(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】二軸配向熱可塑性樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20231031BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20231031BHJP
G11B 5/73 20060101ALI20231031BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20231031BHJP
G11B 5/84 20060101ALI20231031BHJP
B29K 667/00 20060101ALN20231031BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
H01G13/00 351A
G11B5/73
B29C55/14
G11B5/84 Z
B29K667:00
B29L7:00
(21)【出願番号】P 2019563302
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019043829
(87)【国際公開番号】W WO2020105471
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2018216314
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千代 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 維允
(72)【発明者】
【氏名】東大路 卓司
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200761(JP,A)
【文献】特開平11-216824(JP,A)
【文献】特開2001-114913(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221701(WO,A1)
【文献】国際公開第1994/013463(WO,A1)
【文献】特開昭60-228545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
C08J
H01G
G11B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面の表面が次の(1)、(2)を満たす二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
(1)非接触光学式粗さ測定によって測定される高さ10nm以上の突起の個数をA(個/mm
2)とした場合、Aが2.0×10
3以上2.5×10
4以下であること。
(2)原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)測定によって測定される高さ1nm以上10nm未満の突起の個数をB(個/mm
2)とした場合、Bが1.8×10
6以上1.0×10
7以下であること。
【請求項2】
前記(1)、(2)を満たす表面を構成する層が平均粒子径10nm以上300nm以下の粒子を含有する請求項1に記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項3】
前記(1)、(2)を満たす表面が、非接触光学式粗さ測定によって測定される高さ60nm以上の突起の個数をC(個/mm
2)とした場合、Cが90以下である請求項1または2に記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項4】
離型用フィルムとして用いられる請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項5】
ドライフィルムレジスト支持体用フィルムとして用いられる請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項6】
積層セラミックコンデンサーを製造する工程においてグリーンシート成形の支持体用フィルムとして用いられる請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項7】
塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体用ベースフィルムに用いられる、請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗大な突起を有しながらも地肌部に微細突起を有する二軸配向熱可塑性樹脂フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂はその加工性の良さから、様々な工業分野に利用されている。また、これら熱可塑性樹脂をフィルム状に加工した製品は工業用途、光学製品用途、包装用途、磁気記録テープ用途など今日の生活において重要な役割を果たしている。近年、電子情報機器において、小型化、高集積化が進み、それに伴って、電子情報機器の作製に用いられるフィルムには加工性の向上が求められている。特に、電子情報機器の作製には、フィルム表面に他の素材を積層させ、フィルムごとフォトレジストなどの光学的な加工を施す手法が多く採られる。そのため、フィルムの光学的な加工性向上のためには、フィルムの透明性を保持すると共に、フィルム表面の平滑性を高めることで、加工に用いるレジスト用レーザー光がフィルム表面の凹凸形状により光散乱することを低減することが一般的な手段である。また、磁気記録テープ用途においても記録データの高密度化に伴い、フィルム表面の平滑性を高めることで読み取りヘッドとの距離を均一に保ち、エラーノイズの発生を低減させることが求められている。特に塗布型磁気記録テープ用途では支持体として用いられるフィルムの片面のみが荒れている場合、ロール巻取り時により平滑な反対面(磁気記録層面)側に形状転写欠点(以下、転写欠点と称する場合がある)を発生し、磁気記録層面の平滑性を低下させることが課題となっている。
【0003】
一般に、フィルムには巻取り・搬送性を担保するために粒子が含有されている。粒子の含有量を低減させたり、含有する粒子の粒径を小径化したりすることでフィルムの平滑性を高め、また上述の転写欠点を防ぐことができる。しかし、その一方でフィルム製造・加工を行う際の巻取り工程にて突起高さの高い突起部が存在しないためフィルム間に噛み混んだ空気が抜けず、浮いた部分がシワになり品位が低下することがある。
【0004】
かかる課題に対して、例えば特許文献1では、フィルムに粒子を含有させることなく、添加剤を用いることで表面を荒らす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、添加剤を用いる場合、添加剤の含有濃度にて表面粗さを均一に制御することができるが、添加剤由来の粗大な異物が発生することにより平滑性が大幅に低下することが課題になる。
【0007】
本発明者らが鋭意検討したところ、上記の課題を解決するためには、フィルム表面の形状を制御し、転写欠点を起こさない程度に局所的に突起高さの高い突起を有しつつ、突起高さの低い突起を共存させることで、平滑性と巻取り性(以下、空気抜け性と称することがある)を両立できることが判った。本発明は上記事情に鑑み、良好な平滑性と巻取り性を有する二軸配向熱可塑性樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を取る。すなわち、
[I]少なくとも片面の表面が次の(1)、(2)を満たす二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
(1)非接触光学式粗さ測定によって測定される高さ10nm以上の突起の個数をA(個/mm2)とした場合、Aが2.0×103以上2.5×104以下であること。
(2)原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)測定によって測定される高さ1nm以上10nm未満の突起の個数をB(個/mm2)とした場合、Bが1.8×106以上1.0×107以下であること。
[II]前記(1)、(2)を満たす表面を構成する層が平均粒子径10nm以上300nm以下の粒子を含有する[I]に記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
[III]前記(1)、(2)を満たす表面が、非接触光学式粗さ測定によって測定される高さ60nm以上の突起の個数をC(個/mm2)とした場合、Cが90以下である[I]または[II]に記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
[IV]離型用フィルムとして用いられる[I]~[III]のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
[V]ドライフィルムレジスト支持体用フィルムとして用いられる[I]~[III]のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
[VI]積層セラミックコンデンサーを製造する工程においてグリーンシート成形の支持体用フィルムとして用いられる[I]~[III]のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
