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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/569 20210101AFI20231031BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20231031BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20231031BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20231031BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20231031BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231031BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H01M50/569
H01M50/284
H01M50/209
H01M50/505
H01M50/503
H01M10/48 P
H02J7/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020011994
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021118136
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-12-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】沼田 達宏
(72)【発明者】
【氏名】河原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】青木 公甫
(72)【発明者】
【氏名】城 貴洋
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0241094(US,A1)
【文献】特開2010-142083(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189898(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/103003(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/083208(WO,A1)
【文献】特開2016-091613(JP,A)
【文献】特開2017-195049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/20
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(10)と、前記筐体内に複数設置されており、それぞれが複数の電池セル(22)を有する組電池(20)と、前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から、各前記電池セルの電圧情報を含む電池情報を取得する取得装置(30)と、前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置は前記無線通信のための親機アンテナ(46)を備え、各前記取得装置は前記無線通信のための子機アンテナ(36)を備え、
各前記組電池に、前記電池セルどうしを電気的に接続する導電体製の導電接続部(24)を有する突起部(23)が形成されている、電池パックにおいて、
前記突起部が突出している方向を突出方向(Z+)として、前記筐体内において、各前記子機アンテナは、それぞれ少なくとも一部が、各前記導電接続部の前記突出方向の端(24z)よりも前記突出方向に配置されており、
前記親機アンテナから発信された電波における反射していない直接波(Rd)が、前記導電接続部に遮断されることなく各前記子機アンテナに届いて受信され、且つ、各前記子機アンテナから発信された電波における反射していない直接波が、前記導電接続部に遮断されることなく前記親機アンテナに届いて受信され
前記取得装置は、前記突出方向と交差する方向(X,Y)に延びる基板(35)を有し、前記基板と前記筐体の内面との前記突出方向の間隔(G1)の方が、前記導電接続部の前記突出方向の端と前記基板との前記突出方向の間隔(G2)よりも大きく、
前記子機アンテナは、前記基板における前記突出方向側の面に設置されている、電池パック。
【請求項2】
筐体(10)と、前記筐体内に複数設置されており、それぞれが複数の電池セル(22)を有する組電池(20)と、前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から、各前記電池セルの電圧情報を含む電池情報を取得する取得装置(30)と、前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置は前記無線通信のための親機アンテナ(46)を備え、各前記取得装置は前記無線通信のための子機アンテナ(36)を備え、
