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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両の下部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B62D25/20 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020034804
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021138163
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】植田 爽平
(72)【発明者】
【氏名】永島 優樹
(72)【発明者】
【氏名】井口 泰規
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215759(JP,A)
【文献】特開2015-074250(JP,A)
【文献】特開2009-029334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪の位置より車両前後方向後方において前後方向に延びて車体の下面の一部を構成するアンダーカバーを備え、前記アンダーカバーが、車幅方向外側の端部において車体側に固定される固定縁部と、前記固定縁部よりも車幅方向内側において前記固定縁部よりも下方に位置する平板状の本体板部を有した車両の下部車体構造であって、
前記本体板部における車幅方向外側縁部に、車両前後方向に延びて下方に突出する突設部が形成され、
前記突設部が、前記前輪に寄った位置に前記本体板部の下面から下方へ突出する突出高さを最も高くするピーク部を有し、前記ピーク部から後方に向けて突出高さが低くなるように形成され
前記アンダーカバーの車幅方向外側の前端部分に前記本体板部より上方に位置して車体に対して固定される固定面部と、前記固定面部と前記本体板部とを連結する縦壁部が設けられ、
前記縦壁部は、前記固定面部の車幅方向内縁に沿って前方ほど車幅方向内側へ徐々に変位しながら下端が前記突設部の前端から前方へ延びるように前記本体板部の下面から下方へ突出された
車両の下部車体構造。
【請求項2】
前記突設部における前記ピーク部より後方に延びる延長部の下面が直線状に形成され、
前記アンダーカバーが、前記延長部の前記下面を車両側面から見た状態で略水平にするように固定された
請求項1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
前記突設部の前端部に、前方ほど上方に傾斜する傾斜部が形成された
請求項1または請求項2に記載の車両の下部車体構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空力性能が良好であるような車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の下部における空力性能は、車体と路面の間の走行風を整流して抵抗を抑えることで向上している。
【0003】
下記特許文献1には、車幅方向中央のフロアトンネルを挟んで左右に設けられた整流板に下方に突出する縦壁を設けて、車体下の走行風を積極的に車幅方向中央に収束させて、空力性能を改善させる構造が開示されている。縦壁の形状は、車幅方向外側から内側に向けて内側部分ほど後退する傾斜部分と、この傾斜部分の車幅方向内側の端からそれよりも急に傾斜する傾斜部分で構成されている。
【0004】
この構造では、走行風を車幅方向中央に収束するので、走行風が車体の側方に流出することを抑制でき、この結果、空力性能が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-298312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フロアトンネルを挟んで左右に設けられるアンダーカバー下の走行風の速度が速い一方で、前輪の後方ではそれよりも速度が遅い。このため、図7に示したようにアンダーカバー101下の走行風Xの一部X1が前輪102後方の走行風Yの影響によって側方へ流出してしまい、速度差のある部分で渦Zが発生して、空力性能を悪化させるおそれがある。
【0007】
