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特許7375517画像形成装置、画像形成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/393 20060101AFI20231031BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20231031BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20231031BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B41J29/393 101
G03G15/00 303
G03G15/01
B41J21/00 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019227028
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021094771
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今西 和彦
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-130756(JP,A)
【文献】特開2009-241419(JP,A)
【文献】特開2003-145898(JP,A)
【文献】特開2004-195918(JP,A)
【文献】特開2007-129694(JP,A)
【文献】特開2000-001026(JP,A)
【文献】特開2001-047712(JP,A)
【文献】特開2017-173652(JP,A)
【文献】特開2007-251400(JP,A)
【文献】特開2014-100854(JP,A)
【文献】特開2002-248838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 29/393
G03G 15/00
G03G 15/01
B41J 21/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データに基づいて、シート上に画像を印刷する画像形成部を備える画像形成装置であって、
前記入力画像データに基づく印刷の試し印刷を行う際に、前記入力画像データに下地の画像データが含まれている場合、前記下地の濃度を変化させて前記下地の濃度が異なる複数の画像を前記画像形成部に印刷させる制御部を備え
前記試し印刷は、前記入力画像データに基づく出力画像を印刷する第1のモードと、前記下地の濃度が異なる複数の画像を印刷する第2のモードを有し、
前記制御部は、前記入力画像データに所定の色の画像データが含まれている場合、前記第2のモードで試し印刷を行う画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記画像形成部に対し、前記シート上に前記下地を複数回重ねて印刷させることにより、前記下地の濃度を変化させる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像形成部に対し、前記シート上に前記下地を複数回重ねて印刷させることにより、前記下地の濃度が一回の印刷における最大濃度を超える画像を印刷させる請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記試し印刷により印刷する前記複数の画像の画像数及び濃度の少なくとも一つをユーザー操作により設定するための操作部を備える請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記操作部により前記画像数のみが設定された場合、前記設定された画像数に基づいて前記濃度を自動的に設定する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記操作部により前記濃度の刻み幅のみが設定された場合、前記設定された前記濃度の刻み幅に基づいて前記画像数を自動的に設定する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記操作部は、さらに、前記試し印刷により印刷する前記下地の濃度範囲を設定可能であり、
前記制御部は、前記操作部により設定された濃度範囲に基づいて前記試し印刷における前記下地の濃度を制限する請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記試し印刷により印刷する前記複数の画像は、それぞれ前記入力画像データに含まれる下地のみの画像である請求項1~7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記試し印刷により印刷する前記複数の画像は、前記下地に前記入力画像データに基づく前景を合わせた画像である請求項1~7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記画像形成部に対し、前記シート上の特定範囲を複数の領域に分割した分割領域のそれぞれに、前記下地の濃度が異なる複数の画像のそれぞれを印刷させる請求項1~9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記分割領域の数に応じて、前記試し印刷において前記入力画像データから切り出して印刷する画像の大きさを決定する請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記試し印刷に用いる前記入力画像データにおける画像範囲をユーザー操作に応じて設定または変更する請求項1~11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記入力画像データに含まれる前記所定の色の画像データが最下層のレイヤーであった場合に、前記第2のモードで試し印刷を行う請求項1~12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記試し印刷により印刷された前記下地の濃度が異なる複数の画像を表示部に表示させ、前記表示された複数の画像の中からユーザー操作により選択された画像の下地の濃度を本印刷時の下地の濃度として設定する請求項1~13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記下地の色は、白である請求項1~13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
