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特許7375634レーザ加工システム、及びレーザ加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】レーザ加工システム、及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20231031BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20231031BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/38 A
B23K26/00 Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020045346
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021146345
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】小室 英夫
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0113300(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0327194(US,A1)
【文献】特開2018-183793(JP,A)
【文献】特開2010-120071(JP,A)
【文献】特開2017-192983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークをレーザ加工してパーツを切り出すレーザ加工機を有するレーザ加工システムであって、
前記ワークに対して加工用レーザを照射するレーザヘッドと、
前記加工用レーザが照射された前記ワークの切断部分を撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像により取得された画像に基づいて切断不良を検出する検出部と、
切断不良となった前記パーツの切断線を囲む前記ワーク上の所定経路に沿って、前記加工用レーザを照射させつつ前記レーザヘッドを移動させる制御部と、
を備える、レーザ加工システム。
【請求項2】
前記検出部は、前記画像における前記ワーク上のカーフ幅と、前記画像における前記ワークの表面からの反射光に関する情報との一方又は双方に基づいて切断不良を検出する、請求項1に記載のレーザ加工システム。
【請求項3】
前記所定経路は、平面視において長方形である、請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工システム。
【請求項4】
長方形の前記所定経路における四辺のそれぞれは、平面視において、切断不良となった前記パーツの前記切断線の一部が重なるように、又は前記切断線の一部が近傍となるように設定される、請求項3に記載のレーザ加工システム。
【請求項5】
長方形である前記所定経路の一辺は、前記ワークの外縁と平行である、請求項3又は請求項4に記載のレーザ加工システム。
【請求項6】
前記所定経路は、前記ワークにおいて隣り合う前記パーツの前記切断線と重ならないように設定される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレーザ加工システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記検出部が切断不良を検出した場合に、切断不良の前記パーツの切り出しを停止して、前記所定経路に沿って前記加工用レーザを照射させつつ前記レーザヘッドを移動させる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のレーザ加工システム。
【請求項8】
前記パーツを切り出す実加工用の第1プログラムと、前記所定経路に沿って前記加工用レーザを照射させつつ前記レーザヘッドを移動させる第2プログラムとが予め作成されており、
前記制御部は、前記第1プログラムの実行中に前記検出部が切断不良を検出した場合に、前記第1プログラムの実行を中止して、前記第2プログラムを実行する、請求項7に記載のレーザ加工システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記パーツの切り出しよりも遅い速度で、前記所定経路に沿って前記加工用レーザを照射させつつ前記レーザヘッドを移動させる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のレーザ加工システム。
【請求項10】
前記所定経路が示す切断線は、前記パーツの切断線に重なる箇所を有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレーザ加工システム。
【請求項11】
切り出された前記パーツと前記所定経路が示す切断線で切り出された不良パーツとをピッキングするローダ装置を有する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のレーザ加工システム。
【請求項12】
板状のワークをレーザ加工してパーツを切り出すレーザ加工機を有するレーザ加工システムにおけるレーザ加工方法であって、
レーザヘッドに、前記ワークに対して加工用レーザを照射させることと、
前記加工用レーザが照射された前記ワークの切断部分を撮像することと、
撮像により取得された画像に基づいて切断不良を検出することと、
切断不良となった前記パーツの切断線を囲む前記ワーク上の所定経路に沿って、前記加工用レーザを照射させつつ前記レーザヘッドを移動させることと、
を含む、レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工システム、及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工機は、ワークの切断や溶接等に利用される。かかるレーザ加工機においては、ワークの加工品質を向上させる観点で、加工中のワークを撮像して得られた撮像画像から、加工状態を把握する(モニタリングする)技術が知られている。特許文献1では、複数のレーザ素子をアレイ状に配置し、複数のレーザ素子の出力によって発せられた照明用レーザにより照明するワークを撮像する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-192983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ加工機によりワークから切り出されたパーツは、その後、ローダ装置によってピッキングされる場合がある。ここで、ローダ装置は、ワークから正常に切り出せていないパーツをピッキングできずに、動作を停止する場合がある。また、ワークから正常に切り出せていないパーツをローダ装置がピッキングできたとしても、後工程で使用できるパーツではないため、後工程のいずれかにおいて流れを止めてしまう可能性が高い。
