(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】超音波診断装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020039480
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲哉
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-111301(JP,A)
【文献】特開2006-204594(JP,A)
【文献】特開2002-238900(JP,A)
【文献】特開2015-033569(JP,A)
【文献】特開2015-202182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0142386(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263603(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15 、
G06T 1/00 - 1/40 、 3/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送受信する超音波探触子から得た受信信号に基づいて、音線信号を生成する音線信号生成部と、
前記音線信号から、複数の異なる帯域を通過するフィルタリングを行って複数の画像化信号を抽出する抽出部と、
前記複数の画像化信号を用いて
高周波成分がカットされた差分信号を生成する差分部と、
前記複数の画像化信号の少なくとも一つに対して、前記差分信号を用いて演算を行う演算部と、を備え
、
前記演算部は、前記複数の画像化信号のうちの高周波成分を含む画像化信号から前記差分信号を減算して散乱成分の画像化が抑圧された画像化信号である再差分信号を生成する超音波診断装置。
【請求項2】
前記再差分信号から再差分画像データを生成する画像データ生成部を備える請求項
1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記複数の画像化信号から複数の画像データを生成する画像データ生成部を備え、
前記差分部は、前記複数の画像データを用いて差分画像データを生成し、
前記演算部は、前記複数の画像データの少なくとも一つから前記差分画像データを減算して再差分画像データを生成する請求項
1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記再差分画像データと、前記複数の画像化信号に対応する複数の画像データの少なくとも一つと、を合成して合成画像データを生成する請求項
2又は
3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記複数の画像化信号の少なくとも一つに前処理を施す前処理部を備え、
前記差分部は、少なくとも前記前処理が施された画像化信号を用いて、前記差分信号を生成する請求項1から
4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記前処理は、係数を乗算する処理である請求項
5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記係数は、深度に対応する値を有する請求項
6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記係数は、前記被検体の部位に対応する値を有する請求項
6に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記係数は、前記被検体の特徴量に対応する値を有する請求項
6に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記係数は、操作入力部を介して操作入力される請求項
6に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記前処理は、画像の縮小処理である請求項
5から
10のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記前処理は、画像の穴埋め処理である請求項
5から
11のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記超音波探触子は、
当該超音波探触子の最大の感度を0dBとした-20dBにおける上限の周波数と下限の周波数との間の周波数の帯域である-20dB帯域の
、当該-20dB帯域の帯域幅をその中心周波数で除算した値である比帯域が130%以上である請求項1から
12のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
周波数の異なる複数の基本波を含む駆動信号を生成して前記超音波探触子に出力する送信部を備え、
前記音線信号生成部は、前記複数の基本波の高調波成分を有する音線信号を生成する請求項1から
13のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
コンピューターを、
被検体に超音波を送受信する超音波探触子から得た受信信号に基づいて、音線信号を生成する音線信号生成部、
前記音線信号から、複数の異なる帯域をフィルタリングして複数の画像化信号を抽出する抽出部、
前記複数の画像化信号を用いて
高周波成分がカットされた差分信号を生成する差分部、
前記複数の画像化信号の少なくとも一つに対して、前記差分信号を用いて演算を行う演算部、
として機能させ
、
前記演算部は、前記複数の画像化信号のうちの高周波成分を含む画像化信号から前記差分信号を減算して散乱成分の画像化が抑圧された画像化信号である再差分信号を生成するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波探触子を患者の被検体の体表又は体腔内から当てるという簡単な操作で心臓や胎児の様子が超音波画像として得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査を行うことができる。このような超音波診断を行うために用いられる超音波診断装置が知られている。
【0003】
超音波画像は、通常、超音波波長よりも大きい構造物から反射されて得られる反射超音波(エコー)のエコー信号成分と超音波波長より小さな構造物によって散乱されて得られるエコー信号成分とは区別無く表示される。超音波波長よりも大きい反射体による反射体エコー信号は、その反射体の形態・構造に応じた信号となり、直接的にその形態として得られる。対して、超音波波長よりも小さい散乱体による散乱体エコー信号は、超音波波長より小さいため、直接的にはその形態を反映していない。
【0004】
しかしながら、散乱体エコー信号は、組織に由来する散乱・干渉の結果であり、肝臓や甲状腺などの実質部においては、いわゆるスペックルとして観察され、その均一性や粒状性などは診断情報の一つとして活用される。
【0005】
また、複数の超音波画像を加算することにより、目的の超音波画像を得る技術が知られている。例えば、超音波診断装置で得られたサンプリング・データから空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示す画素値変化情報に応じて重み付け係数を演算し、サンプリング・データとサンプリング・データの平滑化画像とを重み付け係数を用いて加算する画像処理装置が知られている(特許文献1参照)。この画像処理装置により、高周波成分を中心とする画像ノイズを確実に除去又は低減させる一方で、かかる画像上で構造物の境界などの高周波成分を多く含む、観察上、重要な部位の情報は確実に確保するとともに、スペックル・ノイズの低減を行う。
【0006】
また、超音波を受信して得られた受信信号から複数の周波数成分を抽出し、複数の周波数成分の強度変化にそれぞれ基づく複数種類の画像データを生成し、少なくとも1種類の画像データに空間フィルター処理を施して合成する超音波診断装置が知られている(特許文献2参照)。この超音波診断装置の合成画像データにより、生体組織の周波数通過特性の差を利用して組織を強調表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-51229号公報
【文献】特開2006-204594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の画像処理装置では、臓器辺縁など、信号強度が大きい構造のエッジ分解能は維持することが可能だが、臓器内や腫瘍内の微細構造などの信号強度差の小さい組織構造はスペックルと同様に平滑化されてしまい、分解能が損なわれていた。