入力画像データに基づいて、シート上に画像を印刷する画像形成部を備える画像形成装置における画像形成方法であって、
前記入力画像データに基づく印刷の試し印刷を行う際に、前記入力画像データに下地の画像データが含まれている場合、前記下地の濃度を変化させて前記下地の濃度が異なる複数の画像を前記画像形成部により印刷する工程を含み、
前記試し印刷は、前記入力画像データに基づく出力画像を印刷する第1のモードと、前記下地の濃度が異なる複数の画像を印刷する第2のモードを有し、
前記工程は、前記入力画像データに所定の色の画像データが含まれている場合、前記第2のモードで試し印刷を行う画像形成方法。
【請求項17】
入力画像データに基づいて、シート上に画像を印刷する画像形成部を備える画像形成装置に用いられるコンピューターを、
前記入力画像データに基づく印刷の試し印刷を行う際に、前記入力画像データに下地の画像データが含まれている場合、前記下地の濃度を変化させて前記下地の濃度が異なる複数の画像を前記画像形成部に印刷させる制御部、
として機能させるプログラムであって、
前記試し印刷は、前記入力画像データに基づく出力画像を印刷する第1のモードと、前記下地の濃度が異なる複数の画像を印刷する第2のモードを有し、
前記制御部は、前記入力画像データに所定の色の画像データが含まれている場合、前記第2のモードで試し印刷を行うプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラベルやパッケージ印刷において、シートの上に白色のインクやトナーで下地を印刷することで、絵柄が透過してしまうことを防いだり、カラー印刷部分を鮮明に見せたりすることが行われている。特に、シートが透明やメタリックの場合に多く見られる。この際、白の印刷濃度は、一回当たりのインクやトナーの付着量によって決まるが、最適な印刷品質とするために、インクやトナーの付着量に制限が設けられていることが一般的である。そのため、一度印刷しただけでは所望の濃度よりも低くなり、絵柄が透けてしまったり、シートの色と混じって見えたり、という問題がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、各色のインクの隠蔽力を数値化しておき、白以外のインクの隠蔽力の不足分を白インクの塗布で補うように白インクの吐出量を調整することが記載されている。
また、特許文献2には、同じ場所に、同じ画像を印刷することで、画像を所望の厚さに形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-25762号公報
【文献】特開2009-292019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1、2では、白の印刷濃度を調整することができるが、実際に印刷物を生成する場合には、シートの色や透明度によって、またシートがラベルの場合は、さらにラベルを貼り付ける対象物の色味などによって、どの程度の白の印刷濃度があれば最適な印刷になるのか、いうことが重要となる。例えば、下地の白の濃度が不足していると、絵柄の色がシートの色やラベルを貼り付ける対象物の色と混じってしまうため、好ましくない。一方、過剰な濃度で印刷すれば、硬化・定着不良を引き起こしたり、インクやトナーを無駄に消費したりすることになる。
しかしながら、従来、本印刷の前に、どの程度の白の印刷濃度があれば最適な印刷になるのかをユーザーが確認・選択することができなかった。そのため、ユーザーは、実際に印刷したものを確認し、最適な濃度になるまで印刷設定の変更及び印刷を繰り返す必要があり、煩雑であった。
【0006】
本発明の課題は、下地を含む画像を印刷する場合において、本印刷前に、どの程度の下地の濃度が最適なのかをユーザーが簡便に把握できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の画像形成装置は、
入力画像データに基づいて、シート上に画像を印刷する画像形成部を備える画像形成装置であって、
前記入力画像データに基づく印刷の試し印刷を行う際に、前記入力画像データに下地の画像データが含まれている場合、前記下地の濃度を変化させて前記下地の濃度が異なる複数の画像を前記画像形成部に印刷させる制御部を備え
前記試し印刷は、前記入力画像データに基づく出力画像を印刷する第1のモードと、前記下地の濃度が異なる複数の画像を印刷する第2のモードを有し、
前記制御部は、前記入力画像データに所定の色の画像データが含まれている場合、前記第2のモードで試し印刷を行う
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記制御部は、前記画像形成部に対し、前記シート上に前記下地を複数回重ねて印刷させることにより、前記下地の濃度を変化させる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記制御部は、前記画像形成部に対し、前記シート上に前記下地を複数回重ねて印刷させることにより、前記下地の濃度が一回の印刷における最大濃度を超える画像を印刷させる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の発明において、
前記試し印刷により印刷する前記複数の画像の画像数及び濃度の少なくとも一つをユーザー操作により設定するための操作部を備える。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記制御部は、前記操作部により前記画像数のみが設定された場合、前記設定された画像数に基づいて前記濃度を自動的に設定する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記制御部は、前記操作部により前記濃度の刻み幅のみが設定された場合、前記設定された前記濃度の刻み幅に基づいて前記画像数を自動的に設定する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、
