(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】歯車のシェービング加工方法及びシェービング加工装置
(51)【国際特許分類】
B23F 19/06 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B23F19/06
(21)【出願番号】P 2019230514
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】寺本 義広
(72)【発明者】
【氏名】上野 亮一
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-170585(JP,A)
【文献】特開2017-064800(JP,A)
【文献】特開2013-091135(JP,A)
【文献】特開2010-184323(JP,A)
【文献】特開平10-113821(JP,A)
【文献】特開平01-257512(JP,A)
【文献】特開昭63-251120(JP,A)
【文献】特表2016-525022(JP,A)
【文献】国際公開第2010/092711(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0141142(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0159080(US,A1)
【文献】仏国特許発明第00952640(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯幅方向に対向する一対の端面を有する歯車とシェービングカッタとを噛み合わせた状態で前記シェービングカッタを回転させて前記歯車の歯面を仕上げるシェービング加工方法であって、
前記歯面を前記一対の端面の一方の端面から他方の端面に向かって次第に加工領域が拡大するように加工
し、前記一方の端面に近い歯面部分が前記他方の端面に近い歯面部分よりも深く削られて、前記シェービングカッタにかかる負荷が前記シェービングカッタの切り込み量の増加とともに次第に増加する、1次シェービング工程と、
前記1次シェービング工程の後、前記歯面を前記一対の端面の他方の端面から一方の端面に向かって次第に加工領域が拡大するように加工
し、前記他方の端面に近い歯面部分が前記一方の端面に近い歯面部分よりも深く削られて、前記シェービングカッタにかかる負荷が前記シェービングカッタの切り込み量の増加とともに次第に増加する、2次シェービング工程を有する、シェービング加工方法。
【請求項2】
前記歯車の中心軸と前記シェービングカッタの中心軸との交差角が、前記1次シェービング工程では第1交差角に設定され、前記2次シェービング工程では第2交差角に設定され、
前記第1交差角は前記第2交差角よりも大きく、
前記第2交差角は、前記歯面の仕上げ条件に対応している、ことを特徴とする請求項1に記載のシェービング加工方法。
【請求項3】
前記歯車を支持するシャフトの中心軸と前記シェービングカッタを支持するシャフトの中心軸との交差角が、前記1次シェービング工程では前記第1交差角に設定され、前記2次シェービング工程では第2交差角に設定される、ことを特徴とする請求項2に記載のシェービング加工方法。
【請求項4】
前記1次シェービング工程では、前記第1交差角に対応する方向に伸びる第1切れ歯を有する第1シェービングカッタが使用され、
前記2次シェービング工程では、前記第2交差角に対応する方向に伸びる第2切れ歯を有する第2シェービングカッタが使用される、ことを特徴とする請求項2に記載のシェービング加工方法。
【請求項5】
前記シェービングカッタの回転方向が前記2次シェービング工程の途中で反対方向に切り替えられることを特徴とする請求項1又は2に記載のシェービング加工方法。
【請求項6】
歯幅方向に対向する一対の端面を有する歯車とシェービングカッタとを噛み合わせた状態で前記シェービングカッタを回転させて前記歯車の歯面を仕上げるシェービング加工装置であって、
前記歯車の中心軸と前記シェービングカッタの中心軸との交差角を、第1交差角と、前記歯面の仕上げ条件に対応した第2交差角に設定する交差角調整機構を備えて
おり、
前記第1交差角は、前記シェービングカッタが前記歯面を前記一対の端面の一方の端面から他方の端面に向かって次第に加工領域が拡大するように加工し、前記一方の端面に近い歯面部分が前記他方の端面に近い歯面部分よりも深く削られて、前記シェービングカッタにかかる負荷が前記シェービングカッタの切り込み量の増加とともに次第に増加するような角度に設定されており、
