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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20231031BHJP
   B29D 30/26 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B29D30/30
B29D30/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019206430
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021079560
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 早紀
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-191422(JP,A)
【文献】特開2008-155418(JP,A)
【文献】特開平03-254931(JP,A)
【文献】特開2011-037209(JP,A)
【文献】特開2018-051763(JP,A)
【文献】特開2011-037113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ゴムシートを巻回してジョイントを備える筒状のインナーライナーを得る工程、
(B)前記インナーライナーの外周にゴム部材を積層した筒状の一次成形体を得る工程
(C)前記一次成形体を支持する受け面で前記一次成形体の外周面を支持した状態で、前記一次成形体の内周面における前記インナーライナーの前記ジョイントを、前記受け面に押し付けて圧着する工程
(D)前記受け面による前記一次成形体の外周面の支持を解除する工程
及び
(E)前記一次成形体に潤滑剤を塗布する塗布ローラで、前記一次成形体の内周面を支持しつつ前記内周面に潤滑剤を塗布する工程
を含む、タイヤの製造方法。
【請求項2】
(A)ゴムシートを巻回してジョイントを備える筒状のインナーライナーを得る工程、
(B)前記インナーライナーの外周にゴム部材を積層した筒状の一次成形体を得る工程
及び
(C)前記一次成形体を支持する受け面で前記一次成形体の外周面を支持した状態で、前記一次成形体の内周面における前記インナーライナーの前記ジョイントを、前記受け面に押し付けて圧着する工程
を含み、
前記工程(C)において、圧着ローラが前記一次成形体の軸方向に移動して前記ジョイントを前記受け面に押しつける、タイヤの製造方法。
【請求項3】
前記圧着ローラと前記受け面とが圧着する圧着幅Wtが、20mm以上40mm以下である、請求項2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
ゴムシートが巻回されて形成されたジョイントを備える筒状のインナーライナーと、前記インナーライナーの外周に積層されたゴム部材とを備える筒状の一次成形体の、外周面を支持する受け面を備える受け台と、
前記受け面に対向する圧着ローラと、
前記圧着ローラを前記受け面に向かって付勢しつつ前記一次成形体の軸方向に移動可能に支持するローラ支持装置と
を備える、ジョイント圧着機。
【請求項5】
前記受け面の幅Wbが30mm以上50mm以下であり、前記圧着ローラの幅Wrが30mm以上50mm以下である、請求項4に記載のジョイント圧着機。
【請求項6】
前記一次成形体の内周面を支持しつつ前記一次成形体の内周面に潤滑剤を塗布する塗布ローラを更に備える、請求項4又は5に記載のジョイント圧着機。
【請求項7】
前記受け台を前記一次成形体の外周面を支持する支持姿勢と前記一次成形体の外周面から離れる待避姿勢とに変化させる、受け台移動装置を更に備える、請求項6に記載のジョイント圧着機。
【請求項8】
前記圧着ローラが軸方向に並べられた複数の分割ローラから形成されており、
それぞれの分割ローラが独立で半径方向に移動可能である、請求項4から7のいずれかに記載のジョイント圧着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造方法では、成形ドラムの外周面にゴム部材が積層されて、筒状の成形体が形成される方法が広く用いられている。この成形体を用いてローカバーが形成される。このローカバーが加熱及び加圧され、ローカバーからタイヤが得られる。
【0003】
