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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】道路用消火栓
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20231031BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020029493
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021132743
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅裕
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-086178(JP,A)
【文献】特開2018-033643(JP,A)
【文献】特開2004-049775(JP,A)
【文献】特開2018-068540(JP,A)
【文献】特開2016-214559(JP,A)
【文献】特開平10-286324(JP,A)
【文献】特開2019-063422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/20
A62C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視員通路の下方にホースを収納可能なホース収納部を設け、該ホース収納部の上部には、前記監視員通路と道路との境に防護柵様に配置される消火栓部を設け、かつ隧道内に設置される道路用消火栓であって、
前記消火栓部は、
上下方向を回転軸として軸支され、かつ前記監視員通路側に前記ホースを取り出す際に開放される消火栓扉と、
前記消火栓扉の下方に設けられ前記ホースの取り出しに伴って前記ホースと接触して開く前面ホース扉と、
前記消火栓部の少なくとも一方の側壁に設けられた側面ホース扉と、を備え、
前記前面ホース扉は、前記ホースの直径以上の高さを有し、前記消火栓扉と前記前面ホース扉とは開放時に連続した第1開口部を有するものであり、
前記側面ホース扉は、前記ホースの直径以上の高さを有し、前記前面ホース扉と前記側面ホース扉とは開放時に連続した第2開口部を有する、
ことを特徴とする道路用消火栓。
【請求項2】
前記前面ホース扉は、前記側面ホース扉の少なくとも一部を外方から覆うことを特徴とする請求項1に記載の道路用消火栓。
【請求項3】
前記側面ホース扉は、上端部に設けられた回転軸を中心として回動することで、前記消火栓部の外側へ向かって開放されることを特徴とする請求項1又は2に記載の道路用消火栓。
【請求項4】
前記前面ホース扉は、下端部に設けられた回転軸を中心として回動することで、前記消火栓部の外側へ向かって開放されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の道路用消火栓。
【請求項5】
前記ホース収納部は、前記前面ホース扉よりも前記監視員通路側に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の道路用消火栓。
【請求項6】
前記側面ホース扉は、前記消火栓部の両方の側壁に設けられる請求項1~5のいずれか1項に記載の道路用消火栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路用消火栓に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火災から人身や車両を守るための消火栓装置が普及している。また、上記のような消火栓装置の利便性を向上させるための技術が多く提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、監視員通路に設けられる消火栓において、上面にホースを取り出すための開口を設ける技術が記載されている。また、下記特許文献2には、監視員通路に設けられる消火栓において、筐体内にホースガイドを設ける技術が記載されている。
【0004】
下記特許文献3~5には、監視員通路に設けられる消火栓において、ホース取り出しのためのガイドが設けられることが記載されている。さらに、下記特許文献6には、消火栓のホース取り出し部に蓋を設け、ホースを引き出せるようにした技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-175223号公報
【文献】特開2018-068540号公報
【文献】特開2019-063422号公報
【文献】特開2019-010263号公報
【文献】特開2018-033643号公報
