(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】エンジンの排気循環装置
(51)【国際特許分類】
F02M 26/14 20160101AFI20231031BHJP
F02M 26/23 20160101ALI20231031BHJP
F02M 26/06 20160101ALI20231031BHJP
F02M 26/12 20160101ALI20231031BHJP
【FI】
F02M26/14
F02M26/23
F02M26/06 311
F02M26/12
(21)【出願番号】P 2020027787
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】杉本 学
(72)【発明者】
【氏名】倉増 拓
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002831(JP,A)
【文献】特開2003-027986(JP,A)
【文献】特開2004-278342(JP,A)
【文献】特開2018-135825(JP,A)
【文献】特開2015-021439(JP,A)
【文献】特開2019-127920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/14
F02M 26/23
F02M 26/06
F02M 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルームに搭載されたエンジンが排出した排気ガスを浄化する排気浄化装置と、
該排気浄化装置をとおった前記排気ガスを外部に導出する排気管と、
前記排気浄化装置をとおった前記排気ガスの一部を吸気装置に還流するEGR装置とを備えたエンジンの排気循環装置であって、
前記排気管は、
車両前後方向に延びる上流部分と、前記エンジンから離間するように、前記上流部分の後端から車幅方向外側へ向けて延びる下流部分とを有する湾曲部を備え、
前記EGR装置は、
前記排気ガスを冷却するEGRクーラーを備え、
該EGRクーラーが、
前記湾曲部の前記上流部分の車幅方向外側、かつ前記湾曲部の前記下流部分よりも車両前方側に配置されるとともに、車幅方向から見て前記湾曲部の前記上流部分に
重なり合うように配置され
、
車幅方向外側とは逆方向を車幅方向内側として、
前記湾曲部の前記上流部分は、
下端に対して上端が車幅方向内側に位置するように、車幅方向に対して交差した傾斜面を車幅方向外側に備え、
前記EGRクーラーは、
前記湾曲部の前記傾斜面に対向するとともに、前記傾斜面に沿って傾倒した状態で配置された
エンジンの排気循環装置。
【請求項2】
前記EGRクーラーは、
前記排気管の前記湾曲部に対して車幅方向に沿って連結された
請求項1に記載のエンジンの排気循環装置。
【請求項3】
車両のエンジンルームに搭載されたエンジンが排出した排気ガスを浄化する排気浄化装置と、
該排気浄化装置をとおった前記排気ガスを外部に導出する排気管と、
前記排気浄化装置をとおった前記排気ガスの一部を吸気装置に還流するEGR装置とを備えたエンジンの排気循環装置であって、
前記排気管は、
車両前後方向に延びる上流部分と、前記エンジンから離間するように、前記上流部分の後端から車幅方向外側へ向けて延びる下流部分とを有する湾曲部を備え、
前記EGR装置は、
前記排気ガスを冷却するEGRクーラーを備え、
該EGRクーラーが、
前記湾曲部の前記下流部分よりも車両前方側に配置されるとともに、車幅方向から見て前記湾曲部の前記上流部分に重なるように配置され、
前記排気管の前記湾曲部は、
車幅方向に対して交差するように傾斜した傾斜面を車幅方向外側に備え、
前記EGRクーラーは、
前記湾曲部の前記傾斜面に沿って傾倒した状態で配置されるとともに、前記排気管の前記湾曲部に対して車幅方向に沿って連結された
エンジンの排気循環装置。
【請求項4】
前記EGR装置は、
前記EGRクーラーよりも上方に、前記排気ガスの流量を調整する複数のEGRバルブを備え、
該複数のEGRバルブは、
前記EGRクーラーよりも車幅方向内側に配置された
請求項2または請求項3に記載のエンジンの排気循環装置。
【請求項5】
前記EGR装置は、
前記EGRクーラーよりも上方の部分が、ブラケットを介してエンジンに締結固定された
