(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/183 20060101AFI20231031BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B62D1/183
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2020004106
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】野沢 康行
(72)【発明者】
【氏名】北原 圭
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154932(US,A1)
【文献】特許第6596612(JP,B1)
【文献】独国特許出願公開第102016125839(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0368522(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、
操作部材が連結された回転軸と、
前記操作部材を、運転者による操作のための位置である通常位置と、前記通常位置よりも前方の格納領域との間で移動させる移動部と、
前記操作部材の移動中において、外部から前記操作部材に加えられる外力を検出する外力検出部と、
前記外力検出部に検出された前記外力の方向と、前記操作部材の移動方向とが同じか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を用いて、前記ステアリング装置の動作制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記動作制御として、前記判定部による判定結果を用いて前記操作部材の移動を制御し、
前記制御部は、前記判定部による判定結果が、前記外力の方向と前記移動方向とが同じではないことを示す場合、前記動作制御として、前記移動部を制御することで前記操作部材の移動速度を低下させる、
ステアリング装置。
【請求項2】
車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、
操作部材が連結された回転軸と、
前記操作部材を、運転者による操作のための位置である通常位置と、前記通常位置よりも前方の格納領域との間で移動させる移動部と、
前記操作部材の移動中において、外部から前記操作部材に加えられる外力を検出する外力検出部と、
前記外力検出部に検出された前記外力の方向と、前記操作部材の移動方向とが同じか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を用いて、前記ステアリング装置の動作制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記動作制御として、前記判定部による判定結果を用いて前記操作部材の移動を制御し、
前記制御部は、前記判定部による判定結果が、前記外力の方向と前記移動方向とが同じであることを示す場合、前記動作制御として、前記移動部を制御することで前記操作部材の移動速度を増加させる、
ステアリング装置。
【請求項3】
車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、
操作部材が連結された回転軸と、
前記操作部材を、運転者による操作のための位置である通常位置と、前記通常位置よりも前方の格納領域との間で移動させる移動部と、
前記操作部材の移動中において、外部から前記操作部材に加えられる外力を検出する外力検出部と、
前記外力検出部に検出された前記外力の方向と、前記操作部材の移動方向とが同じか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を用いて、前記ステアリング装置の動作制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記動作制御として、前記判定部による判定結果を用いて前記操作部材の移動を制御し、
前記外力検出部はさらに、前記外力の大きさ及び継続時間の少なくとも一方である外力属性値を検出し、
前記制御部は、前記動作制御において前記操作部材の移動速度を変更する場合、さらに、前記外力検出部により検出された前記外力属性値を取得し、前記移動部を制御することで、前記操作部材の移動速度を前記外力属性値に応じた速度に変更させる、
ステアリング装置。
【請求項4】
車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、
操作部材が連結された回転軸と、
前記操作部材を、運転者による操作のための位置である通常位置と、前記通常位置よりも前方の格納領域との間で移動させる移動部と、
前記操作部材の移動中において、外部から前記操作部材に加えられる外力を検出する外力検出部と、
前記外力検出部に検出された前記外力の方向と、前記操作部材の移動方向とが同じか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を用いて、前記ステアリング装置の動作制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記動作制御として、前記判定部による判定結果を用いて前記操作部材の移動を制御し、
さらに、前記操作部材の位置を検出する位置検出部を備え、
前記制御部は、
前記操作部材が前記格納領域に向けて移動中に、前記判定結果を用いて前記操作部材の移動速度を増加させた状態において、前記操作部材が、前記格納領域を形成する車両部材から所定の距離の位置に到達したことを示す検出結果を前記位置検出部から取得した場合、前記移動速度を低下させる、
ステアリング装置。
【請求項5】
車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、
操作部材が連結された回転軸と、
前記操作部材を、運転者による操作のための位置である通常位置と、前記通常位置よりも前方の格納領域との間で移動させる移動部と、
前記操作部材の移動中において、外部から前記操作部材に加えられる外力を検出する外力検出部と、
前記外力検出部に検出された前記外力の方向と、前記操作部材の移動方向とが同じか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を用いて、前記ステアリング装置の動作制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記動作制御として、前記判定部による判定結果を用いて前記操作部材の移動を制御し、
さらに、前記操作部材の位置を検出する位置検出部を備え、
前記制御部は、
前記操作部材が前記通常位置に向けて移動中に、前記外力の方向と前記移動方向とが同じではないことを示す前記判定結果を取得した場合であっても、前記操作部材が前記通常位置から所定の範囲内に位置することを示す検出結果を前記位置検出部から取得した場合、前記操作部材の移動速度を低下させない、
ステアリング装置。
【請求項6】
車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、
操作部材が連結された回転軸と、
前記操作部材を、運転者による操作のための位置である通常位置と、前記通常位置よりも前方の格納領域との間で移動させる移動部と、
前記操作部材の移動中において、外部から前記操作部材に加えられる外力を検出する外力検出部と、
前記外力検出部に検出された前記外力の方向と、前記操作部材の移動方向とが同じか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を用いて、前記ステアリング装置の動作制御を行う制御部と、を備え、
さらに、前記操作部材の回転位置を所定の回転位置に保持する回転保持部を備え、
前記制御部は、
前記操作部材が前記通常位置に向けて移動中に、前記外力の方向と前記移動方向とが同じであることを示す前記判定結果を取得した場合、前記回転保持部による回転位置の保持を解除する、
ステアリング装置。
【請求項7】