[VII]塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体用ベースフィルムに用いられる、[I]~[III]のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムは、良好な平滑性と巻取り性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】非接触光学式粗さ測定またはAFM(Atomic Force Microscope)測定で測定されるR
1nm、R
10nm、R
60nmをあらわす概念図である。
【
図2】本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの2層構成の一態様を表す模式図である。
【
図3】本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの3層構成の一態様を表す模式図である。
【
図4】本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの異種3層構成の一態様を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明は二軸配向熱可塑性樹脂フィルムに関する。本発明でいう熱可塑性樹脂とは、加熱すると塑性を示す樹脂である。代表的な樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンα、β-ジカルボキシレート、P-ヘキサヒドロ・キシリレンテレフタレートからのポリマー、1,4シクロヘキサンジメタノールからのポリマー、ポリ-P-エチレンオキシベンゾエート、ポリアリレート、ポリカーボネートなど及びそれらの共重合体で代表されるように主鎖にエステル結合を有するポリエステル類、更にナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、などで代表されるように主鎖にアドミ結合を有するポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレンなどで代表されるように主としてハイドロカーボンのみからなるポリオレフィン類、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリオキシメチレンなどで代表されるポリエーテル類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなどで代表されるハロゲン化ポリマー類およびポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルフオンおよびそれらの共重合体や変性体、ポリイミドなどである。
【0013】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂としては、透明性、製膜性の観点からポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)を主成分とすることが好ましく、その中でも特にポリエステルが更に好ましい。ここでいう主成分とはフィルムの全成分100質量%において、50質量%を超えて100質量%以下含有している成分を示す。
【0014】
また、本発明でいうポリエステルはジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を重縮合してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。
【0015】
かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
【0016】
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、上述のジオールが複数個連なったものなどが挙げられる。中でも、機械特性、透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、およびPETのジカルボン酸成分の一部にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸を共重合したもの、PETのジオール成分の一部にシクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ジエチレングリコールを共重合したポリエステルが好適に用いられる。
【0017】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムは、二軸配向していることが必要である。二軸配向していることにより、フィルムの機械強度が向上することでシワが入りにくくなり、巻取り性を向上させることができる。ここでいう二軸配向とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。二軸配向熱可塑性樹脂フィルムは、一般に未延伸状態の熱可塑性樹脂シートをシート長手方向および幅方向に延伸し、その後熱処理を施し結晶配向を完了させることにより、得ることができる。詳しくは後述する。
【0018】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムは、少なくとも片側の表面が、後述の方法に従って非接触光学式粗さ測定器で測定される10nm以上の突起の個数をA(個/mm2)、AFM(Atomic Force Microscope)で測定される高さ1nm以上10nm未満の突起の個数をB(個/mm2)とした場合に、Aが2.0×103以上2.5×104以下であり、かつB(個/mm2)とした場合、Bが1.8×106以上1.0×107以下である必要がある(以降、Aが2.0×103以上2.5×104以下であり、かつB(個/mm2)とした場合、Bが1.8×106以上1.0×107以下であるフィルム表面を、単に前記表面という場合がある)。
【0019】
本発明における非接触光学式粗さ測定器で測定される高さ10nm以上の突起の個数A(個/mm2)は、巻取り時の空気抜けを担う突起の個数を反映している。突起個数A(個/mm2)が多くなることで他のフィルム面との接触する面積(以下、接触面積と称することがある)が低下し空気が逃げる空間が確保されるため、巻取り性が向上する。一方、突起個数A(個/mm2)が多すぎる場合は、高い突起が多くなることにより転写欠点の発生が多くなる場合がある。また、突起個数A(個/mm2)が少ない場合、フィルムが平坦になることで他の面との接触面積が増加し空気抜け性が悪化、後述する突起個数B(個/mm2)がいかに多く存在する場合においても、フィルム巻取り時にフィルム内に取り残された空気に起因するシワが発生し品位が低下する場合がある。高さ10nm以上突起の個数A(個/mm2)はより好ましくは3.0×103以上2.0×104以下であり、更に好ましくは4.0×103以上2.0×104以下である。
【0020】
本発明におけるAFM(Atomic Force Microscope)で測定される高さ1nm以上10nm未満の突起の個数B(個/mm2)は、前記表面の地肌部に存在する微細な突起の個数を反映しており、地肌部と他の面との接触面積を低下させるとともに、微細な突起凹凸構造により空気の逃げ道を増加させることで、前記10nm以上の突起により得られる空気抜け性を顕著に促進する効果を有する。また、地肌部に高さ1nm以上10nm未満の突起が多く存在することで、フィルム間や工程ロールとの摩擦を低減し、フィルム表面のキズを低減する効果を有する。突起個数B(個/mm2)が多すぎる場合は、フィルムの滑り性が向上し巻取り時やその後のスリッター工程において巻きズレが発生しロールの巻き姿が悪くなる場合がある。また、突起個数B(個/mm2)が少ない場合、フィルムが平坦になることで他の面との接触面積が増加し空気抜け性が悪化、フィルム巻取り時にフィルム内に取り残された空気に起因するシワが発生し品位が低下する場合がある。高さ1nm以上10nm未満の突起の個数B(個/mm2)は、より好ましくは3.0×106以上8.5×106以下である。
【0021】
従来技術において、非接触光学式粗さ測定器で測定される高さ10nm以上の突起の個数A(個/mm2)を多くする方法としては、例えば、粒子径の大きい粒子を含有させる方法が挙げられる。また、AFM(Atomic Force Microscope)で測定される高さ1nm以上10nm未満の突起の個数B(個/mm2)を多くする方法としては、例えば、粒子径の小さい粒子を含有させる方法が挙げられる。しかしながら、かかる方法では、突起個数Bを増やすため含有させる粒子の粒子径を小さくしていくことで、粒子同士の凝集が無視できなくなり、結果的に突起が粗大化して突起個数Bが減少してしまうため、突起個数Bを一定以上とすることは困難であった。本発明においては後述する方法により、突起個数A、Bを上述の範囲に制御することが可能である。
【0022】
また、本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムは、前記表面における非接触光学式粗さ測定器で測定される高さ60nm以上の突起の個数C(個/mm2)が90以下であることが好ましい。高さ60nm以上の突起の個数C(個/mm2)は、転写欠点を引き起こす高さの突起の個数を反映している。突起個数C(個/mm2)が90を超える場合、転写欠点が多く発生することで、前記表面とは反対の面の平滑性が低下するため、かかるフィルムを磁気テープ用途に用いるとノイズが多く発生する場合がある。突起個数C(個/mm2)は、80以下であることがより好ましい。突起個数C(個/mm2)の下限値は特に存在せず究極的には0であることが最も好ましい。