そこで、この発明は、フロア下の前輪の後方における渦の発生を抑制して空力性能を向上させることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段は、前輪の位置より車両前後方向後方において前後方向に延びて車体の下面の一部を構成するアンダーカバーを備え、前記アンダーカバーが、車幅方向外側の端部において車体側に固定される固定縁部と、前記固定縁部よりも車幅方向内側において前記固定縁部よりも下方に位置する平板状の本体板部を有した車両の下部車体構造であって、前記本体板部における車幅方向外側縁部に、車両前後方向に延びて下方に突出する突設部が形成され、前記突設部が、前記前輪に寄った位置に前記本体板部の下面から下方へ突出する突出高さを最も高くするピーク部を有し、前記ピーク部から後方に向けて突出高さが低くなるように形成され、前記アンダーカバーの車幅方向外側の前端部分に前記本体板部より上方に位置して車体に対して固定される固定面部と、前記固定面部と前記本体板部とを連結する縦壁部が設けられ、前記縦壁部は、前記固定面部の車幅方向内縁に沿って前方ほど車幅方向内側へ徐々に変位しながら下端が前記突設部の前端から前方へ延びるように前記本体板部の下面から下方へ突出された車両の下部車体構造である。
【0009】
この構成では、突設部が仕切りの作用をして、アンダーカバー下の走行風の一部が前輪の後方において側方へ流出することを抑制する。突設部のうち突出高さが最も高いピーク部は前輪に寄った位置にあり、前輪から離れた前輪の後方において側方に流出しようとする空気の流れを効果的に抑える。
【0010】
また上述したように、前記アンダーカバーの車幅方向外側の前端部分に前記本体板部より上方に位置して車体に対して固定される固定面部と、前記固定面部と前記本体板部とを連結する縦壁部が設けられ、前記突設部が前記縦壁部の後方に形成されたため、突設部の前方に立つ縦壁部の高さを抑制して空気抵抗が増すことを抑えられ、見栄えの向上も可能である。
【0011】
この発明の一態様においては、前記突設部における前記ピーク部より後方に延びる延長部の下面が直線状に形成され、前記アンダーカバーが、前記延長部の前記下面を車両側面から見た状態で略水平にするように固定された構成とするとよい。
【0012】
この構成では、前述のようにして突設部が空力性能向上するとともに、直線状をなす突設部の延長部の下面が水平になるので、車両の側面から視認されるアンダーカバーの下端のシルエット(輪郭・外形)が水平に見え、見栄えが向上する。
【0013】
この発明の一態様においては、前記突設部の前端部に、前方ほど上方に傾斜する傾斜部が形成された構成とするとよい。
【0014】
この構成では、アンダーカバーの本体板部の前端に当たる走行風が傾斜部によって突設部周辺に円滑に流され、空気抵抗が低減する
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、本体板部の車幅方向外側縁部に突設部を備えたので、フロア下の前輪の後方における渦の発生を抑制して空力性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】車両の下部車体構造を示す底面図。
図2】要部を示す斜視図。
図3】要部を示す斜視図。
図4】車両の下部車体構造の側面図。
図5図2のE-E断面図。
図6】作用状態を示した図1の一部拡大図。
図7】従来技術を示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0018】
図1に、車両の下部車体構造11を下から見上げた底面図を、図2図3にその要部の斜視図を示す。図2は下部車体構造11を後方から前方斜め上に見た状態であり、図3はそれを前方から後方斜め上に見た状態である。図中の白抜き矢印は図面の理解を助けるためのものであり、矢印中の、「Rr」、「Fr」、「R」、「L」は、それぞれ車両の「後方」、「前方」、「右方」、「左方」をあらわしている。このため、「Rr」と「Fr」を結ぶ方向は車両前後方向であり、「R」と「L」を結ぶ方向は車幅方向である。他の図においても同様である。
【0019】
これらの図に示すように下部車体構造11は、車体の下面を覆い車体の下面を構成する複数のアンダーカバーを備えている。
【0020】
左右一対の前輪12間であってエンジンルーム(図示せず)の下を覆うのはエンジンアンダーカバー13である。エンジンアンダーカバー13の後端は、フロアトンネル14の前方で左右のサスペンション15を連結するフロントサブフレーム16の前端に固定されている。フロアトンネル14は車両前後方向に延びており、排気系17を収容する。
【0021】
フロントサブフレーム16の後方には、トンネルアンダーカバー18と、本発明のアンダーカバーとしての左右一対のフロアアンダーカバー19が備えられている。
【0022】
トンネルアンダーカバー18は、車幅方向中央に位置し、フロアトンネル14における傾斜部14a(下部車体構造11の側面図である図4参照)を有する前端部の下方のみを被覆し、トンネルアンダーカバー18の後端部18aは傾斜部14aの後方に対応する位置に設定されている。
【0023】
トンネルアンダーカバー18の後端部18aには、フロアトンネル14の車幅方向両端部に固定される左右一対の固定面部31と、固定面部31間において上方に延びる後面壁部32と、後面壁部32と固定面部31を連結する一対の連結面部33が設けられている。
【0024】
固定面部31は、被覆を行う本体部34より上方に位置しており、平板状である。本体部34における固定面部31の前端につながる部分は、後方ほど斜め上に上がる傾斜部35で構成される。
