(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換装置の初期充電方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
H02M7/12 601D
H02M7/12 G
H02M7/12 N
(21)【出願番号】P 2019216676
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 寿勝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 良介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007377(JP,A)
【文献】特開2011-109801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0353120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還流ダイオードが逆並列接続された複数のスイッチング素子が直流正母線と直流負母線との間に直列に接続されたアームを相毎に備えたコンバータ部によって、三相の交流ラインから供給される三相交流電力を直流電圧に変換し、前記直流正母線と前記直流負母線との間に直列に接続された複数のコンデンサで平滑して出力する電力変換装置であって、
電源投入時には、第1相の前記アームの中性点を第1相の前記交流ラインと前記コンデンサの相互接続点とに接続すると共に、第2相及び第3相の前記交流ラインと第2相及び第3相の前記アームの中性点とを充電抵抗を介してそれぞれ接続し、前記スイッチング素子をオフ状態とすることで、前記コンバータ部を前記還流ダイオードで構成され、前記充電抵抗を介して前記コンデンサを初期充電する倍電圧整流回路として機能させる制御部を具備し、
前記コンバータ部は、各相の前記アームの中性点と前記コンデンサの相互接続点とをそれぞれ接続する相毎の交流スイッチを備えたマルチレベルコンバータであり、
前記制御部は、電源投入時に、第1相の前記アームの中性点と前記コンデンサの相互接続点とを接続する第1相の前記交流スイッチをオン状態とすると共に、第2相及び第3相の前記アームの中性点と前記コンデンサの相互接続点とをそれぞれ接続する第2相及び第3相の前記交流スイッチをオフ状態とすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
還流ダイオードが逆並列接続された複数のスイッチング素子が直流正母線と直流負母線との間に直列に接続されたアームを相毎に備えた2レベルコンバータによって、三相の交流ラインから供給される三相交流電力を直流電圧に変換し、前記直流正母線と前記直流負母線との間に直列に接続された複数のコンデンサで平滑して出力する電力変換装置であって
、
第1相の前記アームの中性点と前記コンデンサの相互接続点とを接続する初期充電スイッチと、
電源投入時には、前記初期充電スイッチをオン状態とすると共に、第2相及び第3相の前記交流ラインと第2相及び第3相の前記アームの中性点とを充電抵抗を介してそれぞれ接続し、前記スイッチング素子をオフ状態とすることで、前記2レベルコンバータを前記還流ダイオードで構成され、前記充電抵抗を介して前記コンデンサを初期充電する倍電圧整流回路として機能させる制御部を具備することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
三相の交流ラインから供給される三相交流電力を、還流ダイオードが逆並列接続された複数のスイッチング素子が直流正母線と直流負母線との間に直列に接続されたアームを相毎に備えたコンバータ部によって直流電圧に変換し、前記直流正母線と前記直流負母線との間に直列に接続された複数のコンデンサで平滑して出力する電力変換装置の初期充電方法であって、
