(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】通知制御装置及び通知制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/08 20200101AFI20231031BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20231031BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20231031BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20231031BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231031BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W50/14
B60W40/04
B60K35/00 A
B60K35/00 Z
G08G1/16 C
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2020060725
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】久米 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】千葉 晋彦
(72)【発明者】
【氏名】林 哲洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】小島 一輝
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-011458(JP,A)
【文献】特開2014-031086(JP,A)
【文献】特開2017-088133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60K 35/00
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、前記車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御装置であって、
前記自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、前記自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して前記自車が前記交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する自車予定判別部(X3)と、
前記自車が前記車線変更予定状態であり、かつ、前記交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、前記自車が前記車線変更予定状態でない場合よりも、前記自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定とする通知強度設定部(X4)と、を備え
、
前記通知強度設定部は、前記自車が既に前記交差点の内部に進入している場合には、前記通知強度を、前記予定条件が成立した場合における前記弱い設定よりも強い設定とする通知制御装置。
【請求項2】
前記通知強度設定部は、前記予定条件が成立した場合であっても、前記自車が所定速度以上で走行している場合には、前記通知強度を、前記弱い設定よりも強い設定とする請求項
1に記載の通知制御装置。
【請求項3】
車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、前記車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御装置であって、
前記自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、前記自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して前記自車が前記交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する自車予定判別部(X3)と、
前記自車が前記車線変更予定状態であり、かつ、前記交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、前記自車が前記車線変更予定状態でない場合よりも、前記自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定とする通知強度設定部(X4)と、を備え
、
前記通知強度設定部は、前記予定条件が成立した場合であっても、前記自車が所定速度以上で走行している場合には、前記通知強度を、前記弱い設定よりも強い設定とする通知制御装置。
【請求項4】
前記通知強度設定部から取得される前記通知強度の設定情報を参照して、前記通知における具体的な表現態様を制御する通知態様制御部(X6)を、さらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の通知制御装置。
【請求項5】
車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、前記車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御装置であって、
前記自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、前記自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して前記自車が前記交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する自車予定判別部(X3)と、
前記自車が前記車線変更予定状態であり、かつ、前記交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、前記自車が前記車線変更予定状態でない場合よりも、前記自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定とする通知強度設定部(X4)と、
前記通知強度設定部から取得される前記通知強度の設定情報を参照して、前記通知における具体的な表現態様を制御する通知態様制御部(X6)と、を備える通知制御装置。
【請求項6】
前記通知態様制御部は、
前記先行車についての通知の開始段階において、前記通知強度の設定情報に基づき、表現態様を決定し、
前記先行車への接触可能性が前記開始段階よりも高まった後段階において、前記表現態様を、前記開始段階よりも強い表現態様に変更する請求項4
又は5に記載の通知制御装置。
【請求項7】
前記通知装置として、表示を実施可能な表示装置(31,32)が設けられ、
前記通知態様制御部は、前記先行車についての通知を開始した後、前記先行車が前記自車に対して左方向及び右方向のうち離脱方向へ相対的に移動して離脱した場合に、前記先行車の前記離脱方向への離脱を表現した表示を前記表示装置に実施させる請求項4
から6のいずれか1項に記載の通知制御装置。
【請求項8】
前記通知態様制御部は、前記先行車についての通知を開始した後、前記先行車が車線変更することにより離脱した場合に、前記先行車の前記離脱方向への離脱を表現した表示において、先行車コンテンツ(C4H,C4M)が車線コンテンツ(C2H,C2M)に対して前記離脱方向へ相対的に移動しながらフェードアウトする表示を前記表示装置に実施させる請求項