【0005】
本発明は、ワークの切断加工における切断不良に起因する後工程への影響を抑制することが可能なレーザ加工システム、及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るレーザ加工システムは、板状のワークをレーザ加工してパーツを切り出すレーザ加工機を有するレーザ加工システムであって、ワークに対して加工用レーザを照射するレーザヘッドと、加工用レーザが照射されたワークの切断部分を撮像する撮像部と、撮像部の撮像により取得された画像に基づいて切断不良を検出する検出部と、切断不良となったパーツの切断線を囲むワーク上の所定経路に沿って、加工用レーザを照射させつつレーザヘッドを移動させる制御部と、を備える。
【0007】
また、検出部は、画像におけるワーク上のカーフ幅と、画像におけるワークの表面からの反射光に関する情報との一方又は双方に基づいて切断不良を検出してもよい。また、所定経路は、平面視において長方形であってもよい。また、長方形の所定経路における四辺のそれぞれは、平面視において、切断不良となったパーツの切断線の一部が重なるように、又は切断線の一部が近傍となるように設定されてもよい。また、長方形である所定経路の一辺は、ワークの外縁と平行であってもよい。また、所定経路は、ワークにおいて隣り合うパーツの切断線と重ならないように設定されてもよい。また、制御部は、検出部が切断不良を検出した場合に、切断不良のパーツの切り出しを停止して、所定経路に沿って加工用レーザを照射させつつレーザヘッドを移動させてもよい。また、パーツを切り出す実加工用の第1プログラムと、所定経路に沿って加工用レーザを照射させつつレーザヘッドを移動させる第2プログラムとが予め作成されており、制御部は、第1プログラムの実行中に検出部が切断不良を検出した場合に、第1プログラムの実行を中止して、第2プログラムを実行してもよい。また、制御部は、パーツの切り出しよりも遅い速度で、所定経路に沿って加工用レーザを照射させつつレーザヘッドを移動させてもよい。また、上記の所定経路が示す切断線は、パーツの切断線に重なる箇所を有してもよい。また、切り出されたパーツと所定経路が示す切断線で切り出された不良パーツとをピッキングするローダ装置を有してもよい。
【0008】
本発明の態様に係るレーザ加工方法は、板状のワークをレーザ加工してパーツを切り出すレーザ加工機を有するレーザ加工システムにおけるレーザ加工方法であって、レーザヘッドに、ワークに対して加工用レーザを照射させることと、加工用レーザが照射されたワークの切断部分を撮像することと、撮像により取得された画像に基づいて切断不良を検出することと、切断不良となったパーツの切断線を囲むワーク上の所定経路に沿って、加工用レーザを照射させつつレーザヘッドを移動させることと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様に係るレーザ加工システム及びレーザ加工方法によれば、ワークの切断加工における切断不良に起因する後工程への影響を抑制することができる。
【0010】
検出部が、画像におけるワーク上のカーフ幅と、画像におけるワークの表面からの反射光に関する情報との一方又は双方に基づいて切断不良を検出する構成では、高精度に切断不良を検出することができる。また、所定経路が、平面視において長方形である構成では、切断加工におけるレーザ加工機にかかる負荷を抑制し、迅速に切断加工を行うことができる。また、長方形の所定経路における四辺のそれぞれが、平面視において、切断不良となったパーツの切断線の一部が重なるように、又は切断線の一部が近傍となるように設定される構成では、所定経路の内側の面積を小さくすることにより、より迅速に切断加工を行うことができる。また、長方形である所定経路の一辺が、ワークの外縁と平行である構成では、所定経路を容易に設定することができる。また、所定経路が、ワークにおいて隣り合うパーツの切断線と重ならないように設定される構成では、所定経路に沿ってワークを切断した場合に、隣のパーツが切断されることを回避できる。また、制御部が、検出部が切断不良を検出した場合に、切断不良のパーツの切り出しを停止して、所定経路に沿って加工用レーザを照射させつつレーザヘッドを移動させる構成では、レーザ加工機にかかる負荷を抑制し、迅速に切断加工を行うことができる。また、パーツを切り出す実加工用の第1プログラムと、所定経路に沿って加工用レーザを照射させつつレーザヘッドを移動させる第2プログラムとが予め作成されており、制御部が、第1プログラムの実行中に検出部が切断不良を検出した場合に、第1プログラムの実行を中止して、第2プログラムを実行する構成では、ワークの切断加工における切断不良に起因する後工程への影響を抑制することができる。また、制御部が、パーツの切り出しよりも遅い速度で、所定経路に沿って加工用レーザを照射させつつレーザヘッドを移動させる構成では、所定経路による切断加工をより確実に完了させることができる。また、上記の所定経路が示す切断線が、パーツの切断線に重なる箇所を有する構成では、より多くのパーツを切り出すことを維持できる。また、切り出されたパーツと所定経路が示す切断線で切り出された不良パーツとをピッキングするローダ装置を有する構成では、ワークの切断加工における切断不良に起因する後工程への影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るレーザ加工機の一例を示す図である。
図2図1に示すレーザ加工機において一部を断面とした一例を示す図である。
図3】レーザ加工機に備える処理装置の構成例を示すブロック図である。
図4】加工プログラムの例を説明する図である。
図5】実施形態に係るレーザ加工方法の一例を示すフローチャートである。
図6】レーザ加工処理の流れの例を示す図である。
図7図6に続いてレーザ加工処理の流れの例を示す図である。
