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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20231031BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20231031BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20231031BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20231031BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B60C11/00 C
B60C11/00 B
B60C11/00 D
B60C11/03 100C
B60C11/13 C
B60C11/12 D
B60C11/03 B
B60C11/12 A
B60C5/00 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019228966
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095068
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邊 真依子
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209731(JP,A)
【文献】特開2011-230737(JP,A)
【文献】特開2003-326916(JP,A)
【文献】特開2009-035229(JP,A)
【文献】特開2004-050869(JP,A)
【文献】特開昭61-229602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層と、前記ベース層の径方向外側に位置するキャップ層とを有するトレッドを備え、
前記キャップ層が、センターエレメントと、軸方向において前記センターエレメントの外側に位置する一対のサイドエレメントとを備え、前記サイドエレメントが前記センターエレメントよりも軟質であり、
前記ベース層の硬さが前記サイドエレメントの硬さと同じある、又は、前記ベース層が前記サイドエレメントよりも軟質であり、
前記トレッドに、複数の周方向溝が刻まれることにより複数の陸部が構成され、
前記複数の周方向溝のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、
前記複数の陸部のうち、軸方向において外側に位置する陸部がショルダー陸部であり、前記ショルダー陸部の内側に位置する陸部がミドル陸部であり、
前記ショルダー陸部における前記キャップ層が前記サイドエレメントを含み、
前記ショルダー陸部に複数の横溝が刻まれ、
前記複数の横溝がそれぞれ、前記ショルダー陸部内に端部を有し、前記端部から前記トレッドの端に向かって延在する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記サイドエレメントの硬さの、前記センターエレメントの硬さに対する比率が85%以上98%以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記横溝の幅の、前記ショルダー周方向溝の幅に対する比率が45%以上65%以下であり、
前記横溝の深さの、前記ショルダー周方向溝の深さに対する比率が60%以上80%以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
車両装着時に車両内側に位置するショルダー陸部に、前記横溝と前記ショルダー周方向溝とを繋ぐオープンサイプが刻まれる、請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記オープンサイプの軸方向長さの、前記ショルダー陸部の幅に対する比率が、25%以上40%以下である、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ショルダー陸部の幅の、前記トレッドの接地幅に対する比率が、20%以上35%以下である、請求項1から5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ショルダー陸部における前記ベース層の厚さ比率が前記ミドル陸部における前記ベース層の厚さ比率よりも大きい、請求項1から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ショルダー陸部における前記ベース層の厚さ比率と、前記ミドル陸部における前記ベース層の厚さ比率との差が、5%以上10%以下である、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ショルダー陸部における前記キャップ層が前記サイドエレメントで構成される、請求項1から8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記複数の周方向溝が、軸方向において前記ショルダー周方向溝の内側に位置するミドル周方向溝を含み、前記ショルダー周方向溝と前記ミドル周方向溝との間が前記ミドル陸部であり、
前記ミドル陸部に複数の行き止まりサイプが刻まれ、
前記行き止まりサイプが、前記ミドル陸部内に端部を有し、前記端部と前記ショルダー周方向溝とを繋ぐ、第一行き止まりサイプと、前記ミドル陸部内に端部を有し、前記端部と前記ミドル周方向溝とを繋ぐ、第二行き止まりサイプと、を含み、
車両装着時に車両外側に位置するミドル陸部において、前記ミドル陸部に刻まれる、前記第二行き止まりサイプの数が前記第一行き止まりサイプの数よりも多い、請求項1から9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、トレッドにおいて路面と接触する。濡れた路面での走行が考慮され、トレッドには通常、溝が刻まれる。タイヤの性能向上を図るために、このトレッドについては、様々な検討が行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-25003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の静粛化が進み、タイヤにおいても静粛性の向上が求められている。近年、エンジンではなくモーターを動力発生機として用いる電気自動車の普及が進み、タイヤにおいては、静粛性のさらなる向上が求められている。
【0005】
厚いトレッドを採用すると、静粛性の向上を図ることができる。しかしこの場合、トレッドの部分の剛性が低下し、操縦安定性が低下することが懸念される。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、操縦安定性の低下を抑えつつ、静粛性の向上が達成された、空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る空気入りタイヤは、ベース層と、前記ベース層の径方向外側に位置するキャップ層とを有するトレッドを備える。前記キャップ層は、センターエレメントと、軸方向において前記センターエレメントの外側に位置する一対のサイドエレメントとを備え、前記サイドエレメントは前記センターエレメントよりも軟質である。前記ベース層の硬さは前記サイドエレメントの硬さと同じある、又は、前記ベース層は前記サイドエレメントよりも軟質である。前記トレッドに、複数の周方向溝が刻まれることにより複数の陸部が構成され、前記複数の周方向溝のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、前記複数の陸部のうち、軸方向において外側に位置する陸部がショルダー陸部であり、前記ショルダー陸部の内側に位置する陸部がミドル陸部である。前記ショルダー陸部における前記キャップ層は前記サイドエレメントを含む。前記ショルダー陸部に複数の横溝が刻まれ、前記複数の横溝はそれぞれ、前記ショルダー陸部内に端部を有し、前記端部から前記トレッドの端に向かって延在する。
