(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20231031BHJP
F02M 26/49 20160101ALI20231031BHJP
【FI】
F02D45/00 364D
F02M26/49
(21)【出願番号】P 2020043091
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 未来織
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-303691(JP,A)
【文献】特開2002-276477(JP,A)
【文献】特開2007-23977(JP,A)
【文献】特開2008-223516(JP,A)
【文献】特開2011-252399(JP,A)
【文献】特開2019-157771(JP,A)
【文献】特開2021-67178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
F02M 26/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに接続された吸気通路に設けられたスロットルバルブ及び吸気圧センサと、
前記エンジンの回転数を検出するクランク角センサと、
前記スロットルバルブを流れる冷却水の温度を検出する温度センサと、
キャニスタからパージ通路を介して前記吸気通路に蒸発燃料を含むパージガスを導入する蒸発燃料処理装置と、
吸気圧を推定する推定部と、
前記エンジンの運転状態がアイドル運転状態であり、前記エンジンの回転数の変化率が所定値以下であり、前記パージガスの流量の変化率が所定値以下であり、前記冷却水の温度の変化率が所定値以下の場合に、前記吸気圧センサの実測値と吸気圧の推定値との乖離を学習する学習部と、を備えたエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
EGR弁での異物の噛み込みの判定に関する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、吸気圧の実測値と推定値との差分に基づいて上記判定を行うことができる。即ち、上記の差分が比較的大きい場合にはEGR弁の噛み込みが発生していると判定し、この差分が小さく実測値と推定値とが略同じとみなせる場合には噛み込みが発生していないと判定できる。しかしながら、異物の噛み込みが発生していない正常時であっても実測値と推定値との間には乖離がある。この乖離値は、一定値ではなくばらつきがある。このため、このようなばらつきのある乖離値を考慮せずに上記判定を行うと、上記の判定を精度よく行うことができない可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、吸気圧の実測値と推定値の乖離を精度よく学習できるエンジンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、エンジンと、前記エンジンに接続された吸気通路に設けられたスロットルバルブ及び吸気圧センサと、前記エンジンの回転数を検出するクランク角センサと、前記スロットルバルブを流れる冷却水の温度を検出する温度センサと、キャニスタからパージ通路を介して前記吸気通路に蒸発燃料を含むパージガスを導入する蒸発燃料処理装置と、吸気圧を推定する推定部と、前記エンジンの運転状態がアイドル運転状態であり、前記エンジンの回転数の変化率が所定値以下であり、前記パージガスの流量の変化率が所定値以下であり、前記冷却水の温度の変化率が所定値以下の場合に、前記吸気圧センサの実測値と吸気圧の推定値との乖離を学習する学習部と、を備えたエンジンシステムによって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸気圧の実測値と推定値の乖離を精度よく学習できるエンジンシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施例のエンジンシステムの概略構成図である。
【
図2】
図2Aは、異物の噛み込みが生じていない場合の説明図であり、
図2Bは、異物の噛み込みが生じた場合の説明図である。
【
図3】
図3は、ECUが実行する制御の一例を示したフローチャートである。
【
図4】