【文献】特開平10-286324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~6に記載の技術は、いずれも消火栓からホースを取り出す際の取り扱いについては考慮されているものの、ホースを取り出した後、消火栓から監視員通路に沿ってホースを引き出す際の取り扱いについては考慮されていない。
【0007】
そのため、上記特許文献1~6に記載の技術には、監視員通路に沿って、消火栓の側方にホースを引き出していく際のホースの取り扱い易さにおいて改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、消火栓の側方へのホースの取り出し易さを向上させることが可能な道路用消火栓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、監視員通路の下方にホースを収納可能なホース収納部を設け、該ホース収納部の上部には、上記監視員通路の柵となる消火栓部を設けた道路用消火栓であって、上記消火栓部は、上記監視員通路側に上記ホースを取り出す際に開放される消火栓扉と、上記消火栓扉の下方に設けられ上記ホースの取り出しに伴って上記ホースと接触して開く前面ホース扉と、上記消火栓部の少なくとも一方の側壁に設けられた側面ホース扉と、を備え、上記前面ホース扉は、上記ホースの直径以上の高さを有し、上記消火栓扉と上記前面ホース扉とは開放時に連続した第1開口部を有するものであり、上記側面ホース扉は、上記ホースの直径以上の高さを有し、上記前面ホース扉と上記側面ホース扉とは開放時に連続した第2開口部を有することを特徴とする道路用消火栓が提供される。
【0010】
上記前面ホース扉は、上記側面ホース扉の少なくとも一部を外方から覆ってもよい。
【0011】
上記側面ホース扉は、上端部に設けられた回転軸を中心として回動することで、上記消火栓部の外側へ向かって開放されてもよい。
【0012】
上記前面ホース扉は、下端部に設けられた回転軸を中心として回動することで、上記消火栓部の外側へ向かって開放されてもよい。
【0013】
上記ホース収納部は、上記前面ホース扉よりも監視員通路側に設けられてもよい。
【0014】
上記側面ホース扉は、上記消火栓部の両方の側壁に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように本発明によれば、消火栓の側方へのホースの取り出し易さを向上させることが可能な道路用消火栓が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一の実施形態に係る道路用消火栓の設置例を示す模式図である。
図2】同実施形態に係る道路用消火栓の設置例を示す模式図である。
図3】同実施形態に係る道路用消火栓の概略構成の一例を示す正面図である。
図4】同実施形態に係る道路用消火栓の概略構成の一例を示す側面図である。
図5A】同実施形態に係る道路用消火栓の概略構成の一例を示す拡大図である。
図5B】同実施形態に係る道路用消火栓の概略構成の一例を示す拡大図である。
図6A】同実施形態に係る道路用消火栓の概略構成の一例を示す拡大図である。
図6B】同実施形態に係る道路用消火栓の概略構成の一例を示す拡大図である。
図7】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す正面図である。
図8】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す正面図である。
図9】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す側面図である。
図10】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す正面図である。
図11】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す側面図である。
図12】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す正面図である。
図13】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す側面図である。
図14】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す正面図である。
図15】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す側面図である。
図16】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す正面図である。
図17】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す側面図である。
