(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】便座
(51)【国際特許分類】
A47K 13/00 20060101AFI20231031BHJP
B29C 45/72 20060101ALI20231031BHJP
B29C 45/73 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A47K13/00
B29C45/72
B29C45/73
(21)【出願番号】P 2020019913
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】武田 宏二
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】副島 嵩生
(72)【発明者】
【氏名】岩下 直基
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-170761(JP,A)
【文献】特開2019-044141(JP,A)
【文献】特開平7-184806(JP,A)
【文献】特開2000-232950(JP,A)
【文献】特開2005-169925(JP,A)
【文献】米国特許第02493362(US,A)
【文献】中国特許出願公開第111234376(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00
B29C 45/72
B29C 45/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板の上方に設けられる上板と、
前記底板と前記上板とを接合する接合部材と、
を備え、
前記上板は、熱可塑性樹脂と、無機フィラーと、を含み、
前記接合部材は、熱可塑性樹脂を含み、
前記接合部材のメルトフローレイトは、前記上板のメルトフローレイトよりも高く、前記底板のメルトフローレイトよりも高く、20g/10min以上であることを特徴とする便座。
【請求項2】
前記接合部材は、無機フィラーを含まない、または前記上板に含まれる量よりも少ない量の無機フィラーを含むことを特徴とする請求項1記載の便座。
【請求項3】
前記接合部材は、外部に露出する露出面を有し、
前記露出面は、便座の下面に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の便座。
【請求項4】
前記底板は、熱可塑性樹脂と、無機フィラーと、を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の便座。
【請求項5】
前記上板に含まれる前記熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂であり、
加熱部により加熱された金型に前記金型よりも高温に加熱された材料を充填して前記材料を徐々に冷却し、さらに冷却部により前記金型を冷却して前記材料を硬化させることで成形されたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の便座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、便座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、底板と上板と接合部材とからなる便座が知られている(例えば、特許文献1)。このような便座は、例えば、樹脂を含む材料を成形することで底板と上板とを作製し、底板と上板との間に樹脂を含む材料を注入して硬化させた接合部材により底板と上板とを接合することで製造される。
【0003】
このような便座の材料には、例えば、安価なポリプロピレン(PP:Polypropylene)などの樹脂が用いられる。しかし、PPなどの樹脂を用いて便座を成形すると、表面硬度が小さいために、トイレットペーパーの乾拭きなどで便座の表面に傷がつきやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
便座の耐傷性を向上させる手段として、便座の材料となる樹脂に無機フィラーを添加して便座の表面硬度を大きくすることが考えられる。しかし、底板と上板との間に注入する接合部材の材料に無機フィラーを大量に添加すると、注入する材料の流動性が低くなって接合部分に材料をしっかりと充填できなくなるおそれがある。また、この場合、注入部から材料が漏れて外観が悪化してしまったり、接合部材による底板と上板との接着強度が下がったりしてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、外観の悪化を抑制しつつ、表面の耐傷性を向上できる便座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、底板と、前記底板の上方に設けられる上板と、前記底板と前記上板とを接合する接合部材と、を備え、前記上板は、熱可塑性樹脂と、無機フィラーと、を含み、前記接合部材は、熱可塑性樹脂を含み、前記接合部材のメルトフローレイトは、前記上板のメルトフローレイトよりも高く、前記底板のメルトフローレイトよりも高く、20g/10min以上であることを特徴とする便座である。
