(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】酵素センサー用電極及び酵素センサー
(51)【国際特許分類】
G01N 27/327 20060101AFI20231031BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20231031BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G01N27/327 353P
G01N27/30 B
G01N27/416 338
G01N27/416 336H
(21)【出願番号】P 2019217267
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八手又 彰彦
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038870(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157834(WO,A1)
【文献】特開2016-191037(JP,A)
【文献】特開平08-015210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0170402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
H01M 4/48-4/98
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に配置された、導電層と酸化還元酵素とを含有する電極であって、
前記導電層が導電性の炭素材料(A)とバインダー(B)とを含み、炭素材料(A)が黒鉛(A-a)と黒鉛以外の導電性の炭素材料(A-b)とを含み、
前記導電層の表面の60°光沢が0.5~120であ
り、
前記導電層の比表面積が、5~800m
2
/gである、
酵素センサー用電極。
【請求項2】
バインダー(B)が、水溶性樹脂(B-a)および/または水分散樹脂微粒子(B-b)を含む請求項
1に記載の酵素センサー用電極。
【請求項3】
導電層の固形分の合計100質量%中の炭素材料(A)の含有率が、50~90質量%であり、炭素材料(A)に含まれる黒鉛(A-a)の含有率((A-a)/(A)×100)が、25~95質量%である請求項1
又は2に記載の酵素センサー用電極。
【請求項4】
請求項1~
3いずれかに記載の酵素センサー用電極を用いて形成される酵素センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素センサー用電極及び酵素センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
血液や汗等の生体試料や食品等に含まれる特定成分を、簡便に計測する酵素センサーが実用化されている。例えば、血液中のグルコースを電気化学的な手段により検出、あるいは定量化する血糖値センサー等が挙げられる。これは血中に含まれるグルコースに対し酵素の基質特異性により選択的に酸化し、メディエーターを介して、あるいは直接電極に電荷が到達して電流が発生、その電流値からグルコース濃度を定量することができる。
実用化されている酵素センサーにおける電極部分は、スパッタやめっき等により金属層が形成されたものが用いられることがある(例えば特許文献1)。しかし、その測定感度は未だ十分とは言い難い状況であり、高価な金属を使用しないことは腐食やコストの観点からも好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、感度に優れ、更に腐食への耐性やコストに優れる酵素センサー用電極および酵素センサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、基材上に配置された導電層と、酸化還元酵素とを含有する電極であって、前記導電層が導電性の炭素材料(A)とバインダー(B)とを含み、炭素材料(A)が少なくとも黒鉛(A-a)と黒鉛以外の導電性の炭素材料(A-b)とを含み、前記導電層の表面の60°光沢が0.5~120である、酵素センサー用電極に関する。
【0006】
また、本発明は、前記導電層の比表面積が5~800m2/gである前記の酵素センサー用電極に関する。
【0007】
また、本発明は、バインダー(B)が、水溶性樹脂(B-a)および/または水分散樹脂微粒子(B-b)である前記の酵素センサー用電極に関する。
【0008】
また、本発明は、導電層の固形分の合計100質量%中の炭素材料(A)の含有率が50~90質量%であり、炭素材料(A)に含まれる黒鉛(A-a)の含有率((A-a)/(A)×100)が25~95質量%である前記の酵素センサー用電極に関する。
【0009】
また、本発明は、前記の酵素センサー用電極を用いて形成される酵素センサーに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感度に優れ、更に腐食への耐性やコストに優れる酵素センサー用電極および酵素センサーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<酵素センサー用電極>
