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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020042304
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021143920
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 真裕
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-157830(JP,A)
【文献】特開2017-215242(JP,A)
【文献】米国特許第05463384(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0287252(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110320523(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体との距離を測定する測距装置(1)であって、
あらかじめ設定された走査方向に沿って走査された放射光を照射する照射部(12)と、走査範囲から到来する前記物体からの反射光を検出する検出部(13)と、を有する検出モジュール(10)と、
前記検出モジュールを収納する筐体(2)と、
前記筐体の一部であって、前記検出モジュールに対向して配置され、前記放射光及び前記反射光が透過する透過窓(41)と、
前記透過窓を加熱するヒータ線が形成されたフレキシブル基板(5)と、
を備え、
前記フレキシブル基板は、前記ヒータ線が形成され、前記透過窓に固定されるヒータ部(5a)と、前記ヒータ線への配線が形成され、前記筐体における前記透過窓が設けられた側を前方とした場合の、前記筐体の後方に向かって伸びる配線部(5b)と、を有し、
前記配線部を前記筐体内で固定する固定部材(8)と、
前記放射光又は前記反射光が前記透過窓で反射し、更に前記固定部材で反射して前記検出部に向かう迷光を遮るように構成された遮光部材(9)と、を更に備える、測距装置。
【請求項2】
前記遮光部材は、前記配線部を前記筐体の後方に向かってガイドするように構成されたガイド面(912a)を有する、請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記ヒータ線が、前記放射光が透過する領域を加熱する照射側ヒータ線(511)と、前記検出部が検出する前記反射光が透過する領域を加熱する検出側ヒータ線(512)と、を有し、
前記フレキシブル基板は、前記ヒータ部において、前記照射側ヒータ線が形成された照射側ヒータ部(5c)と、前記検出側ヒータ線が形成された検出側ヒータ部(5d)とに分割されており、
前記配線部は、前記照射側ヒータ部から延在する部分(5f)と、前記検出側ヒータ部から延在する部分(5g)と、が合体した合体部(5h)を有し、
前記固定部材が前記合体部に設けられている、請求項1又は請求項2に記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、車両の前方にある物体との距離を測定する測距装置として、放射光を前方に向けて照射し、照射した放射光の物体からの反射光を検出して、その物体までの距離を測定する測距装置がある。
【0003】
測距装置は一般的に、筐体を有し、筐体の内部には、放射光を照射する照射部及び反射光を検出する検出部が収納されている。筐体の前方には、放射光及び反射光が透過する透過窓が設けられている。
【0004】
しかし、この透過窓に、雪、雨水等が付着すると、測距装置の測定精度が低下する場合がある。
そこで、特許文献1には、透過窓に付着する雪、雨水等を除去するため、透過窓を加熱するヒータを透過窓に設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2015-506459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、透過窓にヒータが設けられた測距装置の構成として、ヒータ線が形成されたフレキシブル基板を透過窓に貼り付ける構成を検討した。この場合において、ヒータ線を筐体の後方側の外部にある電源に電気的に接続するため、フレキシブル基板においてヒータ線への配線が形成された部分(以下、配線部という)を、筐体の後方に設けられた引出孔から筐体の外部へ引き出す構成が考えられる。このような構成の場合、フレキシブル基板においてヒータ線が形成された部分(以下、ヒータ部という)を透過窓に貼り付けた状態で配線部を引出孔に挿入しようとすると、引出孔への配線部の挿入時に配線部が引っ張られてヒータ部にも力が加わり、ヒータ部が透過窓から部分的に剥離してしまう可能性がある。