【0008】
この便座によれば、上板が熱可塑性樹脂と無機フィラーとを含むことで、上板の表面硬度を向上させることができる。これにより、便座の上板側において、表面の耐傷性を高めることができる。また、接合部材のメルトフローレイトを、上板のメルトフローレイトよりも高く、底板のメルトフローレイトよりも高く、20g/10min以上とすることで、接合部材の材料の流動性が低くなり過ぎることを抑制できる。これにより、接合部分に接合部材の材料をしっかりと充填できるとともに、注入部から材料が漏れて外観が悪化してしまったり、接合部材による底板と上板との接着強度が下がったりしてしまうことを抑制できる。また、接合部材の材料の流動性が低くなり過ぎることを抑制できるため、注入部(接合部材の露出面)の大きさを小さくすることができる。これにより、上板と見栄えの異なる接合部材の露出面の範囲を極力小さくすることができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記接合部材は、無機フィラーを含まない、または前記上板に含まれる量よりも少ない量の無機フィラーを含むことを特徴とする便座である。
【0010】
この便座によれば、接合部材が無機フィラーを含まないか、接合部材が無機フィラーを含む場合であっても、接合部材に含まれる無機フィラーの量が上板に含まれる無機フィラーの量よりも少ないため、接合部材の材料の流動性が低くなり過ぎることを抑制できる。これにより、接合部分に接合部材の材料をしっかりと充填できるとともに、注入部から材料が漏れて外観が悪化してしまったり、接合部材による底板と上板との接着強度が下がったりしてしまうことを抑制できる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記接合部材は、外部に露出する露出面を有し、前記露出面は、便座の下面に位置することを特徴とする便座である。
【0012】
この便座によれば、露出面を便座の下面に配置することで、上板と見栄えの異なる接合部材の露出面を目立たなくすることができる。また、露出面を便座の下面に配置することで、露出面に負荷がかかりにくくすることができる。
【0013】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記底板は、熱可塑性樹脂と、無機フィラーと、を含むことを特徴とする便座である。
【0014】
この便座によれば、底板が熱可塑性樹脂と無機フィラーとを含むことで、底板の表面硬度を向上させることができる。これにより、便座の底板側においても、表面の耐傷性を高めることができる。
【0015】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記上板に含まれる前記熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂であり、加熱部により加熱された金型に前記金型よりも高温に加熱された材料を充填して前記材料を徐々に冷却し、さらに冷却部により前記金型を冷却して前記材料を硬化させることで成形されたことを特徴とする便座である。
【0016】
この便座によれば、上板に含まれる熱可塑性樹脂が結晶性樹脂であり、加熱部により加熱された金型に金型よりも高温に加熱された材料を充填して材料を徐々に冷却し、さらに冷却部により金型を冷却して材料を硬化させることで成形することで、表面付近の結晶化を促進し、表面硬度を大きくすることができる。これにより、表面に傷がつくことをさらに抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様によれば、外観の悪化を抑制しつつ、表面の耐傷性を向上できる便座を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る便座を備えたトイレ装置を表す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る便座を表す分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係る便座の一部を表す斜視断面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、実施形態に係る便座の一部を模式的に表す断面図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(c)は、実施形態に係る便座の製造工程の一部を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る便座を備えたトイレ装置を表す斜視図である。
図1に表したように、トイレ装置500は、便座装置100と、洋式腰掛便器(以下、単に「便器」という)200と、を備える。
【0020】
便座装置100は、便器200の上に取り付けられる。便座装置100は、便器200に対して一体的に取り付けられてもよいし、便器200に対して着脱可能に取り付けられてもよい。便座装置100は、便座10と、便蓋20と、本体部30と、を有する。
【0021】