各前記組電池に、前記電池セルどうしを電気的に接続する導電体製の導電接続部(24)を有する突起部(23)が形成されている、電池パックにおいて、
前記突起部が突出している方向を突出方向(Z+)として、前記筐体内において、各前記子機アンテナは、それぞれ少なくとも一部が、各前記導電接続部の前記突出方向の端(24z)よりも前記突出方向に配置されており、
前記取得装置は、前記突出方向と交差する方向(X,Y)に延びる基板(35)を有し、前記基板と前記筐体の内面との前記突出方向の間隔(G1)の方が、前記導電接続部の前記突出方向の端と前記基板との前記突出方向の間隔(G2)よりも大きく、
前記子機アンテナは、前記基板における前記突出方向側の面に設置されている、電池パック。
【請求項3】
筐体(10)と、前記筐体内に複数設置されており、それぞれが複数の電池セル(22)を有する組電池(20)と、前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から、各前記電池セルの電圧情報を含む電池情報を取得する取得装置(30)と、前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置は前記無線通信のための親機アンテナ(46)を備え、各前記取得装置は前記無線通信のための子機アンテナ(36)を備え、
各前記組電池に、前記電池セルどうしを電気的に接続する導電体製の導電接続部(24)を有する突起部(23)が形成されている、電池パックにおいて、
前記突起部が突出している方向を突出方向(Z+)として、前記筐体内において、各前記子機アンテナは、それぞれ少なくとも一部が、各前記導電接続部の前記突出方向の端(24z)よりも前記突出方向に配置されており、
前記親機アンテナから発信された電波における反射していない直接波(Rd)が、前記導電接続部に遮断されることなく各前記子機アンテナに届いて受信され、且つ、各前記子機アンテナから発信された電波における反射していない直接波が、前記導電接続部に遮断されることなく前記親機アンテナに届いて受信され、
前記取得装置は、前記突出方向と交差する方向(X,Y)に延びる基板(35)を有し、前記基板と前記筐体の内面との前記突出方向の間隔(G1)よりも、前記導電接続部の前記突出方向の端と前記基板との前記突出方向の間隔(G2)の方が大きく、
前記子機アンテナは、前記基板における前記突出方向とは反対方向(Z-)側の面に設置されている、電池パック。
【請求項4】
筐体(10)と、前記筐体内に複数設置されており、それぞれが複数の電池セル(22)を有する組電池(20)と、前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から、各前記電池セルの電圧情報を含む電池情報を取得する取得装置(30)と、前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置は前記無線通信のための親機アンテナ(46)を備え、各前記取得装置は前記無線通信のための子機アンテナ(36)を備え、
各前記組電池に、前記電池セルどうしを電気的に接続する導電体製の導電接続部(24)を有する突起部(23)が形成されている、電池パックにおいて、
前記突起部が突出している方向を突出方向(Z+)として、前記筐体内において、各前記子機アンテナは、それぞれ少なくとも一部が、各前記導電接続部の前記突出方向の端(24z)よりも前記突出方向に配置されており、
前記取得装置は、前記突出方向と交差する方向(X,Y)に延びる基板(35)を有し、前記基板と前記筐体の内面との前記突出方向の間隔(G1)よりも、前記導電接続部の前記突出方向の端と前記基板との前記突出方向の間隔(G2)の方が大きく、
前記子機アンテナは、前記基板における前記突出方向とは反対方向(Z-)側の面に設置されている、電池パック。
【請求項5】
前記導電接続部は、各前記電池セルの電極端子(25,26)と、隣り合う前記電池セルの前記電極端子どうしを電気的に接続するバスバー(27)とを有し、前記導電接続部の前記突出方向の端は、前記バスバーの前記突出方向の端である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記導電接続部は、各前記電池セルの電極端子(25,26)と、隣り合う前記電池セルの前記電極端子どうしを電気的に接続するバスバー(27)とを有し、前記導電接続部の前記突出方向の端は、前記電極端子の前記突出方向の端である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項7】
前記筐体が導電体製の遮蔽部を有し、前記親機アンテナ及び各前記子機アンテナは前記遮蔽部により囲まれている、請求項1~6のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項8】