前記操作部は、さらに、前記試し印刷により印刷する前記下地の濃度範囲を設定可能であり、
前記制御部は、前記操作部により設定された濃度範囲に基づいて前記試し印刷における前記下地の濃度を制限する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の発明において、
前記試し印刷により印刷する前記複数の画像は、それぞれ前記入力画像データに含まれる下地のみの画像である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の発明において、
前記試し印刷により印刷する前記複数の画像は、前記下地に前記入力画像データに基づく前景を合わせた画像である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1~9のいずれか一項に記載の発明において、
前記制御部は、前記画像形成部に対し、前記シート上の特定範囲を複数の領域に分割した分割領域のそれぞれに、前記下地の濃度が異なる複数の画像のそれぞれを印刷させる。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、
前記制御部は、前記分割領域の数に応じて、前記試し印刷において前記入力画像データから切り出して印刷する画像の大きさを決定する。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項1~11のいずれか一項に記載の発明において、
前記制御部は、前記試し印刷に用いる前記入力画像データにおける画像範囲をユーザー操作に応じて設定または変更する。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項1~12のいずれか一項に記載の発明において、
前記制御部は、前記入力画像データに含まれる前記所定の色の画像データが最下層のレイヤーであった場合に、前記第2のモードで試し印刷を行う。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項1~13のいずれか一項に記載の発明において、
前記制御部は、前記試し印刷により印刷された前記下地の濃度が異なる複数の画像を表示部に表示させ、前記表示された複数の画像の中からユーザー操作により選択された画像の下地の濃度を本印刷時の下地の濃度として設定する。
【0022】
請求項15に記載の発明は、請求項1~13のいずれか一項に記載の発明において、
前記下地の色は、白である。
【0023】
請求項16に記載の発明の画像形成方法は、
入力画像データに基づいて、シート上に画像を印刷する画像形成部を備える画像形成装置における画像形成方法であって、
前記入力画像データに基づく印刷の試し印刷を行う際に、前記入力画像データに下地の画像データが含まれている場合、前記下地の濃度を変化させて前記下地の濃度が異なる複数の画像を前記画像形成部により印刷する工程を含み、
前記試し印刷は、前記入力画像データに基づく出力画像を印刷する第1のモードと、前記下地の濃度が異なる複数の画像を印刷する第2のモードを有し、
前記工程は、前記入力画像データに所定の色の画像データが含まれている場合、前記第2のモードで試し印刷を行う
【0024】
請求項17に記載の発明のプログラムは、
入力画像データに基づいて、シート上に画像を印刷する画像形成部を備える画像形成装置に用いられるコンピューターを、
前記入力画像データに基づく印刷の試し印刷を行う際に、前記入力画像データに下地の画像データが含まれている場合、前記下地の濃度を変化させて前記下地の濃度が異なる複数の画像を前記画像形成部に印刷させる制御部、
として機能させるプログラムであって、
前記試し印刷は、前記入力画像データに基づく出力画像を印刷する第1のモードと、前記下地の濃度が異なる複数の画像を印刷する第2のモードを有し、
前記制御部は、前記入力画像データに所定の色の画像データが含まれている場合、前記第2のモードで試し印刷を行う
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、下地を含む画像を印刷する場合において、本印刷前に、どの程度の下地の濃度が最適なのかをユーザーが簡便に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
図2】インクジェット記録装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
図3図2のCPUにより実行される試し印刷処理の流れを示すフローチャートである。
図4】プルーフ印刷画面の一例を示す図である。
図5】下地の濃度確認のための試し印刷により出力されるプルーフの一例を示す図である。
図6】下地の濃度確認のための試し印刷により出力されるプルーフの他の例を示す図である。
図7】追い刷り回数を異ならせることにより下地の濃度が異なる複数の画像の印刷を行った場合のプルーフの一例を示す図である。
図8】追い刷り回数を異ならせることにより下地の濃度が異なる複数の画像の印刷を行った場合のプルーフの他の例を示す図である。
図9図8に示すプルーフの印刷手法を示す図である。
図10】下地と前景を合わせて印刷したプルーフの一例を示す図である。
図11】下地と前景を合わせて印刷したプルーフの他の例を示す図である。
図12】画像範囲設定画面の一例を示す図である。
図13】試し印刷の印刷結果からユーザーにより選択された濃度を本印刷における下地の濃度として設定するための画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の画像形成装置及び画像形成方法に係る実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0028】
<インクジェット記録装置1の構成>
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1(画像形成装置)の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40(図2)とを備える。インクジェット記録装置1は、制御部40による制御下で、給紙部10に格納されたシートPを画像形成部20に搬送し、画像形成部20でシートPに画像を印刷し、画像が印刷されたシートPを排紙部30に搬送する。
シートPとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛又はシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。また、シートPはカットされたものであってもよいし、ロール状であってもよい。
【0029】
給紙部10は、シートPを格納する給紙トレー11と、給紙トレー11から画像形成部20にシートPを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上にシートPを載置した状態でローラーを回転させることでシートPを給紙トレー11から画像形成部20へ搬送する。
【0030】
画像形成部20は、外部装置2等から入力され、記憶部44に記憶されたジョブの画像データ(入力画像データ)に基づいて、シートPに画像を形成(印刷)する。
画像形成部20は、搬送部21と、受け渡しユニット22と、加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、デリバリー部26と、反転部27などを有する。
【0031】
搬送部21は、円筒状の搬送ドラム211の搬送面の上に載置されたシートPを保持し、搬送ドラム211が図1における図面に垂直な方向(X方向)に延びた回転軸(円筒軸)を中心に回転して周回移動することで搬送ドラム211及び当該搬送ドラム211上のシートPを搬送方向(Y方向)(第1の方向)に搬送する。搬送ドラム211は、その搬送面上でシートPを保持するための図示しない爪部及び吸気部を備える。シートPは、爪部により端部が押さえられ、かつ吸気部により搬送面に吸い寄せられることで搬送面に保持される。搬送部21は、搬送ドラム211を回転させるための図示しない搬送ドラムモーターに接続されており、搬送ドラム211は、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。
【0032】
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送されたシートPを搬送部21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送部21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送されたシートPの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送部21に引き渡す。
【0033】
加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送部21により搬送されるシートPが所定の温度範囲内の温度となるように当該シートPを加熱する。加熱部23は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、CPU41(図2)から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電して当該赤外線ヒーターを発熱させる。
【0034】
ヘッドユニット24は、シートPが保持された搬送ドラム211の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム211の搬送面に対向するインク吐出面に設けられたノズル開口部からシートPに対してインク(色材)を吐出する記録動作を行うことによりシートP上に画像を形成する。ヘッドユニット24は、インク吐出面と搬送面とが所定の距離だけ離隔されるように配置される。本実施形態のインクジェット記録装置1では、白(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の5色のインクにそれぞれ対応する5つのヘッドユニット24がシートPの搬送方向上流側からW、Y,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。Wのヘッドユニット24は、シートPに下地を印刷するためのものであり、Y、M、C、Kのヘッドユニット24は、前景を印刷するためのものである。ここで、前景とは、絵柄、文字などの、下地の上に印刷される画像を指す。なお、前景に白を含めてもよく、この場合、前景を形成するためのヘッドユニット24として、例えば、Kのヘッドユニット24の下流側に、さらにWのヘッドユニット24を備える。
【0035】
なお、本実施形態では、下地の色を白として説明するが、下地の色は白に限定されず、他の色であってもよい。下地の色が他の色であった場合は、最上流に配置されているヘッドユニット24は、その下地の色のインクを吐出するヘッドユニットとなる。
【0036】
各ヘッドユニット24は、複数の記録素子がシートPの搬送方向と交差する方向(本実施形態では搬送方向と直交する幅方向(第2の方向)、即ちX方向に各々配列された複数(例えば4つ)の記録ヘッド242(図2)と、記録ヘッド242を駆動する記録ヘッド駆動部241(図2)とを備える。
記録ヘッド242に設けられた記録素子の各々は、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズルとを含む。この記録素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。
【0037】
ヘッドユニット24における複数の記録ヘッド242は、当該複数の記録ヘッド242に含まれる記録素子のX方向についての配置範囲が、搬送ドラム211により搬送されるシートPのうち画像が印刷される領域のX方向についての幅をカバーするように、X方向の配置位置がずらされて(典型的には千鳥格子状に)配置される。また、ヘッドユニット24は、画像の印刷時には搬送ドラム211に対して位置が固定されて用いられる。即ち、インクジェット記録装置1は、ラインヘッドを用いたシングルパス方式のインクジェット記録装置である。
【0038】
記録素子のノズルから吐出されるインクとしては、温度によってゲル状又はゾル状に相変化し、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化する性質を有するものが用いられる。