【0009】
また、特許文献2の超音波診断装置では、組織の周波数特性差に基づく情報は得られるものの、必然的に選択された周波数を中心とした狭帯域の信号で画像が構成されるため、高い分解能は得られなかった。
【0010】
本発明の課題は、組織内の散乱体(散乱成分)の多い被検体でも超音波の反射に基づく組織(反射体、反射成分)のエコー成分を高分解能で描出しながら、散乱の影響を受けやすい高周波超音波信号による散乱音響ノイズを抑圧し、高分解能と組織認識性とを両立することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の超音波診断装置は、
被検体に超音波を送受信する超音波探触子から得た受信信号に基づいて、音線信号を生成する音線信号生成部と、
前記音線信号から、複数の異なる帯域を通過するフィルタリングを行って複数の画像化信号を抽出する抽出部と、
前記複数の画像化信号を用いて高周波成分がカットされた差分信号を生成する差分部と、
前記複数の画像化信号の少なくとも一つに対して、前記差分信号を用いて演算を行う演算部と、を備え、
前記演算部は、前記複数の画像化信号のうちの高周波成分を含む画像化信号から前記差分信号を減算して散乱成分の画像化が抑圧された画像化信号である再差分信号を生成する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記再差分信号から再差分画像データを生成する画像データ生成部を備える。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超音波診断装置において、
前記複数の画像化信号から複数の画像データを生成する画像データ生成部を備え、
前記差分部は、前記複数の画像データを用いて差分画像データを生成し、
前記演算部は、前記複数の画像データの少なくとも一つから前記差分画像データを減算して再差分画像データを生成する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の超音波診断装置において、
前記再差分画像データと、前記複数の画像化信号に対応する複数の画像データの少なくとも一つと、を合成して合成画像データを生成する。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記複数の画像化信号の少なくとも一つに前処理を施す前処理部を備え、
前記差分部は、少なくとも前記前処理が施された画像化信号を用いて、前記差分信号を生成する。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の超音波診断装置において、
前記前処理は、係数を乗算する処理である。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記係数は、深度に対応する値を有する。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記係数は、前記被検体の部位に対応する値を有する。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記係数は、前記被検体の特徴量に対応する値を有する。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記係数は、操作入力部を介して操作入力される。
【0023】
請求項11に記載の発明は、請求項5から10のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記前処理は、画像の縮小処理である。
【0024】
請求項12に記載の発明は、請求項5から11のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記前処理は、画像の穴埋め処理である。
【0025】
請求項13に記載の発明は、請求項1から12のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記超音波探触子は、当該超音波探触子の最大の感度を0dBとした-20dBにおける上限の周波数と下限の周波数との間の周波数の帯域である-20dB帯域の、当該-20dB帯域の帯域幅をその中心周波数で除算した値である比帯域が130%以上である。
【0026】
請求項14に記載の発明は、請求項1から13のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
周波数の異なる複数の基本波を含む駆動信号を生成して前記超音波探触子に出力する送信部を備え、
前記音線信号生成部は、前記複数の基本波の高調波成分を有する音線信号を生成する。
【0027】
請求項15に記載の発明のプログラムは、
コンピューターを、
被検体に超音波を送受信する超音波探触子から得た受信信号に基づいて、音線信号を生成する音線信号生成部、
前記音線信号から、複数の異なる帯域をフィルタリングして複数の画像化信号を抽出する抽出部、
前記複数の画像化信号を用いて高周波成分がカットされた差分信号を生成する差分部、
前記複数の画像化信号の少なくとも一つに対して、前記差分信号を用いて演算を行う演算部、
として機能させ、
前記演算部は、前記複数の画像化信号のうちの高周波成分を含む画像化信号から前記差分信号を減算して散乱成分の画像化が抑圧された画像化信号である再差分信号を生成する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、組織内の散乱体の多い被検体でも組織の反射体を高分解能で描出しながら、散乱音響ノイズを抑圧でき、高分解能と組織認識性とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態の超音波診断装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】(a)は、送信超音波の信号強度の周波数特性を示す図である。(b)は、反射超音波の信号強度の周波数特性を示す図である。
【
図5】第1の超音波画像から第2の超音波画像を減算した差分画像の生成と、第1の超音波画像から差分画像を減算した再差分画像の生成と、を示す図である。
【
図6】第1の超音波画像から第2の超音波画像を減算した差分画像の生成と、第1の超音波画像から差分画像を減算した再差分画像の生成と、を示す模式図である。
【
図7】第2の超音波画像からの係数演算処理後の超音波画像及び縮小処理後の超音波画像の生成を示す図である。
【
図8】第2の超音波画像からの穴埋め処理後の超音波画像の生成を示す図である。
【
図9】第1の超音波画像表示処理を示すフローチャートである。
【
図10】第2の実施の形態の超音波診断装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】第2の超音波画像表示処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付図面を参照して本発明に係る第1の実施の形態、実施例、第2の実施の形態を順に詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0031】
(第1の実施の形態)
図1~
図9を参照して、本発明に係る第1の実施の形態を説明する。先ず、
図1~
図8を参照して、本実施の形態の超音波診断装置としての超音波診断装置100Aの装置構成を説明する。
図1は、本実施の形態の超音波診断装置100Aの外観構成を示す図である。
図2は、超音波診断装置100Aの概略構成を示すブロック図である。
図3は、送信部12の機能構成を示すブロック図である。
図4(a)は、送信超音波の信号強度の周波数特性を示す図である。
図4(b)は、反射超音波の信号強度の周波数特性を示す図である。
【0032】
図5は、超音波画像F1から超音波画像F2を減算した差分画像F3の生成と、超音波画像F1から差分画像F3を減算した再差分画像F4の生成と、を示す図である。
図6は、超音波画像F11から超音波画像F12を減算した差分画像F13の生成と、超音波画像F11から差分画像F13を減算した再差分画像F14の生成と、を示す模式図である。
図7は、超音波画像F12aからの係数演算処理後の超音波画像F12b及び縮小処理後の超音波画像F12cの生成を示す図である。
図8は、超音波画像F12dからの穴埋め処理後の超音波画像F12eの生成を示す図である。
【0033】
本実施の形態に係る超音波診断装置100Aは、病院などの医療施設に設けられ、
図1及び