7に記載の通知制御装置。
【請求項9】
前記通知態様制御部は、前記先行車についての通知を開始した後、前記自車が車線変更することにより離脱した場合に、前記先行車の前記離脱方向への離脱を表現した表示において、先行車コンテンツ及び車線コンテンツの両方が相対的な位置関係を維持した状態で、前記離脱方向へ移動しながらフェードアウトする表示を前記表示装置に実施させる請求項
7に記載の通知制御装置。
【請求項10】
前記通知装置として、前記自車の外環境と重畳する表示を実施可能な重畳表示装置(31)と、前記自車の車室内に設けられた表示画面にて表示を実施可能な車室内表示装置(32)とが設けられ、
前記通知態様制御部は、前記重畳表示装置及び前記車室内表示装置のうち、前記重畳表示装置による表示の表現を、前記通知強度の設定情報に基づき変化させる請求項4
又は5に記載の通知制御装置。
【請求項11】
車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、前記車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御プログラムであって、
少なくとも1つの処理部(11)に、
前記自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、前記自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して前記自車が前記交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する処理(S101~S107)と、
前記自車が前記車線変更予定状態であり、かつ、前記交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、前記自車が前記車線変更予定状態でない場合よりも、前記自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定と
し、前記自車が既に前記交差点の内部に進入している場合には、前記通知強度を、前記予定条件が成立した場合における前記弱い設定よりも強い設定とする処理(S108
,S109)と、を実行させる通知制御プログラム。
【請求項12】
車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、前記車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御プログラムであって、
少なくとも1つの処理部(11)に、
前記自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、前記自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して前記自車が前記交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する処理(S101~S107)と、
前記自車が前記車線変更予定状態であり、かつ、前記交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、前記自車が前記車線変更予定状態でない場合よりも、前記自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定と
し、前記予定条件が成立した場合であっても、前記自車が所定速度以上で走行している場合には、前記通知強度を、前記弱い設定よりも強い設定とする処理(S108
,S109)と、を実行させる通知制御プログラム。
【請求項13】
車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、前記車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御プログラムであって、
少なくとも1つの処理部(11)に、
前記自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、前記自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して前記自車が前記交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する処理(S101~S107)と、
前記自車が前記車線変更予定状態であり、かつ、前記交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、前記自車が前記車線変更予定状態でない場合よりも、前記自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定とする処理(S108)と、
前記通知強度の設定情報を参照して、前記通知における具体的な表現態様を制御する処理(S206)と、を実行させる通知制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、車両の乗員へ向けた通知の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の制御装置は、自車の進行方向と先行車の進行方向との一致度に応じて、乗員へ向けた先行車についての通知を実施する作動ラインを変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、一律の通知強度にて、先行車についての通知を実施すると考えられる。
【0005】
さて、交差点の手前において、自車が交差点を右折するために、右折専用の車線へ車線変更するシーンが考えられる。自車が直進車線の先行車を追い越すような形で車線変更しようとすると、一時的に先行車に接近する場合がある。こうしたシーンにおいて、自車は、右折車線へ車線変更する予定であるので、先行車の一時的な接近における追突等の接触可能性は比較的低いと考えられる。対して、先行車についての通知を一律の強度で実施すると、このシーンにおいては、乗員が煩わしさを感じてしまう。
【0006】
この明細書の開示による目的のひとつは、交差点へ進入予定のシーンにおいて、適切な通知を実現する通知制御装置及び通知制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された態様のひとつは、車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御装置であって、
自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して自車が交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する自車予定判別部(X3)と、
自車が車線変更予定状態であり、かつ、交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、自車が車線変更予定状態でない場合よりも、自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定とする通知強度設定部(X4)と、を備え、
通知強度設定部は、自車が既に交差点の内部に進入している場合には、通知強度を、予定条件が成立した場合における弱い設定よりも強い設定とする。
また、開示された態様の他のひとつは、車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御装置であって、