複数の前記組電池は、前記突出方向に直交する第1方向(X)に並設されており、各前記組電池は、複数の前記電池セルを、前記突出方向及び前記第1方向の双方に直交する第2方向(Y)に並べて有しており、各前記突起部は、前記第2方向に延びる突条である、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項9】
各前記取得装置は、非導電体製のケース(33)を有し、前記ケースは、その内側に前記子機アンテナが設置されると共に前記突起部に取り付けられている、請求項1~8のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項10】
前記ケースの一部は、前記突起部どうしの間において、前記導電接続部の前記突出方向の端よりも前記突出方向の反対方向(Z-)に配置されている、請求項9に記載の電池パック。
【請求項11】
前記突起部の少なくとも一部は、前記親機アンテナと前記子機アンテナとの間に位置し、
前記親機アンテナと前記子機アンテナとは、前記突出方向に直交する方向に並んでいる、請求項1~10のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項12】
複数の前記組電池は、前記突出方向に直交する第1方向に並設されており、
前記第1方向において、前記突起部は、前記親機アンテナと前記子機アンテナとの間、又は前記子機アンテナと前記子機アンテナとの間に位置している、請求項1~11のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項13】
前記監視装置は、前記組電池の側面に取り付けられ、
前記取得装置は、前記突起部を介して前記組電池の上面に取り付けられている、請求項1~12のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項14】
各前記取得装置は、非導電体製のケースと、そのケースの内側に設けられている基板とを有し、その基板に前記子機アンテナが設置されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項15】
各前記取得装置は、ケースを有し、そのケースから前記突起部に取り付けられる取付部(31、32)が突出しており、
各前記子機アンテナは、それぞれ少なくとも一部が、前記取付部よりも前記突出方向に配置されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の組電池を有する電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックの中には、次のように構成されたものがある。電池パックは、金属製の筐体と、その筐体内に設置されている、複数の組電池と複数の取得装置と監視装置とを有する。取得装置は、組電池毎に設置されており、自身に対応する組電池から電池情報を取得する。監視装置は、各取得装置と無線通信をして電池情報を取得する。
【0003】
監視装置及び各取得装置は、無線通信用のアンテナを備える。それらのアンテナから発信される電波は、金属製の筐体の内面で反射することで多数の反射波が生成される。そのため、受信側のアンテナに複数の電波が重畳することがある。その重畳による電波干渉により、通信障害が生じて、無線通信が成立しなくなったり通信途絶が発生したりすることがある。
【0004】
そして、電波干渉による通信障害の大小は、通信周波数により変化する。そのため、ある通信周波数において、通信不成立や通信途絶が発生した場合、通信周波数を変更して無線通信を行う。そして、このような技術を示す文献としては、次の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/103008号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術によれば、通信周波数を変更することにより、無線通信を成立させることはできる。しかしながら、通信不成立や通信途絶の発生自体を抑制するものではない。そのため、通信不成立や通信途絶が頻発して、その都度、通信周波数の変更に迫られる、といった状況等が起こり得る。そして、このように通信不成立や通信途絶が頻発すれば、データの更新頻度が下がる。そのため、このような通信システムは、電池パック等のリアルタイム性を重視する装置に対しては、適さないものとなってしまう。
【0007】
