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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/093 20060101AFI20231031BHJP
   F16H 57/02 20120101ALI20231031BHJP
   F16H 63/20 20060101ALI20231031BHJP
   B60K 17/08 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F16H3/093
F16H57/02
F16H63/20
B60K17/08 H
B60K17/08 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020002345
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021110381
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 宏光
(72)【発明者】
【氏名】江口 拓行
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-269659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/093
F16H 57/02
F16H 63/20
B60K 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ変速ギヤを有する複数の回転軸を有し、前記回転軸が、ディファレンシャル装置のファイナルドリブンギヤに噛み合う後進用のファイナルドライブギヤを有する後進軸と、前記ファイナルドリブンギヤに噛み合う前進用のファイナルドライブギヤを有するカウンタ軸とを含んで構成される変速機構と、
シフトケースと、軸線方向に移動自在、かつ、軸線周りに回転するように前記シフトケースに設置され、前記変速機構のシフトレンジの切換えを行うシフトアンドセレクト軸とを有するシフト装置とを備え、
前記後進軸は、前記カウンタ軸よりも上方に設置され、かつ、前記カウンタ軸の軸長よりも短い軸長に形成されており、
前記シフト装置は、前記シフトアンドセレクト軸が上下方向に延び、かつ、前記後進軸と前記後進軸の軸方向に並ぶように設置されていることを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記回転軸の軸方向から見た場合に、前記シフトケースは、前記後進軸の前記変速ギヤと前記後進軸の軸方向に並んで設置されており、
前記シフトアンドセレクト軸は、その下端部が前記カウンタ軸よりも上方に位置するように設置されている特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項3】
開口部を有し、前記変速機構を収容する変速機ケースを備え、
前記シフトケースは、前記開口部の周囲の取付面に取付けられるフランジ部を有し、
前記フランジ部が前記変速機ケースの上壁よりも下方に位置するように、前記変速機ケースに前記開口部の前記取付面が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機。
【請求項4】
前記変速機ケースは、車両の前後方向で前記シフトケースの下方に位置する後壁を有し、
前記後壁の下側の部分は、前記シフトケースの後端よりも前方に窪んでおり、
前記回転軸の軸方向から見た場合に、前記ディファレンシャル装置と車輪とを連結するドライブシャフトの一部が前記シフトケースの下方に入り込んでいることを特徴とする請求項3に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
メイン軸、カウンタ軸およびリバースアイドラ軸を有するFF車両用の変速機として、特許文献1に記載されるものが知られている。
【0003】
この変速機は、メイン軸、カウンタ軸およびリバースアイドラ軸の上方に位置するようにシフトアンドセレクト軸を有する変速操作部が設置されている。シフトアンドセレクト軸は、メイン軸、カウンタ軸およびリバースアイドラ軸の軸方向と直交する前後方向に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-269659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の車両用変速機にあっては、メイン軸、カウンタ軸およびリバースアイドラ軸の上方に位置するように、変速機ケースの上部にシフトアンドセレクト軸を有する変速操作部が設置されているので、変速機がメイン軸、カウンタ軸およびリバースアイドラ軸と直交する上下前後方向に大型化するおそれがあり、改善の余地がある。
【0006】
特に、回転軸の軸長を短くして変速段を多段化するために、多軸化を図った変速機においては、回転軸の軸方向と直交する方向に変速機がより一層大型化するので、変速操作部の位置を工夫して変速機が回転軸の軸方向と直交する方向に大型化することを抑制する必要がある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、回転軸とシフト装置の位置関係を工夫することにより、回転軸の軸方向と直交する方向に関して小型化を図ることができる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、それぞれ変速ギヤを有する複数の回転軸を有し、前記回転軸が、ディファレンシャル装置のファイナルドリブンギヤに噛み合う後進用のファイナルドライブギヤを有する後進軸と、前記ファイナルドリブンギヤに噛み合う前進用のファイナルドライブギヤを有するカウンタ軸とを含んで構成される変速機構と、シフトケースと、軸線方向に移動自在、かつ、軸線周りに回転するように前記シフトケースに設置され、前記変速機構のシフトレンジの切換えを行うシフトアンドセレクト軸とを有するシフト装置とを備え、前記後進軸は、前記カウンタ軸よりも上方に設置され、かつ、前記カウンタ軸の軸長よりも短い軸長に形成されており、前記シフト装置は、前記シフトアンドセレクト軸が上下方向に延び、かつ、前記後進軸と前記後進軸の軸方向に並ぶように設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、回転軸とシフト装置の位置関係を工夫することにより、回転軸の軸方向と直交する方向に関して車両用変速機の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の左側面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の正面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の後面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を左後斜め上方から見た図であり、シフトユニット、減速機ケースおよび減速機カバーを取り外した状態を示す。
図5図5は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースを左後斜め上方から見た図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の軸配置を示す左側面図であり、レフトケースが装着されていない状態を示す。
図7図7は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の動力伝達系の展開図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の断面図であり、後進軸の軸線を通る水平断面図である。
図9図9は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の断面図であり、シフトアンドセレクト軸を通る回転軸の軸方向に垂直な断面図である。
図10図10は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の軸配置を示す左側面図であり、シフト装置と後進軸等との位置関係を示す図である。
図11図11は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のシフト装置の左側面図である。
図12図12は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のシフト装置の後面図である。
図13図13は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のシフト装置の正面図である。
図14図14は、図12のXIV-XIV方向矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、それぞれ変速ギヤを有する複数の回転軸を有し、前記回転軸が、ディファレンシャル装置のファイナルドリブンギヤに噛み合う後進用のファイナルドライブギヤを有する後進軸と、ファイナルドリブンギヤに噛み合う前進用のファイナルドライブギヤを有するカウンタ軸とを含んで構成される変速機構と、シフトケースと、軸線方向に移動自在、かつ、軸線周りに回転するように前記シフトケースに設置され、変速機構のシフトレンジの切換えを行うシフトアンドセレクト軸とを有するシフト装置とを備え、後進軸は、カウンタ軸よりも上方に設置され、かつ、カウンタ軸の軸長よりも短い軸長に形成されており、シフト装置は、シフトアンドセレクト軸が上下方向に延び、かつ、後進軸の軸方向に並ぶように設置されている。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、回転軸とシフト装置の位置関係を工夫することにより、回転軸の軸方向と直交する方向に関して車両用変速機の小型化を図ることができる。
【実施例
【0013】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
図1から図14は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。図1から図14において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0014】
まず、構成を説明する。
図1において、ハイブリッド車両(以下、単に車両という)1は、車体2を備えており、車体2は、ダッシュパネル3によって前側のエンジンルーム2Aと後側の車室2Bとに仕切られている。
【0015】
エンジンルーム2Aには変速機4が設置されており、変速機4は、前進6速、後進1速の変速段を有する。変速機4は、本発明における車両用変速機を構成する。
【0016】
図2において、変速機4には内燃機関を構成するエンジン20が連結されている。変速機4は変速機ケース5を備えており、変速機ケース5は、エンジン20の側から順に、ライトケース6、レフトケース7、減速機ケース8、減速機カバー9、および、パーキングカバー42(図1参照)を有する。各ケースやカバーは、左右方向に垂直な面にて結合されている。つまり、各ケースやカバーの合わせ面は、左右方向に垂直な面に形成されている。
【0017】
エンジン20は、ライトケース6に連結されている。エンジン20は、図示しないクランク軸を有し、クランク軸は、車両1の幅方向(左右方向、以下、単に車幅方向という)に延びるように設置されている。すなわち、本実施例のエンジン20は、横置きエンジンから構成されており、本実施例の車両1は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車両である。
【0018】