【0007】
このような事態を避けるため、配線部を筐体の内面に粘着テープで貼り付けるなど、配線部を固定するための固定部材を設け筐体内で配線部を固定することが考えられる。
一方、放射光又は反射光が光学窓等で反射し、筐体の内部で迷光が生じることがある。本発明者らの検討の結果、配線部を固定するための固定部材において迷光が反射し検出部で検出されてしまい、測距精度が低下する場合があることが判明した。
【0008】
本開示の一局面は、迷光に起因する測距精度の低下が抑制された測距装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、物体との距離を測定する測距装置(1)であって、検出モジュール(10)と、筐体(2)と、透過窓(41)と、フレキシブル基板(5)と、を備える。検出モジュールは、あらかじめ設定された走査方向に沿って走査された放射光を照射する照射部(12)と、走査範囲から到来する物体からの反射光を検出する検出部(13)と、を有する。筐体は、検出モジュールを収納する。透過窓は、筐体の一部であって、検出モジュールに対向して配置され、放射光及び反射光が透過する。フレキシブル基板は、透過窓を加熱するヒータ線が形成される。また、フレキシブル基板は、ヒータ部(5a)と、配線部(5b)と、を有する。ヒータ部は、ヒータ線が形成され、透過窓に固定される。配線部は、ヒータ線への配線が形成され、筐体における透過窓が設けられた側を前方とした場合の、筐体の後方に向かって伸びる。測距装置は、固定部材(8)と、遮光部材(9)と、を更に備える。固定部材は、配線部を筐体内で固定する。遮光部材は、固定部材から検出部に向かう迷光を遮るように構成される。
【0010】
このような構成によれば、迷光に起因する測距精度の低下が抑制された測距装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】測距装置の外観を示す斜視図である。
図2】検出モジュールの構成を示す斜視図である。
図3】筐体の内部の構成を前方正面から示した模式図である。
図4】カバーの内部における遮光部材の位置を示す斜視図である。
図5】カバーの内面の構成を示す図である。
図6】フレキシブル基板を示す図である。
図7】フレキシブル基板の裏面を示す図である。
図8】筐体本体の正面図である。
図9】遮光部材をガイド面側から示した斜視図である。
図10】遮光部材を、ガイド面と反対側において上方から示した斜視図である。
図11】遮光部材を、ガイド面と反対側において下方から示した斜視図である。
図12】遮光部材の正面図である。
図13】遮光部材の右側面図である。
図14】遮光部材の上面図である。
図15】遮光部材の左側面図である。
図16】遮光部材の底面図である。
図17】遮光部材の本体部と走査範囲との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.全体構成]
図1に示す測距装置1は、放射光を照射し、放射光が照射された物体からの反射光を検出することにより、物体との距離を測定するライダ装置である。ライダはLIDARとも表記される。LIDARは、Light Detection and Rangingの略語である。測距装置1は、車両に搭載して使用され、車両の前方に存在する様々な物体の検出に用いられる。
【0013】
測距装置1は、図1に示すように、筐体2を備える。筐体2は、直方体状に形成された樹脂製の箱体である。
筐体2は、筐体本体3とカバー4とを備える。カバー4の前方には、カバー4の一部として、放射光及び反射光が透過する透過窓41が設けられている。ここでいう前方とは、筐体2における、放射光の照射先の方向を指す。
【0014】
以下、測距装置1を車両に設置した状態において、透過窓41を前方正面から見た場合の左右方向をX軸方向、透過窓41を前方正面から見た場合の上下方向をY軸方向、X-Y平面に直交する方向をZ軸方向とする。Z軸方向は、筐体2の前後方向ともいう。
【0015】
