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特許7375514板ガラス製造装置及び板ガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】板ガラス製造装置及び板ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 35/18 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
C03B35/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019222087
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021091562
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】干場 健一
(72)【発明者】
【氏名】大石 幸博
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-024942(JP,A)
【文献】実開昭56-016160(JP,U)
【文献】実開昭59-000290(JP,U)
【文献】特開2005-001919(JP,A)
【文献】特開2018-193284(JP,A)
【文献】特開2016-052966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 34/14-35/18,13/00-13/18,
H05B 3/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを板状に成形する成形部と、
前記成形部によって成形された板ガラスを搬送する搬送部とを備え、
前記搬送部は、前記板ガラスを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを加熱する加熱部とを備え
前記成形部は、ロールアウト成形法により前記板ガラスを成形する成形ローラを備え、
前記成形ローラは、少なくとも外周部分が金属にて形成されており、
前記加熱部は、電気加熱により前記搬送ローラを加熱する板ガラス製造装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記搬送ローラの内部に設けられている請求項に記載の板ガラス製造装置。
【請求項3】
前記加熱部は、前記搬送ローラに対して相対回転可能に支持されている請求項に記載の板ガラス製造装置。
【請求項4】
前記加熱部は、端部に装着される碍子を備え、
前記搬送ローラの内部には、前記加熱部の前記碍子の先端部に固定される保護部材と、前記搬送ローラの内周面に前記保護部材を相対回転可能に支持するベアリングとが設けられ、
前記保護部材には、前記碍子の先端部よりも軸方向中央側に位置して、前記加熱部の熱から前記碍子を保護する遮熱壁が設けられている請求項に記載の板ガラス製造装置。
【請求項5】
少なくとも外周部分が金属にて形成された成形ローラを用いて溶融ガラスを板状に成形する成形工程と、
前記成形工程にて成形された板ガラスを、搬送ローラを用いて搬送する搬送工程とを備え、
前記搬送工程の前、及び前記搬送工程中の少なくとも一方において電気加熱により前記搬送ローラを加熱する板ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記搬送ローラの軸方向中央側の部分よりも軸方向端部側の部分を高温に加熱する請求項に記載の板ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラス製造装置及び板ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、ロールアウト成形法により板ガラスを製造する板ガラス製造装置は、溶融ガラスを板状に成形する成形ローラと、成形された板ガラスを搬送する複数の搬送ローラとを備えている。上記板ガラス製造装置では、成形ローラにて連続的に成形される高温の板ガラスを搬送ローラにて搬送し、その搬送中に板ガラスが徐々に冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-88808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記板ガラス製造装置は、成形ローラ及び搬送ローラ等の各種のローラが変形したり、各種のローラに異物が付着した場合に、そのローラを交換する作業が行われる。