この製造方法では、インナーライナーも成形ドラムの外周面にゴムシート等のゴム材料が巻回されて形成される。巻回された周方向端部で形成されるジョイントが圧着される。このインナーライナーの外側に、更に他のゴム部材が積層され、インナーライナーと他のゴム部材を含む成形体が形成される。この様に、成形ドラムにインナーライナー等のゴムシートが巻回され圧着される方法が、特開平2-175234号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-175234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この成形体では、インナーライナーのジョイントにエアー溜りが生じることがある。また、このジョイントに、完全に接合していない接合不良が生じることがある。この接合不良やエアー溜りは、成形体の成形精度を低下させる。この接合不良やエアー溜りは、成形体から得られるタイヤの品質を低下させる。本発明の目的は、品質の向上に寄与するタイヤの製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤの製造方法は、
(A)ゴムシートを巻回してジョイントを備える筒状のインナーライナーを得る工程、
(B)前記インナーライナーの外周にゴム部材を積層した筒状の一次成形体を得る工程
及び
(C)前記一次成形体を支持する受け面で前記一次成形体の外周面を支持した状態で、前記一次成形体の内周面における前記インナーライナーの前記ジョイントを、前記受け面に押し付けて圧着する工程
を含む。
【0007】
好ましくは、この製造方法は、
(D)前記受け面による前記一次成形体の外周面の支持を解除する工程
及び
(E)前記一次成形体に潤滑剤を塗布する塗布ローラで、前記一次成形体の内周面を支持しつつ前記内周面に潤滑剤を塗布する工程
を更に含む。
【0008】
好ましくは、前記工程(B)において、圧着ローラが前記一次成形体の軸方向に移動して前記ジョイントを前記受け面に押しつける。
【0009】
前記圧着ローラと前記受け面とが圧着する圧着幅Wtは、好ましくは、20mm以上40mm以下である。
【0010】
本発明に係るジョイント圧着機は、
ゴムシートが巻回されて形成されたジョイントを備える筒状のインナーライナーと、前記インナーライナーの外周に積層されたゴム部材とを備える筒状の一次成形体の、外周面を支持する受け面を備える受け台と、
前記受け面に対向する圧着ローラと、
前記圧着ローラを前記受け面に向かって付勢しつつ前記一次成形体の軸方向に移動可能に支持するローラ支持装置と
を備える。
【0011】
好ましくは、前記受け面の幅Wbは30mm以上50mm以下であり、前記圧着ローラの幅Wrが30mm以上50mm以下である。
【0012】
好ましくは、このジョイント圧着機は、前記一次成形体の内周面を支持しつつ前記一次成形体の内周面に潤滑剤を塗布する塗布ローラを更に備える。
【0013】
好ましくは、このジョイント圧着機は、前記受け台を前記一次成形体の外周面を支持する支持姿勢と前記一次成形体の外周面から離れる待避姿勢とに変化させる、受け台移動装置を更に備える。
【0014】
好ましくは、このジョイント圧着機は、前記圧着ローラが軸方向に並べられた複数の分割ローラから形成されている。それぞれの分割ローラが独立で半径方向に移動可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るタイヤの製造方法では、一次成形体の内周面における前記インナーライナーのジョイントが圧着される。このジョイントは、一次成形体の外周面を支持する受け面に押しつけられて圧着される。この圧着によって、接合不良やエアー残りの発生が抑制される。このタイヤの製造方法は、タイヤの品質の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るジョイント圧着機の一部が示された斜視図である。
図2図2(A)は図1のジョイント圧着機の圧着ローラの側面説明図であり、図2(B)はこの圧着ローラの正面説明図である。
図3図3(A)は図1のジョイント圧着機の一部が示された説明図であり、図3(B)は図1のジョイント圧着機を含む成形設備の他の一部が示された説明図である。
図4図4図1のジョイント圧着機を含む成形設備の更に他の一部が示された説明図である。
図5図5は、図1のジョイント圧着機を含む成形設備で形成される第一成形体が示された説明図である。
図6図6は、図1のジョイント圧着機の使用状態が示された説明図である。
図7図7は、図6の線分VII-VIIに沿った断面が示された説明図である。
図8図8は、図4の成形設備の一部の使用状態が示された説明図である。