自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して自車が交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する自車予定判別部(X3)と、
自車が車線変更予定状態であり、かつ、交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、自車が車線変更予定状態でない場合よりも、自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定とする通知強度設定部(X4)と、を備え、
通知強度設定部は、予定条件が成立した場合であっても、自車が所定速度以上で走行している場合には、通知強度を、弱い設定よりも強い設定とする。
また、開示された態様の他のひとつは、車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御装置であって、
自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して自車が交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する自車予定判別部(X3)と、
自車が車線変更予定状態であり、かつ、交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、自車が車線変更予定状態でない場合よりも、自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定とする通知強度設定部(X4)と、
通知強度設定部から取得される通知強度の設定情報を参照して、通知における具体的な表現態様を制御する通知態様制御部(X6)と、を備える。
【0008】
ここに開示された態様の他のひとつは、車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御プログラムであって、
少なくとも1つの処理部(11)に、
自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して自車が交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する処理(S101~S107)と、
自車が車線変更予定状態であり、かつ、交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、自車が車線変更予定状態でない場合よりも、自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定とし、自車が既に交差点の内部に進入している場合には、通知強度を、予定条件が成立した場合における弱い設定よりも強い設定とする処理(S108,S109)と、を実行させる。
ここに開示された態様の他のひとつは、車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御プログラムであって、
少なくとも1つの処理部(11)に、
自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して自車が交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する処理(S101~S107)と、
自車が車線変更予定状態であり、かつ、交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、自車が車線変更予定状態でない場合よりも、自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定とし、予定条件が成立した場合であっても、自車が所定速度以上で走行している場合には、通知強度を、弱い設定よりも強い設定とする処理(S108,S109)と、を実行させる。
ここに開示された態様の他のひとつは、車両において用いられ、1つ以上の通知装置(31,32,33)による、車両としての自車(α)の乗員へ向けた通知を制御する通知制御プログラムであって、
少なくとも1つの処理部(11)に、
自車に車線変更の予定がある車線変更予定状態であり、かつ、自車の位置が交差点から所定距離未満の位置に存在して自車が交差点に向かって走行している交差点進入予定状態であるか否かの判定を、実施する処理(S101~S107)と、
自車が車線変更予定状態であり、かつ、交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、自車が車線変更予定状態でない場合よりも、自車に対して先行する先行車(β)についての通知における通知強度を弱い設定とする処理(S108)と、
通知強度の設定情報を参照して、通知における具体的な表現態様を制御する処理(S206)と、を実行させる。
【0009】
これらの態様によると、交差点の手前において、自車が交差点を右折するために、右折車線又は左折車線等へ車線変更しようとするシーンにおいては、自車が車線変更予定状態であり、かつ、交差点進入予定状態である予定条件が成立する。そうすると、自車に対して先行する先行車についての通知における通知強度は、弱い設定となる。したがって、当該シーンにおいて自車αが車線変更しようとして、一時的に先行車に接近したとしても、先行車についての通知を乗員に対して過剰に実施することが抑制される。故に、乗員が感じる煩わしさを、低減することができる。
【0010】
なお、括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】通常レベルにおける先行車についての通知の実施状態(オン状態)と、非実施状態(オフ状態)とを比較する図である。
【
図4】通常レベルにおける先行車の離脱表示の例を中央列に示す図である。
【
図7】先行車についての通知を、通常レベルと弱レベルとで比較する図である。
【
図8】HCUによる処理の全体像を説明するためのフローチャートである。
【
図9】HCUによる通知強度の設定処理について詳細を説明するためのフローチャートである。
【
図10】一般道における道路シーンと通知強度との関係を説明する図である。
【
図11】高速道における道路シーンと通知強度との関係を説明する図である。
【
図12】HCUによる通知処理について詳細を説明するためのフローチャートである。
【
図13】HCUによる通知終了処理について詳細を説明するためのフローチャートである。
【
図14】変形例1における
図13に対応するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、本開示の第1実施形態による表示制御装置は、HCU(Human Machine Interface Control Unit)10となっている。HCU10は、車両としての自車αに用いられるHMI(Human Machine Interface)システムを、ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、以下HUD31)、メータ(以下MET32)、スピーカ33と共に構成している。
【0014】
HCU10は、自車αに搭載された車載ネットワークの通信バスに通信可能なノードとして接続されている。車載ネットワークの通信バスには、自車情報提供ECU(Electronic Control Unit)21、周辺監視センサ22、ロケータ23等がそれぞれノードとして接続されている。通信バスに接続されたこれらのノードは、相互に通信可能となっている。
【0015】
