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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両情報記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020003792
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021111205
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 公平
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-126885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間毎の車両に関するデータを時系列的に一時的に記憶する一時記憶部と、
所定の保存条件が成立したか否かを判定する判定部と、
前記保存条件が成立した場合に、前記一時記憶部に一時記憶されているデータを異なる符号化手法で符号化して複数の符号化データを算出する符号化部と、
前記複数の符号化データの中で最も少ないデータ容量に圧縮された符号化データを保存データとして選択する選択部と、
前記選択部によって選択された前記保存データを保存する保存部と、を備える車両情報記憶装置。
【請求項2】
前記符号化部は、前記一時記憶部に一時記憶されているデータの内、所定数の時系列データを連長符号化したデータを前記複数の符号化データの一つとする請求項1に記載の車両情報記憶装置。
【請求項3】
前記符号化部は、前記一時記憶部に一時記憶されているデータの内、所定数の時系列データの連続する2つのデータの差分を算出して、当該差分のデータ列を連長符号化したデータを前記複数の符号化データの一つとする請求項1に記載の車両情報記憶装置。
【請求項4】
前記符号化部は、前記一時記憶部に一時記憶されているデータの内、所定数の時系列データの連続する2つのデータの排他的論理和を算出して、当該排他的論理和のデータ列を連長符号化したデータを前記複数の符号化データの一つとする請求項1に記載の車両情報記憶装置。
【請求項5】
前記符号化部は、前記一時記憶部に一時記憶されているデータの内、所定数の時系列データと当該所定数の時系列データの近似曲線との差分を算出して、当該差分のデータ列を連長符号化したデータを前記複数の符号化データの一つとする請求項1に記載の車両情報記憶装置。
【請求項6】
所定時間毎の車両に関するデータを時系列的に一時的に記憶する一時記憶部と、
所定の保存条件が成立したか否かを判定する判定部と、
前記保存条件が成立した場合に、前記一時記憶部に一時記憶されているデータの内、所定数の時系列データの変化率によって当該所定数の時系列データに対して1つ以上の区間を定める区間分割部と、
前記区間毎に前記区間内のデータを異なる符号化手法で符号化して複数の符号化データを算出する符号化部と、
前記複数の符号化データの中で最も少ないデータ容量に圧縮された符号化データを保存データとして選択する選択部と、
前記選択部によって選択された前記保存データを保存する保存部と、を備える車両情報記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の異常の原因を特定するために、車両に異常が発生した場合などに、車両に関するデータをFFD(Freeze Flame Data)として不揮発性メモリに記憶するようになっている。
【0003】
特許文献1には、第1記録周期で車両データをサンプリングし、第1記録周期でサンプリングした複数の車両データを所定個数の車両データ毎にエンコードした1つの数値データを、エンコードした所定個数の車両データが含まれる第2記録周期毎に時刻データと共に二次記憶部に記録することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-126885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような車両情報記憶装置にあっては、車両データを保存するのに大きなデータ容量を必要とするという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、少ないデータ容量で車両データを保存することができる車両情報記憶装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、所定時間毎の車両に関するデータを時系列的に一時的に記憶する一時記憶部と、所定の保存条件が成立したか否かを判定する判定部と、前記保存条件が成立した場合に、前記一時記憶部に一時記憶されているデータを異なる符号化手法で符号化して複数の符号化データを算出する符号化部と、前記複数の符号化データの中で最も少ないデータ容量に圧縮された符号化データを保存データとして選択する選択部と、前記選択部によって選択された前記保存データを保存する保存部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば、少ないデータ容量で車両データを保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1実施例に係る車両情報記憶装置を搭載する車両の構成図である。