図9図9は、図4の成形設備の一部の他の使用状態が示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1には、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法に用いられるジョイント圧着機2が示されている。図1の矢印Xはジョイント圧着機2の前後方向前向きを表し、矢印Yはその左右方向左向きを表し、矢印Zはその上下方向上向きを表す。
【0019】
このジョイント圧着機2は、架台4、塗布ローラ6、塗布ローラ駆動部8、潤滑剤槽10、圧着具としての圧着ローラ12、ローラ支持装置14、受け台16及び受け台移動装置としてのシリンダ18を備える。
【0020】
塗布ローラ6は、架台4に支持されている。塗布ローラ6は前後方向に延びる軸線周りに回転可能である。塗布ローラ駆動部8は、モータ8aとタイミングベルト8bとを備える。このタイミングベルト8bは、モータ8aの駆動軸と、塗布ローラ6を回転させるギアとに掛け渡されている。
【0021】
潤滑剤槽10は、塗布ローラ6の下方に配置されている。潤滑剤槽10は、流体の潤滑剤の貯蔵槽である。潤滑剤槽10は、上方に開口10aを備える。塗布ローラ6の一部は、開口10aを通して潤滑剤槽10の内に位置している。
【0022】
圧着ローラ12は、ローラ支持装置14に支持されている。圧着ローラ12は、左右方向を回転軸にして回転可能である。
【0023】
ローラ支持装置14は、支持台20と、支持具22と、付勢装置としてのシリンダ24と、移動装置としてのリニアガイド26、ボールねじ28及びモータ30とを備える。支持台20は、架台4に固定されている。支持具22は、圧着ローラ12を支持している。シリンダ24は、支持具22を上下方向下向きに付勢可能である。
【0024】
リニアガイド26は、レール26a及びブロック26bを備える。シリンダ24は、ブロック26bに取付けられている。ブロック26bは、レール26aに前後方向移動可能に取付けられている。レール26aは支持台20に取付けられている。シリンダ24は、リニアガイド26によって、前後方向に移動可能である。ボールねじ28は、前後方向を軸方向にして延びるねじ軸28aと、ねじ軸28aの回転によって軸方向に移動可能なナット28bとを備える。このナット28bと、リニアガイド26のブロック26bとが連結されている。
【0025】
図2(A)及び(B)には、ジョイント圧着機2の圧着ローラ12が示されている。図2(B)に示される様に、圧着ローラ12は、複数の分割ローラ12aと回転軸12bとを備える。図2(B)の一点鎖線Lrは、回転軸12bの軸線を表す。複数の分割ローラ12aは、軸線Lrに沿って並べられている。並べられた複数の分割ローラ12aの外周面によって、圧着ローラ12の外周面が形成されている。それぞれの分割ローラ12aは、ローラリング12cと、弾性体としてのスプリング12dとを備える。スプリング12dは、ローラリング12cの中心が軸線Lrからずれたときに、軸線Lr向きに戻る様に付勢する機能を備えている。
【0026】
図3(A)には、ジョイント圧着機2の側面が示されている。図3(A)に示される様に、このジョイント圧着機2は、タイミングベルト32及びエンコーダ34を更に備える。タイミングベルト32は、モータ30の駆動軸とボールねじ28を回転駆動するギアとに掛け渡されている。エンコーダ34は、ボールねじ28の回転位置を検出する機能を備える。
【0027】
受け台16は、上方向きの受け面16aを備えている。図3(A)では、受け面16aは、前後方向に延びている。この受け台16は、支持姿勢にある。受け台16は、架台4に回動可能に支持されている。図示されないが、この回動によって、受け台16は、後方から前方に向かって、上方から下方に傾斜して延びる待避姿勢に姿勢変化可能である。
【0028】
シリンダ18は、その後端部を架台4に回動可能に取付けられ、そのロッド18aの先端部を受け台16に回動可能に取付けられている。これにより、シリンダ18は、その伸縮によって、受け台16を支持姿勢と待避姿勢とに姿勢変化させる機能を備える。
【0029】
図3(B)には、ジョイント圧着機2の前工程で用いられる第一成形ドラム36が示されている。第一成形ドラム36が円筒形状のドラム本体36aを備える。ドラム本体36aは、外周面36bを備える。ドラム本体36aは、その軸線を回転軸にして回転可能である。このドラム本体36aは、拡径縮径可能である。
【0030】