自車情報提供ECU21は、自車情報を、車載ネットワークの通信バスに逐次出力して提供する電子制御装置である。自車情報には、車速センサからの自車αの速度情報、ウインカ(方向指示器)の作動情報(以下ウインカ情報)等、自車αに関する各種情報が含まれる。
【0016】
周辺監視センサ22は、自車αの周辺環境を監視する自律センサである。周辺監視センサ22は、検出範囲から、歩行者、サイクリスト、人間以外の動物、他車(例えば先行車β)等の移動物体、さらに路上の落下物、ガードレール、縁石、道路標識、走行区画線等の路面標示、及び走路脇の構造物等の静止物体等を、検出可能である。検出範囲には、自車αの前方範囲が少なくとも含まれる。周辺監視センサ22は、検出範囲の物体を検出した検出情報を、通信バスを通じて、HCU10等に提供する。周辺監視センサ22は、物体検出のための検出構成として、カメラ、ミリ波レーダ、ライダ及びソナーのうち、少なくとも1つ以上を備えている。
【0017】
ロケータ23は、GNSS(Global Navigation Satellite Systems)受信機及び慣性センサ等を含む構成である。ロケータ23は、GNSS受信機で受信する測位信号、慣性センサ等の計測結果、及び通信バスに出力された速度情報等を組み合わせ、自車αの位置及び進行方向等を高精度に逐次即位する。ロケータ23は、例えば複数車線のうちで、自車αが走行する車線を特定可能である。ロケータ23は、測位結果に基づく自車αの位置情報及び方角情報を、ロケータ情報として、通信バスに逐次出力する。
【0018】
ロケータ23は、地図データベース23aをさらに有している。地図データベース23aは、多数の3次元地図データ及び2次元地図データを格納した大容量の不揮発性の記憶媒体を主体とする構成である。地図データは、いわゆる高精度地図データであり、道路の3次元又は2次元形状情報、各車線の詳細情報及び道路の法定速度情報等、運転に必要な情報を含んでいる。ロケータ23は、現在位置周辺の地図データを地図データベース23aから読み出し、HCU10等に、ロケータ情報と共に提供する。なお、ロケータ23に代えて、スマートフォン等のユーザ端末又はナビゲーション装置等が、位置情報、方角情報及び地図データ等を、HCU10等に提供してもよい。
【0019】
次に、HMIシステムに含まれるHUD31、MET32、スピーカ33及びHCU10の各詳細を、順に説明する。ここで、HUD31、MET32及びスピーカ33は、乗員(例えばドライバ)へ向けた通知を実施可能な通知装置に該当する。ここで、通知には、表示及び音声通知が含まれる。HUD31及びMET32は、乗員へ向けた表示を実施可能な表示装置にも該当する。スピーカ33は、乗員へ向けた音声通知を実施可能な音声通知装置にも該当する。
【0020】
HUD31は、ウィンドシールドよりも下方におけるインスツルメントパネル内の収容空間に収容されている。HUD31は、虚像として結像される光を、ウィンドシールドの投影範囲へ向けて投影する。ウィンドシールドに投影された光は、運転席側へ反射され、乗員としてのドライバによって知覚される。ドライバは、ウィンドシールドを通して見える自車αの外環境(例えば風景)に、虚像が重畳された表示を視認する。こうしてHUD31は、表示装置のうち、自車αの外環境と重畳する表示を実施可能な重畳表示装置となる。
【0021】
MET32は、インスツルメントパネル内の収容空間のうち、運転席とはステアリングホイールを挟んだ反対側に配置されている。MET32は、運転席側を向く表示画面にて、実像による表示を実施可能である。表示画面は、液晶パネル、OLEDディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ等により実現される。こうしてMET32は、自車αの車室内に設けられた表示画面にて表示を実施可能な車室内表示装置となる。
【0022】
スピーカ33は、例えばインスツルメントパネル、ドアパネル、リアクォーターパネル等に設置されている。スピーカ33は、入力された電気信号を、ボイスコイル及び振動板を用いて物理信号に変換することにより、音を吹鳴可能となっている。
【0023】
HCU10は、HMIシステムにおいて、HUD31、MET32及びスピーカ33を含む複数の通知装置による通知を、統合的に制御する電子制御装置である。
図1に示すようにHCU10は、処理部11、RAM(Random Access Memory)12、記憶部13、入出力インターフェース14、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として含む構成である。処理部11は、RAM12と結合された演算処理のためのハードウエアである。処理部11は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)等の演算コアを少なくとも1つ含む構成である。処理部11は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってもよい。処理部11は、RAM12へのアクセスにより、後述する各機能部の機能を実現するための種々の処理を実行する。記憶部13は、例えば半導体メモリ等の不揮発性の記憶媒体を少なくとも1つ含む構成である。記憶部13には、処理部11によって実行される種々のコンピュータプログラム(例えば通知制御プログラム)等が格納されている。
【0024】
HCU10は、記憶部13に記憶されたコンピュータプログラムを処理部11によって実行することにより、乗員へ向けた通知を実現する複数の機能部を有する。具体的にHCU10は、
図2に示すように、位置情報把握部X1、自車予定判定部X2、自車速度判定部X3、通知強度設定部X4、通知実施要求部X5及び通知態様制御部X6を有する。
【0025】
位置情報把握部X1は、自車αの位置情報及び方角情報、並びに先行車βを含む他車の位置情報及び方角情報を把握する。具体的に位置情報把握部X1は、ロケータ23から取得したロケータ情報に基づき、自車αの周辺道路に対する位置及び方角を把握する。さらに位置情報把握部X1は、周辺監視センサ22から取得した検出情報に基づき、周辺道路に対して、先行車βを含む他車の位置及び方角を特定する。位置情報把握部X1は、最新のロケータ情報及び検出情報に基づき、自車αの位置及び方角、並びに先行車βを含む他車の位置及び方角を、逐次更新し、自車予定判定部X2、通知実施要求部X5及び通知態様制御部X6へ提供する。
【0026】
自車予定判定部X2は、自車αの予定について判定を実施する。自車予定判定部X2は、車線変更予定判定機能及び交差点進入予定判定機能を有する。
【0027】
車線変更予定判定機能は、自車αに車線変更の予定がある車線変更予定状態であるか否かを判定する機能である。具体的に自車予定判定部X2は、ネットワークの通信バスに出力されたウインカ情報を取得し、ウインカの作動状態を参照する。自車予定判定部X2は、自車αの位置及び方角、及びウインカの作動状態に基づき、自車αが車線変更予定状態であるか否かを判定する。
【0028】
例えば自車αが複数車線の道路を走行しているシーンにおいて、右隣又は左隣の車線方向に対応したウインカの指示スイッチが起動している場合に、自車予定判定部X2は、自車αが車線変更予定状態であると判定する。また例えば自車αが走行する道路において車線が増加するシーンにおいて、増加する車線方向に対応したウインカの指示スイッチが起動している場合に、自車予定判定部X2は、自車αが車線変更予定状態であると判定する。車線が増加するシーンには、単に走行車線が増加するシーンだけでなく、交差点の手前において、右折車線又は左折車線が増加するシーンが含まれる。
【0029】