本発明の酵素センサー用電極は、少なくとも基材上に配置された導電層と酸化還元酵素からなる。例えば、紙やPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム等の基材の少なくとも片側の表面に、導電性の炭素材料(A)とバインダー(B)と、必要に応じて溶剤とを含有する導電性組成物を塗工、必要に応じてプレス処理等を行って、導電層を形成した後、酸化還元酵素を担持して電極を得ることができる。
【0012】
<導電層>
(導電性の炭素材料(A))
本発明において、使い捨て性や生体適合性等の観点から、導電性材料として導電性の炭素材料(A)を用いる。導電性の炭素材料(A)としては、導電性に優れた導電層を得られることから、黒鉛(A-a)や黒鉛以外の導電性の炭素材料(A-b)とを含有する。
黒鉛(A-a)としては、人造黒鉛や天然黒鉛等が挙げられ、黒鉛以外の炭素材料(A-b)としては、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、グラフェン、フラーレン等が挙げられる。これらを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することが出来る。
【0013】
導電層に含まれる導電性の炭素材料(A)に含まれる黒鉛(A-a)の含有率((A-a)/(A)×100)は、好ましくは25~95質量%であり、より好ましくは50~90質量%であり、さらに好ましくは60~80質量%である。
【0014】
黒鉛(A-a)としては、例えば人造黒鉛や天然黒鉛等を使用することが出来る。人造黒鉛としては、無定形炭素の熱処理により、不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせたものであり、一般的には石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として製造される。天然黒鉛としては、球形黒鉛、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等を使用することが出来る。また、鱗片状黒鉛を化学処理等した膨張黒鉛(膨張性黒鉛ともいう)や、膨張黒鉛を熱処理して膨張化させた後、微細化やプレスにより得られた膨張化黒鉛等を使用することも出来る。これらの黒鉛の中でも、導電性基材の導電層に用いる場合は、導電性の観点から、天然黒鉛が好ましく、球形黒鉛、鱗片状黒鉛膨張化黒鉛、および薄片化黒鉛等の薄片状黒鉛が好ましい。
【0015】
また、用いる黒鉛(A-a)の平均粒径は、0.5~500μmが好ましく、特に、2~100μmが好ましい。
【0016】
本発明でいう平均粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0017】
市販の黒鉛としては、例えば、薄片状黒鉛として、日本黒鉛工業社製のCMX、UP-5、UP-10、UP-20、UP-35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB-150、CB-100、ACP、ACP-1000、ACB-50、ACB-100、ACB-150、SP-10、SP-20、J-SP、SP-270、HOP、GR-60、LEP、F#1、F#2、F#3、中越黒鉛社製のCX-3000、FBF、BF、CBR、SSC-3000、SSC-600、SSC-3、SSC、CX-600、CPF-8、CPF-3、CPB-6S、CPB、96E、96L、96L-3、90L-3、CPC、S-87、K-3、CF-80、CF-48、CF-32、CP-150、CP-100、CP、HF-80、HF-48、HF-32、SC-120、SC-80、SC-60、SC-32、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50、西村黒鉛社製の10099M、PB-99等が挙げられる。球状天然黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のCGC-20、CGC-50、CGB-20、CGB-50が挙げられる。土状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製の青P、AP、AOP、P#1、中越黒鉛社製のAPR、S-3、AP-6、300Fが挙げられる。人造黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のPAG-60、PAG-80、PAG-120、PAG-5、HAG-10W、HAG-150、中越黒鉛社製のRA-3000、RA-15、RA-44、GX-600、G-6S、G-3、G-150、G-100、G-48、G-30、G-50、SECカーボン社製のSGP-100、SGP-50、SGP-25、SGP-15、SGP-5、SGP-1、SGO-100、SGO-50、SGO-25、SGO-15、SGO-5、SGO-1、SGX-100、SGX-50、SGX-25、SGX-15、SGX-5、SGX-1が挙げられる。