ライトケース6は、右側端部がエンジン20に連結される周壁、および、周壁の左側端部に架設設置された仕切壁6W(図6参照)を有し、右側が開口した形状のケースである。仕切壁6Wは、変速機4の後部にディファレンシャル装置17(図7参照)を設置するために、前部に比べて後部は右側に膨らんでディファレンシャル装置17の収容空間を形成している。レフトケース7は、エンジン20と反対側、すなわち、ライトケース6の左側に連結されている。図6に示すように、ライトケース6の仕切壁6Wの外周縁にはフランジ部6Aが形成されている。
【0019】
レフトケース7は、図8に示すように、右側端部がライトケース6に連結される周壁、および、周壁の左側端部に架設設置された左側壁7Kを有し、右側が開口した形状のケースである。レフトケース7の周壁は、車両1へ搭載した状態で上側となる上壁7E、車両1へ搭載した状態で後側となる後壁7B、車両1へ搭載した状態で前側となる前壁、車両1へ搭載した状態で下側となる下壁を有している。
【0020】
図2に示すように、レフトケース7の周壁の右端部にはフランジ部7Aが形成されている。つまり、レフトケース7の右端部はその全体がフランジ部7Aとなっており、ライトケース6の左側に連結される合わせ面となっているので、車幅方向でレフトケース7の右端部は全て同じ位置となっている。
【0021】
これに対して、レフトケース7の左端部は、車幅方向で、後部が前部に比較してライトケース6側に位置している。このため、図4図5図8に示すように、レフトケース7の左側壁7Kは、前側の第1の左壁部7Cと、後側の第2の左壁部7Dとを有する。
【0022】
ライトケース6の仕切壁6Wとレフトケース7の左側壁7Kは、左右方向に略垂直な面となっており、レフトケース7の左側壁7Kは、ライトケース6の仕切壁6Wと車幅方向で対向している。そして、レフトケース7の左側壁7Kとライトケース6の仕切壁6Wの間にはギヤ室21が形成されている(図7参照)。
【0023】
図3に示すように、フランジ部7Aにはボルト10Aが挿入されるボス部7aが設けられており、ボス部7aは、フランジ部7Aに沿って複数設けられている。
【0024】
フランジ部6Aにはボス部7aに車幅方向で合致する複数のボス部6aが形成されており、ボルト10Aによってフランジ部6Aのボス部6aとフランジ部7Aのボス部7aを締結することで、ライトケース6とレフトケース7が締結されて一体化されている。
【0025】
仕切壁6Wの右側に位置するライトケース6の内部空間には、図示しないクラッチが収容されている。ライトケース6とレフトケース7にて形成されるギヤ室21には、図7に示す主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15およびディファレンシャル装置17が収容されている。各軸とは、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14および後進軸15を示し、これら各軸は、本発明の回転軸を構成する。
【0026】
主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15およびディファレンシャル装置17は、車幅方向(左右方向)に沿って平行に設置されている。また、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、およびカウンタ軸14は、ライトケース6の仕切壁6Wとレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)に架設されている。後進軸15とディファレンシャル装置17は、ライトケース6の仕切壁6Wとレフトケース7の左側壁7K(第2の左壁部7D)に架設されている。
【0027】
図7に示すように、主入力軸11の右側部分は、仕切壁6Wを貫通して仕切壁6Wの右側に突出し、クラッチに接続されている。主入力軸11は、仕切壁6Wを貫通する部分で玉軸受22Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。そして、主入力軸11の左端部11fは、玉軸受22Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0028】
アイドル軸12の右端部12rは、玉軸受23Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。そして、アイドル軸12の左端部12fは、玉軸受23Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0029】
副入力軸13の右端部13rは、玉軸受24Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。そして、副入力軸13の左端部13fは、玉軸受24Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0030】
カウンタ軸14の右端部14rは、円錐ころ軸受25Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。そして、カウンタ軸14の左端部14fは、円錐ころ軸受25Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0031】
図8に示すように、後進軸15の右端部15rは、玉軸受26Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの軸受支持部6Rに回転自在に支持されており、後進軸15の左端部15fは、玉軸受26Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第2の左壁部7D)の軸受支持部7Rに回転自在に支持されている。
【0032】
以上説明した通り、図4図5図8に示すように、レフトケース7の左側壁7Kは、フランジ部7Aに対してライトケース6から離れる方向に位置する第1の左壁部7Cと、その後側に設置されフランジ部7Aに対してライトケース6から離れる方向に位置し、かつ、第1の左壁部7Cのよりもライトケース6側に位置する第2の左壁部7Dとを有している。
【0033】
主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14の左端部11f、12f、13f、14fは、第1の左壁部7Cの軸受支持部に支持されており、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14よりも軸長の短い後進軸15の左端部15fとディファレンシャル装置17は、第2の左壁部7Dの軸受支持部(軸受支持部7Rを含む)に支持されている。つまり、第2の左壁部7Dは、少なくとも後進軸15およびディファレンシャル装置17の左側に位置するレフトケース7の左側壁7Kである。
【0034】
ここで、後進軸15を主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14よりも短い軸長に形成できるのは、後進軸15に設置されるギヤが主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14に設置されるギヤよりも少なく、後進ギヤ15Aおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bをエンジン20側に寄せることが可能であるためである。
【0035】
図7に示すように、主入力軸11は、1速段用の入力ギヤ11A、2速段用の入力ギヤ11B、3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび4速/6速段用の入力ギヤ11Dを有する。
【0036】
1速段用の入力ギヤ11Aと2速段用の入力ギヤ11Bは、主入力軸11に一体に形成されており、主入力軸11と一体で回転する。3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび4速/6速段用の入力ギヤ11Dは、主入力軸11にスプライン嵌合されており、主入力軸11と一体で回転する。
【0037】
入力ギヤ11A、11B、11C、11Dは、入力ギヤ11Aから入力ギヤ11Dに向かうに従って径が大きくなっている。また、入力ギヤ11A、11B、11C、11Dは、エンジン20側から順に設置されている。軸方向の位置で、入力ギヤ11Aと11Bは、カウンタ軸14に後述する同期装置31が設置できるように離れて設置されている。
【0038】
軸方向の位置で、入力ギヤ11Bと入力ギヤ11Cは、その間にカウンタ軸14に後述するリダクションドリブンギヤ14Eが設置できるように離れて設置されている。軸方向の位置で、入力ギヤ11Cと入力ギヤ11Dは、カウンタ軸14に後述する同期装置32やアイドル軸12に後述する同期装置33が設置できるように離れて設置されている。
【0039】
カウンタ軸14は、1速段用のカウンタギヤ14A、2速段用のカウンタギヤ14B、5速段用のカウンタギヤ14C、6速段用のカウンタギヤ14D、リダクションドリブンギヤ14Eおよび前進用のファイナルドライブギヤ14Fを有する。
【0040】
カウンタギヤ14A、14B、14C、14Dは、ニードル軸受14a、14b、14c、14dを介してカウンタ軸14に支持されている遊転ギヤであり、カウンタ軸14と相対回転自在となっている。
【0041】
リダクションドリブンギヤ14Eは、カウンタ軸14にスプライン嵌合されており、カウンタ軸14と一体で回転する。前進用のファイナルドライブギヤ14Fは、カウンタ軸14に一体に形成されており、カウンタ軸14と一体で回転する。
【0042】
カウンタギヤ14A、14B、14C、14Dは、カウンタギヤ14Aからカウンタギヤ14Dに向かうに従って径が小さくなっており、それぞれ同じ変速段を構成する入力ギヤ11Aから入力ギヤ11Dに噛み合っている。
【0043】
また、カウンタギヤ14A、14B、14C、14D、リダクションドリブンギヤ14E、ファイナルドライブギヤ14Fは、エンジン20側から順に、ファイナルドライブギヤ14F、カウンタギヤ14A、14B、リダクションドリブンギヤ14E、カウンタギヤ14C、14Dの順に設置されている。
【0044】
アイドル軸12は、3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bおよびリダクションドライブギヤ12Cを有する。リダクションドライブギヤ12Cは、4速段用のアイドルギヤ12Bに対して3速段用のアイドルギヤ12Aの反対側に位置している。
【0045】
3速段用のアイドルギヤ12Aおよび4速段用のアイドルギヤ12Bは、ニードル軸受12a、12bを介してアイドル軸12に支持されている遊転ギヤであり、アイドル軸12と相対回転自在となっている。
【0046】
リダクションドライブギヤ12Cは、主入力軸11に設けられた2速段用の入力ギヤ11Bと軸方向で同じ位置となるように、アイドル軸12にスプライン嵌合されており、アイドル軸12と一体で回転する。3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bおよびリダクションドライブギヤ12Cは、エンジン20側から順に、リダクションドライブギヤ12C、3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bの順に設置されている。
【0047】
軸方向の位置で、リダクションドライブギヤ12Cと3速段用のアイドルギヤ12Aは、その間に副入力軸13に設置される後述するリダクションドライブギヤ13Bの外周縁が入り込むことができるように離れて設置されている。
【0048】
3速段用のアイドルギヤ12Aは、3速/5速段用の入力ギヤ11Cに噛み合っている。4速段用のアイドルギヤ12Bは、3速段用のアイドルギヤ12Aよりも小径に形成されており、4速/6速段用の入力ギヤ11Dに噛み合っている。
【0049】
本実施例の変速機4は、3速段と5速段とが1つの3速/5速段用の入力ギヤ11Cを共用し、部品点数の削減と変速機4の小型化(軸方向の寸法の短縮)がなされている。また、4速段と6速段とが1つの4速/6速段用の入力ギヤ11Dを共用し、部品点数の削減と変速機4の小型化(軸方向の寸法の短縮)がなされている。
【0050】
