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特許7375561長尺体の曲がり表示装置、長尺体、および長尺体の敷設方法
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  • 特許-長尺体の曲がり表示装置、長尺体、および長尺体の敷設方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】長尺体の曲がり表示装置、長尺体、および長尺体の敷設方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/36 20060101AFI20231031BHJP
   G02B 6/46 20060101ALI20231031BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H01B7/36 Z
G02B6/46 321
H02G1/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020002403
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021111507
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 正哉
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-042060(JP,A)
【文献】特開平09-005535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/36
G02B 6/46
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ変形可能な長尺体に、該長尺体の許容最小曲げ半径に基づいて設定された巻き取り周長ごとに設けられた、複数の第1指標部と、
これらの第1指標部のうち、隣合う第1指標部の間に設けられた第2指標部と、
を備え、
前記第2指標部は、複数の前記第1指標部の相互間の距離を等分した位置に配置されるとともに、前記第1指標部とは異なる態様で表示された、
長尺体の曲がり表示装置。
【請求項2】
前記第1指標部と第2指標部とは、前記長尺体の表面に異なる形状で表示された請求項1に記載の長尺体の曲がり表示装置。
【請求項3】
前記第1指標部と第2指標部とは、前記長尺体の表面に異なる色で表示された請求項1または2のいずれか1項に記載の長尺体の曲がり表示装置。
【請求項4】
前記第1指標部と第2指標部とは、前記長尺体の表面に異なる凹凸形状で表示された請求項1~3のいずれか1項に記載の長尺体の曲がり表示装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の表示装置が表面に設けられた長尺体。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の長尺体の曲がり表示装置が設けられた長尺体を所定の経路に沿って敷設する方法であって、
複数の前記第2指標部のうち、隣合う二つの相互間隔より長い始点と終点との間で前記長尺体を曲げながら敷設する工程を有する長尺体の敷設方法。
【請求項7】
前記長尺体は、始点と終点との間で180度以下の角度で曲げられる、
請求項6に記載の長尺体の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺体の曲がり表示装置、長尺体、およびその敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導体ケーブル、光ファイバケーブル等の線状の長尺体は、様々な経路で敷設されることから、種々の方向へ曲げることが必要とされる。この曲げに伴い、導体ケーブルにあっては、過剰な屈曲に起因する破損のみならず、金属の塑性変形、およびこれに伴うヤング率、電気抵抗等の物理的特性の変化を生じることがあり、また、光ファイバケーブルにあっては、機械的な破損のみならず、屈折率等の光学的性質の変化など、長尺体の物理的特性が変動することがある。このような曲げに伴う物理的特性の変化等を防止するため、その長尺体の寸法、使用材料、要求性能等に応じて、許容される最小曲げ半径が設定されている。
【0003】
長尺体の敷設を行う作業者に前述の最小曲げ半径についての情報を的確に伝えることによって、長尺体の敷設に際しての許容範囲を越える屈曲を防止することが行われており、これに関連する技術として、特許文献1~3がある。
【0004】
特許文献1には、光ファイバケーブルを巻き取る際に、その最小曲げ半径を下回って曲げることを防止すべく、光ファイバケーブルの表面に、最小曲げ半径×2×円周率に相当する長さ(以下巻き取り周長という)ごとに目印を表示する構成が開示されている。
【0005】
特許文献2には、光ファイバケーブルの表面に、光ファイバケーブルの始点からの長さを示すレンズマークを表示する構成が開示されている。
【0006】
特許文献3には、光ファイバケーブルの表面に、前記巻き取り周長に相当する長さの線分を表示し、この線分のねじれを介して光ファイバケーブルのねじれを判定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-042060号公報
【文献】特開平9-005535号公報
【文献】特開2013-229177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光ファイバケーブル等を敷設する際には、敷設すべき経路に応じて様々な曲げ半径で光ファイバケーブルを曲げることが必要となることがある。また、このような曲げは、例えば余長処理の際の一周(360度)にわたる曲げ、半周(180度)にわたる曲げに限られず、1/4周(90度)、1/6周(60度)等、光ファイバケーブルの敷設経路に応じた小さな曲げ角度でなされる場合がある。