また、本実施形態では、常温でゲル状であり加熱されることによりゾル状となるインクが用いられる。ヘッドユニット24は、ヘッドユニット24内に貯留されるインクを加熱する図示略のインク加熱部を備え、当該インク加熱部は、CPU41による制御下で動作し、ゾル状となる温度にインクを加熱する。記録ヘッド242は、加熱されてゾル状となったインクを吐出する。このゾル状のインクがシートPに吐出されると、インク滴がシートPに着弾した後、自然冷却されることで速やかにインクがゲル状となってシートP上で凝固する。
【0039】
定着部25は、搬送部21のX方向の幅に亘って配置されたエネルギー線照射部を有し、搬送部21に載置されたシートPに対して当該エネルギー線照射部から紫外線等のエネルギー線を照射してシートP上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。定着部25のエネルギー線照射部は、搬送方向についてヘッドユニット24の配置位置からデリバリー部26の受け渡しドラム261の配置位置までの間において搬送面と対向して配置される。
【0040】
デリバリー部26は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ262と、シートPを搬送部21からベルトループ262に受け渡す円筒状の受け渡しドラム261とを有し、受け渡しドラム261により搬送部21からベルトループ262上に受け渡されたシートPをベルトループ262により搬送して排紙部30に送出する。
【0041】
反転部27は、シートPの表裏を反転させる場合にCPU41による制御下で動作し、受け渡しドラム261から引き渡されたシートPの表裏を反転させて搬送ドラム211に引き渡し、搬送ドラム211の搬送面上に載置させる。反転部27は、第1ドラム271、第2ドラム272、及びベルトループ273を備える。
反転部27では、シートPは、図1における時計方向に回転する受け渡しドラム261から図1における反時計方向に回転する第1ドラム271に受け渡され、続いて図1における時計方向に回転する第2ドラム272、反時計方向に回転するベルトループ273に順に引き渡される。シートPの後端が第2ドラム272とベルトループ273とのニップ部近傍に到達するとベルトループ273の回転方向が図1における時計方向に変更され、シートPは、受け渡しドラム222の搬送方向上流側で搬送ドラム211の搬送面に載置される。反転部27により当該搬送面上に載置されたシートPは、画像が形成された面が搬送面に当接する状態で搬送ドラム211に再び保持される。
なお、反転部27の構成は上記に限られず、シートPの表裏を反転させて搬送ドラム211に引き渡すことが可能な種々の構成から適宜選択することができる。
【0042】
排紙部30は、デリバリー部26により画像形成部20から送り出されたシートPが載置される板状の排紙トレー31を有する。
【0043】
図2は、インクジェット記録装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、加熱部23と、記録ヘッド駆動部241及び記録ヘッド242を有するヘッドユニット24と、定着部25と、制御部40と、搬送駆動部51と、操作表示部52と、入出力インターフェース53と、バス54などを備える。
【0044】
記録ヘッド駆動部241は、記録ヘッド242の記録素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、記録ヘッド242のノズルから画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0045】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)及び記憶部44を有する。
【0046】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行してインクジェット記録装置1の各部の動作を集中制御する。
【0047】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42は、不揮発性メモリーを含んでいても良い。
【0048】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0049】
記憶部44には、入出力インターフェース53を介して外部装置2から入力されたジョブ(画像記録命令)及び当該ジョブに係る画像データ(ジョブの画像データ)などが記憶される。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
ここで、ジョブの画像データは、使用する色に応じて一又は複数のレイヤーにより構成されている。下地が印刷される場合、下地の画像データは最下層のレイヤーに配置され、前景の画像データは、それよりも上層のレイヤーに配置されている。
【0050】
搬送駆動部51は、CPU41から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム211の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム211を所定の速度及びタイミングで回転させる。また、搬送駆動部51は、CPU41から供給される制御信号に基づいて媒体供給部12、受け渡しユニット22、及びデリバリー部26を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、シートPの搬送部21への供給及び搬送部21からの排出を行わせる。また、搬送駆動部51は、CPU41から供給される制御信号に基づいて反転部27の第1ドラム271、第2ドラム272、及びベルトループ273を動作させ、反転部27によりシートPの表裏を反転させる。
【0051】
操作表示部52は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルやテンキーといった入力装置(操作部)とを備える。操作表示部52は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部40に出力する。
【0052】
