(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】運転支援装置、及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231031BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20231031BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20231031BHJP
【FI】
G08G1/16 F
B60W40/08
B60W50/14
(21)【出願番号】P 2020053231
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】岡 宏充
(72)【発明者】
【氏名】亀山 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】中川 康紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 健太
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/017216(WO,A1)
【文献】特開2019-123400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)における自動運転から手動運転への運転交代を、支援する運転支援装置(1)であって、
前記手動運転において前記車両を操作するドライバの前記自動運転における状態を、交代ドライバ状態(Sc)として監視する状態監視部(120)と、
前記交代ドライバ状態の監視結果として、前記運転交代を許容する許容範囲(Ap)内での前記交代ドライバ状態の低下判定が下される場合に、前記自動運転の継続に適合する前記交代ドライバ状態に応じた情報提示を、制御する情報提示部(140)と、
前記交代ドライバ状態の監視結果として、前記運転交代を禁止する前記交代ドライバ状態の異常判定が下される場合に、前記自動運転を縮退させる運転縮退部(160)と、を備え
、
前記情報提示部は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)に応じた交代期間(Δc)中において、前記許容範囲内での前記交代ドライバ状態の低下判定が下される場合に、前記自動運転を継続しての前記運転交代の完了に適合する前記交代ドライバ状態に応じた情報提示を、制御する運転支援装置。
【請求項2】
前記情報提示部は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)以前において、前記許容範囲内での前記交代ドライバ状態の低下判定が下される場合に、前記自動運転の継続に適合する前記交代ドライバ状態に応じた情報提示を、制御する請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転縮退部は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)以前において、前記交代ドライバ状態の異常判定が下される場合に、当該交代要求なしに前記自動運転を縮退させる請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記運転縮退部は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)よりも前において、前記交代ドライバ状態の異常判定が下される場合に、当該交代要求のタイミング(Tr)まで前記自動運転の縮退を保留してから、当該交代要求なしに前記自動運転を縮退させる請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記運転縮退部は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)に応じた交代期間(Δc)中において、前記交代ドライバ状態の異常判定が下される場合に、当該交代要求に拘らず前記自動運転を縮退させる請求項1~
4のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記運転縮退部は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)に応じた交代期間(Δc)の経過タイミング(Tp)において、前記運転交代の未完了判定が前記交代ドライバ状態の監視結果として下される場合に、当該交代要求に拘らず前記自動運転を縮退させる請求項
5に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記情報提示部は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)に応じた交代期間(Δc)中において、前記運転交代に関する誤操作判定が前記交代ドライバ状態の監視結果として下される場合に、当該判定の下された誤操作に対する前記情報提示を、制御する請求項1~
6のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記運転交代は、前記自動運転から前記手動運転への交代に加えて、ハイレベルの前記自動運転からローレベルの前記自動運転への交代を、含む請求項1~
7のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項9】
プロセッサ(12)により実行され、車両(2)における自動運転から手動運転への運転交代を、支援する運転支援
方法であって、
前記手動運転において前記車両を操作するドライバの前記自動運転における状態を、交代ドライバ状態(Sc)として監視する状態監視工程(S101,S104,S105,S201,S301,S401)と、
前記交代ドライバ状態の監視結果として、前記運転交代を許容する許容範囲(Ap)内での前記交代ドライバ状態の低下判定が下される場合に、前記自動運転の継続に適合する前記交代ドライバ状態に応じた情報提示を、制御する情報提示工程(S103,S204,S302,S303,S404,S405)と、
前記交代ドライバ状態の監視結果として、前記運転交代を禁止する前記交代ドライバ状態の異常判定が下される場合に、前記自動運転を縮退させる運転縮退工程(S102,S202,S203,S402,S403,S2101,S2102)と、を含
み、
前記情報提示工程は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)に応じた交代期間(Δc)中において、前記許容範囲内での前記交代ドライバ状態の低下判定が下される場合に、前記自動運転を継続しての前記運転交代の完了に適合する前記交代ドライバ状態に応じた情報提示を、制御する運転支援方法。
【請求項10】
前記情報提示工程は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)以前において、前記許容範囲内での前記交代ドライバ状態の低下判定が下される場合に、前記自動運転の継続に適合する前記交代ドライバ状態に応じた情報提示を、制御する請求項
9に記載の運転支援方法。
【請求項11】
前記運転縮退工程は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)以前において、前記交代ドライバ状態の異常判定が下される場合に、当該交代要求なしに前記自動運転を縮退させる請求項
9又は
10に記載の運転支援方法。
【請求項12】
前記運転縮退工程(S2101,S2102)は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)よりも前において、前記交代ドライバ状態の異常判定が下される場合に、当該交代要求のタイミング(Tr)まで前記自動運転の縮退を保留してから、当該交代要求なしに前記自動運転を縮退させる請求項
11に記載の運転支援方法。
【請求項13】
前記運転縮退工程は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)に応じた交代期間(Δc)中において、前記交代ドライバ状態の異常判定が下される場合に、当該交代要求に拘らず前記自動運転を縮退させる請求項
9~12のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項14】
前記運転縮退工程は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)に応じた交代期間(Δc)の経過タイミング(Tp)において、前記運転交代の未完了判定が前記交代ドライバ状態の監視結果として下される場合に、当該交代要求に拘らず前記自動運転を縮退させる請求項