【0025】
後面壁部32は、固定面部31よりも車両前後方向の前方に位置し、本体部34の後端から上方に延びている。後面壁部32の高さは、フロアトンネル14内に備えられる排気系17を考慮して設定される。後面壁部32の上端縁は、凹凸や段差のない一つながりの連続性を有する線状をなしている。
【0026】
後面壁部32の平面視形状は、車幅方向内側の部分が後方側の部分よりも前方に位置する略円弧状である。より具体的には、前方に位置する車幅方向内側部分は直線状に近く、車幅方向両側部分は後方ほど傾斜が急になっている。
【0027】
このような平面視形状の後面壁部32は、固定面部31が本体部34よりも上方に位置し、固定面部31の前方に傾斜部35を有しているため、車幅方向両端部には、それぞれ車両正面視略三角形状の三角形状部32aが形成されている。これら三角形状部32aは車幅方向外側ほど高さが高くなる形状である。
【0028】
連結面部33は、後面壁部32の車幅方向外側端部である三角形状部32aと固定面部31を連結する車両側面視略三角形状である。
【0029】
この連結面部33と固定面部31の間の稜線部、つまり固定面部31と傾斜部35の車幅方向内側に位置する車両前後方向に延びる角部には、下方に突出する補強のためのビード36が形成されている。
【0030】
フロアアンダーカバー19は、前輪12の位置より車両前後方向後方において前後方向に延びて、フロアトンネル14を挟む左右両側を覆っている。前輪12と後輪21との間の領域を被覆するフロアアンダーカバー19は、前輪12に近い部分を覆う前側フロアアンダーカバー19aと、後輪21に近い部分を覆う後側フロアアンダーカバー19bで構成されている。後側フロアアンダーカバー19bは、後部座席(図示せず)の下であって燃料タンク(図示せず)が備えられる範囲の下方を覆うものであり、前側フロアアンダーカバー19aよりも車両前後方向の長さが短い。
【0031】
これら前側フロアアンダーカバー19aと後側フロアアンダーカバー19bは、車幅方向外側の端部において車体側に固定される固定縁部51と、固定縁部51よりも車幅方向内側において固定縁部51よりも下方に位置する平板状の本体板部52を有している。固定縁部51には複数の貫通穴が形成されており、締結具により車体側に固定される。
【0032】
また固定縁部51と本体板部52との間は上下方向に延びる垂下壁53で構成され、前側フロアアンダーカバー19aは車幅方向内側の端部にも固定縁部54が形成されている。このため、前側フロアアンダーカバー19aのおおよその横断面形状は図5に示したように逆ハット型である。図5は、図2のE-E断面図であり、図5中、25はサイドシルの内側部材、26はフロアパネル、27はフロアトンネル14の下端部を補強する補強フレームである。前側フロアアンダーカバー19aの車幅方向外側の固定縁部51はサイドシルの内側部材25に取り付けられ、車幅方向内側の固定縁部54は補強フレーム27に取り付けられる。
【0033】
前側フロアアンダーカバー19aと後側フロアアンダーカバー19bには、固定縁部51,54のほかに車体側に対する固定に必要な固定部が適宜形成される。図中、55は、その一つであり、前側フロアアンダーカバー19aの前端部に形成された固定凹所である。
【0034】
この固定凹所55は、前側フロアアンダーカバー19aの前端から後方にかけて斜めに形成され、車体側に対して締結具56により直接固定されるとともに、フロントサブフレーム16との間に橋渡しされる棒状の固定具57での固定もなされる。固定凹所55は車両前後方向後方ほど車幅方向外側に傾斜している。
【0035】
前側フロアアンダーカバー19aの前端面のうち、固定凹所55よりも車幅方向内側の部分58はフロントサブフレーム16の後方に隠れた状態であるので、車両前後方向後方ほど下がる傾斜はなくともよい。一方、固定凹所55よりも車幅方向外側の部分59は直接走行風が当たる部分であるので、空気抵抗を小さくするために車両前後方向後方ほど下方に下がる傾斜を有した低抵抗面を有している。
【0036】
上下方向に延びる前述の垂下壁53は車両前後方向に沿ってまっすぐに延びるものであり、その車幅方向における位置は、図1に補助線L1で示したように、前輪12の内面位置12aよりも内側である。すなわち垂下壁53は、前輪12の真っすぐ後方の領域と、前輪12より車幅方向内側における後方領域とを区分する位置に存在する。なお、車幅方向外側の固定縁部51における車幅方向外側の端は、おおよそ前輪12の内面位置12aに対応する位置にある。
【0037】
垂下壁53より車幅方向内側を構成するとともに前側フロアアンダーカバー19aの下面を構成する本体板部52における車幅方向外側縁部には、車両前後方向に延びて下方に突出する突設部61が形成されている。突設部61の車幅方向外側の側面は垂下壁53と面一である。換言すれば垂下壁53の延長上に突設部61の車幅方向外側の側面が存在し、垂下壁53と突設部61との間に段差など、外観上両者を区分するものは存在しない。