図2図2は、本発明の第1実施例に係る車両情報記憶装置の車両情報記憶処理の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の第2実施例に係る車両情報記憶装置を搭載する車両の構成図である。
図4図4は、本発明の第2実施例に係る車両情報記憶装置の時系列データの区間分割の例を示す図である。
図5図5は、本発明の第2実施例に係る車両情報記憶装置の車両情報記憶処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両情報記憶装置は、所定時間毎の車両に関するデータを時系列的に一時的に記憶する一時記憶部と、所定の保存条件が成立したか否かを判定する判定部と、保存条件が成立した場合に、一時記憶部に一時記憶されているデータを異なる符号化手法で符号化して複数の符号化データを算出する符号化部と、複数の符号化データの中で最も少ないデータ容量に圧縮された符号化データを保存データとして選択する選択部と、選択部によって選択された保存データを保存する保存部と、を備えるよう構成されている。
【0011】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両情報記憶装置は、少ないデータ容量で車両データを保存することができる。
【実施例
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る車両情報記憶装置について詳細に説明する。
【0013】
(第1実施例)
図1において、本発明の第1実施例に係る車両情報記憶装置を搭載した車両50は、内燃機関20と、複数(n個)のセンサ40と、ECU(Electronic Control Unit)30と、を含んで構成されている。
【0014】
内燃機関20は、ピストンが気筒内を2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行なう4サイクルのエンジンによって構成されている。各気筒に収納されたピストンは、コネクティングロッドを介してクランクシャフトに連結されている。コネクティングロッドは、ピストンの往復動をクランクシャフトの回転運動に変換する。したがって、内燃機関20は、気筒内の燃焼室で燃料と空気との混合気を燃焼させることによりピストンを往復動させ、コネクティングロッドを介してクランクシャフトを回転させることにより、車両50を駆動させる駆動力を発生するようになっている。
【0015】
センサ40は、内燃機関20に配置されたスロットルポジションセンサ、クランク角センサ、カム角センサ、エアフローセンサ、吸気温センサ、吸気管圧力センサ、油温センサ、冷却水温センサ、等であり、検出信号をECU30に送信する。
【0016】
また、センサ40は、車両50に配置されたアクセルポジションセンサ、ブレーキセンサ、シフトポジションセンサ、車速センサ、Gセンサ、等であり、検出信号をECU30に送信する。
【0017】
スロットルポジションセンサは、スロットルバルブの位置(スロットル開度)を検出する。クランク角センサは、内燃機関20のクランクシャフトの回転角度に基づくエンジン回転数を検出する。カム角センサは、内燃機関のカムシャフトの回転角度と機関回転速度とを検出する。エアフローセンサは、吸気管を通って内燃機関20に吸気される空気の吸気量を検出する。吸気温センサは、吸気管を通って内燃機関20に吸気される空気の吸気温度を検出する。吸気管圧力センサは、吸気管の内部の圧力を検出する。油温センサは、内燃機関20を流通するエンジンオイルの温度(油温)を検出する。冷却水温センサは、内燃機関20を流通する冷却水の温度(冷却水温)を検出する。
【0018】
アクセルポジションセンサは、運転席に設けられたアクセルペダルの位置(踏み込み量)を検出する。ブレーキセンサは、運転席に設けられたブレーキペダルの位置(踏み込み量)を検出する。シフトポジションセンサは、運転席に設けられたシフトレバーの位置に基づく変速段の位置を検出する。車速センサは、ドライブシャフトの回転速度に基づく車速(車両速度)を検出する。Gセンサは、車両50の加速度を検出する。
【0019】
ECU30は、CPU(Central Processing Unit)31と、RAM(Random Access Memory)32と、ROM(Read Only Memory)33と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)34と、入出力ポート35とを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0020】