車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、
操作部材が連結された回転軸と、
前記操作部材を、運転者による操作のための位置である通常位置と、前記通常位置よりも前方の格納領域との間で移動させる移動部と、
前記操作部材の移動中において、外部から前記操作部材に加えられる外力を検出する外力検出部と、
前記外力検出部に検出された前記外力の方向と、前記操作部材の移動方向とが同じか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を用いて、前記ステアリング装置の動作制御を行う制御部と、を備え、
さらに、運転者による入力を受け付けて動作することができる入力部を備え、
前記制御部は、
運転者による前記操作部材の操作に基づいて、前記車両の転舵輪の転舵を駆動する手動運転モードと、運転者による前記操作部材の操作によらずに生成される指示に基づいて前記転舵輪の転舵を駆動する自動運転モードと、の切り替えが可能であり、
前記自動運転モードでは前記入力部を無効化することで、前記入力を受け付けない状態とし、
前記入力部が無効化されている状態で、かつ、前記操作部材が前記通常位置に向けて移動中に、前記外力の方向と前記移動方向とが同じであることを示す前記判定結果を取得した場合、無効化されている前記入力部を有効化する、
ステアリング装置。
【請求項8】
車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、
操作部材が連結された回転軸と、
前記操作部材を、運転者による操作のための位置である通常位置と、前記通常位置よりも前方の格納領域との間で移動させる移動部と、
前記操作部材の移動中において、外部から前記操作部材に加えられる外力を検出する外力検出部と、
前記外力検出部に検出された前記外力の方向と、前記操作部材の移動方向とが同じか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を用いて、前記ステアリング装置の動作制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
運転者による前記操作部材の操作に基づいて、前記車両の転舵輪の転舵を駆動する手動運転モードと、運転者による前記操作部材の操作によらずに生成される指示に基づいて前記転舵輪の転舵を駆動する自動運転モードと、の切り替えが可能であり、
前記自動運転モードでは前記操作部材を無効化することで、運転者による前記操作部材の操作を受け付けない状態とし、
前記操作部材が無効化されている状態で、かつ、前記操作部材が前記通常位置に向けて移動中に、前記外力の方向と前記移動方向とが同じであることを示す前記判定結果を取得した場合、無効化されている前記操作部材を有効化する、
ステアリング装置。
【請求項9】
さらに、前記回転軸を回転させる駆動力を前記回転軸に与える第一アクチュエータと、
前記車両の転舵輪であって、前記回転軸とは機械的に連結されていない転舵輪に、転舵のための駆動力を与える第二アクチュエータとを備え、
前記制御部は、
前記操作部材が前記通常位置に向けて移動中に、前記外力の方向と前記移動方向とが同じであることを示す前記判定結果を取得した場合、前記動作制御において、前記第一アクチュエータを制御することで、前記回転軸の回転角を、前記第二アクチュエータによる前記転舵輪の転舵角に応じた角度にさせる同期制御を開始する、
請求項1~
8のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイール等の操作部材を移動させることで運転者の前方空間を広げることのできるステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転においてシステムが責任をもつ自動運転レベル3以上の状態では、運転者は、車両の操作に責任を持つ必要がないため、ステアリングホイールを持つ必要がなくなる。従って自動運転時にステアリングホイールが移動し運転者の前方の空間が広く確保されれば運転者の快適性を高めることが出来る。例えば特許文献1には、ステアリングホイールである運転操作子の移動が可能な車両操作システムが開示されている。この車両操作システムは、乗員の操作を受け付ける運転操作子と、車両において実行される自動運転の実行状態に基づいて、運転操作子の保持機構の状態の変更を伴って運転操作子が収納されるように保持機構を制御する制御部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の車両操作システムのような、ステアリングホイール(操作部材)を移動させるステアリング装置では、例えば、操作部材の移動中に操作部材に何等かの外力が加えられた場合に操作部材を停止させる仕組みが備えられる。この従来の仕組みは、操作部材の移動中に外力が検出された場合、操作部材が運転者に接触したとの判断の下で、操作部材の移動を停止させ、これにより、運転者の安全性の向上を図ろうというものである。
【0005】
しかしながら、移動中の操作部材に運転者が接触する場合には、運転者が意図せず接触する場合だけでなく、操作部材を早く操作したい等の意図をもって運転者が接触する場合も含まれる。従って、運転者が何等かの意図をもって移動中の操作部材に接触した場合、操作部材を停止させることで、操作部材の移動に関する処理を再実行する必要があるなど、ステアリング装置の動作制御に無駄が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、本願発明者らが上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、運転者の前方空間を広げることができ、かつ、動作制御を効率よく行うことができるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るステアリング装置は、車両の操舵を行うためのステアリング装置であって、操作部材が連結された回転軸と、前記操作部材を、運転者による操作のための位置である通常位置と、前記通常位置よりも前方の格納領域との間で移動させる移動部と、前記操作部材の移動中において、外部から前記操作部材に加えられる外力を検出する外力検出部と、前記外力検出部に検出された前記外力の方向と、前記操作部材の移動方向とが同じか否かを判定する判定部と、前記判定部による判定結果を用いて、前記ステアリング装置の動作制御を行う制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転者の前方空間を広げることができ、かつ、動作制御を効率よく行うことができるステアリング装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係るステアリング装置の構成概要を示す模式図である。
【
図2】実施の形態に係るステアリング装置が備えるステアリング機構部の外観を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るステアリング装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態に係るステアリング装置の基本的な動作の流れを示すフロー図である。
【
図5】実施の形態に係るステアリング装置の具体的な動作の第1の例を示すフロー図である。
【
図6】
図5に示す動作に関するステアリング装置の状態を示す模式図である。
【
図7】実施の形態に係るステアリング装置の具体的な動作の第2の例を示すフロー図である。
【
図8】実施の形態に係るステアリング装置のより詳細な機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】実施の形態に係るステアリング装置の具体的な動作の第3の例を示すフロー図である。
【
図10】実施の形態に係るステアリング装置の具体的な動作の第4の例を示すフロー図である。
【
図11】実施の形態に係るステアリング装置の具体的な動作の第5の例を示すフロー図である。
【
図12】実施の形態に係るステアリング装置の具体的な動作の第6の例を示すフロー図である。
【