図2に示すように、超音波診断装置本体1Aと、超音波探触子2と、を備える。超音波探触子2は、図示しない生体などの被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波診断装置本体1Aは、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。超音波診断装置本体1Aと超音波探触子2との通信は、ケーブル3を介する有線通信に代えて、UWB(Ultra Wide Band)などの無線通信により行うこととしてもよい。
【0034】
超音波探触子2は、圧電素子からなる複数の振動子を備えており、この複数の振動子は、例えば、方位方向に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子を備えた超音波探触子2を用いている。なお、複数の振動子は、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子の個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0035】
超音波診断装置本体1Aは、例えば、
図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、音線信号生成部14と、信号処理部15Aと、画像データ生成部としてのDSC(Digital Scan Converter)16と、画像処理部17Aと、表示部18と、制御部19Aと、を備える。
【0036】
操作入力部11は、例えば、医師、技師などのユーザーからの診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報などのデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボードなどを備えており、その操作信号を制御部19Aに出力する。
【0037】
送信部12は、制御部19Aの制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。送信部12は、
図3に示すように、例えば、クロック発生回路121、パルス発生回路122、時間及び電圧設定部123並びに遅延回路124を備える。
【0038】
クロック発生回路121は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。パルス発生回路122は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。パルス発生回路122は、例えば、3値(+HV/0(GND)/-HV)、5値(+HV/+MV/0(GND)/-MV/-HV)の電圧を切り替えて出力することにより、矩形波による駆動信号を発生させることができる。このとき、パルス信号の振幅については、正極性及び負極性で同一となるようにしたが、これに限定されない。本実施の形態では、3値、5値の電圧を切り替えて駆動信号を出力するようにしたが、3値、5値に限定されず、適宜の値に設定することができるが、5値以下が好ましい。これにより、低コストで周波数成分の制御の自由度を向上させることができ、より高分解能である送信超音波を得ることができる。
【0039】
時間及び電圧設定部123は、パルス発生回路122から出力される駆動信号の同一電圧レベルの各区間の持続時間及びその電圧レベルを設定する。すなわち、パルス発生回路122は、時間及び電圧設定部123によって設定された各区間の持続時間及び電圧レベルに従ったパルス波形による駆動信号を出力する。時間及び電圧設定部123で設定される各区間の持続時間及び電圧レベルは、例えば、操作入力部11による入力操作により可変とすることができる。
【0040】
遅延回路124は、駆動信号の送信タイミングを振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。
【0041】
以上のように構成された送信部12は、制御部19Aの制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子を、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子に対して駆動信号を供給することによりスキャンを行う。
【0042】
本実施の形態では、後述する高調波成分を抽出するために、パルスインバージョン法を実施することができる。すなわち、送信部12は、パルスインバージョン法を実施する場合には、第1のパルス信号と、この第1のパルス信号とは極性反転した第2のパルス信号とを同一走査線上に時間間隔をおいて送信することができる。なお、このとき、第1のパルス信号の複数のデューティーのうちの少なくとも1つを異ならせて極性反転させた第2のパルス信号を送信するようにしてもよい。また、第2のパルス信号は、第1のパルス信号とは時間反転させたものであってもよい。
【0043】
受信部13は、制御部19Aの制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。
【0044】
音線信号生成部14は、制御部19Aの制御に従って、受信部13で受信された受信信号から音線信号を生成する回路である。音線信号生成部14は、例えば、高調波成分抽出部14aとともに、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。高調波成分抽出部14aは、受信部13から出力された受信信号からパルスインバージョン法を実施して高調波成分を抽出する。本実施の形態では、高調波成分抽出部14aにより、2次高調波を主体とした信号成分を抽出することができる。2次高調波成分は、上述した第1のパルス信号及び第2のパルス信号からそれぞれ発生した2つの送信超音波にそれぞれ対応する反射超音波から得られる受信信号を加算(合成)して受信信号に含まれる基本波成分を除去した上でフィルター処理を行うことにより抽出することができる。また、3次高調波などの奇数次高調波成分を利用する場合には、上述の第1および第2のパルス信号に応じた第1および第2の受信信号を減算したのち、基本波成分をフィルターなどで除去することにより高調波成分を抽出することができる。さらに加算により得られた偶数次高調波成分と減算により得られた奇数次高調波成分の双方を用いることもできる。この場合、奇数次高調波受信信号は必要に応じ偶数次高調波受信信号と位相が整合するよう、オールパスフィルターなどにより位相調整を行って、受信信号段階で包絡線検波前に加算(合成)することにより、偶数次高調波受信信号の周波数帯域と奇数次高調波受信信号の周波数帯域が結合し、より広い帯域を有する受信信号を得ることが可能となる。
【0045】
増幅器は、高調波成分抽出部14aにより高調波成分が抽出された受信信号を、振動子毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ-デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)してデジタルの音線信号(音線データ)を生成するための回路である。
【0046】
例えば、
図4(a)のような、基本波f1,f2,f3を含む送信超音波を送信するための駆動信号を送信部12に生成させる。
図4(a)において、横軸が周波数を示し、縦軸が感度(信号強度)を示し、太線の実線が超音波探触子2の周波数帯域を示し、
図4(b)でも同様である。
【0047】
受信部13及び音線信号生成部14で得られる受信信号の周波数成分として、基本波f1,f2,f3の送信超音波に対応する反射超音波の高調波成分は、
図4(b)に示すようになる。つまり、反射超音波の高調波成分として、基本波f1,f2,f3の少なくとも一つに由来する周波数がf3-f2、f2-f1、f3-f1、2f1、f1+f2、3f1の周波数成分が得られる。音線信号生成部14では、
図4(b)に示す全ての周波数成分を含む音線信号が生成される。
【0048】
信号処理部15Aは、抽出部としての画像化信号抽出部15a,15bと、信号整形部15c,15dと、を有する。信号処理部15Aは、制御部19Aの制御に従って、音線信号生成部14からの音線信号に対して、高周波成分を含む第1の画像化信号と、高周波成分を含まない第2の画像化信号との差分画像化信号を生成し、第1の画像化信号と、差分画像化信号との再差分画像化信号を生成する。
【0049】
画像化信号抽出部15aは、帯域通過フィルターを備え、制御部19Aの制御に従って、当該帯域通過フィルターにより、音線信号生成部14からの音線信号から高周波成分を多く含む帯域の周波数成分を通過して第1の画像化信号を抽出する回路である。画像化信号抽出部15bは、帯域通過フィルターを備え、制御部19Aの制御に従って、当該帯域通過フィルターにより、音線信号生成部14からの音線信号から高周波成分を含まない帯域の周波数成分を通過して第2の画像化信号を抽出する回路である。
【0050】