ローラを交換する作業中は、板ガラス製造装置を停止させる必要がある。そのため、生産効率を向上させるためには、ローラを長寿命化させて、ローラを交換する作業の回数を少なくすることが好ましい。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、板ガラス製造装置に備えられるローラの長寿命化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する板ガラス製造装置は、溶融ガラスを板状に成形する成形部と、前記成形部によって成形された板ガラスを搬送する搬送部とを備え、前記搬送部は、前記板ガラスを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを加熱する加熱部とを備える。
【0007】
搬送ローラの主な交換理由は、ローラの変形である。搬送ローラは、高温の板ガラスを搬送する際に、板ガラスが接触する部分の温度が板ガラスからの伝熱により局所的に上昇し、板ガラスが接触している部分と板ガラスが接触していない部分との間に大きな温度差が生じることによって変形する。変形により偏芯した搬送ローラは、隣接する搬送ローラと接触したり、搬送中の板ガラスを揺らす原因になるため、新たな搬送ローラに交換する必要がある。
【0008】
上記構成によれば、板ガラスの搬送前や板ガラスの搬送中に加熱部により搬送ローラを加熱することにより、搬送ローラにおける板ガラスが接触している部分と板ガラスが接触していない部分との間に生じる温度差を小さくできる。これにより、搬送ローラの早期の変形が抑制されて、搬送ローラの長寿命化を図ることができる。
【0009】
前記成形部は、ロールアウト成形法により前記板ガラスを成形する成形ローラを備え、前記加熱部は、電気加熱により前記搬送ローラを加熱することが好ましい。
成形ローラの上記以外の主な交換理由は、ローラ表面に対する異物の付着による表面形状の変化である。特に、ローラ表面に炭化物が付着すると、ローラ表面の酸化被膜がカーボンの還元作用により破壊されて、表面形状が大きく変化する。成形ローラの表面形状が変化すると、成形ローラからの転写により板ガラスの表面形状も変化してしまうため、表面形状が変化した成形ローラは、新たな成形ローラに交換する必要がある。
【0010】
上記構成によれば、搬送ローラを加熱する加熱部として、ガスバーナー等の燃焼を伴う加熱方法による加熱部を採用した場合と比較して、加熱時に発生するカーボン源の量を低く抑えることができる。これにより、カーボンの付着によって成形ローラの表面形状が早期に変化することが抑制されて、成形ローラの長寿命化を図ることができる。
【0011】
前記加熱部は、前記搬送ローラの内部に設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、加熱部を設けることによる搬送部の設置スペースの増加が抑制されて、その結果、板ガラス製造装置を小型化できる。
【0012】
前記加熱部は、前記搬送ローラに対して相対回転可能に支持されていることが好ましい。
上記構成によれば、加熱部が搬送ローラに対して相対回転することで、搬送ローラの全周を加熱できる。
【0013】
前記加熱部は、端部に装着される碍子を備え、前記搬送ローラの内部には、前記加熱部の前記碍子の先端部に固定される保護部材と、前記搬送ローラの内周面に前記保護部材を相対回転可能に支持するベアリングとが設けられ、前記保護部材には、前記碍子の先端部よりも軸方向中央側に位置して、前記加熱部の熱から前記碍子を保護する遮熱壁が設けられていることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、加熱部の熱によって碍子の先端部の温度が過度に上昇して碍子が早期に劣化することを抑制できる。これにより、内部に加熱部を収容する搬送ローラに関して、加熱部の碍子を交換する作業を行う頻度を低くできる。また、簡易な構成にて加熱部を搬送ローラに相対回転可能に支持させることができる。
【0015】
上記課題を解決する板ガラスの製造方法は、溶融ガラスを板状に成形する成形工程と、前記成形工程にて成形された板ガラスを、搬送ローラを用いて搬送する搬送工程とを備え、前記搬送工程の前、及び前記搬送工程中の少なくとも一方において前記搬送ローラを加熱する。
【0016】