入出力インターフェース53は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース53は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか又はこれらの組み合わせで構成される。
【0053】
バス54は、制御部40と他の構成との間で信号の送受信を行うための経路である。
【0054】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース53を介してジョブ及びその画像データ等を制御部40に供給する。
【0055】
<インクジェット記録装置1の動作>
次に、インクジェット記録装置1における試し印刷動作について説明する。
試し印刷とは、本印刷(本番の(納品用の)印刷)を行う前にユーザーの確認用に実施する印刷である。
インクジェット記録装置1においては、試し印刷の動作モードとして、ジョブの画像データに基づく出力画像を印刷する第1のモードと、ジョブの画像データに含まれる下地の濃度を変化させて下地の濃度が異なる複数の画像を印刷する第2モードを有する。
【0056】
図3は、インクジェット記録装置1により実行される試し印刷処理の流れを示すフローチャートである。試し印刷処理は、ユーザーにより、操作表示部52に表示されたジョブの一覧からジョブが選択され、試し印刷の開始が指示された場合に、CPU41とROM43に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0057】
まず、CPU41は、選択されたジョブの画像データに、下地の画像データが含まれているか否かを判断する(ステップS1)。
ステップS1においては、例えば、操作表示部52に、「下地が含まれていますか」等のメッセージ及びYes/Noボタンを表示して、ユーザーのボタン操作に応じて判断してもよいし、CPU41がジョブの画像データに基づき自動的に判断してもよい。自動で判断する場合、例えば、CPU41は、ジョブの画像データにおけるWの画像データが最下層のレイヤーであった場合に、下地の画像データが含まれていると判断する。
【0058】
ジョブの画像データに下地の画像データが含まれていると判断した場合(ステップS1;YES)、CPU41は、最適な下地の濃度を確認するか否かをユーザーに問い合わせる(ステップS2)。
ステップS2において、CPU41は、例えば、図4に示すプルーフ印刷画面521を操作表示部52に表示する。プルーフ印刷画面521には、選択されたジョブに関する情報を表示する選択ジョブ表示欄521aと、ジョブの出力画像の試し刷りを指示するための「通常プルーフ」ボタン521bと、下地の濃度を確認するための印刷を指示するための「下地の濃度プルーフ」ボタン521cと、が表示されている。CPU41は、「下地の濃度プルーフ」ボタン521cが押下された場合、下地の濃度を確認すると判断する。「通常プルーフ」ボタン521bが押下された場合、下地の濃度を確認しないと判断する。
例えば、最初から最適な下地の濃度が分かっている場合や、前景の透過が問題にならない印刷物などでは、下地の濃度確認は不要であるため、ユーザーは、「通常プルーフ」ボタン521bを押下してジョブの出力画像の試し刷りを行う。
なお、ステップS2は、ユーザーの利便性を考慮して設けられたステップであるが、省略してステップS1の判断結果のみに基づいてステップS3又はS4に進むこととしてもよい。
【0059】
最適な下地の濃度を確認するか否かをユーザーに問い合わせた結果、下地の濃度を確認することが指示された場合(ステップS2;YES)、CPU41は、第2の動作モードに移行し、画像形成部20を制御して、下地の濃度を変化させて下地の濃度が異なる複数の画像をシートPに印刷させ(ステップS3)、試し刷り処理を終了する。
【0060】
一方、ジョブの画像データに下地の画像データが含まれていないと判断した場合(ステップS1;NO)、または、下地の濃度を確認しないことが指示された場合(ステップS2;NO)、CPU41は、第1の動作モードに移行し、画像形成部20を制御して、ジョブの画像データに基づいてシートPに画像(ジョブの出力画像)を印刷させ(ステップS4)、試し刷り処理を終了する。
ここで、ステップS3では、下地の濃度を変化させて一単位分の画像を複数印刷する。ステップS4では、一単位分の画像を形成する。一単位とは、最終の商品1つ分(例えば、商品がパッケージならパッケージ1つ分)の画像である。
【0061】
以下、ステップS3の処理について詳細に説明する。
ステップS3において、まず、CPU41は、ジョブの画像データのうち、最下層のレイヤーのWの画像データを抜き出して、画像形成部20により元データと同じ濃度でシートP上に1単位印刷を行わせる。これを、元データの濃度(例えば50%)~インクジェット記録装置1の最大濃度(例えば100%)まで、10%刻みで濃度を変化させながら、連続して複数回印刷を行わせる。もちろん、元データと異なる濃度から開始してもよい。また、刻み幅は、25%や50%でもよく、また、一定の刻み幅でなくてもよく、操作表示部52や設定ファイルで指定できることが望ましい。これにより、下地の濃度が異なる複数の下地画像が印刷された印刷物(プルーフ)を生成することができる。また、印刷された下地の濃度をユーザーが識別できるように、下地と併せて濃度情報を印刷することが好ましい。
【0062】
図5に、上記手法により、下地の濃度を50%、75%、90%、100%と変化させながら試し印刷を行った場合に出力されるプルーフの例を示す。図5に示すように、試し印刷処理では、濃度が異なる複数の下地画像が印刷されたプルーフが出力されるので、ユーザーは、どの濃度の下地が最適であるかを、印刷設定の変更及び印刷を何度も繰り返すことなく簡便に把握することが可能となる。
【0063】
なお、図5に示す例では濃度の変化数(段階数)分のシートPを搬送する必要があるため、図6に示すように、シートPの特定範囲(全体でもよい)を分割、例えば1シートを4分割するなどして、分割領域のそれぞれに、濃度を変えた複数の下地画像のそれぞれを印刷させることとしてもよい。例えば、CPU41は、シートPの特定範囲を複数に分割し、各分割領域に互いに濃度の異なる下地画像を配置した画像データを生成し、生成した画像データに基づいて、画像形成部20によりシートPに画像を印刷させる。これにより、シートPの消費を抑えることができる。