【0023】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムにおいて、非接触光学式粗さ測定器で測定される高さ10nm以上の突起の個数Aを上記の範囲とするための方法は特に限定されないが、粒子を含有させる方法やフィルム主成分と異なる樹脂を含有させる方法などを用いることができる。製膜条件に依らず均一な突起を形成する観点からは粒子を含有させ、その含有粒子の平均粒子径や含有量により制御することが好ましい。
【0024】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムに含有させる粒子に関しては特に限定されず、無機粒子、有機粒子どちらを用いても良く、2種類以上の粒子を併用してもよい。無機粒子としては例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミナ(αアルミナ、βアルミナ、γアルミナ、δアルミナ)、マイカ、雲母、雲母チタン、ゼオライト、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、ジルコニア、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどが挙げられる。アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを構成成分とする有機粒子、コアシェル型有機粒子などが例示できる。
【0025】
前記粒子の粒子径サイズとしては後述の方法にて得られる平均1次粒子径で10nm以上300nm以下であることが好ましい。平均1次粒子径が10nm未満である場合、粒子同士の凝集力が大きくなり、粗大な凝集体を形成することで前記突起個数Aの範囲を超える場合がある。前記平均1次粒子径が300nmを超える場合、形成する個々の突起サイズが大きくなり、前記突起個数Aの範囲を超える場合がある。前記粒子の平均1次粒子径の好ましい範囲としては15nm以上200nm以下である。
【0026】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムに含有させる粒子の含有量は時に限定されないが透明性を損なわないためには、粒子の含有濃度をフィルム全体に対して3.0質量%以下とすることが好ましい。3.0質量%を超えると平均1次粒子径が好ましい範囲にある粒子を用いてもフィルムが部分的に白濁し、後述するヘイズが好ましい範囲から外れる場合がある。より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。また、本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムを2層以上の積層構成とし、前記表面を有する層にのみに粒子を含有させることで、透明性を良好にしつつ、前記突起個数Aを目的の範囲とすることが容易となる。前記表面を有する層の粒子含有量は、表面を有する層全体に対して0.1~0.5質量%であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムは、巻取り性を更に向上させることを目的とする観点から、本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムを3層以上の構成とし、前記表面を有する層を設けるのとは反対の最表層に粒子を含有させる態様とすることも好ましい。含有させる粒子の種類に関しては前記表面を有する層と同様の物を適用することができるが、フィルムの透明性を確保する観点からは、平均1次粒子径は10nm以上100nm以下とすることが好ましい。また、前記表面とは反対の最表層に含有させる粒子の含有量は最表層全体に対して1.5質量%以下であることが好ましい。より好ましい態様としては、二軸配向熱可塑性樹脂フィルム全体に対する粒子含有量は上述の通り3.0質量%以下とし、前記表面を有する層、前記表面を有する層とは反対側の最表層に粒子を含有させつつ、表層を有さない層は粒子を実質的に含有しないフィルムが挙げられ、かかるフィルムとすると透明性が良好となる。
【0028】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの前記表面において、前記AFMで測定される高さ1nm以上10nm未満の突起の個数Bを上記の範囲とするための方法は特に限定されないが、例えば、ナノインプリントのようにモールドを用いて表面に形状を転写させる方法、未延伸シートに大気圧グロー放電によるプラズマ表面処理をした後、後述の二軸延伸を行う方法などが挙げられる。インラインでの製膜適応性や微細な突起の形成個数の観点からは、大気圧グロー放電によるプラズマ処理を行った後に二軸延伸することがより好ましい。ここでいう大気圧とは700Torr~780Torrの範囲である。
【0029】
大気圧グロー放電処理は、相対する電極とアースロール間に処理対象のフィルムを導き、装置中にプラズマ励起性気体を導入し、電極間に高周波電圧を印加することにより、該気体をプラズマ励起させ電極間においてグロー放電を行うものである。一般的に、大気圧グロー放電処理によって熱可塑性樹脂フィルムの表面を処理する場合、グロー放電によって生じるプラズマのエネルギーによって、フィルム表面の分子鎖の切断や、生じる低分子量体が気化し、フィルム表面が削られる現象(以降、分解除去と称することがある)が起こる。これによりフィルム表面が微細に加工(分解除去)され突起が形成する。
【0030】
プラズマ励起性気体とは前記のような条件においてプラズマ励起されうる気体をいう。プラズマ励起性気体としては、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガス、窒素、二酸化炭素、酸素、またはテトラフルオロメタンのようなフロン類およびそれらの混合物などが挙げられる。また、プラズマ励起性気体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の混合比で組み合わせてもよい。プラズマによって励起された場合に活性が高くなる観点から、アルゴン、酸素、二酸化炭素のうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、酸素を含むことがより好ましい。活性の高いプラズマ励起性気体を用いることで、フィルム表面の分解除去が促進し形成する突起の高さが増大する傾向にあり、粒子添加に起因する突起の高さが増大して、非接触光学式粗さ測定器で測定される高さ10nm以上の突起の個数Aが増加する場合がある。
【0031】
プラズマ処理における高周波電圧の周波数は1kHz~100kHzの範囲が好ましい。また、以下方法で求められる放電処理強度(E値)は、10~2000W・min/m
2の範囲で処理することが突起形成の観点から好ましく、より好ましくは40~500W・min/m
2である。放電処理強度(E値)が低すぎると、突起が十分に形成されない場合があり、放電処理強度(E値)が高すぎると、熱可塑性樹脂フィルムにダメージを与えてしまう、または、分解除去が進行し、好ましい突起が形成されない場合がある。
<放電処理強度(E値)の求め方>
E=Vp×Ip/(S×Wt)
E:E値(W・min/m
2)
Vp:印加電圧(V)
Ip:印加電流(A)
S:処理速度(m/min)
Wt:処理幅(m)
非接触光学式粗さ測定器およびAFMで測定されるR
1nm、R
10nm、R
60nmをあらわす概念図を
図1に示す。
図1中、基準面とは、測定表面における基準面からの距離が0となるように定められる高さである(基準面よりも高い場合は正の値、基準面よりも低い場合は負の値となる)。
【0032】
一般的に、大気圧グロー放電処理によって熱可塑性樹脂フィルム、とくにPETやPENのように非晶部と結晶部を持つフィルムの表面を分解除去する場合、柔らかい非晶部から分解除去されていく。結晶部と非晶部を細分化させることで、大気圧グロー放電処理することでより微細な突起を形成することができ、また、結晶部を増やしておくことで柔らかい非晶部が深く削れることで突起高さを高くすることが可能となる。
【0033】
このため、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの前記表面を有する層の固有粘度(IV)は、0.50dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.60dl/g以上である。IVは、分子鎖の長さを反映した数字であり、分子鎖が長い方が、同一分子鎖の中で結晶部と非晶部を明確に形成しやすいため、大気圧グロー放電処理することでより微細な突起を形成することが容易となるため好ましい。また、IVが0.50dl/g未満の場合、分子鎖が短いことで結晶化が進行しやすくなるため、延伸工程で破断が頻発し製膜が困難になる場合がある。