さらに、3速段用のアイドルギヤ12Aと5速段用のカウンタギヤ14Cとが同一のギヤから構成されており、4速段用のアイドルギヤ12Bと6速段用のカウンタギヤ14Dが同一のギヤから構成されている。同じギヤを用いることで、生産性の向上が図られている。
【0051】
すなわち、3速段用のアイドルギヤ12Aを5速段用のカウンタギヤ14Cとして用いることが可能であり、その逆に、5速段用のカウンタギヤ14Cを3速段用のアイドルギヤ12Aとして用いることが可能である。
【0052】
また、4速段用のアイドルギヤ12Bを6速段用のカウンタギヤ14Dとして用いることが可能であり、その逆に、6速段用のカウンタギヤ14Dを4速段用のアイドルギヤ12Bとして用いることが可能である。
【0053】
副入力軸13は、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびダンパ機構16を有する。リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびダンパ機構16は、エンジン20側から順に、ダンパ機構16、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bの順に設置されている。
【0054】
リダクションドリブンギヤ13Aは、リダクションドライブギヤ12Cよりも大径に形成されており、リダクションドライブギヤ12Cに噛み合っている。リダクションドリブンギヤ13Aは、ダンパ機構16で許容される範囲内で副入力軸13と相対回転自在に、副入力軸13に支持されている。
【0055】
リダクションドライブギヤ13Bは、リダクションドリブンギヤ13Aよりも大径で、かつ、リダクションドリブンギヤ14Eよりも小径に形成されており、リダクションドリブンギヤ14Eに噛み合っている。リダクションドライブギヤ13Bは、副入力軸13にスプライン嵌合されており、副入力軸13と一体で回転する。
【0056】
すなわち、リダクションドリブンギヤ14Eは、リダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13Aおよびリダクションドライブギヤ13Bよりも大径に形成されている。このため、3速段と4速段とにおいて、アイドル軸12から副入力軸13を介してカウンタ軸14に伝達される動力は、5速段と6速段に比べて減速される。
【0057】
なお、減速比に関し、アイドル軸12に設置されたアイドルギヤ12Aとアイドルギヤ12Bを用いる変速段の間に、カウンタ軸14に設置されたカウンタギヤ14Cを用いる変速段を設定することも可能であるが、後述する同期装置32、33を動作させる作動機構が複雑となるため、本実施例では同期装置32、33が連続する変速段を切り替えるようにしている。
【0058】
本実施例のリダクションドライブギヤ12Cとリダクションドリブンギヤ13Aは、第1のリダクションギヤ対を構成しており、リダクションドライブギヤ13Bとリダクションドリブンギヤ14Eは、第2のリダクションギヤ対を構成している。すなわち、変速機4は、2組のリダクションギヤ対を有する。
【0059】
リダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eは、それぞれが設置される各軸の軸方向の略中央部に設置されている。軸方向で、第1のリダクションギヤ対は、第2のリダクションギヤ対のエンジン20側に設置され、入力ギヤ11B、カウンタギヤ14Bと同じ位置に設置されている。
【0060】
リダクションドリブンギヤ14Eの外周部の一部は、主入力軸11の軸方向で2速段用の入力ギヤ11Bと3速/5速段用の入力ギヤ11Cの間に入り込んでいる。リダクションドライブギヤ13Bの外周部の一部は、アイドル軸12の軸方向でリダクションドライブギヤ12Cと3速段用のアイドルギヤ12Aの間に入り込んでいる。
【0061】
このため、大径のリダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを用いても主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14の軸間距離を短縮でき、変速機ケース5の小型化を図ることができる。この結果、変速機4の小型化を図ることができる。
【0062】
ダンパ機構16は、外筒部材16Aと、ゴム等の弾性体16Bと、内筒部材16Cとを有する。
【0063】
内筒部材16Cは、外筒部材16Aよりも小径に形成されており、外筒部材16Aの内径側に設置されている。つまり、軸方向で、内筒部材16Cは、外筒部材16Aと同じ位置に設置されている。内筒部材16Cは、副入力軸13にスプライン嵌合されており、副入力軸13と一体で回転する。
【0064】
弾性体16Bは、外筒部材16Aの内径と内筒部材16Cの外径の間に設置されており、外周面と内周面がそれぞれ外筒部材16Aと内筒部材16Cに固定されている。つまり、弾性体16Bは、径方向で外筒部材16Aと内筒部材16Cの間に設置されている。
【0065】
外筒部材16Aは、弾性体16Bを収容する部位からリダクションドリブンギヤ13A側に延びる延出部を有し、延出部の内周部には内周スプライン16aが形成されている。内筒部材16Cは、弾性体16Bを取付ける部位からリダクションドリブンギヤ13A側に延びる延出部を有し、延出部には外周スプライン16cが形成されている。
【0066】
リダクションドリブンギヤ13Aは、外筒部材16Aの延出部の内径側に入り込み内筒部材16C側に延びる延出部を有し、延出部には外周スプライン13eが形成されている。そして、外周スプライン16c、13eは、外筒部材16Aの内周スプライン16aに嵌合されている。
【0067】
外筒部材16Aの内周スプライン16aとリダクションドリブンギヤ13Aの外周スプライン13eは、周方向の隙間が小さく形成されており、タイト(回転方向のガタが比較的少ない状態)にスプライン嵌合している。
【0068】
これに対して、外筒部材16Aの内周スプライン16aと内筒部材16Cの外周スプライン16cは、周方向の隙間が大きく形成されており、ルーズ(回転方向のガタが比較的多い状態)にスプライン嵌合している。つまり、外筒部材16Aと内筒部材16Cとは、多少の相対回転が可能な状態にスプライン嵌合している。
【0069】
ダンパ機構16は、副入力軸13とリダクションドリブンギヤ13Aとの間の動力伝達を行うが、外筒部材16Aの内周スプライン16aと内筒部材16Cの外周スプライン16cの上記したスプライン嵌合により、異なる動力伝達経路を達成可能となっている。
【0070】
回転方向で、内周スプライン16aと外周スプライン16cが当接しない状態では弾性体16Bを介する動力伝達となり、内周スプライン16aと外周スプライン16cが当接する状態では内周スプライン16aと外周スプライン16cを介した動力伝達が可能となっている。
【0071】
つまり、ダンパ機構16は、伝達する駆動力が比較的小さい場合、弾性体16Bを介する動力伝達を行い、伝達する駆動力が比較的大きい場合、内周スプライン16aと外周スプライン16cが当接して内周スプライン16aと外周スプライン16cを介した動力伝達を行う。弾性体16Bは、微小なトルク変動(回転変動)を吸収して、歯打ち音等を抑制することができる。
【0072】
後進軸15は、後進ギヤ15Aおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bを有する。後進ギヤ15Aは、ニードル軸受15aを介して後進軸15に支持されており、後進軸15と相対回転自在となっている。後進ギヤ15Aは、1速段用のカウンタギヤ14Aに噛み合っている。
【0073】
後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、後進軸15に一体に形成されており、後進軸15と一体で回転する。後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。
【0074】
カウンタ軸14には同期装置31が設けられており、同期装置31は、カウンタ軸14の軸方向で1速段用のカウンタギヤ14Aと2速段用のカウンタギヤ14Bの間に設置されている。同期装置31は、ハブ31A、スリーブ31Bおよびシンクロナイザリング31C、31Dを備えている。
【0075】
ハブ31Aの内周面は、カウンタ軸14にスプライン嵌合しており、ハブ31Aは、カウンタ軸14と一体で回転する。スリーブ31Bは、ハブ31Aにスプライン嵌合されており、カウンタ軸14の軸方向に移動自在となっている。
【0076】
スリーブ31Bは、シフト操作によって変速段が1速段または2速段にシフトされると、中立位置からシフトフォーク57A(図8参照)によって1速段用のカウンタギヤ14A側または2速段用のカウンタギヤ14B側に移動される。なお、図示したスリーブ31Bの位置は、中立位置である。
【0077】
例えば、自動によるシフト操作が行われる場合には、スリーブ31Bは、後述するシフトユニット50によって駆動される。シフトユニット50は、運転者によって操作される図示しないシフトレバーがドライブレンジにシフトされた状態あるいはリバースレンジにシフトされた状態において、予めスロットル開度と車速とをパラメータとして設定された変速マップに基づいて後述するシフト装置72のシフトアンドセレクト軸59を操作し、シフトアンドセレクト軸59を介して同期装置31および後述する同期装置32、33、34を操作して変速段の制御を行う。
【0078】
スリーブ31Bの内周面にはスプライン31a、31bが形成されている。1速段用のカウンタギヤ14Aにはスプライン31aに嵌合するスプライン14gが形成されており、2速段用のカウンタギヤ14Bにはスプライン31bに嵌合するスプライン14hが形成されている。
【0079】
スリーブ31Bが中立位置から1速段用のカウンタギヤ14A側に移動すると、スリーブ31Bのスプライン31aが1速段用のカウンタギヤ14Aのスプライン14gに嵌合することにより、スリーブ31Bを介して1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14に連結され、1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14と一体で回転する。
【0080】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11Aおよび1速段用のカウンタギヤ14Aを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0081】
スリーブ31Bが中立位置から2速段用のカウンタギヤ14B側に移動すると、スリーブ31Bのスプライン31bが2速段用のカウンタギヤ14Bのスプライン14hに嵌合することにより、スリーブ31Bを介して2速段用のカウンタギヤ14Bがカウンタ軸14とに連結され、2速段用のカウンタギヤ14Bがカウンタ軸14と一体で回転する。
【0082】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から2速段用の入力ギヤ11Bおよび2速段用のカウンタギヤ14Bを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0083】
ここで、同期装置によって1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14に連結されることは、1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14と一体で回転するようにカウンタ軸14に直結されることである。以後、ギヤが回転軸に連結されるという表現は、ギヤが回転軸と一体で回転するように回転軸に直結されることを意味する。
【0084】
シンクロナイザリング31Cは、ハブ31Aと1速段用のカウンタギヤ14Aとの間に設けられており、外周面にスリーブ31Bのスプライン31aに嵌合するスプラインが形成されている。
【0085】
シンクロナイザリング31Dは、ハブ31Aと2速段用のカウンタギヤ14Bとの間に設けられており、外周面にスリーブ31Bのスプライン31bに嵌合するスプラインが形成されている。