【0064】
また、画像形成部20では、一度画像が印刷されたシートPを反転させずに搬送部21によりヘッドユニット24に再搬送し、複数回印刷を行う(重ねて印刷を行う。追い刷りを行う。)ことが可能である。そのため、一回の印刷における濃度の最大値を100%とすると、追い刷りを行うことによって、100%以上に下地の濃度を向上させることが可能である。そこで、CPU41は、下地の濃度確認のための試し印刷において、画像形成部20に追い刷りを行わせることによって、最大濃度を超える濃度を含む複数の下地画像の印刷を行うこととしてもよい。
【0065】
図7は、追い刷り回数を異ならせて濃度の異なる下地画像を複数のシートPに印刷することにより生成したプルーフの例を示している。
図8は、1ページのシートPの特定範囲を複数に分割し、それぞれの分割領域に追い刷り回数の異なる下地画像を印刷することにより生成したプルーフの例を示している。図8に示すプルーフは、図9に示すように、1回目の印刷において全領域に濃度100%で下地画像を形成し、2回目の印刷(追い刷り)において、左上以外の3つの領域に濃度100%で下地画像を形成し、3回目の印刷(追い刷り)において、左下と右下の2つの領域に濃度100%で下地画像を形成し、4回目の印刷(追い刷り)において、右下のみの領域に濃度100%で下地画像を形成したものである。
このように、追い刷りを用いることで、一回の印刷における最大濃度を超える濃度の下地についても簡便にプルーフを見ながら比較、確認ができる。
なお、最大濃度以下の濃度と最大濃度を超える濃度とを混在させてプルーフ印刷を行ってもよい(例えば、複数ページのプルーフを出力する場合、1ページ目=50%、2ページ目=100%、3ページ目=150%、4ページ目=200%とする、1ページに複数の濃度の下地画像を形成する場合、左上=50%、右上=100%、左下=150%。右下=200%とする等)。
【0066】
また、下地の濃度確認のための試し印刷する際に、何段階の濃度の画像を出力するか(画像数)、それぞれの段階の濃度をどれくらいにするか、の少なくとも一つをユーザーが設定するための設定画面を操作表示部52に表示可能とし、設定画面上から操作部によりユーザーが画像数や濃度を設定できるようにしてもよい。
また、画像数のみが設定画面から入力されると、CPU41は、設定された画像数に基づいて、各段階の濃度を自動的に決定することとしてもよい。
また、濃度の刻み幅(10%づつ、等)のみが設定画面から入力されると、CPU41は、設定された刻み幅に基づいて画像数を自動的に決定することとしてもよい。
さらに、確認したい濃度範囲(試し印刷により印刷する下地の濃度範囲)を予め設定画面から設定可能に構成し、CPU41は、印刷される下地の濃度が設定された濃度範囲内に制限されるように、画像数や濃度の刻み幅を決定しても良い。これにより、低すぎる濃度や高すぎる濃度については除外した上で、試し印刷を行うことができる。
【0067】
また、上記説明では、下地の濃度確認のための試し印刷において、下地画像のみを印刷の対象とする例について説明したが、図10図11に示すように、下地と前景の絵柄や文字を合わせた画像を印刷してもよい。例えば、CPU41は、画像形成部20を制御して、下地画像をシートP上に印刷した後、シートPを反転させずに搬送部21によりヘッドユニット24に再搬送し、下地画像上に前景画像を重ねて印刷する。あるいは、下地画像をWのヘッドユニット24で印刷し、続いて他の色のヘッドユニット24で前景画像を重ねて印刷してもよい。このように、下地に前景を合わせた画像をプルーフとして出力することで、ユーザーは、実際の印刷物に近い状態で下地の濃度の比較を行うことが可能となる。
【0068】
また、特に領域分割してプルーフ印刷を行う場合においては、前景及び下地は分割された領域の大きさによって切り取られてしまう。そこで、CPU41は、例えば、分割する数(つまり一個あたりの分割領域の大きさ)に合わせて、試し印刷において画像データから切り出す画像のサイズを自動的に決定する。また、画像データから切り出す画像範囲をユーザーが手動で設定及び変更可能とすることが好ましい。例えば、CPU41は、画像範囲設定部として、図12に示すように、画像範囲設定画面522にジョブの画像データに基づく画像及び切り出す画像のサイズの矩形Rを表示し、ユーザーが矩形Rを移動させる(例えば、ドラッグする)ことで、画像データから切り出す画像範囲を設定、変更可能とする。
また、画像データから切り出す画像範囲(切り出し位置と切り出しサイズ)を操作表示部52から手動で設定可能とし(例えば、画像範囲設定画面522にサイズを変更可能な矩形Rを表示する等)、設定された切り出しサイズに応じて、CPU41が領域分割数を自動的に決定することとしてもよい。
もちろん、CPU41が画像データの予め定められた位置に自動的に切り出す画像範囲を決定してもよい。例えば、画像の中心部の予め設定されたサイズの領域に切り出す画像範囲を決定してもよい。
【0069】
また、CPU41は、上記試し印刷処理において、ステップS3の処理を実行し、下地画像の濃度を変化させて複数の画像を印刷した場合、図13に示すように、印刷された各濃度の印刷結果のサムネイル画像等をユーザーが選択可能に操作表示部52に表示し、ユーザーにより選択された濃度を、本印刷における下地の濃度として自動的に設定することが好ましい。これにより、試し印刷の結果を容易にジョブの設定に反映させることが可能となる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、CPU41は、試し印刷を行う際、入力画像データに下地の画像データが含まれている場合は、下地の濃度を変化させて下地の濃度が異なる複数の画像を画像形成部20に印刷させる。
したがって、下地を含む画像を印刷する場合において、本印刷前に、どの程度の下地の濃度が適切であるかをユーザーが簡便に確認することが可能となる。
【0071】
また、CPU41は、画像形成部20に対し、シート上に下地を複数回重ねて印刷させることにより、下地の濃度を変化させることができる。
また、CPU41は、画像形成部20に対し、シート上に下地を複数回重ねて印刷させることにより、下地の濃度が一回の印刷における最大濃度を超える画像を印刷させることができる。したがって、最大濃度を超える濃度を下地の濃度として印刷することが可能となる。