電源投入時には、第1相の前記アームの中性点を第1相の前記交流ラインと前記コンデンサの相互接続点とに接続すると共に、第2相及び第3相の前記交流ラインと第2相及び第3相の前記アームの中性点とを充電抵抗を介してそれぞれ接続し、前記スイッチング素子をオフ状態とすることで、前記コンバータ部を前記還流ダイオードで構成された倍電圧整流回路として機能させ、前記充電抵抗を介して前記コンデンサを初期充電させることを特徴とする電力変換装置の初期充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起動時に直流部の電解コンデンサを充電する電力変換装置の初期充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換器の起動時には、直流部の電解コンデンサに電荷が存在していない。従って、すぐに電源を電力変換器に接続すると、大きな突入電流が流れ、最悪スイッチング素子が破壊されてしまう。そこで、一般的には起動用の初期充電回路を設け、起動時の大きな突入電流を防止する(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1では、充電抵抗と短絡スイッチとからなる初期充電回路を設け、充電抵抗を介して平滑コンデンサの初期充電を行い、初期充電後に短絡スイッチをオンして充電抵抗を短絡する。また、特許文献2では、スイッチと限流手段とを含む初期充電回路を設け、限流手段によって電界コンデンサに流れ込む電流を制限している。
【0003】
図6(a)に示す電力変換装置10aには、特許文献1のように、初期充電用の充電抵抗7aが初期充電回路として設けられている。
【0004】
充電抵抗7aは、R相充電抵抗7Rと、S相充電抵抗7Sと、T相充電抵抗7Tとを備え、R相充電スイッチ6RとR相充電抵抗7Rとからなる直列回路がR相ラインをオンオフするR相スイッチ2Rに並列接続され、S相充電スイッチ6SとS相充電抵抗7Sとからなる直列回路がS相ラインをオンオフするS相スイッチ2Sに並列接続され、T相充電スイッチ6TとT相充電抵抗7Tとからなる直列回路がT相ラインをオンオフするT相スイッチ2Tに並列接続されている。
【0005】
電源投入時には、電源スイッチ2をオフ状態とすると共に、充電スイッチ6a(R相充電スイッチ6R、S相充電スイッチ6S及びT相充電スイッチ6Tの全て)をオン状態とし、コンバータ部4の各スイッチング素子をオフ状態(ゲートブロック状態)とする。これにより、コンバータ部4が三相フルブリッジ整流回路として機能し、充電抵抗7a(R相充電抵抗7R、S相充電抵抗7S、T相充電抵抗7T)を介して、平滑コンデンサ部5の電解コンデンサが充電される。
【0006】
そして、所定時間後や、平滑コンデンサ部5の電圧が所定の値に到達すると、充電スイッチ6a(R相充電スイッチ6R、S相充電スイッチ6S及びT相充電スイッチ6Tの全て)をオフ状態とし、電源スイッチ2をオン状態とし、電力変換装置10aが起動可能になる。
【0007】
図6(b)に示す電力変換装置10bは、特許文献2の限流手段と同様に、ダイオードブリッジ回路DBを専用の初期充電回路として設けた構成例であり、同様の動作で初期充電が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-140969号公報
【文献】特開2011-109801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1や
図6(a)に示す電力変換装置10aでは、初期充電時に充電抵抗7aとフィルタ部3のリアクトルによる電圧降下により充電される電圧が入力電圧ピーク値よりも低くなる。従って、電源スイッチ2の投入時にフィルタ部3のコンデンサによる突入電流が回路に流れるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2や
図6(b)に示す電力変換装置10bでは、フィルタ部3のリアクトルによる電圧降下を回避できるが、専用の限流手段やダイオードブリッジ回路が増えるため、コストアップ、サイズアップを招いてしまう。
【0011】
また、特許文献1、2や
図6(a)(b)に示す電力変換装置10a、10bでは、初期充電時に一定の充電時間を要する。
【0012】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、従来技術の問題を解決し、専用の回路を設けることなく、入力電圧ピーク値より大きい電圧で初期充電を行うことができる電力変換装置及び電力変換装置の初期充電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電力変換装置は、還流ダイオードが逆並列接続された複数のスイッチング素子が直流正母線と直流負母線との間に直列に接続されたアームを相毎に備えたコンバータ部によって、三相の交流ラインから供給される三相交流電力を直流電圧に変換し、前記直流正母線と前記直流負母線