前記第2交差角は、前記シェービングカッタが前記歯面を前記一対の端面の他方の端面から一方の端面に向かって次第に加工領域が拡大するように加工し、前記他方の端面に近い歯面部分が前記一方の端面に近い歯面部分よりも深く削られて、前記シェービングカッタにかかる負荷が前記シェービングカッタの切り込み量の増加とともに次第に増加するような角度に設定されていることを特徴とするシェービング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車のシェービング加工方法及びシェービング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シェービングカッタを用いて歯車の歯面を仕上げるシェービング加工方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
このシェービング加工方法では、歯車の軸とシェービングカッタの軸とが予め決められた交差角で交差するように、歯車とシェービングカッタとを噛み合わせた状態で配置してシェービングカッタを回転させることで歯面の仕上げ加工を行う。ところが、仕上げ加工時、予め決められている歯面の切込み量を1回の加工ですべて切削すると、加工負荷が大きいため、誤差を生じ易い。この誤差により、噛み合わせた歯車の回転角度に伝達誤差が生じ、伝達誤差が大きくなると振動や騒音を生じる虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明は、歯面を加工するときの加工負荷を減らすことにより、歯車の伝達誤差を低減させる歯車のシェービング加工方法及びシェービング加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の実施形態に係るシェービング加工方法は、
歯幅方向に対向する一対の端面を有する歯車とシェービングカッタとを噛み合わせた状態で前記シェービングカッタを回転させて前記歯車の歯面を仕上げるシェービング加工方法であって、
前記歯面を前記一対の端面の一方の端面から他方の端面に向かって次第に加工領域が拡大するように加工し、前記一方の端面に近い歯面部分が前記他方の端面に近い歯面部分よりも深く削られて、前記シェービングカッタにかかる負荷が前記シェービングカッタの切り込み量の増加とともに次第に増加する、1次シェービング工程と、
前記歯面を前記一対の端面の他方の端面から一方の端面に向かって次第に加工領域が拡大するように加工し、前記他方の端面に近い歯面部分が前記一方の端面に近い歯面部分よりも深く削られて、前記シェービングカッタにかかる負荷が前記シェービングカッタの切り込み量の増加とともに次第に増加する、2次シェービング工程を有する。
【0007】
また、本発明の実施形態に係るシェービング加工装置は、
歯幅方向に対向する一対の端面を有する歯車とシェービングカッタとを噛み合わせた状態で前記シェービングカッタを回転させて前記歯車の歯面を仕上げるシェービング加工装置であって、
前記歯車の中心軸と前記シェービングカッタの中心軸との交差角を、第1交差角と、前記歯面の仕上げ条件に対応した第2交差角に設定する交差角調整機構を備えており、
前記第1交差角は、前記シェービングカッタが前記歯面を前記一対の端面の一方の端面から他方の端面に向かって次第に加工領域が拡大するように加工し、前記一方の端面に近い歯面部分が前記他方の端面に近い歯面部分よりも深く削られて、前記シェービングカッタにかかる負荷が前記シェービングカッタの切り込み量の増加とともに次第に増加するような角度に設定されており、
前記第2交差角は、前記シェービングカッタが前記歯面を前記一対の端面の他方の端面から一方の端面に向かって次第に加工領域が拡大するように加工し、前記他方の端面に近い歯面部分が前記一方の端面に近い歯面部分よりも深く削られて、前記シェービングカッタにかかる負荷が前記シェービングカッタの切り込み量の増加とともに次第に増加するような角度に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1次シェービング工程と2次シェービング工程とに分けて歯車の仕上げ加工を行う。1次シェービング工程と2次シェービング工程は、共に、加工領域を徐々に拡げるように歯面を加工する。このとき、加工負荷は緩やかに上昇するため、全体の加工負荷が低減される。その結果、誤差が抑えられ、伝達誤差が低減される歯車が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るシェービング加工装置の概略構成を示す概略図。