図8図7に続いてレーザ加工処理の流れの例を示す図である。
図9図8に続いてレーザ加工処理の流れの例を示す図である。
図10図9に続いてレーザ加工処理の流れの例を示す図である。
図11図10に続いてレーザ加工処理の流れの例を示す図である。
図12図11に続いてレーザ加工処理の流れの例を示す図である。
図13図12に続いてレーザ加工処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下に説明する形態に限定されない。また、図面では、実施形態を説明するために、一部分を拡大、縮小、及び強調して記載する等、縮尺を適宜変更して表現する場合がある。各図においては、XYZ直交座標系を用いて図中の方向を説明する場合がある。XYZ直交座標系においては、鉛直方向をZ方向とし、水平方向をX方向、Y方向とする。また、各方向(例、X方向)においては、矢印の向きを+側(例、+X側)と称し、矢印の向きとは反対側を-側(例、-X側)と称する。
【0013】
図1は、実施形態に係るレーザ加工機の一例を示す図、図2は、図1に示すレーザ加工機において一部を断面とした一例を示す図である。レーザ加工機100は、レーザ光L1を照射して、加工対象である板状のワークWを切断可能である。レーザ加工機100は、レーザ加工システム1に含まれる。レーザ加工機100は、加工領域に搬入されたワークWに対してレーザ加工(切断加工)を行い、パーツを切り出す。レーザ加工機100に対する未加工のワークWの搬入及び加工済みのパーツの搬出は、レーザ加工システム1に含まれるローダ装置80(図13参照)等により行われてもよいし、加工パレット50により行われてもよい。なお、レーザ加工機100は、例えば、パンチプレス等の他の加工装置が隣接して配置された複合機であってもよい。
【0014】
図1及び図2に示すように、レーザ加工機100は、レーザヘッド10と、ヘッド駆動部20と、レンズ駆動部21と、撮像部30と、処理装置40と、加工パレット50とを備える。レーザヘッド10は、例えば、ヘッド本体11と、ノズル12とを有し、ワークWに対して加工用レーザを照射する。具体的には、レーザヘッド10は、ワークWに対して上面Wa側から加工用レーザであるレーザ光L1を照射してワークWを切断加工し、ワークWからパーツPを切り出す。ワークWからパーツPを切り出す際、パーツPから外側に離れた箇所にレーザ光L1を照射して貫通穴(ピアス穴)Hを形成させ、この貫通穴Hからレーザ光L1をパーツPの切断線まで移動させる。次いで、レーザ光L1をパーツPの切断線に沿って移動させることによりワークWからパーツPを切り出す。レーザヘッド10は、レーザ発振器60等のレーザ光源に接続される。
【0015】
レーザ発振器60は、加工用レーザ(レーザ光L1)として、例えば赤外レーザ光を発生させる。なお、レーザ光源としては、例えば、炭酸ガスレーザ光源又は個体レーザ光源等でもよい。レーザヘッド10は、照射光学系61を有する。照射光学系61は、レーザ発振器60で発生したレーザ光L1を収束する。照射光学系61は、例えば、光ファイバ62と、コリメータ63と、ビームスプリッタ64と、集光レンズ65とを有する。光ファイバ62は、一端(光の入射側の端部)がレーザ発振器60に接続され、他端(光の出射側の端部)がレーザヘッド10に接続される。レーザ発振器60からのレーザ光L1は、光ファイバ62を介してレーザヘッド10に導入される。
【0016】
コリメータ63は、レーザ発振器60からのレーザ光L1を平行光に変換する、又は平行光に近づける。コリメータ63は、例えば、光の入射側の焦点が光ファイバ62の光の出射側の端部の位置と一致するように配置される。ビームスプリッタ64は、コリメータ63を通ったレーザ光L1が入射する位置に配置される。ビームスプリッタ64は、レーザ光L1が反射し、かつ後述する照明用レーザL2が透過する特性を有する波長選択ミラー(例、ダイクロイックミラー)である。ビームスプリッタ64は、コリメータ63の光軸63aに対して、約45度の角度で傾斜して配置される。ビームスプリッタ64は、+Z側に向かうにつれて、+X側に向かうように傾いている。
【0017】
集光レンズ65は、ビームスプリッタ64からのレーザ光L1が入射する位置に配置される。コリメータ63を通ったレーザ光L1は、ビームスプリッタ64で反射して光路がX方向からZ方向(-Z側)へ約90度折れ曲がり、集光レンズ65に入射する。集光レンズ65は、コリメータ63からのレーザ光L1を集光する。集光レンズ65は、集光レンズ65の光軸65aに沿って移動可能である。
【0018】
ノズル12は、照射光学系61で収束されたレーザ光L1を照射する。レーザヘッド10は、照射光学系61で収束されたレーザ光L1がノズル12から照射されることで、ワークW上に所定径のスポットLSを形成するようにレーザ光L1を照射する。スポットLSの径は、例えば、照射光学系61の光学素子の一部(例えば、集光レンズ65)を移動させることにより調整可能である。スポットLSの径は、照射光学系61の焦点がワークWの表面から離れるほど(デフォーカス量が大きいほど)、大きくなる。レーザ加工機100は、ワークWの表面におけるレーザ光L1のスポットLSの径を変化させることで、レーザ光L1によって形成されるワークW上の切断溝の幅(カーフ幅、切断幅)を変化させる。
【0019】
ノズル12は、ヘッド本体11の下方(-Z側)に取り付けられる。ノズル12は、-Z方向(下方向)に向けられており、ヘッド本体11からのレーザ光L1を-Z方向(下方向)に向けて照射する。ノズル12は、ガス供給管等を介して不図示のアシストガス供給部に接続され、レーザ光L1を照射する領域(加工領域)に向けて、アシストガス供給部からのアシストガスをワークWに供給する。アシストガスの供給源としては、例えば、ガスボンベや工場等の供給ライン等が用いられる。アシストガスとしては、例えば、窒素ガス、空気、窒素と酸素とを混合したガス等が用いられる。
【0020】
ヘッド本体11は、レーザ加工機100内の加工領域に配置されたワークWの上方(+Z側)に配置される。ヘッド本体11は、ヘッド駆動部20の制御により、X方向、Y方向、及びZ方向に移動可能である。ヘッド本体11は、例えば、ヘッド駆動部20の制御により移動することで、ワークWに対して相対的に移動する。なお、ワークWの切断加工においては、ヘッド本体11の移動により実現することに限定されない。ワークWの切断加工においては、例えば、ヘッド本体11に対してワークW(加工パレット50)が移動する構成であってもよいし、ヘッド本体11及びワークWの双方が移動する構成であってもよい。