筐体2の内部には、図2及び図3に示す検出モジュール10が収納される。検出モジュール10は、複数の部品で構成されるフレーム11を介して上記筐体本体3に組みつけられる。また、筐体2の内部において、検出モジュール10と筐体2の右側の面との隙間には、図4に示すように、遮光部材9が収納される。遮光部材9も筐体本体3に組みつけられる。
【0016】
以下、検出モジュール10の構成、カバー4の構成、透過窓41に設けられたフレキシブル基板5の構成、及び遮光部材9の構成について詳細に説明する。
[2.検出モジュールの構成]
検出モジュール10は、図2及び図3に示すように、照射部12と、検出部13と、照射部12と検出部13との間に設けられた中間板15と、モータ16とを有する。なお、図3では、検出モジュール10の構成を見やすくするため、フレーム11の多くの部品等が省略されている。
【0017】
以下、検出モジュール10の構成について詳細に説明する。
[2-1.照射部]
照射部12は、筐体2内部の上方の空間に収納され、あらかじめ設定された走査方向に沿って走査された放射光を照射するように構成されている。
【0018】
照射部12は、図2に示すように、一対の光源121,122と、照射ミラー123とを備える。また、照射部12は、一対の照射側レンズ124,125と、照射側折返ミラー126とを備えてもよい。
【0019】
光源121,122には、いずれも半導体レーザが用いられている。
照射ミラー123は、光を反射する一対の偏向ミラーが両面に取り付けられた平板状の部材である。照射ミラー123は、後述するモータ16の駆動に従って、Y軸方向に沿う回転軸のまわりを回転運動する。
【0020】
照射側レンズ124は、光源121の発光面に対向して配置されたレンズである。同様に、照射側レンズ125は、光源122の発光面に対向して配置されたレンズである。
照射側折返ミラー126は、光の進行方向を変化させるミラーである。
【0021】
光源121は、光源121から出力され照射側レンズ124を透過した光が、そのまま照射ミラー123に入射されるように配置されている。
光源122及び照射側折返ミラー126は、光源122から出力され照射側レンズ125を透過した光が、照射側折返ミラー126にて略90°進行方向が曲げられ、照射ミラー123に入射するように配置されている。
【0022】
ここでは、光源121は、右方に向けて光を出力するように筐体2の左方に配置され、光源122は、前方に向けて光を出力するように筐体2の後方に配置されている。また、照射側折返ミラー126は、光源121から照射ミラー123に向かう光の経路を遮ることがないように配置されている。
【0023】
照射部12は、以下のように動作して光を照射するように構成されている。光源121から出力された光は、照射側レンズ124を介して照射ミラー123に入射される。また、光源122から出力された光は、照射側レンズ125を透過後、照射側折返ミラー126で進行方向が略90°曲げられて照射ミラー123に入射される。照射ミラー123に入射された光は、透過窓41を介して、照射ミラー123の回転角度に応じた方向に向けて出射される。照射ミラー123を介して光が照射される範囲が走査範囲である。例えば、Z軸に沿った前方向を0度としてX軸方向に沿って広がる±60°の範囲を走査範囲とすることができる。
【0024】
[2-2.検出部]
検出部13は、筐体2内部の下方の空間に収納され、走査範囲から到来する物体からの反射光を検出するように構成されている。
【0025】
検出部13は、図3に示すように、受光素子131と、検出ミラー132とを備える。検出部13は、検出側レンズ133と、検出側折返ミラー134とを備えてもよい。
受光素子131は、複数のAPDを1列に配置したAPDアレイを有する。APDとは、アバランシェフォトダイオードである。
【0026】
検出ミラー132は、照射ミラー123と同様に、光を反射する一対の偏向ミラーが両面に取り付けられた平板状の部材である。また、検出ミラー132は、照射ミラー123と同様に、後述するモータ16の駆動に従って、Y軸方向に沿う回転軸のまわりを回転運動する。
【0027】
検出側レンズ133は、走査範囲から到来する光を絞るレンズである。
検出側折返ミラー134は、光の進行方向を変化させるミラーである。
受光素子131は、検出側折返ミラー134の下部に配置されている。
【0028】
検出側折返ミラー134は、検出ミラー132から、検出側レンズ133を介して入射する光が受光素子131に到達するように、光の経路を下方に略90°屈曲させるように配置されている。
【0029】