上記板ガラスの製造方法において、電気加熱により前記搬送ローラを加熱することが好ましい。
上記板ガラスの製造方法において、前記搬送ローラの軸方向中央側の部分よりも軸方向端部側の部分を高温に加熱することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、搬送ローラの軸方向中央付近に板ガラスが載るように板ガラスを搬送した場合に、板ガラスからの伝熱により搬送ローラに生じる温度差を更に小さくできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、板ガラス製造装置に備えられるローラの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】板ガラス製造装置の概略構成を示す側面図。
図2】第1搬送ローラの断面図。
図3図2におけるベアリング及び保護部材の周囲の部分拡大図。
図4】変更例の板ガラス製造装置の概略構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、板ガラス製造装置及び板ガラス製造方法の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
板ガラス製造装置が製造する板ガラスは、例えば、耐熱性に優れた結晶化ガラス板である。板ガラスの用途は、ディスプレイ用途、光電変換パネル用途、電子デバイス用途、窓ガラス用途、家電用途、建材用途及び車両用途が挙げられる。
【0021】
図1に示すように、板ガラス製造装置10は、不図示の供給部から供給される溶融ガラスG1を板状に成形する成形部20と、成形部20によって成形された板ガラスG2を熱処理する熱処理部30と、板ガラスG2を搬送する搬送部40とを備える。
【0022】
成形部20は、一対の成形ローラ21を有する。一対の成形ローラ21は、溶融ガラスG1を圧延し、板ガラスG2を成形する。つまり、板ガラス製造装置10は、ロールアウト成形法により板ガラスG2を成形する装置である。成形ローラ21は、その少なくとも外周部分が鉄、耐熱鋼等の金属にて形成されている。成形ローラ21の外周部分の表面には、外周部分を形成する金属が酸化することにより生じる多孔質の酸化被膜が形成されている。
【0023】
熱処理部30は、成形直後の板ガラスG2のひずみを除去するアニール炉である。熱処理部30内は、図示しない温調機器によって下流側ほど温度が低下するように所定の温度勾配が設定され、これにより、板ガラスG2は、熱処理部30内において搬送部40にて下流側に搬送されるに従って徐々に温度が低下するように冷却されて、内部に生じた熱歪が除去される。
【0024】
搬送部40は、熱処理部30の上流側及び熱処理部30内に配置される略円柱状の複数の第1搬送ローラ40aと、熱処理部30の下流側に配置される略円柱状の複数の第2搬送ローラ40bとを備える。第1搬送ローラ40a及び第2搬送ローラ40bは、板ガラスG2の搬送方向と直交する方向に延びる軸線回りに、図示しないモータにより回転駆動される。第1搬送ローラ40a及び第2搬送ローラ40bは、その軸方向中央付近に板ガラスG2が載るように設置される。
【0025】
第1搬送ローラ40aは、高温状態の板ガラスG2を搬送するためのローラである。第1搬送ローラ40aには、第1搬送ローラ40aを電気加熱する加熱部としての電気ヒータ50が設けられている。電気ヒータ50は、第1搬送ローラ40aの内部に収容され、内側から第1搬送ローラ40aを加熱する。電気ヒータ50としては、例えば、シーズヒータ、セラミックヒータ、カーボンヒータ、及びハロゲンヒータが挙げられる。
【0026】
第2搬送ローラ40bは、熱処理部30による冷却後の低温状態の板ガラスG2を搬送するためのローラである。第2搬送ローラ40bは、板ガラス製造装置の搬送部に用いられる公知の搬送ローラである。
【0027】
以下、電気ヒータ50を収容する第1搬送ローラ40aの構成について説明する。なお、以下に記載する軸方向は、特に断りのない限り、第1搬送ローラ40aの回転軸の方向を意味する。
【0028】
図2に示すように、第1搬送ローラ40aは、軸方向両端部に位置する軸部材41と、軸方向中央部に位置する円筒状のローラ本体42と、軸部材41及びローラ本体42を接続する環状の接続部材43とを備えている。軸部材41は、図示しないモータからの動力が伝達される部位であり、接続部材43に対して締結部材44により固定されている。ローラ本体42は、シリカ(二酸化珪素)、耐熱鋼等の耐熱性に優れた材料により形成されるとともに、接続部材43に対して接着により固定されている。したがって、軸部材41にモータからの動力が伝達された場合、ローラ本体42及び接続部材43は、軸部材41と一体的に回転する。