【0008】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記サイドエレメントの硬さの、前記センターエレメントの硬さに対する比率は85%以上98%以下である。
【0009】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記横溝の幅の、前記ショルダー周方向溝の幅に対する比率は45%以上65%以下であり、前記横溝の深さの、前記ショルダー周方向溝の深さに対する比率は60%以上80%以下である。
【0010】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、車両装着時に車両内側に位置するショルダー陸部に、前記横溝と前記ショルダー周方向溝とを繋ぐオープンサイプが刻まれる。
【0011】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記オープンサイプの軸方向長さの、前記ショルダー陸部の幅に対する比率は、25%以上40%以下である。
【0012】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ショルダー陸部の幅の、前記トレッドの接地幅に対する比率は、20%以上35%以下である。
【0013】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ショルダー陸部における前記ベース層の厚さ比率は前記ミドル陸部における前記ベース層の厚さ比率よりも大きい。
【0014】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ショルダー陸部における前記ベース層の厚さ比率と、前記ミドル陸部における前記ベース層の厚さ比率との差は、5%以上10%以下である。
【0015】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ショルダー陸部における前記キャップ層は前記サイドエレメントで構成される。
【0016】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記複数の周方向溝は軸方向において前記ショルダー周方向溝の内側に位置するミドル周方向溝を含み、前記ショルダー周方向溝と前記ミドル周方向溝との間は前記ミドル陸部であり、前記ミドル陸部に複数の行き止まりサイプが刻まれる。前記行き止まりサイプは、前記ミドル陸部内に端部を有し、前記端部と前記ショルダー周方向溝とを繋ぐ、第一行き止まりサイプと、前記ミドル陸部内に端部を有し、前記端部と前記ミドル周方向溝とを繋ぐ、第二行き止まりサイプと、を含む。車両装着時に車両外側に位置するミドル陸部において、前記ミドル陸部に刻まれる、前記第二行き止まりサイプの数は前記第一行き止まりサイプの数よりも多い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空気入りタイヤでは、操縦安定性の低下を抑えつつ、静粛性の向上が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図2は、図1のタイヤのトレッド面の一部が示された展開図である。
図3図3は、図2のa-a線に沿った断面図である。
図4図4は、図1のタイヤの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0020】
本発明においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤの各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0021】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0022】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。タイヤが乗用車用である場合、特に言及がない限り、正規内圧は250kPaである。
【0023】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。タイヤが乗用車用である場合、特に言及がない限り、正規荷重は、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0024】
本発明においては、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の硬さは、JIS K6253の規定に準じて、23℃の温度条件下でタイプAデュロメータを用いて測定される。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0026】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。この図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0027】
図1において、符号PWはタイヤ2の軸方向外端である。模様や文字等の装飾が側面にある場合、この外端PWは、この装飾がないと仮定して得られる仮想側面に基づいて特定される。一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離は、このタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。この外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置)である。
【0028】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、一対のチェーファー18及びインナーライナー20を備える。
【0029】
トレッド4は、架橋ゴムからなる。トレッド4は、その外面22、すなわちトレッド面22において路面と接触する。このタイヤ2では、トレッド面22に溝24が刻まれる。
【0030】
トレッド4は、ベース層26と、キャップ層28とを有する。ベース層26は、ベルト14及びバンド16の径方向外側に位置する。ベース層26は、バンド16全体を覆う。ベース層26の硬さHbは、50以上60以下である。
【0031】
キャップ層28は、ベース層26の径方向外側に位置する。キャップ層28は、ベース層26全体を覆う。このキャップ層28の外面が、前述のトレッド面22である。
【0032】
このタイヤ2では、キャップ層28は、センターエレメント30と、一対のサイドエレメント32とを有する。センターエレメント30は、軸方向において、キャップ層28の中央部分をなす。それぞれのサイドエレメント32は、軸方向においてセンターエレメント30の外側に位置する。サイドエレメント32は、軸方向において、キャップ層28の外側部分をなす。このタイヤ2では、キャップ層28はセンターエレメント30と一対のサイドエレメント32とで構成される。
【0033】
このタイヤ2では、サイドエレメント32の硬さはセンターエレメント30の硬さよりも低い。言い換えれば、サイドエレメント32はセンターエレメント30よりも軟質である。前述のベース層26は、センターエレメント30よりも軟質である。このタイヤ2では、ベース層26の硬さはサイドエレメント32の硬さと同じである、又は、ベース層26はサイドエレメント32よりも軟質である。