との間に直列に接続された複数のコンデンサで平滑して出力する電力変換装置であって、電源投入時には、第1相の前記アームの中性点を第1相の前記交流ラインと前記コンデンサの相互接続点とに接続すると共に、第2相及び第3相の前記交流ラインと第2相及び第3相の前記アームの中性点とを充電抵抗を介してそれぞれ接続し、前記スイッチング素子をオフ状態とすることで、前記コンバータ部を前記還流ダイオードで構成され、前記充電抵抗を介して前記コンデンサを初期充電する倍電圧整流回路として機能させる制御部を具備し、前記コンバータ部は、各相の前記アームの中性点と前記コンデンサの相互接続点とをそれぞれ接続する相毎の交流スイッチを備えたマルチレベルコンバータであり、前記制御部は、電源投入時に、第1相の前記アームの中性点と前記コンデンサの相互接続点とを接続する第1相の前記交流スイッチをオン状態とすると共に、第2相及び第3相の前記アームの中性点と前記コンデンサの相互接続点とをそれぞれ接続する第2相及び第3相の前記交流スイッチをオフ状態とすることを特徴とする。
また、本発明の電力変換装置は、還流ダイオードが逆並列接続された複数のスイッチング素子が直流正母線と直流負母線との間に直列に接続されたアームを相毎に備えた2レベルコンバータによって、三相の交流ラインから供給される三相交流電力を直流電圧に変換し、前記直流正母線と前記直流負母線との間に直列に接続された複数のコンデンサで平滑して出力する電力変換装置であって、第1相の前記アームの中性点と前記コンデンサの相互接続点とを接続する初期充電スイッチと、電源投入時には、前記初期充電スイッチをオン状態とすると共に、第2相及び第3相の前記交流ラインと第2相及び第3相の前記アームの中性点とを充電抵抗を介してそれぞれ接続し、前記スイッチング素子をオフ状態とすることで、前記2レベルコンバータを前記還流ダイオードで構成され、前記充電抵抗を介して前記コンデンサを初期充電する倍電圧整流回路として機能させる制御部を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専用の回路を設けることなく、入力電圧ピーク値より大きい電圧で初期充電を行うことができるため、コストダウンと小型化を実現でき、入力電圧ピーク値より大きい直流電圧に初期充電することができ、従来技術よりも初期充電時間を短縮できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る電力変換装置の実施の形態の構成を示す回路構成図である。
【
図2】
図1に示す電力変換装置における初期充電時のスイッチ状態を示す回路構成図である。
【
図3】
図1に示す電力変換装置における初期充電時の直流電圧の推移を示す図である。
【
図4】
図1に示すコンバータ部をNPC(I型)回路とした構成例を示す回路構成図である。
【
図5】
図1に示すコンバータ部を2レベルコンバータとした構成例を示す回路構成図である。
【
図6】従来の電力変換装置の構成を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、各図において、同一の構成には、同一の符号を付して一部説明を省略している。
【0017】
本実施の形態の電力変換装置1は、
図1を参照すると、マルチレベルコンバータを代表する3レベルコンバータであり、三相交流電源の交流ラインR、S、Tから供給される三相交流電力を直流電力に変換し、直流正母線11、直流中性点母線12及び直流負母線13を介して出力する。なお、本実施の形態では、交流ラインRを第1相、交流ラインS、Tをそれぞれ第2、3相として説明するが、交流ラインS、Tのいずれかを第1相としても良い。
【0018】
電力変換装置1は、電源スイッチ2と、フィルタ部3と、コンバータ部4と、平滑コンデンサ部5と、充電スイッチ6と、充電抵抗7と、制御部8とを備えている。
【0019】
電源スイッチ2は、交流ラインRをオンオフするR相スイッチ2Rと、交流ラインSをオンオフするS相スイッチ2Sと、交流ラインTをオンオフするT相スイッチ2Tとからなる。電源スイッチ2において、第1相の交流ラインRをオンオフするR相スイッチ2Rと、第2、3相の交流ラインS、TをオンオフするS相スイッチ2S及びT相スイッチ2Tとは、個別に制御可能に構成されている。
【0020】