図13】実施の形態に係るステアリング装置の具体的な動作の第7の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るステアリング装置の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ及びステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0011】
また、図面は、本発明を示すために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、及び比率とは異なる場合がある。さらに、以下の実施の形態において、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行である、とは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0012】
(実施の形態)
[1.ステアリング装置の機械的な構成]
図1は、実施の形態に係るステアリング装置100の構成概要を示す模式図である。
図2は、実施の形態に係るステアリング装置100が備えるステアリング機構部101の外観を示す斜視図である。
【0013】
本実施の形態に係るステアリング装置100は、例えば手動運転モードと自動運転モードとを切り替えることができる乗用車、バス、トラック、建機、または農機などの車両に搭載される装置である。
【0014】
ステアリング装置100は、
図1に示すように、運転者に操作される操作部材110を有するステアリング機構部101と、転舵輪210を転舵させる転舵機構部102とを備える。ステアリング装置100は、例えば手動運転モードにおいて、操作部材110の回転角などをセンサ等で読み取り、センサ等の信号に基づいて軸体230が左右に往復動することで転舵輪210を転舵するいわゆるSBW(Steer By Wire)システムを構成している。
【0015】
このような車両の操舵に関する動作及び処理における上流側に位置するステアリング機構部101では、操作部材110に回転軸112が連結されており、回転軸112には、第一アクチュエータ151による回転駆動力が作用するように構成されている。第一アクチュエータ151による回転駆動力により、運転者が操作部材110を操作する際の反力が操作部材110に与えられる。また、第一アクチュエータ151による回転駆動力は、操作部材110の回転位置を、転舵輪210の転舵角と同期させるためにも用いられる。第一アクチュエータ151を用いた動作制御例は、
図11等を用いて後述する。
【0016】
ステアリング機構部101の下流に位置する転舵機構部102では、軸体230の車両の幅方向(
図1における左右方向)の移動により、タイロッド211を介して軸体230に接続された転舵輪210が転舵する。具体的には、手動運転モードでは、ステアリング機構部101から送信される操作部材110の回転角等を示す信号に基づき、第二アクチュエータ250が動作する。これにより、軸体230が車両の幅方向に移動し、転舵輪210が転舵する。つまり、操作部材110の操作に応じて、転舵輪210が転舵する。また、自動運転モードでは、車両が備える自動運転のためのコンピュータ(図示せず)から送信される信号等に基づいて第二アクチュエータ250が動作し、これにより、操作部材110の操作によらず、転舵輪210が転舵する。
【0017】
このように構成されたステアリング装置100において、ステアリング機構部101は、より具体的には、
図2に示すように、操作部材110を支持する支持部材115と、回転機構部130と、を備えている。本実施の形態では、操作部材110は、例えば、ステアリングホイールにおけるリムに相当する部材であり、支持部材115は、ステアリングホイールにおけるスポークに相当する部材である。
【0018】
操作部材110は、運転者の操作によりステアリング軸Aa(車両の前後方向に延びる仮想軸、本実施の形態ではX軸に平行)を中心に回転し、これに伴って、操作部材110に連結された回転軸112もステアリング軸Aaを中心に回転する。手動運転モードでは、この回転量等に基づいて、上述のように、車両の1以上の転舵輪210が転舵される。
【0019】
また、操作部材110は、例えば転舵輪210が直進状態となる中立状態において、回転機構部130の、車両の幅方向(本実施の形態ではY軸方向)の両側から延設された支持部材115に支持されている。操作部材110のステアリング軸Aaまわりの回転に伴って、回転機構部130もステアリング軸Aaまわりに回転する。また、一端が回転機構部130に固定された回転軸112も操作部材110の回転に伴って回転する。つまり、本実施の形態では、回転軸112は、回転機構部130を介して操作部材110に連結されている。
【0020】
回転機構部130は、車両の幅方向に延びる回転軸Abを中心に、支持部材115を回転させる装置である。回転機構部130は、支持部材115を回転させるための回転用モータ131等を備えている。回転機構部130の駆動力により支持部材115が回転軸Abまわりに回転することで、支持部材115に支持された操作部材110も、回転軸Abを中心として回転する。
【0021】
操作部材110の回転は、操作部材110の出退動作に伴って行われる。例えば、手動運転モードから自動運転モードに切り替えられることで、操作部材110を運転席の前方のダッシュボード(車両部材の一例)に設けられた格納領域(図示せず)に格納される際に、操作部材110が、ステアリング軸Aaと平行になるように折り畳まれる。また、自動運転モードから手動運転モードに切り替えられることで、操作部材110を通常位置に戻す際に、操作部材110が回転軸Abを中心として回転されることで、ステアリング軸Aaに直交する姿勢にされる。
【0022】
本実施の形態に係るステアリング装置100はさらに、
図2に示すように、回転機構部130の前側(X軸マイナス側)に配置されたスイッチ保持部140及び反力発生装置150を備える。スイッチ保持部140は、方向指示器を作動させるスイッチ等を保持する部材であり、運転者によって操作されるウインカーレバー等と接続される。
【0023】
反力発生装置150は、運転者が操作部材110を操作して操舵する際に、運転者の力に反するトルクを操作部材110に付与する装置であり、上述の第一アクチュエータ151等を有する。この反力発生装置150は、タイヤと操作部材とが機械的に接続されている従来の車両において、運転中に操作部材に生じる力などを反力として再現する装置である。つまり、本実施の形態では、一端が回転機構部130に固定され、かつ、スイッチ保持部140に挿し通された回転軸112の他端が、反力発生装置150と接続されている。反力発生装置150は、この回転軸112を介して操作部材110に反力を付与する。また、反力発生装置150は、操作部材110のステアリング軸Aa周りの回転位置を制御することもできる。具体的には、例えば車両の停車時において、操作部材110が格納領域に格納(退避ともいう。)される際に、操作部材110は、手動運転モードにおいて転舵輪210が直進状態となる中立の回転位置(初期回転位置)にされる。その後に、操作部材110が格納領域から通常位置に進出する際に、その時点の転舵輪210の転舵角に応じた回転位置となるように、操作部材110の回転位置を制御する同期制御が実行される。この同期制御の際の操作部材110の回転駆動に、第一アクチュエータ151が用いられる。同期制御を実行される際のステアリング装置100の動作例については
図11を用いて後述する。
【0024】
ステアリング装置100はさらに、上述の、操作部材110、支持部材115、回転機構部130、スイッチ保持部140、及び反力発生装置150を、一体の機構部として、その位置及び姿勢を変化させる機構を有している。これにより操作部材110の、運転者との間の距離の変更が可能である。
【0025】
具体的には、ステアリング装置100は、
図2に示すように、ステアリング機構部101の、前後方向の位置を移動させる移動部170を有している。本実施の形態において、移動部170は、スライド機構によって操作部材110を移動させる装置である。具体的には、操作部材110を含む一体の機構部は、可動体162を介して基礎ガイド161に支持されており、可動体162は基礎ガイド161に摺動可能に保持されている。基礎ガイド161は、例えば図示しないブラケットを介して車両に固定される。基礎ガイド161には、