画像化信号抽出部15a,15bの異なる帯域通過フィルターによって抽出される複数の画像化信号は、高周波側成分の含有量が異なることが好ましく、差分画像化信号生成は高周波側成分の含有量が多い第1の画像化信号を基準信号とし、この第1の画像化信号から高周波側成分の含有量が少ない第2の画像化信号を減算信号として作用させることにより生成することが好ましい。これにより超音波散乱強度の周波数依存性を利用して、散乱体由来の受信成分を効果的に選択抽出することが可能となる。また、基準信号は、減算信号より広帯域であることが高い分解能を得るうえで好ましい。
【0051】
また、複数の異なる帯域通過フィルターの遮断特性は、超音波探触子2の種類ごとにその音響特性や観察対象によりそれぞれ適宜決定されるが、その組み合わせを複数用意してもよい。複数の組み合わせの選択は、操作入力部11を介するユーザーからの観察対象(被検体の部位など)選択と連動して自動的に選択される方法や、画像化信号から特徴量を検出してその評価値により適応的に自動選択される方法や、ユーザーが必要に応じて操作入力部11を介して選択入力する方法など、自動・手動のいずれで選択する方法であってもよい。またこれらの帯域通過フィルターは、固定フィルターではなく、深度に応じて遮断特性が連続的に変化するいわゆるダイナミックフィルターであってもよい。
【0052】
例えば、画像化信号抽出部15aでは、音線信号生成部14で生成された音線信号から、
図4(b)に示す全ての周波数成分を通過する実線の太線で示した帯域通過フィルターによりフィルタリングが行われて、第1の画像化信号が生成される。これに対し、画像化信号抽出部15bでは、音線信号生成部14で生成された音線信号から、
図4(b)に示すほぼ全ての周波数成分のうち高周波成分を除去する点線で示した帯域通過フィルターによりフィルタリングが行われて、第2の画像化信号が生成される。
【0053】
本発明を適用するBモード画像は上述に示した高調波イメージングモードに限定されず、基本波イメージングモードにも適用可能だが、基本波イメージングモードではサイドローブなどに起因する音響的なノイズがアーチファクトとして画像化されやすく、散乱体エコー信号成分の抽出を阻害するため高調波イメージングモードを用いることが好ましい。さらに特開2014-168555号公報、特開2015-112261号公報、特願2015-103842に記載される送受信方法などに本発明を適用することにより、浅部から深部のより広い深度領域にわたって高い周波数成分の差分画像情報が得られるためより好ましい。
【0054】
信号整形部15cは、制御部19Aの制御に従って、画像化信号抽出部15aにより生成された第1の画像化信号に、包絡線検波処理やログ圧縮などを実施し、Bモード画像データ生成用の第1の画像化信号を生成する。信号整形部15dは、制御部19Aの制御に従って、画像化信号抽出部15bにより生成された第2の画像化信号に、包絡線検波処理やログ圧縮などを実施し、Bモード画像データ生成用の第2の画像化信号を生成する。
【0055】
DSC16は、制御部19Aの制御に従って、信号整形部15c,15dから入力された第1の画像化信号、第2の画像化信号に、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換し、座標変換などを行って、表示用のBモード画像データとしての第1の画像データ、第2の画像データを生成する。Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものとなる。
【0056】
画像処理部17Aは、制御部19Aの制御に従って、DSC16からの第1、第2の画像データの画像処理を行う回路であり、差分部、演算部、前処理部としての画像演算部17aと、演算係数決定部17bと、表示画像合成部17cと、を有する。
【0057】
画像演算部17aは、制御部19Aの制御に従って、DSC16から入力された第1の画像データ及び第2の画像データの少なくとも一方に差分演算の前処理を施し、前処理後の第1の画像データから、前処理後の第2の画像データを減算して、差分画像データを生成し、当該第1の画像データから、生成した差分画像データを減算して、再差分画像データを生成する回路である。なお、基準信号に対応する第1の画像データと減算信号に対応する第2の画像データとは、前処理を行わずに原信号の画像データをそのまま用いて差分画像データを生成してもよい。
【0058】
例えば、前処理が施されない場合、
図5に示すように、超音波画像F1の第1の画像データから、超音波画像F2の第2の画像データが減算され、差分画像F3の差分画像データが生成される。さらに、超音波画像F1の第1の画像データから、差分画像F3の差分画像データが減算され、再差分画像F4の再差分画像データが生成される。
【0059】
超音波画像F1は、高周波成分が含まれ、かつ広帯域であるため、高い分解能でかつ多くの散乱成分を含む超音波画像となっている。超音波画像F2は、高周波成分がカットされているため、散乱成分の影響は少なくなるが、低周波成分主体で狭帯域となるため、低い分解能の超音波画像となっている。差分画像F3は、反射成分を含まず高い散乱成分のみが抽出された超音波画像となっている。再差分画像F4は、高い分解能でかつ散乱成分の画像化が抑圧された超音波画像となっている。
【0060】
ここで、
図6に示すように、被検体が患者の末梢神経である場合に、模式図を用いて、第1の画像データ、第2の画像データから、差分画像データ、再差分画像データが生成される例を示す。超音波画像F11の第1の画像データから、超音波画像F12の第2の画像データが減算され、差分画像F13の差分画像データが生成される。さらに、超音波画像F11の第1の画像データから、差分画像F13の差分画像データが減算され、再差分画像F14の再差分画像データが生成される。
【0061】
超音波画像F11には、末梢神経40の繊維束41と、神経上膜42と、傍神経鞘43と、スペックルノイズとしての散乱成分44と、を有する。ここでは、例えば、目的の位置としての神経上膜42と傍神経鞘43との間の位置に、穿刺針を刺し薬液を注入するケースであるものとする。再差分画像F14は、散乱成分44が抑圧され、かつ繊維束41、神経上膜42及び傍神経鞘43が高分解能に描出された画像となる。このため、ユーザーが、再差分画像F14を参照することにより、他の部分を損傷することなく、穿刺針を正確な目的の位置に刺すことができる。
【0062】
差分画像データの生成に用いる画像化信号は、包絡線検波及びログ圧縮後の音線信号となり、差分画像データ生成で負値を生じた場合は、その差分画像データをゼロ値として処理することが好ましい。
【0063】
前処理は、2値化処理、係数演算処理、穴埋め処理、縮小処理などがある。信号演算部15eは、2値化処理として、第1の画像データ及び第2の画像データの各々を2値化したのちに差分画像データ生成を行い、2値信号の差分画像データとして得てもよい。
【0064】
また、画像演算部17aは、係数演算処理として、必要に応じて、演算係数決定部17bから取得した係数を、例えば第2の画像データに乗じたのちに、第1の画像データから係数を乗じた第2の画像データを減算した差分画像データを生成してもよい。演算係数決定部17bは、制御部19Aの制御に従って、差分画像データにおける係数を決定し画像演算部17aに出力する。係数の決定は、予め深度方向に応じて係数の値が変化するよう設定され、深度の値に応じて選択される決定方法や、操作入力部11を介するユーザーからの観察対象(被検体の部位など)選択と連動して自動的に選択される決定方法や、画像化信号から特徴量を検出してその評価値により適応的に自動選択される決定方法や、ユーザーが必要に応じて操作入力部11を介して選択入力する決定方法など、自動・手動のいずれで選択する決定方法であってもよい。
【0065】
例えば、
図7に示すように、超音波画像F12aの第2の画像データが生成された場合を考える。超音波画像F12aは、超音波画像F11に比べて、高周波成分のカットにより低い分解能で、明部が膨張し、膨張した末梢神経40aを有する。このため、係数(≦1)が超音波画像F12aに乗算されることで、超音波画像F12bが得られる。超音波画像F12bは、超音波画像F11の反射体領域としての末梢神経40と同サイズの末梢神経40bを有し、末梢神経の領域のサイズが適正化されている。超音波画像F12bにおいて、末梢神経40aの輪郭線を点線で示す。
【0066】
また、画像演算部17aは、穴埋め(補間)処理として、例えば基準信号の第1の画像データに比べて帯域が狭いため、帯域制限に起因する信号総量低下によって明部粗化が生じた場合、具体的には第2の画像データにおいて、連続組織内に信号欠損(明部内に暗部が生成され、明部がちぎれたり、スカスカ、ボゾボソになって不連続(つながりが悪い))がある場合に、差分化画像に暗部が残らないように、第2の画像データの欠損(暗部)を穴埋めしてもよい。この欠損内の反射体由来信号が差分画像データに残存することを抑制できる。