【0009】
このような小さな曲げ角度でなされる変形、すなわち、光ファイバケーブル等の長尺体の一周に満たない短い領域において、光ファイバケーブルが許容曲げ半径以上の曲げ半径で曲げられているか否かを的確に判断するための技術は、上記特許文献1~3のいずれにも開示されていない。
【0010】
また、光ファイバケーブル等の敷設工事や保管管理において、曲げ処理や余長部分の巻き取り処理が行われる際、光ファイバケーブルの変形や損傷を防ぐために、許容曲げ半径を確認する手段としてケーブルガイドや巻取り機があるが、小規模な事業所や一般家庭においては機材コストや設置スペースの観点でケーブルガイドや巻取り機の使用は難しい。また、これらの機器をケーブル敷設現場に実際に持ち込んで許容曲げ半径を確認しながら作業を行なおうとすると、作業効率を犠牲にせざるを得ないという課題がある。
【0011】
この発明は、長尺体の曲げ半径についての情報を作業者に的確に伝達することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本願の長尺体の曲がり表示装置は、曲げ変形可能な長尺体に、該長尺体の許容最小曲げ半径に基づいて設定された巻き取り周長ごとに設けられた、複数の第1指標部と、これらの第1指標部のうち、隣合う第1指標部の間に設けられた第2指標部と、を備え、前記第2指標部は、複数の前記第1指標部の相互間の距離を等分した位置に配置されるとともに、前記第1指標部とは異なる態様で表示されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一周に満たない短い区間で長尺体の曲げ半径を作業者に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にかかる長尺体の曲がり表示装置の最小構成例を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態の伸長状態における平面図である。
図3】本発明の第1実施形態の曲げ状態における平面図である。
図4】本発明の第1実施形態の使用例を示す平面図である。
図5】本発明の第2実施形態の伸長状態における平面図である。
図6】本発明の第3実施形態の曲げ状態における平面図である。
図7】本発明の第4実施形態の曲げ状態における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る長尺体の曲がり表示装置の最小構成を図1により説明する。
符号1は長尺体である。図示例では、長尺体1の両端の図示を省略して、中間部のみを表現している。この長尺体1には、長さ方向に沿って、複数の第1指標部A-1、A-2が形成されている。これら第1指標部A-1、A-2は、図1に図示された範囲の左側、および右側のいずれの側にも、図示された第1指標部A-1とA-2との間の間隔と等しい間隔をおいて、それぞれの端部へ向かって複数形成されている。前記第1指標部A-1とA-2との間隔Lは、長尺体1の許容最小曲げ半径rに対して、L=2πrとなる関係に設定されている。
【0016】
前記第1指標部A-1とA-2との間には、これらの間の間隔Lを等分した間隔l(l=L/n nは2以上の整数)で相互に間隔をおいて、複数の第2指標部B-1、B-2、B-3が設けられている。前記間隔lは、第1指標部A-1とA-2との間を長尺体1の1周に相当する長さとすれば、例えば、円周方向へ所定の角度の間隔をおいて設けられている。なお第2指標部B-1、B-2、B-3は、図示された第1指標部A-1、A-2の右側、および左側の図示しない第1指標部の間にも設けられている。
【0017】
また図示例では、第1指標部A-1、A-2を黒丸で表現し、第2指標部B-1、B-2、B-3を白抜きの三角形で表現したが、第1指標部と第2指標部とは、人の視覚、触覚で認識できる他の表現方式で互いに区別されても良い。
【0018】
上記構成の曲がり表示装置にあっては、一の第1指標部A-1と一の第2指標部B-1との間、あるいは、一の第2指標部B-1と隣のB-2との間の区間が所定の曲げ角度以下であるかを作業者が目視することにより、長尺体1を所定の最小曲げ半径以下に曲げていないかを確認することができる。したがって、長尺体1が最小曲げ半径以下に曲げられることによる物理的特性の変化(劣化)を防止することができる。
【0019】
図1に示す曲げ表示装置を使用した長尺体の敷設方法は下記の工程にしたがって行われる。
すなわち、長尺体1を所定の経路に沿って引き回し、その際、前記第2指標部B-1~B-3のうち、隣合う二つの相互間隔より長い始点と終点との間、たとえばB-1~B-2の間、B-2~B-3の間、あるいは、第1指標部A-1と第2指標部B-1との間、第2指標部B-3と第1指標部A-2との間で前記長尺体を所定の最小許容曲げ半径以下にならないように曲げながら敷設する。
【0020】
このように、第1指標部A-1、A-2、第2指標部B-1~B-3を参照しながら長尺体1を敷設することにより、長尺体1を所定の曲げ半径以下に曲げることによる物理的特性の変化を防止することができる。
【0021】
次いで、図2、3を参照して本発明の第1実施形態を説明する。なお、図1と共通の構成要素には、同一符号を付し、説明を簡略化する。
図2の例では、長尺体1の両端の図示を省略して、中間部のみを表現している。この長尺体1は、例えば光ファイバケーブルであって、第1指標部A-1とA-2との間隔L1は、長尺体1の許容最小曲げ半径r1に対して、L1=2πrとなる関係に設定されている。光ファイバケーブルの場合、この許容最小曲げ半径rは、永久変形、あるいは破損する半径、あるいは、屈折率等の光学的特性が基準値の許容範囲から外れる限界となる(例えば全反射すべき光が外部に漏れる)半径の値が選択される。