図1に示すようにスライド駆動軸173が固定されており、移動部170が有するスライド用モータ172の駆動力によりスライド用モータ172を含む本体がスライド駆動軸173に沿って移動する。これにより、移動部170の本体に接続された可動体162が、基礎ガイド161に沿って前後方向に移動する。その結果、操作部材110及び回転機構部130等が前後方向に移動する。なお、ステアリング装置100は、操作部材110を含む一体の機構部の傾きを変化させるチルト機構部を有してもよい。
【0026】
[2-1.ステアリング装置の基本的な機能構成及び動作]
以上のように構成されたステアリング装置100の機能構成について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、実施の形態に係るステアリング装置100の基本的な機能構成を示すブロック図である。
図4は、実施の形態に係るステアリング装置100の基本的な動作の流れを示すフロー図である。
【0027】
図3に示すように、ステアリング装置100は、基本的な構成として、移動部170と、制御部190と、外力検出部180と、判定部181とを備える。移動部170は、上述のように、操作部材110を、運転者による操作のための位置である通常位置と、通常位置よりも前方の格納領域との間で移動させる。外力検出部180は、操作部材110の移動中において、外部から操作部材110に加えられる外力を検出する。判定部181は、外力検出部180に検出された外力の方向と、操作部材110の移動方向とが同じか否かを判定する。具体的には、判定部181は、例えば、外力検出部180に検出された外力のうち操舵部材110の移動方向に沿う軸方向成分の方向と、操作部材110の移動方向とが同じか否かを判定する。つまり、操作部材110の移動方向との比較対象としての、「操作部材110に加えられる外力の方向」とは、当該外力のうちの上記軸方向成分の方向を意味する。つまり、外力検出部180は、操作部材110に加えられる外力を検出した場合、その当該外力のうちの上記軸方向成分の方向のみを判定部181に出力してもよい。
【0028】
制御部190は、判定部181による判定結果を用いて、ステアリング装置100の動作制御を行う。つまり、制御部190は、移動部170を含むステアリング装置100が備える各種の装置に対し制御信号を送信する装置である。また、制御部190は、各種の装置から動作結果または検出結果を示す信号を受信し、受信した信号に基づいて制御信号を生成することができる。
【0029】
このように構成されたステアリング装置100では、
図4に示すように、例えば、運転者による所定の操作または上位制御部300からの指示(以下「所定の操作等」という。)により、移動部170が作動し、これにより操作部材110の移動が開始される(S10)。その後、操作部材110に軸方向成分を含む外力が与えられた場合、その外力の方向が外力検出部180に検出され、判定部181は、その外力の方向と、操作部材110の移動方向が同じか否かを判定する(S20)。制御部190は、判定部181から判定結果を取得し、取得した判定結果を用いてステアリング装置100の動作制御を行う(S30)。
【0030】
このように、本実施の形態に係るステアリング装置100では、操作部材110の移動中に、操作部材110に外力が加えられた場合、その外力の向きと、操作部材110の移動方向との同否に応じて、ステアリング装置100の動作制御を行うことができる。つまり、運転者からすると、操作部材110の移動中に操作部材110を引っ張るまたは押すなどして外力を与えることで、操作部材110等を早く操作したい、または、操作部材110等を元の位置に戻したいなどの意図をステアリング装置100に伝えることができる。また、ステアリング装置100は、その意図を汲んだ動作を行うことができる。これにより、ステアリング装置100の動作制御を効率よく行うことができる。
【0031】
なお、制御部190は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等の記憶装置、および情報の入出力のためのインタフェース等を備えたコンピュータによって実現される。制御部190は、例えば、記憶装置に格納された所定のプログラムをCPUが実行することで、上位制御部300等から送信される制御信号、及び、センサの検出結果等に応じたステアリング装置100の動作制御を行うことができる。
【0032】
また、外力検出部180による外力の検出機能は、例えば、移動部170に設けられたセンサ等の機器により実現される。判定部181による判定機能は、例えば制御部190を実現するコンピュータが、判定用のプログラムを実行することで実現される。つまり、ステアリング装置100が備える制御部190及び判定部181等の機能ブロックによる情報処理機能は、1つのコンピュータによって実現されてもよく、個別のコンピュータによって実現されてもよい。このことは、以下で説明する、各種の情報処理を実行する機能ブロックにも適用される。
【0033】
[2-2.ステアリング装置の具体的な動作例]
次に、上記説明された基本構成を有するステアリング装置100のより具体的な動作例について、
図5~
図7を用いて説明する。
図5は、実施の形態に係るステアリング装置100の具体的な動作の第1の例を示すフロー図である。
図6は、
図5に示す動作に関するステアリング装置100の状態を示す模式図である。
【0034】
図5に示すように、ステアリング装置100において、制御部190は、所定の操作等に応じて移動部170を作動させ、これにより、操作部材110の移動が開始される(S10)。その後、外力検出部180により外力が検出された場合、判定部181は、その外力の方向と操作部材110の移動方向が同じか否かを判定する(S20)。判定部181による判定の結果、外力の方向と操作部材110の移動方向が同じ場合(S20でYes)、制御部190は、移動部170を制御することで、操作部材110の移動速度を増加させる(S31)。また、判定部181による判定の結果、外力の方向と操作部材110の移動方向が同じではない場合(S20でNo)、制御部190は、移動部170を制御することで、操作部材110の移動速度を低下させる(S32)。
【0035】
つまり、制御部190は、ステアリング装置100の動作制御として、判定部181による判定結果を用いて操作部材110の移動を制御する。これにより、運転者が操作部材110を引っ張るまたは押す等により外力を加えた場合、ステアリング装置100は、その外力の方向に応じて、つまり、運転者の意図に応じて操作部材110の移動を制御することができる。
【0036】
例えば
図6の(a)に示すように、手動運転モードから自動運転モードへの切り替え時等における操作部材110の格納領域への格納の際に、前方への移動を開始した操作部材110に、逆方向(後ろ方向)の外力が与えられた場合を想定する。この場合、運転者が、手動運転を実行したいなどの理由によって、退避しようとする操作部材110を逆方向に引っ張ったとの推測が成り立つ。そこで、制御部190は、移動部170を制御することで、操作部材110の前方への移動速度を低下させる。例えば、操作部材110の移動速度をマイナスの値まで変化させる。これにより、一旦前方に(格納領域に向けて)移動した操作部材110は、移動速度がゼロになった後に、後方に向けて移動を開始し、通常位置まで移動する。また、制御部190は、操作部材110を通常位置まで戻す場合、例えば上位制御部300に自動運転モードの中止及び手動運転モードへの切り替えを要求する。制御部190は、その要求が許可された後に、操作部材110による操舵(つまり、操作部材110の操作に応じた転舵機構部102(
図1参照)の制御)を有効化する。
【0037】
また、例えば