【0034】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4よりも径方向内側に位置する。サイドウォール6は、トレッド4の端からクリンチ8に向かって延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0035】
このタイヤ2では、トレッド4とサイドウォール6とはウィング34を介して繋げられる。ウィング34は、接着性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0036】
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。図示されないが、クリンチ8はリムのフランジと接触する。クリンチ8は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0037】
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10は、コア36と、エイペックス38とを備える。コア36はリング状である。コア36はスチール製のワイヤーを含む。図1に示されるように、コア36は矩形状の断面形状を有する。エイペックス38は、コア36よりも径方向外側に位置する。エイペックス38は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。図1に示されるように、エイペックス38は径方向外向きに先細りである。
【0038】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード10と他方のビード10とを架け渡す。このカーカス12はラジアル構造を有する。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ40を含む。
【0039】
このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ40で構成される。カーカスプライ40は、それぞれのコア36の周りにて折り返される。このカーカスプライ40は、一方のコア36と他方のコア36とを架け渡すプライ本体42と、このプライ本体42に連なりそれぞれのコア36の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部44とを有する。このタイヤ2では、折り返し部44の端は、軸方向において、最大幅位置PWよりも外側に位置する。
【0040】
図示されないが、カーカスプライ40は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは、トッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0041】
ベルト14は、トレッド4の径方向内側において、カーカス12と積層される。ベルト14は径方向に積層された少なくとも2層のベルトプライ46で構成される。
【0042】
このタイヤ2のベルト14は、2層のベルトプライ46からなる。図示されないが、この2層のベルトプライ46はそれぞれ、並列された多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
【0043】
バンド16は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。バンド16は、径方向においてトレッド4とベルト14との間に位置する。このタイヤ2のバンド16は、ベルト14全体を覆うフルバンドである。このバンド16が、フルバンドの端部を覆う一対のエッジバンドをさらに備えてよい。このバンド16が、フルバンドではなく、一対のエッジバンドで構成されてもよい。この場合、エッジバンドがベルト14の端部を覆う。
【0044】
図示されないが、バンド16はバンドコードを含む。バンド16において、バンドコードは周方向に螺旋状に巻かれる。バンドコードはトッピングゴムで覆われる。有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0045】
それぞれのチェーファー18は、ビード10の径方向内側に位置する。図示されないが、チェーファー18はリムのシートと接触する。このタイヤ2では、チェーファー18は布とこの布に含浸したゴムとからなる。
【0046】
インナーライナー20は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー20は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー20は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0047】
図2は、トレッド面22の展開図を示す。この図2には、トレッド面22の一部が示される。図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。この図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。
【0048】
図2において、符号Teは、正規状態のタイヤ2を、キャンバー角を0°とし、正規荷重で平らな路面に押し付けることにより得られる接地面の軸方向外端(以下、接地面の端)を表す。両矢印TWは、トレッド4の接地幅である。この接地幅TWは、一方の接地面の端Teから他方の接地面の端Teまでの軸方向距離により表される。
【0049】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4には、溝24が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。このトレッドパターンを構成する溝24のうち、1.5mm以下の溝幅を有する溝24はサイプと称される。
【0050】
このタイヤ2のトレッド4には、トレッドパターンを構成する溝24として、少なくとも2.0mm以上の溝幅を有し、周方向に延びる複数の周方向溝48が刻まれる。これにより、このトレッド4に複数の陸部50が構成される。このトレッド4には、少なくとも3本の周方向溝48が刻まれる。図2に示されるように、このタイヤ2のトレッド4には、3本の周方向溝48が刻まれ、4本の陸部50が構成される。
【0051】
このタイヤ2では、複数の周方向溝48のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝48sがショルダー周方向溝である。軸方向において、このショルダー周方向溝48sの内側に位置する周方向溝48mが、ミドル周方向溝である。このタイヤ2では、このミドル周方向溝48mが赤道面上に位置する。このタイヤ2のトレッド4には3本の周方向溝48が刻まれ、この3本の周方向溝48は、赤道面上に位置するミドル周方向溝48mと、それぞれがミドル周方向溝48mの外側に位置する一対のショルダー周方向溝48sと、を含む。このタイヤ2では、左右のショルダー周方向溝48sの間に、2本以上の周方向溝48が設けられてもよい。
【0052】
図2において、両矢印GMはミドル周方向溝48mの溝幅を表す。両矢印GSは、ショルダー周方向溝48sの溝幅を表す。周方向溝48等の溝24の溝幅は、溝24の一方の縁から他方の縁までの最短距離により表される。縁が丸めとされている場合には、溝壁の延長線とトレッド面22の延長線との交点を縁として、溝幅が計測される。
【0053】