【0018】
黒鉛以外の導電性の炭素材料(A-b)は特に限定されないが、コストや導電性などの観点から、カーボンブラックや導電性炭素繊維を用いることが好ましい。
【0019】
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。
【0020】
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、好ましくは20m2/g以上、更に好ましくは50m2/g以上、また更に好ましくは100m2/g以上のものを使用することが望ましい。比表面積が20m2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合がある。
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005~1μmが好ましく、特に、0.01~0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
【0021】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、東海カーボン社製のトーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500、デグサ社製のプリンテックスL、コロンビヤン社製のRaven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA、PUERBLACK100、115、205、三菱化学社製の#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B、キャボット社製のMONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、BlackPearls2000、TIMCAL社製のEnsaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP-Li等のファーネスブラック)、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製のEC-200L、EC-300J、EC-600JD等のケッチェンブラック、デンカ社製のデンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35等のアセチレンブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0022】
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることが出来る。また、カーボンナノチューブには、グラフェンシートが一層でナノメートル領域の直径を有するチューブを形成する単層カーボンナノチューブと、グラフェンシートが多層である多層カーボンナノチューブがある。そのため、多層カーボンナノチューブの直径は、典型的な単層カーボンナノチューブの0.7-2.0nmに対して、30nmと大きい値を示す。
【0023】
市販の導電性炭素繊維やカーボンナノチューブとしては、昭和電工社製のVGCF等の気相法炭素繊維、名城ナノカーボン社製のEC1.0,EC1.5,EC2.0,EC1.5-P等の単層カーボンナノチューブ、CNano社製のFloTube9000、FloTube9100、FloTube9110、FloTube9200、Nanocyl社製のNC7000、Knano社製の100T等が挙げられる。
【0024】
(バインダー(B))
バインダー(B)の種類は、導電性の炭素材料(A)の分散性や基材への密着性、導電性基材の可とう性および導電性組成物の安定性を付与できるものであれば特に制限されず、樹脂等が挙げられる。
【0025】
バインダー(B)としては、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、EVA系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂等からなる群から選ばれる1種類以上を含むことができる。ただし、これらの樹脂に限定されるわけではない。バインダー樹脂は1種単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0026】
バインダー樹脂は、バインダー樹脂が基材に適用された後に、硬化(架橋)反応を受ける、硬化性樹脂を用いることもできる。
バインダー樹脂は、水系または非水系溶剤に溶解する溶解性樹脂や分散型樹脂微粒子を用いることもできる。分散型樹脂微粒子は、樹脂微粒子が水系または非水系の分散媒中で溶解せずに、微粒子の状態で存在するもので、その分散体は、一般的にエマルジョンとも呼ばれる。これらは1種単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0027】