13に記載の運転支援方法。
【請求項15】
前記情報提示工程は、前記運転交代を前記ドライバに要求する交代要求(Rc)に応じた交代期間(Δc)中において、前記運転交代に関する誤操作判定が前記交代ドライバ状態の監視結果として下される場合に、当該判定の下された誤操作に対する前記情報提示を、制御する請求項
9~14のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項16】
前記運転交代は、前記自動運転から前記手動運転への交代に加えて、ハイレベルの前記自動運転からローレベルの前記自動運転への交代を、含む請求項
9~15のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両における自動運転から手動運転への運転交代を、支援する運転支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の開示技術は、自動運転を突発的に中止する非計画的な運転交代が必要になると、ドライバの状態が手動運転に適していない場合には、車両を直ちに停止させている。また特許文献1の開示技術は、非計画的な運転交代が必要になってもドライバの状態が手動運転に適している場合には、ドライバに要求された運転交代の期間中、ドライバの運転操作が待たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ドライバの一時的な状態が手動運転に適していなくても、自動運転を継続したまま当該状態の回復を待てば、車両を停止させなくても済む運転シーンが、想定され得る。また、ドライバの一時的な状態が手動運転に適していても、当該状態が運転交代の期間中に変化して手動運転に適さなくなる運転シーンも、想定され得る。
【0005】
本開示の課題は、運転シーンの変化に合わせて運転交代を支援する運転支援装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、運転シーンの変化に合わせて運転交代を支援する運転支援方法を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
車両(2)における自動運転から手動運転への運転交代を、支援する運転支援装置(1)であって、
手動運転において車両を操作するドライバの自動運転における状態を、交代ドライバ状態(Sc)として監視する状態監視部(120)と、
交代ドライバ状態の監視結果として、運転交代を許容する許容範囲(Ap)内での交代ドライバ状態の低下判定が下される場合に、自動運転の継続に適合する交代ドライバ状態に応じた情報提示を、制御する情報提示部(140)と、
交代ドライバ状態の監視結果として、運転交代を禁止する交代ドライバ状態の異常判定が下される場合に、自動運転を縮退させる運転縮退部(160)と、を備え、
情報提示部は、運転交代をドライバに要求する交代要求(Rc)に応じた交代期間(Δc)中において、許容範囲内での交代ドライバ状態の低下判定が下される場合に、自動運転を継続しての運転交代の完了に適合する交代ドライバ状態に応じた情報提示を、制御する。
【0008】
本開示の第二態様は、
プロセッサ(12)により実行され、車両(2)における自動運転から手動運転への運転交代を、支援する運転支援方法であって、
手動運転において車両を操作するドライバの自動運転における状態を、交代ドライバ状態(Sc)として監視する状態監視工程(S101,S104,S105,S201,S301,S401)と、
交代ドライバ状態の監視結果として、運転交代を許容する許容範囲(Ap)内での交代ドライバ状態の低下判定が下される場合に、自動運転の継続に適合する交代ドライバ状態に応じた情報提示を、制御する情報提示工程(S103,S204,S302,S303,S404,S405)と、
交代ドライバ状態の監視結果として、運転交代を禁止する交代ドライバ状態の異常判定が下される場合に、自動運転を縮退させる運転縮退工程(S102,S202,S203,S402,S403,S2101,S2102)と、を含み、
情報提示工程は、運転交代をドライバに要求する交代要求(Rc)に応じた交代期間(Δc)中において、許容範囲内での交代ドライバ状態の低下判定が下される場合に、自動運転を継続しての運転交代の完了に適合する交代ドライバ状態に応じた情報提示を、制御する。
【0009】
これら第一及び第二態様によると、自動運転から手動運転への運転交代を許可する許容範囲内での、交代ドライバ状態の低下判定が監視結果として下される運転シーンでは、自動運転の継続に適合する交代ドライバ状態に応じた情報提示が、制御される。故に運転交代を禁止する、交代ドライバ状態の異常判定が監視結果として下されない限り、情報提示による交代ドライバ状態の変化を監視しつつ、自動運転を継続することができる。一方、交代ドライバ状態の異常判定が下される運転シーンでは、手動運転への運転交代を禁止して自動運転を縮退させることができる。以上によれば、運転シーンの変化に合わせた運転交代の支援が、可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態による運転支援装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第一実施形態による運転支援装置の詳細構成を示すブロック図である。
【
図3】第一実施形態による運転支援装置の機能を示すタイムチャートである。
【
図4】第一実施形態による運転支援方法のフローのうち、要求前フローを示すフローチャートである。
【
図5】第一実施形態による運転支援方法のフローのうち、第一要求後フローを示すフローチャートである。
【
図6】第一実施形態による運転支援方法のフローのうち、第二要求後フローを示すフローチャートである。
【
図7】第一実施形態による運転支援方法のフローのうち、第三要求後フローを示すフローチャートである。
【
図8】第二実施形態による運転支援装置の機能を示すタイムチャートである。
【
図9】第二実施形態による運転支援方法のフローのうち、要求前フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0012】
(第一実施形態)
図1に示す第一実施形態の運転支援装置1は、車両2の運転を制御することで、特に同車両2における自動運転及び手動運転間の運転交代を支援する。このために運転支援装置1は、センサ系3と情報提示系4と地図ユニット5と共に、車両2に搭載される。
【0013】
図2に示すセンサ系3は、運転支援装置1による運転制御に利用可能な各種情報を、取得する。センサ系3は、外界センサ30及び内界センサ32を含んで構成される。
【0014】
外界センサ30は、車両2の周辺環境となる外界の情報を、生成する。外界センサ30は、車両2の外界に存在する物体を検知することで、外界情報を生成してもよい。この物体検知タイプの外界センサ30は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。外界センサ30は、車両2の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星又はITS(Intelligent Transport Systems)の路側機から信号受信することで、外界情報を生成してもよい。信号受信タイプの外界センサ30は、例えばGNSS受信機及びテレマティクス受信機等のうち、少なくとも一種類である。
【0015】
内界センサ32は、車両2の内部環境となる内界の情報を、生成する。内界センサ32は、車両2の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を生成してもよい。物理量検知タイプの内界センサ32は、例えば走行速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ及び車内温度センサ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ32は、車両2の内界において乗員に関する特定状態を検知することで、内界情報を生成してもよい。乗員状態検知タイプの内界センサ32は、例えばドライバステータスモニタ、生体センサ、着座センサ、アクチュエータセンサ及び車内機器センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0016】