そして、このような課題の解決等、通信の信頼性の確保は、各組電池におけるアンテナ側に、電池セルどうしを電気的に接続する導電接続部を有する突起部が形成されている場合に、特に困難になることに本発明者は着目した。なぜなら、スペース等の関係上、筐体内におけるその内面と導電接続部との間隔は狭くなりがちなため、上記の場合、取得装置のアンテナが、監視装置のアンテナから見て導電接続部の背後に隠れてしまうことになり易い。その場合、導電体には電波を遮蔽する作用があるため、導電接続部により、監視装置及び取得装置の各アンテナから相手方のアンテナへの直接波が遮られてしまう。そのため、各アンテナは相手方のアンテナから、直接波よりも伝搬強度の弱い反射波しか受信できなくなってしまう。さらに上記のとおり、筐体内におけるその内面と導電接続部との間隔は狭くなりがちなため、この部分では電波が乱反射することになり易い。そのため、各アンテナは相手方のアンテナから、乱反射した電波等の各反射波しか受信できず、上記のとおり、通信の信頼性の確保が困難になってしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、各組電池におけるアンテナ側に、電池セルどうしを電気的に接続する導電接続部を有する突起部が形成されている場合において、通信の信頼性を確保することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電池パックは、筐体と組電池と取得装置と監視装置とを有する、前記組電池は、前記筐体内に複数設置されており、それぞれが複数の電池セルを有する。前記取得装置は、前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から、各前記電池セルの電圧情報を含む電池情報を取得する。前記監視装置は、前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する。
【0010】
前記監視装置は前記無線通信のための親機アンテナを備える。各前記取得装置は前記無線通信のための子機アンテナを備える。各前記組電池に、前記電池セルどうしを電気的に接続する導電体製の導電接続部を有する突起部が形成されている。
【0011】
以下では、前記突起部が突出している方向を突出方向とする。前記筐体内において、各前記子機アンテナは、それぞれ少なくとも一部が、各前記導電接続部の前記突出方向の端よりも前記突出方向に配置されている。そして、前記親機アンテナから発信された電波における反射していない直接波が、前記導電接続部に遮断されることなく各前記子機アンテナに届いて受信され、各前記子機アンテナから発信された電波における反射していない直接波が、前記導電接続部に遮断されることなく前記親機アンテナに届いて受信される。
【0012】
本発明では、スペース等の関係により狭くなりがちな、筐体内における各導電接続部の突出方向の端よりも突出方向の領域に、敢えて各子機アンテナを配置している。それにより、親機アンテナからの直接波が導電接続部に遮断されることなく各子機アンテナに届く構造が実現されており、各子機アンテナは、反射波よりも伝搬強度の強い直接波を親機アンテナから受信できる。また、各子機アンテナからの直接波が導電接続部に遮断されることなく親機アンテナに届く構造が実現されており、親機アンテナは、反射波よりも伝搬強度の強い直接波を各子機アンテナから受信できる。以上により、各アンテナが相手方のアンテナから反射波しか受信できない場合に比べて、通信の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の電池パックを示す斜視図
図2】電池パックを示す平面図
図3】電池パックを示す正面断面図
図4】比較例と本実施形態との無線通信を示す正面断面図
図5】第2実施形態の電池パックを示す正面断面図
図6】第3実施形態の電池パックを示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の電池パック101を示す斜視図である。電池パック101は、車両等に搭載されている。電池パック101は、金属製の筐体10と、筐体10内に設置されている、複数の組電池20と複数の取得装置30と監視装置40とを有する。各取得装置30及び監視装置40は、各組電池20を監視する電池監視システムを構成している。
【0016】
以下では、図に合わせて、互いに直交し合う所定の3方向を、それぞれ「左右方向X」「前後方向Y」「上下方向Z」という。ただし、例えば、以下でいう「上下方向Z」を左右や前後にして設置したり、以下でいう「左右方向X」を前後にして設置したりする等、電池パック101は任意の方向に設置することができる。
【0017】
複数の組電池20は、左右方向Xに並設されている。そして、各組電池20は、複数の電池セル22を前後方向Yに並べて有している。そして、各組電池20の上面の左端部及び右端部には、当該組電池20の上面から上方Z+に突出すると共に前後方向Yに延びる突条状の突起部23が形成されている。具体的には、各突起部23は、前端の電池セル22の上面から後端の電池セル22の上面にまで延びる突条である。
【0018】
取得装置30は、組電池20毎に設置されている。そして、各取得装置30は、自身に対応する組電池20の左右の突起部23どうしの間に設置されている。各取得装置30は、自身に対応する組電池20から、当該組電池20に関する情報である電池情報を取得する。その電池情報は、例えば、当該組電池20が有する複数の各電池セル22の電圧情報及び温度情報や、当該組電池20に流れる電流情報等を含む。
【0019】