図4には、ジョイント圧着機2と共に用いられる、第二成形ドラム38、シェーピングフォーマ40及びトランスファー42が示されている。
【0031】
第二成形ドラム38は、円筒形状のドラム本体38aを備える。ドラム本体38aは、外周面38bを備える。ドラム本体38aは、その軸線を回転軸にして回転可能である。このドラム本体38aは、拡径縮径可能である。
【0032】
シェーピングフォーマ40は、一対のクランプリング44及び支持軸46を備えている。それぞれのクランプリング44は、支持軸46に支持されている。一対のクランプリング44は、支持軸46の軸方向に互いに近付く位置と離れる位置とに移動可能である。この一対のクランプリング44は、その軸線周りに、回転可能である。
【0033】
トランスファー42は、移動装置48及び保持装置50を備えている。保持装置50は、移動装置48に取り付けられている。移動装置48は、第二成形ドラム38とシェーピングフォーマ40との間で移動可能である。
【0034】
保持装置50は、環状フレーム52と、複数の保持具54とを備える。それぞれの保持具54は、環状フレーム52の周方向に並んで配置されている。保持具54は、一体として、環状フレーム52の軸線を回転軸に回転可能である。保持具54は、セグメント54aを備えている。セグメント54aは、環状フレーム52の半径方向に移動可能である。セグメント54aは、環状フレーム52の軸方向に垂直な断面において、同一円周上に位置した状態を維持して、環状フレーム52の半径方向に拡径縮径可能である。
【0035】
図5には、前述の第一成形ドラム36で得られる、一次成形体としての第一成形体56が示されている。この第一成形体56は、筒状の形状を備えている。図5は、第一成形体56の軸線に沿った断面が示されている。第一成形体56は、インナーライナー58、カーカスプライ60、一対のビード62及びサイドウォール部材64を備える。この第一成形体56は、例示であってこれに限られない。この第一成形体56は、ゴムシートが巻回されて形成されたインナーライナー58と、インナーライナー58の外側に積層されたゴム部材を備えていればよい。
【0036】
図6には、ジョイント圧着機2の使用状態が第一成形体56と共に示されている。このジョイント圧着機2では、受け台16が支持姿勢にある。第一成形体56の外周面が受け台16の受け面16aに支持されている。ブロック26b、シリンダ24及びナット28bは、前進端と後退端との間に位置している。シリンダ24は、支持具22を半径方向外向きに付勢している。このジョイント圧着機2では、シリンダ24は、支持具22を下向きに付勢している。
【0037】
図7には、図6の線分VII-VIIに沿った断面が示されている。図7には、巻回されたインナーライナー58の一対の周方向端部58a及び58bが接合されたジョイント58cが示されている。このジョイント58cでは、第一成形体56の肉厚が厚くなっている。この図7では、説明の便宜上、このジョイント58cは、実際のそれより凹凸を強調して表されている。
【0038】
図7では、圧着ローラ12が第一成形体56を半径方向外向きに付勢されている。圧着ローラ12が第一成形体56を受け台16に押しつけている。圧着ローラ12と受け面16aとが第一成形体56のジョイント58cを圧着している。
【0039】
図7の両矢印Wrは、圧着ローラ12の幅を表している。両矢印Wbは、受け面16aの幅を表している。この幅Wr及び幅Wbは、左右方向に測定される。点Ptは、受け面16aと第一成形体56の外周面と接触領域の外端を表している。両矢印Wtは、圧着幅を表している。この圧着幅Wtは、一方の外端Ptから他方の外端Ptまでの距離として測定される。この圧着幅Wtは、左右方向に受け面16aに沿って測定される。
【0040】
図8には、シェーピングフォーマ40及びトランスファー42の使用状態が示されている。図8には、更に、第一成形体56と第二成形体66とが示されている。この第二成形体66は、筒状の形状を備える。第二成形体66は、巻回され形成されたトレッド部材68及びベルトプライ70を含む。図示されないが、第二成形体66は、他のゴム部材を含んでいてもよい。図8の一点鎖線Lsは、第一成形体56の軸線を表している。この軸線Lsは、シェーピングフォーマ40のクランプリング44、トランスファー42の環状フレーム52及び第二成形体66の軸線でもある。
【0041】