【0086】
シンクロナイザリング31Cは、スリーブ31Bが中立位置から1速段のカウンタギヤ14A側に移動したときに、シンクロナイザリング31Cに形成されたスプラインがスリーブ31Bのスプライン31aに係合し、1速段のカウンタギヤ14Aに摩擦接触することにより、1速段用のカウンタギヤ14Aの回転をスリーブ31Bの回転(カウンタ軸14の回転)に同期させる。
【0087】
シンクロナイザリング31Dは、スリーブ31Bが中立位置から2速段のカウンタギヤ14B側に移動したときに、シンクロナイザリング31Dに形成されたスプラインがスリーブ31Bのスプライン31bに係合し、2速段のカウンタギヤ14Bに摩擦接触することにより、2速段用のカウンタギヤ14Bの回転をスリーブ31Bの回転(カウンタ軸14の回転)に同期させる。
【0088】
このように本実施例の同期装置31は、1速段用のカウンタギヤ14Aと2速段用のカウンタギヤ14Bを選択的にカウンタ軸14に連結し、連結時に同期動作を行うことで変速ショックや異音が発生することを抑制する。
【0089】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11Aおよび1速段用のカウンタギヤ14Aを介してカウンタ軸14に伝達される。また、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11Bおよび2速段用のカウンタギヤ14Bを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0090】
カウンタ軸14には更に、上記した同期装置31と同様の働きをする同期装置32が設けられており、同期装置32は、カウンタ軸14の軸方向で5速段用のカウンタギヤ14Cと6速段用のカウンタギヤ14Dの間に設置されている。
【0091】
アイドル軸12には上記した同期装置31、32と同様の働きをする同期装置33が設置されており、同期装置33は、アイドル軸12の軸方向で3速段用のアイドルギヤ12Aと4速段用のアイドルギヤ12Bの間に設置されている。
【0092】
シフト操作によって3速段にシフトされると、同期装置33は、3速段のアイドルギヤ12Aをアイドル軸12に連結する。
【0093】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび3速段用のアイドルギヤ12Aを介してアイドル軸12に伝達される。
【0094】
シフト操作によって4速段にシフトされると、同期装置33は、4速段用のアイドルギヤ12Bをアイドル軸12に連結する。
【0095】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から4速/6速段用の入力ギヤ11Dおよび4速段用のアイドルギヤ12Bを介してアイドル軸12に伝達される。
【0096】
アイドル軸12にエンジン20の動力が伝達されると、エンジン20の動力は、アイドル軸12からリダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13A、ダンパ機構16、副入力軸13、リダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0097】
これにより、3速段および4速段において、アイドル軸12から副入力軸13を介してカウンタ軸14に動力が伝達されるとともに、伝達される動力(回転速度)が減速される。
【0098】
シフト操作によって5速段にシフトされると、同期装置32は、5速段用のカウンタギヤ14Cをカウンタ軸14に連結する。
【0099】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび5速段用のカウンタギヤ14Cを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0100】
シフト操作によって6速段にシフトされると、同期装置32は、6速段用のカウンタギヤ14Dをカウンタ軸14に連結する。
【0101】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から4速/6速段用の入力ギヤ11Dおよび6速段用のカウンタギヤ14Dを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0102】
後進軸15には同期装置34が設置されている。シフト操作によって後進段にシフトされると、同期装置34は、後進ギヤ15Aを後進軸15に連結し、後進ギヤ15Aを後進軸15と一体で回転させる。なお、後進軸15には、エンジン20側から順に、後進用のファイナルドライブギヤ15B、後進ギヤ15A、同期装置34の順に設置されている。
【0103】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段の入力ギヤ11A、1速段用のカウンタギヤ14Aおよび後進ギヤ15Aを介して後進軸15に伝達される。
【0104】
同期装置32、33、34は、所謂、シングルコーン式であり、同期装置31は、所謂、トリプルコーン式であるが、同期装置32、33、34は、同期装置31と同様の同期動作を行うので、具体的な説明は省略する。
【0105】
同期装置31は、スリーブ31Bに係合する1速/2速段用のシフトフォーク57A(図8参照)、シフトフォーク57Aが取付けられた1速/2速段用のシフタ軸57B(図8参照)、シフタ軸57Bに取付けられた図示しない1速/2速段用のシフトヨーク、シフトヨークに係合しシフトアンドセレクト軸59に取付けられたカム部材80を介してシフトアンドセレクト軸59(図9参照)に連絡されており、シフトアンドセレクト軸59によって操作される。
【0106】
同期装置32は、同期装置32のスリーブに係合する5速/6速段用のシフトフォーク58A(図8参照)、シフトフォーク58Aが取付けられた図示しない5速/6速段用のシフタ軸、シフタ軸に取付けられた図示しない5速/6速段用のシフトヨーク、シフトヨークに係合しシフトアンドセレクト軸59に取付けられたカム部材80を介してシフトアンドセレクト軸59に連絡されており、シフトアンドセレクト軸59によって操作される。
【0107】
同期装置33は、同期装置33のスリーブに係合する3速/4速段用のシフトフォーク58B(図8参照)、シフトフォーク58Bが取付けられた図示しない3速/4速段用のシフタ軸、シフタ軸に取付けられた図示しない3速/4速段用のシフトヨーク、シフトヨークに係合しシフトアンドセレクト軸59に取付けられたカム部材80を介してシフトアンドセレクト軸59に連絡されており、シフトアンドセレクト軸59によって操作される。
【0108】
同期装置34は、いずれも図示しない同期装置34のスリーブに係合する後進用のシフトフォーク、後進用のシフトフォークが取付けられた後進用のシフタ軸、後進用のシフタ軸に取付けられた後進用のシフトヨーク、後進用のシフトヨークに係合しシフトアンドセレクト軸59に取付けられたカム部材80を介してシフトアンドセレクト軸59に連絡されており、シフトアンドセレクト軸59によって操作される。
【0109】
図9に示すように、レフトケース7にはシフト装置72が取付けられており、変速機4にシフトアンドセレクト軸59が設けられている。シフトアンドセレクト軸59は、シフトユニット50に設けられた図示しないシフトアクチュエータとセレクトアクチュエータによってセレクト方向(シフトアンドセレクト軸59の軸線59Lの方向)S1とシフト方向(シフトアンドセレクト軸59の軸線59L周り)S2に操作される。なお、シフトアンドセレクト軸59の軸線59Lの方向を、単に軸線方向という。
【0110】
シフトアンドセレクト軸59の上端部には操作レバー59Aが設けられている。操作レバー59Aは、シフトユニット50のシフトアクチュエータによって操作される。操作レバー59Aがシフトアクチュエータによって操作されることにより、シフトアンドセレクト軸59がシフト方向S2に回転される。
【0111】
また、シフトユニット50のセレクトアクチュエータは、シフトアンドセレクト軸59の上端を押圧することにより、後述するリターンスプリング79の付勢力に抗してシフトアンドセレクト軸59を軸線方向(下方)に移動させる。
【0112】
このように、シフトユニット50はシフトアンドセレクト軸59を動作させ、シフトアンドセレクト軸59は、その動きでシフトレンジ(1速段から6速段および後進段)の切換えを行う。
【0113】
図7に示すように、前進用のファイナルドライブギヤ14Fおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。これにより、カウンタ軸14の動力(回転)は、前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達され、後進軸15の動力(回転)は、後進用のファイナルドライブギヤ15Bを経て、ディファレンシャル装置17に伝達される。
【0114】
ディファレンシャル装置17は、ファイナルドリブンギヤ17Aと、ファイナルドリブンギヤ17Aが外周部に取付けられたデフケース17Bと、デフケース17Bに内蔵された差動機構17Cとを有する。
【0115】
デフケース17Bの左端部には筒状部17aが設けられており、デフケース17Bの右端部には筒状部17bが設けられている。筒状部17a、17bには左右のドライブシャフト18L、18Rのそれぞれの一端部が挿通されている。
【0116】
具体的には、図1に示すように、第1の左壁部7Cには開口部7cが形成されており、左側のドライブシャフト18Lの一端部は、開口部7cを通して筒状部17aに挿通されている。右側のドライブシャフト18Rの一端部は、仕切壁6Wの図示しない開口部を通して筒状部17bに挿通されている。
【0117】
左右のドライブシャフト18L、18Rの一端部は、差動機構17Cに連結されており、左右のドライブシャフト18L、18Rの他端部は、それぞれ図示しない左右の駆動輪に連結されている。
【0118】
ディファレンシャル装置17は、エンジン20の動力を差動機構17Cによって左右のドライブシャフト18L、18Rに分配して駆動輪に伝達する。
【0119】
図2図3に示すように、レフトケース7の前方の上側にはモータ35が設置されている。モータ35は、モータケース35Aと、モータケース35Aに回転自在に支持されたモータ出力軸35B(図6図7参照)と、モータケース35Aに取付けられたモータコネクタ35Cとを有する。
【0120】
モータケース35Aの右側端部は、ブラケット36A、36Bによってライトケース6の上壁6Bと前壁6Cに取付けられている。モータケース35Aの左側端部は、減速機ケース8に取付けられている。すなわち、モータ35は、モータ出力軸35Bを左右方向に沿った状態で変速機ケース5の前方の上側に設置されている。そして、モータ35およびモータ出力軸35Bは、変速機内部に配置された軸と平行に、図6図7に示すような位置関係に配置されている。
【0121】
モータケース35Aの内部にはいずれも図示しないロータと、コイルが巻き付けられたステータとが収容されている。
【0122】
モータ35において、コイルに三相交流が供給されることにより、周方向に回転する回転磁界を発生する。ステータは、発生した磁束をロータに鎖交させることにより、モータ出力軸35Bと一体のロータを回転駆動させる。
【0123】
モータコネクタ35Cは、モータケース35Aの右側端部から上方に突出している。モータコネクタ35Cには、モータ35を駆動するための電力を供給する図示しないパワーケーブルが接続される。
【0124】
パワーケーブルは、モータコネクタ35Cに対して左側から挿入することで接続される。つまり、パワーケーブルは、モータケース35Aの上方を通過するように配索されている。モータコネクタ35Cが、モータケース35Aから上方に突出配置されることで、冠水路走行における被水を抑制するとともに、上方からの接続作業が容易となって整備性を向上させることができる。
【0125】
