような関数となっている。よって、車両10の重量Mが大きくなるほど、また車両10の走行抵抗RLが大きくなるほど、車両10が惰性走行し易くなるため、車両10の惰性走行の開始時期が早まったり、車両10の惰性走行の実行頻度が増加したりすることとなる。
【0043】
なお、車両10の重量Mが大きくなっているか否かを判断する処理に代えて、車両10が他車両等を牽引している状態であるか否かを判断する処理を行ってもよい。
図2に示されるように、ACCECU33は、ステップS13に続くステップS14の処理として、基準速度プロファイルを計画する。具体的には、ACCECU33は、車両の状態量の基準値に基づいて、基準速度プロファイルを計画する。例えば、ACCECU33は、車両の状態量の基準値として、車両10の過去の走行履歴から取得可能な状態量や、車両10とは別の他車両の過去の走行履歴から取得可能な状態量等を用いる。なお、ACCECU33は、車両の状態量の基準値として、予め定められた車両特性を表す規定変数を用いてもよい。ACCECU33は、車両の状態量の基準値に基づいて、車両の重量の平均値Mave、走行抵抗の平均値RLave、電気系コンポーネントの平均温度TCave、及びバッテリ22の平均SOC値SBaveを演算する。ACCECU33は、車両10の重量M、走行抵抗RL、電気系コンポーネントの温度TC、及びバッテリ22のSOC値SBに代えて、それらの平均値Mave,RLave,TCave,SBaveを用いてステップS13と同様の処理を実行することにより、基準速度プロファイルVn(t)を取得する。本実施形態では、基準速度プロファイルVn(t)が基準の運動計画及び基準の速度計画に相当する。
【0044】
ACCECU33は、ステップS14に続くステップS15の処理として、車両10の速度プロファイルV(t)と基準速度プロファイルVn(t)とに差異があるか否かを判断する。例えば、ACCECU33は、各時刻t1,t2,・・・における車両10の速度プロファイルの値V(t1),V(t2),・・・と、基準速度プロファイルVn(t1),Vn(t2),・・・とを演算するともに、それらの偏差|V(t1)-Vn(t1)|,|V(t2)-Vn(t2)|,・・・を演算する。偏差|V(t1)-Vn(t1)|,|V(t2)-Vn(t2)|,・・・のうちの最大のものを「ΔVmax」とするとき、ACCECU33は、最大偏差ΔVmaxが所定値未満である場合には、車両10の速度プロファイルV(t)と基準速度プロファイルVn(t)とに差異がないと判断し、ステップS15の処理で否定判断する。この場合、ACCECU33は、ステップS16の処理として、車両10の速度プロファイルV(t)に応じた適切な運転方法を運転者に報知する。
【0045】
例えば、ACCECU33は、ステップS16の処理において、車両10の速度プロファイルV(t)を微分することにより、車両10の加速度プロファイルA(t)を取得する。ACCECU33は、現在の時刻を「tc」とするとき、加速度プロファイルA(tc)の値が正の値である場合には、車両10を加速させる必要があると判定して、アクセルペダルの操作が必要であることを表示するようにHMIECU34に要求する。また、負の値の閾値を「-Ath」とするとき、加速度プロファイルA(tc)の値が「-Ath<A(tc)≦0」を満たしている場合、すなわち車両10を緩やかに減速させればよい場合には、ACCECU33は、車両10を惰性走行させればよいと判断して、アクセルペダル及びブレーキペダルの両方の操作が不必要であることを表示するようにHMIECU34に要求する。さらに、加速度プロファイルA(tc)の値が「A(tc)≦-Ath」を満たしている場合、すなわち車両10を急峻に減速させる必要がある場合には、ACCECU33は、ブレーキペダルの操作が必要であることを表示するようにHMIECU34に要求する。HMIECU34は、ACCECU33の要求に応じた表示を報知装置50により行う。
【0046】
具体的には、報知装置50は、図7に示されるような3つのアイコン51,52,53を表示する。
アイコン51は、報知装置50において左端に表示されるものであって、車両10のブレーキペダルを踏み込むべきか否かを運転者に報知する。図7に示されるアイコン51は消灯状態となっている。この場合、アイコン51は、ブレーキペダルを踏み込む必要がないことを報知している。ブレーキペダルを踏み込む必要がある場合には、アイコン51が点灯状態となる。したがって、運転者は、アイコン51の点灯状態に基づいて、ブレーキを踏み込む必要があるか否かを認知することが可能である。
【0047】
アイコン53は、報知装置50において右端に表示されるものであって、車両10のアクセルペダルを踏み込むべきか否かを運転者に報知する。図7に示されるアイコン53は消灯状態となっている。アイコン53が消灯状態である場合、その中央に「Accl. OFF」の文字が表示される。この場合、アイコン53は、アクセルペダルを踏み込む必要がないことを報知している。アクセルペダルを踏み込む必要がある場合には、アイコン51が点灯状態となるとともに、その中央に「Accl. ON」の文字が表示される。したがって、運転者は、アイコン53の点灯状態に基づいて、アクセルペダルを踏み込む必要があるか否かを認知することができる。