検出側レンズ133は、検出ミラー132と検出側折返ミラー134との間に配置されている。検出側レンズ133は、受光素子131に入射する光ビームのビーム径が、APDの素子幅程度となるように絞る。
【0030】
検出部13は、以下のように動作して物体からの反射光を検出する。検出ミラー132の回転角度に応じた所定方向、すなわち、照射ミラー123からの光の出射方向に位置する物体からの反射光が、筐体2の透過窓41を透過し、検出ミラー132に入射する。反射光は、検出ミラー132で反射され、検出側レンズ133及び検出側折返ミラー134を介して受光素子131で検出される。
【0031】
[2-3.中間板及びモータ]
中間板15は、照射ミラー123と検出ミラー132との間に設けられ、水平方向に延びる、円形かつ板状の部材である。中間板15は、図3に示すように、筐体2の内部を、照射部12の設置空間2aと検出部13の設置空間2bとに仕切る仕切板である。
【0032】
照射ミラー123と検出ミラー132とをまとめてミラーモジュール14と呼ぶ。ミラーモジュール14と中間板15とは一体となって構成されている。
モータ16は、ミラーモジュール14の下部に配置され、ミラーモジュール14及び中間板15をY軸方向に沿う回転軸のまわりに回転運動させる。
【0033】
[3.カバーの構成]
図1及び図5に示すように、カバー4は、透過窓41と、枠体42と、透過窓41の内面に設けられた透過窓遮蔽板43とを有する。
【0034】
透過窓41は、上記のとおり、カバー4における、検出モジュール10に対向して配置された、放射光及び反射光が透過する部位である。透過窓41は、筐体2の外部に向けて凸となる曲面状に形成されている。
【0035】
枠体42は、透過窓41の外周から後方に向かって延びる、枠状の部位である。枠体42は、光源121,122が発するレーザ光の透過を阻止する樹脂材料で形成されている。
透過窓遮蔽板43は、図5に示すように、透過窓41の内面から突出するように、X軸方向に沿って設けられた板状の部材である。透過窓遮蔽板43は、ミラーモジュール14と透過窓41との間の空間を、照射部12側と検出部13側とに仕切っている。透過窓遮蔽板43は、光源121,122が発するレーザ光の透過を阻止する樹脂材料で形成されており、筐体2の内部における照射部12の設置空間2a内で乱反射した放射光が、検出部13の設置空間2bへ入射するのを抑制する。
【0036】
透過窓41の内面には、図5に示すように、透過窓41を加熱するヒータ線51が形成されたフレキシブル基板5が貼り付けられている。
[4.フレキシブル基板の構成]
フレキシブル基板5は、図5及び図6に示すように、フィルム状の絶縁基材上に各種の配線パターンが形成されたプリント基板である。フレキシブル基板5は、透過窓41の内面に貼り付けられるヒータ部5aと、透過窓41の内面の端部で折り曲げられて、図4に示すように筐体2の後方に向かって延びる配線部5bとを備える。配線部5bは、Y軸方向の幅が、ヒータ部5aよりも細くなっている。配線部5bは、筐体本体3における透過窓41と対向する面に設けられた、図8に示す引出孔31に挿入されて、外部の電源に接続する。
【0037】
フレキシブル基板5には、ヒータ線51と、ヒータ線51への配線52(以下、「ヒータ配線52」という)と、サーミスタ6を実装するための一対のランド53と、ランド53に接続するサーミスタ6への配線54(以下、「サーミスタ配線54」という)とが形成されている。これらは、フィルム状の絶縁基材の表面に、導体層を積層させて、その導体層をエッチングすることによって形成される。導体としては銅が好適に用いられる。なお、図6においては、サーミスタ6が実装されていない状態が示されている。
【0038】
ヒータ線51は、フレキシブル基板5のヒータ部5aに形成されている。ヒータ線51は、放射光が透過する領域を加熱する照射側ヒータ線511と、検出部13が検出する反射光が透過する領域を加熱する検出側ヒータ線512とを備える。
【0039】
フレキシブル基板5は、図6に示すように、ヒータ部5aにおいて、照射側ヒータ線511が形成された照射側ヒータ部5cと、検出側ヒータ線512が形成された検出側ヒータ部5dとに分割されている。照射側ヒータ部5cと検出側ヒータ部5dとの間には隙間5eが形成されている。隙間5eには、図5に示すように、ヒータ部5aが透過窓41の内面に貼り付けられた状態において、透過窓遮蔽板43が位置する。
【0040】
ヒータ配線52は、主に配線部5bに形成され、ヒータ部5aと配線部5bとの境界付近でヒータ線51に接続している。ヒータ配線52は、照射側ヒータ線511に接続する照射側ヒータ配線521と、検出側ヒータ線512に接続する検出側ヒータ配線522とを備える。