【0021】
ヘッド駆動部20は、処理装置40の制御によりレーザヘッド10をX方向、Y方向、及びZ方向に移動させる。ヘッド駆動部20は、例えば、X方向に移動可能なガントリと、ガントリに対してY方向に移動可能なスライダと、スライダに対してZ方向に移動可能な昇降部とを有する。ヘッド駆動部20は、ガントリ、スライダ、及び昇降部のそれぞれの駆動源を駆動することにより、レーザヘッド10をX方向、Y方向、及びZ方向の所定位置に移動させる。なお、ヘッド駆動部20は、上記の構成に限定されず、ロボットアーム等の他の構成により実現されてもよい。レンズ駆動部21は、処理装置40の制御によりノズル12から照射される光の焦点を調整する。レンズ駆動部21は、集光レンズ65の光軸65aに沿って、集光レンズ65を移動させることで、照射光学系61のワークW側の焦点を調整可能である。すなわち、ワークWの表面におけるレーザ光L1のスポットLSの径は、レンズ駆動部21の制御による集光レンズ65の移動により変化する。
【0022】
レーザ加工機100は、照明用レーザL2でワークWを照明しながらワークWを撮像する。レーザアレイ70は、照明用レーザL2としてアレイ状に配置(配列)された複数のレーザ素子等を備え、複数のレーザ素子の出力により、加工用レーザ(レーザ光L1)とは異なる波長の光を発する。複数のレーザ素子は、例えば、それぞれ垂直共振器面発光型レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)である。また、レーザアレイ70は、照明光学系71の一部(例えば、コリメータ72等)とともに、照明ユニット73として構成される(照明ユニット73の筐体内に格納される)。照明ユニット73は、レーザヘッド10に着脱自在に接続されてもよい。
【0023】
照明光学系71は、レーザアレイ70で発生した照明用レーザL2でワークWを照明する。照明光学系71は、例えば、コリメータ72と、ハーフミラー74と、ビームスプリッタ64と、集光レンズ65とを備える。照明光学系71は、ビームスプリッタ64及び集光レンズ65が照射光学系61と共用であり、集光レンズ65を介して落射照明する。照明光学系71の光の出射側の光軸72aと、照射光学系61の光の出射側の光軸63aとが同軸であり、照明用レーザL2は、レーザ光L1と同じ光路を通ってワークWに照射される。また、照明光学系71は、照明側の焦点と、照明側の焦点から発した光が照明光学系71を介して集光するワークW側の焦点とを有し、これらの焦点は光学的に共役な位置関係にある。よって、例えば、ワークW側の焦点をワークWの表面に定めて、対応する照明側の焦点の位置に光源を配置することにより、照明光学系71を介してワークWの表面に集光できる。
【0024】
コリメータ72は、レーザアレイ70から照明用レーザL2が入射する位置に配置される。コリメータ72は、レーザアレイ70からの照明用レーザL2を平行光に変換する、又は平行光に近づける。コリメータ72は、照明光学系71のワークW側の焦点をワークWの対象位置に合わせる場合、例えば、照明側の焦点がレーザアレイ70の位置と一致するように配置される。
【0025】
ハーフミラー74は、コリメータ72を通った照明用レーザL2が入射する位置に配置される。ハーフミラー74は、照明用レーザL2の一部が反射し、一部が透過する特性を有する反射透過部材である。ハーフミラー74は、例えば、照明用レーザL2のうち透過光の比率が約50パーセントとなり、反射光の比率が約50パーセントとなるように設定される。ハーフミラー74は、コリメータ72の光軸72aに対して、約45度の角度で傾斜して配置される。ハーフミラー74は、+Z側に向かうにつれて、-X側に向かうように傾いている。
【0026】
コリメータ72を通った照明用レーザL2の一部は、ハーフミラー74で反射して光路がX方向からZ方向(-Z側)へ約90度折れ曲がり、ビームスプリッタ64に入射する。上述したように、ハーフミラー74は、集光レンズ65の光軸65aに対して一方向(例、+Z側に向かうにつれて-X側に向かう方向)に傾いている。ビームスプリッタ64は、集光レンズ65の光軸65aに対してハーフミラー74が傾斜する方向と反対の方向(例、+Z側に向かうにつれて+X側に向かう方向)に傾いている。ビームスプリッタ64及びハーフミラー74を透過する光は、ビームスプリッタ64での屈折により光路がシフトし、ハーフミラー74での屈折により光路がシフトする。
【0027】
集光レンズ65は、ビームスプリッタ64から照明用レーザL2が入射する位置に配置される。また、集光レンズ65は、ビームスプリッタ64からのレーザ光L1を集光する。ワークW上において照明用レーザL2が照射される照明領域は、ワークW上においてレーザ光L1が照射される照射領域(加工領域)を含むように設定される。また、レーザアレイ70及び照明光学系71は、レーザアレイ70のサイズ及び照明光学系71の光学倍率に基づいて定まるレーザアレイ70による投影領域がノズル12の出射口の全域を内包するように構成される。
【0028】
撮像部30は、加工用レーザ(レーザ光L1)が照射されたワークWの切断部分を撮像する。撮像部30は、例えば、撮像光学系31と撮像素子32とを備え、ワークWからの光(戻り光)を、撮像光学系31を介して撮像素子32によって検出する。撮像素子32は、例えば、CCD又はCMOSのイメージセンサが用いられ、撮像光学系31が形成した像を撮像する。撮像素子32には、二次元的に配列された複数の画素が設けられる。また、各画素には、フォトダイオード等の受光素子が設けられる。撮像素子32は、受光素子に光(戻り光)が入射することにより各画素に発生する電荷(信号)を順に読み出し、読み出した信号を増幅、A/D変換して画像形式に配列することで、撮像画像のデジタルデータを生成する。
【0029】
撮像光学系31は、集光レンズ65と、ビームスプリッタ64と、ハーフミラー74と、波長選択フィルタ33と、結像レンズ34とを有する。撮像光学系31は、集光レンズ65、ビームスプリッタ64、及びハーフミラー74が照明光学系71と共用である。撮像部30は、照明光学系71と同軸でワークWを撮像可能である。
【0030】
撮像素子32は、例えば、アライメント装置35に保持され、アライメント装置35によって撮像光学系31に対する位置を調整可能である。例えば、結像レンズ34の光軸34aと平行な方向(X方向)において撮像光学系31の焦点(像面の位置)が撮像素子32からずれた場合、アライメント装置35は、撮像素子32を移動させ、撮像素子32の位置を撮像光学系31の焦点に合わせることができる。