【0048】
HMIECU34は、図2に示されるステップS16の処理において、ACCECU33からアクセルペダルの操作のみが必要であることを表示するように要求された場合、アイコン51を点灯状態にし、且つアイコン53を消灯状態にする。また、HMIECU34は、ACCECU33からブレーキペダルの操作のみが必要であることを表示するように要求された場合、アイコン51を消灯状態にし、且つアイコン53を点灯状態にする。さらに、HMIECU34は、ACCECU33からアクセルペダル及びブレーキペダルの操作が不必要であることを表示するように要求された場合には、アイコン51及びアイコン53の両方を消灯状態にする。
【0049】
アイコン51及びアイコン53の表示内容に基づいて運転者が車両10のアクセルペダル及びブレーキペダルを操作することにより、車両10の走行状態が速度プロファイルV(t)に沿った走行状態となる。これにより、車両10の電費が改善される。
一方、速度プロファイルV(t)は、車両10の重量Mや走行抵抗RL、電気系コンポーネントの温度TC、及びバッテリ22のSOC値SB等のパラメータに応じて作成されるため、それらのパラメータが変化した場合には、速度プロファイルV(t)も変化する。しかしながら、それらのパラメータの変化は目視し難いため、それらのパラメータの変化を車両10の乗員が気づくことは難しい。そのため、それらのパラメータの変化に起因して速度プロファイルV(t)が変化すると、車両の乗員は何が原因で速度プロファイルV(t)が変化したかを認知することができないため、車両10の乗員が違和感を抱く可能性がある。
【0050】
そこで、本実施形態の報知システム60では、車両10の重量Mや走行抵抗RL、電気系コンポーネントの温度TC、バッテリ22のSOC値SB等のパラメータに応じて速度プロファイルV(t)が変化する場合には、その旨を、図7に示されるアイコン52により報知することで、車両10の乗員の違和感を軽減するようにしている。
【0051】
具体的には、図2に示されるように、ACCECU33は、ステップS15の処理において、最大偏差ΔVmaxが所定値以上である場合には、車両10の速度プロファイルV(t)と基準速度プロファイルVn(t)とに差異があると判断して、ステップS15の処理で肯定判断する。ACCECU33は、ステップS15の処理で肯定判断した場合、速度プロファイルV(t)が変化すると判定する。本実施形態では、車両10の速度プロファイルV(t)と基準速度プロファイルVn(t)とに差異が生じる場合が、車両10の運動計画が変化する場合に相当する。
【0052】
ここで、例えば車両10の重量M、走行抵抗RL、電気系コンポーネントの温度TC、及びバッテリ22のSOC値SBが通常よりも大きく変化すると、車両10の速度プロファイルV(t)と基準速度プロファイルVn(t)との偏差が大きくなり、結果として最大偏差ΔVmaxが所定値以上になる可能性がある。例えば電気系コンポーネントの温度TCが高くなるほど、上記の式f4の重み付け係数kが大きくなるため、評価関数FE1における自車両の制動エネルギの期待値Ebrk(b(t,M,RL))の寄与度が大きくなる。この場合、車両の速度プロファイルV(t)として、車両10を減速させ易くなるようなプロファイルが計画される。その結果、車両10の速度プロファイルV(t)と基準速度プロファイルVn(t)との偏差が大きくなるような状況が生じ易くなるため、最大偏差ΔVmaxが所定値以上になる可能性がある。車両10の重量M、走行抵抗RL、及びバッテリ22のSOC値SBに関しても同様である。
【0053】
ACCECU33は、ステップS15の処理で肯定判断した場合には、続くステップS17の処理として、車両10の速度プロファイルV(t)と基準速度プロファイルVn(t)とに差異を生じさせる主要因を報知する。
例えば、変数を「x」とし、その基準値を「xb」とし、それらの偏差を「x-xb」とするとき、基準値xbに対する偏差「x-xb」の比率Rは以下の式f5で表すことができる。
【0054】
【数4】

ACCECU33は、式f5において、例えば変数xとして車両10の重量Mを用いて、また基準値xbとして車両の重量の平均値Maveを用いることにより、基準値に対する車両10の現在の重量の比率R(M)を演算する。ACCECU33は、走行抵抗RL、電気系コンポーネントの温度TC、及びバッテリ22のSOC値SBについても、同様に比率R(RL),R(TC),R(SB)を演算する。ACCECU33は、各比率R(M),R(RL),R(TC),R(SB)のうち、最も値の大きいものを、車両10の速度プロファイルV(t)と基準速度プロファイルVn(t)とに差異を生じさせる主要因と特定する。ACCECU33は、特定された速度プロファイルの差異の主要因をHMIECU34に送信する。
【0055】