図7に示すように、アイドル軸12の左端部にはスプロケット取付部12Mが設けられており、スプロケット取付部12Mは、玉軸受23Bおよび左側壁7K(第1の左壁部7C)よりも外方、すなわち、レフトケース7の外方に突出している。このため、スプロケット取付部12Mは、玉軸受23Bに片持ちで支持されている。
【0126】
スプロケット取付部12Mにはスプロケット37が取付けられており、スプロケット37にはチェーン38が巻き掛けられている。チェーン38は、モータ出力軸35Bに取付けられたスプロケット35Dに巻き掛けられている。
【0127】
このため、モータ35の動力は、モータ出力軸35Bからチェーン38およびスプロケット37を介してアイドル軸12に伝達される。すなわち、アイドル軸12は、モータ35の動力が伝達される入力軸として機能する。
【0128】
図6において、モータ出力軸35Bは、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15よりも前方に設置され、更に各軸よりも上方に設置されている。
【0129】
アイドル軸12は、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15の中で最も前側に設置された軸であり、モータ出力軸35Bの後側斜め下方に設置されている。主入力軸11は、アイドル軸12の後側斜め上方に設置されており、副入力軸13は、アイドル軸12の後側斜め下方に設置されている。
【0130】
カウンタ軸14は、アイドル軸12の後方で、かつ、上下方向で主入力軸11と副入力軸13の間に設置されている。
【0131】
すなわち、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14は、主入力軸11の軸心O1とアイドル軸12の軸心O2と副入力軸13の軸心O3とカウンタ軸14の軸心O4とを結んだ仮想線L1が四角形となるようにギヤ室21に設置されている。
【0132】
そして、図6において、四角形の主入力軸11の軸心O1とアイドル軸12の軸心O2を結んだ辺に対向するように、モータ35およびモータ出力軸35Bが配置されている。詳細には、軸心O1と軸心O2を結んだ辺に対向しつつ、やや軸心O2よりにモータ35およびモータ出力軸35Bが配置されている。
【0133】
さらに、レフトケース7は、モータ35に対向する面が後述する仮想直線L3と同様に前下がりの斜めの面であって、モータ35に対向する面が仮想直線L3よりも急角度の前下がりの斜面に形成されており、モータ35に対向する面の前方にモータ35の設置空間を形成し、モータ35をより後方に配置できるようにしている。つまり、レフトケース7は、前側の上部が前側の下部に比較して後方に位置し、前側の上部の前方にモータ35の設置空間を形成している。
【0134】
アイドル軸12は、主入力軸11、副入力軸13およびカウンタ軸14よりもモータ35に接近した位置に設置している。このため、チェーン38を短くすることができ、減速機ケース8の小型化を図ることができ、変速機4の小型化を図ることができる。
【0135】
副入力軸13は、アイドル軸12に対してチェーン38の張力が作用する方向、すなわち、モータ出力軸35Bの軸心O5とアイドル軸12の軸心O2とを結んだ仮想直線L2の略延長線上に設置されている。具体的には、副入力軸13の軸心O3は、仮想直線L2に対してやや前方に位置している。
【0136】
主入力軸11、アイドル軸12および副入力軸13は、アイドル軸12の軸心O2と副入力軸13の軸心O3を結んだ仮想直線L4に対して、アイドル軸12の軸心O2と主入力軸11の軸心O1を結んだ仮想直線L3が略直角となるように設置されている。
【0137】
具体的には、主入力軸11、アイドル軸12および副入力軸13は、仮想直線L4が仮想直線L3に対して鈍角になるように設置されている。また、主入力軸11は、モータ出力軸35Bの軸心O5とアイドル軸12の軸心O2とを結んだ仮想直線L2に対して副入力軸13と反対側に設置されている。
【0138】
図6に示すように、後進軸15は、ファイナルドリブンギヤ17Aの上方で、かつ、カウンタ軸14の後側斜め上方に設置されており、軸心の位置で比較すると主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14よりも上方に設置されている。すなわち、本実施例の後進軸15は、前後方向で最も近くに設置されるカウンタ軸14よりも上方に設置されている。
【0139】
図4図5に示すように、レフトケース7の左側壁7Kには開口部7hが形成されている。開口部7hにはアイドル軸12のスプロケット取付部12Mが挿通されており、スプロケット取付部12Mは、開口部7hを通してギヤ室21から外方(左方)に突出している。図4図5では図示省略しているが、スプロケット37は、レフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)よりも左側であって、レフトケース7の外に設置されている。
【0140】
図1図2に示すように、減速機ケース8は、モータケース35Aを左方から覆うようにして図示しないボルトによってモータケース35Aとレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)に取付けられている。
【0141】
減速機ケース8は、チェーン38を収容しており、モータ出力軸35Bのスプロケット35Dとスプロケット37とに巻き掛けられるチェーン38に沿った形状に形成されている。左方向から見て、レフトケース7の前部の左側方から前方斜め上方にかけて、後部が下方となるように後側斜め下方に傾斜するように設置されている。
【0142】
減速機ケース8は、右側面のモータ出力軸35Bの挿入部とスプロケット取付部12Mの挿入部と左側は、開口しており、減速機カバー9が減速機ケース8の左側開口を閉止するようにボルト10Bによって減速機ケース8に取付けられている。
【0143】
レフトケース7の左側壁7Kには図示しない開口部が形成されている。図1に示すように、レフトケース7にはボルト10Cによってパーキングカバー42が取付けられており、パーキングカバー42によって開口部が覆われている。変速機4には図示しないパーキング装置が設置されている。
【0144】
レフトケース7の左側壁7Kからパーキングカバー42が取り外されると、作業者は、パーキング装置の交換作業やメンテナンス作業を行うことができる。
【0145】
レフトケース7は、車両1へ搭載した状態で後側の周壁となる後壁7Bを有している。図5に示すように、レフトケース7の後壁7Bの上部には開口部70が設けられており、開口部70の周囲(外周縁)には取付面71が形成されている。
【0146】
すなわち、後壁7Bは、第1の左壁部7Cから第2の左壁部7Dの間で車幅方向に延び、レフトケース7の下側の周壁となる下壁部の後端縁から上部の取付面71までを含んでおり、後壁7Bの上部で加工された取付面71に囲まれた孔が開口部70に相当する。
【0147】
図9に示すように、開口部70の周囲の取付面71は、シフトアンドセレクト軸59の軸線59Lに対して傾斜して前後方向に延び、かつ、第1の左壁部7Cから第2の左壁部7Dに向かって左右方向に延び、開口部70を取り囲むように形成さている(図5参照)。これにより、開口部70は、シフトアンドセレクト軸59の軸線59Lに対して傾斜しており、後斜め上方に向って開口している。
【0148】
本実施例のシフトアンドセレクト軸59は、軸線59Lが上下方向に延びるように設置されており、開口部70と取付面71は、シフトアンドセレクト軸59の軸線59Lに対して後方から前方になるに従って上方となるように傾斜している。つまり、図9に示すように、フランジ部74の上端部74eはシフトアンドセレクト軸59の近傍に配置され、フランジ部74の下端部74fはシフトアンドセレクト軸59から離れた位置となるように、取付面71は傾斜して配置されている。
【0149】
図4に示すように、レフトケース7にはシフト装置72が取付けられている。シフト装置72は、シフトケース73とシフトアンドセレクト軸59とを備えている。図11から図14に示すように、シフトケース73は、フランジ部74とシフトケース本体75とを有する。
【0150】
フランジ部74は、シフトアンドセレクト軸59の軸線59Lに対して傾斜して延びており、開口部70の周囲の取付面71に取付けられる。すなわち、フランジ部74は、開口部70および取付面71と平行に傾斜している。
【0151】
図13に示すように、フランジ部74には4つのボルト用孔74bと2つの嵌合孔74c、74dが設けられている。ボルト用孔74bにはボルト10I(図4参照)が挿通され、嵌合孔74c、74dにはノックピン76A、76Bが嵌合されている。
【0152】
図5に示すように、開口部70の周囲の取付面71には、ねじ孔71aと嵌合孔71b、71cが形成されている。ねじ孔71aにはボルト10I(図4参照)が螺合され、嵌合孔71b、71cにはノックピン76A、76Bが嵌合される。
【0153】
フランジ部74は、ノックピン76A、76Bがフランジ部74の嵌合孔74c、74dと取付面71の嵌合孔71b、71cに嵌合されることにより、ボルト用孔74bとねじ孔71aが合致するようにして取付面71に重ねられる。このとき、シフトケース73は、開口部70(レフトケース7)に対して移動不能となり、開口部70に対して位置ずれが抑制される。
【0154】
そして、合致するボルト用孔74bとねじ孔71aにボルト10Iを締結することにより、シフトケース73が開口部70を閉止するようにしてレフトケース7に取付けられる。
【0155】
図8図10に示すように、シフト装置72は、後進軸15の軸方向に後進軸15と並ぶように設置されている。具体的には、図10に示すように、後進軸15の軸方向(車幅方向)から見た場合に、シフト装置72と後進軸15および後進ギヤ15Aは、重なるように配置されている。
【0156】
また、図10に示すように、後進軸15の軸方向(車幅方向)から見た場合に、シフトアンドセレクト軸59は、後進ギヤ15Aと重なるように配置されている。シフトケース73は、後進軸15の軸方向に並んで設置されている。
【0157】
換言すれば、シフトケース73は、後進軸15および後進ギヤ15Aの左側に配置されている。また、軸方向の位置で、シフト装置72は、カウンタ軸14に設けられた同期装置32やアイドル軸12に設けられた同期装置33と同じ位置に設置されている。詳細には、シフトアンドセレクト軸59が、軸方向の位置で、同期装置32や同期装置33と同じ位置に設置されている。
【0158】
図9に示すように、シフトアンドセレクト軸59は、下端部59bがカウンタ軸14の上方に位置するように設置されている。つまり、後進軸15の軸方向(車幅方向)から見た場合に、シフトアンドセレクト軸59の下端部59bは、カウンタギヤの中で最も大径の1速段用のカウンタギヤ14Aの上方に位置している。
【0159】
すなわち、シフトアンドセレクト軸59の下端部59bは、前後方向で、カウンタギヤの中で最も大径の1速段用のカウンタギヤ14Aの前端から後端の間の上方に配置され、カウンタギヤ14Aからカウンタギヤ14Dおよびリダクションドリブンギヤ14Eよりも上方に位置している。
【0160】
なお、本実施例では、シフトアンドセレクト軸59の下端部59bは、カウンタギヤの中で最も大径の1速段用のカウンタギヤ14Aの上端よりも上方に配置されている。
【0161】
開口部70の取付面71は、レフトケース7の上壁7Eよりも後方に位置しており、上壁7Eよりも下方に延びている。つまり、取付面71は、左右方向に延びる取付面71の上端部がレフトケース7の上壁7Eとほぼ同等の高さに形成され、下端部は上壁7Eよりも下方に位置している。このため、シフトケース73のフランジ部74は、その大部分がレフトケース7の上壁7Eよりも下方に位置している。
【0162】
すなわち、本実施例のレフトケース7には、フランジ部74がレフトケース7の上壁7Eよりも下方に位置するように開口部70の取付面71が形成されている。そして、図9に示すように、取付面71は、取付面71の上端部に対して取付面71の下端部が後方に突出した状態に形成されている。