【0029】
円筒状のローラ本体42及び環状の接続部材43の内部には、電気ヒータ50を収容する収容空間Sが形成されるとともに、軸部材41には、軸部材41を軸方向に貫通する貫通孔41aが形成されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、収容空間S及び軸部材41の貫通孔41aの内部には、電気ヒータ50を支持するための保護部材60が収容されている。保護部材60は、軸部材41の貫通孔41aに挿通される筒部61と、筒部61におけるローラ本体42側の端部に接続される円柱状の碍子取付部62とを備えている。
【0031】
碍子取付部62には、ローラ本体42側の端面に開口するとともに筒部61に連通する取付孔63が設けられている。碍子取付部62の外周面には、円環鍔状の遮熱壁64が設けられている。保護部材60は、ステンレス等の耐熱性に優れた金属材料により形成された一体物である。
【0032】
保護部材60の碍子取付部62の外周面と接続部材43の内周面との間であって、碍子取付部62の遮熱壁64よりも軸方向端部側(図3の右側)には、耐熱鋼等の耐熱性に優れた金属材料により形成されたボールベアリング等のベアリング65が取り付けられている。接続部材43の内周面には、段差状の係止部43aが形成されており、この係止部43aに対してベアリング65を支持するベアリングケース66が取り付けられている。
【0033】
保護部材60の筒部61の外周面と、軸部材41の貫通孔41aの内周面との間には、筒部61を回転可能に支持するロータリージョイント67が取り付けられる。また、筒部61は、軸部材41から突出して、第1搬送ローラ40aの外部に露出する突出部62aを備えている。筒部61の突出部62aには、保護部材60を回転不能に固定する回り止め部材68が取り付けられている。
【0034】
図2及び図3に示すように、電気ヒータ50は、軸方向に延びる円柱状の部材であり、第1搬送ローラ40aの収容空間Sに配置されている。電気ヒータ50の両端部には、リード線51の取出部分を保護及び絶縁する環状の碍子52が装着されている。碍子52は、電気ヒータ50の端部の外周に装着される環状部52aと、環状部52aから軸方向端部側へ突出する先端部52bとを備えている。先端部52bは、環状部52aよりも薄い板状に形成されている。
【0035】
電気ヒータ50は、保護部材60の碍子取付部62の取付孔63に碍子52の先端部52bを挿入して嵌め込むことにより保護部材60に固定されている。碍子52は、その先端部52bが遮熱壁64よりも軸方向端部側に位置するように取付孔63に嵌め込まれている。
【0036】
このように、電気ヒータ50は、保護部材60及びベアリング65によって第1搬送ローラ40aに支持されるとともに、電気ヒータ50及び保護部材60は、第1搬送ローラ40aに対してベアリング65を介して相対回転可能に支持される。したがって、第1搬送ローラ40aを回転させた場合には、保護部材60及び電気ヒータ50は、回り止め部材68に回転不能に固定された状態のままで第1搬送ローラ40aのみが回転する。
【0037】
また、電気ヒータ50のリード線51は、保護部材60の筒部61の内部に収容され、筒部61を通じて第1搬送ローラ40aの外部に引き出されている。これにより、第1搬送ローラ40aを回転させた際のリード線51の捻じれを抑制できる。
【0038】
図2に示すように、電気ヒータ50は、ローラ本体42の軸方向中央側の部分を加熱する第1発熱部53と、第1発熱部53の軸方向両端部側に位置してローラ本体42の軸方向端部側の部分を加熱する第2発熱部54とを備えている。第1発熱部53及び第2発熱部54は、それぞれ独立して出力を調整可能である。
【0039】
本実施形態では、ローラ本体42の軸方向中央側の部分よりも軸方向端部側の部分を高温に加熱するように、第1発熱部53及び第2発熱部54の出力が調整されている。第1発熱部53による加熱温度T1は、例えば、500~750℃であり、第2発熱部54による加熱温度T2は、例えば、「T1+50」℃~「T1+150」℃である。
【0040】