図18】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す正面図である。
図19】同実施形態に係る道路用消火栓の使用例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.道路用消火栓の概要>
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の一の実施形態に係る道路用消火栓100の概略構成について説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る道路用消火栓100の設置例を示す模式図である。
【0019】
本実施形態に係る道路用消火栓100は、一例として、自動車等の車両が走行可能な隧道内に設置され、隧道内で発生した火災に対する消火活動の際に利用される。具体的には、図1及び図2に示すように、本実施形態に係る道路用消火栓100は、上部構造である消火栓部110が監視員通路PWと道路RWとの境に防護柵様に配置される。一方、道路用消火栓100の下部構造であるホース収納部120が監視員通路PWの下方に配置される。すなわち、ホース収納部120の上方に監視員通路PWの柵Fとなる消火栓部110が設けられている。
【0020】
監視員通路PWは、一般的に道路RWから900~1000mmほどの高さを以って設けられる通路であり、監視員による保守作業や災害時の避難経路として用いられる。後述するように、消火栓部110の内部には、消火用のノズルが固定されるノズル固定部(図3におけるノズル固定部107)が備えられる。ホース収納部120は、ノズルと接続されるホースを収納可能とされている。道路用消火栓100は、監視員通路PW側からノズル及びノズルに連結されたホースを取り出すことが可能とされ、かかるノズル及びホースを介して消火用水を火災発生個所まで供給し、消火活動が行われる。
【0021】
ここで、消火栓部110は、ノズルなどを収納するために要する最小限の厚さで形成されてよい。例えば、道路用消火栓100の短手方向(図1におけるY方向)における厚みは、120mm程度となるように形成され得る。本実施形態に係る道路用消火栓100の消火栓部110が上記のように形成されることで、監視員通路PW上の空間を十分に確保することが可能となり、消火活動や避難活動を妨害するおそれを解消することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る道路用消火栓100は、道路RW上で発生した火災を検知するための火災検知器、または赤色表示灯(図示省略)を道路RW側に備えてもよい。
【0023】
<2.道路用消火栓の構成>
続いて、図3図6Bを参照しながら、本発明の一の実施形態に係る道路用消火栓100の概略構成について説明する。図3は、本実施形態に係る道路用消火栓100の構成例を示す正面図である。図4は、本実施形態に係る道路用消火栓100の構成例を示す側面図である。図5A及び図6Aは、本実施形態に係る道路用消火栓100の構成例を示す部分拡大図である。また、図5B及び図6Bは、本実施形態に係る道路用消火栓100の構成例を示す端面図であり、それぞれ図5A及び図6AのA-A端面図である。
【0024】
(消火栓部)
消火栓部110は、道路用消火栓100の上方において筐体構造を成す部位である。消火栓部110の内部には、道路用消火栓100を利用して消火作業を行う際に必要な各種制御装置、操作機器等が収納されている。具体的には、消火栓部110内には、消火栓レバー101、レバーガイド103、及びノズル105を固定するためのノズル固定部107が収納されている。
【0025】
消火栓部110は、その内部に収納された機器等を保護するため、内部への異物(粉塵、小動物、又は漏水等の大量の水分)の進入を抑制できる程度に密閉された筐体構造となっている。一方、消火栓部110は、消火作業の際、使用者が内部に収容されたノズル105を取り出したり、機器類を操作したりするため、筐体構造の一部が開閉可能とされている。
【0026】
具体的には、図3及び図4に示すように、消火栓部110は、消火栓扉111と、前面ホース扉113と、側面ホース扉115とを有している。消火栓扉111は、消火栓部110の監視員通路PW側であって、消火栓部110の幅方向(図3におけるX方向)で中央付近に設けられた扉である。消火栓扉111は、一例として、一対のヒンジ111aに軸支されることで、監視員通路PW側へ開閉可能とされている。消火栓扉111は、例えば、少なくともホース109を取り出す際に開放される。すなわち、図3に示すように、消火栓扉111を開くことにより、ノズル105及びホース109を消火栓部110内から監視員通路PW側へ取り出すことが可能となる。
【0027】
(前面ホース扉)