【0038】
突設部61は、本体板部52の表面(下面)に沿って流れる空気が側方へ移動するのを抑制する段差が得られる形状であり、その下端部の横断面形状は円弧状に形成されている。突設部61の幅は突設部61に必要な高さが得られるように適宜設定されている。
【0039】
突設部61の車幅方向内側の側面は、垂下壁53の車幅方向における位置が前輪12の内面位置12aよりも内側であるので、図1に補助線L2で示したように、当然に前輪12の内面位置12aよりも内側に位置することになる。
【0040】
突設部61は、前側フロアアンダーカバー19aの前端から形成されるのではなく、車両前後方向後方にやや後退した位置から形成されている。つまり、前側フロアアンダーカバー19aの車幅方向外側の前端部分であって垂下壁53よりも車幅方向内側に入り込んだ位置に、本体板部52より上方に位置して車体に対して固定される固定面部62が設けられ、固定面部62と本体板部52を連結する縦壁部63が設けられている。縦壁部63は、いわば前述した低抵抗面(固定凹所55よりも車幅方向外側の部分59)の車幅方向の幅を狭める態様で存在しており、車両前後方向後方ほど車幅方向外側に出るように緩やかに湾曲している。また縦壁部63車両の上下方向の形状についていえば、下方ほど車幅方向内側に傾いている。このような縦壁部63の後方に、縦壁部63から連続して突設部61が形成されている。
【0041】
突設部61は前端部に、前方ほど上方に傾斜する傾斜部64を有している。傾斜部64は、換言すれば後方に行くに従って下方に下がる形状であり、直線状であっても曲線状であってもよい。この傾斜部64の後方には、本体板部52の下面から下方へ突出する突出高さを最も高くするピーク部65が形成されている。傾斜部64からピーク部65に続く部分は緩やかに連続している。
【0042】
突設部61の形状は、主たる部分の高さが同じで高低差のないものとすることもできるが、この例の突設部61は前述のとおりピーク部65を有している。このピーク部65は、突設部61の車両前後方向の前輪12に寄った位置に形成され、突設部61におけるピーク部65より後方に延びる延長部66は突出高さが低くなるように形成されている。
【0043】
ピーク部65の形成位置は、前輪12に近づきすぎず、また前輪12から離れすぎない位置であって、前側フロアアンダーカバー19aの下面に沿って流れる走行風が、速度の遅い前輪12後方の走行風の影響を受けて側方へ曲がる位置に設定される。
【0044】
具体的には、車両前後方向におけるピーク部65の位置は、固定凹所55よりも車幅方向外側の部分59である低抵抗面の上端に対応する位置より若干後方である(図1の仮想線の丸囲みP参照)。ピーク部65は車両前後方向に適宜の範囲を有するものであってもよい。
【0045】
また突設部61におけるピーク部65より後方の延長部66の下面66aは、直線状に形成されている。延長部66の後方先端は、前側フロアアンダーカバー19aの後端に位置している。
【0046】
このような構成の前側フロアアンダーカバー19aは、図4に示したように、延長部66の下面66aを車両側面から見た状態で略水平にするように固定される。ここで、「略水平」とは、水平を含む意味である。
【0047】
すなわち、図4では誇張して描いているが、前側フロアアンダーカバー19aの取り付けに際して、本体板部52が車両後方ほど下方に傾斜するように傾けて(α)、突設部61の延長部66の下面66aを車両側面視で水平にする。
【0048】
一方、後側フロアアンダーカバー19bは本体板部52が水平になるように固定される。
【0049】
前側フロアアンダーカバー19aと後側フロアアンダーカバー19bのこのような固定によって、フロアアンダーカバー19の側面視の下端位置を構成する部分のほとんどの部分が水平に視認されることになる。
【0050】
また、前側フロアアンダーカバー19aの本体板部52の後方部分を下方に傾けることにより、後側フロアアンダーカバー19bの位置は、前側フロアアンダーカバー19aが水平である場合に比べてわずかでも下方に位置することになる。つまり、相互に接続される前側フロアアンダーカバー19aと後側フロアアンダーカバー19bとの側面視における連続性を保ちながらも、後側フロアアンダーカバー19bの位置を下げることができ、燃料タンクの大容量化に寄与する。
【0051】
前述のようなトンネルアンダーカバー18とフロアアンダーカバー19を有する下部車体構造11において、フロアトンネル14の下方におけるトンネルアンダーカバー18の後面壁部32よりも後方の部分は開放されている。
【0052】
以上のように構成された下部車体構造11では、次のようにして空力性能を良好にする。
【0053】