一方、自車αが交差点内に既に進入しているシーン又は自車αが交差点の手前において、既に左折車線又は右折車線に位置するシーンにおいて、右方向又は左方向のウインカの指示スイッチが起動している場合が考えられる。この場合、車線変更が予定されているわけではなく、右折又は左折が予定されている蓋然性が高い。したがって、自車予定判定部X2は、自車αが車線変更予定状態でないと判定する。
【0030】
交差点進入予定判定機能は、自車αの位置が交差点から所定距離未満の位置に存在し、自車αが交差点に向かって走行している交差点進入予定状態か否かを判定する機能である。具体的に自車予定判定部X2は、周辺道路に対する自車αの位置及び方角に基づき、自車αが走行している道路と、自車αが走行している道路の先の交差点とを特定する。そして、自車予定判定部X2は、自車αと特定された交差点との距離を算出する。この距離が所定距離未満である場合に、自車予定判定部X2は、自車αが交差点進入予定状態であると判定する。
【0031】
所定距離は、経路案内開始距離に同調して設定された経路案内同調距離となっている。経路案内開始距離とは、自車αが交差点に向かって走行している状況下、交差点についての経路案内が開始されるように設定されている距離である。交差点についての経路案内は、例えば通知態様制御部X6がHUD31の表示、MET32の表示、及びスピーカ33の音声通知等を制御することにより、実現される。
【0032】
さらに、ここでいう同調とは、所定距離が、経路案内開始距離のプラスマイナス10%の誤差と認識できるような範囲内の距離に設定されることを意味する。より好ましくは、所定距離は、経路案内開始距離に一致される。例えば所定距離は、300mである。
【0033】
本実施形態においては、車線変更予定判定機能及び交差点進入予定判定機能において、判定条件等が部分的に重複する。このため、自車予定判定部X2は、重複する判定条件についての演算処理を共通化することにより、両機能を複合的に実現している(
図9のフローチャートも参照)。
【0034】
さらに本実施形態の自車予定判定部X2は、交差点が基本的に存在しない道路における車線変更位置判別機能を有する。車線変更位置判別機能は、自車αが車線変更予定状態であって、交差点が基本的に存在しない道路、例えば高速道、自動車専用道路を走行している場合に、車線変更予定が本線内で実施される車線変更か否かを判別する機能である。
【0035】
自車速度判定部X3は、自車αの速度が所定速度よりも大きいか否かを判定する。ここで所定速度には、例えば自車αが走行する道路の法定速度が採用される。自車速度判定部X3は、車載ネットワークの通信バスに出力された自車αの車速情報と、ロケータ23から取得した法定速度情報とを比較し、判定を実施する。
【0036】
通知強度設定部X4は、自車予定判定部X2による判定結果、自車速度判定部X3による判定結果等に基づき、先行車βについての通知における通知強度を設定する。本実施形態において先行車βは、自車αが走行している車線と同じ車線を走行し、自車αに対して先行する他車として定義される。
【0037】
通知強度設定部X4は、自車αが車線変更予定状態であり、かつ、交差点進入予定状態である予定条件が成立する場合に、自車αが車線変更予定状態でない場合よりも、通知強度を弱く設定する。ただし、通知強度設定部X4は、この予定条件が成立していても、自車速度判定部X3により自車αの速度が所定速度よりも大きいと判定された場合には、通知強度設定部X4は、通知強度を弱く設定しなくてよい。
【0038】
特に本実施形態では、先行車βについての通知強度として、通常レベル及び通常レベルよりも強度が弱い弱レベルの2段階の通知強度レベルが設定されている。通知強度設定部X4は、これら通知強度レベルの中から、適切な通知強度レベルを選択する。
【0039】
具体的に、通知強度設定部X4は、予定条件成立の下、自車αの速度が所定速度よりも大きい場合を除き、通知強度を弱レベルに設定する。通知強度設定部X4は、予定条件成立の下であっても、自車αの速度が所定速度よりも大きい場合には、例外的に、通知強度を通常レベルに設定する。
【0040】
通知実施要求部X5は、自車αが先行車βに接触する接触可能性を判定し、接触可能性に基づき、通知態様制御部X6に対して先行車βについての接近通知の実施を要求する。接触可能性は、自車αから先行車βまでの距離である先行車距離と、自車αの停止距離とを比較して、判定される。停止距離は、例えば推測される空走距離と、制動距離との合計により算出可能である。
【0041】
通知実施要求部X5は、停止距離が先行車距離以下である場合、先行車βについての接近通知の実施の要求を見送る。
【0042】
一方、通知実施要求部X5は、停止距離が先行車距離よりも大きい場合、接触可能性が中レベル以上であると判断し、一旦、通知強度設定部X4が選択した通知強度レベルによる先行車βについての接近通知の実施を要求する。通知態様制御部X6により接近通知が実施されている間、通知実施要求部X5は、先行車距離と停止距離との関係の推移を追いかけることとなる。停止距離に接触可能性区分倍率を乗じた値が先行車距離よりも大きくなると、通知実施要求部X5は、通知強度設定部X4の設定とは関係なく、通知強度レベルが通常レベルである先行車βについての接近通知の実施を再度要求することとなる。接触可能性区分倍率は、0より大きく、かつ、1より小さい値に設定され、特に本実施形態では0.7に設定されている。
【0043】
一方、停止距離が先行車距離よりも小さくなると、通知実施要求部X5は、先行車βについての通知を停止することを、通知態様制御部X6に対して要求する。さらに、再び停止距離が先行車距離よりも大きくなると、通知強度設定部X4が選択した通知強度レベルによる先行車βについての接近通知の実施を要求する。
【0044】
通知態様制御部X6は、先行車βについての通知における具体的な表現態様を制御する。表現態様は、通知実施要求部X5からの要求に応じて、通知強度設定部X4から取得される通知強度の設定情報を参照しつつ決定される。
【0045】
具体的に、通知態様制御部X6は、HUD31、MET32及びスピーカ33を連携させた表現態様を策定する。通知態様制御部X6は、HUD31の表示に用いられる画像及びMET32の表示に用いられる画像に、種々の表示コンテンツをレイアウトする。通知態様制御部X6は、レイアウトに基づいた表示を、HUD31及びMET32に実施させる。通知態様制御部X6は、こうした表示コンテンツに対応する音声を、必要に応じて、スピーカ33に出力させる。
【0046】
通知実施要求部X5からの要求がなく、先行車βが検出されていない場合、通知態様制御部X6は、表示コンテンツとして、速度コンテンツC1H,C1M、車線コンテンツC2M、自車コンテンツC3等をレイアウトする(
図3,5の右列参照)。速度コンテンツC1H,C1Mは、自車αの速度を表すコンテンツであり、HUD31及びMET32のそれぞれに表示される。速度コンテンツC1H,C1Mは、例えば文字によるディジタル表示であるが、MET32においては、機械式メータを模したアナログ表示であってもよい。
【0047】
車線コンテンツC2Mは、自車αが走行する車線を表すコンテンツであり、MET32に表示される。車線コンテンツC2Mは、車線の両側に配置される一対の白線に対応する線画像を、下方から上方へ向かうに従って間隔が狭くなるように斜めに配置させている。こうした斜め配置によって、コンテンツに遠近感が表現されている。
【0048】
自車コンテンツC3は、自車αを斜め後方から俯瞰した視点にて表すコンテンツであり、MET32に表示される。自車コンテンツC3は、車線コンテンツC2Mにおける線画像の間に配置される。