前面ホース扉113は、消火栓部110の監視員通路PW側であって、消火栓部110の下部に設けられた扉である。すなわち、前面ホース扉113は、消火栓扉111の下方に設けられている。前面ホース扉113は、消火栓部110の幅(図3におけるX方向の長さ)と等しい幅Wを有している。ここで、消火栓部110の幅と等しい幅とは、前面ホース扉113の幅が消火栓部110の幅と完全に一致する場合に限定されるものではなく、扉の開閉のための隙間、寸法誤差等に起因する差異を許容する趣旨である。また、前面ホース扉113は、ホース109の直径R以上の高さh1を有している。一例として、ホース109の直径Rは、40mm程度である。また、一例として、前面ホース扉113の高さh1は、60~70mm程度である。
【0028】
また、図5A及び図5Bに示すように、前面ホース扉113は、消火栓部110の監視員通路PW側を覆うとともに、側面ホース扉115の一部を外方から覆っている。具体的には、前面ホース扉113は、本体部113aと、本体部113aの長手方向(図5BにおけるX方向)の両端から屈曲された側面部113bとを有する。
【0029】
本体部113aは、消火栓部110において、消火栓扉111よりも下方の部位を覆っている。側面部113bは、図5A及び図5Bに示すように、側面ホース扉115の一部を外方から覆っている。すなわち、側面部113bは、前面ホース扉113が閉じた状態で、側面ホース扉115の監視員通路PW側の端部と対向している。側面部113bの幅(図5BにおけるY方向距離)は、側面ホース扉115の幅(図5BにおけるY方向距離)よりも短くなっている。
【0030】
道路用消火栓100を使用して消火作業が行われない場合、前面ホース扉113は、上端部に設けられた固定マグネット113cによって、消火栓扉111の下端に取り付けられて固定されている。一方、消火作業の際、前面ホース扉113は、下端部に設けられた回転軸によって回動することで、図6A及び図6Bに示すように、消火栓部110の外側へ向かって開放される。具体的には、図3に示すように、前面ホース扉113は、一対のヒンジ113dを介して軸支されている。
【0031】
前面ホース扉113が開放されることにより、詳細は後述するが、消火栓扉111と前面ホース扉113とが開放時に連続した開口部(後述する第1開口部131に相当)を有することができる。かかる開口部を介して、消火栓部110の筐体内部と外部とが連通され、ホース109は、道路用消火栓100の外部へ引き出される。
【0032】
(側面ホース扉)
図3及び図4に示すように、側面ホース扉115は、消火栓部110の側壁117(図4におけるX方向に対向する壁部)に設けられ、かつ消火栓部110の下部に設けられた扉である。側面ホース扉115は、上下方向(図4におけるZ方向)において、前面ホース扉113と同じ位置に設けられている。また、側面ホース扉115は、ホース109の直径R以上の高さh2を有している。一例として、側面ホース扉115の高さh2は、60~70mm程度である。
【0033】
側面ホース扉115は、上端部に設けられた回転軸を中心として回動することで、消火栓部110の外側へ向かって開放される。具体的には、図4に示すように、側面ホース扉115は、その上端部においてヒンジ115aを介して軸支されている。一方、道路用消火栓100を使用して消火作業が行われない場合、側面ホース扉115が図示しない付勢部材(例えば、ねじりばね等)によって付勢されることで、側面ホース扉115が閉じた状態が維持される。
【0034】
側面ホース扉115が開放されることにより、詳細は後述するが、前面ホース扉113と側面ホース扉115とが開放時に連続した開口部(後述する第2開口部132に相当)を有することができる。かかる開口部を介して、消火栓部110の筐体内部と外部とが連通され、ホース109は、道路用消火栓100の外部へ引き出される。
【0035】
(ホース収納部)
図3及び図4に示すように、ホース収納部120は、ノズル105と接続されるホース109を収納可能とされた筐体構造を有する部位である。ホース収納部120は、消火栓部110の下方に設けられており、ホース収納部120と消火栓部110とは、道路用消火栓100の内部において連通されている。ホース収納部120は、一対の棒状部材であるホースケージ121を有している。ホースケージ121は、その長手方向が消火栓100の幅方向(図3におけるX方向)に沿って延設される。また、一対の棒状部材であるホースケージ121は、上下方向(図3におけるZ方向)に離間して配置される。かかるホースケージ121によって、長円状に巻き取られたホース109が、図4に示すように、ホース収納部120の筐体構造内に保持されている。
【0036】
ホース109の先端側109a(ノズル105の取り付けられた端部側)は、一対のホースケージ121の間を通って、ホース収納部120から消火栓部110に向かって配置されている。道路用消火栓100が使用される場合には、ホースケージ121の間を通りながら、ホース109がホース収納部120から引き出される。ホース109の後端側109b(ノズル105の取り付けられていない端部側)は、道路用消火栓100の外部に設けられた消火用水の供給源(図示せず)に配管接続金109cを介して連結されている。