監視装置40は、本実施形態では、左端の組電池20の左側面に取り付けられている。監視装置40は、各取得装置30と無線通信をする。その無線通信により、取得装置30に電池情報を取得させる取得指令を送信したり、各取得装置30から電池情報を受信したり、取得装置30に各電池セル22の電圧を均等化させる均等化指令を送信したりする。
【0020】
筐体10は、金属等の導電体により構成されている。そのため、筐体10の全体が、電波を反射させる遮蔽部を構成している。
【0021】
図2は、電池パック101を示す平面図である。各突起部23は、非導電体製の突起基部28と、電池セル22どうしを電気的に接続する導電体製の導電接続部24とを有する。その導電接続部24は、各電池セル22の電極端子25,26と、バスバー27とを有する。バスバー27は、前後方向Yに隣り合う電池セル22の電極端子25,26どうしを電気的に接続している。突起基部28は、樹脂等であり、導電接続部24を覆う形で設置されている。
【0022】
各組電池20についてより具体的には、各電池セル22は、上記の電極端子25,26として、正極端子25と負極端子26とを有する。そして例えば、前端の電池セル22は、負極端子26を左側、正極端子25を右側にして設置されている。そして前から2番目の電池セル22は、前端の電池セル22とは反対に、正極端子25を左側、負極端子26を右側にして設置されている。そして前から3番目の電池セル22は、前端の電池セル22と同様に、負極端子26を左側、正極端子25を右側にして設置されている。
【0023】
このように、前後方向Yに並ぶ各電池セル22が、1つ前の電池セル22に対して、正極端子25及び負極端子26の位置を左右方向Xに反対にして設置されている。そして、後端の電池セル22以外の各電池セル22の負極端子26は、1つ後の電池セル22の正極端子25にバスバー27により電気的に接続されている。これにより、複数の電池セル22が電気的に直列に接続されている。そして、前端の電池セル22の正極端子25は、所定の正極配線15に接続され、後端の電池セル22の負極端子26は、所定の負極配線16に接続されている。
【0024】
図3(a)は、図2に示すIIIa-IIIa線の断面を示す断面図である。図3(b)は、図3(a)における左端の組電池20及びその周辺を拡大した拡大図である。バスバー27は、電気的に接続する負極端子26と正極端子25とに上から被さる形で設置されている。そのため、バスバー27の上端が、導電接続部24の上端24zを構成している。そのバスバー27に上から被さる形で、突起基部28が設置されている。
【0025】
各取得装置30は、樹脂等の非導電体製のケース33と、そのケース33の内側に設けられている基板35とを有する。その基板35に、監視装置40と無線通信を行うための子機アンテナ36が設置されている。そして、各ケース33の左側面には、左方に突出する左取付部31が設けられ、各ケース33の右側面には、右方に突出する右取付部32が設けられている。
【0026】
そして、左取付部31が、組電池20の左側の突起部23にネジ等で止着され、右取付部32が、組電池20の右側の突起部23にネジ等で止着されている。それにより、各ケース33は、自身に対応する組電池20の左右の突起部23に、当該左右の突起部23どうしの間を跨ぐ形で取り付けられている。そのため、各子機アンテナ36の左右方向Xの位置は、その子機アンテナ36に対応する組電池20の左右の突起部23どうしの間である。各子機アンテナ36の前後方向Yの位置は、同じであってもよいし、互いに前後方向Yにずれていてもよい。
【0027】
各ケース33の下部は、突起部23どうしの間において、導電接続部24の上端24zよりも下方Z-に配置されている。他方、各ケース33の上部及び基板35は、導電接続部24の上端24zよりも上方Z+に配置されている。
【0028】
以下では、基板35の上面と筐体10の天井面との上下方向Zの間隔を「第1間隔G1」といい、導電接続部24の上端24zと基板35の下面との上下方向Zの間隔を第2間隔G2という。本実施形態では、上側の第1間隔G1の方が下側の第2間隔G2よりも大きい。そして、各基板35の上面に、子機アンテナ36が基板35の上面から上方Z+に突出する形で設置されている。そのため、各取得装置30は、導電接続部24の上端24zよりも上方に子機アンテナ36を備えている。
【0029】
また、監視装置40も、各取得装置30の基板35と同程度の高さに基板45を備えている。その基板45の上面に、各取得装置30と無線通信を行うための親機アンテナ46が、基板45の上面から上方Z+に突出する形で設置されている。そのため、監視装置40は、導電接続部24の上端24zよりも上方Z+に、親機アンテナ46を備えている。
【0030】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。以下では、アンテナ36,46から発信されてから一度も反射していない電波を「直接波」といい、アンテナ36,46から発信されてから一度でも反射した電波を「反射波」という。
【0031】
図4(a)は、本実施形態の状態から各子機アンテナ36の位置を下方Z-にシフトさせて、各子機アンテナ36の全体を導電接続部24の上端24zよりも下方Z-に配置した比較例を示す正面断面図である。なお、この比較例における各子機アンテナ36の左右方向X及び前後方向Yの位置は、本実施形態の場合と同じである。