【0067】
例えば、
図8に示すように、超音波画像F12dの第2の画像データが生成された場合を考える。超音波画像F12dは、超音波画像F11に比べて、高周波成分のカットにより信号総量が少なくなり、末梢神経40dの画像上に、欠損としての暗部の欠落点45が発生している。このため、欠落点45の穴埋め処理により、末梢神経40eを有する超音波画像F12dが得られる。末梢神経40eの画像は、穴埋め処理により、連続性が確保されている。
【0068】
また、画像演算部17aは、縮小処理として、基準信号よりも帯域が狭いため、同一の反射体が大きく、厚く描出される減算信号としての第2の画像データに対し、2値化変換の後にモルフォロジー処理である収縮処理を行うことにより、第2の画像データの反射体領域のサイズを基準信号のサイズに合わせてもよい。これにより、反射体近傍領域を含めて正確に散乱体由来の受信信号を抽出することが可能となる。縮小処理は、全方向に対して一律に行う等方的処理でもよいが、帯域が狭くなることにより増大しやすい距離方向に対してのみ処理を行うなどの異方的処理であってもよい。
【0069】
例えば、
図7に示すように、超音波画像F12aの第2の画像データが生成された場合を考える。超音波画像F12aは、膨張した末梢神経40aを有する。このため、超音波画像F12aに縮小処理が施されることで、超音波画像F12cが得られる。超音波画像F12cは、超音波画像F11の反射体領域としての末梢神経40と同サイズの末梢神経40cを有し、末梢神経の領域のサイズが適正化されている。超音波画像F12cにおいて、末梢神経40aの輪郭線を点線で示す。
【0070】
画像演算部17aが差分画像データを用いて再差分演算処理を行う画像データは、基準信号としての第1の画像データであることが好ましい。広帯域であり、高い分解能を有する基準信号に対し、差分信号として抽出した散乱体由来の画像化信号としての差分画像データを用いて演算することにより、高い描出能を保ちつつ穿刺手技などの際に針視認性の障害となっていた散乱体由来の画像化信号(例えば散乱成分44)を抑制することが可能となる。演算処理は、画像化信号の画像データに対する差分処理でもよいし、差分画像データを2値化して2値のマスク画像化信号として、画像化信号の画像データに乗算処理を行って散乱体由来の画像化信号としての差分画像データを一定の割合で減ずる処理でもよい。差分処理を行う場合は元画像化信号の画像データから減ずる差分画像データに係数を乗じてから演算を行ってもよい。差分演算時の係数、乗算演算時の乗算係数は固定値でもよいが、評価判定部により自動的・適応的に決定される方法やユーザーが操作入力部11を介して係数を選択入力する方法により可変であることが好ましい。なお、画像演算部17aが差分画像データを用いて再差分演算処理を行う画像データは、第2の画像データとしてもよい。
【0071】
表示画像合成部17cは、制御部19Aの制御に従って、例えば操作入力部11を介するユーザーからの操作入力に応じて、画像演算部17aから入力された、再差分画像データと、第1又は第2の画像データとの並列表示用の合成画像データの生成や、再差分画像データに色を付け、色が付けられた再差分画像データと第1又は第2の画像データとの合成画像データの生成などを行い、画像データや、生成した合成画像データなどの表示信号を表示部18に出力する。
【0072】
表示部18は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイなどの表示装置が適用可能である。表示部18は、画像処理部17Aから出力された画像データや、合成画像データなどの表示信号に従って表示画面上に超音波画像などの表示を行う。
【0073】
制御部19Aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラムなどの各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置100Aの各部の動作を集中制御する。ROMは、半導体などの不揮発メモリーなどにより構成され、超音波診断装置100Aに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データなどを記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。ROMには、特に、後述する第1の超音波画像表示処理を実行するための第1の超音波画像表示プログラムが記憶されているものとする。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0074】
超音波診断装置本体1Aが備える各部について、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能は、集積回路などのハードウェア回路として実現することができる。集積回路とは、例えばLSI(Large Scale Integration)であり、LSIは集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサーで実現してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。また、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能をソフトウェアにより実行するようにしてもよい。この場合、このソフトウェアは一つ又はそれ以上のROMなどの記憶媒体、光ディスク、又はハードディスクなどに記憶されており、このソフトウェアが演算処理器により実行される。
【0075】
つぎに、
図9を参照して、超音波診断装置100Aの動作を説明する。
図9は、第1の超音波画像表示処理を示すフローチャートである。
【0076】
超音波診断装置100Aにおいて、例えば、操作入力部11を介して、ユーザーから第1の超音波画像表示処理の実行指示が入力されたことをトリガーとして、制御部19Aは、ROMに記憶された第1の超音波画像表示プログラムに従い、第1の超音波画像表示処理を実行する。なお、
図9のフローチャートは、1フレームの超音波画像データの生成及び表示の流れを表しており、その流れを説明するが、実際には、例えば、ライブの超音波画像表示として、複数フレームの超音波画像データが連続的に生成及び表示され、後述する
図11でも同様である。
【0077】
図9に示すように、まず、制御部19Aは、送信部12に、パルスインバージョン用の
図4(a)に示す3つの基本波成分を含む(トライアドTHI(Triad Tissue Harmonic Imaging)の)駆動信号を生成させ、超音波探触子2から当該駆動信号に応じた超音波を被検体に送信させる(ステップS11)。そして、制御部19Aは、受信部13に、ステップS11で送信された超音波が被検体で反射及び散乱された反射超音波を受信させて受信信号を生成させ、音線信号生成部14に、パルスインバージョン方式で、当該受信信号から高調波成分を抽出させ、高調波成分が抽出された受信信号に、増幅、A/D変換、整相加算を施し、3つの基本波成分の高調波成分を含む音線信号を生成させる(ステップS12)。
【0078】
そして、制御部19Aは、画像化信号抽出部15aに、ステップS12で生成された音線信号を、帯域通過フィルターを通過させ第1の画像化信号を生成させる(ステップS13)。そして、制御部19Aは、信号整形部15cに、ステップS13で生成された第1の画像化信号に、包絡線検波及びログ圧縮を施させる(ステップS14)。そして、制御部19Aは、DSC16に、ステップS14で包絡線検波処理及びログ圧縮された第1の画像化信号から第1の画像データ(第1の画像信号)を生成させる(ステップS15)。
【0079】
また、ステップS13と並行して、制御部19Aは、画像化信号抽出部15bに、ステップS12で生成された音線信号を、帯域通過フィルターを通過させ第2の画像化信号を生成させる(ステップS16)。そして、制御部19Aは、信号整形部15dに、ステップS16で生成された第2の画像化信号に、包絡線検波及びログ圧縮を施させる(ステップS17)。そして、制御部19Aは、DSC16に、ステップS17で包絡線検波処理及びログ圧縮された第2の画像化信号から第2の画像データ(第2の画像信号)を生成させる(ステップS18)。
【0080】
そして、制御部19Aは、画像演算部17aに、ステップS19で生成された第2の画像データに、前処理(2値化処理、係数演算処理、穴埋め処理、縮小処理など)を施させる(ステップS19)。ステップS19では、例えば手動で予め設定された前処理の設定情報に応じて、前処理が施され、また前処理が施されなくてもよい。
【0081】