HMIECU34は、ACCECU33から送信される速度プロファイルの差異の主要因を報知装置50に表示する。具体的には、図7に示されるように、報知装置50には、アイコン51とアイコン53との間にアイコン52を表示することが可能となっている。HMIECU34は、例えば速度プロファイルの差異の主要因が電気系コンポーネントの温度TCである場合には、アイコン52として、図7に示されるようなアイコンを表示する。HMIECU34は、速度プロファイルの差異の主要因が走行抵抗RLである場合には、アイコン52として、図8(A)に示されるようなアイコンを表示する。HMIECU34は、速度プロファイルの際の主要因が車両10の重量Mである場合には、アイコン52として、図8(B)に示されるようなアイコンを表示する。HMIECU34は、速度プロファイルの差異の主要因がバッテリ22のSOC値SBであり、且つSOC値SBが「100%」に近い状態である場合には、アイコン52として、図9(A)に示されるようなアイコンを表示する。HMIECU34は、速度プロファイルの差異の主要因がバッテリ22のSOC値SBであり、且つSOC値SBが「0%」に近い状態である場合には、アイコン52として、図9(B)に示されるようなアイコンを表示する。本実施形態では、HMIECU34が、運動計画に変化が生じる場合に、その旨を報知する報知部に相当する。
【0056】
例えば図7に示されるようなアイコン52が報知装置50に表示された場合には、車両10の運転者及び乗員は、車両10の速度プロファイルV(t)が変化する要因が、電気系コンポーネントの温度TCの変化であると認知することができる。同様に、図8(A),(B)及び図9(A),(B)に示されるようなアイコン52が表示されることで、車両10の運転者及び乗員は、車両10の速度プロファイルV(t)が変化する要因を認知することができる。
【0057】
図2に示されるように、ACCECU33は、ステップS17に続くステップS16の処理として、車両10の速度プロファイルV(t)に応じた適切な運転方法を乗員に報知する。
以上説明した本実施形態の車両10の報知システム60によれば、以下の(1)~(10)に示される作用及び効果を得ることができる。
【0058】
(1)車両10の走行抵抗RL等の状態量に基づいて車両10の速度プロファイルV(t)が変化する場合には、その旨がHMIECU34により報知装置50から報知されるため、運転者を含め、車両10の乗員は、報知装置50におけるアイコン52の報知を通じて車両10の速度プロファイルV(t)が変化することを認知できる。よって、実際に車両10の速度プロファイルV(t)が変化する場合に乗員が抱く違和感を軽減することができる。
【0059】
(2)ACCECU33は、速度プロファイルV(t)を計画するための車両10の状態量として、自車両10の状態量及び周辺車両の状態量を用いる。そして、ACCECU33は、車両10の速度プロファイルV(t)と基準速度プロファイルVn(t)とが異なることに基づいて、車両10の速度プロファイルV(t)が変化すると判断する。この構成によれば、車両10の速度プロファイルV(t)が変化するか否かを容易に判断することが可能となる。
【0060】
(3)ACCECU33は、基準速度プロファイルVn(t)として、車両10の過去の走行履歴に基づいて計画される運動計画を用いる。この構成によれば、基準速度プロファイルVn(t)を容易に設定することができる。
(4)HMIECU34は、ACCECU33により計画された速度プロファイルV(t)を報知装置50により報知する。この構成によれば、報知装置50からの速度プロファイルV(t)の報知に基づいて運転者が車両10を操作することにより、速度プロファイルV(t)に応じた車両の運動を実現することが可能となる。
【0061】
(5)ACCECU33は、車両10の運動計画として、車両10の電費を高めることが可能な車両10の速度プロファイルV(t)を計画する。この構成によれば、速度プロファイルV(t)に応じた車両10の走行が行われることにより、車両10の電費を高めることが可能となる。
【0062】
(6)ACCECU33は、速度プロファイルV(t)として、バッテリ22のSOC値SBが上側閾値SBth1以上である場合に、車両10の惰性走行の開始時期を早めるような車両10の速度を計画する。車両10の惰性走行の開始時期が早まることにより、車両10では回生発電が行われ難くなる。バッテリ22のSOC値が上側閾値SBth1以上である場合、バッテリ22を充電させる必要性が低いため、回生発電が行われ難くなることによる影響は殆どない。むしろ、車両10の惰性走行の開始時期が早まることにより、電費を向上させることが可能となる。
【0063】
(7)ACCECU33は、速度プロファイルV(t)として、バッテリ22のSOC値SBが下側閾値SBth2以下である場合に、車両10の惰性走行の実行頻度を増加させるような車両10の速度を計画する。この構成によれば、車両10の惰性走行の実行頻度が増加することにより、車両10の電力消費量を少なくすることができるため、バッテリ22の電力の枯渇を抑制できる。
【0064】
(8)ACCECU33は、速度プロファイルV(t)として、電気系コンポーネントの温度TCが高くなるほど、車両10の惰性走行の実行頻度を増加させるような車両10の速度を計画する。この構成によれば、車両10の惰性走行の実行頻度が増加することにより、モータジェネレータ20やインバータ装置21、バッテリ22の駆動時間が短くなるため、それらの電気系コンポーネントの温度TCの上昇を抑制することができる。また、車両10の惰性走行の頻度が増加することにより、車両10の電費を向上させることができる。
【0065】