【0022】
前記第1指標部A-1とA-2との間には、これらの間の間隔L1を等分した間隔l1(l1=L1/n 図示例のnは4)で相互に間隔をおいて、複数の第2指標部B-1、B-2、B-3が設けられている。前記間隔l1は、第1指標部A-1とA-2との間を長尺体1の1周に相当する長さL1とすれば、円周方向へ90度(1/4周)の間隔をおいて設けられている。なお第2指標部B-1、B-2、B-3は、図示された第1指標部A-1、A-2の右側、および左側の図示しない第1指標部との間にも設けられている。
なお前記長尺体1は、例えば、導体ケーブルにあっては線状の導体を絶縁性のシースで被覆した構造、あるいは、コアとクラッドとで構成された光ファイバケーブルの表面を透明な保護層で被覆した構造となっているから、厳密には、前記第1指標部A-1とA-2、第2指標部B-1、B-2、B-3は、長尺体1の表面のシースあるいは保護層に印刷、刻印等の手段により表示される。
【0023】
上記構成の曲がり表示装置にあっては、図3に示すように、一の第1指標部A-1と一の第2指標部B-1との間、あるいは、一の第2指標部B-1とその隣のB-2との間が90度以上の曲げ角度をなることを作業者が目視することにより、長尺体1を所定の最小曲げ半径以下に曲げていないことを確認することができる。なお図3の例は、長尺体1の敷設経路を所定の段差で平行移動させた状態を示しており、このような敷設経路にあっても、長尺体1の曲げ半径を最小曲げ半径以上に維持することができる。
したがって、第1指標部A-1、A-2、第2指標部B-1~B-3を参照しながら長尺体1を敷設することにより、長尺体1を所定の曲げ半径以下に曲げることによる物理的特性の変化を防止することができる。
【0024】
前記曲げ半径の確認に際しては、長尺体1を曲げるに際し、図3に示すように、90度曲げた状態における、第1指標部A-1、A-2、第2指標部B-1~B-3の間隔l1を最小として、それ以上の間隔をおいて長尺体1を90度曲げるよう配慮すれば良い。
【0025】
なお図示例では、長尺体1が曲げられる二次元平面(図2、3の紙面)に対して直交方向視して第1指標部A-1、A-2、第2指標部B-1~B-3が目視できるよう表現したが、その裏側の面に、あるいは、長尺体1の円周方向に例えば120度ずつの相互間隔をおいて複数箇所に、図2、3と異なる方向からも第1指標部A-1、A-2、第2指標部B-1~B-3を目視することが出来るよう配慮することが望ましい。
【0026】
図4は、本発明の第1実施形態他の使用例を示すものである。
すなわち、長尺体1を360度(1周)にわたって曲げて敷設した状態を示している。図4の場合にあっては、第2指標部B-1、B-2、B-3が90度毎に配置されて、一の第1指標部A-1にその手前の他の第1指標部A-0が重なった状態となっている。
このような360度にわたる曲げ箇所は、例えば、直線状に敷設された光ファイバケーブルの途中、あるいは終端の余長部として利用される。
【0027】
図5は、本発明の第2実施形態を示すものである。
この第2実施形態の長尺体1Aは、所定の最小曲げ半径に相当する間隔をおいて第1指標部A’-1、A’-2を設けるとともに、これら第1指標部A’-1、A’-2の間を4等分する位置に第2指標部B’-1~B’-3を設けたものである。この第2実施形態にあっては、第1指標部A’-1、A’-2と第2指標部B’-1~B’―3とを異なる色で表示することにより、区別を容易にしている。
【0028】
図6は、本発明の第3実施形態を示すものである。
この第3実施形態の長尺体1Bは、最小曲げ半径に対応する間隔をおいて配置された第1指標部A-1、A-2の間に、1/6周の曲げに相当する間隔をおいて、第2指標部B-1、B-2……を設けたものである。
【0029】
すなわち、第2指標部B―1……の数は図示例に限定されるものではなく、例えば、図7に示す長尺体1Cのように、180度の曲げを想定して、1/2周の曲げに相当する間隔をおいて第2指標部B-1を設けても良い。なお、180度の曲げの場合は、第2指標部が1つあれば足りるが、3つ設けられた第2指標部の二つ目を180度相当の長さとして最小曲げ半径の判断に利用することもできる。
【0030】
なお、第1指標部、第2指標部の配置、態様は図1図7に限定されるものではなく、例えば、長尺体の表面に、第1指標部、第2指標部として異なる凹凸部を設けておき、作業者が指先等の触感によって第1指標部、第2指標部を認識することができるようにしても良い。
すなわち、第1指標部、第2指標部を直接目視することが困難な敷設箇所にあっても、長尺体の曲げ半径を許容曲げ半径以上に維持しながら作業を行うことができる。より具体的には、図2、3の例に示すように曲げられた長尺体を含む二次元平面(図面の紙面)の裏側のような、作業者が直接目視確認することができない位置に凹凸部等、作業者が触覚により認識することができる指標部を形成することにより、長尺体の敷設経路と作業者との位置関係の如何にかかわらず、長尺体の曲げ半径を作業者に認識させることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、長尺体の曲げ半径の測定、長尺体の敷設に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1、1A、1B、1C 長尺体
A-1、A-2、A’-1、A’-2 第1指標部
B-1、B-2、B-3、B’-1、B’-2、B’-3 第2指標部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7