【0163】
なお、取付面71は後壁7Bの上側の部分であり、取付面71は斜めに配置されていることから、取付面71の上端部は取付面71の前端部であり、取付面71の下端部は取付面71の後端部となる。
【0164】
後壁7Bの下側の部分は、シフトケース73の下方に位置している。図9に示すように、後壁7Bの下側の部分(以下、単に下部7bという)は、取付面71の下端部(後端部)に対して略垂直に前下方に延びてから下方に屈曲しており、前方に窪んでいる。つまり、下部7bは、シフトケース73の後端、すなわち、フランジ部74の後端74rよりも前方に位置している。
【0165】
図9において、各軸の軸方向から見た場合に、後壁7Bの下部7bの後方には仮想線で示すようにドライブシャフト18Lの一部がシフトケース73の下方に入り込んでいる。詳細には、ドライブシャフト18Lで比較的大径となる等速ジョイント部分が、下部7bの後方でシフトケース73の下方に配置されている。つまり、シフトケース73は、ドライブシャフト18Lの上方に配置されている。
【0166】
ここで、後壁7Bの下部7bの下方に入り込むドライブシャフト18Lは、レフトケース7よりも左外方であって、デフケース17Bの筒状部17aに挿入されるドライブシャフト18Lの右端部よりも大径の部分である。
【0167】
図14に示すように、フランジ部74の上端部74eはシフトアンドセレクト軸59の近傍に配置され、フランジ部74の下端部74fはシフトアンドセレクト軸59から離れた位置に配置されている。
【0168】
フランジ部74の上端部74eに連続する上壁75Aには貫通孔74gが設けられている。貫通孔74gにはシフトアンドセレクト軸59が貫通配置されており、貫通孔74gは、シフトアンドセレクト軸59の軸線方向の上端部59a側を支持する支持部となっている。
【0169】
フランジ部74の下端部74fには下部突出部77が設けられている。下部突出部77は、フランジ部74の下端部74fからシフトアンドセレクト軸59側に水平に突出しており、下部突出部77の先端部には貫通孔77aが形成されている。貫通孔77aにはシフトアンドセレクト軸59が貫通配置されており、貫通孔77aはシフトアンドセレクト軸59の軸線方向の下端部59b側を支持する支持部となっている。
【0170】
シフトアンドセレクト軸59が貫通孔74g、77aに貫通された状態において、シフトアンドセレクト軸59は、フランジ部74に対して軸線方向に移動自在、かつ、フランジ部74に対して軸線59L周りに回転する。
【0171】
すなわち、シフトアンドセレクト軸59は、シフトケース73に対して軸線方向に移動自在、かつ、シフトケース73に対して軸線59L周りに回転するように設置されている。
【0172】
シフト装置72は、フランジ部74が開口部70の取付面71に当接した状態でシフトアンドセレクト軸59の一部が開口部70を通過してレフトケース7の内部に入り込んでいる。
【0173】
図11に示すように、シフトケース本体75は、フランジ部74からシフトアンドセレクト軸59と反対側となる後方側に膨出している。
【0174】
具体的には、シフトケース本体75は、フランジ部74から取付面71に対して斜め方向(車両搭載状態で水平方向)に延び、シフトアンドセレクト軸59を軸線方向に移動自在、かつ、軸線59L周りに回転自在に支持する上壁75Aを有する。つまり、シフトケース本体75は、フランジ部74からシフトアンドセレクト軸59に垂直に延びる上壁75Aを有する。
【0175】
シフトケース本体75は、フランジ部74から取付面71に対して斜め方向(車両搭載状態で上方)に延び、その上端が上壁75Aの先端(後端)に連結される縦壁75Bを有する。
【0176】
図11図12に示すように、シフトケース本体75は、上壁75Aの左端部75aと縦壁75Bの左端部75bとフランジ部74とを連結する左側壁75Cを有する。シフトケース本体75は、上壁75Aの右端部75cと縦壁75Bの右端部75dとフランジ部74とを連結する右側壁75D(図12参照)を有する。
【0177】
これに加えて、フランジ部74、上壁75Aおよび縦壁75Bは、各軸の延びる方向(車幅方向)に沿って延びているとともに、左側壁75Cおよび右側壁75Dは、各軸の延びる方向と直交する前後方向に沿って延びており、シフトケース本体75は、車幅方向から見て三角形状に形成されている。
【0178】
図11図14に示すように、シフトケース73には筒状部78が設けられている。筒状部78は、フランジ部74の上端部74eとシフトケース本体75の上壁75Aからシフトアンドセレクト軸59の軸線方向の上方に突出している。
【0179】
筒状部78にはリターンスプリング79が収容されている。シフトアンドセレクト軸59の上端部59aにはばね受け59Bが設けられており、リターンスプリング79は、ばね受け59Bと筒状部78の底部との間に設けられている。
【0180】
詳細には、ばね受け59Bは、シフトアンドセレクト軸59の上端部に取付けられた操作レバー59Aの下面に当接しており、リターンスプリング79の力を操作レバー59Aを介してシフトアンドセレクト軸59に伝える。
【0181】
リターンスプリング79は、シフトアンドセレクト軸59を軸線方向で上方側に付勢している。図9図14に示すように、リターンスプリング79によってシフトアンドセレクト軸59が最も上方に付勢された位置が変速制御の基本の位置である。
【0182】
シフトアンドセレクト軸59は、ニュートラル位置からセレクト方向S1に変速段に応じた距離だけ下方に段階的に移動し、各停止位置(各シフトヨークの位置)で右周りまたは左周りのシフト方向S2に回転することにより、所定の変速段を成立させる。
【0183】
図14に示すように、シフトアンドセレクト軸59にはカム部材80が固定されており、カム部材80は、シフトアンドセレクト軸59と一体で移動する。
【0184】
カム部材80は、縦壁75B側に面して配置されシフトアンドセレクト軸59に沿うように延びるカム面80Aと、カム面80Aの反対側に位置する面からシフトアンドセレクト軸59の軸線方向と直交する方向(詳細には、シフトアンドセレクト軸59の径方向で前方)に突出するフィンガー部80Bと、左側壁75C側に面して配置されシフトアンドセレクト軸59に沿うように延びる面に形成されたガイド溝80C(図13参照)とを有する。
【0185】
フィンガー部80Bは、1速/2速段用のシフトヨーク、3速/4速段用のシフトヨーク、5速/6速段用および後進用のシフトヨークの内いずれか1つのシフトヨークに入り込み、シフトアンドセレクト軸59の軸線59L周りに回転することによって、これらシフトヨークをシフト方向(各軸の軸方向)に移動させる。
【0186】
シフトアンドセレクト軸59にはカム部材80を覆うようにインタロックプレート81が取付けられており、インタロックプレート81は、シフトアンドセレクト軸59と一体で軸線方向に移動し、かつ、シフトアンドセレクト軸59と相対回転する。
【0187】
図13に示すように、インタロックプレート81には横方向に延びるスリット81aが形成されている。フィンガー部80Bの先端部80bは、スリット81a内に配置される。インタロックプレート81とフィンガー部80Bの先端部80bは、前述の4つのシフトヨークに入り込み、先端部80bは4つのシフトヨークのいずれか1つに嵌合する。
【0188】
シフトアンドセレクト軸59の軸線59L周りに回転することによって、先端部80bはこのシフトヨークをシフト方向(各軸の軸方向)に移動させる。
【0189】
このとき、シフトヨークの残り3つは、インタロックプレート81に接触して、フィンガー部80Bに係合しない。すなわち、シフトヨークの残り3つは、シフト方向に移動することが阻止され、位置を維持する。
【0190】
シフト装置72は、シフトアンドセレクト軸59がセレクト方向S1に移動して、フィンガー部80Bが嵌合する1つのシフトヨークを選択する。
【0191】
その後、シフトアンドセレクト軸59がシフト方向S2に回転すると、フィンガー部80Bが嵌合した1つのシフトヨークを移動させることでシフタ軸を軸方向に移動させ、シフタ軸に連結されるシフトフォークが、同期装置31から同期装置34のいずれか1つのスリーブを各軸の軸線方向に移動させる。これにより、動力伝達経路の切換え、すなわち、変速段の切換えが行われる。
【0192】
カム部材80の上下面は、インタロックプレート81の上下の内面に接触しており、インタロックプレート81とカム部材80とはシフトアンドセレクト軸59の軸線方向に相対移動しない。
【0193】
カム部材80の外周面に形成されたガイド溝80Cは、シフトパターンと同様の配列となる複数の溝から構成されており、ガイド溝80Cにはガイドピン82が挿入されている。
【0194】
図11に示すように、フランジ部74の上端部74eと下端部74fの間には中間突出部88が設けられている。中間突出部88は、シフトケース本体75の縦壁75Bからシフトアンドセレクト軸59側に突出している。
【0195】
ガイドピン82は、中間突出部88の突出方向の先端部に取付けられており、取付面71に対してシフトアンドセレクト軸59側に設置されている。つまり、ガイドピン82は、開口部70内(レフトケース7の内部)に入り込んでいる。
【0196】
ガイドピン82は、軸線方向がシフトアンドセレクト軸59の軸線59Lに対して直交するように設置されており、ガイド溝80Cに挿入されている。詳細には、ガイドピン82は、その軸線方向が回転軸の軸方向に平行となるようにシフトケース73に設置されている。
【0197】
ガイドピン82は、シフトアンドセレクト軸59がセレクト方向S1に移動するとともにシフト方向S2に回転するのに伴って移動するカム部材80に形成されたガイド溝80Cにその先端が挿入配置されている。
【0198】
このため、ガイド溝80C(カム部材80)は、ガイドピン82によってその移動方向が規制され、変速段の切換え終了後にガイドピン82がガイド溝80Cの壁面に当接してそれ以上のカム部材80の回動を阻止する。
【0199】
これにより、シフトアンドセレクト軸59のセレクト方向S1およびシフト方向S2への移動量(移動可能位置)が規制されて、シフトアンドセレクト軸59のセレクト方向S1およびシフト方向S2への移動に関して不適切な位置となることが防止される。
【0200】
ニュートラル状態において、シフトアンドセレクト軸59は、リターンスプリング79によって上方に付勢されている。このとき、ガイドピン82がガイド溝80Cに当接している。これにより、シフトアンドセレクト軸59がニュートラル位置よりも上方に移動することが規制される。
【0201】
中間突出部88に対向するインタロックプレート81の壁部には上下方向に切り欠かれた切り欠き81bが形成されており(図11参照)、ガイドピン82は、切り欠き81bを通してガイド溝80Cに挿入されている。
【0202】
切り欠き81bの幅は、ガイドピン82の直径よりも僅かに大きい幅に形成されており、インタロックプレート81がシフトアンドセレクト軸59の軸線59L周りに回転しようとすると、切り欠き81bの周囲のインタロックプレート81がガイドピン82に当接する。これにより、インタロックプレート81の回転が規制され、インタロックプレート81の回動が阻止される。
【0203】
また、切り欠き81bの長さは、シフトアンドセレクト軸59が軸線方向に移動するときに障害とならない長さに形成されている。シフトアンドセレクト軸59が軸線方向に移動するときは、インタロックプレート81は、切り欠き81b(インタロックプレート81)がガイドピン82に沿って移動することにより、インタロックプレート81はガイドピン82によって案内される。
【0204】
図14に示すように、シフトアンドセレクト軸59の軸線方向と直交する方向において、カム部材80のカム面80Aと対向するシフトケース本体75(縦壁75B)には筒状のボス部75Eが設けられている。
【0205】
ボス部75Eにはディテント部材83が取付けられている。ディテント部材83は、ボス部75Eに取付けられた筒状体83Aと、筒状体83Aに収容された可動体83Bと、筒状体83Aに収容され、可動体83Bをカム面80Aに押圧するコイルスプリング83Cとを有する。