周方向溝48の溝幅及び溝深さは、タイヤ2の仕様等が考慮され適宜設定される。排水性と操縦安定性とがバランスよく整えられる観点から、ミドル周方向溝48mの溝幅GM及びショルダー周方向溝48sの溝幅GSは、トレッド接地幅TWの5%以上6%以下が好ましい。同様の観点から、ミドル周方向溝48mの溝深さDM(図1を参照)及びショルダー周方向溝48sの溝深さDS(図1を参照)は、6mm以上10mm以下が好ましい。
【0054】
このタイヤ2では、複数の陸部50のうち、軸方向において外側に位置する陸部50sがショルダー陸部である。軸方向において、このショルダー陸部50sの内側に位置する陸部50mが、ミドル陸部である。このタイヤ2では、ミドル周方向溝48mとショルダー周方向溝48sとの間がミドル陸部50mであり、ショルダー周方向溝48sの外側部分がショルダー陸部50sである。
【0055】
図2において、両矢印WMはミドル陸部50mの幅を表す。ミドル陸部50mの幅WMは、一方の縁から他方の縁までの軸方向距離で表される。両矢印WSは、ショルダー陸部50sの幅を表す。ショルダー陸部50sの幅WSは、ショルダー陸部50sの縁から接地面の端Teまでの軸方向距離で表される。この幅WM及び幅WSは、トレッド面22に沿って計測される。
【0056】
このタイヤ2では、陸部50の幅はタイヤ2の仕様等が考慮され適宜設定される。排水性と操縦安定性とがバランスよく整えられる観点から、ミドル陸部50mの幅WMの、トレッド4の接地幅TWに対する比率(WM/TW)は10%以上が好ましく20%以下が好ましい。同様の観点から、ショルダー陸部50sの幅WSは、ミドル陸部50mの幅WMの1.1倍以上が好ましく、3.2倍以下が好ましい。
【0057】
ショルダー陸部50sには、トレッドパターンを構成する溝24として、複数の横溝52が刻まれる。これら横溝52は、略軸方向に延び、周方向に間隔をあけて配置される。この横溝52は、少なくとも、2.0mm以上の溝幅を有する。
【0058】
横溝52は、ショルダー陸部50s内に端部を有する。横溝52は、端部からトレッド4の端に向かって延在する。この横溝52は、端部を含み軸方向に対して傾斜する湾曲部54と、この湾曲部54に連なり軸方向に延びる直線部56とを備える。このタイヤ2では、湾曲部54が軸方向に対してなす角度が、赤道側に向かって漸増するように、この湾曲部54の形状は整えられる。この横溝52の縁は、タイヤ2のトラクション性能の確保に貢献する。
【0059】
横溝52は、全体として軸方向に対して傾斜する。図2において、符号θ1はこの横溝52の傾斜角度である。この傾斜角度θ1は、接地面の端Teを表す直線と横溝52の溝幅中心線との交点52cと、この横溝52の溝幅中心線の軸方向内端52eとを通る直線が軸方向に対してなす角度で表される。
【0060】
このタイヤ2では、トラクション性能を確保しつつ、ノイズ性能と操縦安定性とがバランスよく整えられる観点から、横溝52の傾斜角度θ1は5°以上が好ましく、15°以下が好ましい。
【0061】
前述したように、このタイヤ2では、ショルダー陸部50sに刻まれる横溝52は、このショルダー陸部50s内に端部を有し、この端部からトレッド4の端に向かって延在する。ショルダー陸部を横切る、言い換えれば、ショルダー周方向溝とトレッドの端とを繋ぐように構成された横溝に比べて、この横溝52内を通過する空気の流れは制限される。横溝52を空気が通過する際の音圧レベルが低減されるので、このタイヤ2では、静粛性の向上が図られる。
【0062】
静粛性の向上を図るために、例えば、厚いトレッドの採用が検討されるが、このタイヤ2では、厚いトレッドの採用は不要である。厚いトレッドの採用により懸念される、操縦安定性の低下や、質量、そして転がり抵抗の増加を招くことなく、このタイヤ2は静粛性の向上を図ることができる。
【0063】
横溝52はショルダー陸部50s内に端部を有するので、ショルダー陸部を横切る横溝に比べて、この横溝52はショルダー陸部50sの剛性を高めるように作用する。ショルダー陸部50sの剛性が高まると、トレッド4の剛性バランスが崩れ、コーナリングフォースが過剰に高まることが懸念される。この場合、操縦安定性や耐転倒性の低下を招く恐れがある。
【0064】
しかしこのタイヤ2では、ショルダー陸部50sにおけるキャップ層28がサイドエレメント32を含む。前述したように、サイドエレメント32はセンターエレメント30よりも軟質である。そして、ベース層26の硬さはサイドエレメント32の硬さと同じである、又は、このベース層26はサイドエレメント32よりも軟質である。このタイヤ2では、ショルダー陸部50s内に端部を有するように横溝52を構成したにもかかわらず、ショルダー陸部50sの剛性の高まりが適度に抑えられ、トレッド4全体の剛性がバランスよく整えられる。このタイヤ2では、操縦安定性や、耐転倒性の低下が抑えられる。言い換えれば、このタイヤ2では、必要な、操縦安定性及び耐転倒性が確保される。
【0065】
前述したように、このタイヤ2では、静粛性の向上が図られる。このタイヤ2では、操縦安定性の低下を抑えつつ、静粛性の向上が達成される。このタイヤ2は、操縦安定性そして耐転倒性の低下や、質量そして転がり抵抗の増加を抑えつつ、静粛性の向上を図ることができる。
【0066】
前述したように、サイドエレメント32はセンターエレメント30よりも軟質である。具体的には、このタイヤ2では、サイドエレメント32の硬さHsの、センターエレメント30の硬さHcに対する比率(Hs/Hc)は85%以上が好ましく、98%以下が好ましい。
【0067】
比率(Hs/Hc)が98%以下に設定されることにより、軟質なサイドエレメント32が、操縦安定性及び耐転倒性の確保に効果的に貢献する。この観点から、この比率(Hs/Hc)は95%以下がより好ましい。
【0068】
比率(Hs/Hc)が85%以上に設定されることにより、ショルダー陸部50sの剛性が適切に維持される。この場合においても、このサイドエレメント32が、操縦安定性及び耐転倒性の確保に効果的に貢献する。この観点から、この比率(Hs/Hc)は90%以上がより好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、サイドエレメント32の硬さHsは54以上が好ましく、63以下が好ましい。これにより、サイドエレメント32が操縦安定性及び耐転倒性の確保に効果的に貢献する。この観点から、このサイドエレメント32の硬さHsは56以上がより好ましく、61以下がより好ましい。
【0070】
このタイヤ2では、操縦安定性と乗り心地とがバランスよく整えられる観点から、センターエレメント30の硬さHcは60以上が好ましく、70以下が好ましい。
【0071】
前述したように、このタイヤ2では、ベース層26の硬さはサイドエレメント32の硬さと同じである、又は、このベース層26はサイドエレメント32よりも軟質である。言い換えれば、このタイヤ2では、ベース層26の硬さHbの、サイドエレメントの硬さHsに対する比率(Hb/Hs)は100%以下である。良好な操縦安定性と耐転倒性が維持される観点から、この比率(Hb/Hs)は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。
【0072】
このタイヤ2では、ショルダー陸部50sが良好な操縦安定性及び耐転倒性に貢献できる観点から、このショルダー陸部50sの幅WSの、トレッド4の接地幅TWに対する比率(WS/TW)は、20%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。この比率(WS/TW)は、35%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。
【0073】