【0041】
ランド53は、ヒータ部5aにおいてヒータ線51が形成されていない領域に形成されている。具体的には、ランド53は、検出側ヒータ部5dの中央付近において検出側ヒータ線512の下側に形成されている。
【0042】
サーミスタ配線54は、配線部5bからヒータ部5aに延びるように形成され、その末端でランド53に接続している。
フレキシブル基板5の最表面は、これらの配線パターンを保護するため、絶縁性の樹脂フィルムで覆われている。樹脂フィルムの一部に開口55が形成され、開口55から、ランド53が露出している。ランド53は、上記導体層上に更に施されたNiめっき及び金めっき等により保護されている。
【0043】
ランド53には、図5に示すようにサーミスタ6が実装される。サーミスタ6は、ヒータ線51を用いた透過窓41の加熱制御に用いられる、透過窓41の温度を検出する。
フレキシブル基板5におけるサーミスタ6が実装される面と反対側の面には、図7に示すように、ヒータ部5aを透過窓41に固定するヒータ部用の固定部材7と、配線部5bを筐体2の右側の面に固定する配線部用の固定部材8とが設けられる。
【0044】
ヒータ部用の固定部材7は、一般的にOCAと呼ばれるシート状の光学的透明粘着剤である。OCAはOptical Clear Adhesiveの略語である。ヒータ部5aにおいては放射光及び反射光が直接透過するため、これらの光がヒータ部用の固定部材7とフレキシブル基板5及び透過窓41との界面において反射しにくいように、OCAが用いられる。
【0045】
一方、配線部用の固定部材8は、OCAではない一般的な粘着テープである。配線部5bにおいては、ヒータ部5aとは異なり、放射光及び反射光が直接透過するわけではないため、OCAと比べて安価な普通の粘着テープが用いられる。配線部用の固定部材8は、配線部5bにおける、照射側ヒータ部5cから延在する部分5fと、検出側ヒータ部5dから延在する部分5gとが合体した合体部5hに設けられる。
【0046】
[5.遮光部材の構成]
遮光部材9は、図9図16に示すように、本体部91と、立設部92と、遮蔽部93と、区画部94と、補強板95とを備える。遮光部材9は、光源121,122が発するレーザ光の透過を阻止する樹脂材料で形成されている。
【0047】
本体部91は、板状の部分である。本体部91は、検出モジュール10と筐体2の右側の面との間に位置し、筐体2の右側の面に沿って前後方向に延びている。本体部91は、具体的には、照射部12の設置空間2a内に位置する照射側本体部911と、検出部13の設置空間2b内に位置する検出側本体部912とを有する。
【0048】
検出側本体部912において筐体2の右側の面と対向する面は、フレキシブル基板5の配線部5bを引出孔31に向かってガイドするように構成されたガイド面912aとなっている。カバー4を筐体本体3に組み付ける場面では、まず、配線部5bの先端が、検出側本体部912と筐体本体3の右側の面との隙間空間に差し込まれる。次に、カバー4と筐体本体3とが近づくように筐体本体3に対してカバー4が相対移動すると、配線部5bが、ガイド面912aに沿って上記隙間空間内を筐体2の後ろ側の面に向かって進む。やがて、配線部5bの先端は、引出孔31に至り、さらに、引出孔31を通って筐体2の外部に進む。
【0049】
本体部91における正面側の部分は、図17の模式図に示すように、走査範囲S外の空間から到来し、透過窓41の右端部を通って検出部13に入射する光を遮っている。なお、図17の模式図においては、立設部92等の遮光部材9の本体部91以外の部分は省略されている。また、本体部91における検出側本体部912は、配線部用の固定部材8が存在する空間と検出モジュール10が存在する空間とを区画する位置に存在し、配線部用の固定部材8から検出部13に向かう迷光を遮っている。
【0050】
図9図16に戻り、立設部92は、本体部91から筐体2の右側の面に向かって立設する板状の部分である。立設部92は、具体的には、照射側本体部911の上端から立設し、筐体2の上側の面に沿って設けられた照射側立設部と921と、検出側本体部912の下端から立設し、筐体2の下側の面に沿って設けられた検出側立設部922とを有する。立設部92は、本体部91とともに配線部5bを覆い、配線部5bが存在する空間から検出モジュール10が設置されている空間へ迷光が入射するのを抑制する。
【0051】