請求項2から請求項4のいずれか1つに記載のエンジンの排気循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばエンジンから離間するように湾曲した形状の排気管と、排気ガスの一部を吸気装置に還流するEGR装置とを備えたようなエンジンの排気循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両では、エンジンが排出した排気ガスを外部に排出するとともに、排気ガスの一部を吸気装置に還流する排気循環装置を備えたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エンジンが排出した排気ガスを浄化する排気浄化装置と、排気浄化装置をとおった排気ガスを外部に導出する排気管と、排気ガスの一部を吸気装置に還流する排気再循環(以下、「EGR」と呼ぶ)装置とを備えた排気循環装置が開示されている。
【0004】
ところで、昨今、自動車などの車両では、車室内の居住性を向上するために車室床面を低床化する、あるいは走行用のバッテリを配置するスペースを車室床面の車両下方側に確保していることがある。この場合、例えば、縦置きエンジンの車両では、排気管を車両後方へ向けて略直線的に延設することができないため、排気浄化装置の直後において、排気管をエンジンから離間するように車幅方向外側へ湾曲させる必要がある。
【0005】
さらに、特許文献1のようにEGR装置を備えた車両では、EGR装置を配置するための配置スペースを上下方向に確保する必要があるため、排気循環装置の大きさが大型化し易いという問題があった。特に、縦置きエンジンの車両では、排気管の湾曲した部分の車幅方向外側にデッドスペースが生じ易いため、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、エンジンから離間するように湾曲した排気管を備えた場合であっても、その大きさの大型化を抑えられるエンジンの排気循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、車両のエンジンルームに搭載されたエンジンが排出した排気ガスを浄化する排気浄化装置と、該排気浄化装置をとおった前記排気ガスを外部に導出する排気管と、前記排気浄化装置をとおった前記排気ガスの一部を吸気装置に還流するEGR装置とを備えたエンジンの排気循環装置であって、前記排気管は、車両前後方向に延びる上流部分と、前記エンジンから離間するように、前記上流部分の後端から車幅方向外側へ向けて延びる下流部分とを有する湾曲部を備え、前記EGR装置は、前記排気ガスを冷却するEGRクーラーを備え、該EGRクーラーが、前記湾曲部の前記上流部分の車幅方向外側、かつ前記湾曲部の前記下流部分よりも車両前方側に配置されるとともに、車幅方向から見て前記湾曲部の前記上流部分に重なり合うように配置され、車幅方向外側とは逆方向を車幅方向内側として、前記湾曲部の前記上流部分は、下端に対して上端が車幅方向内側に位置するように、車幅方向に対して交差した傾斜面を車幅方向外側に備え、前記EGRクーラーは、前記湾曲部の前記傾斜面に対向するとともに、前記傾斜面に沿って傾倒した状態で配置されたことを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、車両のエンジンルームに搭載されたエンジンが排出した排気ガスを浄化する排気浄化装置と、該排気浄化装置をとおった前記排気ガスを外部に導出する排気管と、前記排気浄化装置をとおった前記排気ガスの一部を吸気装置に還流するEGR装置とを備えたエンジンの排気循環装置であって、前記排気管は、車両前後方向に延びる上流部分と、前記エンジンから離間するように、前記上流部分の後端から車幅方向外側へ向けて延びる下流部分とを有する湾曲部を備え、前記EGR装置は、前記排気ガスを冷却するEGRクーラーを備え、該EGRクーラーが、前記湾曲部の前記下流部分よりも車両前方側に配置されるとともに、車幅方向から見て前記湾曲部の前記上流部分に重なるように配置され、前記排気管の前記湾曲部は、車幅方向に対して交差するように傾斜した傾斜面を車幅方向外側に備え、前記EGRクーラーは、前記湾曲部の前記傾斜面に沿って傾倒した状態で配置されるとともに、前記排気管の前記湾曲部に対して車幅方向に沿って連結されたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、湾曲部の下流部分よりも車両前方側、かつ上流部分の車幅方向外側に生じたデッドスペースを有効活用して、EGR装置を配置することができる。このため、排気管とEGR装置とを車幅方向で並設した場合であっても、エンジンの排気循環装置は、車幅方向における大型化を抑えることができる。
【0011】