フィルタ3は、コンデンサ部31とリアクトル部32とからなり、高調波成分の抑制を目的として交流ラインR、S、Tとコンバータ部4との間に設けられている。コンデンサ部31は、交流ラインR、S間に接続されたコンデンサ31RSと、交流ラインS、T間に接続されたコンデンサ31STと、交流ラインT、R間に接続されたコンデンサ31TRとを備え、リアクトル部32は、交流ラインR、S、Tにそれぞれ直列に挿入されるリアクトル32R、32S、32Tを備えている。
【0021】
コンバータ部4は、IGBT等のスイッチング素子Q1R、Q1S、Q1T、Q2R、Q2S、Q2Tと、還流ダイオードD1R、D1S、D1T、D2R、D2S、D2Tと、交流スイッチ41R、41S、41Tとを備えている。
【0022】
スイッチング素子Q1R、Q2Rは、R相アームとして直流正母線11と直流負母線13との間に直列に接続され、スイッチング素子Q1R、Q2Rには、還流ダイオードD1R、D2Rがそれぞれ逆並列接続されている。そして、R相アームの中性点であるスイッチング素子Q1Rとスイッチング素子Q2Rとの接続点が交流ラインRと、交流スイッチ41Rを介して直流中性点母線12とに接続されている。
【0023】
スイッチング素子Q1S、Q2Sは、S相アームとして直流正母線11と直流負母線13との間に直列に接続され、スイッチング素子Q1S、Q2Sには、還流ダイオードD1S、D2Sがそれぞれ逆並列接続されている。そしてS相アームの中性点であるスイッチング素子Q1Sとスイッチング素子Q2Sとの接続点が交流ラインSと、交流スイッチ41Sを介して直流中性点母線12とに接続されている。
【0024】
スイッチング素子Q1T、Q2Tは、T相アームとして直流正母線11と直流負母線13との間に直列に接続され、スイッチング素子Q1T、Q2Tには、還流ダイオードD1T、D2Tがそれぞれ逆並列接続されている。そして、T相アームの中性点であるスイッチング素子Q1Tとスイッチング素子Q2Tとの接続点が交流ラインTと、交流スイッチ41Tを介して直流中性点母線12とに接続されている。
【0025】
交流スイッチ41Rは、IGBT等のスイッチング素子Q3R、Q4Rと、ダイオードD3R、D4Rとを備えている。スイッチング素子Q3Rのエミッタがスイッチング素子Q1Rとスイッチング素子Q2Rとの接続点に接続され、スイッチング素子Q3R、Q4Rのソースが互いに接続され、スイッチング素子Q4Rのエミッタが直流中性点母線12に接続されている。そして、ダイオードD3R、D4Rがスイッチング素子Q3R、Q4Rにそれぞれ逆並列に接続されている。
【0026】
交流スイッチ41Sは、IGBT等のスイッチング素子Q3S、Q4Sと、ダイオードD3S、D4Sとを備えている。スイッチング素子Q3Sのエミッタがスイッチング素子Q1Sとスイッチング素子Q2Sとの接続点に接続され、スイッチング素子Q3S、Q4Sのソースが互いに接続され、スイッチング素子Q4Sのエミッタが直流中性点母線12に接続されている。そして、ダイオードD3S、D4Sがスイッチング素子Q3S、Q4Sにそれぞれ逆並列に接続されている。
【0027】
交流スイッチ41Tは、IGBT等のスイッチング素子Q3T、Q4Tと、ダイオードD3T、D4Tとを備えている。スイッチング素子Q3Tのエミッタがスイッチング素子Q1Tとスイッチング素子Q2Tとの接続点に接続され、スイッチング素子Q3T、Q4Tのソースが互いに接続され、スイッチング素子Q4Tのエミッタが直流中性点母線12に接続されている。そして、ダイオードD3T、D4Tがスイッチング素子Q3T、Q4Tにそれぞれ逆並列に接続されている。
【0028】
平滑コンデンサ5は、直流正母線11と直流中性点母線12との間に接続された第1コンデンサC1と、直流中性点母線12と直流負母線13との間に接続された第2コンデンサC2とを備えている。なお、第1コンデンサC1と第2コンデンサC2とは、それぞれ複数のコンデンサで構成しても良い。
【0029】
充電スイッチ6は、S相充電スイッチ6Sと、T相充電スイッチ6Tとを備え、充電抵抗7は、S相充電抵抗7Sと、T相充電抵抗7Tとを備えている。そして、S相充電スイッチ6SとS相充電抵抗7Sとからなる直列回路が第2相である交流ラインSをオンオフするS相スイッチ2Sに並列接続され、T相充電スイッチ6TとT相充電抵抗7Tとからなる直列回路が第3相である交流ラインTをオンオフするT相スイッチ2Tに並列接続されている。
【0030】
制御部8は、電源スイッチ2及び充電スイッチ6と、コンバータ部4の各スイッチング素子をオンオフ制御する機能を有している。
【0031】