分散型樹脂微粒子の粒子構造は、多層構造、いわゆるコアシェル粒子にすることもできる。例えば、コア部、またはシェル部に缶応期を有する単量体を主に重合させた樹脂を局在化させたり、コアとシェルによってTgや組成に差を設けたりすることにより、硬化性、乾燥性、成膜性、バインダーの機械強度を向上させることができる。
樹脂微粒子の平均粒子径は、結着性や粒子の安定性の観点から、10~1000nmであることが好ましく、10~300nmであることが好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、体積平均粒子径のことを表し、動的光散乱法により測定できる。
動的光散乱法による平均粒子径の測定は、以下のようにして行うことができる。樹脂微粒子の固形分に応じて、分散媒と同じ分散液で200~1000倍に希釈しておく。該希釈分散液約5mlを測定装置(日機装社製名黒トラック)のセルに注入し、サンプルに応じた分散媒および樹脂の屈折率条件を入力後、測定を行う。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークによって測定することができる。
また、グルコースオキシダーゼ(GOx)などの酵素は水系溶液に分散したものを担持する場合が多く、グルコースなどの燃料は水系溶剤に溶解されたものとする場合が多いことから、濡れ性や浸透性などの観点から、バインダー(B)としては、水系溶剤に溶解可能な水溶性樹脂(B-a)や水系の分散媒中で溶解せずに、微粒子の状態で存在する水分散樹脂微粒子(B-b)を使用することが好ましい。
【0028】
水溶性樹脂とはしては、ポリビニル系樹脂やポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂、ホルマリン縮合物、シリコーン系樹脂、及びこれらの複合系樹脂等が挙げられる。更に、これら2種類以上を併用してもよい。
【0029】
水分散樹脂微粒子としては、(メタ)アクリル系エマルション、ニトリル系エマルション、ウレタン系エマルション、ポリオレフィン系エマルション、フッ素系エマルション(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など)、スチレン―ブタジエン系樹脂等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリルは、メタクリルまたはアクリルを意味する。
【0030】
導電性組成物のスラリー安定性や塗工性、導電層の耐水性や可とう性等の観点から、水溶性樹脂(B-a)と水分散樹脂微粒子(B-b)を併用することがさらに好ましい。
【0031】
(溶剤(分散媒))
導電性の炭素材料(A)と、バインダー(B)とを均一に混合する場合、溶剤を適宜用いることが出来る。そのような溶剤としては、樹脂を溶解できるものや、樹脂微粒子エマルションを安定に分散できるものであれば特に限定されず、水や有機溶剤を挙げることが出来る。
【0032】
有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの内から導電性組成物の組成に応じ適当なものが使用できる。
また、溶剤は水と有機溶剤または有機溶剤を2種以上用いてもよい。
【0033】
また、本発明に用いる導電性組成物には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ラジカル補足剤、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
【0034】
(導電性組成物)
導電性組成物は導電性の炭素材料(A)とバインダー(B)と必要に応じて溶媒(分散媒)を含有し、分散機や混合機などを用いてスラリー化(塗料化、インキ化)したものである。
【0035】
導電性組成物の粘度は、導電性組成物の塗工方式によるが、一般的には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とすることが好ましい。
【0036】
(分散機・混合機)
導電性組成物を得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
【0037】
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0039】
(導電層の形成)
前記した基材に、導電性組成物を塗工、必要に応じてプレス処理等を行って、導電層を形成することができる。
基材上に導電性組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
【0040】
具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0041】
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行ってもよく、導電層を軟化させてプレスしやすくするため、加熱しながら行ってもよい。導電層の厚みは、一般的には0.1μm以上、1mm以下であり、好ましくは1μm以上、200μm以下である。
【0042】
(導電層の組成)