【0049】
そしてこの場合、スピーカ33からの先行車βについての音声通知は実施されない。
【0050】
通知実施要求部X5からの要求がある場合、通知態様制御部X6は、当該要求に付帯された通知強度に基づき、表現態様を策定する。通知強度レベルが通常レベルである場合、通知態様制御部X6は、前述の速度コンテンツC1H,C1M、車線コンテンツC2M、自車コンテンツC3に加えて、先行車コンテンツC4M、先行車強調コンテンツC5、大ポップアップコンテンツC6等をレイアウトする(
図3の左列参照)。
【0051】
先行車コンテンツC4Mは、先行車βを斜め後方から俯瞰した視点にて表すコンテンツであり、MET32に表示される。先行車コンテンツC4Mは、自車コンテンツC3よりも小さいサイズにて表示される。先行車コンテンツC4Mは、車線コンテンツC2Mにおける線画像の間であって、自車コンテンツC3よりも上方に配置される。
【0052】
先行車強調コンテンツC5は、先行車βの存在を強調するコンテンツであり、MET32に表示される。先行車強調コンテンツC5は、先行車コンテンツC4Mを囲んで強調する枠画像と、枠画像に隣接して「接近注意」の文字を表示する文字画像とを、組み合わせた構成である。
【0053】
大ポップアップコンテンツC6は、先行車βへの接近注意を促す表示を、ポップアップ表示形式にて表すコンテンツであり、HUD31に表示される。大ポップアップコンテンツC6は、虚像の表示領域のうち中央部に、表示領域の1/4の面積以上を専有する比較的大きなサイズにて配置される。大ポップアップコンテンツC6は、例えば赤色、黄色等の警報色によって塗りつぶされた背景画像と、背景画像と重畳して「接近注意」の文字を表示する文字画像とを、組み合わせた構成である。
【0054】
そして大ポップアップコンテンツC6が表示されている間、通知態様制御部X6は、「ピピピ・・・」という高音域の音声通知を、スピーカ33に実施させる。
【0055】
通知強度レベルが弱レベルである場合、通知態様制御部X6は、前述の速度コンテンツC1H,C1M、車線コンテンツC2M、自車コンテンツC3に加えて、先行車コンテンツC4M、先行車強調コンテンツC5、小ポップアップコンテンツC7等をレイアウトする(
図5の左列参照)。なお、HUD31に追加の車線コンテンツC2Mも表示される。
【0056】
先行車コンテンツC4Mは、前述の通常レベルの場合と同様であるが、MET32に加えて、HUD31にも表示される。先行車強調コンテンツC5は、前述の通常レベルの場合と同様である。
【0057】
小ポップアップコンテンツC7は、先行車βへの接近注意を促す表示を、ポップアップ表示形式にて表すコンテンツであり、HUD31に表示される。小ポップアップコンテンツC7は、虚像の表示領域のうち中央部を避けた側方部に、大ポップアップコンテンツC6よりも小さなサイズにて配置される。小ポップアップコンテンツC7は、「接近注意」の文字を表示する文字画像と、背景の塗り潰しがなく、文字画像を囲む枠画像とを、組み合わせた構成である。
【0058】
そして小ポップアップコンテンツC7が表示されている間、通知態様制御部X6は、「ポーン・・・」という低音域の音声通知を、スピーカ33に実施させる。
【0059】
通知態様制御部X6は、先行車βについての通知を実施している間、位置情報把握部X1から取得した自車αの位置及び方角、並びに先行車βの位置及び方角に基づき、自車αに対する先行車βの相対位置を逐次監視する。先行車βが自車αに対して左方向及び右方向のうち離脱方向へ相対的に移動して離脱した場合に、通知態様制御部X6は、離脱方向への離脱を表現した離脱表示をHUD31及びMET32に実施させる。
【0060】
離脱表示制御において、まず、通知態様制御部X6は、HUD31に表示されていた大ポップアップコンテンツC6又は小ポップアップコンテンツC7を消去する(
図4,6の中央列参照)。通知強度レベルが通常レベルである場合には、通知態様制御部X6は、HUD10における大ポップアップコンテンツC6の消去と共に、弱レベルで表示され得る車線コンテンツC2H及び先行車コンテンツC4Hを、HUD31に表示させる。
【0061】
次に、前述の相対的な移動において自車αが車線を維持し、先行車βが車線変更していた場合には、通知態様制御部X6は、先行車コンテンツC4H,C4Mが車線コンテンツC2H,C2Mに対して離脱方向に相対的に移動しながらフェードアウトする表示を、HUD31及びMET32の両方に実施させる。前述の相対的な移動において先行車βが車線を維持し、自車αが車線変更していた場合には、通知態様制御部X6は、先行車コンテンツC4H,C2M及び車線コンテンツC2H,C2Mの両方が互いに相対的な位置関係を維持した状態で、離脱方向へ移動しながらフェードアウトする表示を、HUD31及びMET32の両方に実施させる。ここでフェードアウトとは、対象のコンテンツが背景に同化するように、コントラストを経時的に徐々に低下し、最終的に消去されることを意味する。また、これらの際、自車コンテンツC3の位置が移動せずに固定されて表示される。
【0062】
以上の先行車βについての通知に関する表現態様について、
図7を用いて、通常レベルの場合と弱レベルの場合とを以下に比較整理する。
【0063】
HUD31では、通常レベルの場合、表示領域の中央部に、大ポップアップコンテンツC6が表示される。一方、弱レベルの場合、表示領域の側方部に、小ポップアップコンテンツC7が表示され、表示領域の中央部には、車線コンテンツC2H及び先行車コンテンツC4Hが表示される。したがって、HUD31では、通常レベルと弱レベルとで表示態様が互いに異なる。
【0064】
MET32では、通常レベルにおいても、弱レベルにおいても、車線コンテンツC2M、自車コンテンツC3及び先行車コンテンツC4Mが表示される。したがって、MET32では、通常レベルと弱レベルとで表示態様が互いに同じである。
【0065】
スピーカ33では、通常レベルの場合、「ピピピ・・・」という高音域の音声通知が実施される。弱レベルの場合、「ポーン・・・」という低音域の音声通知が実施される。したがって、スピーカ33では、通常レベルと弱レベルとで表示態様が互いに異なる。
【0066】
次に、通知制御プログラムに基づき、先行車βについての通知を実施する通知制御方法の詳細を、
図8,9,12,13のフローチャートを用いて説明する。
【0067】
まず、本実施形態における通知制御処理における全体像が
図8に示されている。S100~S300の各ステップによる処理は、自車αの電源スイッチがオン状態であり、HCU10への給電が実施されている状態において、適宜の開始タイミング又は周期にて、繰り返し実施される。
【0068】
S100では、通知強度設定部X4は、通知強度を、2段階の通知強度レベルの中から選択する。S100の処理後、S200へ移る。
【0069】
S200では、通知実施要求部X5による要求に従って、通知態様制御部X6は、先行車βについての通知をHUD31、MET32及びスピーカ33に実施させることを開始する。S200の処理後、S300へ移る。
【0070】
S300では、通知態様制御部X6は、先行車βの離脱状況等に対応して、先行車βについての通知の実施を中止する。S300を以て一連の処理を終了する。
【0071】
S100の処理の詳細が
図9の各ステップに示されている。まず、S101では、自車予定判定部X2は、ウインカ情報を取得する。S101の処理後、S102へ移る。
【0072】
S102では、自車予定判定部X2は、ウインカの指示スイッチが作動しているか(オン状態であるか)否かを判定する。S102にて肯定判定が下されると、S103へ移る。S102にて否定判定が下されると、S110へ移る。