【0034】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの前記表面において、突起個数A、Bを上述の範囲とする方法としては、前記表面を有する層に、前述の粒子を含有せしめつつ、プラズマ処理を行った後、二軸延伸することが挙げられる。また、フィルムを構成する熱可塑性樹脂中に他の熱可塑性樹脂成分をナノ分散させることで、前記突起個数Aは増加する傾向にある。また、前記プラズマ処理における大気圧グロー放電処理の強度や、大気圧グロー放電処理の際に用いるプラズマ励起性気体の活性を上げると、前記突起個数Bが増加する傾向にある。
【0035】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムは、単膜構成であっても他の樹脂を積層した2層以上の構成であってもよい。2層構成とする場合、前記表面を有する層をP1層、積層する層をP2層と称する場合、P1層の突起を有する表面が最外層になるように配したP1層/P2層構成とすることが好ましい。3層構成とする場合、2種3層構成(P1層/P2層/P1層)でも、更に別の樹脂を積層した異種3層構成(P1層/P2層/P3層)であってもよい。
【0036】
P1層とP2層、P3層等の他の樹脂層を積層する方法としては特に制限されないが、後述する共押出法や、製膜途中のフィルムに他の樹脂層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、製膜後のフィルム同士を接着剤層とを介して積層する方法などを用いることができ、中でも前述処理による突起形成と積層を同時に行える共押出法が好ましく用いられる。
【0037】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムのP2層、P3層の構成としては特に制限されないが、粒子を実質的に含有しないことがフィルムの透明性を確保する観点からは好ましい。実質的に粒子を含有しないとは、熱可塑性樹脂に対する粒子の含有量が500ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、最も好ましくは10ppm以下である。また、P1層、P2層、P3層には本発明の効果が損なわれない範囲で、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、帯電防止剤、有機系/無機系の易滑剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤、波長変換材料等の添加剤が配合されていてもよい。
【0038】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、ドライフィルムレジスト支持体用フィルムなどの高い光線透過性が求められる用途で用いる場合、フィルムヘイズが0.60%以下となることが好ましい。ヘイズが0.60%を超える場合、フィルムを使用するに際にして透過光が散乱されてしまい、例えばドライフィルムレジスト支持体用途では、レジスト配線に欠点が発生する。より好ましくは0.50%以下、更に好ましくは0.45%以下である。
【0039】
次に、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法について、二軸配向ポリエステルフィルムを例に挙げて説明するが、本発明は、かかる例によって得られる物のみに限定して解釈されるものではない。
【0040】
本発明に用いられるポリエステルを得る方法としては、常法による重合方法が採用できる。例えば、テレフタル酸等のジカルボン酸成分またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール等のジオール成分またはそのエステル形成性誘導体とを公知の方法でエステル交換反応あるいはエステル化反応させた後、溶融重合反応を行うことによって得ることができる。また、必要に応じ、溶融重合反応で得られたポリエステルを、ポリエステルの融点温度以下にて、固相重合反応を行っても良い。
【0041】
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムは、従来公知の製造方法で得ることが出来る。具体的には本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて乾燥した原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、原料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
【0042】
2層以上の積層ポリエステルフィルムを溶融キャスト法により製造する場合、積層ポリエステルフィルムを構成する層毎に押出機を用い、各層の原料を溶融せしめ、これらを押出装置と口金の間に設けられた合流装置にて溶融状態で積層したのち口金に導き、口金からキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(共押出法)が好適に用いられる。該積層シートは、表面温度20℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製する。キャストドラムの温度は、より好ましくは25℃以上60℃以下、さらに好ましくは30℃以上55℃以下である。20℃以下ではプラズマを照射し、二軸延伸した後のフィルム表面の突起形成が十分でない場合がある。60℃を超えると、キャストドラムにフィルムが貼り付き、未延伸シートを得ることが困難になる場合がある。
【0043】
次いで、ここで得られた未延伸フィルムに大気圧グロー放電によるプラズマ処理などの表面処理を施す。これらの表面処理は未延伸フィルムを得た直後でも、微延伸を施した後でも、縦および/又は横方向に延伸した後でも良いが、本発明では未延伸フィルムに表面処理することが好ましい。また、表面処理を施す面はキャストドラムに接していた面(ドラム面)でもキャストドラムに接していない面(非ドラム面)のいずれでも良い。
【0044】
その後、未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法又は同時二軸延伸法を用いることができる。最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法が、延伸破れなく本発明の二軸配向熱可塑性フィルムを得るのに有効である。
【0045】
(二軸延伸)
未延伸フィルムを二軸延伸する場合の延伸条件に関しては特に制限されるものでは無いが、本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムがポリエステルを主成分とする場合、長手方向の延伸としては、未延伸シートを70℃以上に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に延伸し、20~50℃の温度のロール群で冷却することが好ましい。長手方向の延伸における加熱ロール温度の下限についてはシートの延伸性を損なわない限り特に制限はないが、使用するポリエステル樹脂のガラス転移温度を超えることが好ましい。また、長手方向の延伸倍率の好ましい範囲は3倍~5倍である。より好ましい範囲としては3倍~4倍である。長手方向の延伸倍率が3倍未満であると、配向結晶化が進行せずフィルム強度が著しく低下する。一方で、延伸倍率が5倍を超える場合、延伸に伴うポリエステル樹脂の配向結晶化が進行することで脆くなると共に製膜時の破れが発生する場合がある。
【0046】
続いて、長手方向に直角な方向(幅方向)の延伸に関しては、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、70~160℃の温度に加熱された雰囲気中にて、長手方向に直角な方向(幅方向)への3倍~5倍の延伸、およびその後、延伸されたフィルムを熱処理し内部の配向構造の安定化を行うことが好ましい。熱処理時にフィルムの受けた熱履歴温度に関しては、後述する示差走査熱量計(DSC)にて測定される融点温度の直下に現れる微小吸熱ピーク(Tmetaと称することがある。)温度にて確認することができるが、テンター装置設定温度としてはポリエステル(融点255℃)が主成分である場合には、テンター内の最高温度が200℃以上250℃以下であるように設定することが好ましく、他の熱可塑性樹脂を主成分とする際は、樹脂融点-55℃以下樹脂融点-5℃以下に設定することが好ましい。熱処理温度が200℃を下回る場合、前記、大気圧グロー放電処理により形成された突起が十分に成長できず結果として前述の好ましい範囲の突起を形成することが困難になる。一方250℃を超えて熱処理を施す場合、フィルムが融解し破れが多発、生産性が低下する場合がある。より好ましい範囲としては220℃以上245℃以下である。
【0047】
熱処理時にフィルムの受けた熱履歴温度を表すTmetaの範囲としては、ポリエステル樹脂を主成分とする場合、前述の理由から190℃以上245℃以下であることが好ましい。より好ましい範囲としては210℃以上240℃以下である。
更に熱処理した後に寸法安定性を付与することを目的として、0%以上6%以下の範囲でリラックス処理を行ってもよい。
【0048】
延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ3~5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9~22倍であることが好ましく、9~20倍であることがより好ましい。面積倍率が9倍未満であると、得られる二軸延伸シートの耐久性が不十分となり、面積倍率が22倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。