【
図2】
図1に示すシェービング加工装置のシェービングカッタと歯車とを上方から見た平面図。
【
図3】
図1に示すシェービング加工装置により行われるシェービング加工方法を説明する概略図。
【
図4】
図3に示すシェービング加工方法においてシェービングカッタと歯車とを噛み合わせた状態の概略図。
【
図6】
図3に示すシェービング加工方法のカッタの位置と加工負荷の関係を説明するグラフ。
【
図7】従来のシェービング加工方法のカッタの位置と加工負荷の関係を説明するグラフ。
【
図8】
図3に示すシェービング加工方法により得られる歯車の伝達誤差のグラフ。
【
図9】他の実施形態に示すシェービング加工方法において用いられるカッタの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明に係るシェービング加工装置とシェービング加工方法の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態のシェービング加工装置とシェービング加工方法は、シェービングカッタを被削歯車に近づけることにより被削歯車を加工するプランジカットシェービング法を採用しているが、これに限るものではない。
【0011】
[シェービング加工装置の構成]
図1は実施形態に係るシェービング加工装置の概要を示す。図示する装置の大きさやそれを構成する各部分の大きさと形状は誇張して示されており、実際のものとは異なる。
【0012】
図1に示すシェービング加工装置(以下、「加工装置」という。)100は、被削歯車支持機構10を有する。被削歯車支持機構10は、被削歯車11を着脱可能に支持する歯車支持シャフト12を有する。実施形態において、歯車支持シャフト12は図の左右方向に伸びている。被削歯車11が歯車支持シャフト12に支持された状態で被削歯車11の中心軸13と歯車支持シャフト12の中心軸14は一致している。以下、歯車支持シャフト12の中心軸14の方向を「x方向」、x方向に直交する図面の表裏方向を「y方向」、x方向とy方向に直交する図面の上下方向を「z方向」という。
【0013】
[被削歯車支持機構]
歯車支持シャフト12は固定基台15に支持されている。歯車支持シャフト12は、固定基台15に回転可能に固定してもよいし、固定基台15に回転不能に固定してもよい。歯車支持シャフト12を固定基台15に回転可能に固定する場合、被削歯車11は歯車支持シャフト12に回転可能であっても回転不能であってもよい。歯車支持シャフト12を固定基台15に回転不能に固定する場合、被削歯車11は歯車支持シャフト12に対して回転可能とする。
【0014】
[カッタ駆動部]
加工装置100はまたカッタ駆動部20を有する。カッタ駆動部20は、シェービングカッタ(以下、「カッタ」という。)21を着脱可能に支持するカッタ支持シャフト22を有する。カッタ21がカッタ支持シャフト22に支持された状態でカッタ21の中心軸23とカッタ支持シャフト22の中心軸24は一致している。カッタ支持シャフト22は、カッタ21の中心軸23とカッタ支持シャフト22の中心軸24が、x方向とy方向を含むxy平面に平行な面上に位置するように保持される。
【0015】
[カッタ回転機構]
カッタ支持シャフト22はカッタ回転機構31に支持されている。カッタ回転機構31は、カッタ回転モータ32を有し、該カッタ回転モータ32がカッタ支持シャフト22に駆動連結されており、カッタ回転モータ32の駆動に基づいてカッタ支持シャフト22が回転するように構成されている。
【0016】
[カッタ昇降機構]
カッタ回転機構31は、該カッタ回転機構31をz方向に移動又は昇降するカッタ昇降機構33に昇降可能に支持されている。実施形態において、カッタ昇降機構33はカッタ昇降モータ34を備えており、該カッタ昇降モータ34の回転軸(図示せず)がカッタ回転機構31に駆動連結され、カッタ昇降モータ34の駆動に基づいてカッタ回転機構31がz方向に移動又は昇降するように構成されている。
【0017】
[カッタ旋回機構]