図6の(b)に示すように、手動運転モードの再開時または車両運転の開始時等における操作部材110の通常位置までの進出の際に、後方への移動を開始した操作部材110に逆方向(前方向)の外力が与えられた場合を想定する。この場合、運転者が、ひとまず運転の開始を中止したいなどの理由によって、進出しようとする操作部材110を逆向きに押したと推測される。そこで、制御部190は、移動部170を制御することで、操作部材110の後方への移動速度を低下させる。例えば、操作部材110の移動速度をマイナスの値まで変化させる。これにより、一旦後方に(運転席に向けて)移動した操作部材110は、移動速度がゼロになった後に、前方に向けて移動し、格納領域内で停止する。また、このとき、制御部190は、例えば上位制御部300に手動運転モードの開始の中止を通知する。なお、上位制御部300は、例えば、自動運転モードで走行中における手動運転モードへの切り替え時に、手動運転モードの開始の中止を制御部190から通知された場合、自動運転モードを継続する。さらに例えば、上位制御部300は、自動運転モードで走行可能な期間中に、車両を安全な位置まで移動させて停車させる等の制御を実行してもよい。つまり、自動運転モードで走行中における手動運転モードへの切り替えの際に、運転者が何等かの事情で手動運転ができないと判断した場合、通常位置まで戻ろうとする操作部材110を押すことで、車両の安全な位置への停車まで実行することは可能である。
【0038】
また、例えば
図6の(c)に示すように、手動運転モードから自動運転モードへの切り替え時等における操作部材110の格納領域への格納の際に、前方への移動を開始した操作部材110に同方向(前方向)の外力が与えられた場合を想定する。この場合、運転者が、早急に操作部材110を遠ざけたい等の理由により、退避しようとする操作部材110をその退避方向に押したとの推測が成り立つ。そこで、制御部190は、移動部170を制御することで、操作部材110の前方への移動速度を増加させる。これにより、操作部材110を、通常の退避時よりも短い時間で格納領域に退避させることができる。
【0039】
また、例えば
図6の(d)に示すように、手動運転モードの再開時または車両運転の開始時等における操作部材110の通常位置までの進出の際に、後方への移動を開始した操作部材110に同方向(後ろ方向)の外力が与えられた場合を想定する。この場合、運転者は、早く自身の手で操作部材110を操作したいなどの理由によって、進出しようとする操作部材110を同方向に引っ張ったとの推測が成り立つ。そこで、制御部190は、移動部170を制御することで、操作部材110の後方への移動速度を増加させる。これにより、操作部材110を、通常の進出時よりも短い時間で通常位置まで進出させることができる。このとき、制御部190は、例えば上位制御部300から、手動運転モードの再開または開始が許可された後に、操作部材110による操舵を有効化する。
【0040】
なお、操作部材110の移動方向と、操作部材110に与えられた外力の方向とが同じであることにより、操作部材110の移動速度を増加させる場合、この移動速度の増加は運転者の意図に基づいている。そのため、移動速度を増加させることによる操作部材110と運転者との不要な干渉が生じる可能性は低いと言える。
【0041】
このように、本実施の形態に係る制御部190は、判定部181による判定結果が、外力の方向と移動方向とが同じではないことを示す場合(
図6の(a)及び(b)の場合)、ステアリング装置100の動作制御として、移動部170を制御することで操作部材110の移動速度を低下させることができる。また、本実施の形態に係る制御部190は、判定部181による判定結果が、外力の方向と移動方向とが同じことを示す場合(
図6の(c)及び(d)の場合)、ステアリング装置100の動作制御として、移動部170を制御することで操作部材110の移動速度を増加させることができる。いずれの場合であっても、運転者の意図に沿って、操作部材110を、例えば格納領域または通常位置まで移動させることができる。
【0042】
なお、上記の
図6の(a)~(d)に示す動作は組み合わされて実行されてもよい。例えば、
図6の(a)に示すように、前方に移動する操作部材110に逆方向(後ろ方向)の外力が与えられたことで、操作部材110が後方への移動を開始した場合、その後に前方向への外力が検出された場合を想定する。この場合、制御部190は、移動部170を制御することで、
図6の(b)に示すように、操作部材110を減速させて逆向きに移動させ、これにより、操作部材110を格納領域に退避させてもよい。つまり、運転者が、一旦、手動運転モードの実行を意図して、退避しようとする操作部材110を引っ張った直後に、思い直して自動運転モードの実行を意図して、操作部材110を押した場合を想定する。この場合、制御部190は、退避を中断して進出させようとした操作部材110を、進出が完了する前に、再度、前方に移動させて格納領域に格納してもよい。また、単に、運転者の誤操作で、または、運転者が何の意図もなく、格納領域に向かって移動する操作部材110を引っ張ってしまった場合も同様である。つまり、運転者は、誤って引っ張ったことで通常位置まで戻ろうとする操作部材110を前方に押すことで、操作部材110を格納領域に格納することができる。
【0043】
また、制御部190は、操作部材110の移動中に、外力検出部180が操作部材110に与えられた外力を検出した場合、一端、操作部材110の移動を停止し、かつ、外力が再度検出されたときに、その外力の方向に応じて移動速度の増減を行ってもよい。例えば、
図6の(a)に示すように、前方に移動する操作部材110に逆方向の外力が与えられた場合を想定する。この場合、制御部190は、移動部170を制御することで操作部材110の移動を一旦停止(急停止)し、その後に、当該逆方向の外力が与えられた場合に、操作部材110を後方に向けて移動させてもよい。つまり、運転者が2度同じ動作(この場合は、操作部材110を後方に向けて引っ張る動作)を繰り返すことをトリガとして、その動作による外力の方向に応じた操作部材110の移動制御が行われてもよい。これにより、運転者の意図をより正確に操作部材110の移動制御に反映させることができる。
【0044】
なお、このように、移動中の操作部材110に外力が与えられた場合、ステアリング装置100は、その外力の方向以外の属性値を利用して操作部材110の移動制御を行うことも可能である。このような動作例を、
図7を参照して説明する。
【0045】
図7は、実施の形態に係るステアリング装置100の具体的な動作の第2の例を示すフロー図である。本実施の形態に係るステアリング装置100では、外力検出部180は外力の方向だけではなく、外力の大きさ及び継続時間を取得することができる。つまり、外力検出部180は、外力属性値として、例えば、外力の方向、大きさ、継続時間という3種類の属性値を取得することができる。これにより、ステアリング装置100は、運転者の意図をより正確に反映した動作制御、つまり、より効率化された動作制御を実行することができる。
【0046】
具体的には、
図7に示すように、制御部190は、所定の操作等に応じて移動部170を作動させ、これにより、操作部材110の移動が開始される(S10)。その後、外力検出部180により外力が検出された場合、判定部181は、その外力の方向と操作部材110の移動方向が同じか否かを判定する(S20)。制御部190は、判定部181による判定の結果を取得し、かつ、外力検出部180から、外力の大きさまたは継続時間を示す外力属性値を取得する。制御部190は、取得した判定結果と外力属性値とを用いてステアリング装置100の動作制御を行う(S33)。これにより、運転者の意図をより正確にステアリング装置100に伝えることができる。具体的には、例えば、制御部190は、移動部170を制御することで、操作部材110の移動速度を、取得した外力属性値に応じた移動速度に変更する(S33)。
【0047】
より具体的には、例えば、制御部190は、外力属性値として取得した外力の大きさがF1である場合、操作部材110の移動速度を通常よりもV1だけ増加させ、外力の大きさがF2(F2>F1)である場合、操作部材110の移動速度を通常よりもV2(V2>V1)だけ増加させる。この場合、運転者は、操作部材110を押す、または、引っ張る力を加減することで、その後の操作部材110の移動速度を、自身の意図に応じた速度に変更させることができる。
【0048】