図3は、図2のa-a線に沿った断面図を示す。この図3には、横溝52の断面が示される。この図3において、両矢印GLは横溝52の幅を表す。両矢印DLは、横溝52の溝深さを表す。横溝52の幅GL及び溝深さDLは、この横溝52が最大深さを示す位置における、この横溝52の断面において、特定される。
【0074】
このタイヤ2では、横溝52の幅GLの、ショルダー周方向溝48sの幅GSに対する比率(GL/GS)は45%以上が好ましく、65%以下が好ましい。
【0075】
比率(GL/GS)が45%以上に設定されることにより、横溝52によるショルダー陸部50sの剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、良好な操縦安定性と耐転倒性が確保される。この観点から、この比率(GL/GS)は50%以上がより好ましい。この比率(GL/GS)が65%以下に設定されることにより、横溝52を通過する空気の量が低減される。この横溝52は静粛性の向上に貢献する。この観点から、この比率(GL/GS)は60%以下がより好ましい。
【0076】
このタイヤ2では、横溝52の深さDLの、ショルダー周方向溝48sの深さDGに対する比率(DL/DS)は60%以上が好ましく、80%以下が好ましい。
【0077】
比率(DL/DS)が60%以上に設定されることにより、横溝52によるショルダー陸部50sの剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、良好な操縦安定性と耐転倒性が確保される。この観点から、この比率(DL/DS)は65%以上がより好ましい。この比率(DL/DS)が80%以下に設定されることにより、横溝52を通過する空気量が低減される。この横溝52は静粛性の向上に貢献する。この観点から、この比率(DL/DS)は75%以下がより好ましい。
【0078】
このタイヤ2では、操縦安定性及び耐転倒性の低下を抑えつつ、静粛性の向上が図れる観点から、横溝52の幅GLの、ショルダー周方向溝48sの幅GSに対する比率(GL/GS)は45%以上65%以下であり、横溝52の深さDLの、ショルダー周方向溝48sの深さDGに対する比率(DL/DS)は60%以上80%以下であるのがより好ましい。
【0079】
図4には、図1に示されたタイヤ2のトレッド4の部分が示される。図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0080】
このタイヤ2では、ショルダー陸部50sの側面58はショルダー周方向溝48sの溝壁60でもある。このショルダー陸部50sの側面58又はショルダー周方向溝48sの溝壁60は、ショルダー周方向溝48sとショルダー陸部50sとの境界である。図4においては、この境界が符号GRで示される直線で表される。
【0081】
このタイヤ2では、軸方向において境界GRよりも外側部分が、ショルダー陸部50sである。図4に示されるように、このタイヤ2では、ショルダー陸部50sにおけるキャップ層28は軟質なサイドエレメント32で構成される。そして、軸方向において、境界GRよりも内側部分のキャップ層28は、硬質なセンターエレメント30で構成される。この境界GRは、キャップ層28におけるサイドエレメント32とセンターエレメント30との境界と一致する。
【0082】
このタイヤ2では、ショルダー陸部50sの剛性が適度に抑えられ、トレッド4全体の剛性がバランスよく整えられる。このタイヤ2では、必要な、操縦安定性及び耐転倒性が確保される。この観点から、ショルダー陸部50sにおけるキャップ層28は、サイドエレメント32で構成されるのが好ましい。
【0083】
図4において、符号CSaは、ショルダー陸部50sの幅WSが半分となるトレッド面22上の位置である。この位置CSaはショルダー陸部50sの中心である。符号CSb及び符号CScは、この中心CSaから外側及び内側のそれぞれに、ショルダー陸部50sの幅WSの25%に相当する長さ、離れた位置である。
【0084】
実線LSaは、中心CSaを通るバンド16の外面(又はトレッド4の内面)の法線である。両矢印ASaは、この法線LSaに沿って計測される、バンド16からトレッド面22までの厚さ、すなわち、トレッド4の厚さである。両矢印BSaは、この法線LSaに沿って計測される、バンド16からベース層26とキャップ層28との境界までの厚さ、すなわち、ベース層26の厚さである。実線LSbは、位置CSbを通るバンド16の法線である。両矢印ASbは、この法線LSbに沿って計測されるトレッド4の厚さである。両矢印BSbは、この法線LSbに沿って計測されるベース層26の厚さである。実線LScは、位置CScを通るバンド16の法線である。両矢印AScは、この法線LScに沿って計測されるトレッド4の厚さである。両矢印BScは、この法線LScに沿って計測されるベース層26の厚さである。なお、トレッド4の厚さの計測位置に溝24が位置する場合は、溝24がないとして得られる仮想トレッド面に基づいて、このトレッド4の厚さは計測される。
【0085】
このタイヤ2では、厚さASa、厚さASb及び厚さAScの平均値を算出し、ショルダー陸部50sにおけるトレッド4の平均厚さASが得られる。厚さBSa、厚さBSb及び厚さBScの平均値を算出し、このショルダー陸部50sにおけるベース層26の平均厚さBSが得られる。このタイヤ2では、このベース層26の平均厚さBSの、トレッド4の平均厚さASに対する比率(BS/AS)が、ショルダー陸部50sにおけるベース層26の厚さ比率である。
【0086】
図4において、符号CMaは、ミドル陸部50mの幅WMが半分となるトレッド面22上の位置である。この位置CMaはミドル陸部50mの中心である。符号CMb及び符号CMcは、この中心CMaから外側及び内側のそれぞれに、ミドル陸部50mの幅WMの25%に相当する長さ、離れた位置である。
【0087】
実線LMaは、中心CMaを通るバンド16の法線である。両矢印AMaは、この法線LMaに沿って計測されるトレッド4の厚さである。両矢印BMaは、この法線LMaに沿って計測されるベース層26の厚さである。実線LMbは、位置CMbを通るバンド16の法線である。両矢印AMbは、この法線LMbに沿って計測されるトレッド4の厚さである。両矢印BMbは、この法線LMbに沿って計測されるベース層26の厚さである。実線LMcは、位置CMcを通るバンド16の法線である。両矢印AMcは、この法線LMcに沿って計測されるトレッド4の厚さである。両矢印BMcは、この法線LMcに沿って計測されるベース層26の厚さである。
【0088】
このタイヤ2では、厚さAMa、厚さAMb及び厚さAMcの平均値を算出し、ミドル陸部50mにおけるトレッド4の平均厚さAMが得られる。厚さBMa、厚さBMb及び厚さBMcの平均値を算出し、このミドル陸部50mにおけるベース層26の平均厚さBMが得られる。このタイヤ2では、このベース層26の平均厚さBMの、トレッド4の平均厚さAMに対する比率(BM/AM)が、ミドル陸部50mにおけるベース層26の厚さ比率である。
【0089】
このタイヤ2では、ショルダー陸部50sにおけるベース層26の厚さ比率(BS/AS)は、ミドル陸部50mにおけるベース層26の厚さ比率(BM/AM)よりも大きいのが好ましい。これにより、ショルダー陸部50sの剛性が適度に抑えられ、トレッド4全体の剛性がバランスよく整えられる。このタイヤ2では、必要な、操縦安定性及び耐転倒性が十分に確保される。この観点から、ショルダー陸部50sにおけるベース層26の厚さ比率(BS/AS)と、ミドル陸部50mにおけるベース層26の厚さ比率(BM/AM)との差は、5%以上が好ましく、10%以下が好ましい。
【0090】
このタイヤ2では、ショルダー陸部50sにおけるベース層26の厚さ比率(BS/AS)は20%以上45%以下が好ましい。