図4は、吸気圧の実測値から推定値を減算した乖離値のばらつきを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施例のエンジンシステムの概略構成図である。エンジン20は、ピストン24が収納されたシリンダブロック21上に設置されたシリンダヘッド22内の燃焼室23内で混合気を燃焼させて、ピストン24を往復動させる。ピストン24の往復動は、クランクシャフト26の回転運動に変換される。シリンダブロック21の下部には、潤滑用のオイルを貯留したオイルパン21aが設けられている。尚、図示はしていないが、エンジン20は4つの気筒を有した直列4気筒エンジンであるがこれに限定されない。
【0010】
エンジン20のシリンダヘッド22には、吸気ポート10iを開閉する吸気弁42と、排気ポート30eを開閉する排気弁44とが気筒ごとに設けられている。また、シリンダヘッド22の頂部には、燃焼室23内の混合気に点火するための点火プラグ27が気筒ごとに取り付けられている。また、シリンダヘッド22には、燃焼室23内に燃料を噴射する筒内噴射弁12が設けられている。吸気弁42の開弁時に燃焼室23に吸入された吸入空気と、筒内噴射弁12から噴射された燃料とが混合されて混合気をなし、この混合気がピストン24で圧縮され、点火プラグ27で点火燃焼させられる。
【0011】
各気筒の吸気ポート10iは気筒毎の枝管を介してサージタンク18に接続されている。サージタンク18の上流側には吸気管10が接続されており、吸気管10の上流端にはエアクリーナ19が設けられている。そして吸気管10には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフロメータ15a、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ15b、電子制御式のスロットルバルブ13が設けられている。また、サージタンク18には吸気圧を検出する吸気圧センサ17が設けられている。
【0012】
各気筒の排気ポート30eは気筒毎の枝管を介して排気管30に接続されている。排気管30には、三元触媒31が設けられている。三元触媒31の上流側には、排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ33が設置されている。
【0013】
排気管30と吸気管10とを連通するEGR管50が設けられている。EGR管50には、開度調整が可能なEGRバルブ52が設けられている。EGR管50及びEGRバルブ52はEGR装置に相当する。EGRバルブ52が開くことにより、排気ガスの一部が吸気管10に還流され、EGRバルブ52の開度を調整することにより、燃焼室23に吸入される吸気ガスの総量に対するEGRガスの量の比率であるEGR率を調整することができる。尚、ここでいうEGR率とは、外部EGR率である。EGR管50には、EGRクーラが備えられていてもよい。
【0014】
また、エンジン20は、吸気弁42及び排気弁44のそれぞれの動弁特性を変更する可変動弁機構(以下、VVTと称する)43及び45を備えている。VVT45は、例えば1つの排気弁44に対応して排気側カムシャフトに駆動カムが設けられており、駆動カムにより排気弁44を開閉する。駆動カムは、排気側カムシャフトに対して位相を変更可能に連結されている。これにより、排気弁44の開弁時期及び閉弁時期を進角又は遅角側に変更することができる。VVT43についても同様である。尚、カムシャフトに対する駆動カムの位相は、オイルコントロールバルブにより調整される油圧に応じて切り替えられる。尚、油圧式のVVT45の代わりに、電動式の動弁機構を採用してもよい。
【0015】
蒸発燃料処理装置60は、キャニスタ61、ベーパ通路62、封鎖弁63、外気導入通路64、外気導入バルブ65、パージ通路66、及びパージバルブ67を含む。キャニスタ61は、蒸発燃料を吸着可能に構成されている。ベーパ通路62は、燃料タンク28内の蒸発燃料をキャニスタ61に導く。封鎖弁63は、ベーパ通路62に設けられている。封鎖弁63の閉弁時では、燃料タンク28内からキャニスタ61へのベーパ通路62を介した蒸発燃料の流通が行われない。封鎖弁63の開弁時では、燃料タンク28内からキャニスタ61へのベーパ通路62を介した蒸発燃料の流通が許容される。
【0016】