【0049】
[特性の評価方法]
A.非接触光学式粗さ測定器による評価
(i)高さ10nm以上の突起の個数A(個/mm2)
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムより10cm×10cmのサンプリングを行い、それぞれのサンプルについて、非接触光学式粗さ測定器(装置:Zygo社製New View 7300)を用い、50倍対物レンズを使用して測定面積139μm×104μmで、場所をランダムに変えて80視野測定を行った。サンプルセットは、測定Y軸がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをステージにセットして測定する。得られた測定データについて、該粗さ測定器に内蔵された表面解析ソフトウェアMetroPro 8.1.3にて、カットオフ値をHigh Filter Wavelenを1.65μm、Low Filter Wavelenを50.00μmに設定する。Reference Band(帯域幅)を100nmに指定し、10nmのスライスレベルにおけるPeaksを個/mm2単位に換算する。80視野すべてにおいて同様の操作を行い、それらの平均値を本発明における高さ10nm以上の突起個数A(個/mm2)とした。
【0050】
(ii)高さ60nm以上の突起の個数C(個/mm2)
前項(i)と同様にして、60nmのスライスレベルにおけるPeaksを個/mm2単位に換算し、観察した80視野の平均値を本発明の高さ60nm以上の突起個数Cとした。
【0051】
B.AFM(Atomic Force Microscope)による評価
(iii)高さ1nm以上10nm未満の突起の個数B(個/mm2)
以下の測定方法によって得られるフィルム表面の画像を、付属の解析ソフト(NanoScope Analysis Version 1.40)を用い解析する。得られるフィルム表面のHeight Sensor画像を下記するFlatten処理のみを施した後、Particle Analysis解析モードを下記の通り設定することで、フィルム表面の基準面が自動的に決定される。該基準面から、突起高さの閾値(Threshold Height)が1nm(R1nm)での1μm2当たりの突起密度の平均値(Density行、Mean列の値)を1mm2当たりに換算した数値をN1nm(個/mm2)、10nm(R10nm)での1μm2当たりの突起密度の平均値(Density行、Mean列の値)を1mm2当たりに換算した数値をN10nm(個/mm2)とした時、次の式で求められる値をその測定画像の高さ1nm以上10nm未満の突起の個数B(個/mm2)とする。
B(個/mm2)=N1nm(個/mm2)-N10nm(個/mm2)
前記解析を各サンプルにおける20か所の測定画像全てにおいて行い、その平均値をサンプルの高さ1nm以上10nm未満の突起の個数B(個/mm2)とする。
【0052】
[AFM測定方法]
・装置:Bruker社製 原子間力顕微鏡(AFM)
Dimention Icon with ScanAsyst
・カンチレバー:窒化ケイ素製プローブ ScanAsyst Air
・走査モード:ScanAsyst
・走査速度:0.977Hz
・走査方向:後述する方法にて作製した測定サンプルの幅方向に走査を行う
・測定視野:5μm四方
・サンプルライン:512
・Peak Force SetPoint:0.0195V~0.0205V
・Feedback Gain:10~20
・LP Deflection BW:40 kHz
・ScanAsyst Noise Threshold: 0.5nm
・サンプル調整:23℃、65%RH、24時間静置
・AFM測定環境:23℃、65%RH
・測定サンプル作成方法:AFM試料ディスク(直径15mm)の片面に両面テープを貼りつけ、AFM試料ディスクと、約15mm×13mm(長手方向×幅方向)に切り出した本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの前記表面(測定面)とは逆側の面とを張り合わせ、測定サンプルとした。
【0053】
・サンプル測定回数:各サンプル同士が少なくとも5μm以上離れるように場所を変え、20回測定を行う。
【0054】
・測定値:測定した20か所の画像に関して前述の解析を行い、各数値を測定しその平均値をサンプルの持つ各数値として扱う。
[Flatten処理]
・Flatten Order:3rd
・Flatten Z Threshholding Direction:No theresholding
・Find Threshold for:the whole image
・Flatten Z Threshold %:0.00 %
・Mark Excluded Data:Yes
[Particle Analysisモード設定]
(Detectタブ)
・Threshold Height:各値に応じて入力
・Feature Direction:Above
・X Axis:Absolute
・Number Histogram Bins:512
・Histogram Filter Cutoff:0.00 nm
・Min Peak to Peak:1.00 nm
・Left Peak Cutoff:0.00000%
・Right Peak Cutoff:0.00000%
(Modifyタブ)
・Beughbirhood Size:3
・Number Pixels Off:1
・一切のDilate/Erode操作を行わない。
(Selectタブ)
・Image Cursor Mode:Particle Select
・Bound Particles:Yes
・Non-Representative Particles:No
・Height Reference:Relative To Max Peak
・Number Histogram Bins:50
・前記数値を求めるに際し、解析画像中の特定のピーク、エリアを選択しない。
・Diameter、Height、Area全てのヒストグラムで特定の場所を選択しない。
【0055】
C.平均1次粒子径
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて1万倍で観察する。この時、観察視野において200nm以下の粒子が確認された場合はTEM観察倍率を10万倍に変えて観察する。場所を変えて100視野測定し、写真に撮影された分散した粒子全てについて等価円相当径をもとめ、横軸に等価円相当径を、縦軸に粒子の個数として粒子の個数分布をプロットし、そのピーク値の等価円相当径を粒子の平均1次粒子径とした。ここで、1万倍で観察した写真上に凝集粒子が確認できた場合は上記プロットに含めない。フィルム中に粒子径の異なる2種類以上の粒子が存在する場合、上記等価円相当径の個数分布は2個以上のピークを有する分布となる。この場合は、それぞれのピーク値をそれぞれの粒子の平均1次粒子径とする。最大粒子の粒子径は、1万倍で観察した写真において、最大の粒子径を持つ粒子の粒子径である。
【0056】
凝集粒子の平均1次粒子径は、上記の装置を用いて20万倍で観察する。凝集粒子10
0個について、凝集粒子を構成する個々の1次粒子の等価円相当径をもとめ、上記と同様
の方法でプロットし、ピーク値の等価円相当径を凝集粒子の平均1次粒子径とする。
【0057】
D.粒子の含有量
本発明の二軸配向熱可塑性フィルムのP1層部分1gを1N-KOHメタノール溶液200mLに投入して加熱還流し、ポリマーを溶解した。溶解が終了した該溶液に200mLの水を加え、ついで該液体を遠心分離器にかけて粒子を沈降させ、上澄み液を取り除いた。粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。このようにして得られた粒子を乾燥させ、その質量を量ることで粒子の含有量を算出した。
【0058】
E.空気抜け指標
デジベック平滑度試験機((株)東洋精機製)を用いて、25℃、65%RHにて測定した。本発明の二軸配向熱可塑性フィルムの前記表面を持つ面が試料台と接するようにセットする。このときフィルムが試料台に空いた穴を完全に覆うようにセットする。この状態で1kg/cm2の荷重を加えて、初期減圧度(常圧からの減圧度)を385mmHgに設定する。常圧より385mmHg減圧した後、常圧に戻ろうとするため、フィルムと試料台間を空気が流れ込んでいくが、この時、常圧からの減圧度が382mmHgから381mmHgになる時間(空気抜け時間)を測定する。10サンプルに関して前述の空気抜け時間を測定し、その平均値をフィルムの空気抜け指標とした。
A:空気抜け時間が2400秒未満
B:空気抜け時間が2400秒以上2700秒未満
C:空気抜け時間が2700秒以上2900秒未満
D:空気抜け時間が2900秒以上
空気抜け指標としてはA~Cが良好であり、その中で最もAが優れている。
【0059】
F.フィルムの固有粘度IV(dL/g)
オルトクロロフェノール100mLに本発明のフィルムを溶解させ(溶液濃度C=1.2g/dL)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定する。また、同様に溶媒の粘度を測定する。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記(a)式により、[η](dL/g)を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とする。