【0032】
この比較例のように、各子機アンテナ36の全体が、導電接続部24の上端24zよりも下方Z-にある場合、親機アンテナ46からの直接波Rdは、導電接続部24に遮断されることにより各子機アンテナ36には届かず、反射波Riのみが各子機アンテナ36に届いて受信されることとなる。また逆に、各子機アンテナ36からの直接波も、導電接続部24に遮断されることにより親機アンテナ46には届かず、反射波のみが親機アンテナ46に届いて受信されることとなる。
【0033】
その点、本実施形態では、図4(b)に示すように、スペース等の関係により狭くなりがちな、筐体10内における各導電接続部24の上端24zよりも上方Z+の領域に、敢えて親機アンテナ46及び各子機アンテナ36を配置している。なお、図4等では、見やすいように、組電池20の上部等を大袈裟に大きく示しているが、実際の筐体10内における各導電接続部24の上端24zよりも上方Z+の領域は、図4等に示すものよりも遥かに小さい。
【0034】
以上の各アンテナ46,36の配置により、親機アンテナ46からの直接波Rdは、導電接続部24を含むいずれの導電体にも遮断されることなく各子機アンテナ36に届くこととなる。そのため、各子機アンテナ36は、反射波Riよりも伝搬強度の強い直接波Rdを親機アンテナ46から受信できる。また逆に、各子機アンテナ36からの直接波も、導電接続部24を含むいずれの導電体にも遮断されることなく親機アンテナ46に届くこととなる。そのため、親機アンテナ46も、反射波よりも伝搬強度の強い直接波を各子機アンテナ36から受信できる。以上により、各アンテナ36,46が相手方のアンテナ46,36から反射波しか受信できない場合に比べて、通信の信頼性を確保することができる。
【0035】
また、本実施形態では、図3(b)に示すように、上側の第1間隔G1の方が下側の第2間隔G2よりも大きい。そして、各子機アンテナ36は、基板35の上面に設置されている。そのため、第1間隔G1及び第2間隔G2のうち相対的に大きい第1間隔G1を有効に活用して、子機アンテナ36を設置するスペースを確保することができる。
【0036】
また、本実施形態では、筐体10は金属等の導電体であり、その全体が電波を反射させる遮蔽部を構成しているため、親機アンテナ46及び各子機アンテナ36は遮蔽部により囲まれていることになる。そのため、筐体10の外部の電波が親機アンテナ46及び各子機アンテナ36に届き難い。そのため、それら外部の電波との電波干渉が生じ難い。そのため、これによっても、通信の信頼性を確保することができる。また逆に、親機アンテナ46及び各子機アンテナ36が発信した電波は、筐体10の外部に漏洩し難い。そのため、電池パック101の外部の他の通信機器に悪影響を及ぼすのを抑制することもできる。
【0037】
また、本実施形態では、複数の組電池20は、左右方向Xに並設されている。そして、各突起部23は、左右方向Xに直交する前後方向Yに延びる突条である。そのため、本来ならば、その前後方向Yに延びる突起部23により、親機アンテナ46と各子機アンテナ36との間で直接波が遮断されてしまい易い。そのため、本実施形態では、直接波が相手方のアンテナ36,46に届くようになる上記の効果を、より顕著に得ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、各取得装置30のケース33は、非導電体製であるので、電波を遮断しない。そのケース33の内側に子機アンテナ36を設置すると共に、そのケース33を突起部23に取り付けている。それにより、子機アンテナ36を、親機アンテナ46と直接波により通信可能な位置に簡単に配置することができる。
【0039】
また、ケース33の下部は、突起部23どうしの間における導電接続部24の上端24zよりも下方Z-に配置されている。そのため、突起部23どうしの間の空間を有効に利用することができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。以降の実施形態では、それ以前の実施形態のものと同一の又は対応する部材等については、同一の符号を付する。ただし、電池パック自体については、実施形態毎に異なる符号を付する。本実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0041】
図5は、第2実施形態の電池パック102を示す正面断面図である。各突起部23は、正極端子25及び負極端子26がバスバー27を上下方向Zに貫通する形で設置されている。そのため、本実施形態では、正極端子25及び負極端子26の各上端が、導電接続部24の上端24zを構成している。その導電接続部24の上端24zよりも上方Z+に、親機アンテナ46及び子機アンテナ36が配置されている。
【0042】