【0037】
また、ホース収納部120は、前面ホース扉113よりも監視員通路PW側に設けられている。具体的には、図4に示すように、道路用消火栓100を側面視(図4におけるX方向視)したとき、巻き取られた状態のホース109が、ホースケージ121によって前面ホース扉113よりも監視員通路PW側に保持されている。以上、本実施形態に係る道路用消火栓100の概略構成について説明した。
【0038】
<3.道路用消火栓の使用方法>
次に、図7図19を参照しながら、本実施形態に係る道路用消火栓100の使用方法について説明する。図7図19は、本実施形態に係る道路用消火栓100の使用例を示す図である。
【0039】
まず、図7図15を参照しながら、監視員通路PW側から見て、ホース109を道路用消火栓100に対して左側方に引き出す場合について説明する。まず、図7に示すように、消火栓扉111が閉まった状態の道路用消火栓100に対して、消火栓扉111が使用者によって操作されて、開放される。具体的には、消火栓扉111に設けられた把持部111bが使用者によって操作されて、消火栓扉111の固定が解除されるとともに、消火栓扉111が監視員通路PW側に開放される。
【0040】
その後、図8及び図9に示すようにノズル105がノズル固定部107から外されて、消火栓部110から取り出される。また、消火栓レバー101が操作されて、ホース109内に消火用水が供給される。ノズル105の取り出しに伴って、ノズル105に連結されたホース109の先端側109aも一緒に、消火栓部110内から監視員通路PW側に取り出される。
【0041】
ホース109の監視員通路PW側への取り出しに伴って、ホース109が前面ホース扉113と接触することにより、前面ホース扉113が開く。具体的には、図9に示すように、前面ホース扉113が下端部のヒンジ113dの有する回転軸を中心として、消火栓部110の外方側に開放される。特に、ホース109内に消火用水が供給されると、ホース109の自重に加えて消火用水の分もホース109の重量が増加する。この結果、前面ホース扉113が、ホース109と接触して開きやすくなる。開放された前面ホース扉113は、監視員通路PWの上面に当接し、道路用消火栓100と監視員通路PWの上面との間に架け渡された状態となる。
【0042】
前面ホース扉113が開放されることにより、図8に示すように、消火栓扉111と前面ホース扉113とが開放時、連続した第1開口部131が形成される。かかる第1開口部131は、消火栓部110と外部とを連通する開口である。第1開口部131を介して、ホース109が消火栓部110内から監視員通路PW側に取り出される。
【0043】
その後、図10及び図11に示すように、ノズル105及びホース109が、道路用消火栓100に対して左側方へさらに引き出される。すなわち、使用者がノズル105を保持しながら監視員通路PWに沿って移動することにより、ノズル105とともにホース109が道路用消火栓100内から引き出される。このとき、前面ホース扉113が開いていることで、ホース109が、監視員通路PW側に出やすくなっている。
【0044】
さらに、図12及び図13に示すように、ホース109の引き出しが継続される。この結果、ホース109の一部が重さによって次第に下方へ移動する。このとき、消火栓扉111とともに前面ホース扉113が開放されることにより、第1開口部131が形成されているので、ホース109の一部が下降しても、ホース109の引き出しに支障が生じにくい。すなわち、消火栓扉111の開放により形成された開口と前面ホース扉113の開放により形成された開口とが連続することで、ホース109が引き出し開始当初の比較的高い位置(前面ホース扉113の高さよりも高い位置)から、引き出しがある程度行われた後の比較的低い位置(監視員通路PWの上面近く)への移動が円滑に行われる。この結果、ホース109の動きが阻害されないので、ホース109の引っ掛かりが抑制され、また引き出しに要する力が少なくて済み、ホース109の引き出しに支障が生じにくい。
【0045】
さらに、図14及び図15に示すように、ホース109の引き出しが継続されると、ホース109の一部は、監視員通路PWの上面に支持されながら、引き出される状態となる。さらに、ホース109の引き出し距離が長くなる結果、ホース109の引き出される方向が道路用消火栓100の幅方向(図14におけるX方向)に沿う方向に近づく。このため、ホース109の引き出しに伴って、側面ホース扉115とホース109とが接触する。側面ホース扉115は、ねじりばね等の付勢部材(図示せず)により閉じた状態を維持するように付勢されているものの、ホース109の移動に伴って、図14に示すように、上方へ押し上げられて開放される。