(a)ηsp/C=[η]+K[η]2・C
(ここで、ηsp=(溶液粘度(dL/g)/溶媒粘度(dL/g))―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である)。
【0060】
本発明の二軸配向熱可塑性フィルムが積層構成である場合、前記表面を持つ層(P1層)のIVはP1層のみを常法により削り出し、前述の方法で測定を行う。
【0061】
G.末端カルボキシル基量(表中ではCOOH量と記載する。)
末端カルボキシル基量については、Mauliceの方法に準じて、以下の方法にて測定した。(文献M.J. Maulice, F. Huizinga, Anal.Chim.Acta,22 363(1960))
測定試料2gをo-クレゾール/クロロホルム(質量比7/3)50mLに温度80℃にて溶解し、0.05NのKOH/メタノール溶液によって滴定し、末端カルボキシル基濃度を測定し、当量/ポリエステル1tの値で示した。なお、滴定時の指示薬はフェノールレッドを用いて、黄緑色から淡紅色に変化したところを滴定の終点とした。なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、溶液を濾過して不溶物の質量測定を行い、不溶物の質量を測定試料質量から差し引いた値を測定試料質量とする補正を実施した。
【0062】
H.巻取り性
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムを4.5m幅にて製膜し連続した5000mのロール巻取りを10回行い、得られた10本のロールの様子からフィルム巻取り性を下記の通り評価した。
【0063】
A:10本のロールの内、シワの発生したロールが1本以下。
B:10本のロールの内、シワの発生したロールが2本。
C:10本のロールの内、シワの発生したロールが3本以上4本以下。
D:10本のロールの内、シワの発生したロールが5本以上6本以下。
E:10本のロールの内、シワの発生したロールが7本以上。
巻取り性としてはA~Dが良好であり、その中で最もAが優れている。
【0064】
I.巻き姿
前項にて採取した、本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムロール10本について、1.5m幅毎にスリットを行い30本のスリットロールを採取する。スリットロールの様子からフィルムロールの巻き姿を下記の通り評価した。
【0065】
A:30本のスリットロールの内、巻きズレが発生したロールが2本以下。
B:30本のスリットロールの内、巻きズレが発生したロールが3本以上5本以下。
C:30本のスリットロールの内、巻きズレが発生したロールが6本以上8本以下。
D:30本のスリットロールの内、巻きズレが発生したロールが9本以上。
【0066】
J.形状転写欠点評価
本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの形状転写欠点評価は、下記の方法にて評価を行った。1m幅にスリットした本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムを、張力200Nで搬送させ、本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの前記表面とは反対の面側に後述する非磁性層形成用塗布液と磁性層形成用塗布液とを重層塗布、また前記表面側に後述するバックコート層形成用塗布液を塗布し、さらに12.65mm(1/2インチ)幅にスリットし、パンケーキを作成する。
【0067】
(以下、「部」とあるのは「質量部」を意味する。)
磁性層形成用塗布液
バリウムフェライト磁性粉末 100部
(板径:20.5nm、板厚:7.6nm、
板状比:2.7、Hc:191kA/m(≒2400Oe)
飽和磁化:44Am2/kg、BET比表面積:60m2/g)
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10,000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
α-アルミナ HIT60(住友化学社製) 8部
カーボンブラック #55(旭カーボン社製)
粒子サイズ0.015μm 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 100部
非磁性層形成用塗布液
非磁性粉体 α酸化鉄 100部
平均長軸長0.09μm、BET法による比表面積 50m2/g
pH 7
DBP吸油量 27~38ml/100g
表面処理層Al2O3 8質量%
カーボンブラック 20部
“コンダクテックス”(登録商標)SC-U(コロンビアンカーボン社製)
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 18部
フェニルホスホン酸 3部
シクロヘキサノン 300部
メチルエチルケトン 300部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
上記の塗布液のそれぞれについて、各成分をニ-ダで混練した。1.0mmφのジルコニアビーズを分散部の容積に対し65%充填する量を入れた横型サンドミルに、塗布液をポンプで通液し、2,000rpmで120分間(実質的に分散部に滞留した時間)、分散させた。得られた分散液にポリイソシアネ-トを非磁性層の塗料には5.0部、磁性層の塗料には2.5部を加え、さらにメチルエチルケトン3部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
【0068】
得られた非磁性層形成用塗布液を、本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの前記表面とは反対の面上に乾燥後の厚さが0.8μmになるように塗布乾燥させた後、磁性層形成用塗布液を乾燥後の磁性層の厚さが0.07μmになるように塗布を行い、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに6,000G(600mT)の磁力を持つコバルト磁石と6,000G(600mT)の磁力を持つソレノイドにより配向させ乾燥させた。
その後、前記表面側にカレンダー後の厚みが0.5μmとなるようにバックコート層形成用塗布液(カーボンブラック 平均粒子サイズ:17nm 100部、炭酸カルシウム平均粒子サイズ:40nm 80部、αアルミナ 平均粒子サイズ:200nm 5部をポリウレタン樹脂、ポリイソシアネートに分散)を塗布した。次いでカレンダで温度90℃、線圧300kg/cm(294kN/m)にてカレンダ処理を行った後、65℃で、72時間キュアリングした。さらに、スリット品の送り出し、巻取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性面に押し当たるように取り付け、テープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行い、磁気テープを得た。
【0069】
得られたテープ原反を12.65mm(1/2インチ)幅にスリットし、それをLTO用のケースに組み込み、磁気記録テープの長さが960mのデータストレージカートリッジを作成した。このデータストレージを、IBM社製LTO7ドライブを用いて23℃50%RHの環境で記録し(記録波長0.55μm)、次に、カートリッジを50℃、80%RH環境下に7日間保存した。カートリッジを1日常温に保存した後、全長の再生を行い、再生時の信号のエラーレートを測定した。エラーレートはドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)から次式(b)にて算出する。
【0070】
(a)エラーレート=(エラービット数)/(書き込みビット数)
A:エラーレートが1.0×10-6未満。
【0071】
B:エラーレートが1.0×10-6以上、1.0×10-5未満。
【0072】
C:エラーレートが1.0×10-5以上、1.0×10-4未満。
【0073】
D:エラーレートが1.0×10-4以上。
形状転写欠点評価としてはA~Cが良好であり、その中で最もAが優れている。
【0074】
K.グリーンシート特性評価
以下a.からb.の方法によりグリーンシート特性評価を行う。
a.離型層の塗布
本発明の二軸配向熱可塑性フィルムの前記表面とは反対の面に、架橋プライマー層(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名BY24-846)を固形分1質量%に調整した塗布液を塗布/乾燥し、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化した。その後1時間以内に付加反応型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名LTC750A)100質量部、白金触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名SRX212)2質量部を固形分5質量%に調整した塗布液を、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化した後に巻取り、離型フィルムを得た。
b.グリーンシートの塗布状態の評価(セラミックススラリーの塗布性)
チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製商品名HPBT-1)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製商品名BL-1)10質量部、フタル酸ジブチル5質量部とトルエン-エタノール(質量比30:30)60質量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状のセラミックスラリーを調整した。得られたセラミックスラリーを、離型フィルムの前項aにて離型層を設けた面の上に乾燥後の厚みが2μmとなるように、ダイコーターにて塗布し乾燥させ、巻取り、グリーンシートを得た。 上記で巻き取られたグリーンシートを、繰り出し、離型フィルムから剥がさない状態にて目視で観察し、ピンホールの有無や、シート表面および端部の塗布状態を確認する。なお観察する面積は幅300mm、長さ500mmである。離型フィルムの上に成型されたグリーンシートについて、背面から1000ルクスのバックライトユニットで照らしながら、塗布抜けによるピンホールあるいは、離型フィルム背面の表面転写による凹み状態を観察する。
A:ピンホールも凹みも無い。
B:ピンホールは無く、凹みが3個以内認められる。
C:ピンホールは無く、凹みが5個以内認められる。
D:ピンホールが一部認められる、または凹みが6個以上認められる。
グリーンシート特性評価としてはA~Cが良好であり、その中で最もAが優れている。
【0075】
L.ヘイズ
本発明の二軸配向熱可塑性フィルムから一辺が5cmの正方形状のサンプルを3点(3個)採取する。次にサンプルを23℃、60%RHにおいて、40時間放置する。それぞれのサンプルを日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、JIS「透明材料のヘイズの求め方」(K7136 2000年版)に準ずる方式で実施する。それぞれの3点(3個)のヘイズの値を平均して、フィルムのヘイズの値とする。
【0076】
M.フォトレジスト評価
以下a.からc.の方法によりフォトレジスト評価を行った。
a.片面鏡面研磨した6インチSiウエハー上に、東京応化(株)製のネガレジスト“PMERN-HC600”を塗布し、大型スピナーで回転させることによって厚み7μmのレジスト層を作製する。次いで、窒素循環の通風オーブンを用いて70℃の温度条件で約20分間の前熱処理を行う。
b.本発明の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの前記表面とは反対の面をレジスト層と接触するように重ね、ゴム製のローラーを用いて、レジスト層上に二軸配向熱可塑性樹脂フィルムをラミネートし、その上に、クロム金属でパターニングされたレチクルを配置し、そのレクチル上からI線(波長365nmにピークをもつ紫外線)ステッパーを用いて露光を行う。
c.レジスト層からポリエステルフィルムを剥離した後、現像液N-A5が入った容器にレジスト層を入れ約1分間の現像を行う。その後、現像液から取り出し、水で約1分間の洗浄を行う。現像後に作成されたレジストパターンのL/S(μm)(Line and Space)=10/10μmの30本の状態を走査型電子顕微鏡SEMを用いて約800~3000倍率で観察し、パターンに欠けのある本数で以下のように評価する。
A:欠けのある本数が5本以下。
B:欠けのある本数が6本以上10本以下。
C:欠けのある本数が11本以上15本以下。
D:欠けのある本数が16本以上。
フォトレジスト評価としてはA~Cが良好であり、その中で最もAが優れている。
【実施例】
【0077】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0078】
[PET-1の製造]テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、実質的に粒子を含有しない溶融重合PETを得た。得られた溶融重合PETのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.62であった。その後、常法により固相重合を行い、固相重合PETを得た。得られた固相重合PETのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.81であった。
【0079】
[MB-Aの製造]前項PET-1の重合に際し、得られるPETに対する含有量が2.0重量%となるように、エチレングリコールに分散させた平均1次粒子径が21nmのδアルミナ(アルミナ-1)を添加し、PETベースマスタ―ペレットMB-Aを得た。得られた溶融重合MB-Aのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.70であった。
【0080】
[MB-Bの製造]前項PET-1の重合に際し、得られるPETに対する含有量が2.0重量%となるように、エチレングリコールに分散させた平均1次粒子径が16nmのδアルミナ(アルミナ-2)を添加し、PETベースマスタ―ペレットMB-Bを得た。得られた溶融重合MB-Bのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.70であった。
【0081】
[MB-Cの製造]前項PET-1の重合に際し、得られるPETに対する含有量が2.0重量%となるように、エチレングリコールに分散させた平均1次粒子径が11nmのδアルミナ(アルミナ-3)を添加し、PETベースマスタ―ペレットMB-Cを得た。得られた溶融重合MB-Cのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.70であった。
【0082】
[MB-Dの製造]前項PET-1の重合に際し、得られるPETに対する含有量が2.0重量%となるように、エチレングリコールに分散させた平均1次粒子径が210nmのシリカ(シリカ-1)を添加し、PETベースマスタ―ペレットMB-Dを得た。得られた溶融重合MB-Dのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.70であった。
【0083】
[MB-Eの製造]前項PET-1の重合に際し、得られるPETに対する含有量が2.0重量%となるように、エチレングリコールに分散させた平均1次粒子径が265nmのシリカ(シリカ-2)を添加し、PETベースマスタ―ペレットMB-Eを得た。得られた溶融重合MB-Eのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.70であった。
【0084】
[MB-Fの製造]前項PET-1の重合に際し、得られるPETに対する含有量が2.0%となるように、エチレングリコールに分散させた平均1次粒子径が320nmのシリカ(シリカ-3)を添加し、PETベースマスタ―ペレットMB-Fを得た。得られた溶融重合MB-Fのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.70であった。
【0085】
[MB-Gの製造]前項PET-1の重合に際し、得られるPETに対する含有量が2.0重量%となるように、エチレングリコールに分散させた平均1次粒子径が72nmのシリカ(シリカ-4)を添加し、PETベースマスタ―ペレットMB-Gを得た。得られた溶融重合MB-Gのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.70であった。
【0086】
[MB-Hの製造]前項PET-1の重合に際し、得られるPETに対する含有量が2.0重量%となるように、エチレングリコールに分散させた平均1次粒子径が370nmのシリカ(シリカ-5)を添加し、PETベースマスタ―ペレットMB-Hを得た。得られた溶融重合MB-Hのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.70であった。
【0087】
[MB-Iの製造]前項PET-1とステアリン酸ナトリウム(結晶核剤-1)とを、ステアリン酸ナトリウム(結晶核剤-1)が、前項PET-1に対する含有量が5.0重量%となるように二軸混錬押出を行い、PETベースマスタ―ペレットMB-Iを得た。得られた溶融重合MB-Iのガラス転移温度は83℃、融点は255℃、固有粘度は0.65であった。
【0088】
(実施例1)
PET-1およびマスタ―ペレットMB-Aを180℃で2時間半減圧乾燥した後、粒子含有濃度が表1に記載のP1層およびP2層の量になるように配合し、それぞれの押出機に供給し、溶融押出してフィルターで濾過した後、フィードブロックにてP1層/P2層と積層するように合流させた後、Tダイを介し37℃に保った冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて巻き付け冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを相対する電極とアースロール間に導き、装置中に窒素ガスを導入し、E値が160W・min/m2となる条件で大気圧グロー放電処理を行った。
処理後の未延伸フィルムを逐次二軸延伸機により表1、2に記載の条件にて、長手方向に3.6倍、および幅方向にそれぞれ4.0倍、トータルで14.4倍延伸しその後、定長下240℃で熱処理した。その後、幅方向に弛緩処理を施し、厚み4.5μmの二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価を表3、4に示す。巻取り性、巻き姿、転写欠点共に良好なフィルムであった。