ドライバステータスモニタは、乗員のうち、手動運転において車両2を操作するドライバ(以下、単にドライバという)の状態として、例えば眼球の状態、顔の向き、顔の表情、及び身体の姿勢等のうち、少なくとも一種類を検知する。生体センサは、ドライバのバイタルサインとして、例えば脈拍(即ち心拍)、心電図、呼吸、体温及び指紋等のうち、少なくとも一種類を検知する。着座センサは、運転席におけるドライバの着座状態を検知する。アクチュエータセンサは、車両2の走行アクチュエータに関するドライバの指示状態として、例えばペダルの操作位置、ステアリングハンドルの操舵角、始動スイッチのオンオフ状態、及びシフトレバーのシフト位置等のうち、少なくとも一種類を検知する。車内機器センサは、情報提示系4を含んだ車内機器に関するドライバ又は他乗員の操作状態として、例えばスイッチのオンオフ状態、タッチパネルの入力状態、及び非接触認識可能なジェスチャー状態等のうち、少なくとも一種類を検知する。
【0017】
情報提示系4は、ドライバを含む乗員に向けて、各種情報を提示する。情報提示系4は、視覚提示ユニット40、聴覚提示ユニット42及び皮膚感覚提示ユニット44を含んで構成される。
【0018】
視覚提示ユニット40は、ドライバの視覚を刺激することで、提示対象情報を伝達する。視覚提示ユニット40は、例えばHUD(Head-up Display)、MFD(Multi Function Display)、コンビネーションメータ、ナビゲーションユニット及び発光ユニット等のうち、少なくとも一種類である。聴覚提示ユニット42は、ドライバの聴覚を刺激することで、提示対象情報を伝達する。聴覚提示ユニット42は、例えばスピーカ、ブザー及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。皮膚感覚提示ユニット44は、ドライバの皮膚感覚を刺激することで、提示対象情報を伝達する。皮膚感覚提示ユニット44により刺激する皮膚感覚には、例えば触覚、温度覚及び風覚等のうち、少なくとも一種類が含まれる。皮膚感覚提示ユニット44は、例えばステアリングハンドルのバイブレーションユニット、運転席のバイブレーションユニット、ステアリングハンドルの反力ユニット、ペダルの反力ユニット、及び空調ユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0019】
地図ユニット5は、運転支援装置1による運転制御に利用可能な地図情報を、非一時的に記憶する。地図ユニット5は、例えば半導体メモリ、磁気媒体及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成される。地図ユニット5は、自己位置を含んだ車両2の状態量を推定するロケータの、データベースであってもよい。地図ユニット5は、車両2の走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、データベースであってもよい。地図ユニット5は、これらのデータベース等のうち複数種類の組み合わせにより、構成されてもよい。
【0020】
地図ユニット5は、例えば外部センタとの通信等により、最新の地図情報を取得して記憶する。地図情報は、車両2の走行環境を表す情報として、二次元又は三次元にデータ化されている。地図情報は、例えば道路自体の位置、形状及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路情報を、含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に付属する標識及び区画線の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に面する建造物及び信号機の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物情報を、含んでいてもよい。
【0021】
図1に示す運転支援装置1は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス及び内部バス等のうち、少なくとも一種類を介して、センサ系3と情報提示系4と地図ユニット5とに接続される。運転支援装置1は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成される。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の運転制御を統合する統合ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の走行アクチュエータを個別制御するアクチュエータECUであってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、自己位置を含んだ車両2の状態量を推定するロケータECUであってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の走行経路をナビゲートするナビゲーションECUであってもよい。運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、情報提示系4の情報提示を制御するHCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。
【0022】
運転支援装置1は、メモリ10及びプロセッサ12を、少なくとも一つずつ含む。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0023】
プロセッサ12は、メモリ10に記憶された運転支援プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより運転支援装置1は、自動運転及び手動運転間の運転交代を含んで車両2の運転支援を制御するための機能ブロックを、複数構築する。このとき運転支援装置1では、車両2の運転支援を制御するためにメモリ10に記憶された運転支援プログラムが複数の命令をプロセッサ12に実行させることで、複数の機能ブロックが構築される。運転支援装置1により構築される複数の機能ブロックには、
図2に示すように運転管理ブロック100、状態監視ブロック120、情報提示ブロック140及び運転縮退ブロック160が、含まれる。
【0024】
運転管理ブロック100は、車両2の運転を全体的又は部分的に管理する。そのために運転管理ブロック100は、経路計画ブロック101及びモード制御ブロック102を、サブブロックとして有する。
【0025】
経路計画ブロック101は、車両2の現在走行地点から将来走行する走行経路を、計画する。経路計画ブロック101は、例えば地図ユニット5に記憶された地図情報、外界センサ30による検知情報、及びドライバ又は他乗員から内界センサ32への入力情報等のうち、少なくとも一種類に基づき走行経路の計画を実行する。経路計画ブロック101は、計画した走行経路に関する情報提示を、情報提示系4のユニット40,42,44のうち、少なくとも二種類に指令する。
【0026】
経路計画ブロック101はさらに、計画した走行経路においてドライバに推奨する推奨行動を、判断する。経路計画ブロック101は、モード制御ブロック102により選択される運動モード(後に詳述)に基づくことで、推奨行動の判断を実行する。このとき推奨行動の判断は、例えば地図ユニット5に記憶された地図情報、外界センサ30による検知情報、及び内界センサ32による検知情報等のうち、少なくとも一種類にも基づく。
【0027】
モード制御ブロック102は、車両2の運転モードを選択する。モード制御ブロック102は、例えば外界センサ30による検知情報、内界センサ32による検知情報、経路計画ブロック101により計画された走行経路、及び地図ユニット5に記憶された地図情報等のうち、少なくとも一種類に基づき運転モードの選択を実行する。
図3に示すように運転モードには、大別して手動運転モードMmと自動運転モードMaとがある。手動運転モードMmとは、ドライバの操作に従って車両2の走行が制御される、手動運転時の運転モードである。これに対して自動運転モードMaとは、ドライバの操作が不要な自律航法により車両2の走行が制御される、自動運転時の運転モードである。この自動運転モードMaには、自律ノーマルモードManと運転交代モードMacと縮退フェイルセーフモードMadとが、サブモードとして設定されている。
【0028】
自律ノーマルモードManとは、経路計画ブロック101により計画された走行経路に従って車両2を自律走行させる、通常の自動運転モードMaである。自律ノーマルモードManには、運転支援の程度に応じた複数段階の自動運転レベルのうち、手動運転との運転交代を許容する複数段のレベル1,2,3が、設定されている。レベル1とは、例えばシステムが縦方向又は横方向における運動制御のサブタスクを限定領域において実行する等の、運転支援レベルに定義される。レベル2とは、例えばシステムが縦方向及び横方向の双方における運動制御のサブタスクを限定領域において実行する等の、部分自動運転レベルに定義される。レベル3は、システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行する等の、条件付自動運転レベルに定義される。尚、本実施形態において手動運転は、レベル0の自動運転としても定義される。