【0206】
ディテント部材83は、コイルスプリング83Cによって可動体83Bとカム面80Aの間に押し付け力を作用させることによって、カム部材80(シフトアンドセレクト軸59)がセレクト方向S1およびシフト方向S2に移動するときの操作力を付与する。
【0207】
図14に示すように、シフトケース本体75の内部にはブリーザプレート84が設けられている。ブリーザプレート84は、プレート本体84A、下側突出部84Bおよび上側突出部84Cを有する。
【0208】
プレート本体84Aは、縦壁75Bとシフトアンドセレクト軸59の間に配置され、シフトケース本体75の上壁75Aの近傍から下部突出部77の近傍まで延びており、シフトケース本体75の内部で縦壁75Bを覆っている。プレート本体84Aは、ボルト10J(図13参照)によってシフトケース本体75(詳細には、縦壁75B)に締結されている。
【0209】
下側突出部84Bと上側突出部84Cは、ボス部75Eを挟んで上下方向に対向するように配置されており、プレート本体84Aからシフトケース本体75の縦壁75Bに向かって水平に突出している。
【0210】
下側突出部84Bと上側突出部84Cの突出方向の先端部は、シフトケース本体75の縦壁75Bの内面に沿った形状となっている。上側突出部84Cの突出方向の先端部とシフトケース本体75の縦壁75Bとの間には僅かな隙間が形成されている。同様に、下側突出部84Bの突出方向の先端部とシフトケース本体75の縦壁75Bとの間には僅かな隙間が形成されている。
【0211】
プレート本体84Aは、前後方向でシフトケース本体75の縦壁75Bとシフトアンドセレクト軸59の間で上下方向に延びるように設置されている。すなわち、ブリーザプレート84は、シフトアンドセレクト軸59(ギヤ室21側)よりもシフトケース本体75の縦壁75B側に設置されている。さらに、プレート本体84Aは、ディテント部材83が貫通しており、カム部材80とボス部75Eの間に設置されている。
【0212】
シフトケース本体75の内部にはプレート本体84Aと、シフトケース本体75の上壁75Aと、縦壁75Bと、左側壁75Cと、右側壁75Dとによって囲まれる主ブリーザ室85が形成されている。
【0213】
ブリーザプレート84とシフトケース本体75の間(詳細には、下側突出部84Bと縦壁75Bとの間)には隙間が形成されており、主ブリーザ室85は、隙間を通してギヤ室21に連通している。
【0214】
図14に示すように、シフトケース本体75の縦壁75Bの上部には膨出部86が設けられている。膨出部86は、シフトケース本体75からシフトアンドセレクト軸59と反対側のレフトケース7の外部(シフトケース本体75よりも後方)に膨出している。
【0215】
図12に示すように、膨出部86は、ディテント部材83の上方に位置しており、ディテント部材83と膨出部86は、上下方向に並んで設置されている。また、膨出部86(副ブリーザ室86A)は、上側突出部84Cよりも高い位置に設置されている。
【0216】
図14に示すように、膨出部86の内部には副ブリーザ室86Aが形成されており、副ブリーザ室86Aは、上側突出部84Cよりも高い位置において主ブリーザ室85に連通している。副ブリーザ室86Aは、主ブリーザ室85よりも容積が小さく形成されている。
【0217】
膨出部86の上壁86bにはブリーザ孔86aが形成されており、ブリーザ孔86aには、ブリーザパイプ87が取付けられ副ブリーザ室86Aと変速機ケース5の外部とを連通している。
【0218】
つまり、膨出部86にはブリーザパイプ87が設けられ、このブリーザパイプ87は、変速機ケース5の内部、すなわち、ギヤ室21の圧力が低いときに、変速機ケース5の外部から副ブリーザ室86Aおよび主ブリーザ室85を通して変速機ケース5の内部(ギヤ室21)に外気を取り入れる。
【0219】
一方、ブリーザパイプ87は、ギヤ室21の圧力が高くなると、主ブリーザ室85および副ブリーザ室86Aを通して変速機ケース5の内気を外部に放出して、ギヤ室21から圧力を逃がす。
【0220】
また、入力ギヤ11Aから入力ギヤ11D、カウンタギヤ14Aからカウンタギヤ14D等によって掻き上げられたオイルは、ブリーザプレート84に遮られて主ブリーザ室85に侵入することが抑制され、主ブリーザ室85から副ブリーザ室86Aへも上側突出部84Cに遮られて副ブリーザ室86Aに侵入することが抑制され、ブリーザパイプ87を通して変速機ケース5の外部に漏出されることが抑制される。
【0221】
図1から図3に示すように、レフトケース7の上壁7Eにはシフトユニット50が設置されており、シフトユニット50は、モータ35の後方に位置している。
【0222】
シフトユニット50は、ベースプレート51、リザーバタンク52、アキュムレータ53、オイルポンプ54、モータ55および筐体56を備えている。
【0223】
図1に示すように、ベースプレート51は、平板状のプレート部51Aと、プレート部51Aの後部から下方に突出するアキュムレータ取付部51Bとを備えており、プレート部51Aは、ボルト10Dによってレフトケース7の上壁7Eに取付けられている。
【0224】
リザーバタンク52は、プレート部51Aの上側に取付けられており、リザーバタンク52にはシフトアンドセレクト軸59(図4参照)を動作させる操作用のオイルが貯留されている。
【0225】
オイルポンプ54は、プレート部51Aの後端部の下側に取付けられている。モータ55は、オイルポンプ54と上下方向でプレート部51Aを挟んで対向するようにプレート部51Aの後端部の上側に設置されている。
【0226】
オイルポンプ54は、モータ55によって駆動されることにより、リザーバタンク52に貯留されている作動油を加圧してプレート部51Aとアキュムレータ取付部51Bとに形成された図示しない油路を介してアキュムレータ53に供給する。すなわち、ベースプレート51の内部には油路が形成されており、オイルポンプ54はアキュムレータ53に加圧された作動油を供給および蓄圧する。
【0227】
アキュムレータ53は、アキュムレータ取付部51Bに取付けられており、アキュムレータ取付部51Bからレフトケース7の後方を横切るように左方に延びている。アキュムレータ53は、左右方向でレフトケース7の第2の左壁部7Dよりも左側に設置されている。
【0228】
アキュムレータ53は、オイルポンプ54から供給された作動油の圧力を蓄え、ベースプレート51に形成された図示しない油路を通して高圧の油圧を筐体56に供給する。
【0229】
筐体56は、リザーバタンク52の後方に位置するようにプレート部51Aの上側に設置されており、筐体56には、いずれも図示しない制御装置、シフト操作ソレノイド、セレクト操作ソレノイド、クラッチ操作ソレノイド、シフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータが設けられている。
【0230】
シフト操作ソレノイドおよびセレクト操作ソレノイドは、制御装置から出力される制御信号によって作動されることにより、アキュムレータ53から供給される高圧の作動油をシフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータに作用させることによってシフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータを駆動し、シフトアンドセレクト軸59をシフト方向とセレクト方向に操作するとともに、クラッチの断接を操作する。
【0231】
制御装置は、モータ55に駆動信号を出力してモータ55を駆動する。また、制御装置は、例えば、運転席に設けられる図示しないシフトレバーのシフト操作を検出する図示しないシフトポジョンセンサの検出情報、車速を検出する図示しない車速センサの検出情報、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ等からの検出情報に基づいて変速点を判断する。
【0232】
制御装置は、変速点を判断したときに、シフト操作ソレノイド、セレクト操作ソレノイド、クラッチ操作ソレノイドに制御信号を出力してこれらソレノイドを制御して、シフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータを駆動することにより、シフトアンドセレクト軸59を操作する。これにより、変速機4の変速制御が実施される。
【0233】
本実施例の主入力軸11と、アイドル軸12と、副入力軸13と、カウンタ軸14と、後進軸15と、ギヤ11A、11B、11C、11D、12A、12B、12C、13A、13B、14A、14B、14C、14D、14E、14F、15Aは、エンジン20の動力(回転速度)を変速する変速機構60を構成しており、本実施例の変速機構60は、有段変速機構である。
【0234】
また、ギヤ11A、11B、11C、11D、12A、12B、12C、13A、13B、14A、14B、14C、14D、14E、14F、15Aは、本発明の変速ギヤを構成する。
【0235】
次に、主な変速段における動力伝達経路を説明する。
(変速段が1速段の場合の動力伝達経路)
1速段においては、同期装置31が中立位置から1速段用のカウンタギヤ14A側に移動し、1速段用のカウンタギヤ14Aをカウンタ軸14に連結する。
【0236】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11A、1速段用のカウンタギヤ14Aおよび同期装置31を介してカウンタ軸14に伝達される。
【0237】
カウンタ軸14に伝達されたエンジン20の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0238】
なお、2速段において、主入力軸11に伝達されるエンジン20の動力は、1速段と同ように2速段用の入力ギヤ11B、2速段用のカウンタギヤ14Bおよび同期装置31を介してカウンタ軸14に伝達される。
【0239】
(変速段が3速段の場合の動力伝達経路)
3速段においては、同期装置33が中立位置から3速段用のアイドルギヤ12A側に移動し、3速段用のアイドルギヤ12Aをアイドル軸12に連結する。
【0240】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11C、3速段用のアイドルギヤ12Aおよび同期装置33を介してアイドル軸12に伝達される。
【0241】
次いで、アイドル軸12に伝達されたエンジン20の動力は、リダクションドライブギヤ12Cからリダクションドリブンギヤ13Aに伝達され、ダンパ機構16を介して副入力軸13に伝達された後、副入力軸13からリダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを介してカウンタ軸14に減速されて伝達される。
【0242】
カウンタ軸14に伝達されたエンジン20の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0243】
副入力軸13にはダンパ機構16が設置されており、ダンパ機構16の外筒部材16Aの内周スプライン16aとリダクションドリブンギヤ13Aの外周スプライン13eは、タイト(ガタがほとんどない)にスプライン嵌合し、外筒部材16Aの内周スプライン16aと内筒部材16Cの外周スプライン16cは、ルーズ(比較的大きなガタを有する)にスプライン嵌合している。内筒部材16Cと副入力軸13はタイトにスプライン嵌合している。
【0244】
このため、エンジン20の微小な回転変動やトルク変動がリダクションドリブンギヤ13Aからダンパ機構16に入力されると、ダンパ機構16の弾性体16Bが周方向に弾性変形することにより、微小な回転変動やトルク変動が吸収されて、動力が副入力軸13に伝達される。
【0245】
また、逆に、微小な回転変動やトルク変動を含む動力が副入力軸13からダンパ機構16に入力されると、ダンパ機構16の弾性体16Bが周方向に弾性変形することにより、微小な回転変動やトルク変動が吸収されて、リダクションドリブンギヤ13Aに動力が伝達される。