【0091】
厚さ比率(BS/AS)が20%以上に設定されることにより、ショルダー陸部50sにおけるベース層26が操縦安定性及び耐転倒性の確保に効果的に貢献する。この観点から、この厚さ比率(BS/AS)は25%以上がより好ましい。
【0092】
厚さ比率(BS/AS)が45%以下に設定されることにより、ショルダー陸部50sの剛性が適切に維持される。このタイヤ2では、良好な操縦安定性が維持されるとともに、転がり抵抗の増加が最小限に抑えられる。この観点から、この厚さ比率(BS/AS)は40%以下がより好ましい。
【0093】
このタイヤ2では、操縦安定性と乗り心地とがバランスよく整えられる観点から、ミドル陸部50mにおけるベース層26の厚さ比率(BM/AM)は10%以上が好ましく、30%以下が好ましい。この比率(BM/AM)は15%以上がより好ましく、25%以下がより好ましい。
【0094】
このタイヤ2は、周方向溝48及び横溝52以外に、多数のサイプをトレッド4に刻むことができる。図2に示されるように、このタイヤ2のショルダー陸部50sには、好ましくは、複数の行き止まりサイプ62が刻まれる。このタイヤ2では、ショルダー陸部50sに刻まれる行き止まりサイプ62はショルダー行き止まりサイプとも称される。
【0095】
このタイヤ2では、ショルダー陸部50sにおいて、複数のショルダー行き止まりサイプ62は周方向に間隔をあけて配置される。図2に示されるように、このタイヤ2では、一の横溝52とこの一の横溝52の隣に位置する他の横溝52との間には、1本又は2本のショルダー行き止まりサイプ62が配置される。詳述しないが、ショルダー陸部50sにおける複数のショルダー行き止まりサイプ62の配置は、ユニフォミティ等の性能への影響が考慮され適宜決められる。
【0096】
それぞれのショルダー行き止まりサイプ62は、ショルダー陸部50s内に端部を有する。ショルダー行き止まりサイプ62は、端部からトレッド4の端に向かって延在する。このショルダー行き止まりサイプ62は、端部を含み軸方向に対して傾斜する湾曲部64と、この湾曲部64に連なり軸方向に延びる直線部66とを備える。このタイヤ2では、湾曲部64が軸方向に対してなす角度が、赤道側に向かって漸増するように、この湾曲部64の形状は整えられる。このショルダー行き止まりサイプ62の縁は、タイヤ2のトラクション性能の確保に貢献する。
【0097】
ショルダー行き止まりサイプ62は、全体として軸方向に対して傾斜する。図2において、符号θ2はショルダー行き止まりサイプ62の傾斜角度である。この傾斜角度θ2は、ショルダー行き止まりサイプ62の軸方向外端62sと、このショルダー行き止まりサイプ62の軸方向内端62uとを結ぶ直線が、軸方向に対してなす角度で表される。図示されていないが、ショルダー行き止まりサイプ62の外端62s及び内端62uは、このショルダー行き止まりサイプ62の溝幅の中心線において特定される。このタイヤ2では、ショルダー行き止まりサイプ62と接地面の端Teを表す直線とが交差する位置が、このショルダー行き止まりサイプ62の軸方向外端62sとして用いられる。
【0098】
このタイヤ2では、トラクション性能を確保しつつ、ノイズ性能と操縦安定性とがバランスよく整えられる観点から、ショルダー行き止まりサイプ62の傾斜角度θ2は5°以上が好ましく、15°以下が好ましい。
【0099】
図2において、両矢印SSはショルダー陸部50sのショルダー行き止まりサイプ62の軸方向長さである。このタイヤ2では、この長さSSは、トレッド面に沿って計測される、ショルダー行き止まりサイプ62の内端62uから外端62sまでの軸方向距離により表される。
【0100】
このタイヤ2では、ショルダー行き止まりサイプ62の軸方向長さSSは、タイヤ2の仕様等が考慮され適宜設定される。トラクション性能を確保しつつ、ノイズ性能と操縦安定性とがバランスよく整えられる観点から、ショルダー行き止まりサイプ62の軸方向長さSSは、ショルダー陸部50sの幅WSの70%以上80%以下が好ましい。
【0101】
このタイヤ2では、好ましくは、ミドル陸部50mに、複数の行き止まりサイプ68と、周方向サイプ70とが刻まれる。このミドル陸部50mにおいて、行き止まりサイプ68と周方向サイプ70とは交わらない。
【0102】
周方向サイプ70は、ミドル陸部50mの幅方向中心に位置する。周方向サイプ70は周方向に延びる。好ましくは、周方向サイプ70の深さは3.0mm以下である。好ましくは、周方向サイプ70の幅は0.5mm以上1.0mm以下である。
【0103】
このタイヤ2では、ミドル陸部50mに刻まれる、複数の行き止まりサイプ68は、軸方向において、ミドル陸部50mの外側部分に刻まれる複数の第一行き止まりサイプ72と、このミドル陸部50mの内側部分に刻まれる複数の第二行き止まりサイプ74とを含む。前述の周方向サイプ70は、軸方向において、第一行き止まりサイプ72と第二行き止まりサイプ74との間に位置する。
【0104】
複数の第一行き止まりサイプ72は、周方向に間隔をあけて配置される。それぞれの第一行き止まりサイプ72は、ミドル陸部50m内に端部を有する。この端部は、軸方向において、前述の周方向サイプ70の外側に位置する。第一行き止まりサイプ72は、この端部からショルダー周方向溝48sに向かって延在する。第一行き止まりサイプ72は、その端部とショルダー周方向溝48sとを繋ぐ。第一行き止まりサイプ72は、軸方向に対して傾斜する。この第一行き止まりサイプ72の傾斜の向きは、ショルダー陸部50sに刻まれたショルダー行き止まりサイプ62の傾斜の向きとは逆向きである。この第一行き止まりサイプ72の縁は、タイヤ2のトラクション性能の確保に貢献する。
【0105】
図2において、符号θ3は第一行き止まりサイプ72の傾斜角度である。この傾斜角度θ3は、第一行き止まりサイプ72の軸方向外端72sと、この第一行き止まりサイプ72の軸方向内端72uとを結ぶ直線が軸方向に対してなす角度で表される。図示されていないが、第一行き止まりサイプ72の外端72s及び内端72uは、この第一行き止まりサイプ72の溝幅の中心線において特定される。
【0106】
このタイヤ2では、トラクション性能を確保しつつ、ノイズ性能と操縦安定性とがバランスよく整えられる観点から、第一行き止まりサイプ72の傾斜角度θ3は15°以上が好ましく、25°以下が好ましい。
【0107】
このタイヤ2では、第一行き止まりサイプ72の深さはショルダー周方向溝48sの溝深さDSの50%以上90%以下が好ましい。第一行き止まりサイプ72の幅は0.5mm以上1.0mm以下が好ましい。
【0108】
複数の第二行き止まりサイプ74は、周方向に間隔をあけて配置される。それぞれの第二行き止まりサイプ74は、ミドル陸部50m内に端部を有する。この端部は、軸方向において、前述の周方向サイプ70の内側に位置する。第二行き止まりサイプ74は、この端部からミドル周方向溝48mに向かって延在する。第二行き止まりサイプ74は、その端部とミドル周方向溝48mとを繋ぐ。第二行き止まりサイプ74は、軸方向に対して傾斜する。このタイヤ2では、第一行き止まりサイプ72の傾斜の向きと、第二行き止まりサイプ74の傾斜の向きとは同じである。この第二行き止まりサイプ74の縁は、タイヤ2のトラクション性能の確保に貢献する。
【0109】
図2において、符号θ4は第二行き止まりサイプ74の傾斜角度である。この傾斜角度θ4は、第二行き止まりサイプ74の軸方向外端74sと、この第二行き止まりサイプ74の軸方向内端74uとを結ぶ直線が軸方向に対してなす角度で表される。図示されていないが、第二行き止まりサイプ74の外端74s及び内端74uは、この第二行き止まりサイプ74の溝幅の中心線において特定される。
【0110】