カッタ昇降機構33はカッタ旋回機構(交差角調整機構)35に支持されている。実施形態において、カッタ旋回機構35はカッタ旋回モータ36を備えており、カッタ旋回モータ36の駆動に基づいて、被削歯車支持機構10の歯車支持シャフト12に支持された被削歯車11の中心37を通るz方向の基準線38にカッタ21の中心39を位置させた状態で、カッタ回転機構31とカッタ昇降機構33とが一体的に旋回移動するように構成されている。
【0018】
カッタ回転モータ32、カッタ昇降モータ34、及びカッタ旋回モータ36は正逆回転可能である。代わりに、それぞれのモータの駆動を伝達する機構の中に回転方向を反転する機構を設け、この反転機構によってカッタの回転方向、移動方向(昇降方向、旋回方向)を切り替えるようにしてもよい。
【0019】
カッタ昇降モータ34とカッタ旋回モータ36は、昇降量と旋回量(旋回角)を厳格に調整できるように、ステッピングモータを用いるのが好ましい。
【0020】
[制御部]
カッタ回転モータ32、カッタ昇降モータ34、及びカッタ旋回モータ36は、制御部40に接続されており、シェービング加工中、制御部40から出力される指示に基づいて駆動が制御されるように構成されている。具体的に、制御部40には、以下に説明するシェービング加工を行うために必要なプログラムが記憶されており、このプログラムに基づいてモータ32,34,36の駆動が制御される。
【0021】
[シェービング加工]
以上の構成を備えた加工装置100を用いて、被削歯車11の歯面をシェービング加工する実施形態を説明する。
【0022】
[被削歯車]
実施形態において、被削歯車11は、平歯車で、中心軸13を中心とする内周面及び外周面と、中心軸13の方向(歯幅方向)に対向する一対の端面111,112を有し、外周面に周方向に一定の間隔をあけて、中心軸13と平行に伸びる歯(被削歯)113(
図4参照)が形成されている。
【0023】
被削歯車11は、被削歯車11の中心37を基準線38に一致させた状態で、歯車支持シャフト12に、該歯車支持シャフト12に対して回転可能に又は歯車支持シャフト12と共に回転可能に着脱可能に固定される。
【0024】
[カッタ]
カッタ21は、中心軸23を中心とする内周面及び外周面と、中心軸23に直交する一対の対向する端面211,212を有し、外周面に周方向に一定の間隔をあけて弦巻状に伸びる切れ歯213が形成されている。(つまり、実施形態のカッタ21は、はすば歯車型である。)
図2に示すように、カッタ21の中心軸23方向に関する切れ歯213の長さ(対向する一対の端面の間隔にほぼ相当する)214(
図2参照)は、被削歯車11における中心軸13方向に関する被削歯113の長さ114よりも十分に大きく、カッタ21の中心軸23を被削歯車11の中心軸13に対して所定角度(後に説明する交差角θ1、θ2)傾けて交差させたシェービング加工状態で、カッタ21の切れ歯213が対応する被削歯車11の被削歯113の全長に亘って噛み合うように決められている(
図2参照)。
【0025】
カッタ21は、カッタ21の中心39を基準線38に一致させた状態で、カッタ支持シャフト22に着脱可能に固定される。
【0026】
図1において、被削歯車11とカッタ21は噛み合った状態で表されているが、加工前の状態で被削歯車11とカッタ21はz方向に離間している。このときのカッタ21の位置がカッタ21の「初期位置」(
図6(a)の位置P0)で、この初期位置から以下に説明するシェービング加工が始まる。
【0027】
[1次シェービング工程]
シェービング加工は、概略、1次シェービング工程と2次シェービング工程に分けられる。1次シェービング工程において、制御部40はカッタ旋回モータ36を駆動し、歯車支持シャフト12の中心軸14に対するカッタ支持シャフト22の中心軸24の交差角(z方向から見た交差角)を第1交差角θ1に設定する(
図2(a)参照)。第1交差角θ1は、最終的に得られる被削歯車11の歯面形状を得るための仕上げ条件に対応した交差角(第2交差角θ2)よりも大きい。
【0028】
制御部40は次に、カッタ昇降モータ34を所定時間(
図6(a)の時刻T0からT1)駆動してカッタ21の切れ歯213を被削歯車11の歯面115に接近させる(接近後のカッタ位置P1)。
【0029】
続いて、制御部40は、カッタ回転モータ32を駆動してカッタ21を回転しながら、カッタ昇降モータ34を駆動してカッタ21の切れ歯213を被削歯車11の歯面115に当てて被削歯車11の歯面115を削り込む。カッタ21が被削歯車11に接触した時刻が
図6(b)における時刻T12である。