通常動作時において、制御部8は、電源スイッチ2(R相スイッチ2R、S相スイッチ2S及びT相スイッチ2Tの全て)をオン状態すると共に、充電スイッチ6(S相充電スイッチ6S及びT相充電スイッチ6Tの全て)をオフ状態とし、直流正母線11と直流負母線13との間の直流電圧が基準電圧に一致するように、コンバータ部4の各スイッチング素子のオンオフをPWM制御する。
【0032】
電源の投入が指示されると、制御部8は、電源スイッチ2の内、第1相のR相スイッチ2Rのみをオン状態(S相スイッチ2S及びT相スイッチ2Tはオフ状態)とすると共に、充電スイッチ6(S相充電スイッチ6S及びT相充電スイッチ6Tの全て)をオン状態とし、コンバータ部4において、交流スイッチ41Rのみをオン状態(スイッチング素子Q3R、Q4Rをオン状態)して、他のスイッチング素子(スイッチング素子Q1R、Q1S、Q1T、Q2R、Q2S、Q2T、Q3S、Q3T、Q4S、Q4T)をオフ状態(ゲートブロック状態)とする。
【0033】
このスイッチ状態において、電力変換装置1は、
図2に示すように、倍電圧整流回路(ハーフブリッジ整流回路)となる。電力変換装置1が倍電圧整流回路として機能することで、第1コンデンサC1と第2コンデンサC2とに三相交流電源の入力電圧ピーク値にほぼ等しい直流電圧がそれぞれ発生し、S相充電抵抗7S及びT相充電抵抗7Tを介して第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2が充電される。
【0034】
例えば、三相交流電源を200〔V〕とした場合、√2×200〔V〕×2≒566〔V〕の直流電圧で第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2が充電される。従って、
図3(a)、に実線で示すように、三相交流電源の入力電圧ピーク値(√2×200〔V〕×2≒283〔V〕)より大きい直流電圧に初期充電することができる。
【0035】
また、初期充電による目標直流電圧値が三相交流電源の入力電圧ピーク値未満である場合には、目標直流電圧値まで達する時間を従来に比べて短縮することができ、電力変換装置1の起動を早めることが可能になる。
図3において、点線は、
図6(a)に示す電力変換装置10aにおける初期充電による直流電圧の推移を示し、R相充電抵抗7R、S相充電抵抗7S及びT相充電抵抗7Tの抵抗値を本実施の形態と同じにした比較例である。例えば、目標直流電圧値を200Vとした場合、点線で示す従来装置では到達まで1s程度かかるが、実線で示す本実施の形態では到達まで0.6s程度に短縮される。
【0036】
なお、本実施の形態では、各アームの中性点と直流中性点母線12とを双方向スイッチである交流スイッチ41
R、41
S、41
Tでそれぞれ接続したT型回路でコンバータ部4を構成した例について説明したが、
図4に示す電力変換装置1aのように、直流中性点母線12の電位をクランプダイオードD
5R、D
6R、D
5S、D
6S、D
5T、D
6TによりクランプするNPC(I型)回路で構成したコンバータ部4aを採用しても良い。
【0037】
コンバータ部4aでは、交流スイッチ41Rを構成するスイッチング素子Q3R、Q4R及びダイオードD3R、D4RがR相アームに、交流スイッチ41Sを構成するスイッチング素子Q3S、Q4S及びダイオードD3S、D4SがS相アームに、交流スイッチ41Tを構成するスイッチング素子Q3R、Q4R及びダイオードD3T、D4TがT相アームにそれぞれ組み込まれている。
【0038】
従って、コンバータ部4aにおいても、交流スイッチ41Rを構成するスイッチング素子Q3R、Q4Rをオン状態して、第1相であるR相アームの中性点と直流中性点母線12とを接続することで、同様に倍電圧整流回路が構成される。
【0039】
また、
図5に示す電力変換装置1bのように、2レベルコンバータで構成したコンバータ部4bを採用しても良い。コンバータ部4bには、第1相であるR相アームの中性点と直流中性点母線12とを接続する初期充電スイッチ9が専用の回路として設け、電源投入時に初期充電スイッチ9をオン状態とすることで、コンバータ部4bをハーフブリッジ整流回路(倍電圧整流回路)として機能させる。なお、初期充電スイッチ9は、機械的スイッチで構成しても良く、半導体スイッチで構成しても良い。