図6に矢印で示したように、フロアアンダーカバー19の下をフロアアンダーカバー19に沿って流れる走行風Aは、前輪12後方の走行風Bの速度よりも速いので、前輪12後方の走行風Bの影響で、その一部A1が車幅方向外側に向けて吹き出そうとする。このときに、突設部61がフロアアンダーカバー19の下の走行風A2と、前輪12後方の走行風Bとの間の仕切りとして機能し、フロアアンダーカバー19下の走行風の一部A1が前輪12の後方において側方へ流出することを抑制する。このため、フロア下の前輪12の後方における渦の発生を抑制して空力性能を向上させることができる。
【0054】
突設部61のピーク部65は前輪12に寄った位置にあり、固定凹所55よりも車幅方向外側の部分59の低抵抗面に沿って流れて前輪12から離れた前輪12の後方において側方に流出しようとする空気の流れを効果的に抑える。
【0055】
しかも、突設部61の前端部には、前方ほど上方に傾斜する傾斜部64が形成されているので、前側フロアアンダーカバー19aの前端に当たる走行風は突設部61周辺に円滑に流される。このため空気抵抗を抑えることができ、空力性能の向上に効果的である。
【0056】
同様に、突設部61の車両方向前方には、固定面部62と本体板部52とを連結する縦壁部63が設けられているが、縦壁部63の高さを抑制して円滑に突設部61の前端に連続させることができるので、この点からも空気抵抗を抑えることができる。
【0057】
つまり、突設部61を設けることにより空力性能を向上させるが、突設部61の前端部とその近傍における空気抵抗を極力少ない状態にして、突設部61の形成によっても所期の効果が減殺されないようにして、空力性能の効果的な向上を図っている。
【0058】
また、突設部61は本体板部52の車幅方向外側の端に位置してり、突設部61におけるピーク部65より後方の延長部66の下面66aは直線状である。そしてこの下面66aが車両側面から見た状態で水平になるように前側フロアアンダーカバー19aが固定されているので、空力性能向上に加えて見栄えの向上を図れるという利点がある。すなわち、前側フロアアンダーカバー19aの側面視における下端の輪郭・外形を形成する延長部66の下面66aが水平であるので、傾いている場合と比べて美麗である。
【0059】
しかも、同じく側面視における下端の輪郭・外形を形成する後側フロアアンダーカバー19bは水平に固定されているので、前側フロアアンダーカバー19aとの連続性をもって美麗な一直線状のシルエットが得られるので、全体として良好な美感が得られる。
【0060】
そのうえ、前述のように後側フロアアンダーカバー19bの位置を低くして、燃料タンクを収容する領域の高さを稼ぐことができるので、燃料タンクの大型化にも資する。
【0061】
突設部61の車両前後方向の前方には固定面62部が形成されているが、固定面部62から立ち上がる縦壁部63の後方に突設部61が形成されているので、この部分においても美麗な外観を得られ、見栄えの向上に資する。
【0062】
加えて、左右のフロアアンダーカバー19の前端部に挟まれるように備えられるトンネルアンダーカバー18の後端部18aには、後面壁部32が形成されている。これによっても、前述した空力性能の向上に資することができる。
【0063】
すなわち、車両の走行時には、エンジンルーム内の空気がフロアトンネル14内を車両の後方に向けてフロアトンネル14に沿って流れる。フロアトンネル14の前端部には前述のように傾斜部14aがあるため、空気の流れは斜め下方に向く。
【0064】
その空気の流れは、続いてフロアトンネル14の下方を塞ぐトンネルアンダーカバー18に沿って後方に流れることになるが、トンネルアンダーカバー18の下を流れる走行風のほうが高速であるので、トンネルアンダーカバー18の後端部18aで空気が下方に吹き出す現象が生じ得る。フロアトンネル14内の空気が下方に吹き出すと、そこで渦が発生して空力性能を悪化させるばかりか、トンネルアンダーカバー18の後端部18aでの空気流の乱れが、車幅方向外側の部分にも影響を与えるおそれがある。
【0065】
ところが、前述のようにトンネルアンダーカバー18の後端部18aには後面壁部32が形成されているので、空気流の向きを制御して、下方に吹き出そうとするのを抑制する。この結果、図2図3に矢印Cで示したように円滑な空気の流れを実現できる。
【0066】
このようにトンネルアンダーカバー18によっても空力性能を悪化させ得る空気の流れを抑えて、より効果的に空力性の向上できる。
【0067】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【0068】
例えば突設部61は、フロアアンダーカバー19の長手方向の全体にわたって形成してもよい。
【0069】
また本発明のアンダーカバーは、左右一対のフロアアンダーカバー19ではなくてもよい。
【符号の説明】
【0070】
11…下部車体構造
12…前輪
19…フロアアンダーカバー
19a…前側フロアアンダーカバー
51…固定縁部
52…本体板部
61…突設部
62…固定面部
63…縦壁部
64…傾斜部
65…ピーク部
66…延長部
66a…下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7