ここで、本願明細書においては、便座10に座った使用者からみて上方を「上方」とし、便座10に座った使用者からみて下方を「下方」とする。また、開いた状態の便蓋20に背を向けて便座10に座った使用者からみて左右方向を、それぞれ「左側方」及び「右側方」とし、前後方向を、それぞれ「前方」及び「後方」とする。
図1には、上方UW、下方DW、左側方LW、右側方RW、前方FW、及び後方BWの一例が表されている。
【0022】
便器200は、下方に向けて窪んだボウル部200aを有する。便器200は、ボウル部200aにおいて使用者の尿や便などの排泄物を受ける。便座装置100の本体部30は、便器200のボウル部200aよりも後方の上部に設けられる。本体部30は、便座10及び便蓋20を開閉可能に軸支している。
【0023】
便座10は、開口部10hを有する。便座10は、ボウル部200aの外縁を囲むように便器200の上に設けられ、開口部10hを介してボウル部200aが露呈される。これにより、使用者は、便座10に座った状態でボウル部200aに排泄を行うことができる。この例では、貫通孔状の開口部10hが形成された、いわゆるO型の便座10を示している。便座10は、O型に限ることなく、U字型などでもよい。便座10の内部には、着座部(使用者の臀部が接する部分)を温めるヒータ等が適宜設けられる。
【0024】
図2は、実施形態に係る便座を表す分解斜視図である。
図3は、実施形態に係る便座の一部を表す斜視断面図である。
図2及び
図3に表したように、便座10は、底板11と、上板12と、第1接合部材13と、第2接合部材14と、を備えている。上板12は、底板11の上方に設けられている。第1接合部材13は、便座10の内周側に設けられ、底板11と上板12とを接合している。第2接合部材14は、便座10の外周側に設けられ、底板11と上板12とを接合している。以下、第1接合部材13と第2接合部材14とをまとめて、「接合部材15」と称する。
【0025】
以下で、便座10のより具体的な構造について説明する。なお、ここでは、「上方」や「下方」などの方向は、便座10の底板11が水平面上に載置された状態(便器200の上に載置され、使用者が着座可能な状態)を基準にしている。
【0026】
図2に表したように、底板11及び上板12は、それぞれ、開口部11h及び開口部12hを有する。底板11及び上板12を上方から見た形状は、便座10を上方から見た形状と実質的に同じである。すなわち、底板11及び上板12を上方から見た形状は、環状又はU字状である。底板11の開口部11h及び上板12の開口部12hによって、便座10の開口部10hが形成される。
【0027】
底板11は、底板基部11a、内周支持部11b、及び外周支持部11cを有する。底板基部11aは、厚みが略一様であり、例えば、前部が水平方向に沿って設けられ、後部が上方に向かって傾斜している。底板基部11aには、便器200の上面と接する支持足11dが適宜設けられる。内周支持部11bは、底板基部11aに対して、便座10の内周側に設けられている。外周支持部11cは、底板基部11aに対して、便座10の外周側に設けられている。
【0028】
上板12は、着座部12a、内周側壁部12b、及び外周側壁部12cを有する。着座部12aは、便座10に着座した使用者の臀部を下方から支持する。着座部12aは、内周側壁部12b及び外周側壁部12cによって下方から支持されている。内周側壁部12bは、着座部12aに対して、便座10の内周側に設けられている。外周側壁部12cは、着座部12aに対して、便座10の外周側に設けられている。
【0029】
図3に表したように、内周側壁部12bは、底板11の内周支持部11bの上に設けられている。外周側壁部12cは、底板11の外周支持部11cの上に設けられている。内周側壁部12bの下端は、第1接合部材13によって内周支持部11bと接合されている。外周側壁部12cの下端は、第2接合部材14によって外周支持部11cと接合されている。
【0030】
底板基部11aと着座部12aは、鉛直方向において離間している。また、内周側壁部12bと外周側壁部12cは、水平方向において離間している。これにより、便座10には、底板11及び上板12によって囲まれた内部空間Sが形成されている。
【0031】
なお、便座10がU字状である場合などは、内周支持部11bと外周支持部11cが底板基部11aの周りで連なり、内周側壁部12bと外周側壁部12cが着座部12aの周りで連なっていても良い。この場合、第1接合部材13と第2接合部材14は、底板基部11aの周りで連続し、一体に設けられていても良い。
【0032】
また、
図3に表したように、便座10は、下面10aと、上面10bと、内側面10cと、外側面10dと、を有する。下面10aは、便座10の下方を向く面である。上面10bは、便座10の上方を向く面である。上面10bは、下面10aの上方に位置する。内側面10cは、便座10の内周側を向く面である。外側面10dは、便座10の外周側を向く面である。内側面10cは、便座10の内周側において、下面10aと上面10bとを接続している。外側面10dは、便座10の外周側において、下面10aと上面10bとを接続している。以下、内側面10cと外側面10dとをまとめて、単に「側面」と称する。
【0033】