図8では、シェーピングフォーマ40の一対のクランプリング44は、互いに離れた位置にある。それぞれのクランプリング44は、第一成形体56の軸方向端部を保持している。トランスファー42は、第一成形体56の半径方向外側に位置している。第一成形体56は、環状フレーム52の半径方向内側に位置している。第二成形体66は、トランスファー42の保持具54に支持されている。セグメント54aが、第二成形体66を半径方向内向きに押圧している。セグメント54aが第二成形体66の外周面に当接している。第二成形体66は、第一成形体56の半径方向外側に位置している。このトランスファー42は、第一成形体56の軸方向中央位置に第二成形体66の軸方向中央位置を一致させて、第二成形体66を保持している。
【0042】
図9には、シェーピングフォーマ40の他の使用状態が示されている。第一成形体56は、シェーピングフォーマ40のクランプリング44に保持されている。一対のクランプリング44が互いに近づいた位置にある。第一成形体56には、空気が充填されている。第一成形体56は、半径方向外向きに拡径されて、トロイド形状にされている。拡径された第一成形体56の外周面が、保持具54が保持する第二成形体66の内周面に接合されている。
【0043】
図1から9を参照しつつ、本発明に係るタイヤの製造方法が説明される。この製造方法では、ジョイント圧着機2、第一成形ドラム36、第二成形ドラム38、シェーピングフォーマ40及びトランスファー42が用いられる。
【0044】
このタイヤの製造方法では、インナーライナー58、カーカスプライ60、ビード62及びサイドウォール部材64を形成するゴムシート等のゴム材料が準備される(STEP1)。
【0045】
図3(B)に示された第一成形ドラム36にゴムシートが巻回されて、インナーライナー58が形成される。インナーライナー58の周方向端部58aと周方向端部58bとが、図示されないステッチャーで、半径方向内向きに第一成形ドラム36に押しつけられる。周方向端部58aと周方向端部58bとが、ステッチャーで圧着される。同様に、インナーライナー58の外側に、他のゴム材料が、順次巻回され、又は所定の位置に配置される。この様にして、カーカスプライ60、リング状のビード62、サイドウォール部材64等を含む、図5の第一成形体56が形成される(STEP2)。
【0046】
第一成形体56は、図示されない搬送装置によって、図3(A)のジョイント圧着機2に送られる。第一成形体56の内側に、塗布ローラ6が通される。このとき、受け台16は待避姿勢にある。第一成形体56の内周面が塗布ローラ6に当接して、塗布ローラ6によって、第一成形体56が支持される。第一成形体56は、インナーライナー58のジョイント58cを下方に位置させて支持される。シリンダ18が伸長し、受け台16は支持姿勢に変化する。この受け台16の受け面16aが第一成形体56の外周面に当接する。受け台16によって第一成形体56が支持される。この第一成形体56の支持によって、塗布ローラ6による支持が解除される。
【0047】
後退端位置で、シリンダ24によって、圧着ローラ12がジョイント58cに押しつけられる。図6及び図7に示される様に、このジョイント58cが、圧着ローラ12によって受け面16aに押しつけられて圧着される。モータ30によって、圧着ローラ12が後退端から前進端位置に向かって、移動させられる。圧着ローラ12は、ジョイント58cを圧着しつつ、後退端から前進端まで移動する。この様にして、第一成形体56の内周面における、ジョイント58cを圧着ローラ12が半径方向外向きに圧着する(STEP3)。なお、ここでは、圧着ローラ12は後退端から前進端まで移動したが、これに限られない。例えば、圧着ローラ12は前進端から後退端まで移動してもよいし、軸方向中央から前進端まで移動し軸方向中央から後退端まで移動してもよい。
【0048】
次に、シリンダ24が圧着ローラ12の圧着を解除する。シリンダ18が縮短し、受け台16は待避姿勢に変化する。この姿勢変化によって、受け台16による第一成形体56の支持が解除される。この第一成形体56は、受け台16の支持の解除によって、塗布ローラ6によって支持される。第一成形体56の内周面が塗布ローラ6に当接する。この塗布ローラ6は、その一部が潤滑剤槽10の潤滑剤に浸かっている。モータ8aによって、塗布ローラ6が回転させられる。この塗布ローラ6の回転によって、第一成形体56は回転させられる。塗布ローラ6は、第一成形体56を回転させつつ、その内周面に潤滑剤を塗布する。この様にして、塗布ローラ6と接触する軸方向端部において、第一成形体56の内周面全周に潤滑剤が塗布される(STEP4)。
【0049】