【0029】
運転交代モードMacとは、自律ノーマルモードManの自律走行を継続したまま、ドライバによる手動運転への交代完了、又は自動運転のレベルダウン(後に詳述)への交代完了を待つ、運転交代用の自動運転モードMaである。縮退フェイルセーフモードMadとは、自律ノーマルモードMan及び運転交代モードMacのうち、異常発生状況での運転モードを中止して自律走行を縮退させる、フェイルセーフ用の自動運転モードMaである。
【0030】
モード制御ブロック102は、運転モードの切替による運転交代を、支援する。具体的にモード制御ブロック102は、自動運転モードMaのうち自律ノーマルモードManから運転交代モードMacを経て、手動運転モードMmへと運転モードを切替えるに場合には、第一交代要求処理を実行する。第一交代要求処理においてモード制御ブロック102は、自動運転から手動運転への運転交代をドライバへ要求するために、
図3の交代要求Rcを生成する。さらに第一交代要求処理においてモード制御ブロック102は、生成した交代要求Rcをドライバへ報知する情報提示を、自律ノーマルモードManから運転交代モードMacへの切替えを伴う交代要求タイミングTrに、実行する。このときモード制御ブロック102は、情報提示系4のユニット40,42,44のうち、少なくとも二種類に情報提示を指令する。
【0031】
モード制御ブロック102は、自動運転モードMaのうちハイレベルの自律ノーマルモードManから、ローレベルの自律ノーマルモードManへと運転モードを切替える場合には、第二交代要求処理を実行する。第二交代要求処理においてモード制御ブロック102は、ハイレベルからローレベルへダウンさせる自動運転間での運転交代をドライバへ要求するために、
図3のタイミングTrにおいて交代要求Rcを生成する。さらに第二交代要求処理においてモード制御ブロック102は、生成した交代要求Rcをドライバへ報知する情報提示を、ハイレベルからローレベルへの切り替えを伴う交代要求タイミングTrに、実行する。このときモード制御ブロック102は、情報提示系4のユニット40,42,44のうち、第一交代要求処理での情報提示と同一又は相異な少なくとも二種類に、情報提示を指令する。
【0032】
第一及び第二交代要求処理のいずれの場合でもモード制御ブロック102は、運転交代モードMacを継続させる最大期間として、運転交代の完了を待つ交代期間Δcを、
図3の如く設定する。交代期間Δcは、自動運転から手動運転への交代要求Rcの場合と、ハイレベルの自動運転からローレベルの自動運転への交代要求Rcの場合とで、同一時間又は相違時間に設定される。交代期間Δcは、例えば交代要求タイミングTrにおける自動運転レベル等に応じて、可変設定されてもよい。
【0033】
モード制御ブロック102は、自律ノーマルモードMan及び運転交代モードMacの各々において、運転縮退ブロック160からMRM(Minimum Risk Maneuver)要請を受けた場合には、縮退フェイルセーフモードMadへの切替処理を実行する。このときモード制御ブロック102は、自動運転中の車両2に対する走行制御を、
図3に示すようにMRM要請タイミングTm後の特定タイミング又は特定地点まで減速走行させてから停止させる縮退制御に、切替えてもよい。モード制御ブロック102は、自動運転中の車両2に対する走行制御を、図示はしないがMRM要請タイミングTmから直ちに停止させる縮退制御に、切替えてもよい。
【0034】
図2に示す状態監視ブロック120は、手動運転において車両2を操作するドライバの自動運転における状態を、交代ドライバ状態として監視する。そのために状態監視ブロック120は、要求前判定ブロック121、要求後判定ブロック122、誤操作判定ブロック123及び完了判定ブロック124を、サブブロックとして有する。
【0035】
図3に示すように要求前判定ブロック121は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された自律ノーマルモードManにおいて、交代ドライバ状態Scを監視する。このとき要求前判定ブロック121は、モード制御ブロック102の指令に従う交代要求Rcも、監視する。そこで、
図3に示すように要求前判定ブロック121は、交代要求Rc以前の交代ドライバ状態Scを、判定する。
【0036】
先述したように交代要求Rcによる運転交代には、自動運転から手動運転への交代に加えて、ハイレベルの自動運転からローレベルの自動運転への交代が、含まれる。そこで、運転交代のトリガとなる交代要求Rc以前の自律ノーマルモードMan中に要求前判定ブロック121は、当該交代要求Rcまで継続の自動運転レベルに基づくことで、判定条件を設定する。このとき判定条件の設定は、例えば外界センサ30による検知情報、及び内界センサ32による検知情報のうち、少なくとも一種類にも基づく。
【0037】
具体的に要求前判定ブロック121は、継続させる自動運転レベルに応じて、判定条件の種類を設定する。ここでレベル1,2の自動運転に応じた判定条件は、交代ドライバ状態Scのうち、例えば姿勢、覚醒(逆言すれば居眠り)、目の脇見、及び意識の脇見等の複数種類である。これに対して、レベル3の自動運転に応じた判定条件は、交代ドライバ状態Scのうちレベル1,2の場合よりも少ない、例えば姿勢及び覚醒等の複数種類である。
【0038】
要求前判定ブロック121はさらに、継続させる自動運転レベルに応じて、判定条件の推定パラメータ、推定方法及び判定範囲を設定する。推定パラメータは、判定条件となる交代ドライバ状態Scを推定するのに必要なパラメータとして、例えば車間距離、サッカードを含む眼球状態、顔の表情、脈拍(即ち心拍)、心電図、呼吸、及び体温等である。推定方法は、判定条件となる交代ドライバ状態Scを推定するために必要な方法として、例えば、推定パラメータに対する前処理方法、推定パラメータの解析方法、及び推定パラメータの解析周波数帯等である。判定範囲は、推定された判定条件毎に判定結果を振り分けるための、条件範囲ある。
【0039】
図3に示すように判定範囲の一つは、判定条件の交代ドライバ状態Scが手動運転にとって適正な運転シーンにおいて運転交代を許容する適正判定を要求前判定ブロック121が当該判定条件毎に下すための、適正範囲Asである。判定範囲の別の一つは、判定条件の交代ドライバ状態Scが適正範囲As外まで低下した運転シーンにおいて運転交代を許容可能な低下判定を、要求前判定ブロック121が当該判定条件毎に下すための、許容範囲Apである。判定範囲のさらに別の一つは、判定条件の交代ドライバ状態Scが適正範囲As外且つ許容範囲Ap外まで低下した運転シーンにおいて運転交代を禁止する異常判定を要求前判定ブロック121が当該判定条件毎に下すための、異常範囲Aaである。
【0040】
要求前判定ブロック121は、このように設定した判定条件の交代ドライバ状態Sc毎に、それぞれ該当する範囲As,Ap,Aaを判断する。その結果、判定条件の交代ドライバ状態Scが全て適正範囲As内である場合に、要求前判定ブロック121は正常判定を下す。これに対して、判定条件の交代ドライバ状態Scのうち、少なくとも一つが許容範囲Ap内且つ残りが適正範囲As内である場合に、要求前判定ブロック121は低下判定を下す。さらに、判定条件の交代ドライバ状態Scのうち、少なくとも一つが異常範囲Aa内である場合に、要求前判定ブロック121は異常判定を下す。
【0041】
図3に示すように要求後判定ブロック122は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された運転交代モードMacにおいて、交代要求Rc後の交代ドライバ状態Scを監視する。そこで要求後判定ブロック122は、交代要求Rcに応じて開始される交代期間Δc中の交代ドライバ状態Scを、判定する。
【0042】
先述したように交代要求Rcにより要求の運転交代には、自動運転から手動運転への交代に加えて、ハイレベルの自動運転からローレベルの自動運転への交代が、含まれる。そこで、交代要求Rcに応じた交代期間Δc中の運転交代モードMacにおいて要求後判定ブロック122は、レベル0の手動運転も含んだ運転交代先の自動運転レベルに基づくことで、判定条件を設定する。このとき判定条件の設定は、例えば外界センサ30による検知情報、及び内界センサ32による検知情報のうち、少なくとも一種類にも基づく。
【0043】