本発明に用いる導電層中に含まれる導電性の炭素材料(A)の割合は、導電性や基材への密着性等から、導電層の全固形分に対して50~90質量%が好ましく、60~80質量%がさらに好ましい。導電性の炭素材料(A)以外の成分としては、主にバインダー(B)となるが、それ以外にも任意の成分を含んでも良い。導電性や密着性などの観点から、導電層中の全固形分に対する導電性の炭素材料(A)とバインダー(B)の合計の割合は、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは10~40質量%である。
【0043】
(導電層の光沢)
本発明に用いる導電層の光沢は、0.5~120であり、好ましくは1~80であり、さらに好ましくは1.5~60である。導電層中の炭素材料の配向状態と光沢には相関があり、光沢が上記範囲において、炭素材料の配向性が高く、再現性と優れた導電性を確保した導電層を得ることができる。なお、導電層の表面の光沢値は、導電層の基材と接していない面を測定して得ることができる。
【0044】
(導電層の比表面積)
本発明に用いる導電層の比表面積は、好ましくは5~800m2/gであり、より好ましくは10~500m2/gであり、さらに好ましくは20~300m2/gである。
導電層の比表面積が小さいと電極反応に関わる面積が不十分となり、電気化学特性等が十分発揮されない場合がある。一方、比表面積が大きすぎると、基材との密着性が低下するため、導電層の脱離が起こり、導電性が低下する場合がある。
【0045】
<酸化還元酵素>
本発明における酵素としては、反応により電子を授受できる酵素であれば特に制限はなく、検出対象に応じて適宜選択される。
例えば、糖や有機酸などのオキシダーゼやデヒドロゲナーゼなどが利用できる。中でも、人体の血液や尿などの生体試料に含まれるグルコースを検出対象にできるグルコースオキシダーゼやグルコースデヒドロゲナーゼが好ましい場合がある。その他、フルクトースを検出対象にできるフルクトースオキシダーゼやフルクトースデヒドロゲナーゼ、乳酸を検出対象にできる乳酸オキシダーゼや乳酸デヒドロゲナーゼが好ましい場合がある。
用いられる酵素は1種類でも2種類以上であってもよい。また、センシング対象を加水分解等により酸化あるいは還元可能な状態にする酵素等の触媒と、酸化あるいは還元を促進する酵素との組み合わせであってもよい。
【0046】
<メディエーター>
酵素には電極に直接電子を伝達できる直接電子移動型(DET型)酵素と直接電子を伝達できない酵素が存在する。DET型でない酵素の場合には、燃料の酸化によって生じた電子を酵素から電極に伝達する役割を担うメディエーターを併用する必要がある。メディエーターとしては、電極に電子を伝達できる酸化還元物質であれば特に制限はなく、従来公知のものを使用できる。メディエーターの使用方法としては、電極内あるいは電極上に担持させる方法や電解液に溶解させて使用する方法等がある。メディエーターとしては、テトラチアフルバレン、ハイドロキノンや1,4‐ナフトキノン等のキノン類などの非金属化合物、フェロセン、フェリシアン化物、オスミウム錯体、及びこれら化合物を修飾したポリマー等が例示できる。
【0047】
<イオン伝導体>
本発明におけるイオン伝導体として電極の間でイオンの伝導を行うものを用いてもよい。イオン伝導体の形態はイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではない。イオン伝導体としては、液体に溶ける電解質や固体のポリマー電解質などを使用しても良い。
【0048】
<基材>
基材の性質は特に制限されず、天然材料であっても合成材料であっても良い。天然材料としては紙、不織布、布等が挙げられる。合成材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ナイロン、OPP(延伸ポリプロピレン)、CPP(未延伸ポリプロピレン)などの樹脂基材が挙げられる。更に、カーボンペーパーやカーボンクロス等の導電性基材も例として挙げられる。基材の厚みは特に制限されず、酵素センサーの形状等に合わせて選択できる。
【0049】
<酵素センサー・酵素センサー用電極>
酵素センサーは、少なくとも作用極及び対極、あるいは作用極、対極及び参照極で構成される。また、必要に応じて血液などの試料を電極へ導入するスペーサーやカバー等を設けてもよい。
酵素センサーに用いる複数の電極は、異なる基材上に導電層をそれぞれ形成することで作製する場合や、同一の基材上にそれぞれの電極について導電層を形成する場合や、同一の基材上に導電層を設置した後に非導電部位を形成することで電極を作製してもよい。また予め、基材に金属スパッタなどで金属層を形成した上に、各電極の導電層を形成して電極を作製してもよい。参照極を設置する場合は、例えば導電層の上部へ更に銀や塩化銀などを積層することによって作製される。各電極のリード部は、金属スパッタなどで金属層を形成する方法、導電層を延長して用いる方法、延長した導電層の上部や下部に金属スパッタなどで金属層を更に形成する方法等、が例示できる。