ECU30のROM33には、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU30として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROM33に記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、ECU30として機能する。
【0021】
ECU30の入出力ポート35には、上述の複数のセンサ40が接続されている。一方、ECU30の入出力ポート35には、インジェクタ、スロットルバルブ等のアクチュエータが接続されている。ECU30は、複数のセンサ40から入力された検出信号に基づいて内燃機関20の運転状態を電気的に制御するようになっている。
【0022】
また、ECU30は、故障や異常等の所定の保存条件の成立時にデータを保存するデータ保存機能も備えている。ECU30は、車両50や内燃機関20に関する異常や故障等が発生した場合、RAM32に一時記憶されているデータから、保存を要するデータ(以下、要保存データという)を選択し、選択したデータを不揮発性メモリであるEEPROM34に保存する。要保存データは、いわゆるFFD(Freeze frame data:フリーズ・フレーム・データ)である。
【0023】
ECU30は、複数のセンサ40から入力されたエンジン回転速度や吸気温度等の検出信号のデータや、これらのデータからCPU31により算出した機関負荷等のデータを、揮発性メモリであるRAM32に一時記憶するようになっている。すなわち、RAM32に一時記憶されるデータは、車両50に搭載された内燃機関20のパラメータである。また、RAM32に一時記憶されるデータは、内燃機関20のパラメータに限定されず、車両50のアクセルポジションセンサで検出されたアクセルペダルの踏み込み量であってもよい。RAM32に一時記憶されるデータは、計測項目としてのデータの種類ごとに記憶され管理されている。
【0024】
RAM32は、リングバッファの構造を有するデータ記憶領域を有しており、車両50に関する所定間隔毎のデータを、新しいデータにより古いデータを上書きしながら時系列で一時記憶するようになっている。RAM32は、一時記憶部を構成する。
【0025】
CPU31は、所定の保存条件の成立を判定する。所定の保存条件は、車両50や内燃機関20に関する異常や故障等が発生したことを含む。また、所定の保存条件は、異常や故障等に限定されず、例えば、任意のデータが所定の閾値を超えたことを含む。CPU31は、判定部を構成する。
【0026】
CPU31は、所定の保存条件が成立したと判定した場合に、RAM32に一時記憶されているデータを異なる符号化手法で符号化して複数の符号化データを算出する。CPU31は、符号化部を構成する。
【0027】
CPU31は、例えば、成立した保存条件に応じて、保存する計測項目(データの種類)とデータ保存点数Nを決定する。CPU31は、例えば、保存条件から保存する計測項目とデータ保存点数Nが決まるテーブルにより保存する計測項目とデータ保存点数Nを決定する。このテーブルは、ROM33に記憶されている。
【0028】
CPU31は、例えば、RAM32に一時記憶されているデータの内、データ保存点数Nの時系列データを連長符号化したデータを複数の符号化データの一つとする。
【0029】
CPU31は、例えば、RAM32に一時記憶されているデータの中から、新しいものから順にN点のデータを時系列データAとして抽出する。N点のデータを古いものから順にA1,A2,A3,...,ANとする。すなわち、
A=[A1,A2,A3,...,AN
である。
【0030】
CPU31は、例えば、時系列データAを連長符号化したデータを複数の符号化データの一つとする。
【0031】
CPU31は、例えば、RAM32に一時記憶されているデータの内、データ保存点数Nの時系列データの連続する2つのデータの差分を算出して、算出した差分データ列を連長符号化したデータを複数の符号化データの一つとする。
【0032】
CPU31は、例えば、時系列データAの連続する2値の差分Bを算出する。ただし、B1=A1とする。すなわち、
B=[B1,B2,B3,...,BN
=[A1,A2-A1,A3-A2,...,AN-AN-1
である。
【0033】
CPU31は、例えば、時系列データBを連長符号化したデータを複数の符号化データの一つとする。
【0034】
時系列データAの連続する2値が近い値で推移する場合において、その差分は元のデータと比較して桁が小さくなることから、例えば、浮動小数点数でデータを記憶している場合の指数部の中位ビットはゼロまたは1が連続して並ぶことが多く、連長符号化による高圧縮率が期待できる。また、時系列データBから時系列データAのすべての値を復号可能であり、情報量は損なわれていない。
【0035】
CPU31は、例えば、RAM32に一時記憶されているデータの内、データ保存点数Nの時系列データの連続する2つのデータの排他的論理和を算出して、算出した排他的論理和データ列を連長符号化したデータを複数の符号化データの一つとする。
【0036】