【0046】
特に、監視員通路PWの幅(図15におけるY方向距離)が、70cm程度であり、ホース109が監視員通路PWに沿って数十m程度(例えば、30m)引き出される場合を想定すると、ホース109は、道路用消火栓100に対して、ほぼ真横方向(図14におけるX方向)に沿って引き出される。
【0047】
側面ホース扉115が開放されることにより、図14及び図15に示すように、前面ホース扉113と側面ホース扉115とが開放時、連続した第2開口部132が形成される。かかる第2開口部132は、消火栓部110と外部とを連通する開口である。第2開口部132を介して、ホース109が道路用消火栓100の側方に取り出される。
【0048】
第2開口部132を介してホース109が引き出されることにより、監視員通路PWの上面に接触しながら引き出される状態となったホース109でも引き出しに支障が生じにくい。すなわち、前面ホース扉113の開放により形成された開口と側面ホース扉115の開放により形成された開口とが連続することで、ホース109が道路用消火栓100の幅方向(図14におけるX方向)に沿う方向に引き出されるようになり、道路用消火栓100の前面側から側面側への移動が阻害されない。また、図15に示すように道路用消火栓100内においてホース109の辿る経路が、ホース収納部120から側面ホース扉115へ向かう直線状となる。このため、曲がりによる引き出しに対する抵抗が生じにくい。この結果、ホース109の引き出しに支障が生じにくい。
【0049】
引き出されたノズル105及びホース109を介して、火災発生個所に消火用水が供給され、消火活動が行われる。
【0050】
続いて、図16図19を参照しながら、ホース109を道路用消火栓100に対して右側方に引き出す場合について、説明する。なお、上記したホース109を道路用消火栓100に対して左側方に引き出す場合と共通する内容については説明を省略する場合がある。
【0051】
まず、図16及び図17に示すように、ノズル105及びホース109が引き出された後、ホース109が前面ホース扉113と接触することで、前面ホース扉113が開放される。この結果、消火栓扉111と前面ホース扉113とが開放時、連続した第1開口部131が形成される。かかる第1開口部131を介して、ホース109が消火栓部110内から監視員通路PW側に取り出される。
【0052】
さらに、図18及び図19に示すように、ホース109の引き出しが継続されると、ホース109の一部は、監視員通路PWの上面に支持されながら、引き出される状態となる。ホース109の引き出しに伴って、側面ホース扉115とホース109とが接触する。側面ホース扉115は、付勢部材(図示省略)により付勢されているものの、ホース109の移動に伴って、上方へ押し上げられて開放される。側面ホース扉115が開放されることにより、前面ホース扉113と側面ホース扉115とが開放時、連続した第2開口部132が形成される。かかる第2開口部132を介して、ホース109が道路用消火栓100の右側方に取り出される。引き出されたノズル105及びホース109を介して、火災発生個所に消火用水が供給され、消火活動が行われる。以上、本実施形態に係る道路用消火栓100における使用方法について説明した。
【0053】
(作用効果)
本実施形態によれば、ホース109を消火栓扉111から取り出した後に、前面ホース扉113がホース109と接触して開放され、第1開口部131を介してホース109が監視員通路PW側へと取り出される。さらに、ホース109を消火栓部110の側方へと引き出し続けると、側面ホース扉115が開放され、第2開口部132を介してホース109が引き出されるようになる。これにより、道路用消火栓100内でのホース109の湾曲を抑制することが可能となり、消火栓部110の側方へのホース109の取り出しが容易となる。
【0054】
換言すれば、消火栓扉111を開放した場合に生じる開口のみからホース109を取り出す場合を想定すると、ホース109は、ホース収納部120から消火栓扉111の開口まで大きく湾曲しながら引き出されることとなる。すなわち、道路用消火栓100の内部において、ホース109が一旦道路RWに引き出された後、道路用消火栓100の側面視で湾曲した経路を描きながら、消火栓扉111の開口を通過する。さらに、ホース109が道路用消火栓100の外部に出た後も、ホース109の先端側109aは、監視員通路PWに沿って道路用消火栓100の真横方向に沿って引き出されるので、ホース109が湾曲する。このように、消火栓扉100を開放した場合に生じる開口のみからホース109を取り出す場合、ホース109の曲がりがきつく(曲率半径が小さく)、また湾曲する箇所が多くなり、引き出しの際に大きな抵抗となる。さらに、ホース109が消火栓部100の消火栓扉100の開口から道路用消火栓100の側方へ引き出されることから、消火栓扉111の開口の縁に引っ掛かりやすくなる。