酸化還元酵素やメディエーターを設置する方法としては、これらの電極上部、あるいは作用極の上部及び/または内部に、酸化還元酵素や必要に応じてメディエーターを含ませる方法や、酸化還元酵素や必要に応じてメディエーターを加えた混合物層を形成させる方法、予め前記組成物中に分散させて塗工・印刷の後、乾燥して電極中に設置する方法、等が挙げられる。酸化還元酵素やメディエーターを含む混合物層を形成する場合、親水性化合物および/または親水性樹脂を混合してもよい。
【0050】
酵素センサーは、前記の通り血液等の生体試料や食品等に含まれる特定成分を、酵素の基質特異性により選択的に酸化あるいは還元し、その電流値等から定性あるいは定量するものである。酵素センサーの用途としては、例えば、各種有機物を対象とした有機物センサー、血液や汗、尿、便、涙、唾液、呼気などの生体試料中の有機物や体液を対象とした生体センサー、水分を対象にした水分センサー、果物や食品中の糖等を対象にした食品用センサー、IoTセンサー、大気や河川、土壌など環境中の有機物を対象にした環境センサー、動物や昆虫、植物を対象にした動植物センサー等が挙げられる。生体センサーとしては、例えば、血液中の糖をセンシングする血糖値センサーや、尿中の糖をセンシングする尿糖値センサー、汗中の乳酸値をセンシングする疲労度センサーや熱中症センサー、汗や尿中の水分をセンシングする発汗センサーや排尿センサー等が挙げられる。また、生体向けのウェアラブルセンサーとしての用途として例えば、おむつ内にセンサーを仕込んだ排尿センサーや尿糖値センサー、経皮貼付型の発汗、熱中症センサーなどが挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。
【0052】
<導電性組成物の作製>
(製造例1:導電性組成物(1)の作成)
イオン交換水500質量部に水溶性樹脂(B-1:CMCダイセル#1240(ダイセル化学工業社製))5質量部を撹拌しながら添加して溶解させた。その後、黒鉛(A-1:球状化黒鉛 CGB-50(日本黒鉛社製))72質量部と黒鉛以外の炭素材料(A-4:ライオナイト EC-200L(ライオン社製))8質量部を添加した。次いで、サンドミルにて分散を行った。
次に水分散性樹脂微粒子(B-4:アクリル樹脂水分散液 W-168(トーヨーケム社製 固形分50質量%))30質量部を添加、混合し、表1に示す導電性組成物(1)を得た。
【0053】
表1に示す組成比や材料を変更した以外は、導電性組成物(1)(製造例1)と同様の方法により、それぞれ導電性組成物(2)~(7)、(9)~(11)を得た。
【0054】
(製造例2:導電性組成物(8)の作製)
イオン交換水500質量部に水溶性樹脂(B-1CMCダイセル#1240(ダイセル化学工業社製))5質量部を撹拌しながら添加して溶解させた。その後、黒鉛(A-1:球状化黒鉛 CGB-50(日本黒鉛社製))64質量部と黒鉛以外の炭素材料(A-4:ライオナイト EC-200L(ライオン社製))16質量部を添加した。次いで、製造例1から分散方法を変更しディスパーにて分散を行った。
次に水分散性樹脂微粒子(B-4:アクリル樹脂水分散液 W-168(トーヨーケム社製 固形分50質量%))30質量部を添加、混合し、表1に示す導電性組成物(8)を得た。
【0055】
導電性組成物の製造例で使用した材料、および導電性の炭素材料(A)の分散方法を以下に示す。
(導電性の炭素材料(A))
黒鉛(A-a)
・A-1:球状化黒鉛 CGB-50(日本黒鉛社製)
・A-2:鱗片化黒鉛 CB-150(日本黒鉛社製)
・A-3:薄片化黒鉛 UP-20(日本黒鉛社製)
黒鉛以外の炭素材料(A-b)
・A-4:ライオナイト EC-200L(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・A-5:ケッチェンブラック EC-300J(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
(バインダー(B))
水溶性樹脂(B-a)
・B-1:CMCダイセル#1240(ダイセル化学工業社製)
・B-2:クラレポバールPVA235(クラレ社製)
非水溶性樹脂
・B-3:KFポリマー#9100(クレハ社製)
水分散樹脂微粒子(B-b)
・B-4:アクリル樹脂水分散液 W-168(トーヨーケム社製 固形分50質量%)
導電性の炭素材料(A)の分散方法
・D-1:サンドミル
・D-2:ディスパー
【0056】
【0057】
<酵素センサー用電極の作製>
[実施例1]
(酵素センサー用電極(1)の作製)
【0058】
・導電層の作製
非導電性基材として厚さ100μmのPET基材(ルミラー(東レ社製))上に、導電性組成物(1)をドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥して導電層(1)を得た。
【0059】
・酵素センサー用電極の作製
前記、導電層(1)を10×30mmに切り出した後、下部5×5mm以外をテープでマスキング処理を行った。マスキング処理を行っていない5×5mmの導電層に、メディエーターであるフェロセンのメタノール溶液と、酸化還元酵素であるグルコースオキシダーゼ水溶液をそれぞれ滴下・自然乾燥させてメディエーターと酵素を担持し、酵素センサー用電極(1)を得た。
【0060】