CPU31は、例えば、時系列データAの連続する2値の排他的論理和Cを算出する。ただし、C1=A1とする。すなわち、
C=[C1,C2,C3,...,CN
=[A1,A2xorA1,A3xorA2,...,ANxorAN-1
である。
【0037】
CPU31は、例えば、時系列データCを連長符号化したデータを複数の符号化データの一つとする。
【0038】
時系列データAの連続する2値が近い値で推移する場合において、例えば、浮動小数点数でデータを記憶している場合、符号部、指数部及び仮数部の排他的論理和の演算結果の上位ビットはゼロになることが多く、連長符号化による高圧縮率が期待できる。また、時系列データCから時系列データAのすべての値を復号可能であり、情報量は損なわれていない。
【0039】
CPU31は、例えば、RAM32に一時記憶されているデータの内、データ保存点数Nの時系列データと、その時系列データの近似曲線との差分を算出して、算出した差分データ列を連長符号化したデータを複数の符号化データの一つとする。
【0040】
CPU31は、例えば、時系列データAの近似曲線上の近似値を古いものから順にA1',A2',A3',...,AN'とする。時系列データAと近似曲線上の近似値の差分Dを算出する。すなわち、
D=[D1,D2,D3,...,DN
=[A1-A1',A2-A2',A3-A3',...,AN-AN']
である。
【0041】
時系列データAの連続する2値の差分が大きい場合においても、その影響を受けず、その差分は元のデータと比較して桁が小さくなることから、例えば、浮動小数点数でデータを記憶している場合、指数部はゼロまたは1が連続して並ぶことが多く、連長符号化による高圧縮率が期待できる。
【0042】
CPU31は、例えば、RAM32に一時記憶されているデータが整数型データの場合、RAM32に一時記憶されているデータの内、データ保存点数Nの時系列データをガンマ符号化により、例えば、符号付き整数である場合には、正整数へガンマ符号化する。そして、ガンマ符号化したデータを、前述の連長符号化や、連続する2つのデータの差分データ列の連長符号化、連続する2つのデータの排他的論理和データ列の連長符号化、により符号化したデータを複数の符号化データの一つとしてもよい。これにより、より少ないデータ容量で車両データを保存することができる。
【0043】
CPU31は、例えば、RAM32に一時記憶されているデータが1ビットデータの場合、元のデータをそのまま保存する場合と、連長符号化を行なった場合のデータ量を比較し、データ量がより小さいものを選択するとよい。
【0044】
CPU31は、前述の複数の符号化データの中で、最も少ないデータ容量に符号化された符号化データを保存データとして選択する。CPU31は、選択部を構成する。
【0045】
CPU31は、選択された保存データをEEPROM34に保存する。EEPROM34は、保存部を構成する。
【0046】
以上のように構成された第1実施例に係る車両情報記憶装置による車両情報記憶処理について、図2を参照して説明する。なお、以下に説明する車両情報記憶処理は、ECU30が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0047】
ステップS1において、CPU31は、車両50の運転状態を監視し、所定の保存条件となる異常が発生したか否かを判定する。
【0048】
異常が発生していないと判定した場合には、CPU31は、ステップS1の処理を繰り返す。異常が発生したと判定した場合には、CPU31は、ステップS2の処理を実行する。
【0049】
ステップS2において、CPU31は、発生した異常と対応付けられた保存する計測項目及びデータ保存点数Nを求める。ステップS2の処理を実行した後、CPU31は、ステップS3の処理を実行する。
【0050】
ステップS3において、CPU31は、計測項目毎に、新しいものからN点を時系列データとして抽出する。ステップS3の処理を実行した後、CPU31は、ステップS4の処理を実行する。
【0051】
ステップS4において、CPU31は、時系列データの連続する2値の差分を算出する。ステップS4の処理を実行した後、CPU31は、ステップS5の処理を実行する。
【0052】
ステップS5において、CPU31は、時系列データの連続する2値のビット列に対して排他的論理和を算出する。ステップS5の処理を実行した後、CPU31は、ステップS6の処理を実行する。
【0053】
ステップS6において、CPU31は、時系列データと、時系列データの連続した2値の差分のデータと、時系列データの連続した2値のビット列の排他的論理和のデータと、それぞれのデータに対して連長符号化を行なう。ステップS6の処理を実行した後、CPU31は、ステップS7の処理を実行する。
【0054】
ステップS7において、CPU31は、連長符号化したデータのうち、データ量が最小となるものを抽出する。ステップS7の処理を実行した後、CPU31は、ステップS8の処理を実行する。
【0055】
ステップS8において、CPU31は、抽出した符号化データをFFDとしてEEPROM34に保存する。ステップS8の処理を実行した後、CPU31は、車両情報記憶処理を終了する。