また、例えば、制御部190は、外力属性値として取得した外力の継続時間がT1である場合、操作部材110の移動速度を通常よりもV1だけ増加させ、外力の継続時間がT2(T2>T1)である場合、操作部材110の移動速度を通常よりもV2(V2>V1)だけ増加させる。この場合、運転者は、操作部材110を押す、または、引っ張る時間を加減することで、その後の操作部材110の移動速度を、自身の意図に応じた速度に変更させることができる。
【0049】
このように、本実施の形態において、外力検出部180は外力の方向に加えて、外力の大きさ及び継続時間の少なくとも一方である外力属性値を検出する。制御部190は、ステアリング装置100の動作制御において操作部材110の移動速度を変更する場合、外力検出部180により検出された外力属性値を取得し、移動部170を制御することで、操作部材110の移動速度を当該外力属性値に応じた速度に変更させることができる。
【0050】
これにより、ステアリング装置100は、移動中に操作部材110に与えられる外力の方向に加えて、外力の大きさ及び継続時間の少なくとも一方を考慮して操作部材110の移動速度を調整することができる。その結果、ステアリング装置100は、運転者の意図をより正確に反映した動作制御、つまり、より効率化された動作制御を実行することができる。
【0051】
[3-1.ステアリング装置のより詳細な機能構成例]
図8は、実施の形態に係るステアリング装置100のより詳細な機能構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、ステアリング装置100は、
図1~
図3に示す、制御部190、外力検出部180、判定部181、第一アクチュエータ151及び第二アクチュエータ250に加え、位置検出部182及び入力部187を備えている。位置検出部182は、操作部材110の位置を検出する装置である。位置検出部182は、例えば、移動部170のスライド用モータ172のエンコーダ値を用いて、または、操作部材110を撮影した画像を解析すること等により、所定の基準位置に対する操作部材110の相対位置を検出することができる。入力部187は、運転者による入力を受け付けて動作することができる装置である。入力部187としては、方向指示器、ホーン、並びに各種のタッチパネル及びスイッチ等が例示される。このように構成されたステアリング装置100の動作の具体的な例を以下に説明する。
【0052】
[3-2.ステアリング装置の動作の具体例]
本実施の形態に係るステアリング装置100では、操作部材110を格納領域に退避させる途中で外力の検出をトリガとして操作部材110の移動速度を向上させる場合、操作部材110の位置に応じて減速させることもできる。この動作例を、
図9を参照して説明する。
図9は、実施の形態に係るステアリング装置100の具体的な動作の第3の例を示すフロー図である。
【0053】
図9に示すように、制御部190は、所定の操作等に応じて移動部170を作動させ、これにより、操作部材110の前方への移動(退避)が開始される(S11)。その後、外力検出部180により外力が検出された場合、判定部181は、その外力の方向と操作部材110の移動方向が同じか否かを判定する(S20)。この判定の結果、外力の方向と操作部材110の移動方向が同じ場合(S20でYes)、制御部190は、移動部170を制御することで、操作部材110の移動速度を増加させる(S31)。また、上記判定の結果、外力の方向と操作部材110の移動方向が同じではない場合(S20でNo)、制御部190は、移動部170を制御することで、操作部材110の移動速度を低下させる(S32)。制御部190は、操作部材110の移動速度を増加させた場合(S31)、位置検出部182から取得する、操作部材110の位置が所定の位置に到達した場合(S34でYes)、移動速度を低下させる(S35)。
【0054】
具体的には、操作部材110は、上述のように、車両部材の一例であるダッシュボードの設けられた格納領域に格納される。従って、格納領域に操作部材110が格納される際に、ダッシュボードと操作部材110との間隔が小さくなり、これにより、ダッシュボードと操作部材110との間への運転者の指等の挟み込みの可能性が生じる。そこで、本実施の形態では、例えば、ダッシュボードから近い位置である所定の位置(ダッシュボードから数cm~10cm程度)に操作部材110が到達した場合、移動速度を低下させる。つまり、外力の検出結果に基づいて一旦移動速度が向上された操作部材110は、ダッシュボードに近づいた時点で、移動速度が低下され、これにより、操作部材110とダッシュボードとの間での指の挟み込み等の問題が生じ難くなる。
【0055】
このように、本実施の形態に係るステアリング装置100は、操作部材110の位置を検出する位置検出部182を備える。制御部190は、操作部材110が格納領域に向けて移動中に、判定結果を用いて移動速度を増加させた状態において、操作部材110が、格納領域を形成するダッシュボードから所定の距離の位置に到達したことを示す検出結果を位置検出部182から取得した場合、移動速度を低下させることができる。これにより、運転者の意図に沿った操作部材110の効率的な移動と、運転者の安全性の確保とが図られる。
【0056】
また、本実施の形態に係るステアリング装置100は、操作部材110の通常位置への進出時においても、位置検出部182による操作部材110の位置の検出結果を用いることで、ステアリング装置100の効率的な動作制御を行うことができる。この動作例を、
図10を参照して説明する。
図10は、実施の形態に係るステアリング装置100の具体的な動作の第4の例を示すフロー図である。
【0057】
図10に示すように、制御部190は、所定の操作等に応じて移動部170を作動させ、これにより、操作部材110の後方への移動(進出)が開始される(S12)。その後、外力検出部180により外力が検出された場合、判定部181は、その外力の方向と操作部材110の移動方向が同じか否かを判定する(S20)。この判定の結果、外力の方向と操作部材110の移動方向が同じ場合(S20でYes)、制御部190は、移動部170を制御することで、操作部材110の移動速度を増加させる(S31)。また、上記判定の結果、外力の方向と操作部材110の移動方向が同じではない場合(S20でNo)、制御部190は、位置検出部182から取得する操作部材110の位置が、通常位置から所定の範囲内であるか否かを判断する(S36)。この判断の結果、操作部材110の位置が、通常位置から所定の範囲内である場合(S36でYes)、制御部190は、移動部170を制御することで、移動速度を維持した状態で、操作部材110を通常位置まで移動させる(S37)。また、上記判断の結果、操作部材110の位置が、通常位置から所定の範囲内ではない場合(S36でNo)、移動速度を低下させる(S38)。この場合、操作部材110の後方へ向かう移動速度は例えばマイナスの値まで低下され、その結果、操作部材110は前方へ移動し、格納領域まで退避される(例えば
図6の(b)参照)。
【0058】
例えば、手動運転モードの開始時または再開時において、操作部材110が通常位置に向けて進出を開始した場合、操作部材110への逆方向(前方向)の外力が検出されたとき、上述のように、運転者が手動運転の開始を拒む状態であると推測される。しかしながら、操作部材110が、通常位置に近い範囲(通常位置から数cm~10cm程度の範囲)まで進出した時点で逆方向(前方向)の外力が検出された場合、この外力は、例えば運転者が、手動運転の準備が整った後に操作部材110を握ったために生じたと推測される。そこで、本実施の形態に係るステアリング装置100では、この場合、操作部材110の移動速度を低下させるのではなく、移動速度を維持して通常位置まで操作部材110を進出させる。これにより、運転者は、速やかに手動運転を開始することができる。
【0059】
このように、本実施の形態に係るステアリング装置100は、操作部材110の位置を検出する位置検出部182を備える。制御部190は、操作部材110が通常位置に向けて移動中に、外力の方向と移動方向とが同じではないことを示す判定結果を取得した場合であっても、操作部材110が通常位置から所定の範囲内に位置することを示す検出結果を位置検出部182から取得した場合、移動速度を低下させないことができる。これにより、運転者の意図に沿った操作部材110の効率的な移動が実現される。