【0073】
S103では、自車予定判定部X2は、自車αの位置及び方角を取得する。S103の処理後、S104へ移る。
【0074】
S104では、自車予定判定部X2は、道路種別が、交差点の存在する道路(例えば一般道)であるか否かを判定する。S104にて肯定判定が下されると、S105へ移る。S105にて否定判定が下されると、S111へ移る。
【0075】
道路種別が交差点の存在する道路である場合のS105では、自車予定判定部X2は、自車αと交差点との距離が所定距離(例えば300m)未満であるか否かを判定する。S105にて肯定判定が下されると、S106へ移る。S105にて否定判定が下されると、S109へ移る。
【0076】
S106では、自車予定判定部X2は、自車αが既に右折車線、左折車線又は交差点内に位置しているか否かを判定する。S106にて肯定判定が下されると、S109へ移る。S106にて否定判定が下されると、S107へ移る。
【0077】
S107では、自車速度判定部X3は、自車αの速度が法定速度の上限以下であるか否かを判定する。S107にて肯定判定が下されると、S108へ移る。S107にて否定判定が下されると、S109へ移る。
【0078】
S108では、通知強度設定部X4は、先行車βについての通知における通知強度レベルを、弱レベルに設定する。S108を以て一連の処理を終了する。
【0079】
S109,S110では、通知強度設定部X4は、先行車βについての通知における通知強度レベルを、通常レベルに設定する。S109,S110を以て一連の処理を終了する。
【0080】
道路種別が交差点の基本的に存在しない道路、例えば高速道、自動車専用道路である場合のS111では、自車予定判定部X2は、自車αが本線内に位置しているか否かを判定する。S111にて肯定判定が下された場合、S112へ移る。S111にて否定判定が下された場合、自車αはランプ内、インターチェンジ出入口、サービスエリア出入口、パーキングエリア出入口等に位置していることとなり、S114へ移る。
【0081】
S112では、自車速度判定部X3は、自車αの速度が法定速度の上限以下であるか否かを判定する。S112にて肯定判定が下されると、S113へ移る。S112にて否定判定が下されると、S114へ移る。
【0082】
S113では、通知強度設定部X4は、先行車βについての通知における通知強度レベルを、弱レベルに設定する。S113を以て一連の処理を終了する。
【0083】
S114では、通知強度設定部X4は、先行車βについての通知における通知強度レベルを、通常レベルに設定する。S114を以て一連の処理を終了する。
【0084】
以上のステップS101~S110のように、例えば一般道では、
図10のように先行車βについての通知強度レベルが設定される。自車αが交差点に向かって走行している場合に、交差点までの距離が300m以上離れている場合、まだ交差点進入予定状態とはみなされず、通知強度レベルは通常レベルとされる。
【0085】
自車αから交差点までの距離が300m未満であって、自車αが右折車線へ車線変更する前である場合、通知強度レベルは弱レベルとされる。乗員が右折車線への車線変更を予定している状況下、車線変更前の車線に位置する先行車βに対して過剰な通知を実施すると、乗員に強く煩わしさを与えることとなってしまうからである。ただし、自車αの速度が法定速度を超えている場合、通知強度レベルは通常レベルである。
【0086】
自車αが交差点の手前50mから増設された右折車線へ車線変更した後、及び交差点内に進入した後においては、通知強度レベルは通常レベルとされる。車線変更後は、右折車線に位置する先行車βも、自車αと同じく右折しようとしているので、先行車βの減速に伴って自車αも減速しなければ、自車αが先行車βに接触してしまう。このため、先行車βについての通知を、乗員に対して強く実施すべきである。
【0087】
また、以上のステップS101~S104,S111~S114のように、例えば高速道では、
図11のように先行車βについての通知強度レベルが設定される。例えば高速道の本線合流前、分岐後の道路では、通知強度レベルは通常レベルとされる。先行車βも自車αと同様の車線変更等の動きをする可能性が高い。すなわち、先行車βが自車αと共に車線変更して先行車βであり続ける可能性を考慮し、先行車βについての通知を、乗員に対して強く実施すべきである。
【0088】
一方、高速道の本線内では、自車αが車線変更予定状態である場合、通知強度レベルは弱レベルとされる。先行車βが自車αと共に車線変更して先行車βであり続ける可能性が低いので、車線変更前の車線に位置する先行車βに対して過剰な通知を実施すると、乗員に強く煩わしさを与えることとなってしまうからである。
【0089】
次に、S200の処理の詳細が
図12の各ステップに示されている。まず、S201では、通知実施要求部X5は、自車αの速度を取得する。S201の処理後、S202へ移る。
【0090】
S202では、通知実施要求部X5は、先行車距離を取得する。S202の処理後、S203へ移る。
【0091】
S203では、通知実施要求部X5は、停止距離を算出する。S203の処理後、S204へ移る。
【0092】
S204では、通知実施要求部X5は、停止距離が先行車距離よりも大きいか否かを判定する。S204にて肯定判定が下された場合、S205へ移る。S204にて否定判定が下された場合、通知の実施要求はされず、一連の処理を終了する。
【0093】
S205では、通知実施要求部X5は、通知強度設定部X4が選択した通知強度レベルによる先行車βについての接近通知の実施を要求する。そして、通知態様制御部X6は、通知強度設定部X4が選択した通知強度レベルに基づき、表現態様を決定する。こうしてHUD31、MET32及びスピーカ33が乗員に向けた通知を開始する。S205の処理後、S206へ移る。
【0094】
S206では、通知実施要求部X5は、停止距離の0.7倍の値が先行車距離よりも大きいか否かを判定する。S206にて肯定判定が下された場合、S207へ移る。S206にて否定判定が下された場合、再びS204に戻る。
【0095】
S207では、通知実施要求部X5は、通常レベルによる先行車βについての接近通知の実施を要求する。そして、通知態様制御部X6は、通常レベルに基づき、表現態様を決定する。例えばS205の時点で通知強度レベルが弱レベルの通知であった場合、通知はより強い表現態様に変更されることとなる。こうしてHUD31、MET32及びスピーカ33は、表現態様を改めて、乗員に向けた通知を継続する。S205の処理後、S206へ移る。S207の処理を以て一連の処理を終了する。
【0096】
次に、S300の処理の詳細が
図13の各ステップに示されている。まず、S301では、通知態様制御部X6は、HUD31、MET32及びスピーカ33による先行車βについての通知実施の状態を取得する。S301の処理後、S302へ移る。
【0097】
S302では、通知態様制御部X6は、取得された通知実施の状態に基づき、現在、先行車βについての通知が実施されているかを判定する。S302にて肯定判定が下された場合、S303へ移る。S302にて否定判定が下された場合、一連の処理を終了する。
【0098】
S303では、通知態様制御部X6は、先行車βが自車αに対して左方向及び右方向のうち離脱方向へ相対的に移動して離脱しているか否かを判定する。S303にて否定判定が下された場合、S304へ移る。S303にて肯定判定が下された場合、S305へ移る。
【0099】