図6(b)に示すように、カッタ21の削り込みが大きくなると、カッタ21に加わる負荷が次第に大きくなる。このカッタ21に加わる負荷は、カッタ21の削り込みが所定量に到達する(
図6(a)カッタ位置P2)直前で一定となる。所定量の削り込みが終了すると、制御部40はカッタ昇降モータ34の駆動を停止する(
図6(a)時刻T2、カッタ位置P2)。
【0030】
上述のように、1次シェービング工程において、歯車支持シャフト12の中心軸14に対するカッタ支持シャフト22の中心軸24の交差角は、歯面115の最終形状に対応した第2交差角θ2よりも大きい第1交差角θ1に設定されている。
【0031】
したがって、
図3に示すように、例えば、カッタ21の駆動側切れ歯面215(
図4参照)に接する被削歯車11の歯面115では、被削歯車11の一方の端面111に近い歯面部分117から削り込みが始まり、その削り込み領域(加工領域)が他方の端面112に近い歯面部分118に向かって次第に拡大する。逆に、カッタ21の従動側切れ歯面216(
図4参照)に接する被削歯車11の歯面116では、被削歯車11の他方の端面112に近い歯面部分118’から削り込みが始まり、その削り込み領域(加工領域)が一方の端面111に近い歯面部分117’に向かって次第に拡大する。そのため、
図6(b)に示すように、カッタ21にかかる負荷が切り込み量の増加とともに増加する。
【0032】
また、
図3に示すように、カッタ21の駆動側切れ歯面215(
図4参照)に接する被削歯車11の歯面115では、被削歯車11の一方の端面111に近い歯面部分117が他方の端面112に近い歯面部分118よりも深く削られ、またカッタ21の従動側切れ歯面216(
図4参照)に接する被削歯車11の歯面116では、例えば被削歯車11の他方の端面112に近い歯面部分118’が一方の端面111に近い歯面部分117’よりも深く削られる。
【0033】
ただし、
図3に示すように、1次シェービング工程において、深く削られた歯面の最大削り込み量は、最終加工歯面(2次加工後の歯面119)に達していない。
【0034】
次に、制御部40は、カッタ昇降モータ34の駆動を停止してカッタ21を同じ位置(
図6(a)カッタ位置P2)に維持した状態でカッタ回転モータ32の駆動を維持して、1次ドゥエルを所定時間(時刻T2からT3)実行する。
図6(b)に示すように、この1次ドゥエルの間、カッタ21に加わる負荷は低下する。
【0035】
1次ドゥエルが終了すると(
図6(a)の時刻T3)、制御部40は、カッタ昇降モータ34を駆動してカッタ21を被削歯車11から僅かに退避させる(
図6(a)のカッタ位置P3)。
【0036】
カッタ21が被削歯車11から退避した状態は所定時間維持される(
図6(a)の時刻T3からT4)。一方、制御部40は、カッタ旋回モータ36を駆動し、歯車支持シャフト12の中心軸14に対するカッタ支持シャフト22の中心軸24の交差角を、第1交差角θ1よりも小さい第2交差角θ2に設定する。
【0037】
[2次シェービング工程]
次に、2次シェービング工程に入り、制御部40は、カッタ回転モータ32を駆動しながら、カッタ昇降モータ34を駆動して(
図6(a)の時刻T4、カッタ位置P4(=P3))カッタ21を被削歯車11に近づけ、カッタ21の切れ歯213を被削歯車11の歯面115に当てて被削歯車11の歯面115を削り込む。カッタ21が被削歯車11に接触した時刻が
図6(b)における時刻T45である。
【0038】
このとき、
図3に示すように、例えば、カッタ21の駆動側切れ歯面215(
図4参照)に接する被削歯車11の歯面115では、被削歯車11の他方の端面112に近い歯面部分118から削り込みが始まり、その削り込み領域(加工領域)が一方の端面111に近い歯面部分117に向かって次第に拡大する。逆に、カッタ21の従動側切れ歯面216(
図4参照)に接する被削歯車11の歯面116では、被削歯車11の一方の端面112に近い歯面部分117’から削り込みが始まり、その削り込み領域(加工領域)が他方の端面111に近い歯面部分118’に向かって次第に拡大する。そのため、
図6(b)に示すように、カッタ21にかかる負荷が切り込み量の増加とともに増加する。このカッタ21に加わる負荷は、カッタ21の削り込みが終了する(
図6(a)カッタ位置P5)直前で一定となる。
【0039】
また、
図3に示すように、カッタ21の駆動側切れ歯面215(