具体的に要求後判定ブロック122は、運転交代先の自動運転レベルに応じて、判定条件の種類を設定する。ここでレベル0,1,2の自動運転に応じた判定条件は、交代ドライバ状態Scのうち、例えば姿勢、覚醒(逆言すれば居眠り)、目の脇見、及び意識の脇見等の複数種類である。
【0044】
要求後判定ブロック122はさらに、運転交代先の自動運転レベルに応じて、判定条件の推定パラメータ、推定方法及び判定範囲を設定する。要求後判定ブロック122はさらに、設定した判定条件の交代ドライバ状態Sc毎に、それぞれ該当する範囲As,Ap,Aa(
図3参照)を判断する。これら推定パラメータ、推定方法及び判定範囲の設定、並びに該当範囲As,Ap,Aaの判断については、要求前判定ブロック121の場合と同様である。
【0045】
図3に示すように誤操作判定ブロック123は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された運転交代モードMacにおいて、要求後判定ブロック122とは異判定条件の交代ドライバ状態Scを監視する。具体的に誤操作判定ブロック123は、交代要求Rcに応じた交代期間Δc中の交代ドライバ状態Scとして、運転交代に関するドライバの操作正誤を判定する。
【0046】
そこで誤操作判定ブロック123は、交代期間Δc中に必要な交代ドライバ状態Scとしてドライバの実行動を、経路計画ブロック101により判断の運転交代モードMacでの推奨行動に対して、対比させる。このとき実行動と推奨行動との対比は、例えば外界センサ30による検知情報、及び内界センサ32による検知情報のうち、少なくとも一種類に基づく。対比させる実行動の認識は、ステアリングハンドルの操作量に関して、例えば初期状態のトルク変化、角速度変化及び角加速度変化等のうち、少なくとも一種類に基づいてもよい。実行動の認識は、アクセルペダルの操作量に関して、例えばトルク変化、角速度変化及び角加速度変化等のうち、少なくとも一種類に基づいてもよい。
【0047】
図3に示すように、対比の結果として誤操作判定ブロック123は、実行動と推奨行動との一致が確認される場合に、ドライバの正常操作判定を下す。これに対して、実行動と推奨行動との不一致が確認された場合に誤操作判定ブロック123は、ドライバの誤操作判定を下す。このとき誤操作判定ブロック123は、実行動と推奨行動との不一致確認に代えて、実行動による周辺状況変化又は安全度低下の確認により、誤操作判定を下してもよい。誤操作判定ブロック123は、実行動と推奨行動との不一致確認に代えて、実行動自体の安定度低下又は周辺状況未認識の確認により、誤操作判定を下してもよい。いずれの確認による誤操作判定の場合にも、判定結果は、要求後判定ブロック122に入力されることで、交代ドライバ状態Scの監視に活用されてもよい。
【0048】
図3に示すように完了判定ブロック124は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された運転交代モードMacにおいて、要求後判定ブロック122及び誤操作判定ブロック123とは異判定条件の交代ドライバ状態Scを監視する。具体的に完了判定ブロック124は、交代要求Rcに応じた交代期間Δc中の交代ドライバ状態Scとして、ドライバによる運転交代が完了したか否かを判定する。
【0049】
そこで完了判定ブロック124は、運転交代の完了に必要な交代ドライバ状態Scとしてドライバの操作を含む実行動を、経路計画ブロック101により判断された運転交代モードMacでの推奨行動に対して、対比させる。このとき実行動と推奨行動との対比は、例えば外界センサ30による検知情報、及び内界センサ32による検知情報のうち、少なくとも一種類に基づく。
【0050】
図3に示すように、対比の結果として完了判定ブロック124は、実行動と推奨行動との一致が確認されるまで、運転交代の未完了判定を下す。これに対して、実行動と推奨行動との一致が確認された場合に完了判定ブロック124は、運転交代の完了判定を下す。このとき完了判定ブロック124は、実行動と推奨行動との一致確認に代えて、実行動による周辺状況変化又は安全度確保の確認により、運転交代の完了判定を下してもよい。完了判定ブロック124は、実行動と推奨行動との一致確認に代えて、実行動自体の安定度確認により、運転交代の完了判定を下してもよい。
【0051】
図2に示す情報提示ブロック140は、状態監視ブロック120による交代ドライバ状態Scの監視結果に応じて、情報提示を制御する。そのために情報提示ブロック140は、要求前提示ブロック141、要求後提示ブロック142、推奨提示ブロック143、誤操作提示ブロック144及び手動開始提示ブロック145を、サブブロックとして有する。
【0052】
図3に示すように要求前提示ブロック141は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された自律ノーマルモードManにおける、情報提示を制御する。具体的に要求前提示ブロック141は、要求前判定ブロック121により許容範囲Ap内での交代ドライバ状態Scの低下判定が下された場合には、自動運転の継続に適合する交代ドライバ状態Scに応じて、情報提示の制御を実行する。このとき情報提示の対象状態には、要求前判定ブロック121により低下判定の下された判定条件である、少なくとも一つの交代ドライバ状態Scが選択される。
【0053】
そこで、低下判定の交代ドライバ状態Scに関して要求前提示ブロック141は、要求前判定ブロック121による低下判定タイミングTfでの自動運転を継続するのに適合した、適合状態を判断する。このとき、例えば低下判定タイミングTfでの自動運転に対するモード制御ブロック102の制御自信度又は制御精度が設定範囲外へ低下した場合には、適正範囲As内にまで若しくは適正範囲As側に向けて回復した交代ドライバ状態Sc等が、適合状態となる。これに対して、例えば低下判定タイミングTfでの自動運転に対するモード制御ブロック102の制御自信度又は制御精度が設定範囲内へ高まった場合には、交代要求Rcへの気付きが可能であれば適正範囲As外の交代ドライバ状態Sc等も、適合状態として許容される。
【0054】
要求前提示ブロック141は、判断した交代ドライバ状態Scの適合状態をドライバに促すための情報提示を、情報提示系4のユニット40,42,44のうち、少なくとも二種類に情報提示を指令する。その結果、交代ドライバ状態Scの適合状態に応じた情報提示は、視覚刺激と聴覚刺激と皮膚感覚刺激とのうち、少なくとも二つの組み合わせにより実現される。
【0055】
図示はしないが要求前提示ブロック141は、要求前判定ブロック121により交代ドライバ状態Scの異常判定が下された場合には、ドライバに異常を警告するための情報提示の制御を、実行してもよい。このとき要求前提示ブロック141は、情報提示系4のユニット40,42,44のうち、少なくとも二種類に情報提示としての異常の警報を指令する。
【0056】
図3に示すように要求後提示ブロック142は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された運転交代モードMacにおける、情報提示を制御する。具体的に要求後提示ブロック142は、要求後判定ブロック122により許容範囲Ap内での交代ドライバ状態Scの低下判定が下された場合には、自動運転を継続しての運転交代に適合する交代ドライバ状態Scに応じて、情報提示の制御を実行する。このとき情報提示の対象状態には、要求後判定ブロック122により低下判定の下された判定条件である、少なくとも一つの交代ドライバ状態Scが選択される。
【0057】
そこで、低下判定の交代ドライバ状態Scに関して要求後提示ブロック142は、要求後判定ブロック122による低下判定タイミングTfでの自動運転を継続して運転交代を完了させるのに適合した、適合状態を判断する。このとき、適正範囲As内にまで若しくは適正範囲As側に向けて回復した交代ドライバ状態Scが、適合状態となる。要求後提示ブロック142はさらに、判断した交代ドライバ状態Scの適合状態をドライバに促すための情報提示を、要求前提示ブロック141の場合と同様に指令する。
【0058】
図示はしないが要求後提示ブロック142は、要求後判定ブロック122により交代ドライバ状態Scの異常判定が下された場合に、ドライバに異常を警告するための情報提示の制御を、実行する。このとき要求後提示ブロック142は、情報提示系4のユニット40,42,44のうち、少なくとも二種類に情報提示としての異常の警報を指令する。
【0059】
図3に示すように推奨提示ブロック143は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された運転交代モードMacにおける情報提示として、要求後提示ブロック142とは異目的の情報提示を制御する。具体的に推奨提示ブロック143は、誤操作判定ブロック123によりドライバの正常操作判定が下された場合に、推奨提示処理を実行する。