【0031】
ワークWからの戻り光は、集光レンズ65を通ってビームスプリッタ64に入射する。戻り光は、例えば、照明用レーザL2のうちワークWで反射散乱した光、及びレーザ光L1のうちワークWで反射した光を含む。ビームスプリッタ64に入射した戻り光のうち照明用レーザL2に由来する光は、ビームスプリッタ64を通って、ハーフミラー74に入射する。また、ビームスプリッタ64に入射した戻り光のうちレーザ光L1に由来する光は、ビームスプリッタ64で反射し、ビームスプリッタ64からハーフミラー74に向かう光路から除かれる。
【0032】
レーザ光L1の照射によってワークWが溶融した溶融金属がワークWの表面等に存在する場合、戻り光は、溶融金属から放射される赤色から近赤外の波長帯の光を含む。また、レーザ光L1の照射によるワークWの溶融・蒸発に伴いプラズマが発生した場合、戻り光は、青色から紫外の波長帯の光を含む。溶融金属又はプラズマに起因する光のうち、レーザ光L1と異なる波長の光は、ビームスプリッタ64を通って、ハーフミラー74に入射する。
【0033】
ハーフミラー74に入射した戻り光は、ハーフミラー74を通って波長選択フィルタ33に入射する光と、ハーフミラー74で反射する光とに分かれる。波長選択フィルタ33は、照明用レーザL2の照明によりワークWで反射される波長帯の光を反射する特性を有する。また、波長選択フィルタ33は、レーザ光L1の照射によりワークWから放射される波長帯の光を透過する特性を有する。波長選択フィルタ33は、例えば、ダイクロイックミラー又はノッチフィルターである。すなわち、戻り光のうち照明用レーザL2に由来する光は、波長選択フィルタ33で反射し、結像レンズ34に入射する。これにより、戻り光に含まれる外乱光を遮断できるので、画像のS/N比が向上する。結像レンズ34は、波長選択フィルタ33で反射した光を撮像素子32に集光する。結像レンズ34及び集光レンズ65は、ワークW(ワークWの切断部分)の像を撮像素子32に投影する。撮像部30では、主に照明用レーザL2の照明によりワークWで反射される波長帯の光(戻り光)に応じた撮像画像のデジタルデータを生成する。
【0034】
処理装置40は、レーザ加工機100を統括制御し、レーザヘッド10、ヘッド駆動部20、レンズ駆動部21、及び撮像部30等の動作を制御する。処理装置40は、例えば、検出部41と制御部42とを有する。検出部41は、撮像部30の撮像により取得された撮像画像に基づいて切断不良を検出する。制御部42は、切断不良となったパーツの切断線を囲む(包含する)ワークW上の所定経路に沿って、加工用レーザ(レーザ光L1)を照射させつつレーザヘッド10を移動させる。なお、処理装置40における処理の詳細は後述する。
【0035】
加工パレット50は、ワークWを載置してワークWをレーザ加工機100内の加工領域に配置する。加工パレット50は、例えば、不図示の駆動装置により、ワークWを載置した状態でX方向等に移動可能であってもよい。加工パレット50は、ベースプレート51と支持プレート52とを有する。支持プレート52は、ベースプレート51の上面(+Z側の面)に複数並んだ状態で設けられ、ワークWの下面(-Z側の面)Wbを支持する。各支持プレート52は、鋸歯状に形成された複数の上端部52aを有し、各上端部52aの高さが同一となるように形成されている。
【0036】
複数の上端部52aには、ワークWが載置される。上端部52aとワークWとの間の接触面積は、上端部52aが鋸歯状に形成されているため小さくなる。なお、上端部52aは、鋸歯状とすることに限定されず、例えば、剣山状や波形状としてもよい。また、加工パレット50は、例えば、複数のピンがベースプレート51上に配置されたパレットでもよい。なお、加工パレット50を用いるか否かは任意である。例えば、加工パレット50に代えて、レーザ加工機100内の加工領域に剣山状等のワーク載置部が設けられてもよい。また、レーザ加工機100がタレットパンチプレスを隣接させた複合機である場合、複合機は、固定のレーザヘッド(図1に示すレーザヘッド10と同様に、ワークWを切断するレーザ光L1を出射する)と、成形加工等のための固定のパンチヘッドとを備える。
【0037】
図3は、実施形態に係る処理装置の構成例を示すブロック図である。処理装置40は、検出部41と、制御部42と、取得部43と、記憶部44と、通信部45とを有する。検出部41は、上述したように、撮像部30の撮像により取得された撮像画像に基づいて切断不良を検出する。具体的には、検出部41は、撮像部30から撮像画像を取得し、取得した撮像画像におけるワークW上のカーフ幅と、撮像画像におけるワークWの表面からの反射光(戻り光)に関する情報との一方又は双方に基づいて、切り出している最中のパーツの切断不良を検出する。上述したように、撮像部30から取得される撮像画像には、レーザ光L1が照射されたワークWの切断部分が含まれる。
【0038】
例えば、検出部41は、撮像画像を用いて、レーザ光L1によるワークWの切断加工におけるカーフ幅を測定する。撮像画像を用いたカーフ幅の測定において、検出部41は、レーザ加工による切断溝のエッジに相当するエッジの位置を検出した後、撮像画像上のエッジ間の距離(例、ピクセル単位)を実スケールの距離(例、mm単位)に変換する。そして、検出部41は、測定したカーフ幅について、該当するパーツの切り出しに対応するカーフ幅の正常値と比較する。このとき、検出部41は、測定したカーフ幅が正常値を含む所定閾値の範囲から外れている場合に、切り出している最中のパーツに切断不良が発生していることを検出する。
【0039】
例えば、検出部41は、撮像画像を用いて、ワークWの表面からの戻り光に関する情報である強度情報(例、輝度値、画素値、画素強度、階調値等)を算出する。そして、検出部41は、戻り光の強度情報を算出した後、該当するパーツの切り出しに対応する強度情報の正常値を比較する。このとき、検出部41は、算出した戻り光の強度情報が正常値を含む所定閾値の範囲から外れている場合に、切り出している最中のパーツに切断不良が発生していることを検出する。すなわち、戻り光の強度情報が正常値を含む所定閾値の範囲から外れることは、レーザ光L1の照射によってワークWの表面に異常な量の溶融金属が付着していること、又はワークWの切断加工がなされていないこと等を含む。上述したように、検出部41は、カーフ幅に応じた切断不良の検出と、戻り光の強度情報に応じた切断不良の検出との一方又は双方に基づいて、切り出している最中のパーツの切断不良を検出すればよい。