[実施例2、実施例4~5、実施例7~9、実施例11、比較例1~3]
(酵素センサー用電極(2)、(4)~(5)、(7)~(9)、(11)~(14)の作製)
【0061】
・導電層の作製
表2に示す導電性組成物に変更した以外は、実施例1の導電層の作製方法と同様の方法により、導電層(2)、(4)~(5)、(7)~(9)、(11)~(14)を得た。
【0062】
・酵素センサー用電極の作製
上記で作成した導電層を用い、表2に示す導電層に変更した以外は実施例1の酵素センサー用電極の作製方法と同様の方法により、酵素センサー用電極(2)、(4)~(5)、(7)~(9)、(11)~(14)を得た。
【0063】
[実施例3]
(酵素センサー用電極(3)の作成)
【0064】
・導電層の作製
非導電性基材として厚さ100μmのPET基材(ルミラー(東レ社製))上に、導電性組成物(2)をドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥を行った。その後、ロールプレスを行って、導電層(3)を得た。
【0065】
・酵素センサー用電極の作製
前記、導電層(3)を10×30mmに切り出した後、下部5×5mm以外をテープでマスキング処理を行った。マスキング処理を行っていない5×5mmの導電層に、メディエーターであるフェロセンのメタノール溶液と、酸化還元酵素であるグルコースオキシダーゼ水溶液をそれぞれ滴下・自然乾燥させてメディエーターと酵素を担持し、酵素センサー用電極(3)を得た。
【0066】
[実施例6、10]
(酵素センサー用電極(6)、(10)の作製)
【0067】
・導電層の作製
表2に示す導電性組成物に変更した以外は、実施例3の導電層の作製方法と同様の方法により、導電層(6)、(10)を得た。
【0068】
・酵素センサー用電極の作製
上記で作成した導電層を用い、表2に示す導電層に変更した以外は実施例3の酵素センサー用電極の作製方法と同様の方法により、酵素センサー用電極(6)、(10)を得た。
【0069】
[導電層および酵素センサー用電極の評価]
下記のとおり、導電層および酵素センサー用電極の評価を行った。得られた評価結果を表2に示す。
【0070】
(導電層の比表面積)
導電層の比表面積は、窒素吸着量測定(日本ベル社製 BELSORP-mini)で評価した。具体的には、非導電性基材上に作製した導電層を剥がして得られた粉体を測定容器に入れ、150℃で加熱処理を行い、吸着水を取り除いた。その後、窒素吸着測定装置にて液体窒素下(77K)で窒素吸着量を測定し、BETプロットにて比表面積を算出した。評価結果を表2に示す。
【0071】
(導電層の光沢)
導電層の光沢は、micro-TRI-Gloss(BYK Additives&Instruments社製)で評価した。具体的には、非導電性基材上に作製した導電層の面にmicro-TRI-Glossを接触させ、3か所の60°光沢を測定し、その平均値を光沢値とした。評価結果を表2に示す。
【0072】
<電気化学評価>
(リニアスイープボルタメトリー(LSV)測定)
前記で作製した酵素センサー用電極を作用極、対極を白金コイル電極、参照電極をAg/AgCl電極、電解液として0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を入れ、反応基質(センシング対象物)としてD-グルコースを20mMとなるように添加し、-0.2V(vsAg/AgCl)から+0.5V(vsAg/AgCl)の範囲でLSV測定を行なった。LSV測定で得られた電流曲線から、電流密度の最大値(mA/cm2)を、下記の基準を指標として評価した。評価結果を表2に示す。酵素センサー用電極の電流密度の最大値が大きい程、センシング対象物質を検出しやすいため感度が高いと言える。
【0073】
〇:「比較例1の電流密度の最大値に対する、実施例または比較例の同最大値の百分率が140%以上」
△:「比較例1の電流密度の最大値に対する、実施例または比較例の同最大値の百分率が105%以上、140%未満」
×;「比較例1の電流密度の最大値に対する実施例または比較例の同最大値の百分率が105%未満」
【0074】
【0075】
表2に示すように、本発明の導電層では、炭素材料の配向状態の改良や、比表面積を最適化することで、酵素センサー用電極で検出できる電流値が大きく向上することが確認された。導電層の比表面積の最適化で酸化還元酵素の担持効率が向上し、センシング対象の酸化が効果的に行えたと考える。また、導電層中の炭素材料の配向状態(光沢値)を制御することで、センシング対象の酸化によって取り出された電子がスムーズに移動するためと考える。したがって、腐食への耐性とコストに優れる炭素材料を用いた本発明の酵素センサー用電極および酵素センサーは、良好な感度が得られる。
一方、比較例1では、炭素材料の配向状態が不十分でなく、比較例3では、黒鉛(A-a)を含まず、導電性が不十分でないため、センシング対象の酸化によって取り出された電子がスムーズに起こらず、電気化学特性が低下したと想定している。更に、比較例1では、酸化還元酵素の担持が不十分であったため、電気化学特性が低下したと想定している。