【0055】
そこで、本実施形態は、上記の通りの構成を有するようにしたので、道路用消火栓100内でのホース109の湾曲を抑制することが可能となり、消火栓部110の側方へのホース109の取り出しが容易となる。特に、道路用消火栓100内においてホース109の辿る経路が、ホース収納部120から側面ホース扉115へ向かう直線状となる。また、道路用消火栓100の外部へ出る際も側面ホース扉115から道路用消火栓100の側方へ直線状に引き出される。このように、道路用消火栓100の側方へのホース109の取り出し易さを向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、前面ホース扉113は、側面ホース扉115を外方から覆うように構成されている。これにより、側面ホース扉115が不用意に開放されることが抑制される。また、側面ホース扉115がさらに前面ホース扉113によって覆われることにより、道路用消火栓100の内への異物の進入がより抑制される。
【0057】
また、本実施形態によれば、側面ホース扉115は、上端部に設けられた回転軸を中心として回動することで、消火栓部110の外側へ向かって開放される。これにより、ホース109との接触で開放されることが容易となり、また、消火栓部110の側壁117をつたう水等の異物の侵入を抑制できる。さらに、回転軸を中心とした回動という簡素な構成なので、スライドレール構造による扉の開閉と比較して、粉塵等の付着による動作不良が生じにくい。
【0058】
また、本実施形態によれば、前面ホース扉113は、下端部に設けられた回転軸を中心として回動することで、消火栓部110の外側へ向かって開放される。これにより、ホース109の消火栓扉111からの引き出しに伴って前面ホース扉113が開放されることが容易となる。また、回転軸による回動という簡素な構成なので、スライドレール構造による扉の開閉等と比較して、粉塵等の付着による動作不良が生じにくい。
【0059】
また、前面ホース扉113又は側面ホース扉115が、回転軸を中心とした回動によって開放される構造となっているので、開放後も道路用消火栓100と前面ホース扉113又は側面ホース扉115が一体となっている。このため、道路RWや監視員通路PWに道路用消火栓100の部品が飛散することが抑制される。
【0060】
また、本実施形態によれば、ホース収納部120は、前面ホース扉113よりも監視員通路PW側に設けられている。ホース収納部120が前面ホース扉113よりも監視員通路PW側にあると、引き出しの際、湾曲が生じ易くなるが、第1開口部131及び第2開口部132を介して、消火栓部110の側方に引き出されることで、ホース109の経路が直線状になり、道路用消火栓100内でのホース109の湾曲が抑制される。この結果、道路用消火栓100の側方へのホース109の取り出し易さを向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、側面ホース扉115は、消火栓部110の両方の側壁117にそれぞれ設けられている。これにより、監視員通路PW側から見て、ホース109を道路用消火栓100に対して左側方及び右側方のいずれに引き出す場合にも、道路用消火栓100内でのホース109の湾曲が抑制される。以上、本発明の一の実施形態に係る道路用消火栓100について説明した。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
例えば、上記実施形態において、側面ホース扉115が消火栓部110の両方の側壁117に設けられている例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、側面ホース扉115は、消火栓部110の何れか一方の側壁117にのみ設けられてもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、前面ホース扉113が消火栓部110の幅方向に亘る一枚の板状部材からなる例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、前面ホース扉113は、消火栓部110の幅方向において複数の板状部材に分割され、それぞれの板状部材が独立して開放される構成でもよい。
【符号の説明】
【0065】
100 道路用消火栓
101 消火栓レバー
103 レバーガイド
105 ノズル
107 ノズル固定部
109 ホース
110 消火栓部
111 消火栓扉
113 前面ホース扉
115 側面ホース扉
120 ホース収納部
131 第1開口部
132 第2開口部
PW 監視員通路
F 柵
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19