このタイヤ2では、トラクション性能を確保しつつ、ノイズ性能と操縦安定性とがバランスよく整えられる観点から、第二行き止まりサイプ74の傾斜角度θ4は30°以上が好ましく、40°以下が好ましい。
【0111】
このタイヤ2では、第二行き止まりサイプ74の深さはミドル周方向溝48mの溝深さDMの50%以上90%以下が好ましい。第二行き止まりサイプ74の幅は0.5mm以上1.0mm以下が好ましい。
【0112】
図2において、両矢印S1はミドル陸部50mの第一行き止まりサイプ72の軸方向長さである。両矢印S2は、ミドル陸部50mの第二行き止まりサイプ74の軸方向長さである。
【0113】
このタイヤ2では、第一行き止まりサイプ72の軸方向長さS1及び第二行き止まりサイプ74の軸方向長さS2は、タイヤ2の仕様等が考慮され適宜設定される。トラクション性能を確保しつつ、ノイズ性能と操縦安定性とがバランスよく整えられる観点から、第一行き止まりサイプ72の軸方向長さS1は、ミドル陸部50mの幅WMの30%以上40%以下が好ましい。同様の観点から、第二行き止まりサイプ74の軸方向長さS2は、ミドル陸部50mの幅WMの30%以上40%以下が好ましい。
【0114】
このタイヤ2のトレッドパターンは非対称パターンである。このタイヤ2が車両に装着されるとき、図2において右側に位置する接地面の端Teが車両内側に位置するように、このタイヤ2は車両に装着される。このタイヤ2において、車両内側に配置されるショルダー陸部50suは内側ショルダー陸部とも称され、車両外側に配置されるショルダー陸部50ssは外側ショルダー陸部とも称される。車両内側に配置されるミドル陸部50muは内側ミドル陸部とも称され、車両外側に配置されるミドル陸部50msは外側ミドル陸部とも称される。
【0115】
図2に示されるように、内側ショルダー陸部50suに設けられる各溝24の傾斜の向きは、外側ショルダー陸部50ssに設けられる各溝24の傾斜の向きと同じである。内側ミドル陸部50muに設けられる各溝24の傾斜の向きは、外側ミドル陸部50msに設けられる各溝24の傾斜の向きと同じである。
【0116】
図2に示されるように、このタイヤ2では、車両装着時に車両内側に位置するミドル陸部50m、すなわち内側ミドル陸部50muにおいて、この内側ミドル陸部50muに含まれる、第二行き止まりサイプ74の数は第一行き止まりサイプ72の数と同じである。これに対して、車両装着時に車両外側に位置するミドル陸部50m、すなわち外側ミドル陸部50msにおいて、この外側ミドル陸部50msに含まれる、第二行き止まりサイプ74の数は第一行き止まりサイプ72の数よりも多い。このタイヤ2では、トレッド4全体の剛性がバランスよく整えられるので、操縦安定性及び耐転倒性の向上が図られる。この観点から、外側ミドル陸部50msに含まれる、第二行き止まりサイプ74の数に対する第一行き止まりサイプ72の数の比は1/4以上が好ましく、1/2以下が好ましい。同様の観点から、この外側ミドル陸部50msに含まれる第二行き止まりサイプ74の深さの、ミドル周方向溝48mの溝深さDMに対する比率は、50%以上が好ましく、60%以下が好ましい。
【0117】
前述したように、横溝52はショルダー陸部50s内に端部を有するので、ショルダー陸部を横切る横溝に比べて、この横溝52はショルダー陸部50sの剛性を高めるように作用する。
【0118】
図2に示されるように、このタイヤ2では、好ましくは、車両装着時に車両内側に位置するショルダー陸部50s、すなわち、内側ショルダー陸部50suに、横溝52とショルダー周方向溝48sとを繋ぐオープンサイプ76が刻まれる。このオープンサイプ76は内側ショルダー陸部50suの剛性を低めるように作用する。
【0119】
このタイヤ2では、横溝52とオープンサイプ76とは連続する。横溝52とオープンサイプ76とにより内側ショルダー陸部50suを横切る複合溝が構成されるので、内側ショルダー陸部50su内に、端部を有する横溝52を設けたことによる、この内側ショルダー陸部50suの剛性の高まりが効果的に抑えられる。そして、オープンサイプ76の溝幅が横溝52の溝幅に比べて狭いので、この内側ショルダー陸部50suの剛性が必要以上に低下することが防止される。このタイヤ2では、必要な操縦安定性及び耐転倒性が確保される。
【0120】
さらにオープンサイプ76の溝幅は1.5mm以下である。このオープンサイプ76においては、少なくとも2.0mm以上の溝幅を有する横溝52とは異なり、空気の通過はほとんどない。オープンサイプ76がタイヤ2の静粛性に与える影響は小さいため、このタイヤ2では、オープンサイプ76によって横溝52とショルダー周方向溝とが繋げられているにもかかわらず、横溝52内の空気の流れが制限される。このタイヤ2では、静粛性の向上が図られる。
【0121】
図2に示されるように、このタイヤ2では、車両装着時に車両外側に位置するショルダー陸部50s、すなわち外側ショルダー陸部50ssに、横溝52とショルダー周方向溝48sとを繋ぐオープンサイプ76は刻まれていない。このタイヤ2では、この外側ショルダー陸部50ssに、横溝52とショルダー周方向溝48sとを繋ぐオープンサイプ76が刻まれてもよい。
【0122】
このタイヤ2では、オープンサイプ76が内側ショルダー陸部50suの剛性コントロールに効果的に貢献できる観点から、オープンサイプ76の深さの、ショルダー周方向溝48sの溝深さDSに対する比率は、50%以上が好ましく、60%以下が好ましい。同様の観点から、オープンサイプ76の幅は、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以下が好ましい。
【0123】
図2において、両矢印LPはオープンサイプ76の軸方向長さである。このタイヤ2では、この長さLPは、トレッド面22に沿って計測される、オープンサイプ76の内端76uから外端76sまでの軸方向距離により表される。
【0124】
このタイヤ2では、オープンサイプ76の軸方向長さLPの、内側ショルダー陸部50suの幅WSに対する比率(LP/WS)は、25%以上が好ましく、40%以下が好ましい。
【0125】
比率(LP/WS)が25%以上に設定されることにより、内側ショルダー陸部50suに含まれる横溝52のボリュームが低減されるので、静粛性の向上が図られる。この観点から、この比率(LP/WS)は30%以上がより好ましい。
【0126】
比率(LP/WS)が40%以下に設定されることにより、オープンサイプ76と横溝52とで構成される複合溝による、内側ショルダー陸部50suの剛性への影響が抑えられ、トレッド4全体の剛性がバランスよく整えられる。このタイヤ2では、必要な操縦安定性及び耐転倒性が確保される。この観点から、この比率(LP/WS)は35%以下がより好ましい。
【0127】
このタイヤ2では、オープンサイプ76は、横溝52、詳細には、横溝52の湾曲部54と同様、軸方向に対して傾斜する。このオープンサイプ76の傾斜の向きは、湾曲部54の傾斜の向きと同じである。このオープンサイプ76と横溝52とは、滑らかに繋げられる。
【0128】
このタイヤ2では、オープンサイプ76が軸方向に対してなす角度が、赤道側に向かって漸増するように、このオープンサイプ76の形状は整えられる。このオープンサイプ76は、操縦安定性に寄与する。
【0129】
図2において、符号θ5はオープンサイプ76の傾斜角度である。この傾斜角度θ5は、オープンサイプ76の軸方向外端76sと、このオープンサイプ76の軸方向内端76uとを結ぶ直線が軸方向に対してなす角度で表される。図示されていないが、オープンサイプ76の外端76s及び内端76uは、このオープンサイプ76の溝幅の中心線において特定される。
【0130】