第1発熱部53及び第2発熱部54による加熱温度は、ローラ本体42に接触する際の板ガラスG2の温度、及び第1搬送ローラ40aの周囲の温度に基づいて設定される。例えば、板ガラスG2の温度は搬送中に徐々に低下していくため、下流側に配置される第1搬送ローラ40aほど、加熱温度T1,T2を低く設定する。また、周囲の温度が低い場所に配置される第1搬送ローラ40aは冷えやすいため、加熱温度T1,T2を高く設定する。
【0041】
電気ヒータ50は、ローラ本体42をその周囲の温度よりも高温になるように加熱する。したがって、熱処理部30内に配置される第1搬送ローラ40aの場合、加熱温度T1,T2は、熱処理部30内の温度よりも高温に設定される。
【0042】
また、第1発熱部53及び第2発熱部54は、ローラ本体42の周方向において、互いに反対となる2方向を強く加熱する指向性の発熱部である。電気ヒータ50の周方向の向きは、第1発熱部53及び第2発熱部54により強く加熱される方向が、ローラ本体42における板ガラスG2が載る側である上方側、及びその反対の下方側となるように調整されている。
【0043】
第1搬送ローラ40aを回転させた場合、電気ヒータ50は回転不能に固定された状態のままであるため、電気ヒータ50の向きは変化しない。したがって、第1搬送ローラ40aを回転させながら、電気ヒータ50による加熱を行うことにより、第1搬送ローラ40aのローラ本体42の全周を加熱できる。
【0044】
図2及び図3に示すように、第1搬送ローラ40aの収容空間Sにおいて、電気ヒータ50は、保護部材60の遮熱壁64よりも軸方向中央側に第1発熱部53及び第2発熱部54が位置するように配置される。したがって、収容空間Sにおける遮熱壁64により仕切られた軸方向中央側の領域が電気ヒータ50により加熱される加熱領域となる。そして、加熱領域を仕切る遮熱壁64は、加熱領域の熱が遮熱壁64よりも軸方向端部側に伝わることを抑制し、碍子52の先端部52b及びベアリング65を加熱領域の熱から保護する。
【0045】
次に、板ガラスの製造方法を主な作用とともに説明する。
板ガラスの製造方法では、まず、全ての第1搬送ローラ40aについて、電気ヒータ50によりローラ本体42を加熱して、ローラ本体42をその周囲の温度よりも高温の状態にする。このとき、電気ヒータ50の第1発熱部53及び第2発熱部54の出力差に基づいて、ローラ本体42は、軸方向中央側の部分よりも軸方向端部側の部分の方が高温になるように加熱される。なお、電気ヒータ50による加熱は、第1搬送ローラ40aを回転させながら行われ、これにより、ローラ本体42の全周が加熱される。以降、この加熱状態を維持して第1搬送ローラ40aのローラ本体42を加熱し続ける。
【0046】
その後、図1に示すように、成形部20の一対の成形ローラ21で溶融ガラスG1を圧延することで板ガラスG2を成形し、成形された板ガラスG2を搬送部40の第1搬送ローラ40aによって熱処理部30へ搬送するとともに熱処理部30を通過させる。板ガラスG2は、熱処理部30において、徐々に温度が低下するように冷却されて、内部に生じた熱歪が除去される。次に、熱処理部30を通過した板ガラスG2を搬送部40の第2搬送ローラ40bによって次工程へ搬送する。
【0047】
ここで、成形直後の高温の板ガラスG2を搬送する第1搬送ローラ40aのローラ本体42は、板ガラスG2を搬送する際に、板ガラスG2からの伝熱により温度が上昇する。特に、板ガラスG2が接するローラ本体42の軸方向中央側の部分は、板ガラスG2が接しない軸方向端部側の部分よりも温度が大きく上昇し、ローラ本体42の軸方向中央側の部分と軸方向端部側の部分との間に温度差が生じる。ローラ本体42の部分毎の大きな温度差は、ローラ本体42を変形させる原因となり、ローラ本体42が変形した第1搬送ローラ40aについては交換を行う必要が生じる。
【0048】
本実施形態では、板ガラスG2の搬送前及び搬送中に、第1搬送ローラ40aのローラ本体42を電気ヒータ50により加熱して、ローラ本体42を周囲の温度よりも高温の状態にしている。これにより、高温の板ガラスG2の搬送時に、板ガラスG2からの伝熱によりローラ本体42の軸方向中央側の部分の温度が上昇したとしても、その変化幅は小さいものとなり、ローラ本体42に大きな温度差が生じることが抑制される。
【0049】