【0040】
制御部42は、レーザ加工機100を統括制御し、レーザヘッド10、ヘッド駆動部20、レンズ駆動部21、及び撮像部30等の動作を制御する。また、制御部42は、上述したように、切断不良となったパーツの切断線を囲むワークW上の所定経路に沿って、加工用レーザ(レーザ光L1)を照射させつつレーザヘッド10を移動させる。例えば、レーザ加工機100は、ワークWからパーツを切り出す際に、切断線に沿ってレーザ光L1を照射させつつレーザヘッド10を移動させる。本実施形態において、切断線は、ワークWからパーツを切り出す切断線と、所定経路が示す切断線とを含む。所定経路が示す切断線で切断加工することは、後工程で使用できないパーツが搬送されること(後工程において流れを止めてしまうこと)を防止するために実施される。また、所定経路が示す切断線で切断加工する場合は、少なくとも、切り出されたパーツ(不良パーツ)がローダ装置80(図13参照)でピッキングされ、所定の場所(例、製品パレット90)まで搬送可能であることとする。
【0041】
所定経路が示す切断線の形状は、例えば、平面視において長方形(正方形を含む)である。所定経路が示す切断線の形状を長方形とすることで、複雑な経路で切断加工するよりも、切断加工におけるレーザ加工機100にかかる負荷を抑制し、迅速に切断加工を行うことができる。また、例えば、長方形の所定経路における四辺のそれぞれは、例えば、平面視において、切断不良となったパーツの切断線の一部が重なるように、又は切断線の一部が近傍となるように設定される。その結果、長方形である所定経路の内側の面積を小さく(最小に)することができる。所定経路の内側の面積を小さくすることで、パーツ(不良パーツ)を迅速に切り出すことができる。また、長方形である所定経路の一辺は、例えば、矩形状であるワークWの外縁と平行であってもよい。所定経路の一辺をワークWの外縁と平行にすることで、所定経路を容易に設定することができる。また、ワークWから複数のパーツを切り出す場合は、より多くのパーツを切り出すことが好ましい。すなわち、各パーツの間隔は、より狭く設定される可能性がある。よって、所定経路が示す切断線は、ワークWからパーツを切り出す切断線に重なる箇所を有してもよい。所定経路が示す切断線とワークWからパーツを切り出す切断線とが重なる箇所を有することで、より多くのパーツを切り出すことを維持することができる。また、例えば、所定経路は、ワークWにおいて隣り合うパーツの切断線と重ならないように設定される。この設定により、所定経路に沿ってワークを切断した場合に、隣のパーツが切断されることを回避でき、隣のパーツを適正なパーツとして用いることができる。
【0042】
例えば、制御部42は、切り出している最中のパーツにおいて検出部41が切断不良を検出した場合に、切断不良のパーツの切り出しを停止して、上記の所定経路に沿って加工用レーザ(レーザ光L1)を照射させつつレーザヘッド10を移動させる制御を行う。すなわち、制御部42は、検出部41が切断不良を検出した時点で、切断不良のパーツの切り出しを停止して、所定経路に沿った切断加工を行うように制御する。本実施形態では、パーツの切り出しが切断不良であれば、パーツの切断線を囲む所定経路により切断加工を行うことで、後工程への影響を抑制した搬送を行えるようにしている。例えば、切断不良のままパーツの切り出しを完了しても、ローダ装置80等によるピッキングが適切に行われない可能性があり好ましくない。制御部42は、上記のように、切断不良が検出された時点でパーツの切り出しを停止して、所定経路による切断加工に移行させることで、後工程(パーツの搬送)への影響を抑制している。
【0043】
所定経路に沿ったレーザヘッド10の移動に関して、制御部42は、切断不良が検出されたパーツの切り出しよりも遅い速度で、上記の所定経路に沿って加工用レーザ(レーザ光L1)を照射させつつレーザヘッド10を移動させる制御を行うことが好ましい。一態様として、ワークWの切断不良は、ワークWの材質や厚さに対する切り出しの速度が要因である。すなわち、ワークWの切断不良は、パーツを切り出す速度が速い(適切でない)と、ワークWに対するレーザ光L1の照射量が不足してしまうことによる。よって、制御部42は、所定経路による切断加工を行うように制御する場合、切断不良が検出されたときよりも遅い速度で実施させるので、所定経路による切断加工をより確実に完了させることができる。
【0044】
上述してきた切断加工の制御は、加工プログラムの実行により実現する。すなわち、本実施形態では、パーツを切り出す実加工用の第1プログラムと、所定経路に沿って加工用レーザ(レーザ光L1)を照射させつつレーザヘッド10を移動させる第2プログラムとが、予め作成されている。第1プログラム及び第2プログラムは、例えば、CAM又はCAD/CAMが実装された装置により予め作成される。
【0045】
図4は、実施形態に係る加工プログラムの例を説明する図である。CAM等によって作成される加工プログラムは、ワークWから切り出すパーツのそれぞれに対して、第1プログラム及び第2プログラムが準備される。また、加工プログラムは、ワークWから切り出すパーツが同一形状である場合、ワークWから切り出すパーツの数だけループ処理する第1プログラム及び第2プログラムとして準備されてもよい。
【0046】
例えば、制御部42は、第1プログラムの実行中に検出部41が切断不良を検出した場合に、第1プログラムの実行を中止して、第2プログラムを実行する。ワークWから切り出すパーツのそれぞれに対して第1プログラム及び第2プログラムが準備されている場合、制御部42は、パーツに対応する第1プログラムを順次実行し、切断不良である場合にパーツに対応する第2プログラムを実行する。また、ワークWから切り出すパーツが同一形状である場合、制御部42は、第1プログラムを繰り返し実行し、切断不良である場合に第2プログラムを実行したうえで、再度、第1プログラムを繰り返し実行する。制御部42は、第1プログラムの実行中に検出部41が切断不良を検出した場合に、第1プログラムの実行を中止して第2プログラムを実行するので、切断不良に起因する後工程への影響を抑制することができる。
【0047】