潤滑剤が塗布された第一成形体56の内側に、シェーピングフォーマ40のクランプリング44が挿入される。一方のクランプリング44で第一成形体56の軸方向の一方の端部が保持される。他方のクランプリング44で第一成形体56の軸方向の他方の端部が保持される。この様にして、図8に示される様に、クランプリング44によって、第一成形体56が保持される(STEP5)。
【0050】
一方で、トレッド部材68、ベルトプライ70を形成する他のゴム材料が準備される(STEP6)。図4の第二成形ドラム38に他のゴム材料が順次巻回される。この様にして、ベルトプライ70が形成され、このベルトプライ70の外側にトレッド部材68が形成され、第二成形体66が形成される(STEP7)。
【0051】
第二成形体66がトランスファー42によって保持される。トランスファー42は、クランプリング44に保持される第一成形体56の半径方向外側に移動する。図8に示される様に、第二成形体66が第一成形体56の半径方向外側に保持される。
【0052】
シェーピングフォーマ40では、一対のクランプリング44が互いに近づきつつ、第一成形体56の内側に空気が充填される。この様にして、第一成形体56は拡径される。シェーピングフォーマ40が、第一成形体56をトロイド形状に拡径する。この拡径によって、第一成形体56の外周面は、第二成形体66の内周面に当接する。図9に示される様に、第一成形体56と第二成形体66とが接合される。
【0053】
保持具54のセグメント54aが拡径される。その後、トランスファー42は、第二成形体66から離れた位置に移動する。この様にして、トランスファー42は、第二成形体66の保持を解除する。図示されないステッチャーが、第二成形体66を第一成形体56に押しつけて圧着する。この様にして、第二成形体66と第一成形体56とが圧着されて、図示されないが、二次成形体としてのローカバーが形成される(STEP8)。
【0054】
このローカバーは、モールドに送られる。ローカバーは、図示さらないモールド内で加熱及び加圧される。このローカバーからタイヤが得られる(STEP9)。
【0055】
このタイヤの製造方法では、第一成形体56の内周面における、インナーライナー58のジョイント58cが、受け面16aに押しつけられて圧着される。これにより、第一成形体56の内周面における、ジョイント58cの接合不良が抑制されている。また、第一成形体56の内周面から圧着することで、ジョイント58cのエアー溜りの発生が抑制されている。
【0056】
STEP2では、インナーライナー58のジョイント58cは、その外周面から押圧されて圧着されている。この第一成形体56では、このジョイント58cは、更にその内周面から押圧されて圧着されている。このジョイント58cが外周面及び内周面の両側から押圧されることで、ジョイント58cのエアー溜りの発生が更に抑制されている。
【0057】
また、STEP2では、インナーライナー58の外側に、他のゴム材料が巻回されて、その周方向端部が圧着される。この他のゴム材料が巻回されて、インナーライナーの外周に積層される他のゴム部材が形成される。インナーライナー58の外側に他のゴム材料を巻回し圧着することで、ジョイント58cに外力が作用する。この外力によって、ジョイント58cの接合が弛むことがある。この製造方法は、第一成形体56の形成後に、ジョイント58cを再び圧着する。再び圧着した後に、第一成形体56は拡径されている。この製造方法では、ジョイント58cの接合不良の発生が更に抑制されている。
【0058】
STEP3において、圧着幅Wtを大きくすることで、ジョイント58cの周辺が広く圧着される。この観点から、この圧着幅Wtは、好ましくは20mm以上であり、更に好ましくは25mm以上である。一方で、圧着幅Wtを小さくすることで、圧着幅Wtの全域がより均一に圧着される。この観点から、この圧着幅Wtは、好ましくは40mm以下であり、更に好ましくは35mm以下である。
【0059】
ジョイント圧着機2は、第一成形体56の外周面を支持する受け面16aを備えている。ジョイント圧着機2は、この受け面16aに対向する圧着ローラ12と、圧着ローラ12を受け面16aに向かって付勢しつつ軸方向に移動可能に支持するローラ支持装置14とを備えている。このジョイント圧着機2では、圧着ローラ12が圧着しつつ移動する軸方向の一方端から他方端までを受け面16aが安定的に支持した状態で、ジョイント58cを圧着する。この受け面16aは、ジョイント58cの圧着を容易に且つ確実にしている。
【0060】