そして、制御部19Aは、画像演算部17aに、ステップS15で生成された第1の画像データから、ステップS19で生成された前処理が施され又は施されていない第2の画像データを減算して差分画像データを生成させる(ステップS20)。そして、制御部19Aは、画像演算部17aに、ステップS15で生成された第1の画像データから、ステップS20で生成された第2の画像データを減算して再差分画像データを生成させる(ステップS21)。
【0082】
そして、制御部19Aは、表示画像合成部17cに、ステップS15で生成された第1の画像データ又はステップS19で生成された第2の画像データと、ステップS21で生成された再差分画像データと、を合成させて合成画像データを生成させる(ステップS22)。そして、制御部19Aは、画像処理部17Aに、ステップS22で生成された合成画像データを表示部18に表示させ(ステップS23)、第1の超音波画像表示処理を終了する。
【0083】
(実施例)
ついで、第1の実施の形態の実施例として、超音波診断装置100Aを用いて、被検体としてファントムをスキャンして解析情報を得る観察例を説明する。観察対象のファントムとして、ファントムP1~P4を作製した。ファントムP1~P4の構成(特性)を次表Iにまとめた。
【表1】
【0084】
ファントムP1~P4には、主材の寒天を基に、観察対象のワイヤーとして、ワイヤーターゲットを埋設し、適宜、反射物質A、散乱物資B,Cが混合されている。反射物質Aは、平均粒径600[μm]のポリスチレンビーズであり、ポリサイエンス社製の材料を用いた。散乱物質Bは、平均粒径30[μm]のアクリル粒子であり、綜研化学製MX-3000を用いた。散乱物質Cは、平均粒径5[μm]のアクリル粒子であり、綜研化学製MX-500を用いた。ワイヤーターゲットは、穿刺針に対応する観察対象であり、50μmφのステンレススチールワイヤーである。
【0085】
ファントムの作製手順として、85[℃]に加温した1.5wt%寒天溶液1[kg]中に反射物質A、散乱物資B,Cを表Iに記載の重量[g]を混合投入し充分均一に分散させた後、ワイヤーターゲットを備えた容器に当該ワイヤーターゲットが所定の深度15[mm]にとなるように投入し、冷却・ゲル化してファントムP1~P4とした。
【0086】
ファントムP1は、マトリクス中に反射・散乱物質を全く含まない。つまり、ファントムP1は、理想的な分解能とワイヤー-マトリクス輝度差が得られる。マトリクスとは、ワイヤーターゲット周辺の、反射物質、散乱物資が混合された又は混合されない主材の部分とする。ファントムP2は、組織構造境界などに該当する反射物質Aは含むが、組織内に散乱物質B,Cがない。つまり、ファントムP2は、条件の良好な被検体観察時の組織に相当する。
【0087】
ファントムP3は、反射物質Aに加え、組織内に一定量の散乱物質Bを含む。つまり、ファントムP3は、中等度条件の被検体観察時の組織に相当する。ファントムP4は、反射物質Aに加え、組織内に多くの散乱物質B,Cを含む。つまり、ファントムP4は、条件の不良な被検体観察時の組織に相当する。
【0088】
ファントムP1~P4をスキャンして画像を観察するにあたり、観察例1~8を、超音波探触子2の条件、画像化条件、観察対象ファントム番号、画像演算の方法、画像描出評価を次表II、表IIIにまとめた。なお、表II、表IIIにおいて、画像描出評価の値が、良好:ハッチング、普通:無地、薄い網掛け:やや劣化、濃い網掛け:劣化、とした。
【0089】
【0090】
【0091】
超音波探触子2としては、-20dB帯域の帯域幅と、比帯域と、を示した。-20dB帯域は、周波数に対する超音波探触子2の感度の関係において、最大の感度を0dBとした-20dBにおける上限の周波数と下限の周波数との間の帯域である。-20dB帯域の比帯域は、-20dB帯域の帯域幅をその中心周波数で除算した値[%]である。超音波探触子2として、-20dB帯域の比帯域が130%、111%の2種類のものを使用した。
【0092】
画像化条件の帯域通過フィルターの通過帯域(下限の周波数[MHz]-上限の周波数[MHz])は、第1の画像化信号に対応する画像化信号抽出部15aの帯域通過フィルターの通過帯域と、第2の画像化信号に対応する画像化信号抽出部15bの帯域通過フィルターの通過帯域と、である。観察対象ファントム番号は、各観察例で観察したファントムの番号P1~P4である。画像演算は、再差分画像データの生成の有無、係数演算の有無及び係数値、縮小処理の有無、を示す。
【0093】
画像描出評価は、観察例1~8について、超音波診断装置100Aを用いて得られた画像データ(第1の画像データ、再差分画像データ)の画像描出の評価結果である。画像描出評価は、ワイヤーターゲット分解能としての距離分解能及び方位分解能と、ワイヤー部最高輝度と、マトリクス部平均輝度と、ワイヤー-マトリクス輝度差と、ワイヤーターゲット周辺散乱と、を有する。距離分解能及び方位分解能は、観察する画像データの画像内のワイヤーターゲットの距離分解能[μm]及び方位分解能[μm]である。ワイヤー部最高輝度は、画像内のワイヤーターゲット部分の最高輝度である。マトリクス部平均輝度は、画像内のマトリクス部分の平均輝度である。ワイヤー-マトリクス輝度差は、画像内のワイヤー部とマトリクス部との輝度差である。ワイヤーターゲット周辺散乱は、画像内のワイヤーターゲットの周辺の散乱成分の有無である。
【0094】
観察例1では、-20dB帯域の広い(4-19[MHz]、比帯域:130%)超音波探触子2を用い、画像化信号抽出部15aの帯域通過フィルターの通過帯域も大きく(4-18[MHz])、広帯域かつ高周波を含む受信信号を用いて画像化しているため、ファントムP1では、ワイヤーターゲットの距離分解能、方位分解能とも高い分解能が得られる。ファントムP2,P3,P4では、ワイヤー周辺の反射物質A、散乱物質B,Cの影響により若干分解能が劣化するもののその劣化は20%以内であり良好な分解能が保たれている。しかしながら、ファントムP3,P4では、散乱物質B,Cによってマトリクスの輝度が上昇しており、ワイヤーターゲットの輝度との差が小さくなってしまい、ワイヤーターゲットの視認性(穿刺手技では穿刺針の視認性(針視認性)に関わる)が劣化してしまっている。
【0095】
観察例2では、-20dB帯域の広い超音波探触子2を用い、画像化信号抽出部15aの帯域通過フィルターの通過帯域も観察例1より上限を小さくし(4-12[MHz])、散乱物質B,Cで多く散乱される高周波を除去して画像化しているため、観察例1で問題となったワイヤーターゲットとマトリクスとの輝度差が小さくなることは軽減されており、ワイヤーターゲットの視認性は確保されている。しかしながら、観察例1に対して狭帯域かつ低周波となったため、良好な分解能は得られない。
【0096】
観察例3では、-20dB帯域の広い超音波探触子2を用い、画像化信号抽出部15aの帯域通過フィルターの通過帯域も大きく(4-18[MHz])、受信信号帯域が高周波まであり、散乱物質由来の受信信号も含めて画像化された第1の画像データから、画像化信号抽出部15bの帯域通過フィルターの通過帯域が高周波を含まず(4-12[MHz])、散乱物質B,C由来の受信信号が少ない第2の画像データを減算することで散乱物質B,C由来の差分画像成分を抽出し、さらに第1の画像データから抽出した差分画像成分を減算することにより、第1の画像データ中の散乱物質B,C由来の画像成分を除去した。これにより、ワイヤーターゲットの分解能を維持したまま条件の悪い被検体を模したファントムP4のマトリクス輝度を低下することができ、針視認性に相当するワイヤーターゲットとマトリクスとの輝度差を改善することが可能となった。ただし、第1の画像データのワイヤーターゲット像より第2の画像データのワイヤーターゲット像が分解能が悪くやや大きいため、第1の画像データからワイヤーターゲット周辺の散乱物質B,C由来の画像が抽出できず、ファントムP4では、ワイヤーターゲットの周りに僅かに散乱物質由来の画像が残存した。
【0097】
観察例4では、観察例3と比較し、画像化信号抽出部15bの帯域通過フィルターの通過帯域が高周波をより含まず(4-8[MHz])、より高周波成分を除去して第2の画像データを生成し、観察例3と同様の処理を行うことでよりワイヤーターゲットとマトリクスとの輝度差をより確保することが可能となる。ただし、第1の画像データと第2の画像データとのワイヤーターゲット分解能の差はより大きくなるため、ファントムP4では、ワイヤーターゲット周辺の散乱物質B,C由来の画像が観察例3よりも多く認められるようになり、その影響でややワイヤーターゲット分解能もやや劣化している。
【0098】