外気導入通路64は、キャニスタ61に接続され、キャニスタ61に外気を導入する。外気導入バルブ65は、外気導入通路64に設けられている。外気導入バルブ65の開弁時では、外気導入通路64を介したキャニスタ61への外気の導入が許容される。外気導入バルブ65の閉弁時では、外気導入通路64を介したキャニスタ61への外気の導入が停止される。
【0017】
パージ通路66は、キャニスタ61とサージタンク18とを接続している。パージ通路66は、吸気管10におけるスロットルバルブ13よりも下流側の部分に接続されている。パージバルブ67は、パージ通路66に設けられている。
【0018】
蒸発燃料処理装置60は、吸気管10におけるスロットルバルブ13よりも下流側の部分に負圧が発生しているときに、封鎖弁63及びパージバルブ67の双方を開弁させることにより、燃料タンク28内の蒸発燃料がベーパ通路62、キャニスタ61及びパージ通路66を介して吸気管10にパージされる。
【0019】
ECU(Electronic Control Unit)60は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を備える。ECU100は、RAMやROMに記憶されたプログラムを実行することによりエンジン20を制御する。ECU100は、エンジン20の制御装置である。また、ECU100のCPU、RAM、及びROMは、後述する推定部及び学習部を機能的に実現する。
【0020】
ECU100には、上述の点火プラグ27、スロットルバルブ13、筒内噴射弁12、及びEGRバルブ52が電気的に接続されている。またECU100には、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ11、スロットルバルブ13のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ14、エアフロメータ15a、吸気温センサ15b、吸気圧センサ17、クランクシャフト26のクランク角を検出するクランク角センサ25、エンジン20の冷却水の温度を検出する水温センサ29a、大気圧センサ29b、空燃比センサ33、その他の各種センサが電気的に接続されている。ECU100は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ27、スロットルバルブ13、筒内噴射弁12、EGRバルブ52、封鎖弁63、外気導入バルブ65、及びパージバルブ67等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度、EGR率、パージガスの流量等を制御する。
【0021】
次に、EGRバルブ52の異物の噛み込みについて説明する。
図2Aは、異物の噛み込みが生じていない場合の説明図である。EGRバルブ52は、不図示のアクチュエータによってストロークする弁体54と、閉弁時に弁体54が着座する弁座56とを備えている。
図2Aに示すように、弁体54が弁座56に着座することにより、EGR管50は閉鎖される。ここで、弁体54が弁座56から離れた開弁状態から弁体54が弁座56に着座する閉弁状態に移行する際に、弁体54と弁座56との間に異物Fが噛みこまれる可能性がある。
図2Bは、異物の噛み込みが生じた場合の説明図である。
図2Bに示すように、弁体54と弁座56との間に異物Fが噛みこむと、弁体54と弁座56との間に隙間が生じ、本来EGRガスの流量がゼロになるべきところが、この隙間を介してEGRガスが吸気管10に還流される場合がある。この異物は、例えばエンジン20の製造時に溶接工程で発生したスパッタがエンジンの振動等により剥がれ落ちることにより生じる場合が考えられる。
【0022】
このような異物の噛み込みにより、例えば燃焼状態が悪化してエンジンストールが発生したり、三元触媒31が過昇温したり、アイドル運転状態でのエンジン20の振動数が増大したり、エンジン20の始動時に影響を与える可能性がある。従って、このような異物の噛み込みを精度よく判定することが望まれる。
【0023】
ここで、異物の噛み込みがない場合には、吸気圧センサ17の実測値はスロットルバルブ13の開度に応じて負圧となるが、異物の噛み込みがある場合には、EGRガスが吸気管10に還流されることにより、異物の噛み込みがない場合よりも高い圧力となり、即ち、正圧(大気圧)に近づく。ここで、吸気圧をエンジン20の運転状態や他のセンサの検出値等に基づいて推定し、吸気圧センサ17の実測値と推定値の差分に基づいて、異物の噛み込みの有無を判定することが考えられる。推定値は、本来異物の噛み込みが生じていない場合での吸気圧に相当し、異物の噛み込みが生じていない場合には、上記の差分は比較的小さい値となり、異物の噛み込みが生じている場合には、上記の差分は比較的大きな値となるはずだからである。