【0060】
推奨提示処理において推奨提示ブロック143は、経路計画ブロック101により判断された運転交代モードMacでの推奨行動をドライバに促すための情報提示を、情報提示系4のユニット40,42,44のうち、少なくとも二種類に指令する。このとき推奨行動に関する情報提示は、誤操作判定ブロック123による推奨行動及び交代ドライバ状態Scの対比結果、及びモード制御ブロック102により設定された交代期間Δcの残存時間等のうち、少なくとも一種類に基づく。こうした推奨行動に関する情報提示では、ドライバによる短時間把握が可能となるように、提示ユニット40によるグラフィカル表示が優先されてもよい。推奨行動に関する情報提示では、ドライバによる短時間把握が可能となるように、交代要求Rc直前の交代ドライバ状態Scに応じて提示内容が絞り込まれてもよい。
【0061】
推奨提示処理において推奨提示ブロック143は、車両2の周辺状況及び走行経路をドライバに報知するための情報提示も、併せて指令する。このとき周辺状況及び走行経路に関する情報提示は、外界センサ30による検知情報又はそれに基づくリスク、内界センサ32による検知情報、地図ユニット5に記憶された地図情報、及び経路計画ブロック101により計画された走行経路等のうち、少なくとも一種類に基づく。周辺状況及び走行経路に関する情報提示の指令対象は、情報提示系4のユニット40,42,44のうち、推奨行動に関する情報提示と同一又は相異な少なくとも二種類である。
【0062】
図3に示すように誤操作提示ブロック144は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された運転交代モードMacにおける情報提示として、要求後提示ブロック142及び推奨提示ブロック143とは異目的の情報提示を制御する。具体的に誤操作提示ブロック144は、誤操作判定ブロック123によりドライバの誤操作判定が下された場合に、誤操作提示処理を実行する。
【0063】
誤操作提示処理において誤操作提示ブロック144は、誤操作判定ブロック123により判定の下された誤操作を警告するための情報提示を、情報提示系4のユニット40,42,44のうち、少なくとも二種類に指令する。このとき誤操作に対する情報提示は、ドライバに誤操作を報知する警報を発することで、聴覚刺激により実現されてもよい。誤操作に対する情報提示は、ステアリングハンドル又はペダルに対して、シェアードコントロールにより支援量を変化させる、若しくは入力を拒絶することで、皮膚感覚刺激により実現されてもよい。誤操作に対する情報提示は、ステアリングハンドル又はペダルの反力を増大させることで、皮膚感覚刺激により実現されてもよい。ここで、誤操作提示処理において誤操作提示ブロック144は、経路計画ブロック101により判断された推奨行動に関する情報提示と、車両2の周辺状況及び走行経路に関する情報提示も、併せて指令する。その結果、誤操作に対する情報提示は、推奨行動に関する情報提示下並びに周辺状況及び走行経路に関する情報提示下において、実現される。換言すれば、推奨行動に関する情報提示並びに周辺状況及び走行経路に関する情報提示は、運転交代モードMacにおいて誤操作の有無に拘らず常に実行されることとなる。
【0064】
図3に示すように手動開始提示ブロック145は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102による運転交代モードMacから手動運転モードMmへの切替タイミングTcにおいて、情報提示を制御する。具体的に手動開始提示ブロック145は、完了判定ブロック124による運転交代の完了判定が交代期間Δc中に下された場合に、手動運転モードMmの開始をモード制御ブロック102に指令するのに伴って、手動開始提示処理を実行する。
【0065】
手動開始提示処理において手動開始提示ブロック145は、モード制御ブロック102による交代要求Rcの指令要因をドライバに報知するための情報提示を、情報提示系4のユニット40,42,44のうち、少なくとも二種類に指令する。さらに手動開始処理において手動開始提示ブロック145は、モード制御ブロック102による自動運転の再開条件をドライバに報知するための情報提示も、併せて指令する。このとき再開条件は、例えばモード制御ブロック102又はドライバによる運転交代の事前計画、天候の回復、及び外界センサ30の清掃等のうち、少なくとも一種類である。
【0066】
図2に示す運転縮退ブロック160は、状態監視ブロック120による交代ドライバ状態Scの監視結果に応じて、車両2の縮退制御をモード制御ブロック102に指令する。そのために運転縮退ブロック160は、要求前縮退ブロック161、要求後縮退ブロック162及び未完了縮退ブロック163を、サブブロックとして有する。
【0067】
図3に示すように要求前縮退ブロック161は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された自律ノーマルモードManにおいて、自動運転を縮退させる。具体的に要求前縮退ブロック161は、要求前判定ブロック121により交代ドライバ状態Scの異常判定が下された場合に、交代要求RcなしでのMRM要請をモード制御ブロック102に指令する。
【0068】
要求後縮退ブロック162は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された運転交代モードMacにおいて、自動運転を縮退させる。具体的に要求後縮退ブロック162は、要求後判定ブロック122により交代ドライバ状態Scの異常判定が下された場合に、交代要求Rcに拘らずMRM要請をモード制御ブロック102に指令する。
【0069】
未完了縮退ブロック163は、自動運転モードMaのうち、モード制御ブロック102により選択された運転交代モードMacにおける、要求後縮退ブロック162とは異判定条件に応じて自動運転を縮退させる。具体的に未完了縮退ブロック163は、交代期間Δcの経過した経過タイミングTpにおいて完了判定ブロック124により運転交代の未完了判定が下された場合に、交代要求Rcに拘らずMRM要請をモード制御ブロック102に指令する。
【0070】
ここまでの説明から、状態監視ブロック120が「状態監視部」に相当する。また、情報提示ブロック140が「情報提示部」に相当する。さらにまた、運転縮退ブロック160が「運転縮退部」に相当する。
【0071】
以上説明した機能ブロック100,120,140,160の共同により、運転支援装置1が自動運転及び手動運転間の運転交代を支援する運転支援方法の複数フローを、
図4~7に従って以下に説明する。尚、各フローにおいてステップ番号に付された「S」は、運転支援プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味する。
【0072】
図4に示す要求前フローは、自動運転モードMaのうち自律ノーマルモードManにおいて、交代要求Rc以前の運転交代に対するドライバの適否に応じた運転支援を、実現する。そのために要求前フローは、自律ノーマルモードManがモード制御ブロック102により選択されている間、繰り返し実行される。要求前フローのS101において要求前判定ブロック121は、交代要求Rc以前の交代ドライバ状態Scを監視する。その結果、交代ドライバ状態Scの監視結果として異常判定が下された場合には、要求前フローがS102へ移行する。S102において要求前縮退ブロック161は、交代要求RcなしでのMRM要請をモード制御ブロック102に指令することで、自動運転を縮退させる。このS102後には、要求前フローの今回実行が終了する。
【0073】
S101の要求前判定ブロック121により、交代ドライバ状態Scの監視結果として許容範囲Ap内での低下判定が下された場合には、要求前フローがS103へ移行する。S103において要求前提示ブロック141は、自動運転の継続に適合する交代ドライバ状態Scに応じて、情報提示を制御する。このS103後には、要求前フローがS104へ移行する。またS101の要求前判定ブロック121により、交代ドライバ状態Scの監視結果として適正判定が下された場合にも、要求前フローがS104へ移行する。
【0074】
S104において要求前判定ブロック121は、監視対象の交代要求Rcがモード制御ブロック102により指令されたか否かを、判定する。その結果、交代要求Rcの無判定が下された場合には、要求前フローの今回実行が終了する。これに対して、交代要求Rcの有判定が下された場合には、要求前フローがS105へ移行する。S105において要求前判定ブロック121は、交代要求Rcの監視結果を表す交代要求フラグFcを、メモリ10においてオンする。このS105の後には、要求前フローの今回実行が終了する。