【0246】
一方、伝達するトルクが比較的大きくて弾性体16Bが周方向に過度に弾性変形する場合には、ルーズに設定されている外筒部材16Aの内周スプライン16aの歯と内筒部材16Cの外周スプライン16cの歯が接触することにより、内周スプライン16aと外周スプライン16cによって動力伝達が行われ、弾性体16Bが弾性変形することが抑制される。このため、弾性体16Bの耐久性が悪化することを防止できる。
【0247】
なお、4速段において、主入力軸11に伝達されるエンジン20の動力は、4速/6速段用の入力ギヤ11Dと4速段用のアイドルギヤ12Bを使用し、3速段と同様にアイドル軸12、ダンパ機構16および副入力軸13を経てカウンタ軸14に伝達される。
【0248】
3速段および4速段においては、エンジン20の微小なトルク変動や回転変動がダンパ機構16によって吸収できるので、各ギヤの歯打ち音等を抑制できる。
【0249】
(変速段が5速段の場合の動力伝達経路)
5速段においては、同期装置32が中立位置から5速段用のカウンタギヤ14C側に移動し、5速段用のカウンタギヤ14Cをカウンタ軸14に連結する。
【0250】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11C、5速段用のカウンタギヤ14Cおよび同期装置32を介してカウンタ軸14に伝達される。
【0251】
カウンタ軸14に伝達されたエンジン20の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0252】
なお、6速段において、主入力軸11に伝達されるエンジン20の動力は、4速/6速段用の入力ギヤ11Dと6速段用のカウンタギヤ14Dを使用し、5速段と同様にカウンタ軸14に伝達される。
【0253】
(後進段の場合の動力伝達経路)
後進段においては、同期装置34が中立位置から後進ギヤ15A側に移動し、後進ギヤ15Aを後進軸15に連結する。
【0254】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11A、1速段用のカウンタギヤ14A、後進ギヤ15Aおよび同期装置34を介して後進軸15に伝達される。
【0255】
後進軸15に伝達されたエンジン20の動力は、後進軸15に形成された後進用のファイナルドライブギヤ15Bを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0256】
(モータの動力伝達経路)
モータ35は、車両1のモータ走行時の動力を得る場合と、車両1の発進および加速時にエンジン20の動力をアシストする動力を得る場合と、変速中に同期装置31、32、33、34がそれまでの変速段を達成する位置から新たな変速段を達成する位置に移動するまでの間にエンジン20の動力を補完するギャップフィリング用の動力を得る場合とに使用される。
【0257】
ギャップフィリングとは、有段変速機において変速する場合に必要となるクラッチの切断によるエンジン20からの駆動力の途切れである。モータ35は変速時に途切れるエンジン20の動力を補完するように駆動力を出力し、車両のスムーズな走行を可能とする。
【0258】
モータ35の動力は、モータ出力軸35Bからチェーン38を介してアイドル軸12に伝達された後、リダクションドライブギヤ12Cからリダクションドリブンギヤ13Aおよびダンパ機構16を介して副入力軸13に伝達された後、副入力軸13からリダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを介してカウンタ軸14に減速されて伝達される。
【0259】
カウンタ軸14に伝達されたモータ35の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0260】
なお、モータ35は正転と逆転が可能で、モータ35を前進時の正転に対して逆回転させることでモータ35の動力は後進時にも使用可能となっている。後進時におけるモータの動力伝達経路は上記した前進時におけるモータの動力伝達経路と同じである。つまり、モータ35のモータ出力軸35Bと駆動輪は、常に動力が伝達可能に連結されている。モータ35は発電も可能であって、例えば車両の減速時に、モータ35は回生発電を行う。
【0261】
副入力軸13にはダンパ機構16が設置されており、モータ35の微小な回転変動やトルク変動を含む駆動力がリダクションドリブンギヤ13Aに入力されると、3速段および4速段と同様にダンパ機構16の弾性体16Bが周方向に弾性変形することにより、微小な回転変動やトルク変動が吸収されて、副入力軸13に駆動力が伝達される。
【0262】
また、副入力軸13に設置されているダンパ機構16は、カウンタ軸14、リダクションドリブンギヤ14Eおよびリダクションドライブギヤ13Bを介して副入力軸13に伝達されるエンジン20や駆動輪からの微小な回転変動やトルク変動を含む動力から微小な回転変動やトルク変動を吸収して、アイドル軸12やモータ35に動力を伝える。
【0263】
さらに、ダンパ機構16は、モータ35からの微小な回転変動やトルク変動とエンジン20や駆動輪からの微小な回転変動やトルク変動とを、副入力軸13上にて調整する働きをする。
【0264】
したがって、モータ35の微小な回転変動やトルク変動が副入力軸13に伝わることが抑制されて、各ギヤの歯打ち音等の異音の発生を防止でき、車両1の商品性を向上させることができる。
【0265】
次に、本実施例の変速機4の効果を説明する。
本実施例の変速機4は、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合う後進用のファイナルドライブギヤ15Bを有する後進軸15と、ファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合う前進用のファイナルドライブギヤ14Fを有するカウンタ軸14とを含んで構成される変速機構60を備えている。
【0266】
また、変速機4は、シフトケース73と、軸線方向に移動自在、かつ、軸線59L周りに回転するようにシフトケース73に設置され、変速機構60のシフトレンジの切換えを行うシフトアンドセレクト軸59とを有するシフト装置72を備えている。
【0267】
このように、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14および後進軸15の5軸によって変速段を多段化する場合には、各軸の軸長を短縮して各軸の軸方向における変速機4の寸法を短縮できる反面、各軸の軸方向と直交する上下および前後方向で変速機4が大型化する。
【0268】
本実施例の変速機4によれば、後進軸15は、カウンタ軸14よりも上方に設置され、かつ、カウンタ軸14の軸長よりも短い軸長に形成されており、シフト装置72は、シフトアンドセレクト軸59が上下方向に延び、かつ、後進軸15の軸方向に並ぶように設置されている。
【0269】
これにより、後進軸15の軸方向の左方で、かつ、後進軸15を除いた各軸の軸方向と直交する方向のデッドスペース(空きスペース)を利用してシフト装置72を設置できる。このため、各軸の軸方向と直交する上下方向や前後方向の変速機ケース5の寸法を短くでき、変速機4の小型化を図ることができる。
【0270】
このように本実施例の変速機4は、各軸とシフト装置72の位置関係を工夫することにより、各軸の軸方向と直交する方向に対して変速機4の小型化を図ることができる。このため、多段化された変速機4を設置するためのエンジンルーム2Aのスペースを低減できる。この結果、車両1の小型化を図りつつ、変速段の多段化を図ることができる。
【0271】
また、本実施例の変速機4によれば、各軸の軸方向から見た場合に、シフトケース73は、後進ギヤ15Aあるいは後進軸15と重なるように設置されており、シフトアンドセレクト軸59は、下端部59bがカウンタ軸14よりも上方に位置するように設置されている。
【0272】
これにより、シフトアンドセレクト軸59が上下方向に延びるようにシフト装置72が設置される場合であっても、シフトアンドセレクト軸59とカウンタ軸14が干渉することを防止しつつ、カウンタ軸14の上方の空間においてシフト装置72と後進軸15とを後進軸15の軸方向に並んで設置できる。
【0273】
このため、各軸の軸方向と直交する上下方向や前後方向の変速機ケース5の寸法をより効果的に短くでき、変速機4のより一層の小型化を図ることができる。
【0274】
また、本実施例の変速機4によれば、シフト装置72が取付けられる開口部70を有し、変速機構60を収容する変速機ケース5を備えており、シフトケース73は、開口部70の周囲の取付面71に取付けられるフランジ部74を有する。
【0275】
これに加えて、シフトケース73のフランジ部74がレフトケース7の上壁7Eよりも下方に位置するように、レフトケース7の開口部70の取付面71が形成されている。
【0276】
これにより、シフト装置72の上端の位置、すなわち、シフトアンドセレクト軸59の上端部59aの位置を下げることができる。このため、各軸の軸方向と直交する上下方向や前後方向の変速機ケース5の寸法をより効果的に短くでき、変速機4のより一層の小型化を図ることができる。
【0277】
これに加えて、シフトアンドセレクト軸59を操作するシフトユニット50の位置も下げることができ、各軸の軸方向と直交する上下方向や前後方向の変速機ケース5の寸法をより効果的に短くでき、変速機4のより一層の小型化を図ることができる。
【0278】
また、本実施例の変速機4によれば、レフトケース7は、前後方向でシフトケース73の下方に位置する後壁7Bを有し、後壁7Bの下部7bは、シフトケース73のフランジ部74の後端74rよりも前方に窪んでいる。
【0279】
これに加えて、各軸の軸方向から見た場合に、ディファレンシャル装置17のデフケース17Bと車輪とを連結するドライブシャフト18Lの一部がシフトケース73の下方に入り込んでいる。
【0280】
これにより、ドライブシャフト18Lの上方のデッドスペースを利用してシフト装置72を設置でき、各軸の軸方向と直交する上下方向や前後方向の変速機ケース5の寸法をより効果的に短くでき、変速機4のより一層の小型化を図ることができる。
【0281】
なお、本実施例の変速機4は、モータ35の動力をチェーン38によってアイドル軸12に伝達しているが、これに限定されるものではない。例えば、モータ35の動力をベルトによってアイドル軸12に伝達してもよい。
【0282】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0283】
1...車両、4...変速機(車両用変速機)、5...変速機ケース、7B...後壁(変速機ケースの後壁)、7b...下部(後壁の下側の部分)、7E...上壁(変速機ケースの上壁)、11...主入力軸(回転軸)、11A,11B,11C,11D...入力ギヤ(変速ギヤ)、12...アイドル軸(回転軸)、12A,12B...アイドルギヤ(変速ギヤ)、12C...リダクションドライブギヤ(変速ギヤ)、13...副入力軸(回転軸)、13A...リダクションドリブンギヤ(変速ギヤ)、13B...リダクションドライブギヤ(変速ギヤ)、14...カウンタ軸(回転軸)、14A,14B,14C,14D...カウンタギヤ(変速ギヤ)、14E...リダクションドリブンギヤ(変速ギヤ)、14F...前進用のファイナルドライブギヤ、15...後進軸(回転軸)、15A...後進ギヤ(変速ギヤ)、15B...後進用のファイナルドライブギヤ、17...ディファレンシャル装置、17A...ファイナルドリブンギヤ、18L...ドライブシャフト、59...シフトアンドセレクト軸、59L...シフトアンドセレクト軸の軸線、59b...下端部(シフトアンドセレクト軸の下端部)、60...変速機構、70...開口部、71...取付面、72...シフト装置、73...シフトケース、74...フランジ部、74r...後端(シフトケースの後端)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14