さらに、例えば、鉛直方向へ向けて延びるようにEGR装置を排気管に連結した場合に比べて、エンジンの排気循環装置は、鉛直方向におけるEGR装置の長さを抑えることができる。このため、エンジンの排気循環装置は、車幅方向だけでなく、鉛直方向における大型化を抑えることができる。
【0012】
よって、エンジンの排気循環装置は、エンジンから離間するように湾曲した排気管を備えた場合であっても、湾曲部の車幅方向外側に生じたデッドスペースを有効活用して、その大きさの大型化を抑えることができる。
【0013】
さらにこの発明において、前記EGR装置は、前記排気ガスを冷却するEGRクーラーを備え、前記排気管の前記湾曲部は、車幅方向に対して交差するように傾斜した傾斜面を車幅方向外側に備え、前記EGRクーラーは、前記湾曲部の前記傾斜面に沿って傾倒した状態で配置されたことを特徴とする。
この構成によれば、エンジンの排気循環装置は、鉛直方向の高さを抑えた状態のEGRクーラーを、排気管の湾曲部に並設することができる。
【0014】
このため、エンジンの排気循環装置は、鉛直方向におけるEGR装置の大きさを抑えることができる。
よって、エンジンの排気循環装置は、エンジンから離間するように湾曲した排気管を備えた場合であっても、その大きさの大型化をより抑えることができる。
【0015】
さらにこの発明において、前記EGRクーラーは、前記排気管の前記湾曲部に対して車幅方向に沿って連結されたことを特徴とする。
この構成によれば、エンジンの排気循環装置は、その大きさの大型化を抑えるとともに、EGRクーラーを介して加わる荷重による不具合を防止することができる。
【0016】
具体的には、例えば、略直立状態のEGRクーラーを、排気管に対して鉛直方向に沿って連結した場合、EGR装置の全重量が排気管に作用し易くなるため、排気管にたわみ変形が生じるなどの意図しない不具合が生じるおそれがある。
【0017】
これに対して、傾倒状態のEGRクーラーを車幅方向に沿って連結しているため、エンジンの排気循環装置は、EGRクーラーを介して、排気管の湾曲部とEGR装置との連結箇所に作用する荷重を低減することができる。このため、エンジンの排気循環装置は、排気管のたわみ変形を抑えるとともに、排気管の湾曲部とEGR装置との連結箇所の強度を容易に確保することができる。
【0018】
よって、エンジンの排気循環装置は、その大きさの大型化を抑えるとともに、EGRクーラーを介して加わる荷重による不具合を防止することができる。
【0019】
また、この発明の態様として、前記EGR装置は、前記EGRクーラーよりも上方に、前記排気ガスの流量を調整する複数のEGRバルブを備え、該複数のEGRバルブは、前記EGRクーラーよりも車幅方向内側に配置されてもよい。
【0020】
この構成によれば、エンジンの排気循環装置は、EGRクーラーを介して、排気管の湾曲部とEGR装置との連結箇所に作用する荷重を、EGRクーラーの下端、及び複数のEGRバルブが車幅方向の略同位置に位置する場合に比べて低減することができる。
よって、エンジンの排気循環装置は、複数のEGRバルブを設けた場合であっても、EGRクーラーを介して加わる荷重による不具合を確実に防止することができる。
【0021】
また、この発明の態様として、前記EGR装置は、前記EGRクーラーよりも上方の部分が、ブラケットを介してエンジンに締結固定されてもよい。
この構成によれば、エンジンの排気循環装置は、EGR装置を、排気管の湾曲部とエンジンとの双方で支持することができる。
【0022】
このため、エンジンの排気循環装置は、EGRクーラーを介して、排気管の湾曲部とEGR装置との連結箇所に作用する荷重をより確実に低減することができる。
よって、エンジンの排気循環装置は、EGRクーラーを介して加わる荷重による不具合をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、エンジンから離間するように湾曲した排気管を備えた場合であっても、その大きさの大型化を抑えられるエンジンの排気循環装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】車幅方向右側から見た排気循環装置の外観を示す側面図。
【
図4】背面視での排気循環装置の外観を示す背面図。
【
図5】車幅方向左側から見た排気循環装置の外観を示す側面図。
【
図6】車両下方から見た第1排気管とEGRクーラーとの連結箇所の外観を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態では、軽油を燃料とするディーゼルエンジン(以下、「エンジン」と呼ぶ)をエンジンルームに備えた車両において、エンジンが排出した排気ガスを車外に導出するとともに、排気ガスの一部を吸気装置に還流する排気循環装置について、