この例では、底板11の底板基部11aの下面、内周支持部11bの下面、及び外周支持部11cの下面は、便座10の下面10aを構成している。また、第1接合部材13は、底板11の内周支持部11bと上板12の内周側壁部12bとの間において外部に露出する露出面13aを有する。第2接合部材14は、底板11の外周支持部11cと上板12の外周側壁部12cとの間において外部に露出する露出面14aを有する。露出面13a及び露出面14aは、それぞれ、便座10の下面10aに位置している。換言すれば、露出面13a及び露出面14aは、それぞれ、便座10の下面10aを構成している。
【0034】
このように、露出面13a及び露出面14aを便座10の下面10aに配置することで、上板12と見栄えの異なる第1接合部材13の露出面13a及び第2接合部材14の露出面14aを目立たなくすることができる。また、露出面13a及び露出面14aを便座10の下面10aに配置することで、露出面13a及び露出面14aに負荷がかかりにくくすることができる。
【0035】
また、この例では、上板12の着座部12aの上面は、便座10の上面10bを構成している。また、上板12の内周側壁部12bの内周側の側面は、便座10の内側面10cを構成している。また、上板12の外周側壁部12cの外周側の側面は、便座10の外側面10dを構成している。
【0036】
図4(a)及び
図4(b)は、実施形態に係る便座の一部を模式的に表す断面図である。
図4(a)は、便座10の上板12の一部を模式的に表す断面図である。
図4(b)は、便座10の接合部材15の一部を模式的に表す断面図である。
【0037】
図4(a)に表したように、上板12は、熱可塑性樹脂18aと、無機フィラー18bと、を含む。熱可塑性樹脂18aとしては、例えば、結晶性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂18aとしては、例えば、PPまたはポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybutyleneterephtalate)が用いられる。
【0038】
無機フィラー18bは、無機材料からなるフィラー(充填剤)である。無機フィラー18bとしては、例えば、ガラス繊維などの繊維状の無機フィラーが用いられる。無機フィラー18bは、繊維状でなくてもよい。また、無機フィラー18bは、例えば、針状鉱物、板状鉱物、フリット系鉱物などの鉱物であってもよい。無機フィラー18bとしてガラス繊維を用いる場合、繊維径が直径6μm以上24μm以下(例えば、13μm程度)、長さが10μm以上3000μm以下(例えば、300μm以上1000μm以下程度)のガラス繊維を用いることが好ましい。上板12に含まれる無機フィラー18bの量は、熱可塑性樹脂18aと無機フィラー18bの合計(上板12)の100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下(例えば、10質量部程度)であることが好ましい。
【0039】
上板12が熱可塑性樹脂18aと無機フィラー18bとを含むことで、上板12の表面硬度を向上させることができる。これにより、便座10の上板12側において、表面の耐傷性を高めることができる。
【0040】
また、底板11は、例えば、熱可塑性樹脂18aと、無機フィラー18bと、を含む。底板11に含まれる熱可塑性樹脂18a及び無機フィラー18bは、例えば、上板12に含まれる熱可塑性樹脂18a及び無機フィラー18bと同じである。底板11に含まれる無機フィラー18bの量は、例えば、上板12に含まれる無機フィラー18bの量と同じである。
【0041】
底板11が熱可塑性樹脂18aと無機フィラー16bとを含むことで、底板11の表面硬度を向上させることができる。これにより、便座10の底板11側においても、表面の耐傷性を高めることができる。
【0042】
一方、
図4(b)に表したように、接合部材15(第1接合部材13及び第2接合部材14)は、例えば、熱可塑性樹脂18aを含み、無機フィラー18bを含まない。実施形態において、接合部材15は、熱可塑性樹脂18aと、無機フィラー18bと、を含んでもよい。接合部材15に無機フィラー18bが含まれる場合、接合部材15に含まれる無機フィラー18bの量は、上板12に含まれる無機フィラー18bの量よりも少ない。接合部材15に無機フィラー18bが含まれる場合、接合部材15に含まれる無機フィラー18bの量は、熱可塑性樹脂18aと無機フィラー18bの合計(接合部材15)の100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましい。
【0043】
このように、接合部材15が無機フィラー18bを含まないか、接合部材15が無機フィラー18bを含む場合であっても、接合部材15に含まれる無機フィラー18bの量が上板12に含まれる無機フィラー18bの量よりも少ないため、接合部材15の材料の流動性が低くなり過ぎることを抑制できる。これにより、接合部分に接合部材15の材料をしっかりと充填できるとともに、注入部から材料が漏れて外観が悪化してしまったり、接合部材15による底板11と上板12との接着強度が下がったりしてしまうことを抑制できる。
【0044】