【0060】
また、本実施の形態に係るステアリング装置100は、判定部181による判定結果を用いたステアリング装置100の動作制御として、操作部材110の移動速度の制御に加えて、または、換えて、他の種類の制御を行うことができる。この動作例を、
図11~
図13を参照して説明する。
図11~13は、実施の形態に係るステアリング装置100の具体的な動作の第5~第7を示すフロー図である。
【0061】
図11に示すように、制御部190は、所定の操作等に応じて移動部170を作動させ、これにより、操作部材110の後方への移動(進出)が開始される(S12)。その後、外力検出部180により外力が検出された場合、判定部181は、その外力の方向と操作部材110の移動方向が同じか否かを判定する(S20)。この判定の結果、外力の方向と操作部材110の移動方向が同じ場合(S20でYes)、制御部190は、第一アクチュエータ151を制御することで、回転軸112の回転角を、転舵輪210の転舵角に対応させるための同期制御を開始する(S40)。
【0062】
ここで、本実施の形態において、ステアリング装置100は、操作部材110を格納領域に格納させる場合、操作部材110とともに回転機構部130(
図2参照)も格納領域に格納される。また、操作部材110は、例えばステアリング軸Aaと平行になるように折り畳まれる。従って操作部材110及びこれに伴って格納領域に格納される構造物は、ステアリング軸Aaの方向から見た場合、ステアリング軸Aaを中心として非対称の形状(つまり、非円形)である。従って、操作部材110を格納領域に格納する時点での操作部材110の回転位置には制限が課せられる。具体的には、格納領域に格納する際、操作部材110は、手動運転モードにおいて転舵輪210が直進状態となる初期回転位置にされる。その後、例えば、自動運転モードで走行中に手動運転モードに切り替える場合、操作部材110の回転位置を、手動運転モードを開始する時点の転舵輪210の転舵角に応じた回転位置にする同期制御を実行する必要がある。具体的には、操作部材110を回転させる回転軸112の回転角が制御部190によって制御され、これにより操作部材110の回転位置が、その時点の転舵輪210の転舵角に応じた回転位置にされる。
【0063】
この同期制御は、例えば、操作部材110の通常位置への移動の完了後に実行してもよいが、この場合、運転者は、操作部材110の通常位置への移動の完了と、その後の同期制御の完了とを待つ必要がある。そこで、本実施の形態に係るステアリング装置100では、操作部材110の通常位置への進出時において、外力の方向と操作部材110の移動方向が同じと判定された場合、その判定をトリガとして、同期制御を開始することができる。
【0064】
このように、本実施の形態に係るステアリング装置100は、回転軸112を回転させる駆動力を回転軸112に与える第一アクチュエータ151と、車両の転舵輪210であって、回転軸112とは機械的に連結されていない転舵輪210に、転舵のための駆動力を与える第二アクチュエータ250とを備える(
図8参照)。制御部190は、操作部材110が通常位置に向けて移動中に、外力の方向と移動方向とが同じであることを示す判定結果を取得した場合、ステアリング装置100の動作制御において、第一アクチュエータ151を制御することで、回転軸112の回転角を、第二アクチュエータ250による転舵輪210の転舵角に応じた角度にさせる同期制御を開始する。
【0065】
これにより、例えば、運転者が、操作部材110が通常位置に向けて移動している途中で、操作部材110の操作を早く開始したいために、操作部材110を引っ張った場合、この引っ張ったことをトリガとして同期制御が開始される。これにより、例えば、操作部材110が通常位置に到達した時点以前に同期制御を完了させることができ、その結果、運転者は即座にかつ違和感なく操作部材110による手動運転を開始することができる。なお、このとき、
図6の(d)を用いて説明したように、操作部材110の移動速度の増加を伴ってもよい。つまり、通常位置に向けて移動中の操作部材110に、通常位置に向けて引っ張る外力が与えられた場合、操作部材110の移動速度の増加と、操作部材110の回転位置についての同期制御とが並行して実行されてもよい。
【0066】
また、第一アクチュエータ151は、回転軸112の回転角を所定の回転角に保持するように回転駆動力を与えることができ、これにより、操作部材110の回転位置を保持する回転保持部として機能することができる。つまり、制御部190は、回転保持部として機能する第一アクチュエータ151を制御することで、回転軸112の保持及びその解除を制御することができる。この動作例を、
図12を参照して説明する。
【0067】
図12に示すように、制御部190は、例えば操作部材110を格納領域に格納している期間は、例えば操作部材110と他の部材との干渉防止のため、操作部材110の回転位置を保持する(S5)。本実施の形態では、例えば走行中の振動によって操作部材110とともに回転軸112が回転しようとする場合に、制御部190は、第一アクチュエータ151を制御することで回転軸112に逆回りの反力を与える。これにより、回転軸112の回転が防止され、その結果、操作部材110の回転位置が所定の位置に保持される。なお、操作部材110が格納領域と通常位置との間で移動する期間も、原則、操作部材110の回転位置が所定の位置に保持される。その後、制御部190は、所定の操作等に応じて移動部170を作動させることで、操作部材110の後方への移動(進出)を開始する(S12)。その後、外力検出部180により外力が検出された場合、判定部181は、その外力の方向と操作部材110の移動方向が同じか否かを判定する(S20)。この判定の結果、外力の方向と操作部材110の移動方向が同じ場合(S20でYes)、制御部190は、第一アクチュエータ151を制御することで、操作部材110の回転位置の保持を解除する(S41)。これにより、運転者は、操作部材110の手動操作を早期に行うことができる。
【0068】
このように、本実施の形態に係るステアリング装置100は、操作部材110の回転位置を所定の回転位置に保持する回転保持部として機能する第一アクチュエータ151を備える。制御部190は、操作部材110が通常位置に向けて移動中に、外力の方向と移動方向とが同じであることを示す判定結果を取得した場合、第一アクチュエータ151による回転位置の保持を解除する。
【0069】
これにより、例えば、運転者が、操作部材110が通常位置に向けて移動している途中で、操作部材110の操作を早く開始したいために、操作部材110を引っ張った場合、その時点で操作部材110の回転位置の保持が解除される。従って、例えば、運転者は操作部材110を掴んだ時点で、即座に操作部材110による手動運転を開始することができる。なお、このとき、
図6の(d)を用いて説明したように、操作部材110の移動速度の増加を伴ってもよい。つまり、通常位置に向けて移動中の操作部材110に、通常位置に向けて引っ張る外力が与えられた場合、操作部材110の移動速度の増加と、操作部材110の回転位置の保持の解除とが並行して実行されてもよい。また、このとき、同期制御を伴っても良い。つまり、通常位置に向けて移動中の操作部材110に、通常位置に向けて引っ張る外力が与えられた場合、操作部材110の回転位置についての同期制御と、操作部材110の回転位置の保持の解除とが並行して実行されてもよい。さらに例えば、操作部材110の移動速度の増加と、操作部材110の同期制御と、操作部材110の回転位置の保持の解除とが並行して実行されてもよい。
【0070】
なお、第一アクチュエータ151が回転保持部として機能することは必須ではない。ステアリング装置100は、例えば、制御部190の制御に応じて、回転軸112に周方向で係合する部材を移動させるロック機構部を備えてもよい。この場合、回転保持部による回転軸112の保持及びその解除の機能を、ロック機構部が担うことができる。
【0071】
また、本実施の形態に係るステアリング装置100は、方向指示器またはホーン等である入力部187についても、操作部材110に与えられた外力の方向と、操作部材110の移動方向との同否判定に基づいて制御することができる。この動作例を、