【0024】
しかしながら詳しくは後述するが、異物の噛み込みが生じていない正常時においても上記の実測値と推定値との間には乖離があり、この乖離値は一定ではなくばらつきがある。この乖離値のばらつきは、吸気圧センサ17自体の検出精度のばらつきや、エンジン20の運転状態のばらつき、推定値の算出に用いられるセンサ自体の検出精度のばらつき、その他環境変化によるばらつきに起因する。このため本実施例では、この乖離値のばらつきが小さくなる一定の条件成立時に乖離値を学習し、この学習した乖離値を考慮して、異物の噛み込み判定を行う。
【0025】
例えば異物の噛み込みの判定は次のように行うことができる。吸気圧センサ17の実測値と、吸気圧の推定値と、予め学習された乖離値と、エンジン20の回転数とに基づいて判定される。具体的には、所定の判定条件成立時での実測値及び推定値を取得し、この実測値からこの推定値を減算して差分値を取得し、この差分値から乖離値を減算して得られた算出値が所定値以下の場合には噛み込みは生じていないものと判定し、算出値が所定値を超えている場合には、噛み込みは生じているものと判定する。ここで、所定値は、例えばエンジン20の回転数が増大するほど小さい値に設定される。
【0026】
次に、ECU100が実行する制御について説明する。
図3は、ECU100が実行する制御の一例を示したフローチャートである。本制御は繰り返し実行される。ECU100は、異物噛み込み判定条件が成立したか否かを判定する(ステップS1)。異物噛み込み判定条件は、エンジン20がアイドル運転状態であって、燃料カットが行われていない状態であり、EGRバルブ52が開弁から閉弁へ移行している状態である。尚、これらの判定条件は、エンジン20がアイドル運転状態で車両が減速して停車する過程で成立する。従って減速中から停車するまでの間にかけて、毎回異物噛み込み判定条件が成立する。
【0027】
図4は、異物の噛み込みが発生していない正常時での、吸気圧の実測値[kPa]から推定値[kPa]を減算した乖離値[kPa]のばらつきを示したグラフである。曲線D1は、EGRバルブ52が開弁から閉弁へ移行している状態での乖離値のばらつきを示している。曲線D2は、EGRバルブ52が開弁から閉弁へ移行している状態であり且つエンジン20がアイドル運転状態での乖離値のばらつきを示している。曲線D3は、EGRバルブ52が開弁から閉弁へ移行している状態であってエンジン20がアイドル運転状態であって更に燃料カットが行われていない状態での乖離値のばらつきを示している。
図3に示すように、曲線D1~曲線D3のうち曲線D3のばらつきが最も小さい。
【0028】
ここで乖離値とは上述したように正常時での吸気圧の実測値と推定値との差分であるから、このように乖離値のばらつきが小さい状態で以下のように異物噛み込み判定処理を実行することにより、異物の噛み込みの判定精度が向上する。
【0029】
ステップS1でNoの場合には、本制御を終了する。ステップS1でYesの場合、異物噛み込み判定処理を実行する(ステップS2)。異物噛み込み判定では、上述したように吸気圧センサ17の実測値を取得するとともに吸気圧の推定値を算出し、この実測値及び推定値と、予めECU100のRAMに記憶されている学習済みの乖離値とに基づいて判定する。ここで吸気圧の推定値は、大気圧センサ29bの実測値、エアフロメータ15aの実測値、吸気温センサ15bの実測値等からエアモデルにより算出される。ステップS2の処理は、吸気圧を推定する推定部が実行する処理の一例である。尚、吸気圧の推定値はこれ以外の公知の方法であってもよい。
【0030】
次にECU100は、上記の判定処理の結果に基づいて、異物の噛み込みが生じているか否かを判定する。(ステップS3)。ステップS3でYesの場合、ECU100はエンスト防止処理を実行する(ステップS4)。エンスト防止処理としては、例えばアイドルアップ処理と吸入空気量増大処理を実行する。アイドルアップ処理とは、基準アイドル回転数にアイドルアップ回転数を加算した値を目標アイドル回転数に設定する処理である。吸入空気量増大処理は、スロットルバルブの開度を増大させて吸入空気量を増量しつつ点火時期を遅角させてリザーブトルクを増大できる処理である。これにより、異物の噛み込みに起因したエンジンストールを防止できる。尚、異物の噛み込みが生じていると判定された場合に行う処理は上記に限定されず、例えば所定の運転条件成立時にEGRバルブ52を開弁して異物を除去するための処理を実行してもよい。