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態は、直流正母線11と直流負母線13との間に直列に接続された、還流ダイオードD1R、D2Rがそれぞれ逆並列接続されたスイッチング素子Q1R、Q2RからなるR相アームと、還流ダイオードD1S、D2Sがそれぞれ逆並列接続されたスイッチング素子Q1S、Q2SからなるS相アームと、還流ダイオードD1T、D2Tがそれぞれ逆並列接続されたスイッチング素子Q1T、Q2TからなるT相アームとを備えたコンバータ部4によって、三相の交流ラインR、S、Tから供給される三相交流電力を直流電圧に変換し、直流正母線11と直流負母線13との間に直列に接続された第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2で平滑して出力する電力変換装置1であって、電源投入時には、第1相であるR相アームの中性点を交流ラインRと第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の相互接続点である直流中性点母線12とに接続すると共に、第2相及び第3相である交流ラインS及び交流ラインTとS相アーム及びT相アームのそれぞれの中性点とをS相充電抵抗7S及びT相充電抵抗7Tを介してそれぞれ接続し、スイッチング素子Q1R、Q1S、Q1T、Q2R、Q2S、Q2Tをオフ状態とすることで、コンバータ部4を還流ダイオードD1R、D1S、D1T、D2R、D2S、D2Tで構成され、S相充電抵抗7S及びT相充電抵抗7Tを介して第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2を初期充電する倍電圧整流回路として機能させる制御部8を備えている。そして、コンバータ部4は、R相アーム、S相アーム及びT相アームのそれぞれの中性点と直流中性点母線12とをそれぞれ接続する交流スイッチ41R、41S、41Tを備えたマルチレベル(3レベル)コンバータであり、制御部8は、電源投入時に、R相アームの中性点と直流中性点母線12とを接続する交流スイッチ41Rをオン状態とすると共に、S相アーム及びT相アームのそれぞれの中性点と直流中性点母線12とをそれぞれ接続する交流スイッチ41S、41Tをオフ状態とする。
この構成により、専用の回路を設けることなく、マルチレベルコンバータを初期充電に用いる倍電圧整流回路として機能させることができ、入力電圧ピーク値より大きい電圧で初期充電を行うことができるため、コストダウンと小型化を実現でき、入力電圧ピーク値より大きい直流電圧に初期充電することができる。また、初期充電による目標直流電圧値が三相交流電源の入力電圧ピーク値未満である場合には、目標直流電圧値まで達する時間を従来に比べて短縮することができ、電力変換装置1の起動を早めることが可能になる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、コンバータ部4bは、2レベルコンバータであり、R相アームの中性点と直流中性点母線12とを接続する初期充電スイッチ9を備え、制御部8は、電源投入時に、初期充電スイッチ9をオン状態とする。
この構成により、2レベルコンバータを初期充電に用いる倍電圧整流回路として機能させることができる。
【0042】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【符号の説明】
【0043】
1、1a、1b、10a、10b 電力変換装置
2 電源スイッチ
2R R相スイッチ
2S S相スイッチ
2T T相スイッチ
3 フィルタ部
4、4a、4b コンバータ部
5 平滑コンデンサ部
6 充電スイッチ
6S S相充電スイッチ
6T T相充電スイッチ
7 充電抵抗
7S S相充電抵抗
7T T相充電抵抗
8 制御部
9 初期充電スイッチ
11 直流正母線
12 直流中性点母線
13 直流負母線
31 コンデンサ部
31RS コンデンサ
31ST コンデンサ
31TR コンデンサ
32 リアクトル部
32R、32S、32T リアクトル
41R、41S、41T 交流スイッチ
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
D1R、D1S、D1T、D2R、D2S、D2T 還流ダイオード
D3R、D3S、D3T、D4R、D4S、D4T ダイオード
D5R、D5S、D5T、D6R、D6S、D6T クランプダイオード
Q1R、Q1S、Q1T、Q2R、Q2S、Q2T、Q3R、Q3S、Q3T、Q4R、Q4S、Q4T スイッチング素子
R、S、T 交流ライン