図1から
図8を用いて説明する。
【0026】
なお、
図1は車両1の構成の概略図を示し、
図2は車幅方向右側から見た排気循環装置10の側面図を示し、
図3は
図2中のA-A矢視断面図を示し、
図4は排気循環装置10の背面図を示している。
【0027】
さらに、
図5は車幅方向左側から見た排気循環装置10の側面図を示し、
図6は車両下方から見た第1排気管14とEGRクーラー181との連結箇所の外観斜視図を示し、
図7はEGR装置17の外観斜視図を示し、
図8はブラケット20の背面図を示している。
【0028】
また、
図1中において、矢印Fr及び矢印Rrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。さらに、矢印Rh及び矢印Lhは車幅方向を示しており、矢印Rhは右方向を示し、矢印Lhは左方向を示している。
【0029】
まず、車両1は、
図1に示すように、縦置きに配置されたエンジン2と、エンジン2の後部に連結された変速機3と、エンジン2の左側に連結された吸気装置4と、エンジン2の右側に連結された排気循環装置10とを、車両前部に備えている。
【0030】
吸気装置4は、
図1に示すように、エアクリーナー41を介して、外気を取り込んで新気としてエンジン2に導入するものである。この吸気装置4には、
図2に示すように、エアクリーナー41とエンジン2とを連通させるエアダクト42が、排気循環装置10の車両上方の位置に配置したターボ過給機5を介して、エンジン2に連結されている。
【0031】
また、排気循環装置10は、詳しくは後述するが、
図1に示すように、エキゾーストマニホールド11と、第1触媒12、第2触媒13、第1排気管14、第2排気管15、及びサイレンサー16を、エンジン2から車両後方へ向けてこの順番で連結して構成している。
【0032】
なお、排気循環装置10は、
図1に示すように、第1排気管14が車両前部に配置され、第2排気管15が車室部に配置され、サイレンサー16が車両後部に配置されている。
このような車両1には、
図1に示すように、エンジン2、及び変速機3の車両後方に、車室内のスペースを確保するために低床化した低床部分1aが形成されている。
【0033】
このため、排気循環装置10の第1排気管14は、
図1に示すように、エンジン2から車幅方向外側へ離間するように、第2触媒13から車幅方向外側へ向けて平面視略クランク状に屈曲した形状に形成されている。
【0034】
さらに、排気循環装置10の第2排気管15は、
図1に示すように、サイドシル(図示省略)の車幅方向内側において、車両前後方向に沿って延びる形状に形成されている。換言すると、第2排気管15は、低床部分1aの車幅方向外側に隣接して、車両前後方向に延びる形状に形成されている。
【0035】
次に、上述した車両1の排気循環装置10について、
図2から
図8を用いて、さらに詳述する。
排気循環装置10は、
図1及び
図2に示すように、エンジン2の右側に連結されたエキゾーストマニホールド11と、ターボ過給機5を介して、エキゾーストマニホールド11に連結された第1触媒12、第2触媒13、第1排気管14、第2排気管15、及びサイレンサー16と、排気ガスの一部を吸気装置4に還流するEGR装置17とで構成されている。
【0036】
第1触媒12、及び第2触媒13は、エンジン2が排出した排気ガスを浄化する排気浄化装置である。
第1触媒12は、
図2に示すように、例えば、酸化触媒であって、詳細な図示を省略したターボ過給機5を介して、エキゾーストマニホールド11に連結されている。
【0037】
この第1触媒12は、排気ガスを車両後方から車両前方へ向けて流下させたのち、車両下方へ向けて流下させるように形成されている。
具体的には、第1触媒12は、
図2に示すように、ターボ過給機5から車両前方へ向けて延びる略筒状体部分と、略筒状体部分の前端から車両下方へ向けて開口した出口部分とで構成されている。
【0038】
第2触媒13は、
図2に示すように、例えば、ディーゼル微粒子除去フィルタであって、第1触媒12の出口部分に連結されている。この第2触媒13は、第1触媒12をとおった排気ガスを、車両前方から車両後方へ向けて流下させる形状に形成されている。
具体的には、第2触媒13は、
図2及び
図3に示すように、車両上下方向に長い略長楕円形状を車両前後方向に延設した略筒状体に形成されている。
【0039】