図13を参照して説明する。
【0072】
図13に示すように、制御部190は、例えば車両が自動運転モードで走行中は、方向指示器等の入力部187の誤動作または誤操作を防止するために、入力部187を無効化する(S6)。これにより、自動運転モードで走行中において、仮にウインカーレバーが操作されたとしても、その操作に応じた方向指示器の動作は実行されない。その後、制御部190は、自動運転モードから手動運転モードに切り替えられる場合、移動部170を作動させることで、操作部材110の後方への移動(進出)を開始する(S12)。その後、外力検出部180により外力が検出された場合、判定部181は、その外力の方向と操作部材110の移動方向が同じか否かを判定する(S20)。この判定の結果、外力の方向と操作部材110の移動方向が同じ場合(S20でYes)、制御部190は、無効化していた入力部187を有効化する(S42)。これにより、運転者は、入力部187の操作を早期に行うことができる。
【0073】
このように、本実施の形態に係るステアリング装置100は、運転者による入力を受け付けて動作することができる入力部187を備える。制御部190は、運転者による操作部材110の操作に基づいて、車両の転舵輪210の転舵を駆動する手動運転モードと、運転者による操作部材110の操作によらずに生成される指示に基づいて転舵輪210の転舵を駆動する自動運転モードとの切り替えが可能である。制御部190は、自動運転モードでは入力部187を無効化することで、入力を受け付けない状態にする。制御部190は、入力部187が無効化されている状態で、かつ、操作部材110が通常位置に向けて移動中に、外力の方向と移動方向とが同じであることを示す判定結果を取得した場合、無効化されている入力部187を有効化する。
【0074】
これにより、例えば、運転者が、操作部材110が通常位置に向けて移動している途中で、操作部材110の操作を早く開始したいために、操作部材110を引っ張った場合、無効化されていた入力部187がその時点で有効化される。従って、例えば、運転者は操作部材110を掴んだ時点で、即座に、方向指示器を操作すること、または、ホーンを鳴らすこと等を実行することができる。なお、このとき、
図6の(d)を用いて説明したように、操作部材110の移動速度の増加を伴ってもよい。つまり、通常位置に向けて移動中の操作部材110に、通常位置に向けて引っ張る外力が与えられた場合、操作部材110の移動速度の増加と、入力部187の有効化とが並行して実行されてもよい。
【0075】
また、ステアリング装置100は、自動運転モードにおいて無効化した操作部材110を通常位置に向けて移動している期間に、操作部材110が引っ張られた場合、その時点で操作部材110を有効化してもよい。つまり、制御部190は、運転者による操作部材110の操作に基づいて、車両の転舵輪210の転舵を駆動する手動運転モードと、運転者による操作部材110の操作によらずに生成される指示に基づいて転舵輪210の転舵を駆動する自動運転モードとの切り替えが可能である。制御部190は、自動運転モードでは操作部材110を無効化することで、運転者による操作部材110の操作を受け付けない状態にする。制御部190は、操作部材110が無効化されている状態で、かつ、操作部材110が通常位置に向けて移動中に、外力の方向と移動方向とが同じであることを示す判定結果を取得した場合、無効化されている操作部材110を有効化する。つまり、運転者の操作部材110の操作による車両の運転、すなわち、手動運転モードが開始される。
【0076】
これにより、例えば、運転者が、操作部材110が通常位置に向けて移動している途中で、操作部材110の操作を早く開始したいために、操作部材110を引っ張った場合、無効化されていた操作部材110がその時点で有効化される。従って、例えば、運転者は操作部材110を掴んだ時点で、即座に、操作部材110を操作することによる車両に運転(手動運転)を開始することができる。なお、このとき、
図6の(d)を用いて説明したように、操作部材110の移動速度の増加を伴ってもよい。つまり、通常位置に向けて移動中の操作部材110に、通常位置に向けて引っ張る外力が与えられた場合、操作部材110の移動速度の増加と、操作部材110の有効化とが並行して実行されてもよい。
【0077】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係るステアリング装置について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0078】
例えば、ステアリング装置100は、回転機構部130を備えることは必須ではない。つまり、操作部材110の出退に、操作部材110の、車両の幅方向に延びる回転軸Ab回りの回転は伴わなくてもよい。この場合であっても、操作部材110を、運転席の前方のダッシュボード等に形成された格納領域に格納することは可能である。また、操作部材110の格納領域への格納には、操作部材110を支持している部材であって、ステアリング軸Aaの方向から見た場合に非円形である部材も格納領域に格納される場合がある。この場合は、操作部材110の格納時における回転位置は制限される。そのため、格納領域から進出した時点での操作部材110の回転位置と、その時点の転舵輪210の転舵角との対応が不一致となる問題は生じる。従って、この場合も、例えば
図11を用いて説明したように、通常位置への進出中における操作部材110の回転位置についての同期制御は、ステアリング装置100の効率的な動作制御に有用である。
【0079】
また、制御部190による、第一アクチュエータ151等を有するステアリング機構部101を制御する機能と、第二アクチュエータ250等を有する転舵機構部102を制御する機能とは、互いに別体のコンピュータで実現されてもよい。つまり、ステアリング機構部101を制御する第一制御部と、転舵機構部102を制御する第二制御部と、第一制御部及び第二制御部を制御する主制御部とによって、本実施の形態に係る制御部190が実現されてもよい。さらに、第一制御部が、第二制御部を制御する機能を有することで、第一制御部及び第二制御部によって、本実施の形態に係る制御部190が実現されてもよい。つまり、ステアリング装置100を制御するためのハードウェア及びソフトウェアの構成に特に限定はなく、その配置位置にも特に限定はない。
【0080】
また、操作部材110を前後方向に移動させるための機構は、スライド機構でなくてもよい。例えば、操作部材110等を含む機構部を一体として支持する、1以上の間接を持つアームの折り畳み及び展開により、操作部材110を格納領域と通常位置との間で移動させてもよい。
【0081】
また、操作部材110は、
図1に示すような円環状である必要はない。例えば、操作部材110の、
図2における上端部または/及び下端部などの一部を欠いたようなU字状またはH字状であってもよい。つまり、運転者が、手動運転モードにおいて車両の運転が可能ない状態で把持できる形状及びサイズであれば、操作部材110の形状及びサイズに特に限定はない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、運転者の前方空間を広げることができ、かつ、動作制御を効率よく行うことができるステアリング装置として有用である。従って、手動運転が可能であり、かつ自動運転が可能な乗用車、バス、トラック、農機、建機など、車輪または無限軌道などを備えた車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0083】
100:ステアリング装置、101:ステアリング機構部、102:転舵機構部、110:操作部材、回転軸:112、115:支持部材、130:回転機構部、131:回転用モータ、140:スイッチ保持部、150:反力発生装置、151:第一アクチュエータ、161:基礎ガイド、162:可動体、170:移動部、172:スライド用モータ、173:スライド駆動軸、180:外力検出部、181:判定部、182:位置検出部、187:入力部、190:制御部、210:転舵輪、211:タイロッド、230:軸体、250:第二アクチュエータ、300:上位制御部