このタイヤ2では、トラクション性能を確保しつつ、ノイズ性能と操縦安定性とがバランスよく整えられる観点から、オープンサイプ76の傾斜角度θ5は10°以上が好ましく、20°以下が好ましい。
【0131】
以上説明したように、本発明によれば、操縦安定性の低下を抑えつつ、静粛性の向上が達成された、空気入りタイヤ2が得られる。特に、このタイヤ2では、必要な操縦安定性及び耐転倒性を確保しつつ、静粛性の向上が図られる。このタイヤ2は、エンジンを動力発生機とする自動車以外に、電気自動車用のタイヤとしても好適に用いることができる。
【実施例
【0132】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0133】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤサイズ=185/65R15)を得た。
【0134】
この実施例1では、サイドエレメント32の硬さHsの、センターエレメント30の硬さHcに対する比率(Hs/Hc)は90%であった。ベース層26の硬さHbの、サイドエレメントの硬さHsに対する比率(Hb/Hs)は93%であった。センターエレメント30の硬さHcは64であった。
【0135】
この実施例1では、ショルダー陸部の幅WSの、トレッドの接地幅TWに対する比率(WS/TW)は28%であった。ショルダー陸部には、ショルダー陸部内に端部を有し、端部からトレッドの端に向かって延在する横溝が設けられた。このことが、表1の横溝の欄に「Y」で表されている。横溝の幅GLの、ショルダー周方向溝の幅GSに対する比率(GL/GS)は56%であった。横溝の深さDLの、ショルダー周方向溝の深さDGに対する比率(DL/DS)は73%であった。
【0136】
この実施例1では、内側ショルダー陸部に、横溝とショルダー周方向溝とを繋ぐオープンサイプが刻まれた。このことが、表1のオープンサイプの欄に「Y」で表されている。オープンサイプの軸方向長さLPの、内側ショルダー陸部の幅WSに対する比率(LP/WS)は33%であった。
【0137】
この実施例1では、ミドル陸部におけるベース層の厚さ比率(BM/AM)は20%であった。ショルダー陸部におけるベース層の厚さ比率(BS/AS)は30%であった。
【0138】
[比較例1]
サイドエレメントにセンターエレメントの材質と同じ材質を用いて比率(Hs/Hc)及び比率(Hb/Hs)を下記の表1に示される通りとし、比率(GL/GS)及び比率(BS/AS)をこの表1に示される通りとし、オープンサイプを設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。オープンサイプを設けなかったことが、表1のオープンサイプの欄に「N」で表されている。
【0139】
[比較例2]
横溝を、ショルダー陸部を横切る横溝とした他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。横溝をショルダー陸部を横切る横溝としたことが、表1の横溝の欄に「N」で表されている。この比較例2においても、オープンサイプは設けられていない。
【0140】
[実施例2]
オープンサイプを設けなかった他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
【0141】
[実施例3-4及び比較例3-4]
サイドエレメントの硬さHsを変えて比率(Hs/Hc)及び比率(Hb/Hs)を下記の表1及び2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例3-4及び比較例3-4のタイヤを得た。なお、比較例4では、サイドエレメントは、センターエレメントの材質と同じ材質で構成された。
【0142】
[実施例5]
比率(GL/GS)を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5のタイヤを得た。
【0143】
[実施例6]
比率(DL/DS)を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6のタイヤを得た。
【0144】
[実施例7-10]
厚さ比率(BS/AS)を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7-10のタイヤを得た。
【0145】
[転がり抵抗(RRC)]
転がり抵抗試験機を用い、試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。この結果が、指数で下記の表1-2に示されている。数値が小さいほど、転がり抵抗が小さいことを表す。
リム:15×5.5J
内圧:210kPa
縦荷重:4.39kN
【0146】
[操縦安定性]
試作タイヤをリム(サイズ=15×5.5J)に組み込み、空気を充填してタイヤの内圧を調整した(前輪用=230kPa、後輪用=210kPa)。これらのタイヤを試験車両としての電気自動車(1名乗車)に装着して、ドライアスファルト路面のテストコースで走行させた。ドライバーに操縦安定性を評価(官能評価)させた。その結果が、下記の表1-2の「操縦安定性」の欄に、指数で示されている。数値が大きいほど、操縦安定性に優れることを表す。
【0147】
[耐転倒性]
試作タイヤをリム(サイズ=15×5.5J)に組み込み、空気を充填してタイヤの内圧を調整した(前輪用=230kPa、後輪用=210kPa)。これらのタイヤを、試験車両としての電気自動車(1名乗車)に装着して、ドライアスファルト路面のJターン路を定速走行し、180°転舵するときの転倒限界速度を測定した。その結果が、下記の表1-2の「耐転倒性」の欄に、指数で示されている。数値が大きいほど、耐転倒性に優れることを表す。
【0148】
[静粛性]
試作タイヤをリム(サイズ=15×5.5J)に組み込み、空気を充填してタイヤの内圧を調整した(前輪用=230kPa、後輪用=210kPa)。これらのタイヤを、試験車両としての電気自動車(1名乗車)に装着して、ドライアスファルト路面のテストコースで時速60km/hで走行させた。そのときの運転席窓側耳位置における、800Hz以上の周波数を有する車内音の音圧レベルを計測した。その結果が、下記の表1-2の「静粛性」の欄に、指数で示されている。数値が大きいほど、音圧レベルが低く静粛性に優れることを表す。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
表1-2に示されているように、実施例では、必要な、操縦安定性及び耐転倒性を確保しつつ、静粛性の向上が図られている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0152】
以上説明された、必要な、操縦安定性及び耐転倒性を確保しつつ、静粛性の向上を図るための技術は種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0153】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・クリンチ
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
16・・・バンド
22・・・トレッド面
24・・・溝
26・・・ベース層
28・・・キャップ層
30・・・センターエレメント
32・・・サイドエレメント
48、48s、48m・・・周方向溝
50、50s、50ss、50su、50m、50ms、50mu・・・陸部
52・・・横溝
62・・・ショルダー行き止まりサイプ
68・・・行き止まりサイプ
70・・・周方向サイプ
72・・・第一行き止まりサイプ
74・・・第二行き止まりサイプ
76・・・オープンサイプ
図1
図2
図3
図4