また、第1排気管14は、第2触媒13をとおった排気ガスを、車幅方向右側へ向けて流下させたのち、車両後方下方へ向けて流下させる形状に形成されている。
具体的には、第1排気管14は、
図4に示すように、第2触媒13の下部に連結された湾曲部141と、湾曲部141から車両後方下方へ向けて延びる直線部142とで、平面視略クランク状の略筒状体に形成されている。
【0040】
第1排気管14の湾曲部141は、
図4に示すように、エンジン2から車幅方向右側へ向けて離間するように、第2触媒13の下部から車幅方向右側、かつ車両下方へ向けて湾曲した略筒状に形成されている。
【0041】
より詳しくは、湾曲部141は、
図4及び
図5に示すように、第2触媒13の下部から車両後方下方へ延びる上流部分141aと、上流部分141aの後端から車幅方向右側かつ車両下方へ向けて延びる下流部分141bとで構成されている。
この湾曲部141は、
図3に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、上端に短辺を有し、かつ車幅方向右側に斜辺を有する断面略台形状に形成されている。
【0042】
このため、湾曲部141の上流部分141aには、
図3に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、下端に対して上端が車幅方向左側に位置するように、車幅方向に対して交差した傾斜面141cが形成されている。
一方、第1排気管14の直線部142は、
図2及び
図4に示すように、湾曲部141の下流部分141bから車両後方下方へ向けて略直線的に延びる略筒状に形成されている。
【0043】
また、第2排気管15は、
図1に示すように、第1排気管14をとおった排気ガスを、車両前方から車両後方へ向けて流下させる形状に形成されている。
また、サイレンサー16は、
図1に示すように、第2排気管15をとおった排気ガスを、排気音を低減して外部に排出可能に構成されている。
【0044】
また、EGR装置17は、第1排気管14に流入した排気ガスの一部を車両下方から車両上方へ向けて導出するとともに、吸気装置4に還流する装置である。このEGR装置17は、
図2及び
図5に示すように、第1排気管14と吸気装置4とを連通させる第1EGR通路18、及び第2EGR通路19で構成されている。
【0045】
第1EGR通路18は、
図2及び
図5に示すように、導入した排気ガスを冷却するEGRクーラー181と、排気ガスの流量を調整する第1EGRバルブ182と、第1EGRバルブ182を吸気装置4に連通させる第1内側配管183、及び第1外側配管184とで構成されている。
【0046】
より詳しくは、EGRクーラー181は、
図2及び
図4に示すように、車両上下方向に長い内部中空の略ボックス状であって、車両下方から車両上方へ向けて排気ガスを流下可能に構成されている。
【0047】
なお、EGRクーラー181の内部には、詳細な図示を省略した水冷式熱交換器181aが内設されている(
図3参照)。
このEGRクーラー181は、
図3及び
図6に示すように、第1排気管14の湾曲部141における上流部分141aに近接して配置されている。
【0048】
具体的には、EGRクーラー181は、
図3から
図5に示すように、湾曲部141の下流部分141bよりも車両前方側に配置されるとともに、車幅方向右側から見て湾曲部141の上流部分141aに重なり合うように配置されている。
【0049】
このEGRクーラー181の下端は、
図3に示すように、湾曲部141における上流部分141aの下部に対して車幅方向で連通するように、車幅方向に沿って締結固定されている。
さらに、EGRクーラー181は、
図3に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、車幅方向左側の側面181bが、湾曲部141の傾斜面141cに沿うように傾倒した状態で配設されている。
【0050】
そして、EGRクーラー181の上端は、
図2及び
図7に示すように、背面視において、湾曲部141における上流部分141aの車両上方に位置する第1EGRバルブ182に対して、車幅方向右側から連結されている。
このようにEGRクーラー181は、
図4に示すように、湾曲部141によって第1排気管14の車幅方向右側に生じたデッドスペースに収まるように配設されている。
【0051】
また、第1EGRバルブ182は、
図2及び
図4に示すように、EGRクーラー181の上端に対して車幅方向左側で、かつ第1排気管14の湾曲部141における上流部分141aの車両上方の位置に配置されている。
【0052】