取得部43は、加工プログラムを取得し、取得した加工プログラムを記憶部44に格納する。具体的には、取得部43は、ワークWからパーツを切り出す処理が実行される前の任意のタイミングで、CAM等が実装された装置から、通信部45を介して、加工プログラムを取得する。また、加工プログラムの取得に関して、取得部43は、ワークWからパーツを切り出す処理が実行される前の任意のタイミングで、加工プログラムが記憶された外部の記憶装置から、通信部45を介して、加工プログラムを取得してもよい。制御部42は、第1プログラム及び第2プログラムを記憶部44から取得して実行する。なお、通信部45による通信(ネットワーク)は、有線及び無線のいずれでもよい。
【0048】
図5は、実施形態に係るレーザ加工方法の一例を示すフローチャートである。以下のフローチャートの説明では、適宜、図6から図13に示す内容を参照する。図6から図13は、実施形態に係るレーザ加工処理の流れの例を示す図である。図6から図13では、ワークWから切り出す対象のパーツを、パーツPa、Pb、Pcとし、各パーツに対応する所定経路を、所定経路Ra、Rb、Rcとする。図6から図12では、パーツの切断線を破線で示し、所定経路が示す切断線を一点鎖線で示す。また、図6から図12では、切断加工する方向を実線矢印で示し、切断加工された状態を実線で示す。なお、加工プログラムは、任意のタイミングで取得部43が取得して記憶部44に格納されている。
【0049】
制御部42は、パーツを切り出す加工用レーザ(レーザ光L1)を照射させつつレーザヘッド10を移動させる(ステップS101)。すなわち、制御部42は、第1プログラムを実行する。具体的には、制御部42は、ワークWに対応する加工プログラムを記憶部44から取得する。そして、制御部42は、取得した加工プログラムのうち、パーツPa(図6参照)に対応する第1プログラムを実行する。その結果、図6に示すように、レーザヘッド10は、パーツPaの切り出しを開始する位置Saに移動し、パーツPaの切断線に沿ってレーザ光L1を照射しつつ移動する。制御部42は、パーツPaを切り出す際、先ず、パーツPaの切断線から外側に離れた箇所にレーザ光L1を照射して貫通穴HPaを形成させ、この貫通穴HPaからレーザ光L1をパーツPaの切断線まで移動させる。次いで、制御部42は、レーザ光L1をパーツPaの切断線に沿って移動させる。パーツPaの切り出しの開始に伴い、撮像部30は、加工用レーザ(レーザ光L1)が照射されたパーツPaを撮像する(ステップS102)。具体的には、撮像部30は、パーツPaを切り出す第1プログラムを実行する制御部42の制御により、パーツPaの切断部分を撮像する。
【0050】
検出部41は、切断不良の検出を開始する(ステップS103)。具体的には、検出部41は、撮像部30の撮像により取得された撮像画像に基づいて切断不良の検出を実施する。ここで、パーツPaに関しては、検出部41により切断不良が検出されずに切断加工が完了したこととして説明する。パーツPaに対応する所定経路Raが示す切断線は、切断加工されない。すなわち、パーツPaを切り出す第1プログラムの実行が終了するまでに検出部41により切断不良が検出されない場合に(ステップS103:NO)、制御部42は、切り出すパーツが他に存在するかを判定する(ステップS105)。具体的には、制御部42は、パーツPaを切り出す第1プログラムの実行終了後、他のパーツを切り出す第1プログラムが存在するかを判定する。ここでは、他のパーツ(例えば、パーツPb)を切り出す第1プログラムが存在することとして説明する。
【0051】
制御部42は、他のパーツを切り出す第1プログラムが存在する場合に(ステップS105:YES)、ステップS101における処理を実行する。具体的には、制御部42は、パーツPbに対応する第1プログラムを実行する。その結果、図7に示すように、レーザヘッド10は、パーツPbの切り出しを開始する位置Saに移動し、パーツPbの切断線に沿ってレーザ光L1を照射しつつ移動する。制御部42は、パーツPbを切り出す際、先ず、パーツPbの切断線から外側に離れた箇所にレーザ光L1を照射して貫通穴HPbを形成させ、この貫通穴HPbからレーザ光L1をパーツPbの切断線まで移動させる。次いで、制御部42は、レーザ光L1をパーツPbの切断線に沿って移動させる。パーツPbの切り出しの開始に伴い、撮像部30は、レーザ光L1が照射されたパーツPbの切断部分を撮像する(ステップS102)。検出部41は、切断不良の検出を開始する(ステップS103)。
【0052】
ここで、パーツPbに関しては、検出部41により切断不良が検出されたこととして説明する。例えば、図8に示すように、検出部41は、レーザヘッド10が位置SPに移動したタイミングで切断不良を検出する。図8では、切断不良が実際に発生している状態を太線で表している。なお、太線の長さは、切断不良が発生してから検出部41が切断不良を検出するまでの経過時間を表すことになるが、説明のために強調して長く図示しただけであり、切断不良の検出に時間がかかることを意図するわけではない。パーツPbを切り出す第1プログラムの実行が終了していない状況で検出部41により切断不良が検出された場合に(ステップS103:YES)、制御部42は、切断不良のパーツPbの切り出しを停止して、所定経路Rbに沿ってレーザ光L1を照射させつつレーザヘッド10を移動させる(ステップS104)。すなわち、制御部42は、パーツPbに対応する第1プログラムの実行を中止し、パーツPbに対応する第2プログラムを実行する。
【0053】
その結果、図9に示すように、レーザヘッド10は、パーツPbに対応する所定経路Rbに対応する切り出しを開始する位置Sbに移動し、所定経路Rbが示す切断線に沿ってレーザ光L1を照射しつつ移動する。制御部42は、先ず、位置Sbにおいてレーザ光L1を照射して貫通穴HRbを形成させ、この貫通穴HRbからレーザ光L1を所定経路Rbに沿って移動させる。そして、図10に示すように、レーザ加工機100は、所定経路Rbに対応する切り出しを完了することで、パーツPbを囲む領域をワークWから切り出している。所定経路Rbにより切り出された部分は、例えば、不良パーツPb1として取り扱われる。不良パーツPb1は、パーツPbとして切り出し予定であった部分を含んでいる。なお、図6から図12において、貫通穴HRaは、レーザ光L1を所定経路Raに沿って移動させる際に形成されることを示しており、貫通穴HRcは、レーザ光L1を所定経路Rcに沿って移動させる際に形成されることを示している。
【0054】
続いて、制御部42は、切り出すパーツが他に存在するかを判定する(ステップS105)。具体的には、制御部42は、所定経路Rbが示す切断線に沿って切り出す第2プログラムの実行終了後、他のパーツを切り出す第1プログラムが存在するかを判定する。ここで、他のパーツ(例えば、パーツPc)を切り出す第1プログラムが存在することとして説明する。