S304では、通知態様制御部X6は、停止距離が先行車距離よりも大きいか否かを判定する。S304にて肯定判定が下された場合、S306へ移る。S304にて否定判定が下された場合、再びS303へ戻る。
【0100】
S305では、通知態様制御部X6は、先行車βの離脱方向への離脱を表現した表示を、HUD31及びMET32に実施させる。S305の処理後、S306へ移る。
【0101】
S306では、通知態様制御部X6は、先行車βについての通知を終了する。S306を以て一連の処理を終了する。
【0102】
(作用効果)
以上説明した第1実施形態の作用効果を以下に改めて説明する。
【0103】
第1実施形態によると、交差点の手前において、自車αが交差点を右折するために、右折車線又は左折車線等へ車線変更しようとするシーンにおいては、自車αが車線変更予定状態であり、かつ、交差点進入予定状態である予定条件が成立する。そうすると、自車αに対して先行する先行車βについての通知における通知強度は、弱い設定としての弱レベルとなる。したがって、当該シーンにおいて自車αが車線変更しようとして、一時的に先行車βに接近したとしても、先行車βについての通知を乗員に対して過剰に実施することが抑制される。故に、乗員が感じる煩わしさを、低減することができる。
【0104】
また、第1実施形態によると、自車αが既に交差点の内部に進入している場合には、通知強度は、予定条件が成立した場合における弱レベルよりも強い設定としての通常レベルとされる。故に、交通麻痺が発生しやすい交差点内にて、自車αが先行車βへ接触する事態への抑制効果を高めることができる。
【0105】
また、第1実施形態によると、予定条件が成立した場合であっても、自車αが所定速度以上で走行している場合には、通知強度は、弱レベルよりも強い設定としての通常レベルとされる。故に、先行車βへ接触した場合に衝撃が強くなりやすい高速走行時において、自車αが先行車βへ接触する事態への抑制効果を高めることができる。
【0106】
また、第1実施形態によると、通知態様制御部X6は、通知強度設定部X4から取得される通知強度の設定情報を参照して、先行車βについての通知における具体的な表現態様を制御する。通知強度に応じた表現態様がHUD31、MET32及びスピーカ33等の通知装置によって実現されるので、乗員が通知に対応した適切な行動を取り易くなる。
【0107】
また、第1実施形態によると、通知態様制御部X6は、先行車βについての通知の開始段階において、通知強度の設定情報に基づき、表現態様を決定する。そして、通知態様制御部X6は、先行車βへの接触可能性が開始段階よりも高まった後段階において、表現態様を、開始段階よりも強い表現態様に変更する。接触可能性の高まりに応じて表現態様が段階的に強く変更されるので、乗員が感じる煩わしさを低減しつつ、乗員が通知を認識するきっかけを複数回与えることができる。
【0108】
また、第1実施形態によると、通知態様制御部X6は、先行車βについての通知を開始した後、先行車βが自車αに対して左方向及び右方向のうち離脱方向へ相対的に移動して離脱した場合に、先行車βの離脱方向への離脱を表現した表示をHUD31及びMET32に実施させる。故に、先行車βが離脱したことを、乗員に的確に認識させることができる。
【0109】
また、第1実施形態によると、離脱を表現した表示において、先行車コンテンツC4H,C4Mが車線コンテンツC2H,C2Mに対して離脱方向へ相対的に移動しながらフェードアウトする。この表示では、先行車βが車線変更することにより離脱したことを、乗員に的確に認識させることができる。
【0110】
また、第1実施形態によると、離脱を表現した表示において、先行車コンテンツC4H,C4M及び車線コンテンツC2H,C2Mの両方が相対的な位置関係を維持した状態で、離脱方向へ移動しながらフェードアウトする。この表示では、自車αが車線変更することにより離脱したことを、乗員に的確に認識させることができる。
【0111】
また、第1実施形態によると、通知態様制御部X6は、HUD31及びMET32のうち、HUD31による表示の表現を、通知強度の設定情報に基づき変化させる。自車αの外環境と重畳することにより、外環境を視認する乗員に認識され易いHUD10による表示が変化することにより、先行車βについての通知を、乗員に的確に認識させることができる。
【0112】
(他の実施形態)
以上、一実施形態について説明したが、本開示は、当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0113】
具体的に変形例1としては、第1実施形態のS300の処理の詳細を、
図14に示すS351~S356のように変更してもよい。具体的に、S351,S352は、S301,S302と同様の処理である。S352の処理後、S353へ移る。
【0114】
S353は、S304と同様の処理である。S353にて肯定判定が下された場合、S354へ移る。S353にて否定判定が下された場合、所定時間経過後、S353の処理を再び実施する。
【0115】
S354は、S303と同様の処理である。S354にて肯定判定が下された場合、S355へ移る。S354にて否定判定が下された場合、S356へ移る。
【0116】
S355は、S305と同様の処理である。S355の処理後、S356へ移る。S356は、S366と同様の処理である。S356を以て一連の処理を終了する。
【0117】
変形例2としては、自車予定判定部X2は、自車αが車線変更予定状態であるか否かを、ウインカ情報に代わる別の情報を用いて判定してもよい。例えば、カーナビゲーション機能又は自動運転機能によって設定された目的地までの走行予定ルートの情報を用いて、自車αが車線変更予定状態であるか否かが判定されてもよい。
【0118】
変形例3としては、通知に、振動が含まれてもよい。例えば、通知制御装置は、例えばステアリングハンドル、運転席等を振動させる振動装置による通知を制御してもよい。
【0119】
変形例4としては、通知制御装置によって提供されていた各機能は、ソフトウエア及びそれを実行するハードウエア、ソフトウエアのみ、ハードウエアのみ、あるいはそれらの複合的な組み合わせによっても提供可能である。さらにこうした機能がハードウエアとしての電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むディジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。
【0120】
変形例5としては、上述の通知制御を実現可能なプログラム等を記憶する記憶媒体の形態も、適宜変更されてよい。例えば記憶媒体は、回路基板状に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されて、通知制御装置の制御回路に電気的に接続される構成であってもよい。さらに、記憶媒体は、通知制御装置へのプログラムのコピー基となる光学ディスク及びハードディスク等であってもよい。
【0121】
変形例6としては、通知制御装置は、自車αに搭載されていなくてもよい。例えば、通知制御装置が車両に搭載されず、自車αの外に固定配置されている場合又は他車に搭載されている場合には、インターネット、路車間通信、車車間通信等の通信によって、通知装置が遠隔制御されてもよい。
【0122】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0123】
10:HCU(通知制御装置)、31:HUD(重畳表示装置、表示装置、通知装置)、32:MET(車室内表示装置、表示装置、通知装置)、33:スピーカ(音声通知装置、通知装置)、α:自車、β:先行車、X3:自車予定判定部、X4:通知強度設定部