この第1EGRバルブ182には、車幅方向右側にEGRクーラー181の上端が車幅方向で連通するように連結され、車幅方向左側に第1内側配管183の下端が車幅方向で連通するように連結されている。
【0053】
また、第1内側配管183、及び第1外側配管184は、
図2、
図5、及び
図7に示すように、互いに連通するとともに、第1EGRバルブ182と吸気装置4とを連通させている。
なお、第1内側配管183、及び第1外側配管184は、
図4に示すように、背面視において、第1排気管14における車幅方向の範囲と略同じ車幅方向の範囲に配設されている。
【0054】
具体的には、第1内側配管183は、
図4に示すように、背面視において、第1EGRバルブ182に対して、車幅方向左側に配置されている。さらに、第1内側配管183は、
図5に示すように、車幅方向左側から見て、第1EGRバルブ182から車両上方へ延びたのち、車両前方へ向けて屈曲した側面視略L字状に形成されている。
【0055】
そして、第1内側配管183の上端は、
図7に示すように、後述する第2EGRバルブ192の車両前方側で、第1外側配管184に連結されている。
一方、第1外側配管184は、
図4に示すように、背面視において、第1EGRバルブ182に対して、車幅方向右側に配置されている。
【0056】
この第1外側配管184は、
図2、
図4、及び
図7に示すように、第1内側配管183の上端に連結された下端から車幅方向右側へ延びたのち、車両上方へ湾曲した背面視略U字状に形成されている。
そして、第1外側配管184の上端は、
図2及び
図7に示すように、エアクリーナー41とターボ過給機5とを連結するエアダクト42に連結されている。
【0057】
また、第2EGR通路19は、
図2、
図3、及び
図7に示すように、第1排気管14に連結された第2外側配管191と、排気ガスの流量を調整する第2EGRバルブ192とで構成され、第1EGR通路18を介して吸気装置4に連通している。
【0058】
第2外側配管191は、
図4に示すように、背面視において、第1EGRバルブ182に対して、車幅方向右側に配置されている。なお、第2外側配管191は、
図4に示すように、第1排気管14の傾斜面141cと第1外側配管184における車幅方向右側の端部との間に位置するように配設されている。
【0059】
より詳しくは、第2外側配管191の下端は、
図3に示すように、第1排気管14の湾曲部141における上流部分141aの上部に対して、車幅方向で連通するように、車幅方向に沿って締結固定されている。
さらに、第2外側配管191は、
図2及び
図7に示すように、車幅方向右側から見て、第1排気管14から車両後方へ延びたのち、車両上方へ湾曲した側面視略L字状に形成されている。
【0060】
また、第2EGRバルブ192は、
図2及び
図4に示すように、第1EGRバルブ182と略同じ車両前後方向の位置、かつ第1EGRバルブ182と略同じ車幅方向の位置において、第1EGRバルブ182の車両上方に近接配置されている。
【0061】
この第2EGRバルブ192には、車幅方向右側に第2外側配管191の上端が車幅方向で連通するように連結されている。
さらに、第2EGRバルブ192は、
図5及び
図7に示すように、第1EGR通路18の第1内側配管183に連結され、第1EGR通路18の第1外側配管184を介して、吸気装置4に連通している。
【0062】
このようにEGR装置17は、第2触媒13をとおった排気ガスの一部を、車両下方から車両上方へ向けて流して、吸気装置4に導入可能に構成されている。
そして、上述した構成のEGR装置17は、
図8に示すように、排気ガスの流れ方向におけるEGRクーラー181よりも下流に位置する第1EGR通路18の第1内側配管183を、ブラケット20を介してエンジン2に締結固定することで支持されている。
具体的には、ブラケット20は、
図8に示すように、車幅方向に厚みを有する略板状体で形成されている。
【0063】
このブラケット20は、
図5及び
図8に示すように、その上部が、第1EGR通路18における第1内側配管183のフランジ部183aを介して、第1EGRバルブ182に締結固定されている。換言すると、ブラケット20は、その上部が第1EGR通路18の第1内側配管183と第1EGRバルブ182との締結箇所に共締めされている。
【0064】
さらに、ブラケット20は、
図8に示すように、その下部が、エンジン2の右側から車幅方向右側へ突出させたボス部2aに締結固定されている。