【0089】
(実施例2-4)
実施例2-4では、使用するマスタ―ペレットを表1に記載の粒子含有濃度になるように変更した以外は、実施例1と同様にして厚み4.5μmの二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価を表3、4に示す。
【0090】
実施例2では実施例1より大径な平均1次粒子径が250nmの粒子を多量に加えたところ、非接触光学式粗さ測定にて測定される高さ10nm以上の突起個数が増加することで、転写欠点が実施例1より低下したが実用の範囲内であり、また巻取り性、巻きズレは良好なフィルムであった。
【0091】
実施例3、4では実施例1より小径な平均1次粒子径が15nmおよび10nmの粒子を用いたところ、非接触光学式粗さ測定にて測定される高さ10nm以上の突起個数が減少し、巻取り性が実施例1よりも悪化し、またAFMにて測定される高さ1nm以上10nm未満の突起個数が増加して巻きズレにより巻き姿が実施例1よりも悪化したが実用の範囲内であり、転写欠点は良好なフィルムであった。
【0092】
(実施例5)
実施例5では、大気圧グロー放電処理を表2の通りE値が450W・min/m2となる条件で行った以外は実施例1と同様にして厚み4.5μmの二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価を表3、4に示す。
実施例5は実施例1対比で、AFMにて測定される高さ1nm以上10nm未満の突起個数が増加しており、巻きズレにより巻き姿が悪化するものの実用の範囲内であり、巻取り性、転写欠点共に良好なフィルムであった。
【0093】
(実施例6、7)
実施例6、7では、使用するマスタ―ペレットを表1に記載の粒子添加濃度になるように変更、および大気圧グロー放電処理を表2の通りに変更する以外は、実施例1と同様にして厚み4.5μmの二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価を表3、4に示す。
実施例6、7では、AFMにて測定される高さ1nm以上10nm未満の突起個数が実施例1より減少する。実施例6では非接触光学式粗さ測定にて測定される高さ10nm以上の突起個数は実施例1と同等であり、巻取り性が実施例1より実用の範囲内ではあるが悪化した。その一方、実施例7では非接触光学式粗さ測定にて測定される高さ10nm以上の突起個数が実施例1より増加することで、巻取り性は実施例1と同等に良好であったが、転写欠点は実施例1より実用の範囲内ではあるが悪化した。
【0094】
(実施例8、9)
実施例8、9では、使用するマスタ―ペレットを表1に記載の粒子添加濃度になるように変更する以外は、実施例1と同様にして厚み4.5μmの二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価を表3、4に示す。
実施例8、9いずれも非接触光学式粗さ測定にて測定される高さ10nm以上の突起個数および、AFMにて測定される高さ1nm以上10nm未満の突起個数は好ましい範囲にあるが、粒子径の大きな200nmおよび300nmの粒子を用いることで、非接触光学式粗さ測定にて測定される高さ60nm以上の突起個数が実施例1に比べ増加した。結果、実施例8、9は転写欠点が実施例1より悪化するものの実用の範囲内であり、巻取り性は良好なフィルムであった。
【0095】
(実施例10)
大気圧グロー放電処理に用いるガス種を、窒素ガスに酸素ガス0.5体積%混合した気体を使用した以外は実施例3と同様の方法にて二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価は表3、表4に示す通りである。
実施例10は活性の高いプラズマ励起性ガスを用いたため、添加粒子に由来する突起のサイズが大きくなることで突起個数Aが実施例3よりも増大し、巻取り性、転写欠点が良好なフィルムとなった。
【0096】
(実施例11)
フィルム厚みを25μmとした以外は実施例1と同様の方法にて二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価は表3、表4に示す通りである。実施例11は実施例1と同等に巻取り性、巻き姿、転写欠点共に良好なフィルムであった。
実施例11のフィルムに上述した方法にてグリーンシート評価および、フォトレジスト評価を実施したところ、フィルム厚み増加によりヘイズが実施例1より僅かに増加するものの、表5、6に示す通りどちらも良好な結果であり、ドライフィルムレジスト支持体用フィルムやグリーンシート成形の支持体用フィルムとして好適に用いることができる。
【0097】
(実施例12)
3種類の押出機を用いて表1に記載の配合にてそれぞれの層を押出し、P1層/P2層/P3層の異種3層構成となるように積層しフィルム厚み25μmとした以外は実施例1と同様の方法にて二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価は表3、表4に示す通りである。実施例12では実施例1と同等に巻き姿、転写欠点が共に良好なフィルムであり、さらに、粒子を含有するP3層を前記表面とは反対の最表面に設けることで巻取り性は実施例1より優れるフィルムであった。
実施例12のフィルムに上述した方法にてグリーンシート評価および、フォトレジスト評価を実施したところ、粒子を含有するP3層を設けたことでヘイズが実施例11より増加することでフォトレジスト評価が低下するものの実用の範囲内で有り、ドライフィルムレジスト支持体用フィルムやグリーンシート成形の支持体用フィルムとして好適に用いることができる。
【0098】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で未延伸フィルムを得た後、大気圧グロー放電処理を行わずに逐次二軸延伸機へと導入したこと以外は実施例1と同様の方法で二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価は表3、表4に示す通りである。
大気圧グロー放電処理を実施していないため、AFMにて測定される高さ1nm以上10nm未満の突起個数は大幅に減少し、結果、巻取り性が大幅に劣るフィルムとなった。
【0099】
(比較例2)
P1層に実質的に粒子を含有しないこと以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価は表3、表4に示す通りである。
粒子を添加していないことで地肌部に効率的に突起が形成され、AFMにて測定される高さ1nm以上10nm未満の突起個数は増加する一方で、非接触光学式粗さ測定にて測定される高さ10nm以上の突起個数が大幅に減少することで巻取り性が低下し、結果、巻取り性が大幅に劣るフィルムとなった。
【0100】
(比較例3)
実施例1より添加する粒子の平均1次粒子径を表1に記載の通り350nmとした以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価は表3、表4に示す通りである。
大径粒子を用いたことで、非接触光学式粗さ測定にて測定される高さ10nm以上の突起個数が大幅に増加し、結果、転写欠点が大幅に悪化した。
【0101】
(比較例4)
P1層の原料としてPET-1と、結晶核剤であるステアリン酸ナトリウム(結晶核剤-1)を表1に記載の量になるように配合し、大気圧グロー放電処理を行わずに逐次二軸延伸機へと導入したこと以外は実施例1と同様の方法にて二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価を表4、表5に示す通りである。
比較例4では結晶核剤を添加することで、AFMにて測定される高さ1nm以上10nm未満の突起個数が実施例1に比べ大幅に低減し、巻取り性が大幅に悪化した。
【0102】
(比較例5)
フィルム厚みを25μmとした以外は比較例1と同様の方法にて二軸配向フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの物性、表面突起形状、特性評価は表3、4に示す通りである。比較例5は比較例1と同等に巻取り性が大幅に劣るフィルムであった。比較例5のフィルムに上述した方法にてグリーンシート評価および、フォトレジスト評価を実施したところ、巻取り性が劣ることによってフィルム表面にシワやキズが生じると共にフィルムのヘイズも増加した。結果、表5、6に示す通りグリーンシート評価および、フォトレジスト評価が大幅に悪化した。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは良好な透明性、平滑性、易滑性を有し、さらに製膜・加工工程における傷つき耐性も向上させることができるため、片面に感光樹脂組成物を体積して使用されるドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルムや光学デバイス基材用フィルム、セラミックコンデンサー用離型フィルム、磁気記録媒体用フィルムとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
1.突起形成処理を施した層(P1層)
2.非接触光学式粗さ測定およびAFM測定における基準面(高さ0nm)
3.高さ1nm線(R1nm)
4.高さ10nm線(R10nm)
5.高さ60nm線(R60nm)
6.P2層
7.P3層