(9)ACCECU33は、速度プロファイルV(t)として、車両10の走行抵抗RLが大きくなるほど、車両10の惰性走行の開始時期を早めるような車両10の速度を計画する。この構成によれば、電費を向上させることが可能な車両10の走行と車両10の自然な運転とを両立させることができる。
【0066】
(10)ACCECU33は、速度プロファイルV(t)として、車両10の重量Mが大きくなるほど、又は車両10が牽引状態である場合に、車両10の惰性走行の開始時期を早めるような車両10の速度を計画する。この構成によれば、電費を向上させることが可能な車両10の走行と車両10の自然な運転とを両立させることができる。
【0067】
(変形例)
次に、第1実施形態の車両10の報知システム60の変形例について説明する。
本変形例のACCECU33は、図10に示されるように、ステップS15の処理で否定判断した場合、あるいはステップS17の処理を実行した場合、ステップS18の処理として、速度プロファイルV(t)に基づいて車両10を自動走行させる制御を実行する。具体的には、ACCECU33は、速度プロファイルV(t)から車両10の加速度指令値を演算するとともに、演算された加速度指令値をEVECU30に送信することにより、速度プロファイルV(t)に応じた車両10の走行を実現する。本変形例では、EVECU30が走行制御部に相当する。
【0068】
なお、EVECU30は、車両10を惰性走行させる際に、図1に示されるクラッチ23を非連結状態とすることにより、より効率的に車両10を惰性走行させてもよい。
このような構成によれば、運転者が車両10を直接的に操作することなく、速度プロファイルV(t)に応じた車両10の走行が実現されるため、利便性を向上させることができる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、車両10の報知システム60の第2実施形態について説明する。
図11に示されるように、本実施形態の報知システム60は、エネルギ管理ECU35を更に備えている。エネルギ管理ECU35は、ACCECU33に代えて、図2に示される処理を実行する専用のECUである。このような構成によれば、ACCECU33の処理負担を軽減することが可能となる。
【0070】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
図2及び図10に示される処理において、ステップS13の処理及びステップS14の処理の実行順序は逆であってもよい。
【0071】
・ACCECU33は、自車両10の状態量及び周辺車両の状態量のいずれか一方を用いて速度プロファイルV(t)を計画してもよい。また、ACCECU33は、車両10の電費を改善することが可能な速度プロファイルV(t)に限らず、車両10の使用エネルギを低減することが可能な速度プロファイルV(t)や、車両10の航続距離を延ばすことが可能な速度プロファイルV(t)を計画してもよい。
【0072】
・報知装置50の報知方法としては、視覚に対する報知に限らず、聴覚や嗅覚、触覚等、人間が感知することが可能な種々の報知方法を採用することが可能である。
・車両10は、電気自動車に限らず、内燃機関を動力源として走行するエンジン車両や、内燃機関及びモータジェネレータの両方を動力源とするハイブリッド車両であってもよい。例えば車両10がエンジン車両である場合、ACCECU33は、車両10の運動計画として、車両10の燃費を高めることが可能な車両10の速度プロファイルV(t)を計画することとなる。要は、ACCECU33は、車両10の運動計画として、車両10の走行エネルギの効率を高めることが可能な車両10の運動を計画するものであればよい。
【0073】
・本開示に記載の各ECU33,35及びその制御方法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の各ECU33,35及びその制御方法は、1つ又は複数の専用ハードウェア論理回路を含むプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の各ECU33,35及びその制御方法は、1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ又は複数のハードウェア論理回路を含むプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。専用ハードウェア論理回路及びハードウェア論理回路は、複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により実現されてもよい。
【0074】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0075】
10:車両
30:EVECU(走行制御部)
31:MGECU(状態量検出部)
32:バッテリECU(状態量検出部)
33:ACCECU(計画部)
34:報知装置(報知部)
35:エネルギ管理ECU(計画部)
40:通信装置(状態量検出部)
41:ミリ波レーダ装置(状態量検出部)
42:撮像装置(状態量検出部)
43:車両状態量検出装置(状態量検出部)
60:報知システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11