観察例5では、第1の画像データから第2の画像データを減算する際に、第2の画像データの輝度に係数0.8を乗じてから減算する以外は、観察例3と同様にして再差分画像データを生成した。第2の画像データのワイヤーターゲット像が係数を乗ずる前より相対的に小さくなり、第1の画像データと第2の画像データとの分解能の差によるワイヤーターゲット周辺の散乱物質B,C由来の画像の残存を解消できる。こうすることで、抽出画像中にワイヤーターゲットを含む反射物質B,C由来の画像成分も僅かに残り、第1の画像データから差分画像データを減算した際にワイヤーターゲットの画像輝度も若干低下するため、ワイヤーターゲット部の最高輝度はやや低下するものの充分な輝度差は確保できている。
【0099】
観察例6では、第1の画像データから第2の画像データを減算する際に、第2の画像データにモルフォロジー処理による20%の縮小処理を行った後に減算する以外は、観察例3と同様にして再差分画像データを生成した。観察例6では、信号処理負荷はやや大きくなるものの、第2の画像データのワイヤーターゲット像が縮小処理する前より小さくなり、第1の画像データと第2の画像データとの分解能の差によるワイヤーターゲット周辺の散乱物質B,C由来の画像の残存を解消できる。
【0100】
観察例7は、観察例1~6で用いた-20dB帯域の広い超音波探触子2から、-20dB帯域の狭い超音波探触子2(比帯域が小さい(111[%]))に変更した以外は観察例1と同様にして第1の画像データを得たものである。観察例1では、超音波探触子2の-20dB帯域が18[MHz]まであり、高い周波数領域の受信信号も画像化されているため、散乱物質B,Cの多いファントムP4ではマトリクス部平均輝度が高く描出されるが、観察例7では、通過帯域設定は変わっていないものの、超音波探触子2の帯域の制限により高周波領域があまり含まれないため、観察例1ほどはマトリクス部平均輝度が高く描出されていない。そのため、針視認性に関わるワイヤーターゲットとマトリクスとの輝度差は観察例1より良いものの、実質的な受信信号帯域が狭帯域となったため、観察例1に対してワイヤーターゲットの分解能は明らかに劣っている。
【0101】
観察例8は、観察例1~6で用いた-20dB帯域の広い超音波探触子2から、-20dB帯域の狭い超音波探触子2に変更した以外は、観察例3と同様にして差分画像データを得たものである。観察例8では、通過帯域設定は変わっていないものの、超音波探触子2の通過帯域の制限により第1の画像データに高周波領域があまり含まれないため、ワイヤーターゲットとマトリクスとの輝度差の改善は、観察例1から観察例3で見られたような効果より小さくなっており、分解能も観察例3より劣っている。
【0102】
観察例1~8でわかるとおり、広帯域かつ高周波を含み、分解能は良好だが散乱物質の多い観察対象で針視認性に関わるワイヤーターゲットとマトリクスとの輝度差が低下してしまう観察例1に対し、観察例3~6では分解能と輝度差との両立ができていることがわかる。描出の点では、観察例6が最も良好だが処理負荷がやや大きいため、観察対象部位や目的に応じて、観察例3~5の再差分画像データ生成方法を利用することも可能である。これらの方法はプリセット選択に対応して自動的に選択される方法などでもよいし、ユーザーが操作入力部11を介して任意に選択できる方法としてもよい。乗算の係数や縮小率などのパラメータ数値についても、同様である。
【0103】
また、観察例7,8から、本第1の実施の形態は、帯域幅が広い(比帯域が大きい)超音波探触子2を用い、第1の画像データと第2の画像データとの実質的な高周波成分量に差を設けられる際により高い効果を発揮することがわかる。本第1の実施の形態により、条件の良好な被検体はもとより、条件が悪く画像や針視認性が不良であった被検体でも容易に穿刺手技することが可能となり、なおかつ高い分解能を生かした組織膜間(例えば、末梢神経40の神経上膜42と傍神経鞘43との間))への薬液注入などの高度な手技も可能となることが期待できる。
【0104】
以上、第1の実施の形態及び実施例によれば、超音波診断装置100Aは、被検体に超音波を送受信する超音波探触子2から得た受信信号に基づいて、音線信号を生成する音線信号生成部14と、音線信号から、複数の異なる帯域を通過するフィルタリングを行って複数の画像化信号としての第1、第2の画像化信号を抽出する画像化信号抽出部15a,15bと、第1、第2の画像化信号に対応する第1、第2の画像データを用いて差分信号に対応する差分画像データを生成し、第1の画像データに対して、差分画像データを用いて演算を行う画像演算部17aと、を備える。画像演算部17aは、第1の画像化信号に対応する第1の画像データから差分信号に対応する差分画像データを減算して再差分信号に対応する再差分画像データを生成する。超音波診断装置100Aは、第1、第2の画像化信号から第1、第2の画像データを生成するDSC16を備える。画像演算部17aは、第1、第2の画像データを用いて差分画像データを生成し、第1の画像データから差分画像データを減算する。
【0105】
このため、第1の画像化信号に対応する第1の画像データにより、組織内の散乱体の多い被検体でも組織の反射体を高分解能で描出しながら、差分画像データを減算することにより、散乱音響ノイズを抑圧でき、高分解能と組織認識性とを両立できる。したがって、例えば、組織の膜間への薬液注入などの高度な穿刺手技が可能となった。
【0106】
また、画像演算部17aは、第1、第2の画像データのうちの高周波成分を含む第1の画像データから差分画像データを減算する。このため、高周波成分により高分解能かつ高散乱成分の第1の画像データから、高散乱成分の差分画像データを減算して、高分解能かつ散乱成分を抑制した再差分画像データを生成できる。
【0107】
また、超音波診断装置100Aは、再差分画像データと、第1、第2の画像データの少なくとも一つと、を合成して合成画像データを生成する表示画像合成部17cを備える。このため、再差分画像データを、第1、第2の画像データの少なくとも一つに応じて、合成画像データとして表示などすることで、再差分画像データをより有効に視認できる。
【0108】
また、画像演算部17aは、第1、第2の画像データの少なくとも一つに前処理を施し、少なくとも前処理が施された画像データを用いて、差分画像データを生成する。前処理は、係数を乗算する処理である。このため、第1の画像データの組織の領域と、差分画像データの組織の領域と、を合わせて、再差分画像データを生成できる。
【0109】
また、係数は、深度に対応する値を有する。このため、深度に応じて、第1の画像データの組織の領域と、差分画像データの組織の領域と、をより正確に合わせて、再差分画像データを生成できる。
【0110】
また、係数は、被検体の部位に対応する値を有する。このため、被検体の部位に応じて、第1の画像データの組織の領域と、差分画像データの組織の領域と、をより正確に合わせて、再差分画像データを生成できる。
【0111】
また、係数は、被検体の特徴量に対応する値を有する。このため、被検体の特徴量に応じて適応的に、第1の画像データの組織の領域と、差分画像データの組織の領域と、をより正確に合わせて、再差分画像データを生成できる。
【0112】
また、係数は、操作入力部11を介してユーザーから操作入力される。このため、ユーザーが任意に係数を調整して、第1の画像データの組織の領域と、差分画像データの組織の領域と、をより正確に合わせて、再差分画像データを生成できる。
【0113】
また、前処理は、画像の縮小処理である。このため、第1の画像データの組織の領域と、差分画像データの組織の領域と、を合わせて、再差分画像データを生成できる。
【0114】
また、前処理は、画像の穴埋め処理である。このため、差分に用いる第2の画像データの組織の画像の不連続な領域を穴埋めでき、再差分画像データの組織の画像の連続性を確保できる。
【0115】
また、超音波探触子2は、-20dB帯域の比帯域が130%以上である。このため、再差分画像データの高分解能と散乱音響ノイズ抑制による組織認識性との効果を高めることができる。
【0116】
また、超音波診断装置100Aは、周波数の異なる複数の基本波を含む駆動信号を生成して超音波探触子2に出力する送信部12を備える。音線信号生成部14は、複数の基本波の高調波成分を有する音線信号を生成する。このため、再差分画像データの画像の分解能をより高めることができる。
【0117】
(第2の実施の形態)
図10、
図11を参照して、本発明に係る第2の実施の形態を説明する。
図10は、本実施の形態の超音波診断装置100Bの機能構成を示すブロック図である。
図11は、第2の超音波画像表示処理を示すフローチャートである。
【0118】
上記第1の実施の形態では、第1、第2の画像化信号から第1、第2の画像データを生成し、第1、第2の画像データから再差分画像データを生成する構成であったが、本実施の形態では、第1、第2の画像化信号から再差分画像化信号を生成し、再差分画像データを生成する構成である。