なお、実施形態においては、第1接合部材13及び第2接合部材14の少なくともいずれかが、無機フィラー18bを含まない、または上板12に含まれる量よりも少ない量の無機フィラー18bを含む組成であればよく、第1接合部材13及び第2接合部材14の両方が無機フィラー18bを含まない、または上板12に含まれる量よりも少ない量の無機フィラー18bを含む組成であることが好ましい。
【0045】
また、接合部材15のメルトフローレイトは、上板12のメルトフローレイトよりも高い。また、接合部材15のメルトフローレイトは、底板11のメルトフローレイトよりも高い。接合部材15のメルトフローレイトは、20g/10min以上であり、好ましくは50g/10min以上である。メルトフローレイトは、JIS K 7210-1:2014またはJIS K 7210-2:2014に準拠したメルトマスフローレイトとして求めることができる。例えば、熱可塑性樹脂18aがPPの場合、メルトフローレイトは、JIS K 7210-1:2014に準拠したメルトマスフローレイトとして求めることができる。例えば、熱可塑性樹脂18aがPBTの場合、メルトフローレイトは、JIS K 7210-2:2014に準拠したメルトマスフローレイトとして求めることができる。
【0046】
接合部材15のメルトフローレイトを、上板12のメルトフローレイトよりも高く、底板11のメルトフローレイトよりも高く、20g/10min以上とすることで、接合部材15の材料の流動性が低くなり過ぎることを抑制できる。これにより、接合部分に接合部材15の材料をしっかりと充填できるとともに、注入部から材料が漏れて外観が悪化してしまったり、接合部材15による底板11と上板12との接着強度が下がったりしてしまうことを抑制できる。また、接合部材15の材料の流動性が低くなり過ぎることを抑制できるため、注入部(第1接合部材13の露出面13aまたは第2接合部材14の露出面14a)の大きさを小さくすることができる。これにより、上板12と見栄えの異なる第1接合部材13の露出面13aまたは第2接合部材14の露出面14aの範囲を極力小さくすることができる。
【0047】
なお、実施形態においては、第1接合部材13及び第2接合部材14の少なくともいずれかのメルトフローレイトが、上板12のメルトフローレイトよりも高く、底板11のメルトフローレイトよりも高く、20g/10min以上であればよく、第1接合部材13及び第2接合部材14の両方のメルトフローレイトが、上板12のメルトフローレイトよりも高く、底板11のメルトフローレイトよりも高く、20g/10min以上であることが好ましい。
【0048】
以下、実施形態に係る便座10の製造工程について説明する。
便座10は、例えば、上記の樹脂などを含む材料を成形することで底板11と上板12とを作製し、底板11と上板12とを第1接合部材13及び第2接合部材14により接合させることで、製造することができる。以下では、底板11や上板12を成形する工程について、詳しく説明する。
【0049】
図5(a)~
図5(c)は、実施形態に係る便座の製造工程の一部を表す断面図である。
図5(a)~
図5(c)に表したように、底板11や上板12の成形に用いられる金型Mには、加熱部Hと、冷却部Cと、が設けられている。
【0050】
製造工程においては、まず、
図5(a)に表したように、加熱部Hにより加熱された金型Mに上記の結晶性樹脂などを含む材料Xを充填する。このとき、材料Xは、金型Mよりも高温に加熱された状態で、金型Mに充填される。言い換えると、材料Xは、熱変形温度(ISOR75)のマイナス30℃以上かつ射出シリンダの温度より低い温度に加熱された金型Mに、射出シリンダにより加熱された状態で充填される。これにより、材料Xは、金型Mにおいて徐々に冷却される。次に、
図5(b)に表したように、冷却部Cにより金型Mを冷却することで、金型Mの内部において材料Xを冷却して硬化させる。次に、
図5(c)に表したように、材料Xが硬化することで成形された便座10(底板11や上板12)を金型Mから取り出す。
【0051】
このように、加熱部Hにより加熱された金型Mに金型Mよりも高温に加熱された材料Xを充填して材料Xを徐々に冷却し、さらに冷却部Cにより金型Mを冷却して材料Xを硬化させることで便座10を成形することで、便座10の表面付近の結晶化を促進し、便座10の表面硬度を大きくすることができる。これにより、便座10の表面に傷がつくことをさらに抑制できる。
【0052】
以上説明したように、実施形態によれば、外観の悪化を抑制しつつ、表面の耐傷性を向上できる便座を提供することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0054】
10 便座、 10a 下面、 10b 上面、 10c 内側面、 10d 外側面、 10h 開口部、 11 底板、 11a 底板基部、 11b 内周支持部、 11c 外周支持部、 11d 支持足、 11h 開口部、 12 上板、 12a 着座部、 12b 内周側壁部、 12c 外周側壁部、 12h 開口部、 13、14 第1、第2接合部材、 13a、14a 露出面、 15 接合部材、 18a 熱可塑性樹脂、 18b 無機フィラー、 20 便蓋、 30 本体部、 100 便座装置、 200 便器、 200a ボウル部、 500 トイレ装置、 C 冷却部、 H 加熱部、 M 金型、 S 内部空間、 X 材料