【0055】
制御部42は、他のパーツを切り出す第1プログラムが存在する場合に(ステップS105:YES)、ステップS101における処理を実行する。具体的には、制御部42は、パーツPcに対応する第1プログラムを実行する。その結果、図11に示すように、レーザヘッド10は、パーツPcの切り出しを開始する位置Saに移動し、パーツPcの切断線に沿ってレーザ光L1を照射しつつ移動する。制御部42は、パーツPcを切り出す際、先ず、パーツPcの切断線から外側に離れた箇所にレーザ光L1を照射して貫通穴HPcを形成させ、この貫通穴HPcからレーザ光L1をパーツPcの切断線まで移動させる。次いで、制御部42は、レーザ光L1をパーツPcの切断線に沿って移動させる。パーツPcの切り出しの開始に伴い、撮像部30は、レーザ光L1が照射されたパーツPcの切断部分を撮像する(ステップS102)。具体的には、撮像部30は、パーツPcを切り出す第1プログラムを実行する制御部42の制御により、パーツPcの切断部分を撮像する。
【0056】
検出部41は、切断不良の検出を開始する(ステップS103)。ここで、パーツPcに関しては、検出部41により切断不良が検出されずに切断加工が完了したこととして説明する。すなわち、パーツPcを切り出す第1プログラムの実行が終了するまでに検出部41により切断不良が検出されない場合に(ステップS103:NO)、制御部42は、切り出すパーツが他に存在するかを判定する(ステップS105)。ここでは、他のパーツを切り出す第1プログラムが存在しないこととして説明する。すなわち、図12に示すように、レーザ加工機100は、パーツPcに対応する切り出しを完了する。パーツPcに対応する所定経路Rcが示す切断線は、切断加工されない。
【0057】
制御部42は、他のパーツを切り出す第1プログラムが存在しない場合に(ステップS105:NO)、ローダ装置80に対するパーツPa、Pb、Pc、及び不良パーツPb1(以下、パーツPa等と称する。)のピッキングを制御する(ステップS106)。具体的には、制御部42は、図13に示すように、加工プログラムの実行が終了したワークWについて、パーツPa等をピッキングさせるために、ローダ駆動部83を制御する。ローダ装置80は、吸着パッド82を備えるローダヘッド81を有し、ローダ駆動部83により、ローダヘッド81をX方向、Y方向、及びZ方向に移動可能である。吸着パッド82は、ローダヘッド81に設けられ、例えば、真空又は減圧によってパーツPa等を吸着可能である。
【0058】
ローダヘッド81は、ローダ駆動部83によりワークW上まで移動する。そして、ローダヘッド81は、下降してワークWに形成されているパーツPa等を、吸着パッド82により吸着することで保持する。続いて、ローダヘッド81は、パーツPa等を吸着したまま上昇し、製品パレット90の上方まで移動する。その後、ローダヘッド81は、下降してパーツPa等を解放することでパーツPa等を所望の位置に載置する。その結果、図13に示すように、製品パレット90には、パーツPa、Pb、Pcのそれぞれと、不良パーツPa1、Pb1、Pc1(不良パーツPa1は、所定経路Raが示す切断線で切断加工されたパーツであり、不良パーツPc1は、所定経路Rcが示す切断線で切断加工されたパーツである。)とが載置される。また、レーザ加工機100は、例えば、ローダ装置80とは別の搬送装置が、ローダ装置80によるパーツPa等の吸着後(又は吸着前)に、パーツPa等を除く残材(スケルトン)を搬送する残材搬送装置を備えてもよい。複数種類の不良パーツPa1、Pb1、Pc1を一箇所に載置することにより、不良パーツPa1等の後処理(例えば廃棄等)が容易となる。ただし、複数種類の不良パーツPa1、Pb1、Pc1を一箇所に載置することに限定されず、不良パーツPa1、Pb1、Pc1ごとに別の位置に載置させてもよい。
【0059】
上述の実施形態において、処理装置40は、例えばコンピュータシステムを含む。処理装置40は、記憶部44に記憶されている制御プログラムを読み出し、この制御プログラムに従って各種の処理を実行する。この制御プログラムは、例えば、コンピュータに、レーザヘッドに、ワークに対して加工用レーザを照射させることと、加工用レーザが照射されたワークの切断部分を撮像することと、撮像により取得された画像に基づいて切断不良を検出することと、切断不良となったパーツの切断線を囲むワーク上の所定経路に沿って、加工用レーザを照射させつつレーザヘッドを移動させることと、を実行させる。この制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、処理装置40は、レーザ加工機100に備えられなくてもよい。かかる場合、処理装置40は、通信部45を介してレーザ加工機100と通信し、レーザ加工機100に対する各種制御を実行する。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは当業者において明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。上述した実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述した実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、本実施形態において示した各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるものでない限り、任意の順序で実現可能である。また、上述した実施形態における動作に関して、便宜上「まず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須ではない。また、法令で許容される限りにおいて、上述した実施形態等で引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0061】
1・・・レーザ加工システム
10・・・レーザヘッド
30・・・撮像部
40・・・処理装置
41・・・検出部
42・・・制御部
80・・・ローダ装置
P,Pa,Pb,Pc・・・パーツ
Pb1・・・不良パーツ
Ra,Rb,Rc・・・所定経路
W・・・ワーク
図1
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図13