加えて、板ガラスG2を搬送していない状態において、板ガラスG2が接するローラ本体42の軸方向中央側の部分よりも、板ガラスG2が接しない軸方向端部側の部分の方が高温になるようにローラ本体42を加熱している。これにより、板ガラスG2からの伝熱によりローラ本体42の軸方向中央側の部分の温度が上昇した際に、ローラ本体42の軸方向中央側の部分と軸方向端部側の部分との間に生じる温度差を更に小さくできる。このように、ローラ本体42に生じる温度差が小さくなることにより、ローラ本体42の早期の変形が抑制されて、第1搬送ローラ40aの長寿命化を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態では、第1搬送ローラ40aを加熱する加熱部として、燃焼を伴わない加熱方法による加熱を行う電気ヒータ50を採用している。そのため、ガスバーナー等の燃焼を伴う加熱方法による他の加熱部を採用した場合と比較して、加熱に伴う炭化物の発生量が低く抑えられる。
【0051】
成形部20の成形ローラ21の表面に炭化物が付着すると、ローラ表面の酸化被膜が炭化物の酸化還元作用により破壊されて、成形ローラ21の表面形状が大きく変化する。成形ローラ21の表面形状は、成形された板ガラスG2の表面に転写されるため、表面形状が変化した成形ローラ21については交換を行う必要が生じる。したがって、炭化物の発生量の低い電気ヒータ50を用いて第1搬送ローラ40aを加熱することにより、炭化物の付着による成形ローラ21の表面形状の早期の変化が抑制されて、成形ローラ21の長寿命化を図ることができる。
【0052】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)板ガラス製造装置は、溶融ガラスG1を板状に成形する成形部20と、成形部20によって成形された板ガラスG2を搬送する搬送部40とを備えている。搬送部40は、板ガラスG2を搬送する第1搬送ローラ40aと、第1搬送ローラ40aを加熱する加熱部としての電気ヒータ50とを備えている。
【0053】
上記構成によれば、高温の板ガラスG2を第1搬送ローラ40aにて搬送する際に板ガラスG2からの伝熱により第1搬送ローラ40aに生じる温度差を小さくできる。これにより、第1搬送ローラ40aの早期の変形が抑制されて、第1搬送ローラ40aの長寿命化を図ることができる。
【0054】
(2)成形部20は、ロールアウト成形法により板ガラスG2を成形する成形ローラ21を備え、加熱部は、電気加熱により第1搬送ローラ40aを加熱する電気ヒータ50である。
【0055】
上記構成によれば、ガスバーナー等の燃焼を伴う加熱方法による加熱部を採用した場合と比較して、加熱部による加熱時に発生する炭化物の量を低く抑えることができる。これにより、炭化物の付着によって成形ローラ21の表面形状が早期に変化することが抑制されて、成形ローラ21の長寿命化を図ることができる。
【0056】
(3)電気ヒータ50は、第1搬送ローラ40aの内部に設けられている。
上記構成によれば、電気ヒータ50を設けることによる搬送部40の設置スペースの増加が抑制されて、板ガラス製造装置を小型化できる。
【0057】
(4)電気ヒータ50は、第1搬送ローラ40aに対して相対回転可能に支持されている。
上記構成によれば、周方向の特定方向を強く加熱する指向性の電気ヒータ50を用いた場合にも、第1搬送ローラ40aの全周を加熱できる。
【0058】
(5)電気ヒータ50は、端部に装着される碍子52を備えている。第1搬送ローラ40aの内部には、電気ヒータ50の碍子52の先端部52bに固定される保護部材60と、第1搬送ローラ40a(接続部材43)の内周面に保護部材60を相対回転可能に支持するベアリング65とが設けられている。保護部材60には、碍子52の先端部52b及びベアリング65よりも軸方向中央側に位置して、電気ヒータ50の熱から碍子52を保護する遮熱壁64が設けられている。
【0059】
上記構成によれば、電気ヒータ50の熱によって碍子52の先端部52bの温度及びベアリング65の温度が過度に上昇して碍子52及びベアリング65が早期に劣化することを抑制できる。特に、碍子52の先端部52bは、薄い板状であるため、高温に曝した際に変形しやすく、早期の劣化を抑制する効果が得られやすい。これにより、内部に電気ヒータ50を収容する第1搬送ローラ40aに関して、電気ヒータ50の碍子52及びベアリング65を交換する作業の回数を少なくすることができる。また、簡易な構成にて電気ヒータ50を第1搬送ローラ40aに相対回転可能に支持させることができる。
【0060】
(6)電気ヒータ50は、第1搬送ローラ40aのローラ本体42の軸方向中央側の部分よりも軸方向端部側の部分を高温に加熱する。