幅Wrが大きい圧着ローラ12では、ジョイント58cの周辺が広く圧着される。この観点から、この幅Wrは、好ましくは30mm以上であり、更に好ましくは35mm以上である。一方で、この幅Wrを小さくすることで、圧着幅Wtの全域がより均一に圧着される。この観点から、この幅Wrは、好ましくは50mm以下であり、更に好ましくは45mm以下である。
【0061】
同様に、幅Wbが大きい受け面16aは、ジョイント58cの周辺を広く圧着できる。この観点から、この幅Wbは、好ましくは30mm以上であり、更に好ましくは35mm以上である。一方で、この幅Wbを余りに広くしても圧着に関して有利な効果が得られない。この幅Wbは、好ましくは50mm以下である。
【0062】
このジョイント圧着機2は、第一成形体56に潤滑剤を塗布する塗布ローラ6を備える。ジョイント圧着機2では、第一成形体56の内周面に潤滑剤が塗布される。これにより、第一成形体56は、シェーピングフォーマ40のクランプリング44に容易に装着される。この潤滑剤の塗布は、第一成形体56をクランプリング44に装着する際に、ジョイント58cの接合不良が発生することを抑制する。
【0063】
更に、このジョイント圧着機2は、塗布ローラ6と圧着ローラ12とを備えることで、第一成形体56の潤滑とジョイント58cの圧着とをできる。このジョイント圧着機2は、第一成形体56を潤滑する設備とジョイント58cを圧着する設備と兼ねている。このジョイント圧着機2は、設備の設置スペースを小さくできる。また、このジョイント圧着機2は、第一成形体56を潤滑する設備とジョイント58cを圧着する設備との間の搬送も必要としない。
【0064】
ジョイント圧着機2はシリンダ18を備える。このシリンダ18は、受け台16を支持姿勢と待避姿勢とに変化させる受け台移動装置として機能する。このシリンダ18を備えることで、この受け台16は第一成形体56の潤滑を阻害しない。ここでは、受け台16は回動させられて支持姿勢と待避姿勢とに変化したが、これに限られない。この待避姿勢は、第一成形体56の回転を阻害しない姿勢であればよい。受け台16は支持姿勢と待避姿勢との間で平行移動されてもよい。
【0065】
この圧着ローラ12では、分割ローラ12aがそれぞれ独立して半径方向に移動可能である。これにより、ジョイント58cの内周面の形状に沿って、分割ローラ12aの半径方向位置が変化する。これにより、この圧着ローラ12は、ジョイント58cを均一に圧着できる。更に、この圧着ローラ12は、スプリング12dを備えることで、ジョイント58cの内周面の形状に沿って、より均一に圧着できる。この圧着ローラ12は、第一成形体56の内周面における、ジョイント58cの圧着に適している。
【実施例
【0066】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0067】
[実施例1]
図1から図4に示された成形設備を用いて、本発明に係るタイヤの製造方法でローカバーが得られた。
【0068】
[実施例2]
圧着ローラに代えて、ウレタン製ローラを使用した他は、実施例1と同様にして、ローカバーが得られた。このウレタン製ローラは、一体の円筒形状を備え、分割されていなかった。
【0069】
[比較例1]
圧着ローラによる圧着がされなかった他は、実施例1と同様にして、ローカバーが得られた。
【0070】
[評価]
それぞれのローカバーで、内周面におけるジョイントが検査された。このジョイントにおいて、接合不良及びエアー溜りの有無が検査された。その結果、比較例1のエアー溜りの発生率の指数を100としたときに、実施例1のそれは20であり、実施例2のそれは54であった。また、比較例1の接合不良の発生率の指数を100としたときに、実施例1のそれは0であり、実施例2のそれは39であった。これらの指数は、小さいほど発生率が低く好ましい。
【0071】
この評価結果から明らかな様に、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明された方法は、筒状の第一成形体を用いてローカバーが得られる空気入りタイヤの製造方法に広く適用されうる。
【符号の説明】
【0073】
2・・・ジョイント圧着機
6・・・塗布ローラ
12・・・圧着ローラ
16・・・受け台
16a・・・受け面
18・・・シリンダ(受け台移動装置)
36・・・第一成形ドラム
38・・・第二成形ドラム
40・・・シェーピングフォーマ
42・・・トランスファー
44・・・クランプリング
56・・・第一成形体
58・・・インナーライナー
60・・・カーカスプライ
62・・・ビード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9