【0056】
このように、第1実施例では、所定の保存条件が成立した場合に、成立した保存条件に応じて、保存する計測項目とデータ保存点数Nを決定し、保存するデータ毎に、新しいものからN点を時系列データとして抽出し、この時系列データを異なる符号化手法で符号化して複数の符号化データを算出し、複数の符号化データの中で最も少ないデータ容量に圧縮された符号化データをEEPROM34に保存する。
【0057】
これにより、保存する必要があるデータが異なる符号化手法で符号化され、符号化されたデータの中で最も少ないデータ容量のデータが保存され、少ないデータ容量で車両データを保存することができる。
【0058】
また、時系列データを連長符号化することを一つの符号化手法とする。
これにより、時系列データが連長符号化され、少ないデータ容量で車両データを保存することができる。
【0059】
また、符号化されたデータは、符号化する前のデータに完全に一致するように復号可能であるため、情報量を損なわないようにすることができる。
【0060】
また、時系列データの連続する2値の差分を算出し、その差分データ列を連長符号化することを一つの符号化手法とする。
【0061】
これにより、時系列データの連続する2値の差分が算出され、その差分データ列が連長符号化され、少ないデータ容量で車両データを保存することができる。
【0062】
また、符号化されたデータは、符号化する前のデータに完全に一致するように復号可能であるため、情報量を損なわないようにすることができる。
【0063】
また、時系列データの連続する2値のビット列に対して排他的論理和を算出し、その排他的論理和データを連長符号化することを一つの符号化手法とする。
【0064】
これにより、時系列データの連続する2値のビット列の排他的論理和が算出され、その排他的論理和データが連長符号化され、少ないデータ容量で車両データを保存することができる。
【0065】
また、符号化されたデータは、符号化する前のデータに完全に一致するように復号可能であるため、情報量を損なわないようにすることができる。
【0066】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例について説明する。ここで、第2実施例は前述の第1実施例と略同様に構成されているので、同様な構成には同一の符号を付して特徴部分を説明する。
【0067】
図3におけるCPU61は、所定の保存条件の成立を判定する。所定の保存条件は、車両51や内燃機関20に関する異常や故障等が発生したことを含む。また、所定の保存条件は、異常や故障等に限定されず、例えば、任意のデータが所定の閾値を超えたことを含む。CPU61は、判定部を構成する。
【0068】
CPU61は、所定の保存条件が成立したと判定した場合に、RAM32に一時記憶されているデータの内、データ保存点数Nの時系列データの変化率によって、時系列データに対して1つ以上の区間を定める。CPU61は、区間分割部を構成する。
【0069】
CPU61は、例えば、図4に示すように、計測データの1階微分値の絶対値及び2階微分値の絶対値が、それぞれ所定の値以下である区間(図では区間1及び区間3)と、計測データの1階微分値の絶対値及び2階微分値の絶対値が、それぞれ所定の値以下でない区間(図では区間2)に分割する。
【0070】
CPU61は、分割した区間毎に、区間内のデータを異なる符号化手法で符号化して複数の符号化データを算出する。CPU61は、符号化部を構成する。
【0071】
CPU61は、同一区間内で、前述の複数の符号化データの中で最も少ないデータ容量に圧縮された符号化データを保存データとして選択する。CPU61は、選択部を構成する。
【0072】
時系列データの連続する2値の差分や時系列データの連続する2値のビット列の排他的論理和を連長符号化する手法は、保存する計測データの変化量が小さい場合において高圧縮率を得られやすいが、計測データの変化率の大小により最適な符号化手法が変化する可能性がある。このため、時系列データを変化率によって区間を分割し、区間毎に最適な符号化手法に切り替えることで、より小さいデータ容量で車両データを保存することができる。
【0073】
以上のように構成された第2実施例に係る車両情報記憶装置による車両情報記憶処理について、図5を参照して説明する。なお、以下に説明する車両情報記憶処理は、ECU60が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0074】
ステップS1からステップS3において、CPU61は、前述の第1実施例と同様に、車両51の運転状態を監視し、所定の保存条件となる異常が発生したか否かを判定し、異常が発生していないと判定した場合には、ステップS1の処理を繰り返し、異常が発生したと判定した場合には、発生した異常と対応付けられた計測項目及びデータ保存点数Nを求め、計測項目毎に、新しいものからN点を時系列データとして抽出する。ステップS3の処理を実行した後、CPU61は、ステップS11の処理を実行する。