このように、EGR装置17は、第1排気管14における車幅方向の範囲内に、車両上下方向に延びるように第1EGR通路18、及び第2EGR通路19を配置することで、湾曲部141によって第1排気管14の車幅方向右側に生じたデッドスペースを有効活用している。
【0065】
以上のように、エンジン2の排気循環装置10は、車両1のエンジンルームに搭載されたエンジン2が排出した排気ガスを浄化する排気浄化装置(第1触媒12、第2触媒13)と、排気浄化装置(第1触媒12、第2触媒13)をとおった排気ガスを外部に導出する第1排気管14と、排気浄化装置(第1触媒12、第2触媒13)をとおった排気ガスの一部を吸気装置4に還流するEGR装置17とを備えている。
【0066】
この第1排気管14は、車両前後方向に延びる上流部分141aと、エンジン2から離間するように、上流部分141aの後端から車幅方向右側へ向けて延びる下流部分141bとを有する湾曲部141を備えたものである。
さらに、EGR装置17は、湾曲部141の下流部分141bよりも車両前方側に配置されるとともに、車幅方向右側から見て湾曲部141の上流部分141aにEGRクーラー181が重なるように配置されたものである。
【0067】
この発明によれば、エンジン2の排気循環装置10は、湾曲部141の下流部分141bよりも車両前方側、かつ上流部分141aの車幅方向右側に生じたデッドスペースを有効活用して、EGR装置17を配置することができる。このため、第1排気管14とEGR装置17とを車幅方向で並設した場合であっても、エンジン2の排気循環装置10は、車幅方向における大型化を抑えることができる。
【0068】
さらに、例えば、車両上下方向へ向けて延びるようにEGR装置を第1排気管に連結した場合に比べて、エンジン2の排気循環装置10は、車両上下方向におけるEGR装置17の長さを抑えることができる。このため、エンジン2の排気循環装置10は、車幅方向だけでなく、車両上下方向における大型化を抑えることができる。
【0069】
よって、エンジン2の排気循環装置10は、エンジン2から離間するように湾曲した第1排気管14を備えた場合であっても、湾曲部141の車幅方向右側に生じたデッドスペースを有効活用して、その大きさの大型化を抑えることができる。
【0070】
また、EGR装置17は、排気ガスを冷却するEGRクーラー181を備えたものである。さらに、第1排気管14の湾曲部141は、車幅方向に対して交差するように傾斜した傾斜面141cを車幅方向右側に備えている。そして、EGRクーラー181は、湾曲部141の傾斜面141cに沿って傾倒した状態で配置されてものである。
【0071】
この構成によれば、エンジン2の排気循環装置10は、車両上下方向の高さを抑えた状態のEGRクーラー181を、第1排気管14の湾曲部141に並設することができる。
【0072】
このため、エンジン2の排気循環装置10は、車両上下方向におけるEGR装置17の大きさを抑えることができる。
よって、エンジン2の排気循環装置10は、エンジン2から離間するように湾曲した第1排気管14を備えた場合であっても、その大きさの大型化をより抑えることができる。
【0073】
また、EGRクーラー181は、第1排気管14の湾曲部141に対して車幅方向に沿って連結されたものである。
この構成によれば、エンジン2の排気循環装置10は、その大きさの大型化を抑えるとともに、EGRクーラー181を介して加わる荷重による不具合を防止することができる。
【0074】
具体的には、例えば、略直立状態のEGRクーラーを、第1排気管に対して車両上下方向に沿って連結した場合、EGR装置の全重量が第1排気管に作用し易くなるため、第1排気管にたわみ変形が生じるなどの意図しない不具合が生じるおそれがある。
【0075】
これに対して、傾倒状態のEGRクーラー181を車幅方向に沿って連結しているため、エンジン2の排気循環装置10は、EGRクーラー181を介して、第1排気管14の湾曲部141とEGR装置17との連結箇所に作用する荷重を低減することができる。このため、エンジン2の排気循環装置10は、第1排気管14のたわみ変形を抑えるとともに、第1排気管14の湾曲部141とEGR装置17との連結箇所の強度を容易に確保することができる。
【0076】
よって、エンジン2の排気循環装置10は、その大きさの大型化を抑えるとともに、EGRクーラー181を介して加わる荷重による不具合を防止することができる。
【0077】
また、EGR装置17は、EGRクーラー181よりも車両上方に、排気ガスの流量を調整する第1EGRバルブ182、及び第2EGRバルブ192を備えたものである。