【0031】
ステップS3でNoの場合には、ECU100は乖離値を学習する条件が成立したか否かを判定する(ステップS5)。具体的には、異物噛み込み判定条件に加えて、異物の噛み込みがなく、エンジン20の回転数の変化率が所定値以下であり、パージガスの流量の変化率が所定値以下であり、冷却水の温度の変化率が所定値以下の場合に、学習条件が成立していると判定する。エンジン20の回転数は、クランク角センサ25により取得できる。パージガスの流量の変化率は、パージバルブ67を閉弁から開弁させた際の空燃比センサ33により検出される空燃比の変化率等に基づいて推定できる。冷却水の温度の変化率は、水温センサ29aにより取得できる。尚、これらの変化率の取得方法や算出方法、推定方法は上記に限定されない。
【0032】
上記のエンジン20の回転数の変化率が所定値以下であり、パージガスの流量の変化率が所定値以下であり、冷却水の温度の変化率が所定値以下であることは、吸気圧の変化率が小さい運転状態であることを意味している。エンジン20の回転数の変化率が大きい場合には、これに伴い吸気圧も大きく変動し、パージガスの流量の変化率が大きい場合には、吸気圧も大きく変動するからである。尚、冷却水の温度の変化率が小さい場合が上記の学習条件に含まれている理由は以下による。この冷却水はエンジン20のシリンダブロック21やシリンダヘッド22のみならずスロットルバルブ13内をも流れる。従って例えばエンジン20を始動して暖機されるまでは冷却水の温度の上昇率が大きく、これに伴いスロットルバルブ13の温度も大きく変化し、これにより吸気温度も大きく変化するからである。
【0033】
ステップS5でNoの場合には、本制御は終了する。ステップS5でYesの場合には、ECU100は学習処理を実行する(ステップS6)。学習処理では、取得した吸気圧の実測値と算出した推定値との乖離値を学習する。
図4の曲線D4は、上記の異物噛み込み判定条件と学習条件とが成立した場合での差分のばらつきを示している。この場合、乖離値のばらつきが最も少ないため、上記条件成立した場合に学習することにより、精度よくこの乖離値を学習できる。尚、このような学習処理では、前回学習した乖離値と今回学習した乖離値とに基づいてなまし処理を実施した乖離値を、新たな乖離値として学習してもよい。ステップS5及びS6の処理は、学習部が実行する処理の一例である。
【0034】
上述したように異物噛み込み判定条件が成立し且つ異物の噛み込みがないと判定されて且つ学習条件が成立した場合に、学習処理が実行される。このため、学習条件として実質的には、EGRバルブ52が正常であって開度がゼロであり、エンジン20がアイドル運転状態であり、燃料カットが行われていない状態であり、エンジン20の回転数の変化率が所定値以下であり、パージガスの流量の変化率が所定値以下であり、冷却水の温度の変化率が所定値以下であることである。但し、上記の異物噛み込み判定条件又は学習条件において、燃料カットが行われていないことを除外してもよい。
【0035】
上記実施例では学習された吸気圧の実測値と推定値の差分を、EGR弁の異物の噛み込み判定に用いたが、これに限定されず、それ以外の判定や処理、制御等に用いてもよい。
【0036】
上記実施例では異物噛み込み判定処理が実施された際に乖離値の学習を行ったがこれに限定されない。例えば、EGR管50やEGRバルブ52が設けられていないエンジンシステムにおいても、例えばエンジン20がアイドル運転状態であって、エンジン20の回転数の変化率が所定値以下であり、パージガスの流量の変化率が所定値以下であり、冷却水の温度の変化率が所定値以下である場合に、乖離値の学習を行ってもよい。
【0037】
本実施例のエンジンシステムは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを採用したシステムであってもよいし、ハイブリッド車両に搭載されたエンジンシステムであってもよい。
【0038】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
13 スロットルバルブ
17 吸気圧センサ
20 エンジン
25 クランク角センサ
60 蒸発燃料処理装置
100 ECU(推定部、学習部)