【0075】
ステップS11において、CPU61は、時系列データの変化率によって、時系列データに対して区間分割を行なう。ステップS11の処理を実行した後、CPU61は、ステップS12の処理を実行する。
【0076】
ステップS12において、CPU61は、iを1とする。ステップS12の処理を実行した後、CPU61は、ステップS13の処理を実行する。
【0077】
ステップS13において、CPU61は、区間iの時系列データを抽出する。ステップS13の処理を実行した後、CPU61は、ステップS14の処理を実行する。
【0078】
ステップS14において、CPU61は、区間iの時系列データの連続する2値の差分を算出する。ステップS14の処理を実行した後、CPU61は、ステップS15の処理を実行する。
【0079】
ステップS15において、CPU61は、区間iの時系列データの連続する2値のビット列に対して排他的論理和を算出する。ステップS15の処理を実行した後、CPU61は、ステップS16の処理を実行する。
【0080】
ステップS16において、CPU61は、区間iの時系列データの近似曲線を選択する。ステップS16の処理を実行した後、CPU61は、ステップS17の処理を実行する。
【0081】
ステップS17において、CPU61は、区間iの時系列データと、時系列データの近似曲線との差分を算出する。ステップS17の処理を実行した後、CPU61は、ステップS18の処理を実行する。
【0082】
ステップS18において、CPU61は、区間iの時系列データと、時系列データの連続した2値の差分のデータと、時系列データの連続した2値のビット列の排他的論理和のデータと、時系列データと近似曲線との差分のデータと、それぞれのデータに対して連長符号化を行なう。ステップS18の処理を実行した後、CPU61は、ステップS19の処理を実行する。
【0083】
ステップS19において、CPU61は、連長符号化したデータのうち、データ量が最小となるものを抽出する。ステップS19の処理を実行した後、CPU61は、ステップS20の処理を実行する。
【0084】
ステップS20において、CPU61は、iに1を加算する。ステップS20の処理を実行した後、CPU61は、ステップS21の処理を実行する。
【0085】
ステップS21において、CPU61は、分割した全ての区間について処理を行なったか否かを判定する。
【0086】
全ての区間について処理を行なっていないと判定した場合は、CPU61は、ステップS13に処理を戻して処理を繰り返す。全ての区間について処理を行なったと判定した場合には、CPU61は、ステップS22の処理を実行する。
【0087】
ステップS22において、CPU61は、抽出された各区間の符号化データをFFDとしてEEPROM34に保存する。ステップS22の処理を実行した後、CPU61は、車両情報記憶処理を終了する。
【0088】
このように、第2実施例では、所定の保存条件が成立した場合に、成立した保存条件に応じて、保存するデータの種類とデータ保存点数Nを決定し、保存するデータ毎に、新しいものからN点を時系列データとして抽出し、この時系列データをデータの変化率によって1つ以上の区間を定め、区間毎に異なる符号化手法で符号化して複数の符号化データを算出し、複数の符号化データの中で最も少ないデータ容量に圧縮された符号化データをEEPROM34に保存する。
【0089】
これにより、抽出した時系列データの変化率が大きく変わる場合でも、最適な符号化手法により符号化を行なって、少ないデータ容量で車両データを保存することができる。
【0090】
また、符号化されたデータは、符号化する前のデータに完全に一致するように復号可能であるため、情報量を損なわないようにすることができる。
【0091】
また、時系列データと、その時系列データの近似曲線との差分を算出し、算出した差分データ列を連長符号化することを一つの符号化手法とする。
【0092】
これにより、時系列データと、その時系列データの近似曲線との差分が算出され、その差分データ列が連長符号化され、時系列データの時間変化が大きくても、少ないデータ容量で車両データを保存することができる。
【0093】
また、符号化されたデータは、符号化する前のデータに完全に一致するように復号可能であるため、情報量を損なわないようにすることができる。
【0094】
前述の各実施例では、各種センサ情報に基づきECUが各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、車両が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0095】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0096】
20 内燃機関
30 ECU
31 CPU(判定部、符号化部、選択部)
32 RAM(一時記憶部)
34 EEPROM(保存部)
50 車両
51 車両
60 ECU
61 CPU(判定部、区間分割部、符号化部、選択部)
図1
図2
図3
図4
図5