本実施形態によれば、正極端子25及び負極端子26の各上端が、導電接続部24の上端24zを構成する態様においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。本実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0044】
図6は、第3実施形態の電池パック103を示す正面断面図である。本実施形態では、第1実施形態の場合よりも、基板35が上方Z+に配置されており、上側の第1間隔G1よりも下側の第2間隔G2の方が大きい。そして、各取得装置30において、子機アンテナ36は、基板35の下面に当該下面から下方Z-に突出する形で設置されている。
【0045】
本実施形態では、上側の第1間隔G1よりも下側の第2間隔G2の方が大きい。そして、各子機アンテナ36は、基板35の下面に設置されている。そのため、第1間隔G1及び第2間隔G2のうち相対的に大きい第2間隔G2を有効に活用して、子機アンテナ36を設置するスペースを確保することができる。
【0046】
[他の実施形態]
以上に示した実施例は、次のように変更して実施できる。例えば、各図では、各アンテナ46,36の全体が、突起部23の上端よりも上方Z+に配置されている。それに代えて、各アンテナ46,36の少なくとも一部が、突起部23の上端よりも下方Z-且つ導電接続部24の上端24zよりも上方Z+に配置されていてもよい。突起部23の上端よりも下方Z-であっても、導電接続部24の上端24zよりも上方Z+であれば電波を通す。そのため、上記の態様によれば、突起部23の上端よりも下方Z-且つ導電接続部24の上端24zよりも上方Z+の領域を、有効活用することができる。
【0047】
また例えば、各実施形態では、各アンテナ46,36の全体が、導電接続部24の上端24zよりも上方Z+に配置されている。それに代えて、それらアンテナ46,36どうしが直接波で通信できる限度の範囲内で、各アンテナ46,36の一部が導電接続部24の上端24zよりも下方Z-に配置されていてもよい。言い換えれば、各アンテナ46,36の一部のみが、相手方のアンテナ36,46と直接波で通信できるように、導電接続部24の上端24zよりも上方Z+に配置されていてもよい。
【0048】
また例えば、各実施形態では、親機アンテナ46の少なくとも一部(上端)は、各導電接続部24の上端24zよりも上方に配置されている。それに代えて、親機アンテナ46と各子機アンテナ36とが直接波で通信できる限度の範囲内で、親機アンテナ46の上端を導電接続部24の上端24zよりも下方に配置してもよい。
【0049】
また例えば、各実施形態では、各取得装置30の基板35が導電接続部24の上端24zよりも上方Z+に配置されている。それに代えて、各取得装置30の基板35が導電接続部24の上端24zよりも下方Z-に配置され、各子機アンテナ36の上部のみが、導電接続部24の上端24zよりも上方Z+に配置されていてもよい。なお、この場合においても、第1間隔G1の方が第2間隔G2よりも大きくなる。
【0050】
また例えば、図3図5では、各子機アンテナ36が、基板35の上面から真上に突出しているが、それに代えて、各子機アンテナ36が、基板35の上面から斜め上に突出していてもよい。また例えば、図6では、各子機アンテナ36が、基板35の下面から真下に突出しているが、それに代えて、各子機アンテナ36が、基板35の下面から斜め下に突出していてもよい。
【0051】
また例えば、各図では、親機アンテナ46が、基板45の上面から真上に突出しているが、それに代えて、親機アンテナ46が、基板45の上面から斜め上に突出していてもよい。また例えば、各実施形態の状態よりも、監視装置40の基板45が上方Z+に配置されており、親機アンテナ46が、その基板45の下面から真下に突出したり、斜め下に突出したりしていてもよい。
【0052】
また例えば、各実施形態では、子機アンテナ36がケース33の内側に設置されているが、それに代えて、子機アンテナ36がケース33の外面や突起部23の上面等に設置されていてもよい。また例えば、各実施形態では、各突起部23は、前端の電池セル22の上面から後端の電池セル22の上面にまで延びる突条であるが、それに代えて、各突起部23が、各バスバー27どうしの間毎に途切れることにより、前後方向Yに断続的に延びる突条であってもよい。
【0053】
また例えば、各実施形態では、筐体10の全体が導電体であるが、その外面等の一部のみが導電体製の遮蔽部であってもよい。また例えば、各実施形態では、各組電池20が、複数の電池セル22を前後方向Yに1列に有しているが、2列以上に分けて有していてもよい。また例えば、各実施形態では、監視装置40は、左端の組電池20の左側面に設置されているが、右端の組電池20の右側面や、左右中間部の組電池20の前面又は後面や、筐体10の内面等に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…筐体、20…組電池、22…電池セル、23…突起部、24…導電接続部、24z…導電接続部の上端、30…取得装置、36…子機アンテナ、40…監視装置、46…親機アンテナ、101~103…電池パック、Rd…直接波、Z+…上方。
図1
図2
図3
図4
図5
図6