上記構成によれば、第1搬送ローラ40aにおけるローラ本体42の軸方向中央付近に板ガラスG2が載るように板ガラスG2を搬送した場合に、高温の板ガラスG2からの伝熱によりローラ本体42に生じる温度差を更に小さくできる。
【0061】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・電気ヒータ50の第1発熱部53及び第2発熱部54は、特定の1方向又は3方向以上を強く加熱する指向性の発熱部であってもよいし、指向性を有さない発熱部であってもよい。
【0062】
・電気ヒータ50は、第1搬送ローラ40aに電気ヒータ50を支持させる構造は、上記実施形態の構造に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、軸部材41とローラ本体42との間に接続部材43を設けて、この接続部材43に電気ヒータ50を支持させる構成としたが、接続部材43を省略して、軸部材41に電気ヒータ50を支持させる構成としてもよい。
【0063】
また、第1搬送ローラ40aと一体に回転するように電気ヒータ50を支持させる構造としてもよい。この場合、電気ヒータ50として、指向性を有さない発熱部を有する電気ヒータ50を用いることにより、第1搬送ローラ40aの全周を加熱できる。
【0064】
・電気ヒータ50による加熱態様を変更してもよい。例えば、第1発熱部53による加熱を行わず、第2発熱部54により第1搬送ローラ40aの軸方向端部側の部分のみを加熱してもよい。この場合にも、第1搬送ローラ40aの軸方向中央側の部分よりも軸方向端部側の部分を高温に加熱できる。また、第1搬送ローラ40aの軸方向端部側の部分と軸方向端部側の部分とを同様に加熱してもよい。
【0065】
・電気ヒータ50は、独立して出力を調整可能な4以上の発熱部を有するものであってもよいし、発熱部を一つのみ有するものであってもよい。発熱部を一つのみ有する場合の加熱温度は特に限定されるものではなく、例えば、加熱温度T1としてもよいし、加熱温度T2としてもよい。
【0066】
・第1搬送ローラ40aを加熱するタイミングを変更してもよい。例えば、搬送工程の前のみ第1搬送ローラ40aを加熱するようにしてもよいし、搬送工程中のみ第1搬送ローラ40aを加熱するようにしてもよい。搬送工程中に第1搬送ローラ40aを加熱する場合、常に加熱し続ける必要はなく、加熱しない期間を設けてもよい。また、第1搬送ローラ40aを加熱するタイミング及び期間を、第1搬送ローラ40a毎に異ならせてもよい。
【0067】
・搬送部40を構成する第1搬送ローラ40a及び第2搬送ローラ40bの配置は、熱処理部30に基づく配置に限定されるものではなく、少なくとも、成形直後の板ガラスG2が最初に接触する搬送ローラが第1搬送ローラ40aであればよい。例えば、成形直後の板ガラスG2が最初に接触する搬送ローラ、又はその搬送ローラから下流側に位置する数本(例えば、2~20本)の搬送ローラを第1搬送ローラ40aとし、その他の搬送ローラを第2搬送ローラ40bとしてもよい。また、搬送部40を構成する全ての搬送ローラを第1搬送ローラ40aとしてもよい。
【0068】
・第1搬送ローラ40aを加熱する加熱部として、電気ヒータ50に代えて、ガスバーナー等の燃焼を伴わない加熱方法による加熱を行う加熱部を用いてもよい。
図4に示すように、第1搬送ローラ40aを加熱する加熱部は、第1搬送ローラ40aの外部に設けられていてもよい。図4に示す例では、熱処理部30の上流側及び熱処理部30内に配置される第1搬送ローラ40aの下方に加熱部としてのガスバーナー50aを配置して、ガスバーナー50aにより外側から第1搬送ローラ40aを加熱する構成としている。第1搬送ローラ40aは、電気ヒータ50を収容していない搬送ローラであり、その構成は、第2搬送ローラ40bと同じである。
【0069】
・保護部材60の遮熱壁64よりも軸方向端部側にベアリング65を配置してもよい。また、遮熱壁64を省略してもよい。
・成形部20の板ガラスG2の成形方法は、ロールアウト成形法に限らない。成形部20の板ガラスG2の成形方法は、例えば、ダウンドロー成形法でもよいし、オーバーフロー成形法でもよいし、フロート成形法でもよい。
【符号の説明】
【0070】
G1…溶融ガラス
G2…板ガラス
10…板ガラス製造装置
20…成形部
21…成形ローラ
40…搬送部
40a…第1搬送ローラ
50…電気ヒータ
52…碍子
60…保護部材
64…遮熱壁
65…ベアリング
図1
図2
図3
図4