遮蔽部93は、照射側本体部911から検出モジュール10側に向かって立設する板状の部分である。遮蔽部93は、筐体2の後ろ側の面に沿って設けられている。筐体本体3の後ろ側の内面は金属で形成されているため、透過窓41で反射した放射光などの迷光が筐体本体3の後ろ側の内面で反射し、最終的に検出部13に誤って入射する可能性がある。遮蔽部93は、透過窓41から筐体本体3の後ろ側の面に向かう光を遮っているため、筐体本体3の後ろ側の内面での光の反射が生じるのを抑制する。
【0052】
区画部94は、本体部91における照射側本体部911と検出側本体部912との境から検出モジュール10側に向かって立設する板状の部分である。区画部94は、筐体2の上側の面及び下側の面に沿って設けられている。
【0053】
区画部94の後ろ側の端部は、遮蔽部93の下側の端部と接続している。また、区画部94の左側の端部は、隣接する中間板15の形状に沿った形状となっている。また、区画部94の前側の端部は、透過窓遮蔽板43の端部と係合するように構成されている。区画部94は、中間板15及び透過窓遮蔽板43とともに、筐体2の内部を、照射部12の設置空間2aと検出部13の設置空間2bとに仕切っている。区画部94は、筐体2の内部における照射部12の設置空間2a内の迷光が、検出部13の設置空間2bへ入射するのを抑制する。
【0054】
補強板95は、区画部94の下側の面及び検出側本体部912の左側の面から立設する、三角形状かつ板状の補強部材である。補強板95は、筐体2の後ろ側の面に沿って設けられている。補強板95は、本体部91に対して区画部94が傾くのを抑制する。
【0055】
[6.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(6a)測距装置1は、配線部用の固定部材8から検出部13に向かう迷光を遮るように構成された遮光部材9を有する。このような構成によれば、配線部用の固定部材8において反射した迷光が検出部13で検出されにくくなり、測距装置1の測距精度の低下が抑制される。
【0056】
(6b)遮光部材9は、配線部5bを筐体2の後方に向かってガイドするように構成されたガイド面912aを有する。このような構成によれば、カバー4を筐体本体3に組み付ける場面において、ガイド面912aによって、配線部5bが引出孔31に向かうように案内されるため、カバー4を筐体本体3にスムーズに組み付けることができる。
【0057】
(6c)配線部用の固定部材8は、配線部5bにおける、照射側ヒータ部5cから延在する部分5fと、検出側ヒータ部5dから延在する部分5gとが合体した合体部5hに設けられる。このような構成によれば、1つの配線部用の固定部材8によって配線部5bを筐体2に固定することができる。
【0058】
[7.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0059】
(7a)配線部5bを筐体2内で固定する配線部用の固定部材8は、上記実施形態で示した粘着テープに限定されない。例えば、配線部用の固定部材8は、硬化性の接着剤であってもよく、固定用の金具であってもよい。
【0060】
(7b)上記実施形態では、配線部5bが筐体2の内面に固定されているが、配線部5bが筐体2内で固定される位置はこれに限定されない。例えば、配線部5bが遮光部材9に固定されていてもよい。
【0061】
(7c)上記実施形態では、測距装置1が車両の前方に搭載されているが、測距装置1の車両への搭載位置はこれに限定されるものではない。例えば、測距装置1は、車両の側方、後方等の周囲に搭載されていてもよい。
【0062】
(7d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…測距装置、2…筐体、5…フレキシブル基板、5a…ヒータ部、5b…配線部、5c…照射側ヒータ部、5d…検出側ヒータ部、5e…隙間、5f…照射側ヒータ部から延在する部分、5g…検出側ヒータ部から延在する部分、5h…合体部、7…ヒータ部用の固定部材、8…配線部用の固定部材、9…遮光部材、10…検出モジュール、12…照射部、13…検出部、31…引出孔、41…透過窓、51…ヒータ線、52…ヒータ配線、54…サーミスタ配線、91…本体部、92…立設部、93…遮蔽部、94…区画部、95…補強板、511…照射側ヒータ線、512…検出側ヒータ線、911…照射側本体部、912…検出側本体部、912a…ガイド面。
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