そして、第1EGRバルブ182、及び第2EGRバルブ192は、EGRクーラー181よりも車幅方向左側に配置されている。
【0078】
この構成によれば、エンジン2の排気循環装置10は、EGRクーラー181を介して、第1排気管14の湾曲部141とEGR装置17との連結箇所に作用する荷重を、EGRクーラーの下端、第1EGRバルブ、及び第2EGRバルブが車幅方向の略同位置に位置する場合に比べて低減することができる。
よって、エンジン2の排気循環装置10は、第1EGRバルブ182、及び第2EGRバルブ192を設けた場合であっても、EGRクーラー181を介して加わる荷重による不具合を確実に防止することができる。
【0079】
また、EGR装置17は、EGRクーラー181よりも車両上方に位置する第1内側配管183が、ブラケット20を介してエンジン2に締結固定されたものである。
この構成によれば、エンジン2の排気循環装置10は、EGR装置17を、第1排気管14の湾曲部141とエンジン2との双方で支持することができる。
【0080】
このため、エンジン2の排気循環装置10は、EGRクーラー181を介して、第1排気管14の湾曲部141とEGR装置17との連結箇所に作用する荷重をより確実に低減することができる。
よって、エンジン2の排気循環装置10は、EGRクーラー181を介して加わる荷重による不具合をより確実に防止することができる。
【0081】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の排気浄化装置は、実施形態の第1触媒12、及び第2触媒13に対応し、
以下同様に、
排気管は、第1排気管14に対応し、
車幅方向外側は、車幅方向右側に対応し、
複数のEGRバルブは、第1EGRバルブ182、及び第2EGRバルブ192に対応し、
車幅方向内側は、車幅方向左側に対応し、
EGRクーラーよりも上方の部分は、第1内側配管183に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0082】
例えば、上述した実施形態において、軽油を燃料とするエンジン2を、車両前部に縦置きに配置した車両1としたが、これに限定せず、ガソリンを燃料とするエンジンであってもよい。
さらに、横置きのエンジンを車両前部に配置した車両としてもよい。
【0083】
また、エンジン2の車両後方に低床部分1aを備えた車両1としたが、これに限定せず、車両下方から車室床面の全面を覆うように配設されたバッテリを備えた車両であってもよい。
また、エンジン2に連通するターボ過給機5を備えた構成としたが、これに限定せず、ターボ過給機を備えていない構成であってもよい。
【0084】
また、第1触媒12、及び第2触媒13で構成された排気浄化装置としたが、これに限定せず、排気ガスを浄化できる構成であれば、1つの触媒で構成された排気浄化装置であってもよい。
また、第1EGR通路18と第2EGR通路19とで構成されたEGR装置17としたが、これに限定せず、第1EGR通路のみで構成されたEGR装置であってもよい。
【0085】
また、第1EGR通路18において、第1内側配管183、及び第1外側配管184を介して、第1EGRバルブ182と吸気装置4とを連通させたが、これに限定せず、第1内側配管と第1外側配管とで一体形成された配管を介して、第1EGRバルブ182と吸気装置4とを連通させてもよい。
【0086】
また、第2EGR通路19において、第1EGR通路18の第1外側配管184を介して、第2EGRバルブ192と吸気装置4とを連通させたが、これに限定せず、第1EGR通路18の第1外側配管184とは別体で設けた配管を介して、第2EGRバルブ192と吸気装置4とを連通させてよい。
【0087】
また、EGR装置17の第1内側配管183が、ブラケット20を介してエンジン2に締結固定された構成としたが、これに限定せず、EGRクーラー181よりも上方の部分が、ブラケットを介してエンジンに締結固定されていれば、適宜の構成であってもよい。
例えば、第1EGRバルブ182の車両上方に位置する第2EGRバルブ192が、ブラケットを介してエンジン2に締結固定された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
2…エンジン
4…吸気装置
10…排気循環装置
12…第1触媒
13…第2触媒
14…第1排気管
17…EGR装置
20…ブラケット
141…湾曲部
141a…上流部分
141b…下流部分
141c…傾斜面
181…EGRクーラー
182…第1EGRバルブ
183…第1内側配管
192…第2EGRバルブ