【0072】
また、試し印刷により印刷する複数の画像の画像数及び濃度の少なくとも一つをユーザー操作により設定するための操作部を備えるようにすることで、ユーザーの所望の画像数及び濃度で試し印刷を行うことが可能となる。
【0073】
また、操作部により画像数のみが設定された場合、CPU41が設定された画像数に基づいて濃度を自動的に設定するようにすることで、ユーザーが濃度を設定する手間を省くことができる。
【0074】
また、操作部により濃度の刻み幅のみが設定された場合、CPU41が設定された濃度の刻み幅に基づいて画像数を自動的に設定するようにすることで、ユーザーが画像数を設定する手間を省くことができる。
【0075】
また、試し印刷により印刷する下地の濃度範囲が操作部により設定された場合、CPU41は、操作部により設定された濃度範囲に基づいて試し印刷における下地の濃度を制限するようにすることで、低すぎる濃度や高すぎる濃度については除外した上で、試し印刷を行うことができる。
【0076】
また、試し印刷により印刷する複数の画像は、それぞれ入力画像データに含まれる下地のみの画像とすることで、ユーザーが下地の濃度のみを確認することが可能となる。また、インク等の色材の消費を抑えることができる。
【0077】
また、試し印刷により印刷する複数の画像は、下地に入力画像データに基づく前景を合わせた画像でとすることで、ユーザーは、実際の印刷物に近い状態で下地の濃度の比較を行うことが可能となる。
【0078】
また、CPU41は、画像形成部20に対し、シート上の特定範囲を複数の領域に分割した分割領域のそれぞれに、下地の濃度が異なる複数の画像のそれぞれを印刷させるようにすることで、シートの消費を抑えることができる。
【0079】
また、CPU41は、分割領域の数に応じて、試し印刷において入力画像データから切り出して印刷する画像の大きさを決定するようにすることで、ユーザーが画像の大きさを設定する手間を省くことができる。
【0080】
また、試し印刷に用いる入力画像データにおける画像範囲をユーザー操作により設定または変更するための画像範囲設定画面を操作表示部52に表示することで、ユーザーが所望する画像範囲を試し刷りに用いることができる。
【0081】
また、試し印刷の動作モードとして、入力画像データに基づく出力画像を印刷する第1のモードと、下地の濃度を変化させて下地の濃度が異なる複数の画像を印刷する第2のモードを有し、CPU41は、入力画像データに所定の色(白(W))の画像データが含まれている場合、第2のモードで試し印刷を行う。したがって、入力画像データに下地の色である所定の色の画像データが含まれている場合には、自動的に下地の濃度確認を行うことができる。
【0082】
また、CPU41は、入力画像データに含まれる所定の色の画像データが最下層のレイヤーであった場合に、第2のモードで試し印刷を行うようにすることで、例えば、白文字などを誤って下地として認識して試し印刷を行ってしまうことを防止することができる。
【0083】
また、CPU41は、試し印刷により印刷された下地の濃度が異なる複数の画像を操作表示部52に表示させ、表示された複数の画像の中からユーザー操作により選択された画像の下地の濃度を本印刷時の下地の濃度として設定する。したがって、別途下地の濃度を設定する手間を省くことが可能となる。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
【0085】
例えば、上記実施形態では、常温でゲル状であり加熱されることによりゾル状となるインクをゾル状に加熱して吐出するインクジェット記録装置1を例に説明したが、これに限定する趣旨ではなく、常温でゾル状又は液体であるインクを含む種々の公知のインクを用いてもよい。よって、定着部による定着を行うことなくシートP上に定着するインクが使用されるインクジェット記録装置に対して本発明を適用しても良い。
【0086】
また、上記実施形態では、シングルパス方式のインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、ヘッドユニットを主走査方向に走査させながら画像の記録を行う動作と、シートPを副走査方向に移動させる動作とを交互に繰り返し行うことにより画像を記録するインクジェット記録装置に本発明を適用しても良い。
【0087】
また、上記実施形態では、画像形成装置として圧電素子を用いたピエゾ方式のインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、これに限定する趣旨ではない。例えば、加熱によりインクに気泡を生じさせてインクを吐出するサーマル方式のインクジェット記録装置、感光体ドラム上にトナー粒子(色材)による像を形成してシートに転写する乾式電子写真方式の画像形成装置、色材としてトナー粒子に代えて液体トナーを用いる湿式電子写真方式の画像形成装置といった種々の方式の画像形成装置に本発明を適用することができる。
【0088】
また、上記実施形態において操作表示部52から設定した情報は、例えば、外部装置2等の他の装置により設定可能な構成としてもよい。
【0089】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体として、不揮発性メモリー、ハードディスク等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0090】
その他、画像形成装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 インクジェット記録装置
2 外部装置
10 給紙部
11 給紙トレー
12 媒体供給部
20 画像形成部
21 搬送部
211 搬送ドラム
22 受け渡しユニット
23 加熱部
24 ヘッドユニット
241 記録ヘッド駆動部
242 記録ヘッド
25 定着部
26 デリバリー部
27 反転部
30 排紙部
31 排紙トレー
40 制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 記憶部
51 搬送駆動部
52 操作表示部
53 入出力インターフェース
54 バス
P シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13