図4参照)に接する被削歯車11の歯面115では、被削歯車11の他方の端面112に近い歯面部分118が一方の端面111に近い歯面部分117よりも多く削られ、最終歯面(2次加工後の歯面)119が完成する。図に示すように最終歯面119は、被削歯車11の一方の端面111に近い歯面部分117と他方の端面112に近い歯面部分118が同程度削られ、両端面111,112の中間点に対して左右対称になっている。
【0040】
被削歯車11の最終歯面119が完成する(
図6の時刻T5、カッタ位置P5)と、制御部40はカッタ昇降モータ34の駆動を停止する。
【0041】
2次シェービング工程の途中でカッタ回転モータ32の回転方向を逆転してもよい。これにより、被削歯車11の各歯の左右の歯面がより均等に加工される。
【0042】
次に、制御部40は、カッタ昇降モータ34の駆動を停止する一方、カッタ回転モータ32の駆動を維持し、2次ドゥエルを開始する(時刻T5,カッタ位置P5)。2次ドゥエルは一定時間継続される(時刻T5からT6)。
【0043】
必要に応じて、制御部40は、カッタ回転モータ32の駆動を維持する一方、カッタ昇降モータ34を駆動してカッタ21を被削歯車11から僅かに退避させて(時刻T6、カッタ位置P6)、三次ドゥエルを行う。三次ドゥエルは一定時間継続(時刻T6からT7)される。
【0044】
最後に、制御部40は、カッタ回転モータ32の駆動を停止するとともに、カッタ昇降モータ34を駆動して、カッタ21を初期位置(時刻T7,カッタ位置P0)に戻す。
【0045】
上述のように、実施形態に係るシェービング装置及びシェービング方法では、シェービング工程が1次シェービング工程と2次シェービング工程に分けられ、1次シェービング工程では歯車中心軸とカッタ中心軸の交差角が最終仕上げ用の第2交差角θ2よりも大きな第1交差角θ1に設定されて所定量の削り込みが行われ、続く2次シェービング工程において交差角が最終仕上げ用の第2交差角θ2に設定される。したがって、1次及び2次シェービング工程では被削歯車の各歯は一方の歯面が一方の端面から他方の端面に向かって次第に削り込まれ又他方の歯面が他方の端面から一方の端面に向かって次第に削り込まれる。したがって、
図6から明らかなように、実施形態のシェービング方法によって受けるカッタの負荷は、交差角を最終仕上げ用の角度(上述した第2交差角)に設定して歯面全体を一様に削り込む従来のシェービング方法(切込み量と加工負荷の関係が
図7に示される方法)においてカッタが受ける負荷よりも少ない。
【0046】
また、カッタの受ける負荷が減少することにより、
図8に示すように、実施形態に係るシェービング方法によって加工された歯車の伝達誤差は、従来のシェービング加工方法によって加工された歯車の伝達誤差よりも減少する。その結果、実施形態のシェービング加工方法によって加工された歯車は、従来のシェービング加工方法によって加工された歯車よりも、力の伝達効率と耐久性が一段と向上し、ギヤノイズが低減する。
【0047】
[他の実施形態]
以上の説明では、加工装置に交差角調整機構(カッタ旋回機構)を設け、これによって交差角を調整するものとしたが、被削歯車支持シャフトの中心軸とカッタ支持シャフトの中心軸の交差角を一定に維持し、1次シェービング工程と2次シェービング工程で使用するカッタを切り替えるとともに、1次シェービング工程で使用するはすば歯車型カッタ21’(
図9参照)における切れ歯のねじれ角によって第1交差角を設定し、2次シェービング工程で使用するはすば歯車型カッタ21’’における切れ歯のねじれ角によって第2交差角を設定するようにしてもよい。
【0048】
また、以上の説明では、第1交差角θ1が第2交差角θ2よりも大きく設定された実施形態について説明したが、第1交差角が第2交差角よりも小さく設定されるようにしてもよい。この場合、
図3における1次加工後の歯面の傾きが左右逆になる。
【0049】
さらに、以上の説明では、被削歯車が平歯車でカッタがはすば歯車型カッタの実施形態について説明したが、被削歯車がはすば歯車でカッタが平歯車型カッタの加工装置及び加工方法においても、本発明は適用可能である。さらに、被削歯車がはすば歯車でカッタがはすば歯車型カッタの組み合わせ、又は他の形状の被削歯車と他の形状のカッタとの組み合わせにおいても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
11:歯車、21:シェービングカッタ、100:シェービング加工装置、111:一方の端面、112:他方の端面、115:歯面。