【0075】
図5に示す第一要求後フローは、自動運転モードMaのうち運転交代モードMacにおいて、交代要求Rc後の運転交代に対するドライバの適否に応じた運転支援を、実現する。そのために第一要求後フローは、運転交代モードMacがモード制御ブロック102により選択されている間、即ちメモリ10において交代要求フラグFcがオンされている間、繰り返し実行される。第一要求後フローのS201において要求後判定ブロック122は、交代要求Rcに応じた交代期間Δc中の交代ドライバ状態Scを監視する。その結果、交代ドライバ状態Scの監視結果として異常判定が下された場合には、第一要求後フローがS202へ移行する。S202において要求後縮退ブロック162は、交代要求Rcに拘らずのMRM要請をモード制御ブロック102に指令することで、自動運転を縮退させる。このS202後には、要求後縮退ブロック162が交代要求フラグFcをオフするS203を経て、第一要求後フローの今回実行が終了する。
【0076】
S201の要求後判定ブロック122により、交代ドライバ状態Scの監視結果として許容範囲Ap内での低下判定が下された場合には、第一要求後フローがS204へ移行する。S204において要求後提示ブロック142は、自動運転を継続しての運転交代の完了に適合する交代ドライバ状態Scに応じて、情報提示を制御する。このS204後には、第一要求後フローの今回実行が終了する。またS201の要求後判定ブロック122により、交代ドライバ状態Scの監視結果としての適正判定が下された場合にも、第一要求後フローの今回実行が終了する。
【0077】
図6に示す第二要求後フローは、自動運転モードMaのうち運転交代モードMacにおいて、交代要求Rc後のドライバ操作に関する運転支援を、実現する。そのために第二要求後フローは、運転交代モードMacがモード制御ブロック102により選択されている間、即ちメモリ10において交代要求フラグFcがオンされている間、繰り返し実行される。即ち第二要求後フローは、第一要求後フローと並列に実行される。第二要求後フローのS301において誤操作判定ブロック123は、交代要求Rcに応じた交代期間Δc中の交代ドライバ状態Scを監視する。その結果、運転交代に関する誤操作判定が交代ドライバ状態Scの監視結果として下された場合には、S302へ移行する。S302において誤操作提示ブロック144は、判定の下された誤操作に対して警告する情報提示を、経路計画ブロック101により判断された推奨行動に関する情報提示と、車両2の周辺状況及び走行経路に関する情報提示と併せて、制御する。このS302後には、第二要求後フローの今回実行が終了する。
【0078】
S301の誤操作判定ブロック123により、運転交代に関する正常操作判定が交代ドライバ状態Scの監視結果として下された場合には、第二要求後フローがS303へ移行する。S303において推奨提示ブロック143は、経路計画ブロック101により判断された推奨行動に関する情報提示を、車両2の周辺状況及び走行経路に関する情報提示と併せて、制御する。このS303後には、第二要求後フローの今回実行が終了する。
【0079】
図7に示す第三要求後フローは、自動運転モードMaのうち運転交代モードMacにおいて、交代要求Rc後の運転交代の進捗に応じた運転支援を、実現する。そのために第三要求後フローは、運転交代モードMacがモード制御ブロック102により選択されている間、即ちメモリ10において交代要求フラグFcがオンされている間、繰り返し実行される。即ち第三要求後フローは、第一要求後フロー及び第二要求後フローと並列に実行される。第三要求後フローのS401において完了判定ブロック124は、交代要求Rcに応じた交代期間Δc中の交代ドライバ状態Scを監視する。その結果、交代期間Δcの経過した経過タイミングTpにおいて運転交代の未完了判定が交代ドライバ状態Scの監視結果として下された場合には、第三要求後フローがS402へ移行する。S402において未完了縮退ブロック163は、交代要求Rcに拘らずのMRM要請をモード制御ブロック102に指令することで、自動運転を縮退させる。このS402後には、未完了縮退ブロック163が交代要求フラグFcをオフするS403を経て、第三要求後フローの今回実行が終了する。
【0080】
S401の完了判定ブロック124により、経過タイミングTpよりも前となる交代期間Δc中に運転交代の完了判定が交代ドライバ状態Scの監視結果として下された場合には、第三要求後フローがS404へ移行する。S404において手動開始提示ブロック145は、モード制御ブロック102に手動運転モードMmの開始を指令するのに伴って、交代要求Rcの指令要因に関する情報提示を、自動運転の再開条件に関する情報提示と併せて、制御する。このS404後には、手動開始提示ブロック145が交代要求フラグFcをオフするS405を経て、第三要求後フローの今回実行が終了する。これに対してS401の完了判定ブロック124により、経過タイミングTpよりも前となる交代期間Δc中に運転交代の未完了判定が交代ドライバ状態Scの監視結果として下される間は、交代要求フラグFcのオフなしに第三要求後フローの今回実行が終了する。
【0081】
ここまでの説明から、S101,S104,S105,S201,S301,S401が「状態監視工程」に相当する。また、S103,S204,S302,S303,S404,S405が「情報提示工程」に相当する。さらにまた、S102,S202,S203,S402,S403が「運転縮退工程」に相当する。
【0082】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0083】
第一実施形態によると、自動運転から手動運転への運転交代を許可する許容範囲Ap内での、交代ドライバ状態Scの低下判定が監視結果として下される運転シーンでは、自動運転の継続に適合する交代ドライバ状態Scに応じた情報提示が、制御される。故に運転交代を禁止する、交代ドライバ状態Scの異常判定が監視結果として下されない限り、情報提示による交代ドライバ状態Scの変化を監視しつつ、自動運転を継続することができる。一方、交代ドライバ状態Scの異常判定が下される運転シーンでは、手動運転への運転交代を禁止して自動運転を縮退させることができる。以上によれば、運転シーンの変化に合わせた運転交代の支援が、可能となる。
【0084】
第一実施形態によると、ドライバへの交代要求Rc以前において、許容範囲Ap内での交代ドライバ状態Scの低下判定が下される運転シーンでは、自動運転の継続に適合する交代ドライバ状態Scに応じた情報提示が、制御される。これによれば、交代要求Rc以前に交代ドライバ状態Scの異常判定が下されない限り、情報提示による交代ドライバ状態Scの変化を監視しつつ、交代要求Rcまで自動運転を継続することができる。故に、車両2を停止させずに済む運転シーンに合わせて、運転交代を支援することが可能となる。
【0085】
第一実施形態によると、ドライバへの交代要求Rc以前において、交代ドライバ状態Scの異常判定が下される運転シーンでは、交代要求Rcなしに自動運転を縮退させることができる。故に、運転交代を回避すべき運転シーンに合わせた運転支援が、可能となる。
【0086】
第一実施形態によると、ドライバへの交代要求Rcに応じた交代期間Δc中において、許容範囲Ap内での交代ドライバ状態Scの低下判定が下される運転シーンでは、自動運転を継続しての運転交代完了に適合する交代ドライバ状態Scに応じた情報提示が、制御される。これによれば、交代期間Δc中に交代ドライバ状態Scの異常判定が下されない限り、情報提示による交代ドライバ状態Scの変化を監視しつつ、運転交代の完了まで自動運転を継続することができる。故に、車両2を停止させずに済む運転シーンに合わせて、運転交代を支援することが可能となる。
【0087】
第一実施形態によると、ドライバへの交代要求Rcに応じた交代期間Δc中において、交代ドライバ状態Scの異常判定が下される運転シーンでは、交代要求Rcに拘らず自動運転を縮退させることができる。故に、一旦は要求された運転交代であっても回避すべき運転シーンに合わせての、運転支援が可能となる。
【0088】
第一実施形態によると、ドライバへの交代要求Rcに応じた交代期間Δcの経過タイミングTpでの交代ドライバ状態Scの監視結果として、当該期間Δc中に異常判定がなくても運転交代の未完了判定が下される運転シーンでは、自動運転を縮退させることができる。故に、交代要求Rcに拘らず運転交代が完了し得ない運転シーンに合わせた運転支援が、可能となる。
【0089】