【0119】
図10を参照して、本実施の形態の装置構成を説明する。本実施の形態では、超音波診断装置100Bを用いる。超音波診断装置100Bのうち、第1の実施の形態の超音波診断装置100Aと異なる部分を主として説明し、同様の部分には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0120】
図10に示すように、超音波診断装置100Bは、超音波診断装置本体1Bと、超音波探触子2と、ケーブル3と、を備える。超音波診断装置本体1Bは、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、音線信号生成部14と、信号処理部15Bと、DSC16と、画像処理部17Bと、表示部18と、制御部19Bと、を備える。信号処理部15Bは、画像化信号抽出部15a,15bと、信号整形部15c,15dと、差分部、演算部、前処理部としての信号演算部15eと、演算係数決定部15fと、を有する。画像処理部17Bは、表示画像合成部17cを有する。
【0121】
信号演算部15eは、制御部19Bの制御に従って、信号整形部15cから入力された第1の画像化信号から、信号整形部15dから入力された第2の画像化信号を減算して、差分画像化信号を生成し、当該第1の画像化信号から、生成した差分画像化信号を減算して、再差分画像化信号を生成する回路である。
【0122】
また、信号演算部15eは、係数演算処理として、必要に応じて、演算係数決定部15fから取得した係数を、例えば第2の画像化信号に乗じたのちに、第1の画像化信号から係数を乗じた第2の画像化信号を減算した差分画像化信号を生成してもよい。演算係数決定部15fは、制御部19Bの制御に従って、差分画像データにおける係数を決定し信号演算部15eに出力する。演算係数決定部15fの係数の決定は、演算係数決定部17bと同様である。
【0123】
なお、信号演算部15eは、第1の実施の形態の画像演算部17aと同様に、第1の画像化信号と第2の画像化信号との少なくとも一方に、係数演算処理以外の前処理を施す構成としてもよい。
【0124】
DSC16は、制御部19Bの制御に従って、信号処理部15B(信号演算部15e)から入力された第1の画像化信号、第2の画像化信号、差分画像化信号に、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換し、座標変換などを行って、表示用のBモード画像データとしての第1の画像データ、第2の画像データ、差分画像データを生成する。
【0125】
表示画像合成部17cは、制御部19Bの制御に従って、例えば操作入力部11を介するユーザーからの操作入力に応じて、DSC16から入力された、再差分画像データと、第1又は第2の画像データとの並列表示用の合成画像データの生成や、再差分画像データに色を付け、色が付けられた再差分画像データと第1又は第2の画像データとの合成画像データの生成などを行い、生成した合成画像データの表示信号を表示部18に出力する。
【0126】
制御部19Bは、第1の実施の形態の制御部19Aと同様に、超音波診断装置100Bの各部を制御するが、ROMには、第1の超音波画像表示プログラムに代えて、後述する第2の超音波画像表示処理を実行するための第2の超音波画像表示プログラムが記憶されているものとする。
【0127】
つぎに、
図11を参照して、超音波診断装置100Bの動作を説明する。超音波診断装置100Bにおいて、例えば、操作入力部11を介して、ユーザーから第2の超音波画像表示処理の実行指示が入力されたことをトリガーとして、制御部19Bは、ROMに記憶された第2の超音波画像表示プログラムに従い、第2の超音波画像表示処理を実行する。
【0128】
図11に示すように、ステップS31~S36は、第1の実施の形態の第1の超音波画像表示処理のステップS11~S14,S16,S17と同様である。ステップS36の後、制御部19Bは、信号演算部15eに、演算係数決定部15fで予め設定された係数から手動又は自動で決定された係数を取得させ、ステップS36で包絡線検波処理及びログ圧縮された第2の画像化信号に、取得した係数を乗算する処理を施させる(ステップS37)。ステップS37では、係数が乗算されない構成としてもよい。
【0129】
そして、制御部19Bは、信号演算部15eに、ステップS34で包絡線検波処理及びログ圧縮された第1の画像化信号から、ステップS37で係数が乗算され又は乗算されていない第2の画像化信号を減算して差分画像化信号を生成させる(ステップS38)。そして、制御部19Bは、信号演算部15eに、ステップS34で包絡線検波処理及びログ圧縮された第1の画像化信号から、ステップS38で生成された差分画像化信号を減算して再差分画像化信号を生成させる(ステップS39)。
【0130】
そして、制御部19Bは、DSC16に、ステップS34で包絡線検波処理及びログ圧縮された第1の画像化信号、ステップS37で係数が乗算され又は乗算されていない第2の画像化信号、ステップS39で生成された再差分画像化信号から、第1の画像データ、第2の画像データ、再差分画像データを生成させる(ステップS40)。ステップS41,S42は、第1の超音波画像表示処理のステップS22,S23と同様である。
【0131】
以上、第2の実施の形態によれば、超音波診断装置100Bは、被検体に超音波を送受信する超音波探触子2から得た受信信号に基づいて、音線信号を生成する音線信号生成部14と、音線信号から、複数の異なる帯域を通過するフィルタリングを行って複数の画像化信号としての第1、第2の画像化信号を抽出する画像化信号抽出部15a,15bと、第1、第2の画像化信号を用いて差分画像化信号を生成し、第1の画像化信号に対して、差分画像化信号を用いて演算を行う信号演算部15eと、を備える。信号演算部15eは、第1の画像化信号から差分画像化信号を減算して再差分画像化信号を生成する。超音波診断装置100Bは、再差分画像化信号から再差分画像データを生成するDSC16を備える。
【0132】
このため、第1の実施の形態と同様に、第1の画像化信号により、組織内の散乱体の多い被検体でも組織の反射体を高分解能で描出しながら、差分画像化信号を減算することにより、散乱音響ノイズを抑圧でき、高分解能と組織認識性とを両立できる。
【0133】
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本発明に係る好適な超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、上記第1、第2の実施の形態において、信号処理部15A,15Bや、画像処理部17A,17Bでの処理は、フレーム単位、音線単位、でもよい。
【0134】
また、上記第1、第2の実施の形態において、画像化信号抽出部15a,15bにより、第1の画像化信号及び第2の画像化信号を生成する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、信号処理部における高周波の除去ステップを複数段とし、第1、第2に加えて第3、第4の画像化信号を得て、これら複数の画像化信号の差分を利用する方法であってもよい。
【0135】
また、上記第1、第2の実施の形態において、超音波診断装置100A,100Bにおいて、パルスインバージョン法により、送信部12でパルスインバージョン法用の駆動信号を生成し、音線信号生成部14で、パルスインバージョン法用のBモード画像用の音線信号を生成する構成とし、高調波イメージングモードを対象としたが、これに限定されるものではない。超音波診断装置において、パルスインバージョン法を用いず、送信部12で通常の駆動信号を生成し、音線信号生成部14で、Bモード画像用の音線信号を生成する、いわゆるフィルター法により高調波を抽出する高調波イメージングモードを対象としても良いし、高調波抽出処理を行わずに基本波イメージングモードを対象とする構成としてもよい。
【0136】
また、以上の第1、第2の実施の形態における超音波診断装置100A,100Bを構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0137】
100A,100B 超音波診断装置
1A,1B 超音波診断装置本体
11 操作入力部
12 送信部
121 クロック発生回路
122 パルス発生回路
123 時間及び電圧設定部
124 遅延回路
13 受信部
14 音線信号生成部
14a 高調波成分抽出部
15A,15B 信号処理部
15a,15b 画像化信号抽出部
15c,15d 信号整形部
15e 信号演算部
15f 演算係数決定部
16 DSC
17A,17B 画像処理部
17a 画像演算部
17b 演算係数決定部
17c 表示画像合成部
18 表示部
19A,19B 制御部