第一実施形態によると、ドライバへの交代要求Rcに応じた交代期間Δc中に、運転交代に対する誤操作判定が交代ドライバ状態Scの監視結果として下される運転シーンでは、当該判定の下された誤操作に関する情報提示が、制御される。これによれば、交代期間Δc中に交代ドライバ状態Scの異常判定が下されない限り、情報提示による誤操作抑制作用を発揮しつつ、運転交代の完了まで自動運転を継続することができる。故に、車両2を停止させずに済む運転シーンに合わせて、運転交代を支援することが可能となる。
【0090】
第一実施形態によると、支援の対象となる運転交代には、自動運転から手動運転への交代だけでなく、ハイレベルの自動運転からローレベルの自動運転も、含まれる。これによれば、自動運転のレベル変更が可能な車両2に対しても、上述の作用効果をもたらすことが可能となる。
【0091】
(第二実施形態)
図8に示すように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態による運転縮退ブロック160の要求前縮退ブロック2161は、状態監視ブロック120の要求前判定ブロック121の異常判定が交代要求Rcよりも前に下された場合に、異常判定タイミングTaでの自動運転を継続させながら、当該自動運転からの縮退を一旦保留する。このとき縮退の保留は、モード制御ブロック102により交代要求Rcの生成される交代要求タイミングTrまで、継続される。そこで要求前縮退ブロック2161は、交代要求タイミングTrまでに交代要求Rcを禁止する禁止要請と共に、同タイミングTrでのMRM要請をモード制御ブロック102に指令する。即ち要求前縮退ブロック2161は、禁止要請及びMRM要請の指令により、交代要求RcなしでのMRM要請を実現する。
【0092】
こうした第二実施形態による運転支援方法のフローのうち、
図9に示す要求前フローにおいて第一実施形態のS102に代わるS2101では、モード制御ブロック102による交代要求タイミングTrまで要求前縮退ブロック2161が、自動運転を継続して縮退を保留する。さらに続くS2012では、交代要求タイミングTrにおいて要求前縮退ブロック2161が、交代要求Rcの禁止要請と共にMRM要請をモード制御ブロック102に指令することで、交代要求Rcなしに自動運転を縮退させる。このようにS2101,S2102が「運転縮退工程」に相当する。
【0093】
(作用効果)
以上説明した第二実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0094】
第二実施形態によると、運転交代の要求される交代要求Rcよりも前において、交代ドライバ状態Scの異常判定が下される運転シーンでは、交代要求タイミングTrまで自動運転の縮退を保留してから、交代要求Rcなしに自動運転を縮退させることができる。これによれば、運転交代を回避すべき運転シーンであっても、車両2を可及的に停止させずに自動運転を継続させる運転支援が、可能となる。
【0095】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0096】
第一及び第二実施形態に関する変形例の運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、車両2との間にて通信可能な少なくとも一つの外部センターコンピュータであってもよい。変形例において運転支援装置1を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして含んでいてもよい。デジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。こうしたデジタル回路は、プログラムを格納したメモリを、備えていてもよい。
【0097】
第一実施形態に関する変形例の要求前フローでは、要求前縮退ブロック161によるS102と、要求前提示ブロック141によるS103とのうち、少なくとも一方が省略されてもよい。ここで要求前縮退ブロック161によるS102と、要求前提示ブロック141によるS103とが、いずれも省略される変形例では、要求前判定ブロック121によるS101も省略されてよい。
【0098】
第二実施形態に関する変形例の要求前フローでは、要求前縮退ブロック2161によるS2201,S2202の組と、要求前提示ブロック141によるS103とのうち、少なくとも一方が省略されてもよい。ここで要求前縮退ブロック2161によるS2201,S2202の組と、要求前提示ブロック141によるS103とが、いずれも省略される変形例では、要求前判定ブロック121によるS101も省略されてよい。
【0099】
第一及び第二実施形態に関する変形例の第一要求後フローでは、要求後縮退ブロック162によるS202と、要求後提示ブロック142によるS204とのうち、少なくとも一方が省略されてもよい。ここで要求後縮退ブロック162によるS202と、要求後提示ブロック142によるS204とが、いずれも省略される変形例では、要求後判定ブロック122によるS201も省略されてよい。
【0100】
第一及び第二実施形態に関する変形例の第二要求後フローでは、誤操作提示ブロック144によるS302と、推奨提示ブロック143によるS303とのうち、少なくとも一方が省略されてもよい。ここで誤操作提示ブロック144によるS302と、推奨提示ブロック143によるS303とが、いずれも省略される変形例では、誤操作判定ブロック123によるS301も省略されてよい。
【0101】
第一及び第二実施形態に関する変形例の第三要求後フローでは、未完了縮退ブロック163によるS402と、手動開始提示ブロック145によるS404とのうち、少なくとも一方が省略されてもよい。ここで未完了縮退ブロック163によるS402と、手動開始提示ブロック145によるS404とが、いずれも省略される変形例では、完了判定ブロック124によるS401も省略されてよい。
【0102】
第一及び第二実施形態に関する変形例の第二要求後フローでは、誤操作提示ブロック144によるS302において、推奨行動に関する情報提示の制御処理と、車両2の周辺状況及び走行経路に関する情報提示の制御処理とのうち、少なくとも一方が省略されてもよい。第一及び第二実施形態に関する変形例の第二要求後フローでは、誤操作提示ブロック144によるS302において、例えばドライバの意思確認が得られた場合等には、推奨行動の自動制御がモード制御ブロック102に指令されてもよい。
【0103】
第一及び第二実施形態に関する変形例の第二要求後フローでは、推奨提示ブロック143によるS303において、車両2の周辺状況及び走行経路に関する情報提示の制御処理が、省略されてもよい。第一及び第二実施形態に関する変形例の第二要求後フローでは、推奨提示ブロック143によるS303において、例えばドライバの意思確認が得られた場合等には、推奨行動の自動制御がモード制御ブロック102に指令されてもよい。
【0104】
第一及び第二実施形態に関する変形例の第三要求後フローでは、手動開始提示ブロック145によるS404において、自動運転の再開条件に関する情報提示の制御処理が省略されてもよい。第一及び第二実施形態に関する変形例の第三要求後フローでは、手動開始提示ブロック145によるS404において、自動運転の再開条件が運転交代の事前計画に従う場合には、当該再開条件に関する情報提示が省略されてもよい。
【0105】
以上においてステップを省略する変形例では、対応するブロックもまた、同様に省略されてよい。また、以上において一部処理を省略する変形例では、対応するブロックの機能もまた、同様に省略されてよい。
【0106】
第一及び第二実施形態に関する変形例の第二要求後フローでは、誤操作提示ブロック144によるS302の誤操作に対する情報提示制御に代えて、縮退ブロック161,162,163によるS102,S202,S402に準ずる自動運転の縮退制御が、実行されてもよい。第一及び第二実施形態に関する変形例では、誤操作提示ブロック144によるS302の誤操作に対する情報提示制御が、自律ノーマルモードMan又は手動運転モードMmにおいても実行されてよい。
【0107】
第一及び第二実施形態に関する変形例では、経路計画ブロック101及びモード制御ブロック102の少なくとも一方が、運転支援装置1とは別の装置により構築されてもよい。ここで別の装置とは、運転支援装置1と通信可能に車両2に搭載される自動運転制御装置であってもよいし、運転支援装置1と通信可能な車両2外の遠隔制御装置であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 運転支援装置、2 車両、12 プロセッサ、120 状態監視ブロック、140 情報提示ブロック、160 運転縮退ブロック、161,2161 要求前縮退ブロック、Ap 許容範囲、Rc 交代要求、Sc 交代ドライバ状態、Tp 経過タイミング、Tr 交代要求タイミング、Δc 交代期間